説明

脆性ウェハ加工用粘着テープ

【課題】脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程で、該ウェハ表面に貼合することにより発光層や回路面を保護し、該ウェハの裏面を所定の仕上げ厚さまで問題なく研削することを可能とする、脆性ウェハ加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有する脆性ウェハ加工用粘着テープであって、該基材樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂からなり、該脆性ウェハ加工用粘着テープにおける該粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmであって、かつ該粘着剤層の表面の純水との接触角が85°以上である脆性ウェハ加工用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性ウェハの研削時に使用されるウェハ加工用粘着テープに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、発光ダイオード製造の際に使用されるサファイアウェハ等の脆性ウェハの裏面研削工程において、該ウェハを固定し、かつ該ウェハの表面を保護するために用いられる脆性ウェハ加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイや照明機器の光源として、従来の蛍光灯などと比較して省電力、長寿命である発光ダイオード(以下、「LED:Light Emitting Diode」ともいう。)の需要が急増している。LEDの形成には、主にサファイア、SiC(炭化ケイ素)、Siなどが基板として使用されるが、高い透過率を有することからサファイアが多く用いられている。LEDの製造工程では、サファイア基板上にGaNなどの発光層や回路を形成し、得られたサファイアウェハの裏面を研磨して薄膜ウェハとした後、LEDチップに個片化して実装するプロセス等が採用されている。
【0003】
このような製造工程においてサファイアウェハを薄化する方法としては、サファイアウェハの裏面を研削した後、さらに研磨する方法が一般的である。このような方法では、裏面を研削する際にサファイアウェハ表面を保護するために、ワックスで固定する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、まずサブストレートにワックスでサファイアウェハを固定して研削や研磨等の加工工程を行う。そして、これらの加工工程終了後、該ウェハに加熱等の工程を施すことによりワックスを溶融させてウェハを剥離し、更に有機溶剤等を用いてワックスを洗浄除去した後、リングフレームへの貼り付けを経てダイシングなどの次工程へと運ばれる。
【0005】
しかし、このようなワックスを用いた固定方法では、ウェハやサブストレートに付着したワックスを洗浄除去しなければならないために、工程が煩雑になる。また、溶剤を用いてウェハを洗浄した場合には、除去しきれなかった残存ワックスがデバイスに悪影響をもたらし、不良が発生したり、大量の溶剤を必要とするために廃液が環境に悪影響を与えたりという問題がある。さらには、ワックスを除去洗浄した後にリングフレームに貼り付けられたDCテープへマウントされ、次の工程に移されるため、ワックスを使用せずにウェハ研削ができ、かつ、その後の工程も一貫して処理できる方法が望まれている。
【0006】
ワックスを使用しない方法として、該ウェハの裏面研削工程において、表面にウェハ加工用粘着テープを貼合して発光層や回路面を保護するウェハ加工用粘着テープについて検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、LEDの基板として使用されるサファイアウェハは、GaAs基板と同様に脆性材料として知られ、一般的な半導体デバイスに用いられるシリコンウェハに比べて非常に脆い。このため、裏面研削時の応力でテープが変形した場合には、研削中に割れることもあり、研削の難易度が高い。また、反り量が非常に大きいことから、研削中に切削水が浸入してテープが剥離することもある。このため、従来のシリコンウェハ用に開発された表面保護テープを無条件に使用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−46744号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】梶山啓一,「LED用基板薄化加工の完全自動化」,SEMICONDUCTOR International日本版,2009年11月,14〜18頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合することにより発光層や回路面を保護するとともに、該ウェハの裏面を所定の仕上げ厚さまで問題なく研削することを可能とし、その後のステルスDCによるウェハ内改質層形成、ブレーキングによるチップ化まで一貫処理可能な脆性ウェハ加工用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層が形成されたウェハ加工用粘着テープにおいて、基材樹脂フィルムの種類、粘着剤層の放射線硬化前の粘着力および粘着剤層表面の純水との接触角が重要であることを見出した。本発明はそれらの知見に基づきなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明の上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有する脆性ウェハ加工用粘着テープであって、該基材樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂からなり、該脆性ウェハ加工用粘着テープにおける該粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmであって、かつ該粘着剤層の表面の純水との接触角が85°以上であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(2)前記基材樹脂フィルムのポリオレフィン系樹脂が、エチレン/酢酸ビニル共重合体からなる樹脂層と高密度ポリエチレンからなるからなる樹脂層の複層構成であることを特徴とする(1)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(3)前記脆性ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(4)前記粘着剤層の厚さが20μm〜70μmであって、前記基材樹脂フィルムの厚さが50μm〜150μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(5)前記基材樹脂フィルムの複層構成において、前記高密度ポリエチレンからなるからなる樹脂層の層比率が、該複層構成の全厚みに対し、30%以上であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(6)前記粘着剤層が、放射線硬化性の(メタ)アクリル系粘着剤からなり、該(メタ)アクリル系粘着剤を構成するポリマーの側鎖長が炭素数で4以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合して発光層や回路面を保護するとともに、該ウェハの裏面研削を実用上十分な厚さまで行うことを可能とし、より具体的には、脆性ウェハ加工用粘着テープを剥離した後のウェハ表面の汚染を防止することができ、別途洗浄工程を必要としないことや、ステルスダイシング・ブレーキング工程まで一貫して処理できることで、製造工程が簡略化され、洗浄液等の廃液による環境への負荷も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して本発明の好ましい脆性ウェハ加工用粘着テープについて説明する。
