説明

脱穀装置

【課題】脱穀装置において、扱残しや藁屑の発生を抑制し、駆動負荷を低減する。
【解決手段】扱胴を備えると共に該扱胴の外周に扱網を張設した扱室を設け、扱室の左右一側には該扱室に穀稈を供給する供給搬送装置を設け、扱室の供給搬送装置を設けた側とは反対の側に第一処理胴を備えた第一処理室を設け、該第一処理室の後側に、該第一処理室と連通し、第二処理胴を備える第二処理室を設け、扱室の下方には前後揺動しながら処理物を選別する揺動選別棚を設け、
前記扱室と第一処理室との間には、該扱室と第一処理室との間を扱網の目合いを介して連通させる取込口を設け、扱室と第二処理室との間には、該扱室の終端部と第二処理室の始端部との間を連通させる連通口を設け、前記取込口における扱網の目合いの大きさを、該扱網における取込口以外の部位の目合いよりも大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来コンバイン等に搭載される脱穀装置は、扱室の側方に処理室を併設し、脱穀処理物をこの扱胴と処理胴によって分散処理して、穀粒を揺動選別棚に落下させ、藁屑等を排塵室に引継ぐ構成としている。このような脱穀装置においては、扱室で発生した脱穀物の一部を処理室に送り込み、処理室に設けた処理胴によって、枝梗除去などの処理を行った後に、処理胴に備える還元羽根によって扱室に還元し、扱室の終端部に連通した排塵室に藁屑を送り込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−37901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示す技術においては、扱室の扱網及び処理室の選別網から漏下しなかった処理物が、扱室の後部において合流した後に、排塵室に引継がれる構成である。即ち、扱室において扱歯及び排塵調節板によって後方へ移送された処理物と、処理室において同様に移送されて還元羽根で扱室に撥ね出された処理物が合流するために、この合流部における扱胴と扱室内面との間の空間の処理物充填率が高まるため、穀稈に残った未脱粒の穀粒や、穀稈の束に刺さり込んだ穀粒を回収することができなくなる問題がある。また、合流部の処理物集中によっては、扱胴の駆動負荷の増大とそれに伴う扱室の詰まりを生じる虞があり、湿材や藁屑が発生しやすい品種においてはこの傾向は特に顕著となる。
【0005】
また、開口部を通じて常時一定比率の処理物が処理室に均分される構造であるため、扱室内に供給される穀稈が少ない場合は、扱室内の処理物量が極めて少ない状態となり、扱歯による穀稈の扱き作用が強すぎるために、藁屑が多量に発生して選別性能が低下する。
【0006】
本発明の課題は、扱室内の処理物充填率を適正な状態に保つことが可能な脱穀装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱胴(12)を備えると共に該扱胴(12)の外周に扱網(13)を張設した扱室(11)を設け、扱室(11)の左右一側には該扱室(11)に穀稈を供給する供給搬送装置(10)を設け、扱室(11)の供給搬送装置(10)を設けた側とは反対の側に第一処理胴(48)を備えた第一処理室(47)を設け、該第一処理室(47)の後側に、該第一処理室(47)と連通し、第二処理胴(50)を備える第二処理室(49)を設け、扱室(11)の下方には前後揺動しながら処理物を選別する揺動選別棚(30)を設け、前記扱室(11)と第一処理室(47)との間には、該該扱室(11)と第一処理室(47)との間を扱網(13)の目合いを介して連通させる取込口(53)を設け、扱室(11)と第二処理室(49)との間には、該扱室(11)の終端部と第二処理室(49)の始端部との間を連通させる連通口(58)を設け、前記取込口(53)における扱網(13)の目合いの大きさを、該扱網(13)における取込口(53)以外の部位の目合いよりも大きく設定したことを特徴とする脱穀装置とした。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記取込口(53)を遮蔽状態と開放状態とに切り換え可能な遮蔽板(55)を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とした。
