腫瘍において示差的に発現する遺伝子産物およびその利用
【課題】
癌の診断および治療のための標的構造を提供すること。
【解決手段】
本発明は腫瘍に関連して発現する遺伝子産物の同定および該産物に対するコード核酸に関する。本発明はまた、腫瘍に関連して遺伝子産物が異常に発現する疾患の治療および診断、腫瘍に関連して発現するタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドそして該ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質に対するコード核酸にも関する。
癌の診断および治療のための標的構造を提供すること。
【解決手段】
本発明は腫瘍に関連して発現する遺伝子産物の同定および該産物に対するコード核酸に関する。本発明はまた、腫瘍に関連して遺伝子産物が異常に発現する疾患の治療および診断、腫瘍に関連して発現するタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドそして該ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質に対するコード核酸にも関する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
学際的なアプローチおよび古典的治療手順の徹底的な使用にも拘わらず、癌はいまだに死の主な原因である。より最近の治療の考え方は患者の免疫系を、組換え腫瘍ワクチンおよびその他の特定の手法、例えば抗体療法を用いて治療全体の考え方に導入することをねらいとする。かかる戦略の成功のための必要条件は、そのエフェクター機能が介入により増強されるべき患者の免疫系による腫瘍特異的または腫瘍関連抗原あるいはエピトープの認識である。腫瘍細胞はその起源である非悪性細胞と生物学的にかなり異なっている。その差は腫瘍発達の際に獲得した遺伝的変化によるものであり、その結果、とりわけ癌細胞において質または量が変化した分子構造が形成される。腫瘍担持宿主の特異的免疫系によって認識されるこの種の腫瘍関連構造は、腫瘍関連抗原とよばれる。腫瘍関連抗原の特異的認識は細胞性および体液性メカニズムを含み、これらは2つの機能的に相互接続した単位である:CD4+およびCD8+Tリンパ球はMHC(major histocompatibility complex)クラスIIおよびI分子に提示されたプロセシングされた抗原をそれぞれ認識し、Bリンパ球はプロセシングされていない抗原に直接に結合する循環性の抗体分子を産生する。腫瘍関連抗原の潜在的な臨床治療的重要性は、免疫系による腫瘍細胞上の抗原の認識がヘルパーT細胞の存在下での細胞障害性エフェクター機構の開始を導き、癌細胞の排除を導きうるという事実に起因する(Pardoll、Nat. Med. 4:525−31、1998)。したがって腫瘍免疫学の主な目的は分子的にこれらの構造を規定することである。これら抗原の分子特性は長い間謎であった。適切なクローニング技術の開発によって初めて、細胞障害性Tリンパ球(CTL)(van derBruggen et al.、Science 254:1643−7、1991)の標的構造を分析することにより、あるいは循環性自己抗体をプローブとして用いることにより(Sahin et al.、Curr. Opin. Immunol. 9:709−16、1997)、腫瘍関連抗原について系統的に腫瘍のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることが可能となった。この目的のために、cDNA発現ライブラリーが新鮮な腫瘍組織から調製され、好適な系においてタンパク質として組換え的に発現された。患者から単離された免疫エフェクター、即ち、腫瘍特異的溶解パターンを示すCTLクローンあるいは循環性自己抗体がそれぞれの抗原のクローニングに利用された。
【0002】
近年、非常に多数の抗原がこれらアプローチによって様々な新形成において規定されている。しかし、上記の古典的方法において抗原同定のために利用されるプローブは、通常既に進展した癌を有する患者からの免疫エフェクター(循環性自己抗体またはCTLクローン)である。多くのデータが、腫瘍は例えば、T細胞の寛容化および反応不顕性化(anergization)を導くことができ、そして、疾患の経過において、特に有効な免疫認識をもたらしうる特異性が免疫エフェクターレパートリーから失われるということを示している。現在の患者の研究は、以前に発見され利用されてきた腫瘍関連抗原の真の作用の確かな証拠を未だにもたらしていない。したがって、自発的免疫応答を誘発するタンパク質が誤った標的構造を有するということを排除することは出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は癌の診断および治療のための標的構造を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、この目的は請求の範囲記載の主題によって達成される。
【0005】
本発明によると、腫瘍に関連して発現する抗原およびそれをコードする核酸の同定および提供のための戦略が追求された。この戦略は臓器特異的に発現する特定の遺伝子、例えば結腸、肺または腎臓組織にてもっぱら発現する遺伝子は、それぞれの臓器の腫瘍細胞において、そしてさらにその他の組織の腫瘍細胞において異所的に禁じられた態様で再活性化されるという事実に基づく。まず、データマイニングによりできるだけ完全にすべての既知の臓器特異的遺伝子をとりだす。これらは次いで様々な腫瘍におけるその異常な活性化について特異的RT−PCRによる発現分析によって評価される。データマイニングは腫瘍関連遺伝子の同定のための公知の方法である。しかしこの常套方法において、正常組織ライブラリーのトランスクリプトームがコンピュータにより腫瘍組織ライブラリーから通常差し引かれ、残った遺伝子が腫瘍特異的であると予想される(Schmitt et al.、Nucleic AcidsRes. 27:4251−60、1999; Vasmatzis et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:300−4、1998; Scheurle et al.、Cancer Res. 60:4037−43、2000)。
【0006】
しかしより有効であることが判明した本発明の概念は、すべての臓器特異的遺伝子をコンピュータにより抽出するためにデータマイニングを利用することおよび該遺伝子の腫瘍における発現を評価することに基づく。
【0007】
本発明はしたがって一つの態様において、腫瘍において示差的に発現する組織特異的遺伝子を同定する戦略に関する。該戦略は、公共の配列ライブラリーのデータマイニング(「インシリコ」)とそれに続く実験室での(「ウェットベンチ」)研究の評価を組み合わせるものである。
【0008】
本発明によると、2種類のバイオインフォマティックスクリプト(bioinformatic scripts)に基づく組み合わせ戦略により、新規腫瘍遺伝子の同定が可能となった。これらは以前に純粋に臓器特異的であると分類されたものである。これら遺伝子が腫瘍細胞において異常に活性化しているという知見により、それら遺伝子に実質的に新規の機能予測をともなう性質が割り当てられるようになる。本発明によると、これら腫瘍関連遺伝子およびそれらによってコードされる遺伝子産物は、免疫原性作用とは独立に同定及び提供された。
【0009】
本発明によって同定された腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117および119からなる群から選択される核酸配列を
含む核酸、その一部または誘導体、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸にハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【0010】
好適な態様において、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は配列番号1−8、41−44、51−59、84、117および119からなる群から選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する。さらに好適な態様において、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0011】
本発明は一般に、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分または誘導体、それをコードする核酸または該コード核酸に対する核酸、あるいは本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分または誘導体に対する抗体の、治療および診断のための使用に関する。この利用は診断、治療および進行管理における個々のものに関するだけでなく、2以上のかかる抗原、機能的断片、核酸、抗体などの組み合わせ、そして一つの態様においてその他の腫瘍関連遺伝子および抗原との組み合わせにも関する。
【0012】
治療および/または診断に好適な疾患は1または複数の本発明によって同定される腫瘍関連抗原が選択的に発現または異常に発現している疾患である。
【0013】
本発明はまた、腫瘍細胞に関連して発現する核酸および遺伝子産物にも関する。
【0014】
さらに、本発明は既知の遺伝子の選択的スプライシング(スプライスバリアント)または選択的オープンリーディングフレームを用いる変化した翻訳によって産生される遺伝子産物、即ち核酸およびタンパク質またはペプチドに関する。この態様において、本発明は配列表の配列番号3−5による配列からなる群から選択される核酸配列を含む核酸に関する。さらに、この態様において、本発明は配列表の配列番号10および12−14による配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはペプチドに関する。本発明のスプライスバリアントは腫瘍疾患の診断および治療のための標的として本発明にしたがって利用できる。
【0015】
特に、本発明は配列表の配列番号10によるアミノ酸配列に関し、これは本発明により同定される選択的オープンリーディングフレームによりコードされ、以前に記載されたタンパク質配列(配列番号9)と、タンパク質のN末端におけるさらなる85アミノ酸において異なる。
【0016】
全く異なる機構によりスプライスバリアントが産生され、例えば、以下が挙げられる
−異なる転写開始部位の利用
−さらなるエキソンの利用
−1または2あるいはそれ以上のエキソンの完全または不完全なスプライシング、
−スプライス制御配列の突然変異による変化(欠失または新たな供与/受容配列の作成)、
−イントロン配列の不完全な除去。
【0017】
遺伝子の選択的スプライシングにより異なる転写産物配列(スプライスバリアント)が生じる。その変化した配列の領域におけるスプライスバリアントの翻訳の結果、元のタンパク質とは構造および機能において顕著に異なる変化したタンパク質が生じる。腫瘍関連スプライスバリアントにより腫瘍関連転写産物および腫瘍関連タンパク質/抗原が生じうる。これらは腫瘍細胞の検出および腫瘍の治療標的化のための分子マーカーとして利用できる。腫瘍細胞の、例えば、血液、血清、骨髄、痰、気管支洗浄液、分泌液および組織診における検出は、本発明にしたがって行うことが出来、例えば、スプライスバリアント特異的オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅による核酸の抽出後に行うことが出来る。特に、プライマー対はオリゴヌクレオチドとして好適であり、その少なくとも一方はストリンジェントな条件下で腫瘍関連スプライスバリアント領域に結合する。本発明によると、実施例においてこの目的で記載されるオリゴヌクレオチドが好適であり、特に、配列表の配列番号34−36、39、40、および107−110から選択される配列を有するまたは含むオリゴヌクレオチドが好適である。本発明によると、すべての配列依存的検出系が検出に好適である。それらは、PCRは別として、例えば、遺伝子チップ/マイクロアレイ系、ノザンブロット、RNAse保護アッセイ(RDA)その他が挙げられる。すべての検出系は共通して、検出は少なくとも1つのスプライスバリアント特異的核酸配列との特異的ハイブリダイゼーションに基づく。しかし、腫瘍細胞はスプライスバリアントによってコードされる特異的エピトープを認識する抗体によって、本発明にしたがって検出されうる。該抗体は該スプライスバリアントに特異的な免疫化ペプチドを用いて調製できる。この態様において、本発明は特に、配列表の配列番号17−19、111−115、120、および137から選択される配列を有するまたは含むペプチドおよびそれに特異的な抗体に関する。免疫化に好適なのは特にそのエピトープが健康細胞において好適に産生される遺伝子産物のバリアントと顕著に異なるアミノ酸である。抗体による腫瘍細胞の検出は患者から単離したサンプルに対して行うことが出来、あるいは静脈内投与した抗体の撮像として行うことが出来る。診断用途に加えて、新しいまたは異なるエピトープを有するスプライスバリアントは免疫療法の魅力的な標的である。本発明のエピトープは治療的に活性なモノクローナル抗体またはTリンパ球の標的化に用いることが出来る。受動免疫療法において、スプライスバリアント特異的エピトープを認識する抗体またはTリンパ球が養子免疫伝達される。その他の抗原の場合のように、抗体をかかるエピトープを含むポリペプチドの利用により標準技術によって作成することが出来る(動物の免疫化、組換え抗体単離のパニング戦略)。あるいは該エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドをコードする核酸を免疫化に用いることも出来る。エピトープ特異的Tリンパ球の作成のためのインビトロまたはインビボでの多くの技術が知られており詳細に記載されており(例えば、Kessler JH、et al. 2001、Sahin et al.、1997)、おそらくスプライスバリアント特異的エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドまたは該オリゴまたはポリペプチドをコードする核酸の使用に基づく。スプライスバリアント特異的エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は医薬上活性な物質として能動免疫療法(ワクチン化、ワクチン療法)にも用いることが出来る。
【0018】
本発明はまた、正常及び腫瘍組織において二次修飾の性質および程度が異なるタンパク質も記載する(例えば、Durand & Seta、2000; Clin. Chem. 46: 795−805; Hakomori、1996; Cancer Res.56: 5309−18)。
【0019】
タンパク質修飾の分析はウェスタンブロットにて行うことが出来る。特に、原則として数kDaのサイズを有するグリコシル化の結果標的タンパク質の全質量が増加し、これはSDS−PAGEで分離することが出来る。特異的O−およびN−グリコシド結合の検出のために、タンパク質溶解液をSDSを用いた変性の前にO−またはN−グリコシラーゼとインキュベートする(それぞれ製造業者の指示にしたがう。例えば、PNgase、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)。その後、ウェスタンブロットを行う。標的タンパク質のサイズが低下している場合は特異的グリコシル化がグリコシダーゼとのインキュベーション後に検出することが出来、したがって修飾の腫瘍特異性が分析できる。腫瘍細胞および健康細胞において示差的にグリコシル化されたタンパク質領域が特に興味深い。かかるグリコシル化の差はしかしこれまでにいくつかの細胞表面タンパク質について記載されているに過ぎない(例えば、Muc1)。
【0020】
本発明によると、腫瘍におけるクローディン18についての示差的グリコシル化を検出することが出来た。胃腸癌、膵臓癌、食道腫瘍、前立腺腫瘍および肺腫瘍は低レベルにてグリコシル化された形態のクローディン18を有する。健康組織におけるグリコシル化はクローディン18のタンパク質エピトープをマスクし、このエピトープはグリコシル化の欠失によって腫瘍細胞上では被覆されない。これに対応して本発明によるとこれらドメインに結合するリガンドおよび抗体を選択することが出来る。本発明によるかかるリガンドおよび抗体は健康細胞上のクローディン18には結合しない。というのは健康細胞上ではエピトープがグリコシル化によって被覆されているからである。
【0021】
腫瘍関連スプライスバリアント由来のタンパク質エピトープについて上記したように、示差的グリコシル化を用いて診断および治療目的で正常細胞と腫瘍細胞を識別することが出来る。
【0022】
一つの態様において、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原を認識し、本発明によって同定される腫瘍関連抗原発現または異常発現を有する細胞に好ましくは選択的な剤を含む医薬組成物に関する。特定の態様において、該剤は細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜の障害またはサイトカインの分泌をもたらし得、好ましくは腫瘍阻害活性を有する。一つの態様において、剤は腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に補体活性化または毒素結合抗体であって腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる態様において、剤はそれぞれ選択的に、その少なくとも1つが本発明によって同定される腫瘍関連抗原である異なる腫瘍関連抗原を認識する2以上の剤を含む。認識には直接に抗原の活性または発現の阻害を伴う必要はない。本発明のこの態様において、腫瘍に選択的に限定される抗原は好ましくはエフェクター機構のこの特異的位置への動員のための標的として役立つ。好適な態様において、剤はHLA分子上の抗原を認識し、こうして標識された細胞を溶解する細胞障害性Tリンパ球である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体でありしたがって自然または人工エフェクター機構を該細胞に動員する。さらなる態様において、剤はその他の細胞の該抗原を特異的に認識するエフェクター機能を増強するヘルパーTリンパ球である。
【0023】
一つの態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する剤を含む医薬組成物に関する。好適な態様において、剤は腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる態様において、剤は、少なくともその1つが本発明によって同定される腫瘍関連抗原である異なる腫瘍関連抗原の発現または活性をそれぞれ選択的に阻害する2以上の剤を含む。
【0024】
本発明はさらに投与された際にHLA分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとの複合体の量を選択的に増加させる剤を含む医薬組成物に関する。一つの態様において、剤は1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)該腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(iv)該腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとMHC分子との単離複合体。
【0025】
一つの態様において、剤はMHC分子とそれぞれ異なる腫瘍関連抗原のペプチドエピトープとの複合体の量を選択的に増加させる2以上の剤を含み、ここで腫瘍関連抗原の少なくとも1つは本発明によって同定される腫瘍関連抗原である。
【0026】
本発明はさらに1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む医薬組成物に関する:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、
(iv)本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(vi)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体。
【0027】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸は医薬組成物中において発現ベクター中にプロモーターに機能的に連結させて存在させてもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原またはその部分を分泌し、それを表面上に発現するものでもよいし、さらに該腫瘍関連抗原またはその該部分に結合するHLA分子を発現するものでもよい。一つの態様において、宿主細胞はHLA分子を内因的に発現する。さらなる態様において、宿主細胞はHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を組換えにより発現する。宿主細胞は好ましくは非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞であり、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0029】
本発明の医薬組成物に存在する抗体はモノクローナル抗体であるのがよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体、天然の抗体または合成の抗体の断片であってよく、これらすべてはコンビナトリー技術によって産生できる。抗体は治療上または診断上有用な薬剤と結合させてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物に存在するアンチセンス核酸は6−50の配列、特に10−30、15−30および20−30の、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の連続ヌクレオチドを含むものであってよい。
【0031】
さらなる態様において、直接または核酸の発現を介して本発明の医薬組成物によって提供される腫瘍関連抗原またはその部分は細胞表面のMHC分子に結合し、該結合は好ましくは細胞溶解性応答の誘発および/またはサイトカイン放出の誘導をもたらす。
【0032】
本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体および/またはアジュバントを含むものでもよい。アジュバントは、サポニン、GM−CSF、CpGヌクレオチド、RNA、サイトカインまたはケモカインから選択すればよい。本発明の医薬組成物は好ましくは腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療に用いられる。好適な態様において、疾患は癌である。
【0033】
本発明はさらに1または複数の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療または診断方法にも関する。一つの態様において、治療は本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0034】
一つの態様において、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の診断方法に関する。該方法は患者から単離した生物学的サンプルにおける、以下の検出を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の検出、および/または、(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の検出、および/または
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に対する抗体の検出、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出。
【0035】
特定の態様において、検出は以下の工程を含む:
(i)生物学的サンプルを、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、該腫瘍関連抗原または該その部分、腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球に特異的に結合する剤と接触させる工程、および
(ii)剤と核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球との複合体の形成を検出する工程。
【0036】
一つの態様において、疾患は2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、検出は、該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の検出、2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分の検出、該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分に結合する2以上の抗体の検出または該2以上の異なる腫瘍関連抗原に特異的な2以上の細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出を含む。さらなる態様において、患者から単離した生物学的サンプルを対応する正常な生物学的サンプルと比較する。
【0037】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の退行、経過または発症を判定する方法に関し、該方法は、該疾患を有するか該疾患に罹患しやすい患者からのサンプルを、以下からなる群から選択される1または複数のパラメーターに関してモニタリングする工程を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の量、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体の量、および
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量。
【0038】
該方法は好ましくは第一のサンプルの第一の時点およびさらなるサンプルの第二の時点でのパラメーターを測定することを含み、ここで疾患の経過が2つのサンプルの比較によって判定される。特定の態様において、疾患は2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、モニタリングは以下のモニタリングを含む:
(i)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分をコードする2以上の核酸の量、および/または
(ii)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分の量、および/または
(iii)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分に結合する2以上の抗体の量、および/または
(iv)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分とMHC分子との複合体に特異的な2以上の細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量。
【0039】
本発明によると、核酸またはその部分の検出あるいは核酸またはその部分の量のモニタリングは該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて行うことが出来、あるいは該核酸または該その部分の選択的増幅によって行うことが出来る。一つの態様において、ポリヌクレオチドプローブは該核酸の連続するヌクレオチドの6−50、特に、10−30、15−30および20−30の配列を含む。
【0040】
特定の態様において、検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分は細胞内または細胞表面に存在する。本発明によると、腫瘍関連抗原またはその部分の検出または腫瘍関連抗原またはその部分の量のモニタリングは、該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的な抗体結合によって行いうる。
【0041】
さらなる態様において、検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分はMHC分子、特にHLA分子との複合体中に存在する。
【0042】
本発明によると、抗体の検出または抗体の量のモニタリングは該抗体に特異的なタンパク質またはペプチドの結合を用いて行いうる。
【0043】
本発明によると、抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の検出あるいは細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量のモニタリングは、該抗原または該その部分とMHC分子との複合体を提示する細胞を用いて行いうる。
【0044】
検出またはモニタリングに使用されるポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質またはペプチドあるいは細胞は好ましくは検出可能な様式で標識される。特定の態様において、検出可能なマーカーは放射性マーカーまたは酵素マーカーである。さらにTリンパ球は、その増殖、そのサイトカイン産生、およびそのMHCと腫瘍関連抗原またはその部分との複合体での特異的刺激によってトリガーされる細胞障害性活性を検出することにより検出できる。Tリンパ球はまた1または複数の腫瘍関連抗原の特定の免疫原性断片を搭載し、特異的T細胞受容体を接触させることにより特異的Tリンパ球を同定しうる組換えMHC分子あるいは2以上のMHC分子の複合体を介して検出しうる。
【0045】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療、診断またはモニタリング方法に関し、該方法は、該腫瘍関連抗原またはその部分に結合し、治療または診断薬と複合化された抗体を投与することを含む。抗体はモノクローナル抗体であってよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体あるいは天然の抗体の断片である。
【0046】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)該患者から免疫反応性細胞を含むサンプルを取り出す工程、
(ii)該サンプルと該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞を、該腫瘍関連抗原またはその部分に対する細胞溶解性T細胞の産生に好適な条件下で接触させる工程、および、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞を溶解するのに好適な量の細胞溶解性T細胞を患者に導入する工程。
【0047】
本発明はまた腫瘍関連抗原に対する細胞溶解性T細胞のT細胞受容体のクローニングにも関する。該受容体その他のT細胞に移入してもよく、それはそれによって所望の特異性を受け取り、そして(iii)のように、患者に導入してもよい。
【0048】
一つの態様において、宿主細胞はHLA分子を内因的に発現する。さらなる態様において、宿主細胞は組換えによりHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する。宿主細胞は好ましくは非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0049】
さらなる態様において、本発明は腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードし、該疾患に関連する細胞によって発現する核酸を同定する工程、
(ii)宿主細胞を該核酸またはその部分でトランスフェクトする工程、
(iii)該核酸を発現させるためにトランスフェクトした宿主細胞を培養する工程(高効率のトランスフェクションが達成された場合これは必須ではない)、および、
(iv)疾患に関連する患者の細胞に対する免疫応答を上昇させるのに好適な量にて患者に宿主細胞またはその抽出物を導入する工程。
【0050】
該方法はさらに腫瘍関連抗原またはその部分を提示するMHC分子を同定することも含み、ここで宿主細胞は同定されたMHC分子を発現し該腫瘍関連抗原またはその部分を提示する。免疫応答はB細胞応答またはT細胞応答のいずれでもよい。さらに、T細胞応答は腫瘍関連抗原またはその部分を提示する宿主細胞に特異的であるか、腫瘍関連抗原またはその部分を発現する患者の細胞に特異的である、細胞溶解性T細胞および/またはヘルパーT細胞の産生を含むものであり得る。
【0051】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法にも関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)異常な量の腫瘍関連抗原を発現する患者からの細胞を同定する工程、
(ii)該細胞のサンプルを単離する工程、
(iii)該細胞を培養する工程、および、
(iv)細胞に対する免疫応答をトリガーするのに好適な量の該細胞を患者に導入する工程。
【0052】
好ましくは本発明によって用いられる宿主細胞は非増殖性であるか非増殖性にされたものである。腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患は特に癌である。
【0053】
本発明はさらに以下からなる群から選択される核酸に関する:
(a)配列番号3−5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【0054】
本発明はさらに配列番号10および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸、その一部または誘導体に関する。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸のプロモーター配列に関する。これら配列は好ましくは発現ベクターにおいて別の遺伝子に機能的に連結していてもよく、該遺伝子の適当な細胞での選択的発現を確保してもよい。
【0056】
さらなる態様において、本発明は本発明の核酸を含む組換え核酸分子、特に、DNAまたはRNA分子に関する。
【0057】
本発明はまた、本発明の核酸または本発明の核酸を含む組換え核酸分子を含む宿主細胞にも関する。
【0058】
宿主細胞はHLA分子をコードする核酸を含むものでもよい。一つの態様において、宿主細胞は内因的にHLA分子を発現する。さらなる態様において、宿主細胞は組換えによりHLA分子および/または本発明の核酸またはその部分を発現する。好ましくは、宿主細胞は非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、本発明により同定される核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブまたは「アンチセンス」分子として利用できるオリゴヌクレオチドに関する。本発明により同定される核酸またはその部分にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーまたはコンピテント(competent)サンプルの形態の核酸分子は、本発明により同定される核酸に相同的な核酸の発見に利用できる。PCR増幅、サザンおよびノザンハイブリダイゼーションを相同的核酸の発見に用いることが出来る。ハイブリダイゼーションは低いストリンジェンシーで行ってもよく、より好ましくは中程度のストリンジェンシー、もっとも好ましくは高いストリンジェンシーの条件で行う。本発明による「ストリンジェントな条件」という語は、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件をいう。