図1は本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープ10の好ましい一実施形態を示す概略断面図であり、基材樹脂フィルム1と、基材樹脂フィルム1上に放射線硬化性の粘着剤層2が形成されている。
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープ10は、サファイアウェハをはじめとする脆性ウェハの加工に用いられるものである。
【0016】
なお、以下、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの実施形態については、脆性ウェハの一例としてサファイアウェハの加工工程を挙げて説明するが、本発明はサファイアウェハの加工用に限定的に用いられるものではなく、脆性ウェハの加工に適用され得るものである。
【0017】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、サファイアウェハをはじめとする脆性ウェハ表面に貼合されて使用される。サファイアウェハは、非常に脆く、加工中の加工圧力によってテープが変形することによりウェハが変形し、割れるリスクが非常に高い。このため、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、粘着力が大きく、しかも弾性率も大きくすることが特に好ましい。
【0018】
具体的には、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープは、粘着剤層のシリコンウェハのミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmであることが必要である。粘着剤層の放射線硬化前の粘着力がこの範囲より小さすぎると、サファイアウェハを研削、薄化した場合に生じる反りによりウェハのエッジ部から粘着テープが剥れ、その部分のウェハにエッジクラックが生じやすくなる。一方、粘着剤層の放射線硬化前の粘着力がこの範囲より大きすぎる場合には、粘着剤が発光層や回路面に悪影響を及ぼしたり、放射線硬化後にも粘着剤が残ったりする恐れがある。本発明において該粘着剤層の放射線硬化前の粘着力のより好ましい範囲は、2.0〜20N/25mmであり、または2.0〜10N/25mmがさらに好ましい。
【0019】
なお、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの粘着層の放射線硬化前の粘着力は、前記のとおり、シリコンウェハのミラー面に対する粘着力として定義されるが、粘着力は、シリコンウェハの厚さが400μm以上のもので測定する。また、粘着力の具体的な測定方法は、例えば以下の通りである。
【0020】
脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の粘着力は、JIS H 0614により、製造されたシリコンミラー面に対して、実施例に記載したように、JIS B 7721に準拠して、引張試験機で粘着力を測定することで求めることができる。
より具体的には、例えば、脆性ウェハ加工用粘着テープから、幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、その試験片を厚さ400μmのシリコンミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着し、1時間放置後、JIS B 7721に準拠して、引張試験機を使用し、90°引きはがし法にて、測定温度23℃、測定湿度(相対湿度)50%で、かつ引張速さ50mm/minの条件で測定することで求められる。
【0021】
裏面研削時には、サファイアウェハにはその硬さのため、所望の厚さに研削するためには、通常のシリコンウェハの研削時よりも大きな力が加えられる。このため、本発明においては、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの弾性率を大きくすることが好ましく、脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量は150μm以下が好ましく、120μm以下とすることがより好ましい。サファイアウェハは、一般的なシリコンウェハに比べ硬いため、裏面研削時には通常のシリコンウェハの研削時よりも大きな力を加える必要がある。このため、脆性ウェハ加工用テープの圧縮変位量が150μmより大きすぎると、裏面研削時の応力により脆性ウェハ加工用粘着テープが変形し、ウェハ割れが生じやすくなる。一方、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量の下限値については、脆性ウェハ加工用粘着テープが、ウェハ表面に追従して密着する必要があることから、通常、20μm以上とすることが望ましい。
【0022】
ここで、本発明における圧縮変位量は、以下の方法で求めた値である。
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層と、粘着剤層を突き合わせて5枚積層する。この積層された脆性ウェハ加工用粘着テープを、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加する。応力印加前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力印加時の変位量を測定値とする。
なお、本発明における上記の圧縮変位量は、平行板治具に本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープを5枚積層したものを挟み込み、反りのない状態から圧子により応力を印加した場合の試験片の変位量を示すものである。よって、この圧縮変位量は、基材樹脂フィルムや脆性ウェハ加工用粘着テープについて引張り試験を行って得られる引張弾性率とは技術的意味が異なるものである。
【0023】
さらに、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層表面の耐水性も重要となる。粘着剤層表面の耐水性が低い場合は、ウェハ研削加工中に切削水が浸入し、粘着テープがウェハエッジ部より剥離しやすくなることからエッジチッピングが誘発される。サファイアのような脆性材料では、このようなエッジチッピングの生じた箇所から結晶方向にそって割れが発生しやすい。このため、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層表面の耐水性が高いことが望ましく、具体的には、粘着剤層表面の純水との接触角は85°以上である。粘着剤の材料特性の観点から、純水との接触角を150°以下にすることが好ましい。本発明では、粘着剤層表面の純水との接触角は85〜120°が特に好ましい。なお、接触角の測定環境は、室温(25±5℃、好ましくは25℃)、相対湿度50±10%、好ましくは相対湿度50%である。
【0024】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤の粘着力や粘着テープの圧縮変位量を制御する方法は、特に限定されない。一般的には、粘着剤の粘着力を上げる手段として、粘着剤中に含有される硬化剤の部数を減らして架橋度を下げるか、ポリマーの分子量を下げる方法が適用される。しかし、これらの方法では粘着剤の粘着力が大きくなりすぎる場合があるだけでなく、同時に粘着剤の弾性率を低下させてしまうため、粘着テープの圧縮変位量が大きくなってしまう。つまり、粘着力と弾性率はトレードオフの関係になる。