請求項3記載の発明は、前記扱室(11)の内周に、該扱室(11)内の処理物の移送に抵抗作用を与える姿勢と送り作用を与える姿勢とに姿勢変更自在な送塵調節板(14)を設け、該送塵調節板(14)を抵抗作用を与える側に姿勢変更するほど、前記遮蔽板(53)が取込口(53)を遮蔽する方向に移動し、前記送塵調節板(14)を送り作用を与える側に姿勢変更するほど、遮蔽板(53)が取込口(53)を開放する方向に移動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置とした。
【0009】
請求項4記載の発明は、前前記第一処理室(47)の下部に設けた漏下網(52a)の目合いの大きさを、前記扱網(13)における取込口(53)以外の部位の目合いよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置とした。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記第二処理胴(50)の回転速度を第一処理胴(48)の回転速度よりも高速に設定したことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、扱室(11)と第一処理室(47)との間には、該扱室(11)と第一処理室(47)との間を扱網(13)の目合いを介して連通させる取込口(53)を設け、扱室(11)と第二処理室(49)との間には、該扱室(11)の終端部と第二処理室(49)の始端部との間を連通させる連通口(58)を設け、
前記取込口(53)における扱網(13)の目合いの大きさを、該扱網(13)における取込口(53)以外の部位の目合いよりも大きく設定したので、扱網(13)における取込口(53)以外の部位より漏下して、揺動選別棚(30)に向けて落下する処理物に含まれる來雑物の量を低減するとともに、扱室(11)側から扱網(13)の目合いを介して第一処理室(47)へ処理物を送り込むので、この扱網(13)の目合いを通過しない処理物を扱室(11)内に残し、処理物量が少ない場合でも扱室(11)における処理物の充填率を適度に保ち、扱室(11)内での藁屑の発生を抑制することができる。
【0012】
また、第一処理室(47)を第一処理室(47)の後側で第二処理室(49)と連通させた構成としているので、扱室(11)の後方部位において処理物量が過剰に増大することによる穀稈の扱ぎ残しを防止し、穀粒の回収率を高めることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、取込口(53)を遮蔽状態と開放状態とに切り換え可能な遮蔽板(55)を設けたことで、扱室(11)内の処理物量に応じて、扱室(11)から第一処理室(47)に送り込む処理物の量を変更することができ、扱室(11)内の処理物量が少なすぎるために藁屑が多量に発生したり、扱室(11)内の処理物量が増大して穀稈の扱ぎ残しが生じたりする虞がなく、脱穀効率を向上させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明の効果に加え、扱室(11)に送塵調節板(14)を設け、該送塵調節板(14)を抵抗作用を与える側に姿勢変更するほど、前記遮蔽板(53)が扱網(13)の前記取込口(53)に対応する部位を遮蔽する方向に移動し、送塵調節板(14)を送り作用を与える側に姿勢変更するほど、遮蔽板(53)が取込口(53)を開放する方向に移動する構成としたので、脱穀行程において、藁屑が発生しやすい作業条件や品種の場合に、送塵調節板(14)を処理物に送り作用を与える側に姿勢変更すると、それに伴い遮蔽板(53)が移動して取込口(53)を開放し、第一処理室(47)に処理物を分散させて、扱室(11)内の藁屑量を低減させることができ、脱穀効率が一層向上する。