【0060】
さらなる態様において、本発明は以下からなる群から選択される核酸によってコードされるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに関する:
(a)配列番号3−5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【0061】
好適な態様において、本発明は配列番号10および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドまたはペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0062】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の免疫原性断片に関する。該断片は好ましくはヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する。本発明の断片は好ましくは、少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50のアミノ酸の配列を有する。
【0063】
この態様において、本発明は配列番号17−19、90−97、100−102、105、106、111−116、120、123、124、および135−137からなる群から選択される配列を有するか含むペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0064】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する剤に関する。好適な態様において、剤は抗体である。さらなる態様において、抗体はキメラ、ヒト化抗体またはコンビナトリー技術によって産生される抗体あるいは抗体の断片である。さらに、本発明は以下の(i)と(ii)の複合体に選択的に結合する抗体に関する:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分、および
(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原または該その部分が結合するMHC分子、ここで該抗体は(i)のみあるいは(ii)のみには結合しない。
【0065】
本発明の抗体はモノクローナル抗体であってよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体あるいは天然の抗体の断片である。
【0066】
特に、本発明は、配列番号17−19、90−97、100−102、105、106、111−116、120、123、124、および135−137からなる群から選択される配列を有するかそれを含むペプチド、その一部または誘導体に特異的に結合するかかる剤、特に抗体に関する。
【0067】
本発明はさらに本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する本発明の剤または本発明の抗体と、治療または診断薬との結合体に関する。一つの態様において、治療または診断薬は毒素である。
【0068】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現の検出用キットに関し、該キットは以下の検出のための剤を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的なT細胞。
【0069】
一つの態様において、核酸またはその部分の検出用の剤は該核酸の選択的増幅のための核酸分子であって、特に該核酸の6−50、特に10−30、15−30および20−30の連続ヌクレオチド配列を含むものである。
【0070】
発明の詳細な説明
本発明によると、腫瘍細胞において選択的または異常に発現し、腫瘍関連抗原である遺伝子が記載される。
【0071】
本発明によると、これら遺伝子および/またはその遺伝子産物および/またはその誘導体および/または部分は治療アプローチのための好ましい標的構造である。概念的には、該治療アプローチは選択的に発現した腫瘍関連遺伝子産物の活性の阻害をねらうものである。これは、該異常なそれぞれの選択的発現が腫瘍病原性に機能的に重要である場合、そしてその連結に対応する細胞の選択的傷害が伴う場合に有用である。別の治療の考え方は腫瘍関連抗原を、腫瘍細胞に選択的に細胞傷害能を有するエフェクター機構を動員する標識として考えるものである。ここで、標的分子自体の機能および腫瘍発達におけるその役割は完全に無関係である。
【0072】
本発明による核酸の「誘導体」とは、1または複数のヌクレオチド置換、欠失および/または付加が該核酸に存在することを意味する。さらに「誘導体」の語はまたヌクレオチド塩基、糖またはリン酸における核酸の化学的誘導体化も含む。「誘導体」の語はまた天然にはないヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含む核酸も含む。
【0073】
本発明によると、核酸は好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。本発明による核酸はゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え産生および化学合成された分子を含む。本発明によると、核酸は一本鎖でも二本鎖として存在してもよく、直鎖状でもよいし共有結合により閉環した分子であってもよい。
【0074】
本発明により記載される核酸は好ましくは単離されたものである。「単離核酸」の語は、本発明によると、核酸が以下のものであることを意味する:
(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、増幅されたもの、
(ii)クローニングにより組換え産生されたもの、
(iii)例えば切断およびゲル電気泳動分画により精製されたもの、あるいは、
(iv)例えば化学合成により合成されたもの。
【0075】
単離核酸は組換えDNA技術による操作を行える核酸である。
【0076】
核酸は2つの配列がハイブリダイズでき、互いに安定な二本鎖を形成することが出来る場合、別の核酸と「相補的」であり、ここでハイブリダイゼーションは好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能とする条件(ストリンジェントな条件)下で行う。ストリンジェントな条件は、例えば、以下に記載されている:Molecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrook et al.、Editors、2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory press、Cold Spring Harbor、New York、1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelet al.、Editors、John Wiley & Sons、Inc.、New York。これらによると、例えば、ハイブリダイゼーションバッファー(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mMNaH2PO4(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中での65℃でのハイブリダイゼーションをいう。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAをトランスファーしたメンブレンを例えば以下の条件で洗浄する:2×SSC中、室温、その後、0.1−0.5×SSC/0.1×SDS中、68℃までの温度。
【0077】
本発明によると、相補的な核酸は少なくとも40%、特に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、そして好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%あるいは少なくとも99%の、同一なヌクレオチドを有する。
【0078】
腫瘍関連抗原をコードする核酸は、本発明によると、単独でまたはその他の核酸、特に異種核酸と組み合わせて存在してもよい。好適な態様において、核酸は、該核酸と同種であっても異種であってもよい発現制御配列または調節配列と機能的に連結している。コード配列と調節配列は、該コード配列の発現または転写が該調節配列の制御あるいは影響下となるように互いに共有結合している場合、互いに「機能的に」連結している。コード配列が翻訳されて機能的タンパク質となり、ここで調節配列が該コード配列に機能的に連結している場合、該調節配列の誘導の結果、該コード配列の転写が起こり、コード配列におけるフレームシフトは起こらず、所望のタンパク質またはペプチドへと翻訳され得ないコード配列は生じない。
【0079】
「発現制御配列」または「調節配列」の語は、本発明によると、プロモーター、エンハンサーおよびその他の遺伝子発現を調節する制御要素を含む。本発明の特定の態様において、発現制御配列は制御されうる。調節配列の正確な構造は種または細胞型の関数として変化しうるが、一般にそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列等を含む。より具体的には、5’非転写調節配列は、機能的に連結した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列を含んでいてもよい。
【0080】
したがって一方で、本明細書に記載する腫瘍関連抗原はいずれの発現制御配列およびプロモーターと組み合わせてもよい。しかし他方で、本明細書に記載する腫瘍関連遺伝子産物のプロモーターは、本発明によるとその他の遺伝子と組み合わせてもよい。これによってこれらのプロモーターの選択的活性が利用される。
【0081】
本発明によると、核酸はさらに宿主細胞からの該核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチドの分泌を制御するポリペプチドをコードするその他の核酸と組み合わせて存在してもよい。本発明によると、核酸はコードされるタンパク質またはポリペプチドが宿主細胞の細胞膜にアンカーされるように、あるいは該細胞の特定のオルガネラに区画化されるようにするポリペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在してもよい。同様に、レポーター遺伝子またはいずれかの「タグ」を表すことが出来る核酸との組み合わせも可能である。
【0082】
好適な態様において、本発明による組換えDNA分子は核酸、例えば本発明の腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する適当なプロモーターとともにベクター中にあってもよい。もっとも一般的な意味において本明細書において用いる「ベクター」の語は、該核酸が、例えば、原核および/または真核細胞に導入され、適当な場合ゲノムに組み込まれるのを可能にする核酸のためのあらゆる中間媒体を含む。この種のベクターは細胞中で好ましくは複製および/または発現される。中間媒体は、例えば、エレクトロポーレーション、微粒子銃による衝撃、リポソーム投与、アグロバクテリウムによる移入またはDNAまたはRNAウイルスを介した挿入における使用に適用される。ベクターにはプラスミド、ファージミドまたはウイルスゲノムが含まれる。
【0083】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は宿主細胞のトランスフェクションに利用できる。ここで核酸は組換えDNAとRNAの両方を意味する。組換えRNAはDNAテンプレートのインビトロ転写により調製できる。さらに、使用前に安定化配列、キャップおよびポリアデニル化によって修飾してもよい。
【0084】
本発明によると、「宿主細胞」の語は外来核酸で形質転換またはトランスフェクトしうるあらゆる細胞を含む。本発明によると「宿主細胞」の語は原核(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。特に好ましいのは、哺乳類細胞、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類由来細胞である。細胞は様々な組織タイプ由来であってよく、一次細胞および細胞株を含む。具体的な例としてはケラチン生成細胞、末梢血白血球、骨髄幹細胞および胚幹細胞が含まれる。さらなる態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。核酸は宿主細胞中に単一コピーまたは2コピー以上の形態において存在し得、一つの態様において、宿主細胞中で発現される。
【0085】
本発明によると、「発現」の語はもっとも広い意味で用いられ、RNAの産生またはRNAとタンパク質の産生を含む。それはまた核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過的に行っても安定に行ってもよい。哺乳類細胞における好ましい発現系は、pcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含み、これらは選抜可能マーカー、例えば、G418に耐性を付与する遺伝子(したがって安定にトランスフェクトされた細胞株の選抜を可能にする)およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー−プロモーター配列を含む。
【0086】
本発明の、HLA分子が腫瘍関連抗原またはその部分を提示する場合において、発現ベクターはまた該HLA分子をコードする核酸配列を含んでいてもよい。HLA分子をコードする核酸配列は腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその部分と同一の発現ベクターに存在していてもよいし、あるいは両核酸は異なる発現ベクターに存在していてもよい。後者の場合、2つの発現ベクターを細胞に共トランスフェクトすればよい。宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分またはHLA分子のいずれも発現しない場合、それらをコードする両核酸を細胞に同一の発現ベクターにおいてあるいは異なる発現ベクターにおいてトランスフェクトする。細胞が既にHLA分子を発現している場合、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸配列のみを細胞にトランスフェクトすればよい。
【0087】
本発明はまた、腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅のためのキットも含む。かかるキットは、例えば、腫瘍関連抗原をコードする核酸にハイブリダイズする増幅プライマーの対を含む。プライマーは好ましくは核酸の6−50、特に、10−30、15−30および20−30の連続ヌクレオチドの配列を含み、プライマーダイマーが形成されないようにオーバーラップしないものである。プライマーの一方は腫瘍関連抗原をコードする核酸の一方の鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅を可能とする配置において相補的な鎖にハイブリダイズする。
【0088】
「アンチセンス」分子または「アンチセンス」核酸を用いて核酸の発現を制御、特に減少させることが出来る。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」の語は、本発明によると、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドであって、生理条件下で特定の遺伝子を含むDNAあるいは該遺伝子のmRNAにハイブリダイズするものをいい、それによって、該遺伝子の転写および/または該mRNAの翻訳が阻害される。本発明によると、「アンチセンス分子」はその通常のプロモーターに関して逆方向に核酸またはその部分を含むコンストラクトも含む。核酸またはその部分のアンチセンス転写産物は酵素を規定する天然のmRNAと二本鎖を形成することが出来、したがってmRNAの蓄積または活性な酵素への翻訳を阻害することが出来る。もう一つの可能性は核酸の不活化のためのリボザイムの使用である。本発明による好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは標的核酸の6−50、特に10−30、15−30および20−30の連続するヌクレオチドの配列を有し、好ましくは標的核酸またはその部分に完全に相補的である。
【0089】
好適な態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはN−末端または5’上流部位、例えば、翻訳開始部位、転写開始部位またはプロモーター部位にハイブリダイズする。さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは3’非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位にハイブリダイズする。
【0090】
一つの態様において、本発明のオリゴヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその組み合わせからなり、一つのヌクレオチドの5’末端ともう一つのヌクレオチドの3’末端が互いにホスホジエステル結合で連結している。これらオリゴヌクレオチドは常套方法によって合成してもよいし、組換え産生してもよい。
【0091】
好適な態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは「修飾」オリゴヌクレオチドである。ここで、オリゴヌクレオチドはその標的への結合能力を阻害しないで、様々に修飾して、例えば、その安定性または治療効力を上昇させてもよい。本発明によると、「修飾オリゴヌクレオチド」の語は以下のオリゴヌクレオチドを意味する:
(i)少なくともそのヌクレオチドの2つが互いに合成インターヌクレオシド結合(即ち、ホスホジエステル結合ではないインターヌクレオシド結合)により連結されている、および/または
(ii)核酸において通常みられない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合している。
【0092】
好ましい合成インターヌクレオシド結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミダイト、カーバメート、カーボネート、ホスフェートトリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0093】
「修飾オリゴヌクレオチド」の語はまた、共有結合により修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを含む。「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、3’位のヒドロキシル基および5’位のホスフェート基以外の低分子量有機基に共有結合した糖残基を有するオリゴヌクレオチドである。修飾オリゴヌクレオチドは、例えば、2’−O−アルキル化リボース残基またはリボース以外のその他の糖、例えばアラビノースを含むものでもよい。
【0094】
好ましくは、本発明にしたがって記載されるタンパク質およびポリペプチドは単離されたものである。「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」の語は、タンパク質またはポリペプチドが自然環境から分離されていることを意味する。単離タンパク質またはポリペプチドは実質的に純粋な状態であり得る。「実質的に純粋な状態」という語は、タンパク質またはポリペプチドが、自然あるいはインビボでそれらが結合しているその他の物質を実質的に含まないということを意味する。
【0095】
かかるタンパク質およびポリペプチドは、例えば、抗体の産生および治療薬として免疫学的または診断アッセイにおいて利用できる。本発明にしたがって記載されるタンパク質およびポリペプチドは生物学的サンプル、例えば組織または細胞ホモジネートから単離したものでもよいし、様々な原核または真核発現系において組換え発現させたものでもよい。
【0096】
本発明の目的のために、タンパク質またはポリペプチドあるいはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。
【0097】
アミノ酸挿入バリアントはアミノ−および/またはカルボキシ−末端融合を含み、また、1または2以上のアミノ酸の特定のアミノ酸配列への挿入も含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1または複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されているが、結果的に得られる産物の適当なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。アミノ酸欠失バリアントは配列からの1または複数のアミノ酸の欠如によって特徴づけられる。アミノ酸置換バリアントは配列における少なくとも1残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることによって特徴づけられる。好ましくは修飾は相同的タンパク質またはポリペプチド間で保存されていないアミノ酸配列における位置のものである。好ましくは、アミノ酸を類似の特性、例えば、疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の大きさなどを有する別のアミノ酸で置換する(保存的置換)。保存的置換は、例えば、1つのアミノ酸の、置換すべきアミノ酸と同じ群に属する以下に挙げる別のアミノ酸による交換に関する:
1.小さい脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負に荷電した残基およびそのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正に荷電した残基:His、Arg、Lys
4.大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0098】
タンパク質構造のその特定の部分により、3つの残基を括弧内に示す。Glyは側鎖を有さない唯一の残基でありしたがって鎖に柔軟性を与える。Proは鎖を大幅に制限する珍しい構造を有する。Cysはジスルフィド結合を形成することが出来る。
【0099】
上記のアミノ酸バリアントは公知のペプチド合成技術、例えば、固相合成(Merrifield、1964)および類似の方法または組換えDNA操作によって容易に調製できる。あらかじめ決定した位置における置換突然変異の、配列既知のまたは部分的に既知のDNAへの導入技術は周知であり、例えばM13突然変異誘発が含まれる。置換、挿入または欠失を有するタンパク質の調製のためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al. (1989)に詳細に記載されている。
【0100】
本発明によると、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの「誘導体」は1または複数の酵素に関連する分子の置換、欠失および/または付加が含まれ、かかる分子としては、炭水化物、脂質および/またはタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが挙げられる。「誘導体」の語は、該タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのすべての機能的化学的同等体も含む。
【0101】
本発明によると、腫瘍関連抗原の部分または断片はそれが由来するポリペプチドの機能的特性を有する。かかる機能的特性には、抗体との相互作用、その他のポリペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性が挙げられる。特定の特性はHLAと複合体を形成する能力であり、適当な場合、免疫応答が導かれる。この免疫応答は細胞障害性またはヘルパーT細胞の刺激に基づきうる。本発明の腫瘍関連抗原の部分または断片は好ましくは腫瘍関連抗原の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の連続するアミノ酸の配列を含む。
【0102】
腫瘍関連抗原をコードする核酸の部分または断片は本発明によると上記のように少なくとも腫瘍関連抗原および/または該腫瘍関連抗原の部分または断片をコードする核酸の部分に関する。
【0103】
腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の単離と同定はまた、1または複数の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる疾患の診断を可能とする。これら方法は、腫瘍関連抗原をコードする1または複数の核酸を判定すること、および/またはコードされる腫瘍関連抗原および/またはそれに由来するペプチドを判定することを含む。核酸は常套方法によって判定でき、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応または標識化プローブによるハイブリダイゼーションを含む。腫瘍関連抗原またはそれに由来するペプチドは、抗原および/またはペプチドの認識について患者の抗血清をスクリーニングすることによって判定できる。それはまた、対応する腫瘍関連抗原に対する特異性について患者のT細胞をスクリーニングすることによっても判定できる。
【0104】
本発明はまた本明細書に記載する腫瘍関連抗原に結合するタンパク質の単離も可能にし、これには抗体および該腫瘍関連抗原の細胞結合パートナーが含まれる。
【0105】
本発明によると、特定の態様は腫瘍関連抗原由来の「ドミナントネガティブ」ポリペプチドを提供する。ドミナントネガティブポリペプチドは不活性タンパク質バリアントであり、細胞機構と相互作用することにより、その細胞機構との相互作用から活性のタンパク質ととってかわるか、あるいは活性のタンパク質と競合するものであり、それによって該活性のタンパク質の効果を低減させる。例えば、リガンドに結合するが、リガンドへの結合に応答してシグナルを生じないドミナントネガティブ受容体は該リガンドの生理効果を低減させうる。同様に、通常標的タンパク質と相互作用するが該標的タンパク質をリン酸化しないドミナントネガティブな触媒的に不活性なキナーゼは、細胞シグナルの応答としての該標的タンパク質のリン酸化を低減しうる。同様に、遺伝子の制御領域におけるプロモーター部位に結合するが該遺伝子の転写を上昇させないドミナントネガティブな転写因子は、転写を上昇させることなくプロモーター結合部位を占有することによって通常の転写因子の効果を低減しうる。
【0106】
細胞におけるドミナントネガティブなポリペプチドの発現の結果、活性なタンパク質の機能が低下する。当業者であればタンパク質のドミナントネガティブバリアントを、例えば、常套の突然変異誘発方法そしてバリアントポリペプチドのドミナントネガティブ効果の評価によって調製することができるであろう。
【0107】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に結合するポリペプチド等の物質も含む。かかる結合性物質は、例えば、腫瘍関連抗原および腫瘍関連抗原とその結合パートナーの複合体の検出のためのスクリーニングアッセイにおいて、および該腫瘍関連抗原ならびにその結合パートナーとの複合体の精製において利用することが出来る。かかる物質は例えばかかる抗原への結合によって、腫瘍関連抗原の活性の阻害にも用いることが出来る。
【0108】
本発明はそれゆえ腫瘍関連抗原に選択的に結合することが出来る結合性物質、例えば、抗体または抗体断片を含む。抗体はポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、これらは常套方法より産生される。
【0109】
かかる抗体はネイティブなおよび/または変性状態におけるタンパク質を認識することが出来る(Anderson et al.、J. Immunol.143: 1899−1904、1989; Gardsvoll、J. Immunol. Methods 234: 107−116、2000; Kayyem et al.、Eur. J. Biochem. 208: 1−8、1992; Spiller et al.、J. Immunol.Methods 224 : 51−60、1999)。
【0110】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は様々な標準的方法で調製することが出来る;例えば、“Monoclonal Antibody: A Practical Approach”,Philip Shepherd、Christopher Dean ISBN0−19−963722−9; “Antibofy: A Laboratory Manual” , Ed Harlow、David Lane、ISBN: 0879693142および“Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO” , Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN 0879695447を参照されたい。したがってネイティブな形態において複雑な膜タンパク質を認識するアフィン(affine)および特異的抗体を作成することも可能である(Azorsa et al.、J. Immunol. Methods 229: 35−48、1999;Anderson et al.、J. Immunol.143: 1899−1904、1989; Gardsvoll、J. Immunol. Methods 234: 107−116、2000)。これは特に治療的に用いられるだけでなく多くの診断用途を有する抗体の調製に関する。これに関して、全タンパク質、細胞外部分配列、また生理的に折りたたまれた形態にて標的分子を発現する細胞によって免疫することが可能である。
【0111】
モノクローナル抗体は古典的にはハイブリドーマ技術を用いて調製される(技術的詳細については以下を参照されたい: “Monoclonal Antibody: A Practical Approach”, Philip Shepherd、Christopher Dean ISBN0−19−963722−9; “Antibody: A Laboratory Manual” ,Ed Harlow、David Lane ISBN: 0879693142; “Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO”, Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN: 0879695447)。
【0112】
抗体分子の小さい部分、即ち、抗原結合部位だけが、抗体のそのエピトープへの結合に関与していることが知られている(以下を参考:Clark、W.R.(1986)、The Experimental Foundations of Modern Immunology、Wiley & Sons、Inc.、New York; Roitt、I.(1991)、Essential Immunology、7thEdition、Blackwell Scientific Publications、Oxford)。pFc’およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与していない。F(ab’)2断片と称されるpFc’領域が酵素的に除かれた抗体またはpFc’領域を含まないように産生された抗体は、完全な抗体の両方の抗原結合部位を担持する。同様に、Fab断片と称されるFc領域が酵素的に除かれた抗体またはFc領域を含まないように産生された抗体は、インタクトな抗体分子の一方の抗原結合部位を担持する。さらに、Fab断片は共有結合した抗体の軽鎖と該抗体のFdと称される重鎖の部分からなる。Fd断片は主な抗体特異性の決定部分であり(一つのFd断片は、抗体の特異性を変化させることなく10までの異なる軽鎖と結合できる)、Fd断片は単離されても、エピトープへの結合能を保持する。
【0113】
抗体の抗原結合部分のなかに抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)と抗原結合部位の三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)が位置する。IgG免疫グロブリンの重鎖のFd断片と軽鎖の両方は4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含み、これは3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分断されている。CDRおよび、特に、CDR3領域そして、さらに重鎖のCDR3領域が抗体特異性に非常に重要である。
【0114】
哺乳類抗体の非−CDR領域は、元の抗体のエピトープに対する特異性を維持したまま同じまたは異なる特異性の抗体の同様の領域によって置換され得ることが知られている。これによって「ヒト化」抗体の開発が可能となり、ここで非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域に共有結合して機能性の抗体が作られる。
【0115】
これはいわゆる「SLAM」技術に用いることが出来、ここで全血からB細胞が単離され、細胞が単クローン化される。次いで、単一のB細胞の上清がその抗体特異性に関して分析される。ハイブリドーマ技術と異なり、抗体遺伝子の可変領域が単細胞PCRを用いて増幅され、好適なベクターにクローニングされる。このようにして、モノクローナル抗体の供給が加速されている(de Wildt et al.、J.Immunol. Methods 207: 61−67、1997)。
【0116】
別の例として、WO92/04381はヒト化マウスRSV抗体の産生と使用を記載しており、ここで少なくともマウスFR領域の一部がヒト起源のFR領域と置換された。この種の抗体、例えば、抗原結合能を有するインタクトな抗体の断片は「キメラ」抗体と称される。
【0117】
本発明はまた、抗体のF(ab’)2、Fab、Fv、およびFd断片ならびにキメラ抗体、ここで、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列に置換されている、キメラF(ab’)2−断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、キメラFab−断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、そしてキメラFd−断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、を提供する。本発明はまた「一本鎖」抗体も含む。
