説明

脱水シートの製造方法

【課題】透水性に優れるとともにピンホールの発生が抑えられ、吸水に伴う大きな膨潤や収縮のないポリビニルアルコールフィルムを備えた脱水シートを提供する。
【解決手段】少なくとも一方がポリビニルアルコールフィルム11からなる2枚のフィルム間に、高浸透圧物質12が挟持された脱水シート10の製造方法において、ポリビニルアルコールフィルム11として、押出成形後に延伸処理され、さらに150〜250℃で熱処理された延伸ポリビニルアルコールフィルムを水処理したものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉や鮮魚などの食品の脱水に好適に使用される脱水シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉、鮮魚などの食品中の水分を脱水したり、食品を解凍した際に生じるドリップを吸水したりすることを目的として、高浸透圧物質を2枚の透水性フィルムで挟持し、封入した構成の脱水シートが広く使用されている(例えば特許文献1参照。)。
このような脱水シートに使用される透水性フィルムには、透水性が良好で、食品に密着しやすい柔軟性を備えていることが求められる。また、高浸透圧物質を2枚の透水性フィルム間に封入するにあたっては、通常、透水性フィルムの周縁部を互いにヒートシールする方法が採られるため、ヒートシール性が優れていることも求められる。さらに透水性フィルムには、封入された高浸透圧物質が洩れないためにピンホールが無いことも要求される。そこで、このような条件を満たしやすいものとして、透水性フィルムには厚み5〜50μmのポリビニルアルコールフィルムが一般に用いられている。以下、ポリビニルアルコールのことをPVAという。
【0003】
このような厚みのPVAフィルムの製造方法としては、粘度の高いPVA水溶液を押出成形により製膜した後、乾燥し、これを延伸処理して目的の厚みに調整し、加熱して成形する押出成形法と、回転するドラムまたはベルト上に、PVA水溶液をスリットを通して流延するか、ロールコーターによって塗布した後、水を蒸発させて熱処理し、製膜する溶液流延法が知られている。
【特許文献1】特開平1−130730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶液流延法により製造されたPVAフィルムは、押出成形法で製造されたものにくらべて透水性に優れるものの、これを脱水シートに使用した場合には、水分の吸収にともなってPVAフィルムが膨潤して伸びてしまうという問題があった。このように伸びてしまうと、そのPVAフィルムにはシワが生じ、このPVAフィルムに接している被脱水物の表面、すなわち食品の表面にシワが転写されてしまうことがあり、食品の外観が消費者に好まれないことがあった。
また、溶液流延法では、PVA水溶液を薄く流延したり塗布したりして製膜するため、得られたPVAフィルムにはピンホールが発生することがあった。ピンホールがあるPVAフィルムを脱水シートに用いると、脱水シートに封入された高浸透圧物質がピンホールから漏れてしまい、脱水シートがべたつくおそれがあった。
【0005】
一方、押出成形法で製造されたPVAフィルムは、厚みの大きなフィルムを延伸することで薄膜化するため、ピンホールは発生しにくいものの、透水性に劣り、これを用いた脱水シートは食品からの脱水速度が遅いという問題があった。
また、押出成形法で得られたPVAフィルムは水分の吸収にともなって大きく収縮しやすく、これを用いた脱水シートは使用中に食品の表面からはがれやすいという傾向もあった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、透水性に優れるとともにピンホールの発生が抑えられ、吸水に伴う大きな膨潤や収縮のないPVAフィルムを備えた脱水シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、押出成形後に延伸処理され、熱処理された延伸PVAフィルムを水処理することで、透水性が向上するとともに、吸水に伴う大きな収縮が抑制されることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明の脱水シートの製造方法は、少なくとも一方がPVAフィルムからなる2枚のフィルム間に、高浸透圧物質が挟持された脱水シートの製造方法において、前記PVAフィルムは、押出成形後に延伸処理され、さらに150〜250℃で熱処理された延伸PVAフィルムを水処理したものであることを特徴とする。
前記水処理の温度は10〜50℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透水性に優れるとともにピンホールの発生が抑えられ、吸水に伴う大きな膨潤や収縮のないPVAフィルムを備えた脱水シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法で製造される脱水シートの一例を示すものであって、この脱水シート10は、周縁部Sが互いにシールされた2枚のPVAフィルム11の間に、高浸透圧物質12が挟持されたものである。
