説明

脱穀装置

【課題】送塵ガイドの初期回動位置を容易に設定することができるとともに、各複数の送塵ガイドが、それぞれが処理物からの負荷に応じて個々に回動する脱穀装置を提供することを課題としている。
【解決手段】扱室13内を流動する処理物を案内する送塵ガイド27を、扱室13の上方側に回動自在に複数備え、各送塵ガイド27を初期回動位置に弾性的に付勢する弾性部材29と、送塵ガイド27の初期回動位置を設定する設定機構31とを設けた脱穀装置において、設定機構31が、送塵ガイド27の初期回動位置の設定変更に連動して可動する可動部材28を備え、送塵ガイド27側と接当して弾性部材29が付勢する側への該送塵ガイド27の回動を規制する接当部39a,57,59を、送塵ガイド27毎に各別に可動部材28に設け、送塵ガイド27と接当部39a,57,59との接当によって、該送塵ガイド27の初期回動位置が定められる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室内を流動する処理物を案内する送塵ガイドを備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内を流動する処理物に接触することにより該処理物を案内する送塵ガイドを、脱穀処理が行われる扱室の上方を覆う天板側に回動自在に複数備え、各送塵ガイドを処理物の流動に抗する側に弾性的に付勢する弾性部材と、全送塵ガイドの初期回動位置を設定する設定機構とを設けた特許文献1に示す脱穀装置が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−237634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、全送塵ガイドの初期設定位置を一体的に変更設定することができる一方で、処理物の接触により送塵ガイドが負荷を受けた場合に、全送塵ガイドが処理物の流動する側へ一体的に回動するため、回動作動する必要の無い送塵ガイドまで一緒に回動し、脱穀処理の効率が下がる場合がある。
【0005】
本発明は、送塵ガイドの初期回動位置を容易に設定することができるとともに、各複数の送塵ガイドが、それぞれが処理物からの負荷に応じて個々に回動する脱穀装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の脱穀装置は、扱室13内を流動する処理物に接触することにより該処理物を案内する送塵ガイド27を、脱穀処理が行われる扱室13の上方を覆う天板18側に回動自在に複数備え、各送塵ガイド27を初期回動位置に弾性的に付勢する弾性部材29と、送塵ガイド27の初期回動位置を設定する設定機構31とを設けた脱穀装置において、設定機構31が、送塵ガイド27の初期回動位置の設定変更に連動して可動する可動部材28を備え、送塵ガイド27側と接当して弾性部材29が付勢する側への該送塵ガイド27の回動を規制する接当部39a,57,59を、送塵ガイド27毎に各別に可動部材28に設け、送塵ガイド27と接当部39a,57,59との接当によって、該送塵ガイド27の初期回動位置が定められることを特徴としている。
【0007】
第2に、弾性部材29を、送塵ガイド27毎に各別に設け、弾性部材29の一端を送塵ガイド27側に連結するとともに弾性部材29の他端を可動部材28側に連結したことを特徴としている。
【0008】
第3に、接当部39a,57,59に接当した送塵ガイド27の上記付勢力に抗する側の回動を規制する状態と、付勢力に抗する側の回動を許容する状態とに切換可能な規制部材54を設けたということを特徴としている。
【0009】
第4に、上記処理物に接触することにより該処理物を案内する固定送塵ガイド56を天板18側に回動自在に設け、設定機構31によって回動位置が決定されるように前記固定送塵ガイド56を可動部材28に連結し、固定送塵ガイド56が設定機構31により設定された回動位置で保持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、送塵ガイドの初期回動位置を設定する設定機構を設けた場合でも、処理物からの負荷が高くなった際には、接当部の構成によって、複数の送塵ガイドが弾性部材の付勢力に抗して各別に回動可能であるため、より効率的な脱穀処理が可能になるとともに、各送塵ガイドの初期回動位置の設定も迅速且つ容易に行うことができる。
【0011】