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加え、第一処理室(47)の下部に設けた漏下網(52a)の目合いの大きさを、前記扱網(13)における取込口(53)以外の部位の目合いよりも小さく設定したので、第一処理室(47)に送り込まれた大きな処理物が、第一処理胴(48)によって十分に壊砕されてから下方に落下することとなり、揺動選別棚(30)による選別効率を高めることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から4いずれか一項に記載の発明の効果に加え、第二処理胴(50)の回転速度を第一処理胴(48)の回転速度よりも高速に設定したので、第一処理室(47)から第二処理室(49)に藁屑を中心とする処理物を引継ぐにあたり、第二処理室(49)の始端部近傍での詰まりを生じにくく、作業能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの平面図
【図2】コンバインの側面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平断面図
【図5】別実施例の脱穀装置の平断面図
【図6】脱穀装置の背断面図
【図7】脱穀装置の背断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように本発明を実施するコンバインは、機体フレーム1の下側には左右一対のクローラ2、機体の上側に脱穀装置3を設け、該脱穀装置3の右側に貯留装置5とその前側の操作席6を設け、機体前方には刈取装置4を設ける。貯留装置5の後側には、該貯留装置5に一時貯留した穀粒を外部に排出する排出装置7を設けている。
【0019】
クローラ2により機体を進行させて、圃場に植立する穀稈を刈取装置4によって刈取って後方に配置された脱穀装置3へと搬送し、脱穀装置3で穀粒の脱粒処理を行って、穀稈(排稈)は細断して機体後方より圃場に放出し、脱粒した穀粒は貯留装置5に移送される。
(脱穀装置)
前記脱穀装置3は扱室11などを含む上部の脱穀部3aと、下部の揺動選別棚30等から成る選別部3bとで構成される。脱穀装置3の機体外側には穀稈の株元側を狭持して後方へ搬送する供給搬送装置10を備えている。
【0020】
この供給搬送装置10は、図示せぬ駆動スプロケット及び従動スプロケットの間に巻回され、常時張りのテンションローラによる押圧作用で適正な張力を保ちながら駆動スプロケットに入力される回転駆動力により駆動される供給搬送チェン10aと、この供給搬送チェン10aと対向した上側に設けた供給狭持杆10bとにより構成している。供給狭持杆10bは、下向き付勢力により、供給搬送チェン10aとの間で搬送穀稈を挟み込むようにしている。
(脱穀部概要)
脱穀部3aには、図3に示すように、供給搬送装置10に隣接して設けた扱室11、この扱室11の供給搬送装置との左右反対側に設けた第一処理室47及び該第一処理室47の後方に設けた第二処理室49とを設けている。
(扱室)
複数の扱歯12aを植設した扱胴12を有する扱室11は、下半周部に扱網13を張設し、上半周部は脱穀装置3の前記供給搬送装置10と反対側を支点に上方回動し、扱室11の上側を開放可能に構成している。
【0021】
扱室11の後方部位であって、前記第一処理室47及び第二処理室49側の側部には、第二処理室49への連通口58を形成している。
扱室11の下部に設けた扱網13の中間位置には、扱網13より扱胴12の軸心方向に向けて立上げた複数の仕切板15を前後方向に適宜間隔を空けて設けている。本実施例では、扱室11の前端より、前後方向長さのおよそ3分の1の位置に第一仕切板15aを設け、前記連通口58の直前位置に第三仕切板15cを設けて、両仕切板15a,15cの前後方向中間位置に第二仕切板15bを設けている。
【0022】
また、扱室11の内周上側には扱室内の処理物(単粒化された穀粒と枝梗付着粒、及び藁屑の混合物)への送り作用または抵抗作用を与える排塵調節板14を前後方向に複数配置しており、これらは排塵調節レバー17によって扱胴12の回転軸心方向に対する角度を調節可能としている。排塵調節レバー17を操作して、排塵調節板14における扱胴の回転上手側部位を扱胴12の軸心方向後方寄りとすると、処理物に移送抵抗をかける状態となる。それとは反対に、排塵調節板14における扱胴の回転上手側部位を扱胴12の軸心方向前方寄りとすると、処理物に送り作用を与える状態となる。
【0023】