【0118】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に特異的に結合するポリペプチドも含む。この種のポリペプチド結合性物質は、例えば、単に溶液中に固定化形態で調製されているかあるいはファージディスプレーライブラリーとして調製されるディジェネレートペプチドライブラリーにより提供され得る。1または複数のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリーを調製することも同様に可能である。ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリーも調製可能である。
【0119】
ファージディスプレーは本発明の結合性ペプチドの同定に特に有効である。これについえ、例えば、4から約80アミノ酸残基長のインサートを表す(例えば、M13、fdまたはラムダファージを使用して)ファージライブラリーを調製する。ファージを次いで腫瘍関連抗原に結合するインサートを担持するかについて選抜する。この工程は2サイクル以上繰り返してもよく、腫瘍関連抗原へ結合するファージを再選択する。繰り返すことによって、特定の配列を有するファージが濃縮される。DNA配列の分析を行って発現するポリペプチドの配列を同定してもよい。腫瘍関連抗原に結合する配列の最も小さい直線状の部分を決定するとよい。酵母の「ツーハイブリッドシステム」を用いて腫瘍関連抗原に結合するポリペプチドを同定してもよい。本発明による腫瘍関連抗原またはその断片はファージディスプレーライブラリーを含むペプチドライブラリーのスクリーニングに用いて、腫瘍関連抗原のペプチド結合性パートナーの同定および選択をすることができる。かかる分子は、腫瘍関連抗原の機能の妨害およびその他の当業者に知られた目的のために、例えば、スクリーニングアッセイ、精製プロトコールに用いることが出来る。
【0120】
上記の抗体およびその他の結合性分子を、例えば、腫瘍関連抗原を発現する組織の同定に用いることが出来る。抗体は腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を示すために特定の診断物質と結合させてもよい。これらは治療上有用な物質と結合させてもよい。診断物質としては、これらに限定されないが以下が含まれる:硫酸バリウム、イオセタミン酸(iocetamic acid)、イオパノ酸、イポダートカルシウム、ナトリウムジアトリゾエート、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、チロパノエートナトリウムおよび放射性診断薬、例えば、陽電子放射体、例えば、フッ素−18および炭素−11、ガンマ放出体、例えば、ヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131およびインジウム−111、核磁気共鳴のための核種、例えば、フッ素およびガドリニウム。本発明によると、「治療上有用な物質」との語は所望により1または複数の腫瘍関連抗原を発現する細胞に選択的に導かれるあらゆる治療用分子をいい、例えば、抗癌薬、放射性ヨウ素標識化合物、毒素、細胞増殖抑制剤または細胞溶解剤などが挙げられる。抗癌薬としては、例えば、以下が含まれる:アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビジン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン−α、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、プロカルバジンHCl、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチン。その他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman、“The PharmacologicalBasis of Therapeutics”、8th Edition、1990、McGraw−Hill、Inc.、特に Chapter 52 (Antineoplastic Drugs (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner))に記載されている。毒素はタンパク質、例えば、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素またはシュードモナス外毒素であってもよい。毒素残基は、高エネルギー放射性核種、例えば、コバルト−60であってもよい。
【0121】
本発明によると「患者」の語は、ヒト、非ヒト霊長類またはその他の動物、特に哺乳類、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類、例えば、マウスおよびラットをいう。特に好ましい態様において、患者はヒトである。
【0122】
本発明によると、「疾患」の語は、腫瘍関連抗原が発現しているか異常に発現しているあらゆる病的状態をいう。「異常な発現」とは本発明によると、発現が健康な個体における状態と比べて変化、好ましくは上昇していることをいう。発現の上昇は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の上昇をいう。一つの態様において、腫瘍関連抗原は疾患個体の組織にのみ発現しており、健康な個体における発現は抑制されている。かかる疾患の一例は癌であり、ここで「癌」の語は本発明によると、白血病、精上皮腫、メラノーマ、奇形腫、神経膠腫、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、腸癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、胃腸癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。
【0123】
本発明によると、生物学的サンプルは組織サンプルおよび/または細胞サンプルであってよく、本明細書に記載する様々な方法における使用のため、以下のような常套手段によって得られるものであってよい:組織診、例えば、パンチ生検、および血液、気管支吸引液、痰、尿、便またはその他の体液の採取。
【0124】
本発明によると、「免疫反応性細胞」の語は、好適な刺激によって免疫細胞(例えば、B細胞、ヘルパーT細胞、または細胞溶解性T細胞)へと成熟しうる細胞を意味する。免疫反応性細胞は、CD34+造血幹細胞、未熟および成熟T細胞ならびに未熟および成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性またはヘルパーT細胞の産生が望ましい場合は、免疫反応性細胞を細胞溶解性T細胞およびヘルパーT細胞の産生、分化および/または選択に好ましい条件下で腫瘍関連抗原を発現する細胞と接触させる。抗原に曝された際のT細胞前駆体の細胞溶解性T細胞の分化は、免疫系のクローン選択と類似である。
【0125】
いくつかの治療方法は患者の免疫系の反応に基づき、その結果、抗原提示細胞、例えば1または複数の腫瘍関連抗原を提示する癌細胞の溶解が導かれる。これに関して、例えば、腫瘍関連抗原とMHC分子との複合体に特異的な自己細胞障害性Tリンパ球が細胞異常を有する患者に投与される。かかる細胞障害性Tリンパ球のインビトロでの産生は知られている。T細胞の分化方法の例は、WO−A−9633265に記載されている。一般に、細胞、例えば血液細胞を含むサンプルを患者から採取し、細胞を、複合体を提示し、細胞障害性Tリンパ球(例えば、樹状細胞)の増殖を引き起こしうる細胞と接触させる。標的細胞はトランスフェクトされた細胞、例えばCOS細胞とすればよい。かかるトランスフェクトされた細胞はその表面に所望の複合体を提示し、細胞障害性Tリンパ球と接触すると、細胞障害性Tリンパ球の増殖を刺激する。クローン拡張された自己細胞障害性Tリンパ球は次いで患者に投与される。
【0126】
抗原特異的細胞障害性Tリンパ球の選択の別の方法において、MHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光発生テトラマーが、細胞障害性Tリンパ球の特異的クローンの検出に用いられる(Altman et al.、Science 274:94−96、1996; Dunbar et al.、Curr. Biol.8:413−416、1998)。可溶性MHCクラスI分子はβ2ミクログロブリンおよび該クラスI分子に結合するペプチド抗原の存在下でインビトロで折りたたまれる。MHC/ペプチド複合体は精製され、次いでビオチン標識される。テトラマーがビオチン化ペプチド−MHC複合体と標識化アビジン(例えば、フィコエリトリン)の混合によりモル比4:1にて形成される。テトラマーは次いで細胞障害性Tリンパ球、例えば末梢血またはリンパ節と接触される。テトラマーはペプチド抗原/MHCクラスI複合体を認識する細胞障害性Tリンパ球に結合する。テトラマーに結合した細胞は蛍光制御細胞ソーティングによってソートされ、反応性細胞障害性Tリンパ球が単離される。単離された細胞障害性Tリンパ球はインビトロで増殖させればよい。
【0127】
養子免疫伝達と称される治療方法において(Greenberg、J. Immunol. 136(5):1917、1986; Riddel et al.、Science 257:238、1992; Lynch et al.、Eur. J. Immunol. 21:1403−1410、1991; Kast et al.、Cell59:603−614、1989)、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)は治療すべき患者の細胞障害性Tリンパ球と混合され、その結果、特異的細胞障害性Tリンパ球が増殖する。増殖した細胞障害性Tリンパ球は特異的複合体を提示する特定の異常細胞によって特徴づけられる細胞異常を有する患者に投与される。細胞障害性Tリンパ球は次いで異常細胞を溶解し、それによって所望の治療効果が達成される。
【0128】
しばしば患者のT細胞レパートリーのなかで、この種の特異的複合体に低親和性を有するT細胞のみが増殖できる。というのは、高親和性のものは寛容の発生のために失われてしまうためである。ここで取って代わるのはT細胞受容体自体の移入であろう。このためにも、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)が健康な個体またはその他の種(例えば、マウス)の細胞障害性Tリンパ球と混合される。この結果、Tリンパ球が特異的複合体と以前に接触していないドナー生物由来の場合、高親和性の特異的細胞障害性Tリンパ球の増殖が起こる。これら増殖した特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体がクローニングされる。高親和性T細胞受容体が他の種からクローニングされている場合、それらは様々な程度でヒト化すればよい。かかるT細胞受容体は次いで遺伝子移入、例えば、レトロウイルスベクターの使用によって所望により患者のT細胞に導入される。次いで養子移入をこれら遺伝的に変化したTリンパ球を用いて行う(Stanislawski et al.、Nat Immunol. 2:962−70、2001; Kessels et al.、Nat Immunol. 2:957−61、2001)。
【0129】
上記治療態様は、少なくともいくつかの患者の異常細胞が腫瘍関連抗原とHLA分子との複合体を提示するという事実から出発する。かかる細胞はそれ自体公知の方法によって同定できる。複合体を提示する細胞が同定されたら出来るだけ早く、それらを細胞障害性Tリンパ球を含む患者からのサンプルと混合する。細胞障害性Tリンパ球が複合体を提示する細胞を溶解すると、腫瘍関連抗原の存在が推定できる。
【0130】
養子免疫伝達は本発明によって適用できる唯一の治療形態ではない。細胞障害性Tリンパ球はそれ自体公知の方法でインビボでも作ることが出来る。一つの方法では複合体を発現する非増殖性細胞を用いる。ここで用いられる細胞は通常複合体を発現する細胞、例えば、照射された腫瘍細胞または複合体の提示に必要な一方または両方の遺伝子(即ち、抗原ペプチドとそれを提示するHLA分子)をトランスフェクトされた細胞であろう。様々な細胞型を利用できる。さらに、目的の遺伝子の一方または両方を担持するベクターを使用することも可能である。特に好ましくはウイルスまたは細菌ベクターである。例えば、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸を、特定の組織または細胞型において該腫瘍関連抗原またはその断片の発現を制御するプロモーターおよびエンハンサー配列と機能的に連結させるとよい。核酸は発現ベクターに組み込んでもよい。発現ベクターは非修飾染色体外核酸、プラスミドまたはウイルスゲノムであり得、それに外来核酸を挿入すればよい。腫瘍関連抗原をコードする核酸はレトロウイルスゲノムに導入してもよく、それによって、核酸の標的組織または標的細胞のゲノムへの組込みが可能となる。かかる系において、微生物、例えば、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルスが目的の遺伝子を担持し、事実上、宿主細胞に「感染」する。別の好適な形態は組換えRNAの形態における腫瘍関連抗原の導入であり、これは例えば、リポソーム移入またはエレクトロポーレーションによって細胞に導入するとよい。その結果得られた細胞は目的の複合体を提示し、自己細胞障害性Tリンパ球に認識され、自己細胞障害性Tリンパ球が増殖する。
【0131】
抗原提示細胞へのインビボでの取り込みを可能とするための同様の効果は腫瘍関連抗原またはその断片とアジュバントとを混合することにより達成できる。腫瘍関連抗原またはその断片は、タンパク質、(例えば、ベクター内で)DNAまたはRNAとして表されうる。腫瘍関連抗原はプロセシングされてHLA分子に対するペプチドパートナーが生ずるが、その断片はさらなるプロセシングの必要なく提示されうる。後者は特に、それらがHLA分子に結合しうる場合である。完全な抗原がインビボで樹状細胞によってプロセシングされる投与形態が好ましい。というのはこれによって有効な免疫応答に必要とされるヘルパーT細胞応答も産生されうるからである(Ossendorpet al.、Immunol Lett. 74:75−9、2000;Ossendorp et al.、J. Exp. Med.187:693−702、1998)。一般に、例えば皮内注射によって患者に有効量の腫瘍関連抗原を投与することが可能である。しかし、注射はリンパ節内に行うことも可能である(Maloy et al.、ProcNatl Acad Sci USA 98:3299−303、2001)。それは樹状細胞への取り込みを促進する試薬と組み合わせて行うことも出来る。好ましい腫瘍関連抗原は、多くの癌患者の同種癌抗血清またはT細胞と反応するものを含む。しかし特に興味深いのは、自発的免疫応答が前から存在しないものに対するものである。明らかに、腫瘍を溶解しうるこれら免疫応答を誘導することが可能である(Keogh et al.、J. Immunol.167:787−96、2001; Appella etal.、Biomed Pept Proteins NucleicAcids 1:177−84、1995; Wentworth et al.、Mol Immunol. 32:603−12、1995)。
【0132】
本発明による医薬組成物はまた免疫化のためのワクチンとして使用することもできる。本発明によると、「免疫化」または「ワクチン接種」の語は、抗原に対する免疫応答の上昇または活性化を意味する。腫瘍関連抗原またはそれをコードする核酸の使用により癌に対する免疫効果を試験するために動物モデルを使用することができる。例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を導き、腫瘍関連抗原をコードする1または複数の核酸を投与すればよい。癌細胞に対する効果(例えば、腫瘍サイズの減少)は、核酸による免疫化の有効性のための尺度として測定すればよい。
【0133】
免疫化用組成物の一部として、1または複数の腫瘍関連抗原またはその刺激性の断片を1または複数のアジュバントとともに投与して免疫応答を誘導し、あるいは免疫応答を上昇させる。アジュバントは抗原に組み込まれるか、抗原と共に投与される物質であって、免疫応答を増強させるものである。アジュバントは、抗原蓄積(reservoir)の提供(細胞外またはマクロファージ中)、マクロファージの活性化および/または特定のリンパ球の刺激によって免疫応答を増強しうる。アジュバントは公知であり、これらに限定されないが以下を含む:一リン酸化脂質A(MPL、SmithKline Beecham)、サポニン、例えば、QS21(SmithKline Beecham)、DQS21 (SmithKlineBeecham; WO 96/33739)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1 (So et al.、Mol. Cell 7:178−186、1997)、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreig et al.、Nature 374:546−9、1995参照)および生分解性油、例えば、スクアレンおよび/またはトコフェロールから調製される様々な油中水乳剤。好ましくは、ペプチドはDQS21/MPLとの混合物として投与する。DQS21とMPLの比は典型的には約1:10〜10:1であり、好ましくは約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与用のワクチン製剤は典型的にはDQS21とMPLを約1μg〜約100μgの範囲で含む。
【0134】
患者の免疫応答を刺激するその他の物質を投与してもよい。例えば、リンパ球に対するその調節特性からサイトカインをワクチン接種に使用するのが可能である。かかるサイトカインには、例えばインターロイキン−12(IL−12)が含まれ、これは、ワクチンの保護作用を増強することが示されており(Science 268:1432−1434、1995参照)、またGM−CSFおよびIL−18も含まれる。
【0135】
免疫応答を増強し、それゆえワクチン接種に使用できる化合物が多数存在する。該化合物にはタンパク質または核酸の形態で提供される共刺激性分子が含まれる。かかる共刺激性分子の例はB7−1およびB7−2であり(それぞれCD80およびCD86)、樹状細胞(DC)上に発現されてT細胞上に発現するCD28分子と相互作用する。この相互作用は抗原/MHC/TCR−刺激(シグナル1)T細胞に対して共刺激(シグナル2)を提供し、それによって該T細胞の増殖およびエフェクター機能が増強される。B7はまたT細胞上のCTLA4(CD152)とも相互作用し、CTLA4およびB7リガンドについての研究により、B7−CTLA4相互作用は抗腫瘍免疫およびCTL増殖を増強しうることが示された(Zheng、P. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA95(11):6284−6289 (1998))。
【0136】
B7は典型的には腫瘍細胞では発現せず、したがってT細胞に対する有効な抗原提示細胞(APC)はない。B7発現の誘導は、腫瘍細胞がより有効に細胞障害性Tリンパ球の増殖とエフェクター機能を刺激するのを可能にする。B7/IL−6/IL−12の組み合わせによる共刺激により、T細胞集団におけるIFN−ガンマおよびTh1−サイトカインプロフィールの誘導が明らかとなり、その結果さらにT細胞活性が増強される(Gajewskiet al.、J. Immunol.154:5637−5648 (1995))。
【0137】
細胞障害性Tリンパ球の完全な活性化および完全なエフェクター機能には、該ヘルパーT細胞上のCD40リガンドと樹状細胞によって発現されるCD40分子との相互作用を介するヘルパーT細胞の関与が必要である(Ridge et al.、Nature 393:474(1998)、Bennett et al.、Nature 393:478 (1998)、Schonberger et al.、Nature 393:480 (1998))。この共刺激シグナルのメカニズムはおそらくB7産生の上昇と関係があり、該樹状細胞(抗原提示細胞)によるIL−6/IL−12産生を伴う。したがってCD40−CD40L相互作用はシグナル1(抗原/MHC−TCR)とシグナル2(B7−CD28)の相互作用を補充する。
【0138】
樹状細胞の刺激のための抗−CD40抗体の使用は、腫瘍抗原に対する応答を直接増強すると考えられ、これは通常炎症応答の範囲外であるか、あるいは非専門抗原提示細胞(腫瘍細胞)によって提示されるものである。かかる状況において、ヘルパーTおよびB7共刺激シグナルは提供されない。このメカニズムは、抗原でパルスされた樹状細胞に基づく治療に関係して利用されうる。
【0139】
本発明はまた、核酸、ポリペプチドまたはペプチドの投与を提供する。ポリペプチドおよびペプチドはそれ自体公知の方法で投与すればよい。一つの態様において、核酸はエキソビボ方法で投与され、即ち、患者から細胞を取り出して、該細胞の遺伝子操作により腫瘍関連抗原を取り込ませ、変化した細胞を患者に再導入する。これは一般に患者の細胞への遺伝子の機能的コピーのインビトロでの導入および遺伝的に変化した細胞の患者への再導入を含む。遺伝子の機能的コピーは調節要素の機能的制御下にあり、それによって遺伝子が遺伝的に改変された細胞で発現する。トランスフェクションおよび形質導入方法は当業者に知られている。本発明はまた、ベクター、例えば、ウイルスおよび標的制御リポソームを用いることによるインビボでの核酸の投与も提供する。
【0140】
好適な態様において、腫瘍関連抗原をコードする核酸の投与用のウイルスベクターは以下からなる群から選択される:アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスおよび弱毒ポックスウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様粒子。特に好ましいのはアデノウイルスおよびレトロウイルスである。レトロウイルスは典型的には複製欠損のものである(即ち、それらは感染性粒子を産生できない)。
【0141】
本発明によるとインビトロまたはインビボで細胞に核酸を導入するための様々な方法を利用できる。この種の方法には以下が含まれる:核酸CaPO4沈殿のトランスフェクション、DEAEによる核酸トランスフェクション、目的の核酸を担持する上記ウイルスによるトランスフェクションまたは感染、リポソーム媒介トランスフェクションなど。特定の態様において、特定の細胞に核酸を送達するのが好ましい。かかる態様において、細胞への核酸の投与に用いられる担体(例えば、レトロウイルスまたはリポソーム)は結合標的制御分子を有していてもよい。例えば、分子、例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質または標的細胞上の受容体のリガンドに特異的な抗体を核酸担体に組み込むか結合すればよい。好ましい抗体は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームを介した核酸の投与が望ましい場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込んで、標的制御および/または取り込みを可能とすればよい。かかるタンパク質には、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはその断片、取り込まれるタンパク質に対する抗体、細胞内部位に案内するタンパク質等が含まれる。
【0142】
本発明の治療用組成物は医薬上許容される調製物中で投与すればよい。かかる調製物は通常、医薬上許容される濃度の塩、バッファー物質、保存料、担体、補助免疫増強物質、例えば、アジュバント、CpGおよびサイトカインならびに適切な場合、治療的に活性なその他の化合物を含む。
【0143】
本発明の治療的に活性な化合物はいずれの常套経路で投与してもよく、かかる経路には注射または注入によるものが含まれる。投与は例えば以下のように行えばよい:経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または経皮。好ましくは、抗体は肺噴霧剤により治療的に投与する。アンチセンス核酸は好ましくは、ゆっくりと静脈内から投与する。
【0144】
本発明の組成物は有効量にて投与される。「有効量」とは、単独でまたはさらなる用量とともに、所望の反応または所望の効果を達成する量をいう。1または複数の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる特定の疾患または特定の症状を治療する場合、所望の反応は疾患の経過の阻害である。これには疾患の進行の遅延が含まれ、特に、疾患の進行の妨害である。疾患または症状の治療における所望の反応は該疾患または症状の発症の遅延または発症の予防であってよい。
【0145】
本発明の組成物の有効量は治療すべき症状、疾患の重症度、患者の個々のパラメーター、例えば、年齢、生理状態、身長および体重、治療期間、併用療法の種類(存在する場合)、投与の特定の経路およびそういった因子に依存する。
【0146】
本発明の医薬組成物は好ましくは無菌であり、所望の反応または所望の効果を達成するために有効量の治療的に活性な物質を含む。
【0147】
本発明の組成物の投与用量は様々なパラメーター、例えば、投与タイプ、患者の症状、望ましい投与期間等に依存する。患者における反応が最初の用量で不十分な場合、より高い用量(あるいは別のより局所的な投与経路により達成される有効に高い用量)を用いればよい。
【0148】
一般に、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの用量の腫瘍関連抗原を製剤し、治療用または免疫応答の誘導または上昇のために投与する。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与が望ましい場合、1ng〜0.1mgの用量を製剤し、投与する。
【0149】
本発明の医薬組成物は、一般に医薬上許容される組成物中で医薬上許容される量を投与する。「医薬上許容される」の語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質をいう。この種の調製物は通常、塩、バッファー物質、保存料、担体および適当な場合はその他の治療的に活性な化合物を含む。医薬中に使用する場合、塩は医薬上許容されるものでなければならない。しかし、医薬上許容されない塩を用いて医薬上許容される塩を調製してもよく、これも本発明に含まれる。この種の薬理上および医薬上許容される塩としてはこれらに限定されないが、以下の酸から調製されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。医薬上許容される塩はアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製してもよい。
【0150】
本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体を含んでいてもよい。本発明によると、「医薬上許容される担体」の語は、1または複数のヒトへの投与に好適な適合性の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質をいう。「担体」の語は、適用を促進するためにその中に活性成分が混合される天然または合成の有機または無機成分をいう。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望の医薬効果を実質的に阻害する相互作用が起こらないようなものである。
【0151】
本発明の医薬組成物は好適なバッファー物質、例えば塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸を含んでいてもよい。
【0152】
医薬組成物は適当である場合、好適な保存料、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールを含んでいてもよい。
【0153】
医薬組成物は通常均一な剤形において提供され、それ自体公知の方法で調製できるものである。本発明の医薬組成物はカプセル、錠剤、トローチ剤、懸濁液、シロップ、エリキシルの形態または例えば乳濁液の形態であってよい。
【0154】
非経口投与に好適な組成物は通常、活性化合物の無菌の水性または非水性調製物を含み、それは好ましくはレシピエントの血液と等張である。許容される担体および溶媒の例は、リンゲル液および等張食塩水である。さらに、通常、無菌の不揮発性油が溶液または懸濁液の媒体として用いられる。
【0155】
本発明を以下の図面と実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは単に例示の目的であり、限定を意図するものではない。詳細な説明および実施例の記載により、本発明に含まれうるさらなる態様は当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、結腸癌組織診におけるGPR35 mRNA発現である。
【図2】図2は、正常および腫瘍組織におけるGUCY2C mRNA発現の定量的PCR分析である。
【図3】図3は、腫瘍特異的GUCY2Cスプライスバリアントの同定である。
【図4】図4は、正常肺および肺癌における選択的SCGB3A発現である。
【図5】図5は、胃、食道、胃癌および膵臓癌におけるクローディン18A2.1発現である。
【図6】図6は、腎臓および腎臓細胞癌におけるSLC13A1発現である。
【図7】図7は、結腸、結腸癌および胃癌におけるCLCA1発現である。
【図8】図8は、結腸および結腸癌におけるFLJ21477発現である。
【図9】図9は、結腸および結腸癌におけるFLJ20694発現である。
【図10】図10は、胃、肺および肺癌におけるvon Ebner発現である。
【図11】図11は、胸腺、肺および肺癌におけるPlunc発現である。
【図12】図12は、肺、肺癌および甲状腺におけるSLC26A9発現である。
【図13】図13は、胃、卵巣、肺および肺癌におけるTHC1005163発現である。
【図14】図14は、腎臓および腎臓細胞癌におけるLOC134288発現である。
【図15】図15は、腎臓および腎臓細胞癌におけるTHC943866発現である。
【図16】図16は、結腸および結腸癌におけるFLJ21458発現である。
【図17】図17は、GPR35の細胞内局在である。
【図18】図18は、GPR35の定量的発現である。
【図19】図19は、GUCY2Cの定量的発現である。
【図20】図20は、SCGB3A2の定量的発現である。
【図21】図21は、SCGB3A2−特異的抗体による免疫蛍光である。
【図22】図22は、クローディン18スプライスバリアントの模式図である。
【図23】図23は、クローディン−18、バリアントA1の定量的発現である。
【図24】図24は、クローディン18、バリアントA2の定量的発現である。
【図25】図25は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
【図26】図26は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
【図27】図27は、クローディン18のC−末端細胞外ドメインに対する抗体の使用である。
【図28】図28は、クローディン18A1−特異的抗体の使用である。
【図29】図29は、ウェスタンブロットにおけるクローディン18A2の検出である。
【図30】図30は、胃および胃腫瘍からのサンプルでのクローディン18A2ウェスタンブロッティングである。
【図31】図31は、肺腫瘍におけるクローディン18の発現である。
【図32】図32は、胃腫瘍組織におけるクローディン18A2−特異的抗体を用いるクローディン18の免疫組織化学分析である。
【図33】図33は、クローディン18−特異的ポリクローナル抗血清による胃−特異的Snu16細胞の間接的免疫蛍光である。
【図34】図34は、SLC13A1の定量的発現である。
【図35】図35は、SLC13A1の細胞内局在である。
【図36】図36は、CLCA1の定量的発現である。
【図37】図37は、FLJ21477の定量的発現である。
【図38】図38は、FLJ20694の定量的発現である。
【図39】図39は、FLJ21458の定量的発現である。
【図40】図40は、FLJ21458−特異的抗体による免疫蛍光である。
【図41】図41は、配列である。
【0157】
図面の簡単な説明
図1は、結腸癌組織診におけるGPR35 mRNA発現である。
DNA−無含有RNAを用いたRT−PCR研究は、ほとんどの結腸癌組織診でのGPR35発現を示す。一方、正常組織においては検出可能な発現はない(1乳房、2−肺、3−リンパ節、4胸腺、5結腸、6−15結腸癌、16−ネガティブコントロール)。
【0158】
図2は、正常および腫瘍組織におけるGUCY2C mRNA発現の定量的PCR分析である。
GUCY2C−特異的プライマー(配列番号22−23)を用いたリアルタイムPCR研究は、正常回腸、結腸、およびすべての結腸癌組織診における選択的mRNA発現を示す。顕著な量のGUCY2C転写産物が肝臓における結腸癌転移にも検出された。
【0159】
図3は、腫瘍特異的GUCY2Cスプライスバリアントの同定である。
正常結腸組織および結腸癌からのPCR産物をクローニングし、両群からのクローンを制限分析(EcoR I)によって確認し、配列決定した。
【0160】
図4は、正常肺および肺癌における選択的SCGB3A発現である。
遺伝子特異的SCGB3A2プライマー(配列番号37、38)を用いたRT−PCR分析は、正常肺(レーン8、14−15)および肺癌組織診(レーン16−24)においてもっぱらのcDNA増幅を示す(1−肝臓−N、2PBMC−N、3リンパ節−N、4胃−N、5精巣−N、6乳房−N、7腎臓−N、8−肺−N、9−胸腺−N、10−卵巣−N、11副腎−N、12脾臓−N、14−15−肺−N、16−24−肺癌、25ネガティブコントロール)。
【0161】
図5は、胃、食道、胃癌および膵臓癌におけるクローディン18A2.1発現である。
クローディン18A2.1−特異的プライマー(配列番号39、40)を用いたRT−PCR分析により、本発明によると8/10の胃癌組織診および3/6の膵臓癌組織診における顕著なクローディン18A2.1発現が示された。顕著な発現は胃および正常食道組織においても検出された。これに対して、卵巣および卵巣癌においては発現は検出されなかった。
【0162】
図6は、腎臓および腎臓細胞癌におけるSLC13A1発現である。
SLC13A1−特異的プライマー(配列番号49、50)を用いたRT−PCR分析により、7/8の腎臓細胞癌サンプルにおける発現が示された。しかし、正常組織における転写産物はもっぱら腎臓において検出された(1−2−腎臓、3−10−腎臓細胞癌、11乳房、12肺、13肝臓、14結腸、15リンパ節、16脾臓、17食道、18胸腺、19甲状腺、20PBMC、21卵巣、22精巣)。
【0163】
図7は、結腸、結腸癌および胃癌におけるCLCA1発現である。
CLCA1−特異的プライマー(配列番号67、68)を用いたRT−PCR研究により結腸における選択的発現が確認され、調べた結腸癌(3/7)および胃癌サンプル(1/3)における高い発現が示された。その他の正常組織(NT)では発現が無いか、非常に弱いことが示された。
【0164】
図8は、結腸および結腸癌におけるFLJ21477発現である。
FLJ21477−特異的プライマー(配列番号69、70)によるRT−PCR研究により結腸における選択的発現、そしてさらに様々なレベルの調べた結腸癌サンプル(7/12)における発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0165】