【0025】
そこで、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤の粘着力を前記のような好適な範囲に制御するために、粘着剤を構成するポリマーの分子構造自体、すなわち高分子鎖を構築するモノマー〔各種(メタ)アクリル酸およびそのエステル類〕を変更すること、具体的には、ポリマーの側鎖長を炭素数で4以上〔例えば、アルキル(メタ)アクリレートの場合は、アルコール部の炭素数が4以上であり、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する基をアルコール部に有する場合は、このアルコール部の炭素数は除く〕とすることにより、粘着力と弾性率を両立させ、さらには、粘着剤表面の耐水性を十分な範囲としている。もちろん、脆性ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化前の粘着剤の粘着力、圧縮変位量、および粘着剤層の純水との接触角を好適な範囲に制御できれば、硬化剤やオリゴマー、モノマーなどの他の添加剤を用いてもよい。
【0026】
さらに、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤層の厚さは、20〜70μmであることが好ましい。サファイアウェハ表面にはGaNなどの発光層や回路が形成されており、凹凸が存在している。このため粘着剤層の厚さが薄すぎると、ウェハ加工用粘着テープがこの凹凸に追従することが困難になり、テープ貼合時にボイドが混入し、ウェハ割れの要因となったり、裏面に研削痕(ディンプル)が残り易くなったりする。またボイドが原因でUV照射後、テープ剥離時にウェハ表面へ糊残りしやすくなったりする。一方、粘着剤層の厚さが厚すぎると、研削時の応力により粘着剤層が変形しやすくなり、ウェハが変形して割れることがある。逆に、粘着剤が厚い場合は、後工程のブレーキング時に押し刃の応力が伝わりにくくなりチップ化できない場合がある。
【0027】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、放射線硬化性の粘着剤層に用いられる粘着剤は、上記の粘着力と純水との接触角、さらに好ましくはこれらに加えて上記の圧縮変位量を達成できるものであればよく、その種類や構成は限定されない。放射線硬化性の粘着剤層は、単一の粘着剤から構成されるものでも、複数種類の粘着剤が積層されてなるものもよい。
【0028】
一般に、粘着剤は樹脂組成物であるが、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化性の粘着剤層を構成する粘着剤としては、樹脂組成物のベース樹脂として主鎖の繰り返し単位に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造〔−C(=O)CH=CH又は−C(=O)C(CH)=CH〕を有する残基が結合した重合体(a)を主成分とするものが好ましい。ここで、「重合体(a)を主成分とする」とは、全ベース樹脂中の重合体(a)の含有割合が80〜100質量%であることをいう。
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」の両者を含むものとする。
【0029】
上記重合体(a)はどのようにして製造されたものでもよい。例えば、上記重合体(a)としては、主鎖の繰り返し単位に官能基〔後の反応で、加えられた化合物と反応させるための官能基で好ましくは側鎖に有す。このような官能基としては、後述の単量体(a1−2)が有する官能基で挙げた基が好ましい。〕を有する重合体〔(好ましくは(メタ)アクリル系共重合体〕(a1)と、該官能基と反応し得る官能基(好ましい官能基は後に挙げた基が挙げられる)及び放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造を有する化合物(a2)とを反応させて得たものを挙げることができる。また、主鎖の繰り返し単位に対して、側鎖に放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する炭素−炭素二重結合と官能基とを有する(メタ)アクリル系共重合体(a1’)と、この共重合体(a1’)の官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(a2’)とを反応させて重合体(a)を得ることもできる。
【0030】
前記の主鎖の繰り返し単位に、前記の官能基を有する重合体(a1)は、例えば、前記官能基(以下の単量体(a1−2)が有する官能基)を有さないアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルなどの単量体(a1−1)と、前記官能基を有する単量体(a1−2)とを共重合させて得ることができる。
【0031】
上記単量体(a1−1)で挙げたアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルは、好ましくはエステルのアルコール部の炭素数が4以上のものが好ましく、炭素数4〜18のものがより好ましく、炭素数4〜12のものがさらに好ましい。また、このようなアルコール部のアルキル基は置換基を有してもよいが、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ポリオキシアルキレンを含む基等の水溶性基が置換すると耐水性が大きく変動することから、無置換のアルキル基が好ましい。このようなアルコール部のアルキル基としては、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、n−オクチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0032】
単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルコール部のアルキルの炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−デシルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートを挙げることができる。
また、アルキルエステルのアルコール部のアルキルの炭素数が4未満の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートを挙げることができる。
【0033】
単量体(a1−1)として、アルキルエステルにおけるアルコール部のアルキルの炭素数が大きな(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用するほどガラス転移温度(Tg)は低くなる傾向にある。したがって、単量体(a1−1)のアルキルエステルのアルコール部のアルキルの炭素数を適宜選択することにより、所望のガラス転移温度を有する重合体(a)を得ることができる。
【0034】
また、ガラス転移温度の以外にも、他の成分との相溶性や粘着剤としての各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を(a1−1)に加えて重合体(a)を得てもよい。これらの低分子化合物の配合量は、単量体(a1−1)の5質量%以下とすることが好ましい。
【0035】