また、弾性部材を、送塵ガイド毎に各別に設け、弾性部材の一端を送塵ガイドに連結するとともに弾性部材の他端を可動部材に連結すれば、初期回動位置を設定機構によって変更した場合でも、それに連動して、可動部材とともに弾性部材の他端側も移動することにより、弾性部材の送塵ガイドへの付勢力を一定に保持することができるため、弾性部材の付勢力の設定が容易になる。
【0012】
さらに、接当部に接当した送塵ガイドの上記付勢力に抗する側の回動を規制する状態と、付勢力に抗する側の回動を許容する状態とに切換可能な規制部材を設ければ、送塵ガイドを、状況に応じて初期回動位置で、保持させることが可能になるため、汎用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した自脱式コンバインの平面図である。
【図2】脱穀装置の側面図である。
【図3】ガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【図4】ガイド機構の正面図及び送塵ガイド周辺の矢視図である。
【図5】実施例2のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【図6】実施例2のガイド機構の正面図及び送塵ガイド周辺の矢視図である。
【図7】実施例3のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【図8】実施例4のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【図9】実施例5のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【図10】実施例6のガイド機構の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明を適用した自脱式コンバインの平面図であり、図2は、脱穀装置の側面図である。本コンバインは、走行部である左右一対のクローラ(図示しない)に支持された走行機体1と、該走行機体1の前方側に昇降自在に連結された前処理部2とを備え、該走行機体1は、進行方向左(左)側に配置される穀稈の脱穀作業を行う脱穀装置3と、右部の後半部の穀粒を収容するグレンタンク4と、後端部右側のグレンタンク4内の穀粒を機体外側へ排出するオーガ6と、後端側から排藁等を排出する排出部7とを有している。
【0015】
本コンバインでは、前記前処理部2により刈取られて後方搬送された穀稈が、脱穀装置3の外側側部に沿う前後方向の脱穀フィードチェーン7の前端側に渡される。この脱穀フィードチェーン7は、穂先側が脱穀装置3内に挿入されるように、受取った穀稈の株元側を保持して後方搬送する。この後方搬送過程で、穀稈の脱穀処理が行われる。
【0016】
脱穀処理された処理物は、選別室8で、藁屑等の排塵物と穀粒とに選別され、藁屑は走行機体1の後端部から機外に排出される一方で、穀粒は上記グレンタンク4内に搬送収容される。また、脱穀処理されて排藁となった穀稈は、排藁搬送体9に渡されて走行機体1後端側の後処理部11まで搬送され、そのまま又は後処理部11で切断処理され、機外に排出される。ちなみに、後処理部11で切断処理された処理物は、拡散ラセン12によって、圃場にムラなく排出される構成となっている。
【0017】
次に、図2に基づき、脱穀装置の構成について詳述する。
脱穀装置3は、株元側が保持される穀稈の穂先側が挿入される扱室13と、扱室13の真下側に位置する選別室8とが設けられ、扱室13において穀稈の脱穀処理を行うとともに、選別室8において処理物の選別処理を行う。
【0018】
前記扱室13内は、外周面に多数の扱歯14が突出形成された円柱状の扱胴16が前後方向を向いた姿勢で、前後方向の扱胴軸回りに回転駆動可能に支持され、扱胴16の真下側には、扱胴16の外周に沿って下方に窪むように円弧面状に形成された受網17が配置されている。また、該扱室13の上方側は脱穀カバー18(天板)で開閉自在に覆われている。
【0019】
該構成により、穂先側が扱室13の前端側から挿入された刈取穀稈は、脱穀フィードチェーン7により後方搬送されて、この後方搬送時に、正転方向に回転駆動される扱胴16によって、穀稈が扱降されて脱穀処理される。脱穀処理された処理物は、扱胴16の軸回り方向に沿って後方側に螺旋状に移動し、該扱胴16の下方側に配置された受網17によって受止められ、受網17等から選別室8内に漏下する。なお、脱穀カバー18には、上記扱室13内を流動する処理物と接触することにより、該処理物の後方側への送り速度を変化させるガイド機構19が設けられている。このガイド機構19の詳細については後述する。
【0020】