図9は、結腸および結腸癌におけるFLJ20694発現である。
FLJ20694−特異的プライマー(配列番号71、72)を用いたRT−PCR研究により、結腸における選択的発現および様々なレベルの調べた結腸癌サンプル(5/9)における発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0166】
図10は、胃、肺および肺癌におけるvon Ebner発現である。
von Ebner−特異的プライマー(配列番号73、74)を用いたRT−PCR研究により、胃、肺および(5/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0167】
図11は、胸腺、肺および肺癌におけるPlunc発現である。
Plunc−特異的プライマー(配列番号75、76)を用いたRT−PCR研究により、胸腺、肺および(6/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0168】
図12は、肺、肺癌および甲状腺におけるSLC26A9発現である。
SLC26A9−特異的プライマー(配列番号77、78)を用いたRT−PCR研究により、肺およびすべての(13/13)調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された。その他の正常組織(NT)は甲状腺を除き、発現を示さなかった。
【0169】
図13は、胃、卵巣、肺および肺癌におけるTHC1005163発現である。
THC1005163−特異的プライマー(配列番号79)および非特異的オリゴdTタグプライマーを用いたRT−PCR研究により、胃、卵巣、肺および(5/9)の肺癌組織診における発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0170】
図14は、腎臓および腎臓細胞癌におけるLOC134288発現である。
LOC134288−特異的プライマー(配列番号80、81)を用いたRT−PCR研究により、腎臓および(5/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された。
【0171】
図15は、腎臓および腎臓細胞癌におけるTHC943866発現である。
THC943866−特異的プライマー(配列番号82、83)を用いたRT−PCR研究により腎臓および(4/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された。
【0172】
図16は、結腸および結腸癌におけるFLJ21458発現である。
FLJ21458−特異的プライマー(配列番号86、87)を用いたRT−PCR研究により結腸および(7/10)の調べた結腸癌組織診における選択的発現が示された。(1−2−結腸、3−肝臓、4−PBMC、5−脾臓、6前立腺、7腎臓、8卵巣、9皮膚、10回腸、11肺、12精巣、13−22結腸癌、23−ネガティブコントロール)。
【0173】
図17は、GPR35の細胞内局在である。
GPR35−GFP融合タンパク質を発現するプラスミドのトランスフェクション後のGPR35の細胞内局在の検出のための免疫蛍光である。矢印は蛍光性GFPの膜結合蛍光を示す。
【0174】
図18は、GPR35の定量的発現である。
A. GPR35−特異的プライマー(配列番号88、89)を用いた定量的RT−PCRは、腸、結腸腫瘍サンプルおよび腸腫瘍からの転移における選択的発現を示す。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、胃、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、輸卵管、子宮内膜、小脳、脳。
B.結腸腫瘍およびその転移におけるGPR35の罹患率。GPR35はケースの90%以上で腫瘍および転移の両方に発現する。
【0175】
図19は、GUCY2Cの定量的発現である。
GUCY2C−特異的プライマー(配列番号98、99)による定量的RT−PCRは、正常結腸および胃組織における高い選択的発現(A)および結腸および胃腫瘍サンプルにおけるGUCY2C−特異的発現(B)を示す。GUCY2Cは11/12の結腸癌および7/10の胃癌において検出可能である。
【0176】
図20は、SCGB3A2の定量的発現である。
SCGB3A2−特異的プライマー(配列番号103、104)を用いた定量的RT−PCRは、肺サンプルおよび肺腫瘍サンプルにおける選択的発現を示す。19/20の肺腫瘍サンプルはSCGB3A2−陽性であり、SCGB3A2はサンプルの50%以上で少なくとも10倍過剰発現している。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、胃、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、輸卵管、子宮内膜、小脳、脳。
【0177】
図21は、SCGB3A2−特異的抗体による免疫蛍光である。
COS7細胞をSCGB3A2−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。
A.トランスフェクトした融合タンパク質のSCGB3A2−特異的ウサギ抗血清(配列番号105により免疫化)による検出。
B.GFP蛍光によるトランスフェクトした融合タンパク質の検出。
C.AおよびBからの2つの蛍光の重ね合わせ。黄色が2つの蛍光が重なり合った点でみられ、したがってSCGB3A2抗血清の特異性が示される。
【0178】
図22は、クローディン18スプライスバリアントの模式図である。
2つのクローディン18スプライスバリアントA1およびA2はN末端において異なり、異なる可能性のあるグリコシル化部位を示す。
【0179】
図23は、クローディン18、バリアントA1の定量的発現である。
クローディン−A1は多数の腫瘍組織において高度に活性化されている。特に強い発現が胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓癌および食道癌においてみられる。
【0180】
図24は、クローディン18、バリアントA2の定量的発現である。
バリアントA2は、バリアントA1と同様に、多くの腫瘍において活性化されている。
【0181】
図25は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
(上)クローディン18A2−陽性胃癌細胞(SNU−16)のペプチド(配列番号17)による免疫化によって産生された抗体での染色。膜染色は特に細胞/細胞相互作用領域において強く表れる。A免疫前、MeOH;B−免疫血清MeOH、5μg/ml;
(下)クローディン18A2−GFP−トランスフェクト293T細胞における共存分析による抗体の特異性を示す。Aクローディン18A2GFP;B抗−クローディン−A2;C重ね合わせ。
【0182】
図26は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
ペプチド(配列番号113、N末端に位置する細胞外ドメイン)による免疫化によって産生された抗体によるクローディン18A2−陽性胃癌細胞(SNU 16)の膜染色。
E−カドヘリンに対するモノクローナル抗体を対比染色法に用いた。
A抗体;B対比染色法;C重ね合わせ。
【0183】
図27は、クローディン18のC−末端細胞外ドメインに対する抗体の使用である。
(左、上および下)ペプチド(配列番号116、C末端に位置する細胞外ドメイン)による免疫化によって産生された抗体によるクローディン18A2−陽性胃癌細胞(SNU 16)の膜染色。E−カドヘリンに対するモノクローナル抗体を対比染色法に用いた(右、上、下)。
【0184】
図28は、クローディン18A1−特異的抗体の使用である。
(上)クローディン18A1−特異的ペプチド(配列番号115)による免疫化によって産生された抗体による胃癌細胞(SNU 16;クローディン18A2陽性)の弱い〜無い染色。
A−抗−E−カドヘリン;B抗−クローディン18A1;C重ね合わせ。
(下)クローディン18A1−GFP−トランスフェクト293T細胞における共存分析による抗体の特異性を示す。
A−GFP−クローディン18A1;B−抗−クローディン18A1;C−重ね合わせ。
【0185】
図29は、ウェスタンブロットにおけるクローディン18A2の検出である。
配列番号17のエピトープに対するクローディン18A2−特異的抗体を用いた様々な健康組織からの可溶化液を用いたウェスタンブロッティング。1胃;2精巣;3皮膚;4乳房;5肝臓;6結腸;7肺;8腎臓;9リンパ節。
【0186】
図30は、胃および胃腫瘍からのサンプルでのクローディン18A2ウェスタンブロッティングである。
胃および胃腫瘍からの可溶化液をブロットし、配列番号17を有するエピトープに対するクローディン18A2−特異的抗体を用いて試験した。胃腫瘍ではクローディン−18A2のグリコシル化形態が少なかった。胃可溶化液のPNGaseF処理により低−グリコシル化形態の形成が導かれる。
左:1−胃No#A;2−胃Tu#A;3胃No#B;4胃Tu#B
右:1−胃No#A;2−胃No#B;3−胃No#B+PNGaseF;4−胃Tu#C;5胃Tu#D;6胃Tu#D+PNGaseF
【0187】
図31は、肺腫瘍におけるクローディン18の発現である。
低−グリコシル化クローディン−18A2バリアントを図30にしたがって肺腫瘍において検出した。1胃No;2胃Tu;3 9−肺Tu
【0188】
図32は、胃腫瘍組織におけるクローディン18A2−特異的抗体を用いるクローディン18の免疫組織化学分析である。
【0189】
図33は、クローディン18−特異的ポリクローナル抗血清による胃−特異的Snu16細胞の間接的免疫蛍光である。
A.免疫化の前に作成された免疫前血清による染色;B.クローディン18−特異的血清による染色。
【0190】
図34は、SLC13A1の定量的発現である。
SLC13A1−特異的プライマー(配列番号121、122)を用いた定量的RT−PCRにより、正常腎臓組織における高い選択的発現(A)および腎臓細胞癌におけるSLC13A1−特異的発現が示される(B)。SLC13A1転写は5/8の腎臓細胞癌において検出可能である。
【0191】
図35は、SLC13A1の細胞内局在である。
SLC13A1−GFP融合タンパク質を提供するプラスミドでのトランスフェクション後のSLC13A1の細胞内局在を示す免疫蛍光。SLC13A1融合タンパク質の膜結合蛍光が明らかにみられる(トランスフェクト細胞のまわりの環として)。
【0192】
図36は、CLCA1の定量的発現である。
CLCA1−特異的プライマー(配列番号125、126)を用いた定量的RT−PCRにより、正常結腸組織および胃組織における高い選択的発現(A)および結腸および胃腫瘍サンプルにおけるCLCA1−特異的発現(B)が示される。CLCA1は6/12の結腸癌および7/10の胃癌において検出可能である。
【0193】
図37は、FLJ21477の定量的発現である。
FLJ21477−特異的プライマー(配列番号127、128)を用いた定量的RT−PCRにより、正常結腸および胃組織における高い選択的発現ならびに胸腺、食道および脳における弱い発現(A)そして結腸腫瘍サンプルにおけるFLJ21477−特異的発現(B)が示される。FLJ21477は11/12の結腸癌において検出可能である。
【0194】
図38は、FLJ20694の定量的発現である。
FLJ20694−特異的プライマー(配列番号129、130)を用いた定量的RT−PCRにより、正常結腸および胃組織における高い選択的発現(A)および結腸および胃腫瘍サンプルにおけるFLJ20694−特異的過剰発現(B)が示される。FLJ20694は、11/12の結腸癌および7/10の胃癌において検出可能である。
【0195】
図39は、FLJ21458の定量的発現である。
FLJ21458−特異的プライマー(配列番号133、134)を用いた定量的RT−PCRにより、精巣、胃および腸組織における選択的発現が示される。さらに、FLJ21458−特異的転写産物が20/20の結腸腫瘍および7/11の結腸転移において検出可能であった。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、輸卵管、子宮内膜、小脳、脳。
【0196】
図40は、FLJ21458−特異的抗体による免疫蛍光である。
(上)293細胞をFLJ21458−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。
A:トランスフェクトした融合タンパク質のFLJ21458−特異的ウサギ抗血清(配列番号136での免疫化)による検出。
B:トランスフェクトした融合タンパク質のGFP蛍光による検出。
C:AとBからの2つの蛍光の重ね合わせ。
黄色が2つの蛍光が重なる点において生じ、したがってFLJ21458抗血清の特異性が示される。
(下)内因的にFLJ21458を合成するSnu16細胞の分析。
A:FLJ21458−特異的ウサギ抗血清(配列番号136による免疫化)を用いたタンパク質検出。
B:膜タンパク質E−カドヘリンの検出。
C:AとBからの2つの蛍光の重ね合わせ。
黄色が2つの蛍光が重なる点において生じ、FLJ21458の膜局在を示す。
【0197】
図41は、配列である。
参照される配列がここで作られ、示される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0198】
材料および方法「インシリコ」、「電子工学」および「ネットワーク上クローニング」の語は、データベースに基づく方法の使用を意味し、これはまた研究室での実験方法をシュミレーションするのにも用いられる。
【0199】
特に断りのない限り、その他のすべての用語および表現は当業者に理解されるように用いられる。言及する技術および方法はそれ自体公知の方法で行い、例えば、以下に記載されている。Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2nd Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、製造業者の指示にしたがって行われる。
【0200】
新規な腫瘍関連遺伝子の決定のためのデータマイニングに基づく戦略2つのインシリコ戦略、即ち、GenBankキーワード検索およびcDNAxProfilerを組み合わせた。NCBI ENTREZ Search and Retrieval System (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez)を用いて、GenBank検索を行い、特異的組織において特異的に発現するものとして解釈される候補遺伝子を検索した(Wheeler et al.、Nucleic AcidsResearch 28:10−14、2000)。
【0201】
キーワード、例えば「結腸−特異的遺伝子」、「胃−特異的遺伝子」または「腎臓−特異的遺伝子」、について検索を行い、候補遺伝子(GOI、目的の遺伝子)をデータベースから抽出した。生物について「ヒト」、分子タイプについて「mRNA」と制限することによってこれらデータベースのすべての情報の一部に制限して検索した。見いだされたGOIのリストを同じ配列についての違う名前を決定して検証および修正し、かかる重複を排除した。
【0202】
キーワード検索によって得られたすべての候補遺伝子を次にその組織分布に関して「電子工学ノザン(eNorthen)」方法によって調べた。eNorthernは、GOI配列とEST(expressed sequence tag)データベース(Adams et al.、Science 252:1651、1991)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)とのアラインメントに基づく。挿入されたGOIに相同的であることが見いだされた各ESTの組織起源を決定することが出来、そのようにしてすべてのESTの和から、GOIの組織分布の予備的評価が得られる。非器官特異的正常組織からのESTと相同性の無いGOIについてのみさらなる研究を行った。この評価では、共有財産が間違って解釈されたcDNAライブラリーを含むということも考慮した(Scheurle et al.、Cancer Res. 60:4037−4043、2000)(www.fau.edu/cmbb/publications/cancergenes6.htm)。
【0203】
使用した第二のデータマイニング方法はNCBI Cancer GenomeAnatomy ProjectのcDNA xProfilerであった(http://cgap.nci.nih.gov/Tissues/xProfiler)(Hillier et al.、Genome Research 6:807−828、1996; Pennisi、Science276:1023−1024、1997)。これによってデータベースに寄託されたトランスクリプトームのプールを論理演算子によって互いに関連づけることが可能となる。本発明者らは混合ライブラリーを除き、例えば結腸から調製されたすべての発現ライブラリーが割り当てられたプールAを規定した。結腸以外の正常組織から調製されたすべてのcDNAライブラリーをプールBに割り当てた。一般に、すべてのcDNAライブラリーを基礎となる調製方法とは独立に使用し、ただしサイズ>1000のものだけを許容した。プールBをデジタル処理でBUT NOT演算子によってプールAから差し引いた。このようにして見いだされたGOIのセットをまたeNorthern研究に供し、文献調査によって確認した。
【0204】
この組み合わせデータマイニングは全部で公共財産における約13000の全長遺伝子を含み、器官−特異的発現を示す可能性のある遺伝子を予測した。
【0205】
すべてのその他の遺伝子はまず特異的RT−PCRによって正常組織において評価した。非器官特異的正常組織において発現していることが判明したすべてのGOIは偽陽性と見なす必要があり、さらなる研究から除外した。残りのGOIを様々な腫瘍組織の大きなパネルにおいて研究した。以下に示す抗原は、腫瘍細胞において活性化されていることが判明した。
【0206】
RNA抽出、ポリ−d(T)プライムドcDNAの調製および常套のRT−PCR分析トータルRNAをカオトロピック剤としてグアニジウムイソチオシアナートを用いることによりネイティブな組織材料から抽出した(Chomczynski & Sacchi、Anal. Biochem. 162:156−9、1987)。酸性フェノールによる抽出およびイソプロパノール沈降の後、該RNAをDEPC−処理水に溶解した。
【0207】
2−4μgのトータルRNAからの第一鎖cDNA合成をSuperscript II(Invitrogen)によって製造業者の指示に従って20μlの反応混合物中において行った。用いたプライマーはdT(18)オリゴヌクレオチドであった。cDNAの完全性と質を30サイクルのPCRにおいてp53の増幅によって確認した(センスCGTGAGCGCTTCGAGATGTTCCG、アンチセンスCCTAACCAGCTGCCCAACTGTAG、ハイブリダイゼーション温度67℃)。
【0208】
第一鎖cDNAの記録を多数の正常組織および腫瘍集団から調製した。発現研究のために、0.5μlのこれらcDNAを30μlの反応混合物において増幅した。これにはGOI−特異的プライマー(以下参照)および1UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いた。各反応混合物は、0.3mMdNTP、0.3μM各プライマーおよび3μl10×反応バッファーを含むものであった。
【0209】
プライマーは2つの異なるエキソン中に位置するように選択し、偽陽性結果を導く汚染ゲノムDNAによる妨害の排除を、非逆転写DNAをテンプレートとして試験することによって確認した。HotStarTaq DNAポリメラーゼ活性化のための95℃、15分の後、35サイクルのPCRを行った(1分94℃、1分、特定のハイブリダイゼーション温度、2分72℃および最終伸長72℃6分)。
【0210】
20μlのこの反応を分画し、臭化エチジウム染色アガロースゲルで分析した。
【0211】
示すハイブリダイゼーション温度における対応する抗原の発現分析に以下のプライマーを用いた。
【0212】
GPR35(65℃)
センス:5’−AGGTACATGAGCATCAGCCTG−3’
アンチセンス:5’−GCAGCAGTTGGCATCTGAGAG−3’
GUCY2C(62℃)
センス:5’−GCAATAGACATTGCCAAGATG−3’
アンチセンス:5’−AACGCTGTTGATTCTCCACAG−3’
SCGB3A2(66℃)
センス:5’−CAGCCTTTGTAGTTACTCTGC−3’
アンチセンス:5’−TGTCACACCAAGTGTGATAGC−3’
クローディン18A2(68℃)
センス1:5’−GGTTCGTGGTTTCACTGATTGGGATTGC−3’
アンチセンス1:5’−CGGCTTTGTAGTTGGTTTCTTCTGGTG−3’
センス2:5’−TGTTTTCAACTACCAGGGGC−3’
アンチセンス2:5’−TGTTGGCTTTGGCAGAGTCC−3’
クローディン18A1(64℃)
センス:5’−GAGGCAGAGTTCAGGCTTCACCGA−3’
アンチセンス:5’−TGTTGGCTTTGGCAGAGTCC−3’
SLC13A1(64℃)
センス:5’−CAGATGGTTGTGAGGAGTCTG−3’
アンチセンス:5’−CCAGCTTTAACCATGTCAATG−3’
CLCA1(62℃)
センス:5’−ACACGAATGGTAGATACAGTG−3’
アンチセンス:5’−ATACTTGTGAGCTGTTCCATG−3’
FLJ21477(68℃)
センス:5’−ACTGTTACCTTGCATGGACTG−3’
アンチセンス:5’−CAATGAGAACACATGGACATG−3’
FLJ20694(64℃)
センス:5’−CCATGAAAGCTCCATGTCTA−3’
アンチセンス:5’−AGAGATGGCACATATTCTGTC
Ebner(70℃)
センス:5’−ATCGGCTGAAGTCAAGCATCG−3’
アンチセンス:5’−TGGTCAGTGAGGACTCAGCTG−3’
Plunc(55℃)
センス:5’−TTTCTCTGCTTGATGCACTTG−3’
アンチセンス:5’−GTGAGCACTGGGAAGCAGCTC−3’
SLC26A9(67℃)
センス:5’−GGCAAATGCTAGAGACGTGA−3’
アンチセンス5’−AGGTGTCCTTCAGCTGCCAAG−3’
THC1005163(60℃)
センス:5’−GTTAAGTGCTCTCTGGATTTG−3’
LOC134288(64℃)
センス:5’−ATCCTGATTGCTGTGTGCAAG−3’
アンチセンス:5’−CTCTTCTAGCTGGTCAACATC−3’
THC943866(59℃)
センス:5’−CCAGCAACAACTTACGTGGTC−3’
アンチセンス:5’−CCTTTATTCACCCAATCACTC−3’
FLJ21458(62℃)
センス:5’−ATTCATGGTTCCAGCAGGGAC−3’
アンチセンス:5’−GGGAGACAAAGTCACGTACTC−3’。
【0213】
ランダムヘキサマー−プライム化cDNAの調製および定量的リアルタイムPCRいくつかの遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって定量した。PCR産物をインターカレートレポーター色素としてSYBR Greenを用いて検出した。SYBR Greenのレポーター蛍光は溶液中で抑制されており、色素は二本鎖DNA断片と結合した後にのみ活性になる。各PCRサイクルの後のGOI−特異的プライマーを用いた特異的増幅の結果としてのSYBR Green蛍光の上昇を定量に用いる。標的遺伝子の発現を絶対的にあるいは調べる組織において一定に発現しているコントロール遺伝子の発現と比べて相対的に定量する。発現はΔΔ−Ct法(PE Biosystems、USA)を用いていわゆるハウスキーピング遺伝子としての18s RNAに対するサンプルの標準化の後に測定した。反応は二連で行い、三連で測定した。QuantiTect SYBRGreen PCRキット(Qiagen、Hilden)を製造業者の指示に従って用いた。cDNAを高容量cDNA Archive Kit(PE Biosystems、USA)を製造業者の指示に従って使用して、ヘキサマープライマーを用いて合成した。希釈したcDNAの各5μl部分を総容量25μlのPCRに用いた:センスプライマー300nM、アンチセンスプライマー300nM;最初の変性95℃、15分;95℃、30秒;30秒のアニーリング;72℃、30秒;40サイクル。使用したプライマーの配列はそれぞれの実施例に示す。
【0214】
クローニングおよび配列分析
全長および遺伝子断片のクローニングは常套方法によって行った。配列を確かめるため、対応する抗原をプルーフリーディングポリメラーゼpfu(Stratagene)を用いて増幅した。PCRの完了後、アデノシンを、HotStarTaq DNAポリメラーゼによってアンプリコンの末端に連結し、製造業者の指示に従って断片をTOPO−TAベクターにクローニングした。配列決定は業者サービスによって行った。配列を常套の予測プログラムとアルゴリズムを用いて分析した。
【0215】
ウェスタンブロッティング
標的タンパク質を含む可能性のある細胞培養物(標的遺伝子の内因性発現または標的タンパク質をコードする発現ベクターのトランスフェクション後の標的タンパク質の合成)または組織サンプルからの細胞を1%SDS溶液で溶解する。SDSは可溶化液に存在するタンパク質を変性させる。実験混合物の可溶化液を8−15%変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDS含有)での電気泳動によって予想タンパク質サイズに応じてサイズによって分画した(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)。タンパク質を半乾燥電気ブロッティング法(Biorad)によってニトロセルロースメンブレン(Schleicher & Schull)にトランスファーし、メンブレン上で所望のタンパク質が検出される。この目的のため、メンブレンをまず(例えば、粉乳により)ブロッキングし、次いで1:20−1:200(抗体の特異性による)の希釈度の特異的抗体とともに60分インキュベートする。洗浄工程の後、メンブレンをマーカー(例えば、酵素、例えば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)と結合させた一次抗体を認識する二次抗体とインキュベートする。さらなる洗浄工程の後、標的タンパク質を酵素反応(例えば、ECL、Amersham Bioscience)によるメンブレン上の発色または化学発光反応によって可視化する。結果を適当なカメラで撮影することにより記録する。
【0216】
タンパク質修飾の分析は通常ウェスタンブロッティングによって行う。通常数kDaのサイズを有するグリコシル化により、標的タンパク質の総分子量が大きくなり、これはSDS−PAGEで分画できる。特異的O−およびN−グリコシド結合を検出するために、組織または細胞からのタンパク質可溶化液をインキュベートした後、OまたはN−グリコシダーゼ(製造業者の指示に従って、例えば、PNgase、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、RocheDiagnostics)を用いてSDSによって変性させる。この後ウェスタンブロッティングを上記のように行う。したがって、グリコシダーゼとのインキュベーションの後、標的タンパク質のサイズが減少していれば、特異的グリコシル化を検出することが出来、そしてこのようにして、修飾の腫瘍特異性を分析できる。グリコシル化アミノ酸の正確な位置はアルゴリズムおよび予測プログラムを用いて予測できる。
【0217】
免疫蛍光
標的タンパク質を内因的に合成するか(RT−PCRにおけるRNAの検出またはウェスタンブロッティングによるタンパク質の検出)、プラスミドDNAをIFの前にトランスフェクトされた樹立細胞株の細胞を用いる。様々な方法(例えば、エレクトロポーレーション、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降)がDNAによる細胞株のトランスフェクトのために十分に確立されている(例えば、Lemoine et al. Methods Mol. Biol. 1997; 75: 441−7)。トランスフェクトされるプラスミドは免疫蛍光において非修飾タンパク質をコードするものでもよいし、様々なアミノ酸マーカーを標的タンパク質に結合させるものでもよい。もっとも重要なマーカーは、例えば、様々な蛍光性形態における蛍光性の「緑色蛍光性タンパク質」(GFP)および、それに対する高親和性および特異的抗体が入手可能な6−12アミノ酸の短いペプチド配列である。標的タンパク質を合成する細胞をパラホルムアルデヒド、サポニンまたはメタノールで固定する。所望の場合細胞を界面活性剤(例えば、0.2%Triton X 100)とのインキュベーションにより透過性にしてもよい。固定/透過性化の後、細胞を標的タンパク質に対する一次抗体または結合マーカーに対する一次抗体とともにインキュベートする。洗浄工程の後、混合物を蛍光性マーカー(例えば、フルオレセイン、Texas Red、Dako)と結合させた一次抗体と結合する二次抗体とインキュベートする。このようにして標識した細胞をグリセロールの層で被覆し、製造業者の指示に従って蛍光顕微鏡によって分析する。この場合特異的蛍光発光が用いる物質に応じた特異的励起によって達成される。分析は通常、標的タンパク質の信頼できる局在化を可能とし、抗体の質および標的タンパク質は標的タンパク質に加えてその局在が以前に文献に記載されている結合アミノ酸マーカーまたはその他のマーカータンパク質を染色する二重染色において確認される。GFPおよびその誘導体は直接励起でき、それ自体蛍光を発生する特別の場合を表し、したがって検出のための抗体は必要ではない。
【0218】
免疫組織化学
IHCは特に以下に役立つ:
(1)腫瘍および正常組織における標的タンパク質の量の評価を可能とする、
(2)腫瘍および健康組織におけるどれほど多くの細胞が標的遺伝子を合成しているかを分析する、および/または、
(3)標的タンパク質が検出可能である組織における細胞のタイプ(腫瘍、健康細胞)を規定する。
【0219】
異なるプロトコールを個々の抗体に応じて用いる必要がある(例えば、“Diagnostic Immunohistochemistry 、David J.、MD DabbsISBN: 0443065667”または“Microscopy、Immunohistochemistry、and Anigen Retrieval Methods: For Lightand Electron Microscopy ISBN: 0306467704”)。
【0220】
特異的組織サンプルにおける免疫組織化学(IHC)は、対応する組織におけるタンパク質の検出に役立つ。この方法の目的は、機能的にインタクトな組織集合体におけるタンパク質の局在を同定することである。IHCは特に以下に役立つ:
(1)腫瘍および正常組織における標的タンパク質の量の評価を可能とする、
(2)どれほど多くの腫瘍および健康組織における細胞が標的遺伝子を合成するかを分析する、そして、
(3)標的タンパク質が検出可能である組織における細胞タイプ(腫瘍、健康細胞)を規定する。
【0221】
あるいは、標的遺伝子のタンパク質の量はデジタルカメラおよび適当なソフトウェア(例えば、Tillvision、Till−photonics、Germany)を用いた組織免疫蛍光により定量できる。この技術は多く公表されており、染色と顕微鏡法についての詳細は例えば以下にみることができる:“Diagnostic Immunohisutochemistry”、David J.、MD DabbsISBN: 0443065667 または“Microscopy、Immunohisutochemistry、and Antigen Retrieval Methods: For Light and Electron Microscopy” ISBN:0306467704。抗体の性質によって、有効な結果を得るためには異なるプロトコールを用いなければならないことに注意されたい(一例を以下に示す)。
【0222】
通常、組織学的に規定された腫瘍組織および、参照として、対応する健康組織をIHCに用いる。標的遺伝子の存在がRT−PCR分析によって知られているポジティブおよびネガティブコントロール細胞株を用いることも可能である。バックグラウンドコントロールは常に含めなければならない。
【0223】
固定された組織(例えば、アルデヒド−含有物質、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはアルコール溶液による固定)または1−10μmの厚さのショック冷凍組織片をガラス台に乗せる。パラフィン包埋サンプルから例えばキシレンによってパラフィンを除く。サンプルをTBS−Tで洗浄し、血清中でブロッキングする。この後、一次抗体(希釈:1:2〜1:2000)との18時間のインキュベーションを行い、ここでアフィニティー精製抗体を通常用いる。洗浄工程の次にアルカリホスファターゼ(あるいは例えばペルオキシダーゼ)と結合した、一次抗体に対する二次抗体とのインキュベーションを約30−60分行う。この後、結合した酵素によって変換される色素基質を用いた着色反応を行う(例えば、Shi et al.、J. Histochem.Cytochem. 39: 741−748、1991;Shin et al.、Lab. Invest. 64: 693−702、1991を参照)。抗体特異性を示すために、反応を免疫原を先に添加することによってブロッキングしてもよい。
【0224】
免疫化
(Monoclonal Antibody: A Practical Approach、 Philip Shepherd、Christopher Dean isbn 0 19 963722 9; Antibody: A Laboratory Manual、Ed Harlow、David Lane ISBN: 0879693142;Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable ProcotolNO.、Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN:0879695447も参照されたい)。
【0225】
抗体の調製方法は以下に簡単に説明し、その詳細は引用文献にみられる。まず、動物(例えば、ウサギ)を所望の標的タンパク質の最初の注射により免疫する。免疫原に対する動物の免疫応答は所定の時間内での(先の免疫化の約2−4週間後)二回目または三回目の免疫化によって増強できる。様々な所定の時間後に(最初の採血は4週間後、次いで約2週間毎に計5回までの採血)、血液を動物から採取し、それから免疫血清を得る。
【0226】
動物は通常4つの確立された方法の1つで免疫するがその他の方法も利用できる。標的タンパク質に特異的なペプチドによって免疫することが出来、ここで全長タンパク質またはタンパク質の細胞外部分配列は実験的にまたは予測プログラムによって同定できる。
【0227】
(1)第一の場合において、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合したペプチド(長さ:8−12アミノ酸)を標準的インビトロ方法によって合成し、これらペプチドを免疫化に用いる。通常、3回の免疫化を行い、その濃度は5−1000μg/免疫化とする。免疫化はまた、サービス業者からのサービスとして行うことも出来る。