なお、扱胴11はコンバインの進行方向からみて時計回りに回転する。
扱室11に供給された穀稈は、穀稈搬送方向の上手側からみて時計回りに回転する扱胴12により脱穀される。扱室11内の穀稈は該扱室11に供給されてから全長の3分の1程度の移送行程において大半の穀粒が脱粒し、残りの行程は、脱粒した穀粒と脱穀行程で発生した藁屑とが混ざり合った塊状の処理物を壊砕すると共に、未脱粒の穀粒を脱粒させる。
(第一処理室)
第一処理室47には、線状の処理歯51を設けた第一処理胴48を軸装している。第一処理室47は、側方の扱室11から受網13を通過した処理物を受け、処理物の壊砕と、枝梗付着粒の単粒化を行う。第一処理胴48は扱胴12と同じく、コンバインの前方からみて時計回りに回転する。
【0024】
処理歯51は、先端に凸型の線状の歯である。この処理歯51は、板体で構成することもできる。
第一処理室ケーシング52で周囲を覆った第一処理室47は、扱室11側の側部を、扱室11からの処理物を受入れる取込口53を開口させて、その取り込み口の下部に無孔の案内板54と、第一処理胴48の回転軌跡に沿うように円弧状の漏下網52aを設けている。第一処理室ケーシング52の内面には藁屑を微細化したり穀粒の枝梗を除去するために切刃を設けてもよい。また、扱室11に設けた送塵調節板14と同様に第一処理室47内の上部に傾斜変更自在な送塵板を設けてもよい。
【0025】
なお第一処理室47を前方ほど第一処理胴48の軸芯に垂直な面における断面積が減少するテーパ形状や、後方ほど第一処理胴48の軸芯に垂直な面における断面積が減少するテーパ形状とした構成を取ることもできる。
(第一処理室の取込口)
前記扱室11に設けた扱網13のうち、第一処理室47の取込口53に対応する部位の連通網部13bは、連通網部13bよりも扱胴12の回転方向上手側の漏下部13aよりも網の目合いを粗いものとしている。
【0026】
すなわち、扱室11で発生した穀粒のうち、目合いが細かい漏下部13aの網によって、単粒化されたもののみを下方の揺動選別棚30に落下させ、この漏下部13aを通過しなかった処理物、すなわち、枝梗付着粒や藁屑等を連通網部13bより第一処理室47に送り込むようにしている。
【0027】
従来、脱穀装置3に供給される穀稈の量が多いと、扱室11内の処理物量の増加により扱網13と扱胴との間の処理物及び穀稈の充填密度が過剰に高まり、藁屑が大量に発生して脱穀負荷が増大し、選別精度の低下を招く問題があり、扱室11内の処理物が非常に少ない場合、扱歯12aにより穀稈を扱き過ぎるために多量の藁屑が発生する。しかしながら、扱室11と第一処理室47とを扱網13を介して連通させているため、第一処理室47に適切な量の処理物を送り込むことができる。また、連通網部13bの目合いを漏下部13aよりも大きくしているため、漏下部13aを通過する処理物に占める単粒の割合を増加させることができ、揺動選別棚30による選別精度が高まる。そして夾雑物を多く含んだ処理物を扱室11と第一処理室47で分散して処理することによって、脱穀装置3全体の最大処理能力を高めることができる。
【0028】
また、第一処理胴48の回転速度は前記扱胴12の回転速度よりも高速に設定している。
(取込口開度調節機構)
第一処理室47の取込口53は開口面積を変更自在な構成としている。
【0029】
具体的には、扱網13の外周面に摺接可能な遮蔽板55を上下移動させて扱室11からの処理物が通過可能な面積を変更する。なお、この遮蔽板55は、前記排塵調節レバー17にワイヤー56を介して連繋させている。このワイヤー56が引かれることで、遮蔽板55が上方移動し、ワイヤー56が弛むとスプリング57の弾性により、下降復帰する。
【0030】
排塵調節板14を処理物に送り作用を与える方向に調節すると、遮蔽板55は上方に移動し、取込口53が大きく開口する。よって、扱室11で発生した藁屑や塵埃を円滑に第一処理室47へ導くことができる。しかして、扱室11と第一処理室47とに処理物を分散して、処理負荷を軽減するとともに、扱室11における穀稈の扱残しを防止することができる。
【0031】
また、排塵調節板14を処理物に抵抗作用を与える方向に調節すると、下降移動する。すなわち、遮蔽板55が取込口53を閉鎖する方向へと移動し、藁屑が少ない作業条件において扱室11内の穀粒充填率を適正に保って、枝梗除去が促進されると共に、藁屑の発生を抑制するので、脱穀効率が向上するのである。