単量体(a1−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。単量体(a1−−2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類(例えば、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシル−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシル−1−メチルプロピルアクリレート等)、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類(例えば、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシル−プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシル−1−メチルプロピルメタアクリレート等)、グリコールモノアクリレート類(例えば、1,3−グリコールモノアクリレート、1,4−グリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート等)、グリコールモノメタクリレート類(例えば、1,3−グリコールモノメタクリレート、1,4−グリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等)、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート類(例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−アクリロイルオキシブチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシブチルイソシアネート等)、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および放射線硬化性の炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0036】
前記放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する(メタ)アクリロイル部分構造を有し、かつ前記重合体(a1)が有する官能基〔前記単量体(a1−2)が有する官能基〕と反応しうる官能基を有する化合物(a2)の官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がカルボキシル基や環状酸無水基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基が水酸基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がアミノ基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がエポキシ基である場合には、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができる。
上記化合物(a2)の官能基がイソシアネート基の場合は、上記重合体(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などを挙げることができる。
【0037】
これらの具体例としては、単量体(a1−2)の具体例で列挙したもののうち、無水フタル酸以外のものと同様のものを列挙することができる。
なお、上記重合体(a1)と上記化合物(a2)の反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価または水酸基価などを所望の範囲に適宜設定することができる。
【0038】
重合体(a1)は、単量体(a1−1)と単量体(a1−2)とを各種の溶剤中で溶液重合することにより得ることができる。溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができる。一般に(メタ)アクリル系重合体の良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤を使用することが好ましい。例えば、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を用いることができる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の重合体(a1)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、重合体(a1)の合成は、溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0039】
重合体(a)は、前記重合体(a1)の反応液に、前記化合物(a2)を加えることによって合成することができる。
重合体(a)中における前記化合物(a2)の占める割合は、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がより好ましい。
また、重合体(a)中には、(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位を有することが好ましく、重合体(a)中に占める(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位の比率は5モル%〜0.1モル%が好ましい。
【0040】
本発明の粘着剤層を構成する粘着剤には、上記の重合体(a)のほかに、さらに上記の重合体(a)とは異なる構造のベース樹脂を含ませることができる。ベース樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成単量体単位の1つとして含む(メタ)アクリル系共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリル系共重合体には、その他の官能基を有する単量体をさらに共重合させたものを挙げることができる。構成単量体単位として使用される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらにおいても、エステルのアルコール部の炭素数は4以上が好ましい。
【0041】
なお、ウレタン(メタ)アクリレート系重合体(オリゴマーもしくはポリマー)は、前述の純水との接触角を下げるものが多く、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成単量体単位の1つとして含む(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。また、前述のように、全ベース樹脂中の重合体(a)の含有割合は、80〜100質量%が好ましく、85〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましく、95〜100質量%が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0042】
このような粘着剤層を構成する樹脂組成物については、放射線硬化前のDSC測定によるガラス転移温度が−40〜−10℃であることが好ましい。なお、ここでいうDSC測定によるガラス転移温度とは、昇温速度0.1℃/分でDSC(示差走査熱量計)により測定されたガラス転移温度をいう。