前記選別室8は、前記受網17を通過した処理物を揺動選別する揺動選別体21と、選別風を送風する唐箕ファン22とを備えている。これにより、受網17から落下してきた処理物は、揺動選別体21により選別されつつさらに下方に漏下される。
【0021】
漏下した前記処理物は、唐箕ファン22によって起風される後方斜め上方の選別風によって、選別風の影響を殆ど受けること無く選別室8の前側に落下する1番物と、選別風の影響を若干受けて一番物よりも後方に落下する2番物と、選別風の影響を受けて選別室8の後端上方側まで吹飛ばされる排塵物とに選別される。該1番物は、穀粒として、揚穀ラセン23によって穀粒を貯蔵するグレンタンク4まで搬送され、該グレンタンク4内に収容される。また、前記2番物は、揚穀ラセン23後方の還元ラセン24によって処理胴(図示しない)を介して揺動選別体21に還元されて再び選別される他、排塵物は、吸引排塵ファン26等によって、走行機体1の後端側から機外に排出される。
【0022】
次に、図3及び図4に基づき、ガイド機構の構成について説明する。
図3は、ガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図であり、図4は、ガイド機構の正面図及び送塵ガイド周辺の矢視図である。ガイド機構19は、扱室13の脱穀カバー18側に回動自在に支持される複数の送塵ガイド27(図示する例では4つ)と、各送塵ガイド27に当接する可動プレート28(可動部材)と、送塵ガイド27を付勢する弾性部材29と、扱胴16の軸芯方向である前後方向に変位させることにより送塵ガイド27の初期位置を設定する設定機構31とを備えている。
【0023】
前記各送塵ガイド27は、脱穀カバー18の扱室側面(内面)側に配置されるガイド板32と、前記脱穀カバー18に対して垂直方向に延びて該脱穀カバー18に挿通された回動軸33と、該回動軸33を回動自在に脱穀カバー18側に軸支する軸受34と、脱穀カバー18の外面側に配置された作用部材である作用アーム36とを備えている。
【0024】
ガイド板32は、回動軸33に直接取付固定され、作用アーム36は、回動軸33に外装される筒状の固定部材38を介して回動軸33に取付固定されており、ガイド板32と作用アーム36の両部材は、同一方向を向いた状態で、回動軸33の軸回りに一体回動するように構成されている。この際の回動方向は、扱胴16の軸芯方向である前後方向に設定される。
【0025】
ちなみに、固定部材38の構成を詳述すると、軸受34の外側リングが脱穀カバー18に固定され、脱穀カバー18外面側への抜けが防止された状態の回動軸33が軸受34の内側リングに挿通されている。回動軸33の外周を覆うスリーブ状の上記固定部材38は、その一端が上記内側リングに当接し、他端にワッシャ39が配置されている。回動軸33の軸方向に延びるボルト37によって、該ワッシャ39を回動軸33側に押付けるようにボルト固定することにより、回動軸33の脱穀カバー18内面側への抜けが防止された状態で、固定部材38及び作用アーム36が、回動軸33に取付固定される。
【0026】
上記ガイド板32は、扱胴16の軸回り方向に沿う左右方向に延びるアングル状部材である。さらに具体的には、ガイド板32は、脱穀カバー18内面に対して交差方向(さらに具体的には直交方向)を向いた接触面32aと、脱穀カバー18と平行な状態で対向する対向面32bとを有している。
【0027】
前記可動プレート28は、平面視で、複数の作用アーム36(送塵ガイド27)の上側を通過する方形状に成形されるとともに、正面視L字型に屈曲されたアングル状部材であり、その長手方向が、扱胴16の軸芯方向である前後方向に向けられている。また、可動プレート28の送塵ガイド27が通過する各箇所には、融通孔39が穿設されており、複数の各融通孔39は、その融通孔39を通過している作用アーム36の回動支点である回動軸33を中心とした円弧状に形成されている。各作用アーム36における支持端と反対側の先端部には、作用ピン41が上方に向かって一体的に突設されており、この作用ピン41が融通孔39に挿通されることにより、該作用アーム36が可動プレート28に連係(さらに具体的には連結)されている。
【0028】
このような構成から、融通孔39を作用ピン41が移動する範囲に、各送塵ガイド27の回動範囲が制限される。ちなみに、該作用ピン41の突出端側には、融通孔39からの抜けを防止するための抜け防止ピン(Rピン)が挿通されている。
【0029】