(第二処理室)
第二処理室49は、その搬送上手側である前方の側部で扱室11と連通口58で接続した処理室であり、この第二処理室49の前端部は第一処理室47と繋がっている。第二処理胴50に巻き掛けた螺旋状の排塵処理歯50aと、第二処理室49の終端部に対応する第二処理胴50の部位の羽根板50bとによって、藁屑の細断を行って揺動選別棚30のストローラック34上に放出する。
【0032】
第二処理胴50は前記第一処理胴48よりも高い回転速度で駆動する構成としている。これにより、第一処理室47と第二処理室49の引継部での詰まりが生じず、処理物を円滑に移送することができる。
【0033】
第二処理胴50は第一処理胴48と一体的に設けることもでき、一体とすることで、第一処理胴48及び第二処理胴50の駆動機構を簡素化することができる。
(脱穀部での処理物の流れ)
しかして、扱室11で発生した処理物のうち、単粒化された穀粒は下方の揺動選別棚30に落下し、枝梗付着粒や小さな藁屑は、取込口53を通過して第一処理室47に取込まれ、枝梗除去等の処理を行う。一方、扱室11内の大きな藁屑は連通口58より第二処理室49に送り込まれる。二番処理室47に取り込まれた処理物のうち、穀粒や小さな藁屑は漏下網52aより揺動選別棚30に落下するのであるが、扱室11と同じく網より漏下しないものは、第二処理室49に引継がれる。
(扱胴及び処理胴における送り速度)
前記第一処理室47における送り速度は扱室11の送り速度よりも速く設定している。また、第二処理室49の送り速度は第一処理室47よりも遅く設定している。すなわち、第一処理室47内の処理物は、穀粒が多く含まれ、処理物充填率が高くなりすぎると損傷粒が発生する虞があるが、送りを早めることで、密度を下げて、脱穀選別後の穀粒の品質を向上させることができる。また、第二処理室49内の処理物は大半が藁屑であり、この藁屑の充填率を高くすることで、排塵処理歯50aによって藁屑を確実に細断できるのである。
【0034】
ここで言う送り速度とは、処理胴又は扱胴の回転によって処理胴や扱胴の軸心方向に処理物を移送する速度をいい、処理歯或いは扱歯の回転方向に対する傾斜角度と、歯の先端周速度によって定まるものであり、扱歯又は処理歯の周速度の扱胴又は処理胴軸芯方向成分である。
(第一処理室及び第二処理室の別実施例)
図5に示す如く、第一処理室47の終端部を前後方向で前記連通口58に対応する部分まで延長した構成とし、第二処理室49を連通口58の後方から脱穀装置3の後端部までの長さで設けた構成としてもよく、これによると、第一処理室47の処理能力が向上するため、穀粒を効率的に単粒化できる。
(選別部)
選別部3bは前記脱穀部3aの下側に、前後の往復運動によって穀粒を篩い選別する揺動選別棚30を設けて、この揺動選別棚30は穀稈の搬送方向上手側から移送棚31、第一シーブ32、第二シーブ33、ストローラック34を順に設け、第一シーブ32及び第二シーブ33の下側位置には精選別網42を設けて構成する。揺動クランク軸には脱穀装置3のフィードチェン10側より回転駆動力を入力され、揺動選別棚30を駆動する。
【0035】
移送棚31は前後方向複数の左右方向に一様な移送突起を設け、前記扱網13より漏下した穀粒と前記二番処理胴19の前端から放出される二番還元物を後方に移送する。第一シーブ32は脱穀部3aの扱室11の終端部近傍位置と対応する位置まで設け、移送棚31より引き継いだ被処理物を篩い選別し、下方の精選別網42へ穀粒のみを落下させる。第二シーブ33は前記第一シーブ32よりも所定高さ低い位置に設置している。前記第一シーブ32及び第二シーブ33は各シーブ板32a,33aの傾斜角度を変更し、漏下隙間を自在に調節できる。具体的には、支点ピン43aを中心に回動する調節アーム43の先端部43bをワイヤにより押し引き操作することで、連結バー44が前後移動し、これによって、揺動選別棚30に上側を回動自在に支持した第一シーブ板32a及び第二シーブ板33aの下側を一体的に前後移動させてこれらシーブ板32a,33aの傾斜角度を変更するべく構成している。
【0036】