【0043】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層を構成する樹脂組成物には、従来の光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を単独で、又は併用して用いることができる。これらのうち少なくとも1種類を、粘着剤を構成する樹脂組成物に添加することにより、放射線照射による硬化反応を効率よく進行させることができる。
【0044】
なお、ここで言う放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線を意味する。光重合開始剤の含有量は特に制限されるものではないが、好ましくは前記の全ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
【0045】
さらに、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤層を構成する樹脂組成物は、硬化剤(架橋剤)を含有し、それにより前記のベース樹脂を架橋するものであってもよい。硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
【0046】
硬化剤を使用する場合、その含有量は、粘着剤の粘着力、粘着テープの圧縮変位量、粘着層の純水接触角が所望の範囲となるよう調整すれば良く、上記のベース樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.1質量部〜5質量部である。
【0047】
さらに、本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤の粘着力、粘着テープの圧縮変位量および粘着層の純水接触角は、適宜オリゴマーや単量体を加えることによって調整することもできる。
【0048】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープで使用する基材樹脂フィルムはポリオレフィン系樹脂からなる。ここで、ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン性不飽和基を有するモノマーから得られる繰り返し単位を50質量%以上含有する樹脂が好ましい。
このようなエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1または2−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸もしくはこれらのエステルないしはアミド〔含(メタ)アクリルアミド〕、桂皮酸もしくはこれらのエステルないしはアミド、マレイン酸もしくはこれらのエステルないしはアミド、フマル酸もしくはこれらのエステルないしはアミド、クロトン酸もしくはこれらのエステルないしはアミドが挙げられる。なお、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の1位に炭素−炭素二重結合を有する炭化水素はα−オレフィンと称される。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂としては、上記モノマーの重合体であっても、共重合体であっても構わない。共重合体の場合、上記から選択されるモノマーの組合せが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブテンのようなポリオレフィン、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどの合成ゴム、天然ゴム、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニルのようなエチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル/塩化ビニル共重合体等が挙げられる。また、ポリ塩化ビニルとしては軟質ポリ塩化ビニル、半硬質ポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0050】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂は、エチレンから得られる繰り返し単位を有するものが好ましく、特に、ポリエチレン重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体およびエチレン/酢酸ビニル共重合体から選択される樹脂が好ましい。
ここで、エチレン/α−オレフィン共重合体には、α−オレフィンの量によって、密度が異なり、通常、密度が942kg/cm以上のものを高密度ポリエチレン(HDPE)、密度が930kg/cm以上942kg/cm未満のものを中密度ポリエチレン(MDPE)、密度が910kg/cm以上930kg/cm未満のものを低密度ポリエチレン(LDPE)と分類されている。
本発明において、ポリエチレン重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体においては、高密度ポリエチレンが特に好ましい。
基材樹脂フィルムの樹脂をポリオレフィン系樹脂にすることで、粘着剤層の粘着力、粘着剤層の表面の純水との接触角を特定の値にすることと相まって、本発明を効果的に発現させることができ、高密度ポリエチレン層とエチレン/酢酸ビニル共重合体層との組合せでさらに効果的となる。
【0051】
本発明の脆性ウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルムの厚さは25〜150μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。基材樹脂フィルムの厚さが薄すぎると、特にサファイアウェハ加工用粘着テープとしては、その剛性が不足し、ウェハの反りを抑制することが困難になる。一方、基材樹脂フィルムの厚さが厚すぎると、特にサファイアウェハ加工用粘着テープとしては、その可撓性が低くなる。これにより、サファイアウェハ加工用粘着テープをウェハに貼合する場合やウェハから剥離する際の作業性が著しく悪化することがある。
【0052】
ここで、本発明においては、基材樹脂フィルムは少なくとも2層からなる複層構成が好ましく、これらの複数の層は、少なくともエチレンから得られる繰り返し単位を有する樹脂であって、互いに樹脂の組成の異なる層であることがより好ましく、エチレン/酢酸ビニル共重合体と高密度ポリエチレンから選択される樹脂がさらに好ましく、粘着剤層が塗設される側に最も近い層の樹脂が高密度ポリエチレンで、最も遠い層の樹脂がエチレン/酢酸ビニル共重合体である場合が特に好ましい。
また、複層構成において、基材樹脂フィルム全体における高密度ポリエチレンの樹脂層の層比率は、該複層構成の全厚みに対し、30%以上が好ましく、30〜95%がより好ましく、30〜90%がさらに好ましく、40〜90%が特に好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
<ウェハ加工用粘着テープの作製>
(実施例1)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
ブチルアクリレート(69mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(30mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
【0055】
得られた重合体(a)の質量平均分子量と二重結合量については、次の方法により測定、算出した。
(i)質量平均分子量