【0228】
(2)あるいは、免疫化は組換えタンパク質を用いて行うことも出来る。この目的のため、標的遺伝子のクローニングされたDNAを発現ベクターにクローニングし、標的タンパク質を特定の製造業者の条件と同様に、例えば細胞−フリーインビトロにて、細菌(例えば大腸菌)中、酵母(例えば、S. pombe)中、昆虫細胞中または哺乳類細胞中にて合成する(例えば、Roche Diagnostics、Invitrogen、Clontech、Qiagen)。系のいずれかでの合成の後、標的タンパク質を精製し、この場合精製は通常標準的クロマトグラフィー方法により行う。これに関しては、精製の助けとして分子アンカーを有する免疫化のためのタンパク質を用いてもよい(例えば、Hisタグ、Qiagen; FLAGタグ、Roche Diagnostics; Gst融合タンパク質)。多数のプロトコールが例えば以下においてみられる:“Current Protocolsin Molecular Biology”、John Wiley & Sons Ltd.、Wiley Interscience。
【0229】
(3)所望のタンパク質を内因的に合成する細胞株が入手可能な場合、この細胞株を用いて特異的抗血清を産生することが出来る。この場合、免疫化は各回約1−5×107細胞にて1−3回の注射にて行う。
【0230】
(4)免疫化はDNAの注射によって行うことも出来る(DNA免疫化)。この目的のため、標的遺伝子を最初に、標的配列が強力な真核プロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下になるように発現ベクターにクローニングする。次いで、5−100μgのDNAを「遺伝子銃」を用いて生物(例えば、マウス、ウサギ)における強い血流のある毛細血管領域に免疫原として移入する。移入されたDNAは動物細胞に取り込まれ、標的遺伝子が発現し、動物は最終的に標的遺伝子に対する免疫応答を発達させる(Jung et al.、Mol Cell 12:41−49、2001; Kasinrerk et al.、Hybrid Hybridomics 21:287−293、2002)。
【0231】
ポリクローナル血清または抗体の質の管理
細胞培養に基づくアッセイ、次いでウェスタンブロッティングは特異性を示すのにもっとも好適である(様々な改変が、例えば、Current Protocols in ProteinChemistry、John Wiley & Sons Ltd.、Wiley InterScienceに記載されている)。それを示すために、細胞に、強力な真核プロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター)の制御下の標的タンパク質に対するDNAをトランスフェクトする。様々な方法(例えば、エレクトロポーレーション、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降)がDNAによる細胞株のトランスフェクトについて確立されている(例えば、Lemoine et al.、Methods Mol. Biol. 75:441−7、1997)。標的遺伝子を内因的に発現する細胞株を用いることも可能である(標的遺伝子特異的RT−PCRによって示される)。コントロールとして理想的な場合においては相同的遺伝子を実験においてトランスフェクトし、以下のウェスタンブロットにおいて分析する抗体の特異性を確認することができる。
【0232】
次いでウェスタンブロットにおいて、標的タンパク質を含む可能性がある細胞培養物または組織サンプルからの細胞を1%SDS溶液で溶解し、タンパク質をそれによって変性させる。可溶化液を、8−15%変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDS含有)(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)において電気泳動によってサイズに応じて分画する。タンパク質を次いで複数のブロッティング方法の1つによって特定のメンブレン(例えば、ニトロセルロース、Schleicher & Schull)にトランスファーする(例えば、半乾燥電気ブロット; Biorad)。所望のタンパク質をこのメンブレン上で可視化できる。この目的のため、メンブレンをまず、標的タンパク質を認識する抗体(抗体の特異性に応じて希釈度約1:20−1:200)と60分間インキュベートする。洗浄工程後、メンブレンをマーカー(例えば、酵素、例えば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)と結合し、一次抗体を認識する二次抗体とインキュベートする。次いで着色または化学発光反応において(例えば、ECL、Amersham Bioscience)、メンブレン上で標的タンパク質を可視化することができる。標的タンパク質に対する高い特異性を有する抗体は理想的な場合において所望のタンパク質自体のみを認識するはずである。
【0233】
インシリコアプローチで同定された標的タンパク質の膜局在の確認には様々な方法が用いられる。上記抗体を用いる重要かつよく確立された方法は免疫蛍光(IF)である。標的タンパク質(RT−PCRにおけるRNAの検出またはウェスタンブロットにおけるタンパク質の検出)を合成するかあるいはプラスミドDNAをトランスフェクトされた樹立細胞株の細胞がこのために用いられる。様々な方法(例えば、エレクトロポーレーション、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降)がDNAによる細胞株のトランスフェクションのために確立されている(例えば、Lemoine et al.、Methods Mol. Biol. 75:441−7、1997)。細胞にトランスフェクトされたプラスミドは、免疫蛍光において、非修飾タンパク質をコードするかあるいは標的タンパク質に様々なアミノ酸マーカーを結合させうる。主要なマーカーは、例えば、蛍光性の様々な蛍光性形態における「緑色蛍光性タンパク質」(GFP)、6−12アミノ酸の短いペプチド配列であってそれに対する高親和性かつ特異的抗体が入手可能なもの、あるいはそのシステイン特異的蛍光物質(Invitrogen)を介して結合しうる短いアミノ酸配列Cys−Cys−X−X−Cys−Cysである。標的タンパク質を合成する細胞は、例えば、パラホルムアルデヒドやメタノールで固定される。次いで細胞は所望により界面活性剤(例えば、0.2%Triton X 100)とのインキュベーションによって透過性にされうる。細胞は次いで標的タンパク質または結合マーカーの1つに対する一次抗体とともにインキュベートされる。洗浄工程後、混合物を蛍光性マーカー(例えば、フルオレセイン、Texas Red、Dako)と結合し、一次抗体と結合する二次抗体とインキュベートする。このように標識した細胞は次いでグリセロール層で被覆し、製造業者の指示に従って蛍光顕微鏡によって分析される。特異的蛍光発光はこの場合、用いる物質に応じた特異的励起によって達成される。分析は通常標的タンパク質の信頼できる局在化を可能にし、抗体の質と標的タンパク質が標的タンパク質に加えて、その局在が既に文献に記載されている結合したアミノ酸マーカーまたはその他のマーカータンパク質の染色をする二重染色によって確認される。GFPおよびその誘導体は特別な場合を表し、直接励起可能でありそれ自体蛍光を発する。界面活性剤の使用により制御されうる膜透過性は、免疫原性エピトープが細胞の内側と外側のいずれに位置しているかを免疫蛍光において示すことを可能にする。選択されたタンパク質の予測はこのようにして実験的に支持される。別の可能性はフローサイトメトリーによる細胞外ドメインの検出である。この目的のために、細胞は非透過性条件下で固定され(例えば、PBS/Naアジド/2%FCS/5mM EDTA)、製造業者の指示に従ってフローサイトメーターにて分析される。細胞外エピトープのみがこの方法で分析される抗体によって認識されうる。免疫蛍光との違いは例えば、ヨウ化プロピジウムまたはトリパンブルーの使用によって死細胞と生細胞を区別することが可能であること、そして偽陽性結果を避けられることである。
【0234】
アフィニティー精製
ポリクローナル血清の精製は、ペプチド抗体の場合すべて、あるいは組換えタンパク質に対する抗体の場合、部分的に契約会社のサービスとして行った。この目的のために、両方の場合において、適当なペプチドまたは組換えタンパク質をマトリックスに共有結合させ、後者を結合後、ネイティブバッファー(PBS:リン酸緩衝食塩水)で平衡化し、次いで粗血清とインキュベートした。さらなるPBS洗浄工程の後、抗体を100mMグリシン、pH2.7で溶出し、溶出液をすぐに2M TRIS、pH8で中和した。このように精製した抗体を次いで、ウェスタンブロッティングおよび免疫蛍光による標的タンパク質の特異的検出に供し得た。
【0235】
EGFPトランスフェクタントの調製
異種発現した腫瘍関連抗原の免疫蛍光顕微鏡法のために、抗原の完全なORFをpEGFP C1およびpEGFP N3ベクター(Clontech)にクローニングした。スライド上で培養したCHOおよびNIH3T3細胞にFugeneトランスフェクション試薬(Roche)を用いて適当なプラスミドコンストラクトを製造業者の指示に従ってトランスフェクトし、12−24時間後、免疫蛍光顕微鏡法によって分析した。
【0236】
実施例1
診断上および治療上癌標的としてのGPR35の同定
GPR35(配列番号1)およびその翻訳産物(配列番号9)は、推定Gタンパク質共役受容体として記載されている。配列はGenbankにおいて登録番号AF089087として公表されている。この転写産物は309アミノ酸、分子量34kDaのタンパク質をコードしている。GPR35は、7つの膜貫通ドメインを有するGタンパク質共役受容体のスーパーファミリーに属すると予測された(O’Dowd et al.、Genomics 47:310−13、1998)。細胞における予測されたGPR35の局在を確認するために、タンパク質をレポーター分子としてのeGFPと融合させ、適当なプラスミドでのトランスフェクションの後、異種的に293細胞において発現させた。局在を次いで蛍光顕微鏡で分析した。本発明によると、GPR35は完全な膜貫通分子(図17)であることが確認された。ヒトGPR35に対する今日までの研究(とりわけ、Horikawa Y、Oda N、Cox NJ、Li X、Orho−Melander M、Hara M、Hinokio Y、Lindner TH、Mashima H、SchwarzPE、del Bosque−Plata L、Horikawa Y、Oda Y、Yoshiuchi I、Colilla S、Polonsky KS、Wei S、Concannon P、Iwasaki N、SchulzeJ、Baier LJ、Bogardus C、Groop L、Boerwinkle E、Hanis CL、Bell GI Nat Genet. 2000 Oct;26(2):163−75を参照されたい)は、GPR35は多くの健康組織で活性化されていることを示唆している。この遺伝子のリーディングフレームは1つのエキソンを含む。本発明によると、GPR35に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号20、21)をRT−PCR分析に用いて結腸および結腸癌(13/26)におけるcDNAを増幅した。一方、その他の正常組織においては有意な発現は検出不可能であった。GPR35は単一のエキソンからなるという事実により、イントロンにまたがるプライマーによってゲノムDNA不純物を検出することが出来ない。それゆえ、RNAサンプルのゲノムによる汚染を排除するために、すべてのRNAをDNAseで処理した。GPR35転写産物はDNA−無含有RNAを用いると本発明によると、結腸、直腸、精巣および結腸癌においてのみ検出された。
【0237】
表1:正常組織におけるGPR35発現
【表1】
【0238】
正常結腸組織および結腸癌組織診におけるGPR35転写産物の選択的かつ高い発現(図1)は以前には知られておらず、本発明による分子診断法に用いることが出来る。例えば、血清および骨髄における転移性腫瘍細胞の検出およびその他の組織における転移の検出のためのRT−PCRが挙げられる。特異的プライマー(配列番号88および89)を用いた定量的RT−PCRにより、GPR35が高度に選択的な腸−特異的分化抗原であることが確認され、これは腸腫瘍および腸腫瘍転移にも含まれる。いくつかの腸腫瘍において、それは実際正常腸に比較して1ログ過剰発する(図18)。GPR35タンパク質検出用の抗体をウサギの免疫化によって産生した。以下のペプチドをかかる抗体の増殖に用いた:
配列番号90 GSSDLTWPPAIKLGC(AA9−23)
配列番号91: DRYVAVRHPLRARGLR(AA112−127)
配列番号92: VAPRAKAHKSQDSLC(C末端)
配列番号93 CFRSTRHNFNSMR(細胞外ドメイン2)
【0239】
かかる抗体を用いた例えばウェスタンブロットによる染色により、腫瘍における発現が確認される。GPR35の4つのすべての細胞外ドメイン(配列番号9の配列における予測細胞外ドメインの位置、AA1−22(配列番号94);AA81−94(配列番号95);AA156−176(配列番号96);AA280−309(配列番号97))を本発明によるとモノクローナル抗体の標的構造として利用できる。かかる抗体は腫瘍細胞の細胞表面に特異的に結合し、そして、診断および治療方法の両方に利用できる。腫瘍におけるGPR35の過剰発現は、かかる使用に対するさらなる支持を提供する。さらに、タンパク質をコードする配列は本発明によると腫瘍特異的免疫応答(T細胞およびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するワクチン(RNA、DNA、ペプチド、タンパク質)として利用できる。さらに、驚くべきことにさらなる開始コドンが一般に知られている開始コドンの前の5’側に存在し、N末端が伸長したタンパク質を発現することが見いだされた。
【0240】
したがって本発明によると以前に遍在性に発現すると記載されていたタンパク質であるGPR35が、胃腸腫瘍、特に結腸腫瘍に選択的に過剰発現する腫瘍関連抗原であることが見いだされた。GPR35はそれゆえ特にかかる腫瘍の診断及び治療のための分子標的構造として好適である。ヒトGPR35の今日までの研究、例えば、Horikawa Y、Oda N、Cox NJ、Li X、Orho−Melander M、Hara M、Hinokio Y、Lindner TH、Mashima H、SchwarzPE、del Bosque−Plata L、Horikawa Y、Oda Y、Yoshiuchi I、Colilla S、Polonsky KS、Wei S、Concannon P、Iwasaki N、SchulzeJ、Baier LJ、Bogardus C、Groop L、Boerwinkle E、Hanis CL、Bell GI Nat Genet. 2000 Oct;26(2):163−75は、GPR35が多くの健康組織において活性化されていることを示唆している。一方、本発明の研究によると、GPR35は驚くべきことにほとんどの正常組織で有意に検出されず、それに対して、原発性および転移性結腸腫瘍において高度に活性化されていることが示された。さらに以前に記載されているGPR35配列の他に、本発明によると別の開始コドンを利用する新規な翻訳バリアントが見いだされた(配列番号10)。
【0241】
GPR35はG共役受容体(GPCR)の群のメンバーであり、G共役受容体(GPCR)の群は、その構造と機能が非常によく研究されている非常に大きなタンパク質ファミリーである。GPCRは医薬上活性な物質の開発のための標的構造として非常に好適である。というのはそれに必要な方法(例えば、受容体発現、精製、リガンドスクリーニング、突然変異誘発、機能阻害、アゴニスト性およびアンタゴニスト性リガンドの選択、リガンドの放射標識)が非常によく開発されており、例えば、以下に詳細に記載されているからである。“G Protein−CoupledReceptors” 、 Tatsuya Haga、Gabriel Berstein and Gabriel BernsteinISBN: 0849333849および、“Identification and Expression ofG− Protein Coupled Receptors Receptor Biochemistry and Methodology”、Kevin R. Lynch ASIN: 0471183105。本発明によると、GPR35はほとんどの健康組織で検出できず、細胞表面にて腫瘍関連発現をするという認識により、例えば、薬理活性リガンド、特に例えば、医薬物質としての放射性分子と組み合わせての使用など、その腫瘍関連標的構造としての利用が可能となる。特定の態様においてGPR35に結合する放射標識リガンドをインビボでの腫瘍細胞の検出または結腸腫瘍の治療に利用することが可能である。
【0242】
実施例2
診断上および治療上癌標的としての肝臓および卵巣腫瘍におけるGUCY2Cならびに新規GUCY2Cスプライスバリアントの同定
グアニル酸シクラーゼ2C(配列番号2;翻訳産物:配列番号11)−I型膜貫通タンパク質−はナトリウム利尿ペプチド受容体のファミリーに属する。その配列はGenbankにおいて登録番号NM_004963として公表されている。ペプチド、グアニリン(guanylin)およびウログアニリン(uroguanylin)あるいは耐熱性エンテロトキシン(STa)の結合は、細胞内cGMP濃度を上昇させ、したがって細胞内のシグナル伝達プロセスを誘導する。
【0243】
最近の研究はGUCY2Cの発現が腸外領域、例えば、胃および食道の原発性および転移性腺癌にも及ぶことを示している(Park et al.、Cancer EpidemiolBiomarkers Prev. 11: 739−44、2002)。腸の正常および形質転換組織の両方にみられるGUCYCのスプライスバリアントはエキソン1における142 bp欠失を含み、したがってGUCY2C−様産物の翻訳が妨げられる(Pearlman et al.、Dig. Dis. Sci. 45:298−05、2000)。現在までに記載されている唯一のスプライスバリアントは翻訳産物を導かない。
【0244】
本発明の目的は診断および治療の両方に利用できるGUCY2Cの腫瘍関連スプライスバリアントを同定することであった。
【0245】
GUCY2C−特異的プライマー対(配列番号22、23、98、99)を用いたRT−PCR研究は、正常結腸および胃における強いGUCY2C転写産物の発現、そして肝臓、精巣、卵巣、胸腺、脾臓、脳および肺における弱い発現を示した(表2、図19)。結腸および胃における発現はその他のすべての正常組織と比べて少なくとも50倍高かった。顕著なGUCY2C転写産物レベルが結腸癌および胃癌において検出された(表2)。これらの結果は定量的PCR分析により特定され、正常結腸、回腸、およびほぼすべての調べた結腸癌サンプルにおける顕著なGUCY2C発現を示した(図2、19B)。多大な過剰発現がいくつかの結腸癌サンプルにおいて検出可能であった。さらに、発現は7/10の胃腫瘍でみられた。本発明者らはまた驚くべきことに、該遺伝子が多くの以前に記載されていなかった腫瘍、とりわけ、卵巣、乳房、肝臓および前立腺腫瘍において活性化されていることを見いだした(図19B、表2)。
【0246】
表2:正常および腫瘍組織におけるGUC2C発現
【表2−1】
【0247】
【表2−2】
【0248】
以下のプライマー対を用いて結腸組織および結腸癌組織におけるスプライスバリアントを検出した:
GUCY2C−118s/GUCY2C−498as(配列番号24、29);
GUCY2C−621s/GUCY2C−1140as(配列番号25、30);
GUCY2C 1450s/GUCY2C−1790as(配列番号26、31);
GUCY2C 1993s/GUCY2C−2366as(配列番号27、32);
GUCY2C 2717s/GUCY2C−3200as(配列番号28、33);
GUCY2C 118s/GUCY2C−1140as(配列番号24、30);
GUCY2C 621s/GUCY2C−1790as(配列番号25、31);
GUCY2C 1450s/GUCY2C−2366as(配列番号26、32);
GUCY2C 1993s/GUCY2C−3200as(配列番号27、33)。
【0249】
結腸癌組織におけるスプライスバリアントの研究において3つの以前に知られていない形態が本発明によって同定された。
a)111アミノ酸長で位置111のアスパラギンがプロリンに置換されているGUCY2Cのバリアントを導くエキソン3の欠失(配列番号3)。
b)258アミノ酸長の発現産物をもたらすエキソン6の欠失(配列番号4)。これは13アミノ酸からなるC末端新エピトープを作る。
c)ヌクレオチド位置1606−1614、そして対応するアミノ酸L(536)、L(537)およびQ(538)が欠失しているバリアント(配列番号5)。
【0250】
エキソン3およびエキソン6がそれぞれ欠失している本発明によるスプライスバリアント(配列番号3、4)は、特に膜貫通ドメインを有さない翻訳産物(配列番号12、13)によって認識される。エキソン6の欠失の場合の結果は、13アミノ酸のC末端新エピトープであり、これは既知のいかなるタンパク質とも相同性を示さない。この新エピトープはしたがって免疫療法の標的構造に予定される。本発明の位置1606−1614において塩基が欠失したスプライスバリアント(配列番号5)およびその翻訳産物(配列番号14)は同様に新エピトープを含む。GUCY2Cタンパク質検出用の抗体をウサギの免疫化により産生した。以下のペプチドをこれら抗体の増殖に用いた:
配列番号100:HNGSYEISVLMMGNS(AA31−45)
配列番号101:NLPTPPTVENQQRLA(AA1009−1023)
かかる抗体は原理的には診断および治療目的で利用しうる。
【0251】
特に、GUCY2Cの細胞外ドメイン(配列番号11の配列からの推定細胞外ドメインの位置:AA454−1073(配列番号102))は本発明によると、モノクローナル抗体の標的構造として利用できる。しかし、構造予測はいくらか不明瞭であり、実験的に確認されておらず、したがって別の膜位置もあり得る。この場合、アミノ酸1−431は細胞外にあり、モノクローナル抗体の出発点として好適である。これら抗体は腫瘍細胞の細胞表面に特異的に結合し、診断および治療方法の両方に利用できる。特に結腸腫瘍におけるGUCY2Cの過剰発現は、かかる使用のさらなる支持を提供する。タンパク質をコードする配列はさらに本発明によると腫瘍特異的免疫応答(T細胞−およびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するワクチン(RNA、DNA、ペプチド、タンパク質)として使用できる。
【0252】
さらにGUCY2C分子の細胞機能によると本発明によると、腫瘍細胞に対する酵素の機能を調節する物質、特に低分子を開発することが出来る。酵素反応の生成物であるcGMPは、多数の機能を有する公知の細胞内シグナル分子である(Tremblay etal. Mol Cell Biochem 230、31)。
【0253】
実施例3
診断上および治療上の癌標的としてのSCGB3A2の同定
SCGB3A2(配列番号6)(翻訳産物:配列番号15)は分泌グロブリン(secretoglobin)遺伝子ファミリーに属する。配列はGenBankにおいて登録番号NM_054023として公表されている。SCGB3A2(UGRP1)はサイズ17kDaのホモ二量体分泌タンパク質であり、肺および気門にもっぱら発現している(Niimi et al.、Am J Hum Genet 70:718−25、2002)。プライマー対(配列番号37、38)を用いたRT−PCR研究により正常肺組織における選択的発現が確認された。肺−および気管−特異的遺伝子、例えばサーファクタントタンパク質に対する遺伝子は、脱分化の際に悪性腫瘍において高度に下方制御され、通常肺腫瘍においては検出不可能である。驚くべきことに、SCGB3A2が原発性および転移性肺腫瘍において活性であることが見いだされた。本発明による研究は、SCGB3A2が強くそして高頻度に気管支癌において発現していることが示された(図4)。その他の試験した23の正常組織は、肺および気管を除いて、発現を示さなかった(図20)。
【0254】
これをさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号103、104)(図20)において確認し、これはさらに50%以上の気管支癌における少なくとも1ログの過剰発現を示した。
【0255】
正常肺組織および肺癌組織診におけるSCGB3A2の選択的な高い発現は本発明によると血液および骨髄、痰、気管支吸引液または洗浄液における転移性腫瘍細胞の検出のため、そしてその他の組織、例えば局所リンパ節における転移の検出のための分子診断法、例えば、RT−PCRに利用することが出来る。健康肺において、SCGB3A2は特定の細胞によってもっぱら気管支へと分泌される。したがって、SCGB3A2タンパク質は健康な個体における気道の外の体液において検出されることは予測されない。一方、特に転移性腫瘍細胞はそれらタンパク質産物を直接血流に分泌する。本発明の一態様はそれゆえ肺腫瘍の診断発見としての特異的抗体アッセイを介して患者の血清または血漿におけるSCGB3A2産物の検出に関する。
【0256】
SCGB3A2タンパク質を検出するための抗体をウサギの免疫化によって産生した。以下のペプチドをこれら抗体の産生に用いた:
配列番号105:LINKVPLPVDKLAPL
配列番号106:SEAVKKLLEALSHLV。
【0257】
SCGB3A2−特異的反応は免疫蛍光において検出可能であった(図21)。分泌タンパク質について予測されるように、細胞におけるSCGB3A2の分泌は小胞体および分泌顆粒が行い得た(図21A)。特異性を確認するために、細胞をSCGB3A2−GFP融合タンパク質を合成するプラスミドで並行してトランスフェクトした。タンパク質検出はこの場合自己蛍光性GFP(緑色蛍光性タンパク質)(図21B)を介して行った。2つの蛍光の図の重ね合わせにより明らかに、免疫血清が特異的にSCGB3A2タンパク質を認識すること(図21C)が示された。
【0258】
本発明によるとかかる抗体は例えば診断および治療用途でイムノアッセイの形態で利用できる。
【0259】
実施例4
診断上および治療上癌標的としてのクローディン18A1およびクローディン18A2スプライスバリアントの同定
クローディン18遺伝子は4つの膜貫通ドメインおよび細胞内N末端およびC末端を有する表面膜分子をコードする。Niimiら(Mol. Cell. Biol. 21:7380−90、2001)は肺組織(クローディン18A1)および胃組織(クローディン18A2)においてそれぞれ選択的に発現すると記載されているマウスおよびヒトのクローディン18の2つのスプライスバリアントを記載している。これらバリアントはN末端において相違している(図22)。
【0260】
本発明によると、スプライスバリアントであるクローディン18A2(配列番号7)とクローディン18A1(配列番号117)、ならびにそれらの翻訳産物(配列番号16および118)が、腫瘍のためのマーカーまたは治療標的構造としてどの程度利用できるかを調べた。2つのバリアントを識別できる定量的PCRはをA1−特異的(配列番号109&110)およびA2特異的(配列番号107&108)プライマー対を選択することによって確立した。A2スプライスバリアントはさらに常套のPCRによって第二のプライマー対(配列番号39&40)を用いて試験した。A1バリアントは正常肺においてのみ活性であると記載されている。しかし、驚くべきことに本発明によると、A1バリアントが胃粘膜においても活性であることが見いだされた。胃および肺のみが有意な活性化を示す正常組織である。その他のすべての正常組織はクローディンA1について陰性である。腫瘍を調べると、驚くべきことにクローディンA1が多数の腫瘍組織において高度に活性化されていることが見いだされた。特に強い発現は胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓癌、食道癌(図23)、ENT腫瘍および前立腺癌においてみられた。ENT、前立腺、膵臓および食道腫瘍におけるクローディンA1発現レベルは100−10000倍対応する正常組織のレベルより高かった。クローディンA2スプライスバリアントの研究に用いたオリゴヌクレオチドはこの転写産物の増幅を特異的に可能とするものであった(配列番号39&40および107&108)。研究により、A2スプライスバリアントは胃粘膜と程度は低いが精巣組織以外の20を超える調べた正常組織のいずれにおいても発現していないことが明らかとなった。本発明者らは、A2バリアントも、A1バリアントと同様に、多くの腫瘍において活性化されていることを見いだした(例えば図24に示す)。これらには胃腫瘍(8/10)、膵臓腫瘍(6/6)、食道癌(5/10)および肝臓癌が含まれる。健康肺においてはクローディン18A2の活性化は検出されなかったが、驚くべきことにいくらかの肺腫瘍がA2.1スプライスバリアントを発現することが見いだされた。
【0261】
図3A:正常および腫瘍組織におけるクローディン18A2の発現
【表3−1】
【0262】
表3B:正常および腫瘍組織におけるクローディン18A1の発現
【表3−2】
【0263】
独立のコントロール研究としての常套のPCRもまた、定量的PCRの結果を確認するものであった。これに用いたオリゴヌクレオチド(配列番号39、40)はA2スプライスバリアントの特異的増幅を可能とする。本発明によると、8/10の胃癌および試験した膵臓癌の半分がこのスプライスバリアントの強い発現を示した(図5)。一方、常套のPCRによってはその他の組織における発現は検出されなかった。特に、肺、肝臓、血液、リンパ節、乳房組織および腎臓組織では発現は無かった(表3)。
【0264】
したがって該スプライスバリアントは、本発明によると、上部胃腸管ならびに肺腫瘍、ENT腫瘍、前立腺癌およびその転移の腫瘍に対する高度に特異的な分子マーカーを表す。これら分子マーカーを本発明によると腫瘍細胞の検出に利用できる。腫瘍の検出は本発明によると上記オリゴヌクレオチドを利用して行うことが出来る(配列番号39、40、107−110)。特に好適なオリゴヌクレオチドは、少なくともその一方が、180塩基対長であって一方(配列番号8)または他方のスプライスバリアント(配列番号119)に特異的な転写産物のセグメントとストリンジェントな条件下で結合するプライマー対である。
【0265】
タンパク質レベルでこれらのデータを確認するために、クローディン−特異的抗体および免疫血清を動物の免疫化により測定した。クローディン18の細胞膜局在およびタンパク質トポロジーを、バイオインフォマティクスツール(TMHMM、TMPRED)による膜貫通ドメインの分析および増強GFPをタグ付加されたクローディン18融合タンパク質を発現する細胞の免疫蛍光研究によって確認した。クローディン18は2つの細胞外ドメインを有する。N末端細胞外ドメインは2つのスプライスバリアントにおいて配列において異なる(A1は配列番号111およびA2は配列番号112)。C末端細胞外ドメインは両方のバリアントについて同一である(配列番号137)。今日まで、クローディン18の細胞外ドメインに結合する抗体は記載されていない。本発明によると、細胞外に位置し、バリアントA1またはA2に特異的な、または両バリアントに存在するペプチドエピトープを免疫化に選択した。クローディン18の両方のバリアントは古典的なグリコシル化モチーフを有さず、タンパク質のグリコシル化はそれゆえ予測されなかった。にもかかわらず、アスパラギン、セリン、スレオニンを含むエピトープが古典的グリコシル化部位が無くてもまれにグリコシル化される可能性があることを考慮して、エピトープの選択に注意を払った。エピトープのグリコシル化はこのエピトープに対して特異的な抗体の結合を妨害しうる。とりわけ、エピトープは本発明によると、それによって作られる抗体が、抗原のグリコシル化状態の識別を可能とするように選択した。以下のペプチドをとりわけ、免疫化のために抗体の産生に選択した:
【0266】
配列番号17:DQWSTQDLYN(N−末端細胞外ドメイン、A2−特異的、グリコシル化と関係なく結合)
配列番号18:NNPVTAVFNYQ(N−末端細胞外ドメイン、A2−特異的、非グリコシル化形態に主に結合、N37)
配列番号113:STQDLYNNPVTAVF(N−末端細胞外ドメイン、A2−特異的、非グリコシル化形態のみに結合、N37)
配列番号114:DMWSTQDLYDNP(N−末端細胞外ドメイン、A1−特異的)
配列番号115:CRPYFTILGLPA(N−末端細胞外ドメイン、主にA1に特異的)
配列番号116:TNFWMSTANMYTG(C−末端細胞外ドメイン、A1とA2との両方を認識)。
【0267】
配列番号17による免疫化により産生されたA2−特異的抗体についてのデータを例示により示す。特異的抗体は免疫蛍光研究のための様々な固定条件下で利用できる。RT−PCR−陽性および陰性細胞株の比較染色により、容易に検出可能な量において、対応するタンパク質は陽性とされる胃癌細胞株において特異的に検出できる(図25)。内因性タンパク質は膜に位置し、膜上に比較的大きな限局的な集合体を形成する。この抗体をさらにウェスタンブロッティングにおけるタンパク質検出に用いた。予測されたように、タンパク質は胃にのみ検出され、その他の正常組織においては、肺においてさえ検出されなかった(図29)。患者からの胃腫瘍と隣接する正常胃組織の対比染色により、驚くべきことに、クローディン18A2が、このタンパク質が検出されるすべての胃腫瘍において小さい分子量を有していることが明らかとなった(図30、左)。本発明によると一連の実験において、正常胃組織の可溶化液を脱グリコシル化剤PNGase Fで処理した場合にもこのレベルのバンドが現れることが判明した(図30、右)。一方A2バリアントのグリコシル化形態はもっぱらすべての正常胃組織において検出可能であり、A2は60%以上の調べた胃癌において検出可能であり、特にもっぱら脱グリコシル化形態におけるものであった。クローディン18のA2バリアントはタンパク質レベルにおいてさえ正常肺では検出されないが、それは気管支癌においてはみられ、定量的RT−PCRによって調べたとおりであった。この場合も、脱グリコシル化バリアントのみが存在した(図31)。本発明によるとクローディン18A2スプライスバリアントの細胞外ドメインを認識する抗体を産生した。さらに、クローディン18A1スプライスバリアントのN末端ドメインを選択的に認識する抗体(図28)およびC末端細胞外ドメインの領域において両方のバリアントに結合する抗体(図27)を産生した。本発明によると診断目的でのかかる抗体の使用、例えば、免疫組織学(図32)、だけでなく上述のように治療目的での使用が可能である。さらに重要な態様はクローディン18の示差的にグリコシル化されたドメインに関する。本発明によると非グリコシル化エピトープにのみ結合する抗体を産生した。クローディン18自体は胃組織(A2)ならびに肺および胃(A1)に対する高度に選択的な分化抗原である。腫瘍においてはそれはグリコシル化機構における変化によって明らかに影響を受けるため、特定の脱グリコシル化されたA2のバリアントが腫瘍において産生される。これは診断および治療に利用できる。免疫血清、例えばここで記載する免疫血清(配列番号17のペプチドに対するもの)を診断に、例えば、ウェスタンブロッティングにおいて利用できる。例えば配列番号113のペプチドでの免疫化によって生じる、グリコシル化されたエピトープにまったく結合することが出来ない抗体(図26)は、結合において腫瘍組織を正常組織と区別できる。特にかかる抗体の治療での使用が可能である。というのはそれらは高度に選択的であるからである。産生された抗体は、キメラまたはヒト化組換え抗体の産生に直接用いることも出来る。これはまたウサギから得た抗体を用いて直接行いうる(これについては、J Biol Chem. 2000 May5;275(18):13668−76 by Rader C、Ritter G、Nathan S、Elia M、GoutI、Jungbluth AA、Cohen LS、Welt S、Old LJ、BarbasCF 3rd. “The rabbit antiody repertoire as a novelsource for the generation of therapeutic human antibody”を参照)。この目的のために、免疫した動物からのリンパ球を保存した。アミノ酸1−47(配列番号19および120)もまた免疫療法、例えば、ワクチンおよび抗原−特異的Tリンパ球の養子移入、の特に良好なエピトープである。