そして、この脱水シート10を構成しているPVAフィルム11は、押出成形後に延伸処理され、さらに150〜250℃で熱処理された延伸PVAフィルムを水処理して得られたものである。
【0010】
このPVAフィルム11の製造方法の一例について、以下に具体的に説明する。
まず、PVA水溶液を用意し、これを押出成形して製膜した後、延伸処理し、さらに延伸による分子配向を固定するための熱処理を行って、延伸PVAフィルムを製造する。
ここでPVAとしては、公知の方法で製造されたものを使用できる。例えば、酢酸ビニルなどのビニルエステル系化合物と必要に応じて使用される他のビニル単量体とを公知の重合方法で重合してビニルエステル系重合体を製造した後、これを水酸化ナトリウムなどのアルカリによりケン化する方法が挙げられる。この場合、他のビニル単量体は、ビニルエステル系化合物との合計中、好ましくは0.5〜10モル%程度使用される。ケン化度は、90モル%以上であることが好ましい。
【0011】
また、PVAとしては、4質量%水溶液とした際のJIS K6726に準拠して測定される粘度が2.5〜100mPa・s(20℃)であることが好ましく、より好ましくは2.5〜70mPa・s(20℃)、さらに好ましくは2.5〜60mPa・s(20℃)である。このような範囲であれば、最終的に得られるPVAフィルム11のフィルム強度が優れるとともに、製膜性も良好となる。
【0012】
また、ケン化の際にアルカリとして水酸化ナトリウムを使用すると、得られたPVAには不純物として酢酸ナトリウムが含まれることがある。その場合、PVAの酢酸ナトリウム含有量は、最終的に得られるPVAフィルム11の耐熱性や着色防止の観点から、0.8質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0013】
PVA水溶液のPVA濃度には特に制限はないが、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%である。
また、この水溶液には、必要に応じて、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール類、フェノール系、アミン系などの抗酸化剤、リン酸エステル類などの安定剤、着色料、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤などの通常の添加剤が含まれてもよいし、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのポリビニルアルコール以外の水溶性樹脂が混合されてもよい。
【0014】
具体的な押出方法としては、Tダイを備えた押出機からPVA溶液をキャストロール上に押し出す方法が挙げられる。溶融混練温度は55〜140℃が好ましく、より好ましくは55〜130℃である。このような温度範囲であれば、フィルム肌が良好で、発泡のないフィルムを製膜できる。また、押出成形後には、好ましく70〜120℃、より好ましくは80〜100℃で乾燥処理する。このような温度範囲の乾燥処理であると、長時間を要することなく適度な乾燥が行える。こうして得られた延伸処理前の未延伸PVAフィルムの厚みは、好ましくは40〜1300μmである。
【0015】
ついで、延伸処理により、未延伸フィルムの厚みを好ましくは5〜50μmまで、より好ましくは10〜30μmまで薄膜化する。このような厚みに薄膜化することにより、最終的に得られるPVAフィルム11の透水性、柔軟性、ヒートシール性がより良好となる。その後、延伸処理による分子配向を固定するための熱処理を行うことにより、延伸PVAフィルムが得られる。
【0016】
延伸処理は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、透水性や柔軟性に優れた目的の厚さの延伸PVAフィルムが得られる点では、二軸延伸が好ましい。二軸延伸としては、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれも採用できる。また、二軸延伸の前には、押出成形で得られた未延伸フィルムの含水率を好ましくは5〜30質量%、より好ましくは20〜30質量%に調整しておくと、延伸倍率を十分に高めることができ好ましい。含水率の調整は、上述の乾燥処理の条件を適当に設定する方法や、含水率が5質量%未満のものを水浸漬、水噴霧するなどして水に接触させて、その含水率を5〜30質量%に調整する方法が挙げられる。
【0017】
延伸倍率には特に制限はないが、二軸延伸の場合には、縦方向(フィルムの押出方向)が好ましくは3〜5倍、より好ましくは3〜4.5倍であり、横方向が好ましくは3〜5倍、より好ましくは3〜4倍である。このような範囲であると、目的の厚さであって透水性や柔軟性に優れたPVAフィルム11が最終的に得られやすく、また、延伸処理中にフィルムが裂けたり破断したりするトラブルも起こりにくい。
【0018】