重合体(a)について、下記条件により、GPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で質量平均分子量を測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000、(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
(ii)二重結合当量
ヨウ素価測定法により1g中の炭素−炭素二重結合当量(ミリ当量)を算出した。
重合体(a)の質量平均分子量は、33万、二重結合当量は1.5(meq/g)であった。
【0056】
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.7質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1A)を調製した。
【0057】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが50μmで、高密度ポリエチレン(HDPE)層とエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)層の2層構成で、粘着剤層側に高密度ポリエチレン(HDPE)層を全基材樹脂フィルムの厚みに対し、40%の層比率(下記表1ではHDPE 4、EVA 6として記載し、HDPE層は粘着剤層が塗設される側に最も近い層である。)で有する基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1A)を乾燥後の厚さが60μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0058】
(実施例2〜9、12)
実施例1において、基材樹脂フィルムの厚み、基材樹脂フィルムを構成する高密度ポリエチレン(HDPE)層とエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)層の層比率、硬化剤の量をそれぞれ下記表1(表1と表1の続き)に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてウェハ加工用粘着テープを得た。
【0059】
(実施例10)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例1で調製した重合体(a)を使用した。
(2)樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.3質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1B)を調製した。
【0060】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1B)を使用した以外は、実施例9と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0061】
(実施例11)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例1で調製した重合体(a)を使用した。
(2)樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.6質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1C)を調製した。
【0062】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1C)を使用した以外は、実施例9と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0063】
(実施例13)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例1で調製した重合体(a)を使用した。
(2)樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)を、粘着力、接触角、圧縮時変位量が下記表1に記載の値を満たすように配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を調製した。
【0064】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1D)を使用した以外は、実施例12と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0065】
(実施例14)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例1で調製した重合体(a)を使用した。
(2)樹脂組成物の調製
上記重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)4.2質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1E)を調製した。
【0066】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1E)を使用した以外は、実施例9と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0067】
(比較例1)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(b)の調製
エチルアクリレート(81mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(18mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(b)を得た。
実施例1と同様の方法により測定、算出した重合体(b)の質量平均分子量は、34万、二重結合当量は0.9meq/gであった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(b)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2A)を調製した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが50μmで、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)層のみの基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(2A)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0068】
(比較例2)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸からなるアクリル系共重合体を調製し、その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、質量平均分子量80万、二重結合当量0.9meq/gとなるように調製して、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(a)を得た。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2B)を調製した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが75mで、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)層のみの基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(2B)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0069】