【0268】
実施例5
診断上および治療上癌標的としてのSLC13A1の同定
SLC13A1は硫酸ナトリウム共輸送体のファミリーに属する。ヒト遺伝子は、この遺伝子のマウスホモログと異なり、腎臓において選択的に発現する(Lee et al.、Genomics 70:354−63)。SLC13A1は595 アミノ酸のタンパク質をコードし、13の推定膜貫通ドメインを含む。選択的スプライシングにより、4種類の転写産物(配列番号41−44)およびその対応する翻訳産物(配列番号45−48)が生じる。SLC13A1が腎臓腫瘍のマーカーとして利用できるかを調べた。SLC13A1の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号49、50)をこの目的のために用いた。
【0269】
表4:正常および腫瘍組織におけるSLC13A1の発現
【表4】
【0270】
SLC13A1−特異的プライマー対(配列番号49、50)を用いたRT−PCR研究により、実質的に腎臓における選択的発現が確認され、本発明により示されるように調べた腎臓細胞癌組織診の実質的にすべて(7/8)において高発現していた(表4、図6)。特異的プライマー(配列番号121、122)を用いた定量的RT−PCRもまたこれらのデータを確認した(図34)。弱いシグナルが以下の正常組織において検出可能であった:結腸、胃、精巣、乳房、肝臓および脳。腎臓癌における発現はしかし、その他のすべての正常組織よりも、少なくとも100倍高かった。
【0271】
細胞におけるSLC13A1の細胞内局在を分析するために、タンパク質をレポーター分子としてのeGFPと融合させ、適当なプラスミドでのトランスフェクションの後、293細胞において異種発現させた。局在を次いで蛍光顕微鏡下で分析した。本発明者らのデータは驚くべきことにSLC13A1が膜内在性分子であることを確認した(図35)。
【0272】
SLC13A1タンパク質の検出用の抗体をウサギの免疫化により産生した。配列番号123および124のペプチドをこれら抗体の産生に用いた。かかる抗体は原理的に診断および治療目的で利用できる。
【0273】
SLC13A1タンパク質は13の膜貫通ドメインおよび7つの細胞外領域を有する。SLC13A1のこれら細胞外ドメインは特に本発明によるとモノクローナル抗体の標的構造として利用できる。SLC13A1はイオンの輸送にチャンネルタンパク質として関与している。健康腎臓におけるSLC13A1の細胞外ドメインは極性によって尿路(管腔内)の方向を向いている。しかし治療に用いられる高分子量モノクローナル抗体は尿路に入らないため、健康腎臓においてはSLC13A1への結合は起こらない。一方、SLC13A1の極性は腫瘍細胞においては無くなり、タンパク質は血流を介して直接抗体標的化に用いられる。腎臓細胞癌におけるSLC13A1の顕著な発現および高頻度により、このタンパク質は本発明によると非常に興味深い診断上および治療上のマーカーとなる。これは本発明によるとRT−PCRによる、血清、骨髄、尿における転移性の腫瘍細胞の検出およびその他の組織における転移の検出を含む。さらに本発明によると、SLC13A1の細胞外ドメインは、モノクローナル抗体を用いる免疫診断および治療のための標的構造としての使用が可能である。SLC13A1はさらに本発明によると腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。これは、本発明によると、SLC13A1の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発も含み、腎臓腫瘍の治療用に利用することが出来る。
【0274】
実施例6
診断上および治療上癌標的としてのCLCA1の同定
CLCA1(配列番号51;翻訳産物:配列番号60)は、Ca++−活性化Cl−チャンネルのファミリーに属する。配列はGenbankにおいて登録番号NM_001285として公表されている。CLCA1はもっぱら腸陰窩上皮および杯細胞に発現している(Gruber et al.、Genomics 54:200−14、1998)。CLCA1が結腸癌および胃癌のマーカーとして利用できるかを調べた。CLCA1の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号67、68)をこの目的のために用いた。このプライマーセットを用いたRT−PCR研究により結腸における選択的発現が確認され、本発明によると(3/7)の調べた結腸癌および(1/3)の調べた胃癌サンプルにおける高い発現が示された(図7)。その他の正常組織は、発現を示さないか非常に弱い発現を示した。これはさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号125、126)によって確認され、ここで、発現は分析した正常組織においては検出されなかった(図36)。この実験で調べた腫瘍サンプルの中で、6/12の結腸癌サンプルと5/10の胃癌サンプルはCLCA1について陽性であった。総じて、この遺伝子の腫瘍における発現は無調節であるようであった。非常に強い発現を示すサンプルに加えて、CLCA1はその他のサンプルにおいて顕著に下方制御されていた。
【0275】
タンパク質は4つの膜貫通ドメイン、全部で2つの細胞外領域を有すると予測される。CLCA1のこれら細胞外ドメインは、特に本発明によるとモノクローナル抗体のための標的構造として利用できる。
【0276】
CLCA1が胃癌および結腸癌において強力に発現していることそして高頻度であることにより、このタンパク質は本発明によると興味深い診断上および治療上のマーカーとなる。これには本発明によると、RT−PCRによる血清、骨髄、尿の転移性腫瘍細胞の検出ならびにその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに本発明によるとCLCA1の細胞外ドメインをモノクローナル抗体による免疫診断および治療の標的構造として利用できる。CLCA1は本発明によるとさらに腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘発するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。これには本発明によるとCLCA1の輸送タンパク質としての生理活性を調節し、胃腸腫瘍の治療に利用できるいわゆる低分子化合物の開発が含まれる。
【0277】
実施例7
診断上および治療上癌標的としてのFLJ21477の同定
FLJ21477(配列番号52)およびその推定翻訳産物(配列番号61)は仮定上のタンパク質としてGenbankにおいて登録番号.NM_025153として公表されている。それはATPase活性および4つの膜貫通ドメインを有する膜内在性タンパク質であり、したがって特異的抗体による治療に好適である。FLJ21477−特異的プライマー(配列番号69、70)を用いたRT−PCR研究により結腸における選択的発現、さらに(7/12)の調べた結腸癌サンプルにおいて様々なレベルの発現が示された(図8)。その他の正常組織は発現を示さなかった。これをさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号127、128)により確認した。FLJ21477−特異的発現は結腸(図37A)および11/12の結腸癌において検出可能であった。結腸組織における発現の他に、発現はさらに胃組織でも検出可能であった。さらに、定量的RT−PCRの条件下で、脳、胸腺および食道において検出可能な発現は、結腸および胃と比較して顕著に弱かった(図37A)。さらに以下の腫瘍サンプルにおけるFLJ21477−特異的発現を検出することが出来た:胃、膵臓、食道および肝臓。
【0278】
タンパク質は4つの膜貫通ドメインと全部で2つの細胞外領域を有すると予測される。これらFLJ21477の細胞外ドメインは、本発明によると特にモノクローナル抗体のための標的構造として利用できる。
【0279】
胃および結腸癌におけるFLJ21477の発現とその高い頻度により、該タンパク質は本発明によると、有用な診断上および治療上マーカーとなる。これには本発明によるとRT−PCRによる血清、骨髄、尿における転移性腫瘍細胞の検出ならびにその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに、FLJ21477の細胞外ドメインは本発明によるとモノクローナル抗体による免疫診断および治療の標的構造として利用できる。さらに本発明によると、FLJ21477は腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。
【0280】
実施例8
FLJ20694の診断上および治療上癌標的としての同定
FLJ20694(配列番号53)およびその翻訳産物(配列番号62)は仮定上のタンパク質としてGenbankに登録番号.NM_017928として公表されている。このタンパク質は膜内在性分子(膜貫通ドメインAA33−54)であり、チオレドキシン機能を有するようである。FLJ20694−特異的プライマー(配列番号71、72)を用いたRT−PCR研究により、結腸における選択的発現、さらに(5/9)の結腸癌サンプルにおける様々なレベルの発現が示された(図9)。その他の正常組織は発現を示さなかった。これはさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号129、130)により確認された(図38)。FLJ29694発現は結腸および胃(最初の実験では分析していない)以外のその他の正常組織では検出されなかった。
【0281】
タンパク質は1つの膜貫通ドメインと1つの細胞外領域を有すると予測される。FLJ20694のこれら細胞外ドメインは特に本発明によると、モノクローナル抗体のための標的構造として利用できる。
【0282】
さらに、FLJ20694は本発明によると腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘発するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。これには本発明によるとFLJ20694の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発も含まれ、胃腸腫瘍の治療に利用できる。
【0283】
実施例9
von Ebner’sタンパク質(c20orf114)の診断上および治療上癌標的としての同定
von Ebner’sタンパク質(配列番号54)およびその翻訳産物(配列番号63)は上気道および鼻咽頭上皮のPlunc−関連タンパク質としてGenbankにおいて登録番号.AF364078として公表されている。本発明によると、von Ebner’sタンパク質が肺癌のマーカーとして利用できるかを調べた。Ebner’sタンパク質の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号73、74)をこの目的のために用いた。このプライマーセットによるRT−PCR研究は、肺および(5/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現を示した(図10)。正常組織の群において胃での発現も示された。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0284】
実施例10
Pluncの診断上および治療上癌標的としての同定
Plunc(配列番号55)およびその翻訳産物(配列番号64)はGenbankに登録番号.NM_016583として公表されている。ヒトPluncは256アミノ酸であってマウスPluncタンパク質と72%の相同性を示すタンパク質をコードする(Bingle and Bingle、Biochem Biophys Acta 1493:363−7、2000)。Pluncの発現は気管、上気道、鼻咽頭上皮および唾液腺に限定されている。
【0285】
本発明により、Pluncが肺癌のマーカーとして利用できるかを調べた。Pluncの特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号75、76)をこの目的のために使用した。
【0286】
このプライマーセットを用いたRT−PCR研究により、胸腺、肺および(6/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された(図11)。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0287】
実施例11
SLC26A9の診断上および治療上癌標的としての同定
SLC26A9(配列番号56)およびその翻訳産物(配列番号65)はGenbankに登録番号.NM_134325として公表されている。SLC26A9は陰イオン交換体のファミリーに属する。SLC26A9の発現は細気管支および肺の肺胞上皮に限定されている(Lohi et al.、J Biol Chem 277:14246−54、2002)。
【0288】
SLC26A9が肺癌のマーカーとして利用できるかを調べた。この目的のためにSLC26A9の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号77、78)を用いた。SLC26A9−特異的プライマー(配列番号77、78)を用いたRT−PCR研究により、肺およびすべて(13/13)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された(図12)。甲状腺を除くその他の正常組織は発現を示さなかった。まず、配列番号131および132のプライマーを用いた定量的RT−PCR実験においてこれらの結果を確認することが出来、さらなる情報が得られた。4−5の腫瘍組織のプールされたサンプルにおいて、肺、結腸、膵臓および胃腫瘍におけるSLC26A9−特異的RNAの高い発現レベルを検出することが出来た。SLC26A9は膜貫通陰イオン輸送体のファミリーのメンバーである。健康な肺において、タンパク質は気道の方向において管腔内に向いており、したがって血液からのIgG抗体を直接用いることは出来ない。一方、タンパク質の極性は腫瘍では失われている。したがって本発明によると、特定の腫瘍、とりわけ、肺腫瘍、胃癌、膵臓癌においてモノクローナル抗体を用いた治療標的としてSLC26A9を用いることが出来る。肺、胃、膵臓および食道癌におけるSLC26A9の顕著な高発現および高頻度により、このタンパク質は本発明によると、良好な診断上および治療上マーカーとなる。これには本発明によるとRT−PCRによる血清、骨髄および尿における転移性腫瘍細胞の検出ならびにその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに、SLC26A9の細胞外ドメインは本発明によると、モノクローナル抗体による免疫診断および治療のための標的構造として利用することが出来る。さらに本発明によると腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)としてSLC26A9を用いることが出来る。これには本発明によると、SLC26A9の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発も含まれ、肺腫瘍および胃腸腫瘍の治療に利用できる。
【0289】
実施例12
THC1005163の診断上および治療上癌標的としての同定
THC1005163(配列番号57)はTIGR遺伝子インデックスからの遺伝子断片である。該遺伝子は3’領域のみ明らかになっており、ORFは欠失している。RT−PCR研究をTHC1005163−特異的プライマー(配列番号79)および5’末端に21特異的塩基の特異的タグを有するオリゴdT18プライマーを用いて行った。このタグは公知の配列との相同性についてのデータベースサーチプログラムを用いて調べた。この特異的プライマーをまずゲノムDNAの汚染を除くためにcDNA合成に用いた。このプライマーセットを用いたRT−PCR研究により、胃、卵巣、肺および(5/9)の肺癌組織診における発現が示された(図13)。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0290】
実施例13
LOC134288の診断上および治療上癌標的としての同定
LOC134288(配列番号58)およびその推定翻訳産物(配列番号66)はGenbankに登録番号.XM_059703として公表されている。
【0291】
本発明によると、LOC134288が腎臓細胞癌のマーカーとして利用できるかを調べた。LOC134288の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号80、81)をこの目的のために用いた。RT−PCR研究により腎臓および(5/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された(図14)。
【0292】
実施例14
THC943866の診断上および治療上癌標的としての同定
THC943866(配列番号59)はTIGR遺伝子インデックスからの遺伝子断片である。THC943866が腎臓細胞癌のマーカーとして利用できるかを調べた。THC943866の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号82、83)をこの目的のために用いた。
【0293】
THC943866−特異的プライマー(配列番号82、83)を用いたRT−PCR研究により、腎臓および(4/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された(図15)。
【0294】
実施例15
FLJ21458の診断上および治療上癌標的としての同定
FLJ21458(配列番号84)およびその推定翻訳産物(配列番号85)はGenbankに登録番号.NM_034850として公表されている。配列分析により、該タンパク質が新規なブチロフィリンファミリーのメンバーを表すことが明らかとなった。構造分析によりそれは1つの細胞外免疫グロブリンドメインを有する1型膜貫通タンパク質であることが明らかとなった。FLJ21458の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号86、87)を発現の調査に用いた。FLJ21458−特異的プライマー(配列番号86、87)によるRT−PCR研究は、結腸および(7/10)の調べた結腸癌組織診における選択的発現を示した(図16、表5)。特異的プライマー(配列番号133、134)を用いた定量的RT−PCRにより、選択的発現プロフィールが確認された(図39)。さらにこの実験において結腸、胃、直腸および盲腸におけるFLJ21458の胃腸−特異的検出および精巣における検出を行うことが可能であった。7/11の結腸転移サンプルも定量的PCRにおいて陽性であった。FLJ21458−特異的発現はその他の腫瘍にも拡張され、タンパク質−特異的発現は胃、膵臓および肝臓腫瘍において検出可能であった(表5)。FLJ21458タンパク質の検出用の抗体はウサギの免疫化によって産生した。以下のペプチドをこれら抗体の産生に用いた:
配列番号135:QWQVFGPDKPVQAL
配列番号136:AKWKGPQGQDLSTDS。
【0295】
FLJ21458−特異的反応は免疫蛍光において検出可能であった(図40)。抗体の特異性を確認するために、293細胞をFLJ21458−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。特異性は一方でFLJ21458−特異的抗体を用いた共存研究により確認され、他方で自己蛍光性GFPにより確認された。2つの蛍光図の重ね合わせは、免疫血清が特異的にFLJ21458タンパク質を認識することを明白に示した(図40a)。タンパク質の過剰発現により結果として得られた細胞染色は散在性であり、明白なタンパク質の局在化は出来なかった。このため、さらなる免疫蛍光実験をFLJ21458を内因的に発現する胃腫瘍特異的細胞株Snu16を用いて行った(図41B)。細胞をFLJ21458−特異的抗血清および膜タンパク質E−カドヘリンを認識するもう1つの抗体で染色した。FLJ21458−特異的抗体は少なくとも弱く細胞膜を染色し、したがってFLF21458が細胞膜に局在することが証明された。
【0296】
バイオインフォマティクス研究により、FLJ21458によってコードされるタンパク質が細胞表面分子であり、免疫グロブリン超分子ドメインを有することが示された。この表面分子の選択的発現により、それは、腫瘍細胞の検出の診断方法および腫瘍細胞を排除する治療方法の開発のための良好な標的となる。
【0297】
胃癌および結腸癌におけるFLJ21458の高発現および高頻度によりこのタンパク質は本発明によると、非常に興味深い診断上および治療上のマーカーとなる。これには本発明によると、RT−PCRによる、血清、骨髄および尿における転移性腫瘍細胞の検出およびその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに本発明によるとFLJ21458の細胞外ドメインを、モノクローナル抗体による免疫診断および治療のための標的構造として利用することが出来る。さらに本発明によるとFLJ21458を腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として用いることが出来る。これには、本発明によるとFLJ21458の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発が含まれ、胃腸腫瘍の治療に利用することが出来る。
【0298】
表5:正常および腫瘍組織におけるFLJ21458発現
【表5】
【背景技術】
【0001】
学際的なアプローチおよび古典的治療手順の徹底的な使用にも拘わらず、癌はいまだに死の主な原因である。より最近の治療の考え方は患者の免疫系を、組換え腫瘍ワクチンおよびその他の特定の手法、例えば抗体療法を用いて治療全体の考え方に導入することをねらいとする。かかる戦略の成功のための必要条件は、そのエフェクター機能が介入により増強されるべき患者の免疫系による腫瘍特異的または腫瘍関連抗原あるいはエピトープの認識である。腫瘍細胞はその起源である非悪性細胞と生物学的にかなり異なっている。その差は腫瘍発達の際に獲得した遺伝的変化によるものであり、その結果、とりわけ癌細胞において質または量が変化した分子構造が形成される。腫瘍担持宿主の特異的免疫系によって認識されるこの種の腫瘍関連構造は、腫瘍関連抗原とよばれる。腫瘍関連抗原の特異的認識は細胞性および体液性メカニズムを含み、これらは2つの機能的に相互接続した単位である:CD4+およびCD8+Tリンパ球はMHC(major histocompatibility complex)クラスIIおよびI分子に提示されたプロセシングされた抗原をそれぞれ認識し、Bリンパ球はプロセシングされていない抗原に直接に結合する循環性の抗体分子を産生する。腫瘍関連抗原の潜在的な臨床治療的重要性は、免疫系による腫瘍細胞上の抗原の認識がヘルパーT細胞の存在下での細胞障害性エフェクター機構の開始を導き、癌細胞の排除を導きうるという事実に起因する(Pardoll、Nat. Med. 4:525−31、1998)。したがって腫瘍免疫学の主な目的は分子的にこれらの構造を規定することである。これら抗原の分子特性は長い間謎であった。適切なクローニング技術の開発によって初めて、細胞障害性Tリンパ球(CTL)(van derBruggen et al.、Science 254:1643−7、1991)の標的構造を分析することにより、あるいは循環性自己抗体をプローブとして用いることにより(Sahin et al.、Curr. Opin. Immunol. 9:709−16、1997)、腫瘍関連抗原について系統的に腫瘍のcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることが可能となった。この目的のために、cDNA発現ライブラリーが新鮮な腫瘍組織から調製され、好適な系においてタンパク質として組換え的に発現された。患者から単離された免疫エフェクター、即ち、腫瘍特異的溶解パターンを示すCTLクローンあるいは循環性自己抗体がそれぞれの抗原のクローニングに利用された。
【0002】
近年、非常に多数の抗原がこれらアプローチによって様々な新形成において規定されている。しかし、上記の古典的方法において抗原同定のために利用されるプローブは、通常既に進展した癌を有する患者からの免疫エフェクター(循環性自己抗体またはCTLクローン)である。多くのデータが、腫瘍は例えば、T細胞の寛容化および反応不顕性化(anergization)を導くことができ、そして、疾患の経過において、特に有効な免疫認識をもたらしうる特異性が免疫エフェクターレパートリーから失われるということを示している。現在の患者の研究は、以前に発見され利用されてきた腫瘍関連抗原の真の作用の確かな証拠を未だにもたらしていない。したがって、自発的免疫応答を誘発するタンパク質が誤った標的構造を有するということを排除することは出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は癌の診断および治療のための標的構造を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、この目的は請求の範囲記載の主題によって達成される。
【0005】
本発明によると、腫瘍に関連して発現する抗原およびそれをコードする核酸の同定および提供のための戦略が追求された。この戦略は臓器特異的に発現する特定の遺伝子、例えば結腸、肺または腎臓組織にてもっぱら発現する遺伝子は、それぞれの臓器の腫瘍細胞において、そしてさらにその他の組織の腫瘍細胞において異所的に禁じられた態様で再活性化されるという事実に基づく。まず、データマイニングによりできるだけ完全にすべての既知の臓器特異的遺伝子をとりだす。これらは次いで様々な腫瘍におけるその異常な活性化について特異的RT−PCRによる発現分析によって評価される。データマイニングは腫瘍関連遺伝子の同定のための公知の方法である。しかしこの常套方法において、正常組織ライブラリーのトランスクリプトームがコンピュータにより腫瘍組織ライブラリーから通常差し引かれ、残った遺伝子が腫瘍特異的であると予想される(Schmitt et al.、Nucleic AcidsRes. 27:4251−60、1999; Vasmatzis et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:300−4、1998; Scheurle et al.、Cancer Res. 60:4037−43、2000)。
【0006】
しかしより有効であることが判明した本発明の概念は、すべての臓器特異的遺伝子をコンピュータにより抽出するためにデータマイニングを利用することおよび該遺伝子の腫瘍における発現を評価することに基づく。
【0007】
本発明はしたがって一つの態様において、腫瘍において示差的に発現する組織特異的遺伝子を同定する戦略に関する。該戦略は、公共の配列ライブラリーのデータマイニング(「インシリコ」)とそれに続く実験室での(「ウェットベンチ」)研究の評価を組み合わせるものである。
【0008】
本発明によると、2種類のバイオインフォマティックスクリプト(bioinformatic scripts)に基づく組み合わせ戦略により、新規腫瘍遺伝子の同定が可能となった。これらは以前に純粋に臓器特異的であると分類されたものである。これら遺伝子が腫瘍細胞において異常に活性化しているという知見により、それら遺伝子に実質的に新規の機能予測をともなう性質が割り当てられるようになる。本発明によると、これら腫瘍関連遺伝子およびそれらによってコードされる遺伝子産物は、免疫原性作用とは独立に同定及び提供された。
【0009】
本発明によって同定された腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117および119からなる群から選択される核酸配列を
含む核酸、その一部または誘導体、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸にハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【0010】
好適な態様において、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は配列番号1−8、41−44、51−59、84、117および119からなる群から選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する。さらに好適な態様において、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0011】
本発明は一般に、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分または誘導体、それをコードする核酸または該コード核酸に対する核酸、あるいは本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分または誘導体に対する抗体の、治療および診断のための使用に関する。この利用は診断、治療および進行管理における個々のものに関するだけでなく、2以上のかかる抗原、機能的断片、核酸、抗体などの組み合わせ、そして一つの態様においてその他の腫瘍関連遺伝子および抗原との組み合わせにも関する。
【0012】
治療および/または診断に好適な疾患は1または複数の本発明によって同定される腫瘍関連抗原が選択的に発現または異常に発現している疾患である。
【0013】
本発明はまた、腫瘍細胞に関連して発現する核酸および遺伝子産物にも関する。
【0014】
さらに、本発明は既知の遺伝子の選択的スプライシング(スプライスバリアント)または選択的オープンリーディングフレームを用いる変化した翻訳によって産生される遺伝子産物、即ち核酸およびタンパク質またはペプチドに関する。この態様において、本発明は配列表の配列番号3−5による配列からなる群から選択される核酸配列を含む核酸に関する。さらに、この態様において、本発明は配列表の配列番号10および12−14による配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはペプチドに関する。本発明のスプライスバリアントは腫瘍疾患の診断および治療のための標的として本発明にしたがって利用できる。
【0015】
特に、本発明は配列表の配列番号10によるアミノ酸配列に関し、これは本発明により同定される選択的オープンリーディングフレームによりコードされ、以前に記載されたタンパク質配列(配列番号9)と、タンパク質のN末端におけるさらなる85アミノ酸において異なる。
【0016】
全く異なる機構によりスプライスバリアントが産生され、例えば、以下が挙げられる
−異なる転写開始部位の利用
−さらなるエキソンの利用
−1または2あるいはそれ以上のエキソンの完全または不完全なスプライシング、
−スプライス制御配列の突然変異による変化(欠失または新たな供与/受容配列の作成)、
−イントロン配列の不完全な除去。
【0017】
遺伝子の選択的スプライシングにより異なる転写産物配列(スプライスバリアント)が生じる。その変化した配列の領域におけるスプライスバリアントの翻訳の結果、元のタンパク質とは構造および機能において顕著に異なる変化したタンパク質が生じる。腫瘍関連スプライスバリアントにより腫瘍関連転写産物および腫瘍関連タンパク質/抗原が生じうる。これらは腫瘍細胞の検出および腫瘍の治療標的化のための分子マーカーとして利用できる。腫瘍細胞の、例えば、血液、血清、骨髄、痰、気管支洗浄液、分泌液および組織診における検出は、本発明にしたがって行うことが出来、例えば、スプライスバリアント特異的オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅による核酸の抽出後に行うことが出来る。特に、プライマー対はオリゴヌクレオチドとして好適であり、その少なくとも一方はストリンジェントな条件下で腫瘍関連スプライスバリアント領域に結合する。本発明によると、実施例においてこの目的で記載されるオリゴヌクレオチドが好適であり、特に、配列表の配列番号34−36、39、40、および107−110から選択される配列を有するまたは含むオリゴヌクレオチドが好適である。本発明によると、すべての配列依存的検出系が検出に好適である。それらは、PCRは別として、例えば、遺伝子チップ/マイクロアレイ系、ノザンブロット、RNAse保護アッセイ(RDA)その他が挙げられる。すべての検出系は共通して、検出は少なくとも1つのスプライスバリアント特異的核酸配列との特異的ハイブリダイゼーションに基づく。しかし、腫瘍細胞はスプライスバリアントによってコードされる特異的エピトープを認識する抗体によって、本発明にしたがって検出されうる。該抗体は該スプライスバリアントに特異的な免疫化ペプチドを用いて調製できる。この態様において、本発明は特に、配列表の配列番号17−19、111−115、120、および137から選択される配列を有するまたは含むペプチドおよびそれに特異的な抗体に関する。免疫化に好適なのは特にそのエピトープが健康細胞において好適に産生される遺伝子産物のバリアントと顕著に異なるアミノ酸である。抗体による腫瘍細胞の検出は患者から単離したサンプルに対して行うことが出来、あるいは静脈内投与した抗体の撮像として行うことが出来る。診断用途に加えて、新しいまたは異なるエピトープを有するスプライスバリアントは免疫療法の魅力的な標的である。本発明のエピトープは治療的に活性なモノクローナル抗体またはTリンパ球の標的化に用いることが出来る。受動免疫療法において、スプライスバリアント特異的エピトープを認識する抗体またはTリンパ球が養子免疫伝達される。その他の抗原の場合のように、抗体をかかるエピトープを含むポリペプチドの利用により標準技術によって作成することが出来る(動物の免疫化、組換え抗体単離のパニング戦略)。あるいは該エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドをコードする核酸を免疫化に用いることも出来る。エピトープ特異的Tリンパ球の作成のためのインビトロまたはインビボでの多くの技術が知られており詳細に記載されており(例えば、Kessler JH、et al. 2001、Sahin et al.、1997)、おそらくスプライスバリアント特異的エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドまたは該オリゴまたはポリペプチドをコードする核酸の使用に基づく。スプライスバリアント特異的エピトープを含むオリゴまたはポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸は医薬上活性な物質として能動免疫療法(ワクチン化、ワクチン療法)にも用いることが出来る。