延伸処理後の熱処理は150〜250℃、好ましくは150〜230℃、より好ましくは160〜200℃で行う。150℃未満であると、十分な固定効果が得られず、最終的に得られるPVAフィルム11の寸法安定性が低下する。その結果、これを脱水シートに使用した場合、PVAフィルム11は吸水にともなって大きく収縮してしまう。一方、250℃を超えると、最終的に得られるPVAフィルム11の厚み変動が大きくなる場合や、このPVAフィルム11を使用して得られた脱水シートの透水性が低く、脱水速度が低下する場合がある。好ましい熱処理時間は1〜30秒間であり、より好ましくは5〜10秒間である。
【0019】
このように熱処理された延伸PVAフィルムをついで水処理することにより、延伸処理による分子配向が適度に緩和され、その結果、透水性に優れるとともに、吸水に伴う大きな収縮のないPVAフィルム11を得ることができる。また、こうして得られたPVAフィルム11は、押出成形により厚みの大きなフィルムを製膜した後、これを延伸して薄膜化したものであるため、ピンホールの発生も抑制されたものとなる。
【0020】
水処理の具体的な方法としては、例えば図2に示すように、熱処理後の延伸PVAフィルム11’を水温10〜50℃の水槽21に連続的に送り、浸漬する方法が好ましく例示できる。浸漬時間としては3〜180秒間が好ましく、より好ましくは10〜120秒間である。浸漬時間がこのような範囲であると、分子配向の緩和の程度が適度となり、透水性に優れるとともに、吸水に伴う大きな収縮のないPVAフィルム11が得られやすい。
【0021】
水処理の後には、PVAフィルム11の耐ブロッキング性を高めるなどの目的で、乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥方法としては、エアーシャワー22によりフィルム表面の水分を吹き飛ばす方法や、PVAフィルム11をニップロール23で挟持して水切りする方法、さらには、乾燥機24を使用する方法が挙げられ、図示例のようにこれらを順次行ってもよい。乾燥機24を使用する場合には、乾燥温度は40〜150℃が好ましく、より好ましくは60〜120℃である。また、乾燥時間は5秒〜5分間が好ましく、より好ましくは10秒〜3分間である。このような温度および時間であれば、乾燥不足や過乾燥によるフィルム加工性の低下がなく、適度な含水率で耐ブロッキング性にも優れたPVAフィルム11が得られる。耐ブロッキング性に優れたPVAフィルム11であれば、これを一旦巻き取って巻物状にした場合でも、フィルム同士が密着してしまい剥がす際に破損するなどのトラブルが起こりにくい。
【0022】
乾燥機24としては、金属ロールやセラミックロールなどの加熱ロールを備え、これにPVAフィルム11を直に接触させる方式のものも使用できるが、加熱された空気により乾燥される非接触型の乾燥機が好ましく、さらには、ヒーターとPVAフィルム11とが対向配置する形態の乾燥機よりも、加熱された空気がフィルムに吹き付けられる形態の熱風乾燥機が好ましい。
なお、水処理と乾燥処理の間には、PVAフィルム11の表面をシャワー水で洗浄する図示略のシャワーリング洗浄を行ってもよい。
【0023】
こうして得られたPVAフィルム11の一方の面上に高浸透圧物質12を載置し、さらにその上にPVAフィルム11を重ね、2枚のPVAフィルム11の周縁部Sを互いにシールして高浸透圧物質12を封入することにより、図1の脱水シート10が製造できる。
なお、この際、1枚のPVAフィルム11の上に高浸透圧物質12を間欠的に載置した後、さらにその上にPVAフィルム11を重ね、ついで間欠的に載置された各高浸透圧物質12を囲むように2枚のPVAフィルム11をシールして、高浸透圧物質12が内部に封入された脱水シート10の連続体を製造してもよい。この場合には、得られた連続体から各脱水シート10をカッターで切り離すことにより、周縁部Sがシールされその内部に高浸透圧物質12を有する個々の脱水シート10を得ることができる。
【0024】
高浸透圧物質12としては、食品中の水分や食品からのドリップを吸収可能な脱水能力を有したものであれば制限はなく、例えば、10気圧以上の浸透圧を有する水飴、砂糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、マンニトール、ソルビトール、還元水飴などの糖類の水溶液や、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。また、これらの高浸透圧物質12を使用する場合には、高浸透圧物質12が吸水した場合でも、一定の粘度を維持するように特公平4−33491号公報に開示されているような水溶液糊料を、高浸透圧物質12に添加して使用することが好ましい。
【0025】
また、PVAフィルム11の周縁部Sをシールする方法には特に制限はなく、接着剤を用いる方法の他、バーシーラー、インパルスシーラー、高周波シーラーなどのシーラーによりヒートシールする方法が挙げられる。
【0026】