前記弾性部材29は、コイル状の引張スプリングであって、送塵ガイド27毎に各別に設けられている。この引張スプリング29の一端が、作用アーム36の作用ピンと反対側の端部に取付けられる一方で、引張スプリング29の他端が、脱穀カバー18側(脱穀装置3のフレーム側)に固定された固定部20に取付けられている。
【0030】
この引張スプリング29によって、各作用アーム36(送塵ガイド27)は、処理物が扱室13内の前側から後側に向かって流れる方向である処理物の流動方向に対して、処理物の流動に抗する側(処理物の後方への流れを抑制する側)に回動するように付勢されている。
【0031】
前記可動プレート28は、上述の設定機構31によって、前後位置が定められる。このようにして可動プレート28が位置決め固定されると、引張スプリング29の付勢力によって、ガイド板32が、処理物の流動に抗する側(処理物の後方への流れを抑制する側)に最大限回動されるとともに、作用アーム36の作用ピン41が、融通孔39における処理物の流動に抗する側(処理物の後方への流れを抑制する側)の端部である後端側に当接し、これによって、送塵ガイド27が該回動位置(初期回動位置)で位置決めされて係止する。
【0032】
すなわち、融通孔39は、可動プレート28が前後に位置決めされた状態で、送塵ガイド27の回動範囲を規定する他、この融通孔39における処理物の流動に抗する側(処理物の後方への流れを抑制する側)の端部は、送塵ガイド27に当接することにより該送塵ガイド27の初期回動位置を定める当接部39aとして機能している。言換えると、この当接部39aは、可動プレート28に送塵ガイド27毎に各別に設けられ、この当接部39aは、送塵ガイド27の引張スプリング29が付勢する側への回動を禁止(規制)するとともに、送塵ガイド27の引張りスプリング29の付勢に抗する側への回動を許容するように構成されている。この他、複数の送塵ガイド27は、初期回動位置に回動された際、互いに同一姿勢となるように構成されている。
【0033】
ちなみに、各作用アーム36には、引張スプリング29の上記一端を取付けるための取付孔43が、自身の長手方向に沿って、複数穿設されており、その付勢力が、送塵ガイド27毎に個別に設定できるように送塵ガイド27を構成している。
【0034】
前記設定機構31は、上述の構成から、可動プレート28の位置を、扱胴16の軸芯方向である前後方向に変更することにより、各送塵ガイド27の初期回動位置を変更設定するように構成されている。具体的には、設定機構31が、前記可動部材28と連結される細長い平板状の初期位置設定レバー44と、脱穀カバー18側に固定されて複数の切欠き状の係止部45を複数有する板状の係止部材46とを備えている。
【0035】
上記初期位置設定レバー44は、前記可動部材28側に延出した板状のアーム部47と、作業者が初期位置設定を設定する際に把持するレバー部48と、前記係止部材46の複数の係止部45の何れかに挿入係合されるアングル状の係止片49と、レバー部48とアーム部47とを連結する板ばねよりなる連結部51とから構成されている。具体的には、前記レバー部48の一端側と前記係止片49と、連結部51の一方側半部とがボルトで共締めされ、連結部51の他方側半部とアーム部47の一端側とがボルトで共締めされることによって、初期位置設定レバー44が形成されている。
【0036】
上記初期位置設定レバー44のアーム部47は、支持ピン52によって、扱胴16の軸芯方向に揺動自在に、脱穀カバー18側に支持され、連結ピン50によって、可動プレート28に回動自在に連結されている。なお、該支持ピン及び連結ピンの突出端側は、抜けを防止するための抜け防止ピン(Rピン)が挿通されている。
【0037】
該構成により、初期位置設定レバー44を前後方向に揺動操作すると、これに伴って、可動プレート28が前後方向に変位することにより、複数の各送塵ガイド27の初期回動位置が変更される。そして、初期位置設定レバー44の係止片49を、係止部材46の対応する切欠き状の係止部45に挿入して係止することにより、可動プレート28の前後位置が固定される。ちなみに、上記連結部49である板ばねの付勢力によって、係止片49が確実に係止部45に係止せしめられ、可動プレート28の前後位置(送塵ガイド27の初期回動位置)が確実に定められる。この他、この板ばねの付勢力に抗して、初期位置設定レバー44を係止部材46から離間する側に弾性的に湾曲変形させると、初期位置設定レバー44の係止部材46での係止が解除され、可動プレート28の前後位置が再び変更可能な状態になる。
【0038】