【0018】
本発明はまた、正常及び腫瘍組織において二次修飾の性質および程度が異なるタンパク質も記載する(例えば、Durand & Seta、2000; Clin. Chem. 46: 795−805; Hakomori、1996; Cancer Res.56: 5309−18)。
【0019】
タンパク質修飾の分析はウェスタンブロットにて行うことが出来る。特に、原則として数kDaのサイズを有するグリコシル化の結果標的タンパク質の全質量が増加し、これはSDS−PAGEで分離することが出来る。特異的O−およびN−グリコシド結合の検出のために、タンパク質溶解液をSDSを用いた変性の前にO−またはN−グリコシラーゼとインキュベートする(それぞれ製造業者の指示にしたがう。例えば、PNgase、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)。その後、ウェスタンブロットを行う。標的タンパク質のサイズが低下している場合は特異的グリコシル化がグリコシダーゼとのインキュベーション後に検出することが出来、したがって修飾の腫瘍特異性が分析できる。腫瘍細胞および健康細胞において示差的にグリコシル化されたタンパク質領域が特に興味深い。かかるグリコシル化の差はしかしこれまでにいくつかの細胞表面タンパク質について記載されているに過ぎない(例えば、Muc1)。
【0020】
本発明によると、腫瘍におけるクローディン18についての示差的グリコシル化を検出することが出来た。胃腸癌、膵臓癌、食道腫瘍、前立腺腫瘍および肺腫瘍は低レベルにてグリコシル化された形態のクローディン18を有する。健康組織におけるグリコシル化はクローディン18のタンパク質エピトープをマスクし、このエピトープはグリコシル化の欠失によって腫瘍細胞上では被覆されない。これに対応して本発明によるとこれらドメインに結合するリガンドおよび抗体を選択することが出来る。本発明によるかかるリガンドおよび抗体は健康細胞上のクローディン18には結合しない。というのは健康細胞上ではエピトープがグリコシル化によって被覆されているからである。
【0021】
腫瘍関連スプライスバリアント由来のタンパク質エピトープについて上記したように、示差的グリコシル化を用いて診断および治療目的で正常細胞と腫瘍細胞を識別することが出来る。
【0022】
一つの態様において、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原を認識し、本発明によって同定される腫瘍関連抗原発現または異常発現を有する細胞に好ましくは選択的な剤を含む医薬組成物に関する。特定の態様において、該剤は細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜の障害またはサイトカインの分泌をもたらし得、好ましくは腫瘍阻害活性を有する。一つの態様において、剤は腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に補体活性化または毒素結合抗体であって腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる態様において、剤はそれぞれ選択的に、その少なくとも1つが本発明によって同定される腫瘍関連抗原である異なる腫瘍関連抗原を認識する2以上の剤を含む。認識には直接に抗原の活性または発現の阻害を伴う必要はない。本発明のこの態様において、腫瘍に選択的に限定される抗原は好ましくはエフェクター機構のこの特異的位置への動員のための標的として役立つ。好適な態様において、剤はHLA分子上の抗原を認識し、こうして標識された細胞を溶解する細胞障害性Tリンパ球である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体でありしたがって自然または人工エフェクター機構を該細胞に動員する。さらなる態様において、剤はその他の細胞の該抗原を特異的に認識するエフェクター機能を増強するヘルパーTリンパ球である。
【0023】
一つの態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する剤を含む医薬組成物に関する。好適な態様において、剤は腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる態様において、剤は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である。さらなる態様において、剤は、少なくともその1つが本発明によって同定される腫瘍関連抗原である異なる腫瘍関連抗原の発現または活性をそれぞれ選択的に阻害する2以上の剤を含む。
【0024】
本発明はさらに投与された際にHLA分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとの複合体の量を選択的に増加させる剤を含む医薬組成物に関する。一つの態様において、剤は1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)該腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(iv)該腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとMHC分子との単離複合体。
【0025】
一つの態様において、剤はMHC分子とそれぞれ異なる腫瘍関連抗原のペプチドエピトープとの複合体の量を選択的に増加させる2以上の剤を含み、ここで腫瘍関連抗原の少なくとも1つは本発明によって同定される腫瘍関連抗原である。
【0026】
本発明はさらに1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む医薬組成物に関する:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、
(iv)本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(vi)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体。
【0027】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸は医薬組成物中において発現ベクター中にプロモーターに機能的に連結させて存在させてもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原またはその部分を分泌し、それを表面上に発現するものでもよいし、さらに該腫瘍関連抗原またはその該部分に結合するHLA分子を発現するものでもよい。一つの態様において、宿主細胞はHLA分子を内因的に発現する。さらなる態様において、宿主細胞はHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を組換えにより発現する。宿主細胞は好ましくは非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞であり、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0029】
本発明の医薬組成物に存在する抗体はモノクローナル抗体であるのがよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体、天然の抗体または合成の抗体の断片であってよく、これらすべてはコンビナトリー技術によって産生できる。抗体は治療上または診断上有用な薬剤と結合させてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物に存在するアンチセンス核酸は6−50の配列、特に10−30、15−30および20−30の、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の連続ヌクレオチドを含むものであってよい。
【0031】
さらなる態様において、直接または核酸の発現を介して本発明の医薬組成物によって提供される腫瘍関連抗原またはその部分は細胞表面のMHC分子に結合し、該結合は好ましくは細胞溶解性応答の誘発および/またはサイトカイン放出の誘導をもたらす。
【0032】
本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体および/またはアジュバントを含むものでもよい。アジュバントは、サポニン、GM−CSF、CpGヌクレオチド、RNA、サイトカインまたはケモカインから選択すればよい。本発明の医薬組成物は好ましくは腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療に用いられる。好適な態様において、疾患は癌である。
【0033】
本発明はさらに1または複数の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療または診断方法にも関する。一つの態様において、治療は本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0034】
一つの態様において、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の診断方法に関する。該方法は患者から単離した生物学的サンプルにおける、以下の検出を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の検出、および/または、(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の検出、および/または
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に対する抗体の検出、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出。
【0035】
特定の態様において、検出は以下の工程を含む:
(i)生物学的サンプルを、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、該腫瘍関連抗原または該その部分、腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球に特異的に結合する剤と接触させる工程、および
(ii)剤と核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球との複合体の形成を検出する工程。
【0036】
一つの態様において、疾患は2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、検出は、該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の検出、2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分の検出、該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはその部分に結合する2以上の抗体の検出または該2以上の異なる腫瘍関連抗原に特異的な2以上の細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出を含む。さらなる態様において、患者から単離した生物学的サンプルを対応する正常な生物学的サンプルと比較する。
【0037】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の退行、経過または発症を判定する方法に関し、該方法は、該疾患を有するか該疾患に罹患しやすい患者からのサンプルを、以下からなる群から選択される1または複数のパラメーターに関してモニタリングする工程を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の量、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体の量、および
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量。
【0038】
該方法は好ましくは第一のサンプルの第一の時点およびさらなるサンプルの第二の時点でのパラメーターを測定することを含み、ここで疾患の経過が2つのサンプルの比較によって判定される。特定の態様において、疾患は2以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、モニタリングは以下のモニタリングを含む:
(i)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分をコードする2以上の核酸の量、および/または
(ii)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分の量、および/または
(iii)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分に結合する2以上の抗体の量、および/または
(iv)該2以上の異なる腫瘍関連抗原またはそれらの部分とMHC分子との複合体に特異的な2以上の細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量。
【0039】
本発明によると、核酸またはその部分の検出あるいは核酸またはその部分の量のモニタリングは該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて行うことが出来、あるいは該核酸または該その部分の選択的増幅によって行うことが出来る。一つの態様において、ポリヌクレオチドプローブは該核酸の連続するヌクレオチドの6−50、特に、10−30、15−30および20−30の配列を含む。
【0040】
特定の態様において、検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分は細胞内または細胞表面に存在する。本発明によると、腫瘍関連抗原またはその部分の検出または腫瘍関連抗原またはその部分の量のモニタリングは、該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的な抗体結合によって行いうる。
【0041】
さらなる態様において、検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分はMHC分子、特にHLA分子との複合体中に存在する。
【0042】
本発明によると、抗体の検出または抗体の量のモニタリングは該抗体に特異的なタンパク質またはペプチドの結合を用いて行いうる。
【0043】
本発明によると、抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の検出あるいは細胞溶解性T細胞またはヘルパーT細胞の量のモニタリングは、該抗原または該その部分とMHC分子との複合体を提示する細胞を用いて行いうる。
【0044】
検出またはモニタリングに使用されるポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質またはペプチドあるいは細胞は好ましくは検出可能な様式で標識される。特定の態様において、検出可能なマーカーは放射性マーカーまたは酵素マーカーである。さらにTリンパ球は、その増殖、そのサイトカイン産生、およびそのMHCと腫瘍関連抗原またはその部分との複合体での特異的刺激によってトリガーされる細胞障害性活性を検出することにより検出できる。Tリンパ球はまた1または複数の腫瘍関連抗原の特定の免疫原性断片を搭載し、特異的T細胞受容体を接触させることにより特異的Tリンパ球を同定しうる組換えMHC分子あるいは2以上のMHC分子の複合体を介して検出しうる。
【0045】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療、診断またはモニタリング方法に関し、該方法は、該腫瘍関連抗原またはその部分に結合し、治療または診断薬と複合化された抗体を投与することを含む。抗体はモノクローナル抗体であってよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体あるいは天然の抗体の断片である。
【0046】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)該患者から免疫反応性細胞を含むサンプルを取り出す工程、
(ii)該サンプルと該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞を、該腫瘍関連抗原またはその部分に対する細胞溶解性T細胞の産生に好適な条件下で接触させる工程、および、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞を溶解するのに好適な量の細胞溶解性T細胞を患者に導入する工程。
【0047】
本発明はまた腫瘍関連抗原に対する細胞溶解性T細胞のT細胞受容体のクローニングにも関する。該受容体その他のT細胞に移入してもよく、それはそれによって所望の特異性を受け取り、そして(iii)のように、患者に導入してもよい。
【0048】
一つの態様において、宿主細胞はHLA分子を内因的に発現する。さらなる態様において、宿主細胞は組換えによりHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する。宿主細胞は好ましくは非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0049】
さらなる態様において、本発明は腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードし、該疾患に関連する細胞によって発現する核酸を同定する工程、
(ii)宿主細胞を該核酸またはその部分でトランスフェクトする工程、
(iii)該核酸を発現させるためにトランスフェクトした宿主細胞を培養する工程(高効率のトランスフェクションが達成された場合これは必須ではない)、および、
(iv)疾患に関連する患者の細胞に対する免疫応答を上昇させるのに好適な量にて患者に宿主細胞またはその抽出物を導入する工程。
【0050】
該方法はさらに腫瘍関連抗原またはその部分を提示するMHC分子を同定することも含み、ここで宿主細胞は同定されたMHC分子を発現し該腫瘍関連抗原またはその部分を提示する。免疫応答はB細胞応答またはT細胞応答のいずれでもよい。さらに、T細胞応答は腫瘍関連抗原またはその部分を提示する宿主細胞に特異的であるか、腫瘍関連抗原またはその部分を発現する患者の細胞に特異的である、細胞溶解性T細胞および/またはヘルパーT細胞の産生を含むものであり得る。
【0051】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法にも関し、該方法は以下の工程を含む:
(i)異常な量の腫瘍関連抗原を発現する患者からの細胞を同定する工程、
(ii)該細胞のサンプルを単離する工程、
(iii)該細胞を培養する工程、および、
(iv)細胞に対する免疫応答をトリガーするのに好適な量の該細胞を患者に導入する工程。
【0052】
好ましくは本発明によって用いられる宿主細胞は非増殖性であるか非増殖性にされたものである。腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患は特に癌である。
【0053】
本発明はさらに以下からなる群から選択される核酸に関する:
(a)配列番号3−5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【0054】
本発明はさらに配列番号10および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸、その一部または誘導体に関する。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸のプロモーター配列に関する。これら配列は好ましくは発現ベクターにおいて別の遺伝子に機能的に連結していてもよく、該遺伝子の適当な細胞での選択的発現を確保してもよい。
【0056】
さらなる態様において、本発明は本発明の核酸を含む組換え核酸分子、特に、DNAまたはRNA分子に関する。
【0057】
本発明はまた、本発明の核酸または本発明の核酸を含む組換え核酸分子を含む宿主細胞にも関する。
【0058】
宿主細胞はHLA分子をコードする核酸を含むものでもよい。一つの態様において、宿主細胞は内因的にHLA分子を発現する。さらなる態様において、宿主細胞は組換えによりHLA分子および/または本発明の核酸またはその部分を発現する。好ましくは、宿主細胞は非増殖性である。好適な態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、本発明により同定される核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブまたは「アンチセンス」分子として利用できるオリゴヌクレオチドに関する。本発明により同定される核酸またはその部分にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーまたはコンピテント(competent)サンプルの形態の核酸分子は、本発明により同定される核酸に相同的な核酸の発見に利用できる。PCR増幅、サザンおよびノザンハイブリダイゼーションを相同的核酸の発見に用いることが出来る。ハイブリダイゼーションは低いストリンジェンシーで行ってもよく、より好ましくは中程度のストリンジェンシー、もっとも好ましくは高いストリンジェンシーの条件で行う。本発明による「ストリンジェントな条件」という語は、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件をいう。
【0060】
さらなる態様において、本発明は以下からなる群から選択される核酸によってコードされるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに関する:
(a)配列番号3−5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【0061】
好適な態様において、本発明は配列番号10および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドまたはペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0062】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の免疫原性断片に関する。該断片は好ましくはヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する。本発明の断片は好ましくは、少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50のアミノ酸の配列を有する。
【0063】
この態様において、本発明は配列番号17−19、90−97、100−102、105、106、111−116、120、123、124、および135−137からなる群から選択される配列を有するか含むペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0064】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する剤に関する。好適な態様において、剤は抗体である。さらなる態様において、抗体はキメラ、ヒト化抗体またはコンビナトリー技術によって産生される抗体あるいは抗体の断片である。さらに、本発明は以下の(i)と(ii)の複合体に選択的に結合する抗体に関する:
(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分、および
(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原または該その部分が結合するMHC分子、ここで該抗体は(i)のみあるいは(ii)のみには結合しない。
【0065】
本発明の抗体はモノクローナル抗体であってよい。さらなる態様において、抗体はキメラまたはヒト化抗体あるいは天然の抗体の断片である。
【0066】
特に、本発明は、配列番号17−19、90−97、100−102、105、106、111−116、120、123、124、および135−137からなる群から選択される配列を有するかそれを含むペプチド、その一部または誘導体に特異的に結合するかかる剤、特に抗体に関する。
【0067】
本発明はさらに本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその部分に結合する本発明の剤または本発明の抗体と、治療または診断薬との結合体に関する。一つの態様において、治療または診断薬は毒素である。
【0068】
さらなる態様において、本発明は本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現の検出用キットに関し、該キットは以下の検出のための剤を含む:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的なT細胞。
【0069】
一つの態様において、核酸またはその部分の検出用の剤は該核酸の選択的増幅のための核酸分子であって、特に該核酸の6−50、特に10−30、15−30および20−30の連続ヌクレオチド配列を含むものである。
【0070】
発明の詳細な説明
本発明によると、腫瘍細胞において選択的または異常に発現し、腫瘍関連抗原である遺伝子が記載される。
【0071】
本発明によると、これら遺伝子および/またはその遺伝子産物および/またはその誘導体および/または部分は治療アプローチのための好ましい標的構造である。概念的には、該治療アプローチは選択的に発現した腫瘍関連遺伝子産物の活性の阻害をねらうものである。これは、該異常なそれぞれの選択的発現が腫瘍病原性に機能的に重要である場合、そしてその連結に対応する細胞の選択的傷害が伴う場合に有用である。別の治療の考え方は腫瘍関連抗原を、腫瘍細胞に選択的に細胞傷害能を有するエフェクター機構を動員する標識として考えるものである。ここで、標的分子自体の機能および腫瘍発達におけるその役割は完全に無関係である。
【0072】
本発明による核酸の「誘導体」とは、1または複数のヌクレオチド置換、欠失および/または付加が該核酸に存在することを意味する。さらに「誘導体」の語はまたヌクレオチド塩基、糖またはリン酸における核酸の化学的誘導体化も含む。「誘導体」の語はまた天然にはないヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含む核酸も含む。
【0073】
本発明によると、核酸は好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。本発明による核酸はゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え産生および化学合成された分子を含む。本発明によると、核酸は一本鎖でも二本鎖として存在してもよく、直鎖状でもよいし共有結合により閉環した分子であってもよい。
【0074】
本発明により記載される核酸は好ましくは単離されたものである。「単離核酸」の語は、本発明によると、核酸が以下のものであることを意味する:
(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、増幅されたもの、
(ii)クローニングにより組換え産生されたもの、
(iii)例えば切断およびゲル電気泳動分画により精製されたもの、あるいは、
(iv)例えば化学合成により合成されたもの。
【0075】
単離核酸は組換えDNA技術による操作を行える核酸である。
【0076】
核酸は2つの配列がハイブリダイズでき、互いに安定な二本鎖を形成することが出来る場合、別の核酸と「相補的」であり、ここでハイブリダイゼーションは好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能とする条件(ストリンジェントな条件)下で行う。ストリンジェントな条件は、例えば、以下に記載されている:Molecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrook et al.、Editors、2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory press、Cold Spring Harbor、New York、1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelet al.、Editors、John Wiley & Sons、Inc.、New York。これらによると、例えば、ハイブリダイゼーションバッファー(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mMNaH2PO4(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中での65℃でのハイブリダイゼーションをいう。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAをトランスファーしたメンブレンを例えば以下の条件で洗浄する:2×SSC中、室温、その後、0.1−0.5×SSC/0.1×SDS中、68℃までの温度。
【0077】
本発明によると、相補的な核酸は少なくとも40%、特に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、そして好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%あるいは少なくとも99%の、同一なヌクレオチドを有する。
【0078】
腫瘍関連抗原をコードする核酸は、本発明によると、単独でまたはその他の核酸、特に異種核酸と組み合わせて存在してもよい。好適な態様において、核酸は、該核酸と同種であっても異種であってもよい発現制御配列または調節配列と機能的に連結している。コード配列と調節配列は、該コード配列の発現または転写が該調節配列の制御あるいは影響下となるように互いに共有結合している場合、互いに「機能的に」連結している。コード配列が翻訳されて機能的タンパク質となり、ここで調節配列が該コード配列に機能的に連結している場合、該調節配列の誘導の結果、該コード配列の転写が起こり、コード配列におけるフレームシフトは起こらず、所望のタンパク質またはペプチドへと翻訳され得ないコード配列は生じない。
【0079】
「発現制御配列」または「調節配列」の語は、本発明によると、プロモーター、エンハンサーおよびその他の遺伝子発現を調節する制御要素を含む。本発明の特定の態様において、発現制御配列は制御されうる。調節配列の正確な構造は種または細胞型の関数として変化しうるが、一般にそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列等を含む。より具体的には、5’非転写調節配列は、機能的に連結した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列を含んでいてもよい。
【0080】
したがって一方で、本明細書に記載する腫瘍関連抗原はいずれの発現制御配列およびプロモーターと組み合わせてもよい。しかし他方で、本明細書に記載する腫瘍関連遺伝子産物のプロモーターは、本発明によるとその他の遺伝子と組み合わせてもよい。これによってこれらのプロモーターの選択的活性が利用される。
【0081】
本発明によると、核酸はさらに宿主細胞からの該核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチドの分泌を制御するポリペプチドをコードするその他の核酸と組み合わせて存在してもよい。本発明によると、核酸はコードされるタンパク質またはポリペプチドが宿主細胞の細胞膜にアンカーされるように、あるいは該細胞の特定のオルガネラに区画化されるようにするポリペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在してもよい。同様に、レポーター遺伝子またはいずれかの「タグ」を表すことが出来る核酸との組み合わせも可能である。
【0082】
好適な態様において、本発明による組換えDNA分子は核酸、例えば本発明の腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する適当なプロモーターとともにベクター中にあってもよい。もっとも一般的な意味において本明細書において用いる「ベクター」の語は、該核酸が、例えば、原核および/または真核細胞に導入され、適当な場合ゲノムに組み込まれるのを可能にする核酸のためのあらゆる中間媒体を含む。この種のベクターは細胞中で好ましくは複製および/または発現される。中間媒体は、例えば、エレクトロポーレーション、微粒子銃による衝撃、リポソーム投与、アグロバクテリウムによる移入またはDNAまたはRNAウイルスを介した挿入における使用に適用される。ベクターにはプラスミド、ファージミドまたはウイルスゲノムが含まれる。
【0083】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は宿主細胞のトランスフェクションに利用できる。ここで核酸は組換えDNAとRNAの両方を意味する。組換えRNAはDNAテンプレートのインビトロ転写により調製できる。さらに、使用前に安定化配列、キャップおよびポリアデニル化によって修飾してもよい。
【0084】
本発明によると、「宿主細胞」の語は外来核酸で形質転換またはトランスフェクトしうるあらゆる細胞を含む。本発明によると「宿主細胞」の語は原核(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。特に好ましいのは、哺乳類細胞、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類由来細胞である。細胞は様々な組織タイプ由来であってよく、一次細胞および細胞株を含む。具体的な例としてはケラチン生成細胞、末梢血白血球、骨髄幹細胞および胚幹細胞が含まれる。さらなる態様において、宿主細胞は抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。核酸は宿主細胞中に単一コピーまたは2コピー以上の形態において存在し得、一つの態様において、宿主細胞中で発現される。
【0085】
本発明によると、「発現」の語はもっとも広い意味で用いられ、RNAの産生またはRNAとタンパク質の産生を含む。それはまた核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過的に行っても安定に行ってもよい。哺乳類細胞における好ましい発現系は、pcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含み、これらは選抜可能マーカー、例えば、G418に耐性を付与する遺伝子(したがって安定にトランスフェクトされた細胞株の選抜を可能にする)およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー−プロモーター配列を含む。
【0086】