このようにして製造された脱水シート10が具備するPVAフィルム11は、押出成形後に延伸処理され、熱処理された延伸PVAフィルム11’を水処理したものであるので、透水性に優れ、吸水に伴う大きな膨潤や収縮がなく、ピンホールの発生も抑制されている。よって、この脱水シート10によれば、PVAフィルム11の膨潤により生じたシワが被脱水物である食品の表面に転写され、食品の外観に影響を及ぼしたり、使用中に食品から剥がれたり、さらには、PVAフィルム11のピンホールから高浸透圧物質12が漏れて、べたつきを生じたりすることなく、高い脱水速度で食品を脱水したり食品解凍時のドリップを吸水したりできる。
【0027】
なお、以上の説明では、製造する脱水シート10としては、2枚のPVAフィルム11の間に高浸透圧物質12が挟持されたものを例示したが、少なくとも一方がPVAフィルム11であればよく、他方は他の透水性フィルムであってもよいし、非透水性のフィルムや台紙などであってもよい。
【0028】
また、上述の説明では、押出成形による製膜方法について、PVA水溶液をあらかじめ調製した後これを押出機に供給し、押し出す方法を例示したが、均一な混合が可能であれば、PVAと水と必要に応じて添加される他の成分とを押出機内にそれぞれ投入して、押出機内でPVAフィルム水溶液を調製し、これをそのまま押出成形してもよい。混合を均一にするには、例えば、押出機のL/Dを大きくしたり、多軸押出機を使用したり、ギアポンプを利用する方法などが挙げられる。また、PVA水溶液を一旦乾燥させてPVAのペレットやフレークを得てから、これを押出機で製膜してもよい。
さらに、得られたPVAフィルムを脱水シートに使用するにあたっては、PVAフィルムの表面をエンボス加工して、PVAフィルムに耐ブロッキング性を付与したり、意匠性を付与してもよい。耐ブロッキング性が向上すると、PVAフィルムを複数重ねた場合でもこれらは互いに密着せず、1枚ずつ取り出しやすくなる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
(PVAフィルムの製造)
PVA(4質量%水溶液の粘度が40mPa・s、ケン化度99.7モル%、酢酸ナトリウム含有量0.3%)40質量部を水60質量部に溶解させてPVA水溶液を調製し、このPVA水溶液をジャケット温度が60〜150℃に設定された二軸押出機型混練機(スクリューL/D=40)のホッパーから定量ポンプにより該混練機内に供給し、混練、吐出した。吐出量は500kg/hの条件とした。
ついで、この吐出物(PVA水溶液)を直ちに一軸押出機(スクリューL/D=30)に圧送し、温度85〜140℃にて混練後、Tダイより5℃のキャストロールに押出し、90℃の熱風乾燥機で30秒間乾燥し、含水率25質量%で厚みが150μmの未延伸PVAフィルムを得た。
ついで、これを縦方向に4倍延伸した後、テンターで横方向に4倍延伸する延伸処理を行い、さらに180℃×8秒間の条件で熱処理を行って、厚み14μmの延伸PVAフィルムを得た。
ついで、延伸PVAフィルムを30℃の水が入れられた水槽の中に30秒間浸漬して水処理し、PVAフィルムを得た。水処理後には、100ml/秒の水量のシャワー水によってPVAフィルム表面のシャワーリング洗浄を行った後、エアーシャワーにより幅3mmのスリットから50℃の空気を風速30m/分で吹き出し、PVAフィルム表面の水分を吹き飛ばし、さらに、PVAフィルムをニップロールで挟持して水切りした。その後、PVAフィルムを100℃に設定された熱風循環式乾燥機内に入れて2分間乾燥した。このPVAフィルムは、含水量が2.8質量%で厚みは14μmであった。
【0030】
(脱水シートの製造)
こうして得られたPVAフィルムに、高浸透圧物質として80質量%果糖ブドウ糖糖液を間欠的に塗布した後、その上にもう1枚同じPVAフィルムをかぶせた。なお、この糖液は、PVAフィルム11の53cm×37cmの部分に対して57gの割合で塗布された。
ついで、塗布された各糖液が封入されるように2枚のPVAフィルムを220℃、0.4秒、0.4MPaの条件で互いにヒートシールした。そして、ヒートシールされた部分を裁断して切り離すことにより、53cm×37cmの脱水シートを複数得た。
得られた脱水シート2枚でアジの開きを上下から挟み込み、4℃一晩放置して、アジの干物を得た。
【0031】
(評価)
以下の各評価を実施した。
1.吸水に伴う脱水シートの収縮率
アジの開きを挟む前と、アジの開きを挟んで4℃で一晩放置した後の脱水シートの縦と横の長さをそれぞれ測定し、収縮割合を求め、収縮率(%)として表に示す。なお、縦方向とは、PVAフィルムの押出方向であり、横方向とはそれに直角な方向である。
2.ピンホール
アジの開きを挟む前の脱水シート1000枚について、PVAフィルムにピンホールがないかどうか目視検査した。ピンホールが確認された脱水シートの枚数を表に示す。
3.アジの開きの脱水率
4℃で一晩放置したことによるアジの開きの減量を、一晩放置前のアジの開きの質量で除し、脱水率(%)として表に示す。
4.アジの開きの外観