当該構成によるガイド機構19の作用について説明すると、初期位置設定レバー44の揺動操作に伴って可動プレート28が前後方向に移動し、これによって、全ての送塵ガイド27がまとめて回動され、この際に、初期位置設定レバー44を、係止部材36の近接する係止部45に係止させて固定することにより、送塵ガイド27の初期回動位置を定める。ちなみに、係止部材36の係止部45の数(図示する例では9つ)と同数段階分、送塵ガイド27の初期回動位置を定めることができる。すなわち、単一の操作具である初期位置設定レバー44によって、全ての送塵ガイド27の初期回動位置をまとめて変更設定できるため、利便性が高い。
【0039】
これにより、前記設定機構31の初期位置設定レバー44を操作することで、送塵ガイド27を最も閉じた側へ操作した状態を示す図3のように送塵ガイド27が処理物の流動に抗する側(処理物の後方への流れを抑制する側)であって扱胴16の軸回り方向に対して傾斜する状態と、送塵ガイド27が扱胴16の軸芯方向に対して平行となる状態と、処理物の流動する側(処理物の後方への流れを促進する側)であって扱胴16の軸回り方向に対して傾斜した状態とにそれぞれ変更・設定することができる。そのため、枝梗が多い材料の場合は各送塵ガイド27の初期位置を閉じ側(処理物の後方への流れを抑制する側)に回動させて処理物の脱穀処理能力を上げ、切れ藁が発生し易い材料の場合は送塵ガイド27の初期位置を開き側(処理物の後方への流れを促進する側)に回動させて藁屑が滞留して処理物の漏下が妨げられつつ機外に排出されることを防止することができる。
【0040】
さらに、初期位置設定された複数の送塵ガイド27は、当接部39aの構成によって、それぞれ各別に引張スプリング29の付勢に抗する側に回動可能であるため、扱室13内を流動する処理物から負荷を受けた場合には、その受ける負荷の大きさに応じて、個別に各送塵ガイド27が処理物の流動する側(処理物の後方への流れを促進する側)へと回動作動するため、効率の良い脱穀処理を行うことができる。
【0041】
なお、該設定機構31は、可動プレート28を前後に移動させるように構成されていればよく、可動プレート28側と、脱穀カバー18側とを連結するとともに、前後方向に伸縮する油圧シリンダまたは電動シリンダ等のアクチュエータによって設定機構31を構成してもよい。この場合、アクチュエータの作動を制御する制御部を設け、送塵ガイド27の初期回動位置を、車速センサによって検出される本コンバインの走行速度に連動して自動的に変更させてもよい。
【0042】
次に、図5乃至10に基づき、前記ガイド機構の他の実施例2乃至6について上述の例と異なる点を説明する。
まず、図5及び図6に基づき、実施例2のガイド機構について説明する。図5は、ガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図であり、図6は、ガイド機構の正面図及び送塵ガイド周辺の矢視図である。ガイド機構19は、最も前側の送塵ガイド27に、前記弾性力の付勢に抗する側への回動が規制される規制状態に切換えることのできる規制部材である規制アーム54が設けられている。
【0043】
前記可動部材28は、送塵ガイド27毎に穿設された融通孔39の後方側に作用ピン41と平行に上方突出するように取付けられた規制ピン53が突設されており、前端側の規制ピン53には回動自在な態様で規制アーム54が取付けられている。該規制アーム54は、端部が鉤型に形成されており、規制ピン回りに回動させることにより、融通孔39の後方側(初期回動位置側)に付勢された作用ピン41に鉤型の端部が係合するように構成されている。なお、前記規制アーム54は、各規制ピン53に取付ける構成としても良い。
【0044】
前記引張スプリング29は、一端側が可動部材28の融通孔39から上方側に向けて挿通された作用ピン41に取付けられ、他端側が前記規制ピン53に取付けられることにより、該引張スプリング29の付勢力が送塵ガイド27を処理物の流動に抗する側(処理物の後方への流れを抑制する側)に付勢するように構成している。
【0045】
当該構成により、前記規制アーム54を備えた送塵ガイド27は、初期回動位置に設定された際の作用ピン41に前記規制アーム54を係合させることにより、送塵ガイド27の初期回動位置からの引張スプリング29の付勢力に抗した側への回動が規制される規制状態へ切換えることが可能となり、脱穀作業の状況に応じて送塵ガイドを回動可能な許容状態と前記規制状態とに容易に切換ることができるため、汎用性が向上するという効果が得られる。
【0046】