ストローラック34は上縁を凹凸形状とし、左右方向に複数設けており、基端を第二シーブ33の後方で、揺動選別棚30の左右両側板に固定して、先端は自由端としている。
選別部3bの下部は選別風を起風する唐箕35を設け、選別風送風方向の下手側へ順に、唐箕35を包囲する唐箕ケーシング36の後方に開口した送風口近傍の風向板41、主に単粒化した穀粒を回収する第一集穀樋37と後上がり傾斜面によって落下してきた被処理物を一番集穀樋37に案内する一番棚板38、枝梗付着粒や來雑物を多く含む被処理物を前記揺動選別棚30の前側に還元する二番集穀樋39と二番棚板40を設けている。
【0037】
二番集穀樋39に取り込まれた二番物(枝梗付着粒や藁屑を中心とする処理物)は、揚穀装置(図示省略)によって揺動選別棚30に還元される。
この二番物は扱室11に還元する構成としてもよい。
【0038】
前記揺動選別棚30の後部上側には、唐箕35の選別風送風方向略延長線上の位置に排塵ファンケーシング46の吸塵口46aを開口した排塵ファン45を設けており、唐箕35の選別風によって巻き上げられた藁屑や塵埃を機外後方へと排出する。
【符号の説明】
【0039】
10 供給搬送装置
11 扱室
12 扱胴
13 扱網
14 送塵調節板
47 第一処理室
48 第一処理胴
49 第二処理室
50 第二処理胴
52a 漏下網
53 取込口
55 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(12)を備えると共に該扱胴(12)の外周に扱網(13)を張設した扱室(11)を設け、扱室(11)の左右一側には該扱室(11)に穀稈を供給する供給搬送装置(10)を設け、扱室(11)の供給搬送装置(10)を設けた側とは反対の側に第一処理胴(48)を備えた第一処理室(47)を設け、該第一処理室(47)の後側に、該第一処理室(47)と連通し、第二処理胴(50)を備える第二処理室(49)を設け、扱室(11)の下方には前後揺動しながら処理物を選別する揺動選別棚(30)を設け、
前記扱室(11)と第一処理室(47)との間には、該扱室(11)と第一処理室(47)との間を扱網(13)の目合いを介して連通させる取込口(53)を設け、
扱室(11)と第二処理室(49)との間には、該扱室(11)の終端部と第二処理室(49)の始端部との間を連通させる連通口(58)を設け、
前記取込口(53)における扱網(13)の目合いの大きさを、該扱網(13)における取込口(53)以外の部位の目合いよりも大きく設定したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記取込口(53)を遮蔽状態と開放状態とに切り換え可能な遮蔽板(55)を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記扱室(11)の内周に、該扱室(11)内の処理物の移送に抵抗作用を与える姿勢と送り作用を与える姿勢とに姿勢変更自在な送塵調節板(14)を設け、該送塵調節板(14)を抵抗作用を与える側に姿勢変更するほど、前記遮蔽板(53)が取込口(53)を遮蔽する方向に移動し、前記送塵調節板(14)を送り作用を与える側に姿勢変更するほど、遮蔽板(53)が取込口(53)を開放する方向に移動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記第一処理室(47)の下部に設けた漏下網(52a)の目合いの大きさを、前記扱網(13)における取込口(53)以外の部位の目合いよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記第二処理胴(50)の回転速度を第一処理胴(48)の回転速度よりも高速に設定したことを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139120(P2012−139120A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292129(P2010−292129)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】