4℃で一晩放置した後に脱水シートを剥がし、アジの開きの外観を目視で観察した。以下の基準で評価した結果を表に示す。
1:外観は試験前と同様であり良好である。
2:外観は試験前よりテカテカしているが良好である。
3:表面に脱水シート表面の皺が転写されている。
4:アジの開きの身が崩れている。
【0032】
[実施例2〜6]
水処理における水温および時間と、その後の乾燥処理における熱風循環式乾燥機の条件とを表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてPVAフィルムを製造し、脱水シートを製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
【0033】
[比較例1]
溶液流延法で製造された市販の厚み18μmの無延伸PVAフィルムを用いて、実施例1と同様にして脱水シートを製造し、評価した。結果を表に示す。
【0034】
[比較例2]
熱処理まで行い、水処理以降の処理を行わずにPVAフィルムを得た。なお、熱処理の条件は250℃×8秒間とした。それ以外は、実施例1と同様にしてPVAフィルムを製造し、脱水シートを製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
【0035】
[比較例3]
熱処理まで行い、水処理以降の処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてPVAフィルムを製造し、脱水シートを製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
【0036】
[比較例4]
比較例1で使用した無延伸PVAフィルムに対して、実施例1と同様にして水処理以降の処理を行った。これを使用した以外は実施例1と同様にして脱水シートを製造し、評価した。結果を表に示す。
【0037】
[比較例5]
熱処理の温度を270℃とした以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムを製造し、脱水シートを製造した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表に示すように、各実施例によれば、脱水シートに使用されたPVAフィルムの透水性が優れるために、高い脱水率の脱水シートを製造できた。また、これら脱水シートは、ピンホールの発生が抑えられ、吸水に伴う大きな収縮のないものであった。また、使用にともなって大きく膨潤しなかったために、シワも生じず、シワがアジに転写されるなどの外観低下も認められなかった。ただし、水処理が低温である場合や短時間である場合には、脱水シートがやや収縮し(実施例2、4)、水処理の温度が高い場合には、水処理中に延伸PVAフィルムがやや伸びる現象が認められた(実施例3)。また、水処理後の乾燥処理が低温である場合や短時間である場合には、得られたPVAフィルムはややブロッキングしやすい傾向があった(実施例5、6)。
一方、溶液流延法で製造されたPVAフィルムを使用した比較例1や比較例4の脱水シートは、使用により大きく膨潤してシワが生じ、アジの開きにシワが転写されてしまった。また、250℃で熱処理を行い、水処理を行わなかった比較例2では、透水性が悪く、脱水率が悪かった。比較例2より低温で熱処理を行い、水処理を行わなかった比較例3では、透水性はあるものの、使用に伴う脱水シートの収縮が大きく、アジの開きの身が崩れてしまった。また、熱処理が高温であった比較例5では、水処理を行っても透水性が向上せず、十分な脱水率が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明で製造される脱水シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法における水処理以降の工程の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0041】
10 脱水シート
11 PVAフィルム
12 高浸透圧物質


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方がポリビニルアルコールフィルムからなる2枚のフィルム間に、高浸透圧物質が挟持された脱水シートの製造方法において、
前記ポリビニルアルコールフィルムは、押出成形後に延伸処理され、さらに150〜250℃で熱処理された延伸ポリビニルアルコールフィルムを水処理したものであることを特徴とする脱水シートの製造方法。
【請求項2】
前記水処理の温度が10〜50℃であることを特徴とする請求項1に記載の脱水シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−276232(P2007−276232A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104057(P2006−104057)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】