また、前記引張スプリング29が作用ピン41と可動部材28に取付けられた規制ピン53との間に取付けられるため、前記初期位置設定レバー44によって、送塵ガイドの初期回動位置の変更操作がされた場合においても、初期回動位置の作用ピンと規制ピンとの間の距離は変わらず、引張スプリング29に生じる付勢力(弾性力)も一定に保たれる構成となっているため、送塵ガイドを回動させる付勢力の設定が容易になる。
【0047】
次に、図7に基づき、実施例3のガイド機構について上述の実施例2と異なる点を説明する。図7は、実施例3のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。前記ガイド機構19は、初期回動位置で固定される固定ガイド56(固定送塵ガイド)を備えている。
【0048】
前記固定ガイド56は、前記送塵ガイド27と同様にガイド板32と、回動軸33と、軸受34と、作用アーム36とから構成されており、前記作用ピン41が可動部材28に穿設された挿通・固定されている。したがって、前記初期位置設定レバー44が操作されて可動部材28が揺動した場合、送塵ガイド27と同様に固定ガイド56も回動軸33回りに回動して初期回動位置が変更・設定の操作がされるように構成されている。しかし、該固定ガイド56は、上記記載より作用ピン41は挿通・固定されていることから、処理物から負荷を受けた場合においても初期位置設定レバー44により設定された初期位置が保持されて、該位置から回動作動しないように構成されている
【0049】
当該構成により、処理物から受ける負荷が小さい箇所においては送塵ガイド27を固定ガイド56に変更することによって、部品点数が削減されるとともに構成も簡略化されるため、ガイド機構19をより低コストで作成することができる。
【0050】
次に、図8に基づき、実施例4のガイド機構について上述の実施例2と異なる点を説明する。図8は、実施例4のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【0051】
前記可動部材28は、送塵ガイド27側に設けた各作用ピン41と接当する切欠き部57(接当部)がそれぞれに切り欠かれており、引張スプリング29によって付勢された前記作用ピン41を該切欠き部57に接当することによって、各送塵ガイド27を連結するように構成されている。
【0052】
また、L字型に屈曲形成されて脱穀カバー18側に取付けられた左右一対の摺動ガイド58が、該可動部材28の側面に沿うように前後に設けられている他、初期位置設定レバー44のアーム部47と可動部材28とを連結する前記連結ピン50が長孔である連結孔60に挿通させて連結ピン50に余裕を持たせるように(融通可能に)構成している。
【0053】
当該構成により、作用ピン41を切欠き部57に接当させる構成にすることによって、作用ピン41を円弧状の長孔(融通孔39)に挿通させる前記実施例1乃至3の場合と比較して、作用ピン41の可動部材28側への接当箇所が少なくなって送塵ガイド27をよりスムーズに回動作動させることができるとともに、前記摺動ガイド58によって可動部材28を脱穀カバー18側へ支持することができる。さらに、前記可動部材28の前後スライド移動によって生じる作動誤差は、連結ピン50が挿通される長孔である連結孔60によって吸収され、送塵ガイド27の初期位置設定操作も安定する。
【0054】
次に、図9に基づき、実施例5のガイド機構について上述の実施例2と異なる点を説明する。図9は、実施例5のガイド機構の平面図及び係止部材の矢視図である。
【0055】
前記可動部材28は、上下方向について脱穀カバー18と各送塵ガイド27に設けた作動アーム36との間に配置されており、該可動部材28には、融通孔39を穿設する代わりに上方側へ突出する接当ピン59(接当部)が設けられている。また、該可動部材28の後端部側は、可動部材28の前後揺動とリンク作動する支持アーム61が設けられており、機体側へ支持している。
【0056】
さらに、各送塵ガイド27の前方側は、L字型に屈曲形成されたプレートである回動規制部62を脱穀カバー18側に取付けており、初期位置設定レバー44の操作にともなって可動部材28が前方側に向かって揺動移動した際に、該可動部材28の側面側と該回動規制部62とが接触する位置で、該可動部材28の前方側への揺動が規制されるように構成されている。つまり、回動規制部62により前方側への揺動が規制される位置が送塵ガイド27の最大開度となる。
【0057】