(比較例3)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(b)の調製
エチルアクリレート(45mol%)、ブチルアクリレート(35mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(19mol%)、メタクリル酸(1.5mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位中に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を部分構造として有する重合体(b)を得た。
実施例1と同様の方法により測定、算出した重合体(b)の質量平均分子量は、66万、二重結合当量は0.6meq/gであった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(b)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2C)を調製した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100mで、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)層のみの基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(2C)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0070】
<ウェハ加工用粘着テープの評価>
1.粘着力
各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープから幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、その試験片をシリコンウェハのミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着した。1時間放置後、JIS B 7721に準拠した引張試験機を行いて粘着力を測定した。
測定は、90°引きはがし法によるものとし、引張速さは50mm/minとした。測定温度は23℃、測定湿度は50%とした。粘着力が2.0〜35N/25mmのものを合格とし、2.0N/25mm未満のもの及び35N/25mmを越えるものを不合格とした。
【0071】
2.圧縮変位量
各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープを200mm×200mm程度の大きさに5枚切断し、基材樹脂フィルムと粘着剤層との間で積層した。その積層されたものを25mm×55mmに切断し、これを試験片とした。この試験片を、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加した。応力印加前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力印加時の変位量を測定値とした。
圧縮変位量が150μm以下のものを合格、150μmを越えるものを不合格とした。
【0072】
3.粘着剤層表面の純水接触角
各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープのセパレータを剥離し、粘着剤層表面へ純水を滴下した。滴下直後の接触角を接触角計(協和界面科学製:CONTACT−ANGLE METER MODEL:CA−S)で測定し、85°以上を合格、85°未満を不合格とした。
【0073】
4.研削可能な仕上げ厚さ
直径4インチのサファイアウェハ表面に各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハ裏面を研削した。ウェハ裏面の研削厚さを変えて研削を行い、研削終了後のウェハを観察し、割れやクラックがない最低厚さを、研削可能な仕上げ厚さとした。80〜90μmを◎、91〜120μmを○、121〜164μmを△、165μm以上を×とした。
ウェハの割れやクラックがなく120μm以下の厚みに研削できたもの(◎又は○のランク)を合格、それ以外のランクのものを不合格とした。
これらの結果をまとめて下記表1(表1と表1の続き)に示した。
下記表1において、重合体の側鎖炭素数は、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用する基をアルコール部に有する以外のアルコール部の炭素数を示し、複数のアルコール部を有する場合は個々の炭素数を示し、かつ括弧内にはこれらをモル換算した全体の平均の炭素数を示した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
上記表1から明らかなように、本発明のウェハ加工用粘着テープ(実施例1〜14)を用いた場合、サファイアウェハ研削後の仕上げ厚さの評価において合格レベルの優れた特性が得られた。
これに対し、比較例1と3は、純水との接触角が85°未満であり、耐水性が不足したため、一方、比較例2は粘着力が2.0N/25mmを下回るため、いずれも研削可能な仕上げ厚さが厚くなり、評価が不合格であった。
【符号の説明】
【0077】
1 基材樹脂フィルム
2 放射線硬化性の粘着剤層
10 脆性ウェハ加工用粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有する脆性ウェハ加工用粘着テープであって、該基材樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂からなり、該脆性ウェハ加工用粘着テープにおける該粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmであって、かつ該粘着剤層の表面の純水との接触角が85°以上であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記基材樹脂フィルムのポリオレフィン系樹脂が、エチレン/酢酸ビニル共重合体からなる樹脂層と高密度ポリエチレンからなるからなる樹脂層の複層構成であることを特徴とする請求項1に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記脆性ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚さが20μm〜70μmであって、前記基材樹脂フィルムの厚さが50μm〜150μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記基材樹脂フィルムの複層構成において、前記高密度ポリエチレンからなるからなる樹脂層の層比率が、該複層構成の全厚みに対し、30%以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が、放射線硬化性の(メタ)アクリル系粘着剤からなり、該(メタ)アクリル系粘着剤を構成するポリマーの側鎖長が炭素数で4以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−74201(P2013−74201A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213347(P2011−213347)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】