当該構成により、接当ピン59と引張スプリング29に付勢される作用アーム36とが接当することによって、送塵ガイド27の付勢する側への回動が規制されての初期回動位置が保たれ、該送塵ガイド27の引張スプリング29の付勢力に抗する側の回動作動は、可動部材28が回動規制部62に接当することにより規制される。なお、前記回動規制部62と可動部材28との位置関係により、送塵ガイド27の回動作動可能な範囲は変化する。つまり、送塵ガイド27の初期回動位置が操作されて、可動部材28の初期回動位置が前方側に操作される程、初期回動位置での可動部材28の側面と前記回動規制部62との位置が近接した状態となるため、送塵ガイド27の付勢力に抗した側へ回動作動できる範囲がより狭くなる。
【0058】
次に、図10に基づき、実施例6のガイド機構について上述の実施例1と異なる点を説明する。図10は、ガイド機構の平面図である。
【0059】
前記可動部材28にガイド毎の融通孔39を穿設する代わりに、初期位置設定レバー44のアーム部47に連係孔63を穿設し、該可動部材28の前端側に設けた連係ピン64を挿通するように構成している。具体的には、該連係孔63は、アーム部47の回動支点を中心とした円弧状をなす長孔であって、前記連係ピン64が、引張スプリング29の付勢力によって連係孔63の付勢される側の端部に接当する。また、連係孔63の中を連係ピン64が移動する範囲で、送塵ガイド27が回動可能に構成される。さらに、前記作用ピン41は可動部材28側に挿通・固定されている。
【0060】
当該構成により、初期位置設定レバー44の回動操作に連動して送塵ガイド27の初期位置がまとめて変更・設定される一方で、扱室13の処理物から各送塵ガイド27が負荷を受けた場合における、該送塵ガイド27の引張スプリング29の付勢力に抗する側に回動作動は、全送塵ガイド27が一緒に回動する構成となっている。
【符号の説明】
【0061】
13 扱室
18 脱穀カバー(天板)
27 送塵ガイド
28 可動部材
29 引張スプリング(弾性部材)
31 設定機構
39a 接当部
54 規制アーム(規制部材)
56 固定ガイド(固定送塵ガイド)
57 切欠き部(接当部)
59 接当ピン(接当部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(13)内を流動する処理物に接触することにより該処理物を案内する送塵ガイド(27)を、脱穀処理が行われる扱室(13)の上方を覆う天板(18)側に回動自在に複数備え、各送塵ガイド(27)を初期回動位置に弾性的に付勢する弾性部材(29)と、送塵ガイド(27)の初期回動位置を設定する設定機構(31)とを設けた脱穀装置において、設定機構(31)が、送塵ガイド(27)の初期回動位置の設定変更に連動して可動する可動部材(28)を備え、送塵ガイド(27)側と接当して弾性部材(29)が付勢する側への該送塵ガイド(27)の回動を規制する接当部(39a,57,59)を、送塵ガイド(27)毎に各別に可動部材(28)に設け、送塵ガイド(27)と接当部(39a,57,59)との接当によって、該送塵ガイド(27)の初期回動位置が定められる脱穀装置。
【請求項2】
弾性部材(29)を、送塵ガイド(27)毎に各別に設け、弾性部材(29)の一端を送塵ガイド(27)側に連結するとともに弾性部材(29)の他端を可動部材(28)側に連結した請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
接当部(39a,57,59)に接当した送塵ガイド(27)の上記付勢力に抗する側の回動を規制する状態と、付勢力に抗する側の回動を許容する状態とに切換可能な規制部材(54)を設けた請求項1又は2の何れかに記載の脱穀装置。
【請求項4】
上記処理物に接触することにより該処理物を案内する固定送塵ガイド(56)を天板(18)側に回動自在に設け、設定機構(31)によって回動位置が決定されるように前記固定送塵ガイド(56)を可動部材(28)に連結し、固定送塵ガイド(56)が設定機構(31)により設定された回動位置で保持される請求項1乃至3の何れかに記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−95544(P2012−95544A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243522(P2010−243522)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、超低コスト土地利用型作物生産技術の開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】