本発明の、HLA分子が腫瘍関連抗原またはその部分を提示する場合において、発現ベクターはまた該HLA分子をコードする核酸配列を含んでいてもよい。HLA分子をコードする核酸配列は腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその部分と同一の発現ベクターに存在していてもよいし、あるいは両核酸は異なる発現ベクターに存在していてもよい。後者の場合、2つの発現ベクターを細胞に共トランスフェクトすればよい。宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分またはHLA分子のいずれも発現しない場合、それらをコードする両核酸を細胞に同一の発現ベクターにおいてあるいは異なる発現ベクターにおいてトランスフェクトする。細胞が既にHLA分子を発現している場合、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸配列のみを細胞にトランスフェクトすればよい。
【0087】
本発明はまた、腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅のためのキットも含む。かかるキットは、例えば、腫瘍関連抗原をコードする核酸にハイブリダイズする増幅プライマーの対を含む。プライマーは好ましくは核酸の6−50、特に、10−30、15−30および20−30の連続ヌクレオチドの配列を含み、プライマーダイマーが形成されないようにオーバーラップしないものである。プライマーの一方は腫瘍関連抗原をコードする核酸の一方の鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅を可能とする配置において相補的な鎖にハイブリダイズする。
【0088】
「アンチセンス」分子または「アンチセンス」核酸を用いて核酸の発現を制御、特に減少させることが出来る。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」の語は、本発明によると、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドであって、生理条件下で特定の遺伝子を含むDNAあるいは該遺伝子のmRNAにハイブリダイズするものをいい、それによって、該遺伝子の転写および/または該mRNAの翻訳が阻害される。本発明によると、「アンチセンス分子」はその通常のプロモーターに関して逆方向に核酸またはその部分を含むコンストラクトも含む。核酸またはその部分のアンチセンス転写産物は酵素を規定する天然のmRNAと二本鎖を形成することが出来、したがってmRNAの蓄積または活性な酵素への翻訳を阻害することが出来る。もう一つの可能性は核酸の不活化のためのリボザイムの使用である。本発明による好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは標的核酸の6−50、特に10−30、15−30および20−30の連続するヌクレオチドの配列を有し、好ましくは標的核酸またはその部分に完全に相補的である。
【0089】
好適な態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはN−末端または5’上流部位、例えば、翻訳開始部位、転写開始部位またはプロモーター部位にハイブリダイズする。さらなる態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは3’非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位にハイブリダイズする。
【0090】
一つの態様において、本発明のオリゴヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその組み合わせからなり、一つのヌクレオチドの5’末端ともう一つのヌクレオチドの3’末端が互いにホスホジエステル結合で連結している。これらオリゴヌクレオチドは常套方法によって合成してもよいし、組換え産生してもよい。
【0091】
好適な態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは「修飾」オリゴヌクレオチドである。ここで、オリゴヌクレオチドはその標的への結合能力を阻害しないで、様々に修飾して、例えば、その安定性または治療効力を上昇させてもよい。本発明によると、「修飾オリゴヌクレオチド」の語は以下のオリゴヌクレオチドを意味する:
(i)少なくともそのヌクレオチドの2つが互いに合成インターヌクレオシド結合(即ち、ホスホジエステル結合ではないインターヌクレオシド結合)により連結されている、および/または
(ii)核酸において通常みられない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合している。
【0092】
好ましい合成インターヌクレオシド結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミダイト、カーバメート、カーボネート、ホスフェートトリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0093】
「修飾オリゴヌクレオチド」の語はまた、共有結合により修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを含む。「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、3’位のヒドロキシル基および5’位のホスフェート基以外の低分子量有機基に共有結合した糖残基を有するオリゴヌクレオチドである。修飾オリゴヌクレオチドは、例えば、2’−O−アルキル化リボース残基またはリボース以外のその他の糖、例えばアラビノースを含むものでもよい。
【0094】
好ましくは、本発明にしたがって記載されるタンパク質およびポリペプチドは単離されたものである。「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」の語は、タンパク質またはポリペプチドが自然環境から分離されていることを意味する。単離タンパク質またはポリペプチドは実質的に純粋な状態であり得る。「実質的に純粋な状態」という語は、タンパク質またはポリペプチドが、自然あるいはインビボでそれらが結合しているその他の物質を実質的に含まないということを意味する。
【0095】
かかるタンパク質およびポリペプチドは、例えば、抗体の産生および治療薬として免疫学的または診断アッセイにおいて利用できる。本発明にしたがって記載されるタンパク質およびポリペプチドは生物学的サンプル、例えば組織または細胞ホモジネートから単離したものでもよいし、様々な原核または真核発現系において組換え発現させたものでもよい。
【0096】
本発明の目的のために、タンパク質またはポリペプチドあるいはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。
【0097】
アミノ酸挿入バリアントはアミノ−および/またはカルボキシ−末端融合を含み、また、1または2以上のアミノ酸の特定のアミノ酸配列への挿入も含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1または複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されているが、結果的に得られる産物の適当なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。アミノ酸欠失バリアントは配列からの1または複数のアミノ酸の欠如によって特徴づけられる。アミノ酸置換バリアントは配列における少なくとも1残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることによって特徴づけられる。好ましくは修飾は相同的タンパク質またはポリペプチド間で保存されていないアミノ酸配列における位置のものである。好ましくは、アミノ酸を類似の特性、例えば、疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の大きさなどを有する別のアミノ酸で置換する(保存的置換)。保存的置換は、例えば、1つのアミノ酸の、置換すべきアミノ酸と同じ群に属する以下に挙げる別のアミノ酸による交換に関する:
1.小さい脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負に荷電した残基およびそのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正に荷電した残基:His、Arg、Lys
4.大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0098】
タンパク質構造のその特定の部分により、3つの残基を括弧内に示す。Glyは側鎖を有さない唯一の残基でありしたがって鎖に柔軟性を与える。Proは鎖を大幅に制限する珍しい構造を有する。Cysはジスルフィド結合を形成することが出来る。
【0099】
上記のアミノ酸バリアントは公知のペプチド合成技術、例えば、固相合成(Merrifield、1964)および類似の方法または組換えDNA操作によって容易に調製できる。あらかじめ決定した位置における置換突然変異の、配列既知のまたは部分的に既知のDNAへの導入技術は周知であり、例えばM13突然変異誘発が含まれる。置換、挿入または欠失を有するタンパク質の調製のためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al. (1989)に詳細に記載されている。
【0100】
本発明によると、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの「誘導体」は1または複数の酵素に関連する分子の置換、欠失および/または付加が含まれ、かかる分子としては、炭水化物、脂質および/またはタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが挙げられる。「誘導体」の語は、該タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドのすべての機能的化学的同等体も含む。
【0101】
本発明によると、腫瘍関連抗原の部分または断片はそれが由来するポリペプチドの機能的特性を有する。かかる機能的特性には、抗体との相互作用、その他のポリペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性が挙げられる。特定の特性はHLAと複合体を形成する能力であり、適当な場合、免疫応答が導かれる。この免疫応答は細胞障害性またはヘルパーT細胞の刺激に基づきうる。本発明の腫瘍関連抗原の部分または断片は好ましくは腫瘍関連抗原の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の連続するアミノ酸の配列を含む。
【0102】
腫瘍関連抗原をコードする核酸の部分または断片は本発明によると上記のように少なくとも腫瘍関連抗原および/または該腫瘍関連抗原の部分または断片をコードする核酸の部分に関する。
【0103】
腫瘍関連抗原をコードする遺伝子の単離と同定はまた、1または複数の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる疾患の診断を可能とする。これら方法は、腫瘍関連抗原をコードする1または複数の核酸を判定すること、および/またはコードされる腫瘍関連抗原および/またはそれに由来するペプチドを判定することを含む。核酸は常套方法によって判定でき、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応または標識化プローブによるハイブリダイゼーションを含む。腫瘍関連抗原またはそれに由来するペプチドは、抗原および/またはペプチドの認識について患者の抗血清をスクリーニングすることによって判定できる。それはまた、対応する腫瘍関連抗原に対する特異性について患者のT細胞をスクリーニングすることによっても判定できる。
【0104】
本発明はまた本明細書に記載する腫瘍関連抗原に結合するタンパク質の単離も可能にし、これには抗体および該腫瘍関連抗原の細胞結合パートナーが含まれる。
【0105】
本発明によると、特定の態様は腫瘍関連抗原由来の「ドミナントネガティブ」ポリペプチドを提供する。ドミナントネガティブポリペプチドは不活性タンパク質バリアントであり、細胞機構と相互作用することにより、その細胞機構との相互作用から活性のタンパク質ととってかわるか、あるいは活性のタンパク質と競合するものであり、それによって該活性のタンパク質の効果を低減させる。例えば、リガンドに結合するが、リガンドへの結合に応答してシグナルを生じないドミナントネガティブ受容体は該リガンドの生理効果を低減させうる。同様に、通常標的タンパク質と相互作用するが該標的タンパク質をリン酸化しないドミナントネガティブな触媒的に不活性なキナーゼは、細胞シグナルの応答としての該標的タンパク質のリン酸化を低減しうる。同様に、遺伝子の制御領域におけるプロモーター部位に結合するが該遺伝子の転写を上昇させないドミナントネガティブな転写因子は、転写を上昇させることなくプロモーター結合部位を占有することによって通常の転写因子の効果を低減しうる。
【0106】
細胞におけるドミナントネガティブなポリペプチドの発現の結果、活性なタンパク質の機能が低下する。当業者であればタンパク質のドミナントネガティブバリアントを、例えば、常套の突然変異誘発方法そしてバリアントポリペプチドのドミナントネガティブ効果の評価によって調製することができるであろう。
【0107】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に結合するポリペプチド等の物質も含む。かかる結合性物質は、例えば、腫瘍関連抗原および腫瘍関連抗原とその結合パートナーの複合体の検出のためのスクリーニングアッセイにおいて、および該腫瘍関連抗原ならびにその結合パートナーとの複合体の精製において利用することが出来る。かかる物質は例えばかかる抗原への結合によって、腫瘍関連抗原の活性の阻害にも用いることが出来る。
【0108】
本発明はそれゆえ腫瘍関連抗原に選択的に結合することが出来る結合性物質、例えば、抗体または抗体断片を含む。抗体はポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、これらは常套方法より産生される。
【0109】
かかる抗体はネイティブなおよび/または変性状態におけるタンパク質を認識することが出来る(Anderson et al.、J. Immunol.143: 1899−1904、1989; Gardsvoll、J. Immunol. Methods 234: 107−116、2000; Kayyem et al.、Eur. J. Biochem. 208: 1−8、1992; Spiller et al.、J. Immunol.Methods 224 : 51−60、1999)。
【0110】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は様々な標準的方法で調製することが出来る;例えば、“Monoclonal Antibody: A Practical Approach”,Philip Shepherd、Christopher Dean ISBN0−19−963722−9; “Antibofy: A Laboratory Manual” , Ed Harlow、David Lane、ISBN: 0879693142および“Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO” , Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN 0879695447を参照されたい。したがってネイティブな形態において複雑な膜タンパク質を認識するアフィン(affine)および特異的抗体を作成することも可能である(Azorsa et al.、J. Immunol. Methods 229: 35−48、1999;Anderson et al.、J. Immunol.143: 1899−1904、1989; Gardsvoll、J. Immunol. Methods 234: 107−116、2000)。これは特に治療的に用いられるだけでなく多くの診断用途を有する抗体の調製に関する。これに関して、全タンパク質、細胞外部分配列、また生理的に折りたたまれた形態にて標的分子を発現する細胞によって免疫することが可能である。
【0111】
モノクローナル抗体は古典的にはハイブリドーマ技術を用いて調製される(技術的詳細については以下を参照されたい: “Monoclonal Antibody: A Practical Approach”, Philip Shepherd、Christopher Dean ISBN0−19−963722−9; “Antibody: A Laboratory Manual” ,Ed Harlow、David Lane ISBN: 0879693142; “Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO”, Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN: 0879695447)。
【0112】
抗体分子の小さい部分、即ち、抗原結合部位だけが、抗体のそのエピトープへの結合に関与していることが知られている(以下を参考:Clark、W.R.(1986)、The Experimental Foundations of Modern Immunology、Wiley & Sons、Inc.、New York; Roitt、I.(1991)、Essential Immunology、7thEdition、Blackwell Scientific Publications、Oxford)。pFc’およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与していない。F(ab’)2断片と称されるpFc’領域が酵素的に除かれた抗体またはpFc’領域を含まないように産生された抗体は、完全な抗体の両方の抗原結合部位を担持する。同様に、Fab断片と称されるFc領域が酵素的に除かれた抗体またはFc領域を含まないように産生された抗体は、インタクトな抗体分子の一方の抗原結合部位を担持する。さらに、Fab断片は共有結合した抗体の軽鎖と該抗体のFdと称される重鎖の部分からなる。Fd断片は主な抗体特異性の決定部分であり(一つのFd断片は、抗体の特異性を変化させることなく10までの異なる軽鎖と結合できる)、Fd断片は単離されても、エピトープへの結合能を保持する。
【0113】
抗体の抗原結合部分のなかに抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)と抗原結合部位の三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)が位置する。IgG免疫グロブリンの重鎖のFd断片と軽鎖の両方は4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含み、これは3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分断されている。CDRおよび、特に、CDR3領域そして、さらに重鎖のCDR3領域が抗体特異性に非常に重要である。
【0114】
哺乳類抗体の非−CDR領域は、元の抗体のエピトープに対する特異性を維持したまま同じまたは異なる特異性の抗体の同様の領域によって置換され得ることが知られている。これによって「ヒト化」抗体の開発が可能となり、ここで非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc’領域に共有結合して機能性の抗体が作られる。
【0115】
これはいわゆる「SLAM」技術に用いることが出来、ここで全血からB細胞が単離され、細胞が単クローン化される。次いで、単一のB細胞の上清がその抗体特異性に関して分析される。ハイブリドーマ技術と異なり、抗体遺伝子の可変領域が単細胞PCRを用いて増幅され、好適なベクターにクローニングされる。このようにして、モノクローナル抗体の供給が加速されている(de Wildt et al.、J.Immunol. Methods 207: 61−67、1997)。
【0116】
別の例として、WO92/04381はヒト化マウスRSV抗体の産生と使用を記載しており、ここで少なくともマウスFR領域の一部がヒト起源のFR領域と置換された。この種の抗体、例えば、抗原結合能を有するインタクトな抗体の断片は「キメラ」抗体と称される。
【0117】
本発明はまた、抗体のF(ab’)2、Fab、Fv、およびFd断片ならびにキメラ抗体、ここで、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列に置換されている、キメラF(ab’)2−断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、キメラFab−断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖−CDR3領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、そしてキメラFd−断片抗体、ここでFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同のヒトまたは非ヒト配列で置換されている、を提供する。本発明はまた「一本鎖」抗体も含む。
【0118】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に特異的に結合するポリペプチドも含む。この種のポリペプチド結合性物質は、例えば、単に溶液中に固定化形態で調製されているかあるいはファージディスプレーライブラリーとして調製されるディジェネレートペプチドライブラリーにより提供され得る。1または複数のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリーを調製することも同様に可能である。ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリーも調製可能である。
【0119】
ファージディスプレーは本発明の結合性ペプチドの同定に特に有効である。これについえ、例えば、4から約80アミノ酸残基長のインサートを表す(例えば、M13、fdまたはラムダファージを使用して)ファージライブラリーを調製する。ファージを次いで腫瘍関連抗原に結合するインサートを担持するかについて選抜する。この工程は2サイクル以上繰り返してもよく、腫瘍関連抗原へ結合するファージを再選択する。繰り返すことによって、特定の配列を有するファージが濃縮される。DNA配列の分析を行って発現するポリペプチドの配列を同定してもよい。腫瘍関連抗原に結合する配列の最も小さい直線状の部分を決定するとよい。酵母の「ツーハイブリッドシステム」を用いて腫瘍関連抗原に結合するポリペプチドを同定してもよい。本発明による腫瘍関連抗原またはその断片はファージディスプレーライブラリーを含むペプチドライブラリーのスクリーニングに用いて、腫瘍関連抗原のペプチド結合性パートナーの同定および選択をすることができる。かかる分子は、腫瘍関連抗原の機能の妨害およびその他の当業者に知られた目的のために、例えば、スクリーニングアッセイ、精製プロトコールに用いることが出来る。
【0120】
上記の抗体およびその他の結合性分子を、例えば、腫瘍関連抗原を発現する組織の同定に用いることが出来る。抗体は腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を示すために特定の診断物質と結合させてもよい。これらは治療上有用な物質と結合させてもよい。診断物質としては、これらに限定されないが以下が含まれる:硫酸バリウム、イオセタミン酸(iocetamic acid)、イオパノ酸、イポダートカルシウム、ナトリウムジアトリゾエート、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、チロパノエートナトリウムおよび放射性診断薬、例えば、陽電子放射体、例えば、フッ素−18および炭素−11、ガンマ放出体、例えば、ヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131およびインジウム−111、核磁気共鳴のための核種、例えば、フッ素およびガドリニウム。本発明によると、「治療上有用な物質」との語は所望により1または複数の腫瘍関連抗原を発現する細胞に選択的に導かれるあらゆる治療用分子をいい、例えば、抗癌薬、放射性ヨウ素標識化合物、毒素、細胞増殖抑制剤または細胞溶解剤などが挙げられる。抗癌薬としては、例えば、以下が含まれる:アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビジン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン−α、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、プロカルバジンHCl、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチン。その他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman、“The PharmacologicalBasis of Therapeutics”、8th Edition、1990、McGraw−Hill、Inc.、特に Chapter 52 (Antineoplastic Drugs (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner))に記載されている。毒素はタンパク質、例えば、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素またはシュードモナス外毒素であってもよい。毒素残基は、高エネルギー放射性核種、例えば、コバルト−60であってもよい。
【0121】
本発明によると「患者」の語は、ヒト、非ヒト霊長類またはその他の動物、特に哺乳類、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類、例えば、マウスおよびラットをいう。特に好ましい態様において、患者はヒトである。
【0122】
本発明によると、「疾患」の語は、腫瘍関連抗原が発現しているか異常に発現しているあらゆる病的状態をいう。「異常な発現」とは本発明によると、発現が健康な個体における状態と比べて変化、好ましくは上昇していることをいう。発現の上昇は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の上昇をいう。一つの態様において、腫瘍関連抗原は疾患個体の組織にのみ発現しており、健康な個体における発現は抑制されている。かかる疾患の一例は癌であり、ここで「癌」の語は本発明によると、白血病、精上皮腫、メラノーマ、奇形腫、神経膠腫、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、腸癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、胃腸癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。
【0123】
本発明によると、生物学的サンプルは組織サンプルおよび/または細胞サンプルであってよく、本明細書に記載する様々な方法における使用のため、以下のような常套手段によって得られるものであってよい:組織診、例えば、パンチ生検、および血液、気管支吸引液、痰、尿、便またはその他の体液の採取。
【0124】
本発明によると、「免疫反応性細胞」の語は、好適な刺激によって免疫細胞(例えば、B細胞、ヘルパーT細胞、または細胞溶解性T細胞)へと成熟しうる細胞を意味する。免疫反応性細胞は、CD34+造血幹細胞、未熟および成熟T細胞ならびに未熟および成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性またはヘルパーT細胞の産生が望ましい場合は、免疫反応性細胞を細胞溶解性T細胞およびヘルパーT細胞の産生、分化および/または選択に好ましい条件下で腫瘍関連抗原を発現する細胞と接触させる。抗原に曝された際のT細胞前駆体の細胞溶解性T細胞の分化は、免疫系のクローン選択と類似である。
【0125】
いくつかの治療方法は患者の免疫系の反応に基づき、その結果、抗原提示細胞、例えば1または複数の腫瘍関連抗原を提示する癌細胞の溶解が導かれる。これに関して、例えば、腫瘍関連抗原とMHC分子との複合体に特異的な自己細胞障害性Tリンパ球が細胞異常を有する患者に投与される。かかる細胞障害性Tリンパ球のインビトロでの産生は知られている。T細胞の分化方法の例は、WO−A−9633265に記載されている。一般に、細胞、例えば血液細胞を含むサンプルを患者から採取し、細胞を、複合体を提示し、細胞障害性Tリンパ球(例えば、樹状細胞)の増殖を引き起こしうる細胞と接触させる。標的細胞はトランスフェクトされた細胞、例えばCOS細胞とすればよい。かかるトランスフェクトされた細胞はその表面に所望の複合体を提示し、細胞障害性Tリンパ球と接触すると、細胞障害性Tリンパ球の増殖を刺激する。クローン拡張された自己細胞障害性Tリンパ球は次いで患者に投与される。
【0126】
抗原特異的細胞障害性Tリンパ球の選択の別の方法において、MHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光発生テトラマーが、細胞障害性Tリンパ球の特異的クローンの検出に用いられる(Altman et al.、Science 274:94−96、1996; Dunbar et al.、Curr. Biol.8:413−416、1998)。可溶性MHCクラスI分子はβ2ミクログロブリンおよび該クラスI分子に結合するペプチド抗原の存在下でインビトロで折りたたまれる。MHC/ペプチド複合体は精製され、次いでビオチン標識される。テトラマーがビオチン化ペプチド−MHC複合体と標識化アビジン(例えば、フィコエリトリン)の混合によりモル比4:1にて形成される。テトラマーは次いで細胞障害性Tリンパ球、例えば末梢血またはリンパ節と接触される。テトラマーはペプチド抗原/MHCクラスI複合体を認識する細胞障害性Tリンパ球に結合する。テトラマーに結合した細胞は蛍光制御細胞ソーティングによってソートされ、反応性細胞障害性Tリンパ球が単離される。単離された細胞障害性Tリンパ球はインビトロで増殖させればよい。
【0127】
養子免疫伝達と称される治療方法において(Greenberg、J. Immunol. 136(5):1917、1986; Riddel et al.、Science 257:238、1992; Lynch et al.、Eur. J. Immunol. 21:1403−1410、1991; Kast et al.、Cell59:603−614、1989)、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)は治療すべき患者の細胞障害性Tリンパ球と混合され、その結果、特異的細胞障害性Tリンパ球が増殖する。増殖した細胞障害性Tリンパ球は特異的複合体を提示する特定の異常細胞によって特徴づけられる細胞異常を有する患者に投与される。細胞障害性Tリンパ球は次いで異常細胞を溶解し、それによって所望の治療効果が達成される。
【0128】
しばしば患者のT細胞レパートリーのなかで、この種の特異的複合体に低親和性を有するT細胞のみが増殖できる。というのは、高親和性のものは寛容の発生のために失われてしまうためである。ここで取って代わるのはT細胞受容体自体の移入であろう。このためにも、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)が健康な個体またはその他の種(例えば、マウス)の細胞障害性Tリンパ球と混合される。この結果、Tリンパ球が特異的複合体と以前に接触していないドナー生物由来の場合、高親和性の特異的細胞障害性Tリンパ球の増殖が起こる。これら増殖した特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体がクローニングされる。高親和性T細胞受容体が他の種からクローニングされている場合、それらは様々な程度でヒト化すればよい。かかるT細胞受容体は次いで遺伝子移入、例えば、レトロウイルスベクターの使用によって所望により患者のT細胞に導入される。次いで養子移入をこれら遺伝的に変化したTリンパ球を用いて行う(Stanislawski et al.、Nat Immunol. 2:962−70、2001; Kessels et al.、Nat Immunol. 2:957−61、2001)。
【0129】
上記治療態様は、少なくともいくつかの患者の異常細胞が腫瘍関連抗原とHLA分子との複合体を提示するという事実から出発する。かかる細胞はそれ自体公知の方法によって同定できる。複合体を提示する細胞が同定されたら出来るだけ早く、それらを細胞障害性Tリンパ球を含む患者からのサンプルと混合する。細胞障害性Tリンパ球が複合体を提示する細胞を溶解すると、腫瘍関連抗原の存在が推定できる。
【0130】
養子免疫伝達は本発明によって適用できる唯一の治療形態ではない。細胞障害性Tリンパ球はそれ自体公知の方法でインビボでも作ることが出来る。一つの方法では複合体を発現する非増殖性細胞を用いる。ここで用いられる細胞は通常複合体を発現する細胞、例えば、照射された腫瘍細胞または複合体の提示に必要な一方または両方の遺伝子(即ち、抗原ペプチドとそれを提示するHLA分子)をトランスフェクトされた細胞であろう。様々な細胞型を利用できる。さらに、目的の遺伝子の一方または両方を担持するベクターを使用することも可能である。特に好ましくはウイルスまたは細菌ベクターである。例えば、腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸を、特定の組織または細胞型において該腫瘍関連抗原またはその断片の発現を制御するプロモーターおよびエンハンサー配列と機能的に連結させるとよい。核酸は発現ベクターに組み込んでもよい。発現ベクターは非修飾染色体外核酸、プラスミドまたはウイルスゲノムであり得、それに外来核酸を挿入すればよい。腫瘍関連抗原をコードする核酸はレトロウイルスゲノムに導入してもよく、それによって、核酸の標的組織または標的細胞のゲノムへの組込みが可能となる。かかる系において、微生物、例えば、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルスまたはアデノウイルスが目的の遺伝子を担持し、事実上、宿主細胞に「感染」する。別の好適な形態は組換えRNAの形態における腫瘍関連抗原の導入であり、これは例えば、リポソーム移入またはエレクトロポーレーションによって細胞に導入するとよい。その結果得られた細胞は目的の複合体を提示し、自己細胞障害性Tリンパ球に認識され、自己細胞障害性Tリンパ球が増殖する。
【0131】
抗原提示細胞へのインビボでの取り込みを可能とするための同様の効果は腫瘍関連抗原またはその断片とアジュバントとを混合することにより達成できる。腫瘍関連抗原またはその断片は、タンパク質、(例えば、ベクター内で)DNAまたはRNAとして表されうる。腫瘍関連抗原はプロセシングされてHLA分子に対するペプチドパートナーが生ずるが、その断片はさらなるプロセシングの必要なく提示されうる。後者は特に、それらがHLA分子に結合しうる場合である。完全な抗原がインビボで樹状細胞によってプロセシングされる投与形態が好ましい。というのはこれによって有効な免疫応答に必要とされるヘルパーT細胞応答も産生されうるからである(Ossendorpet al.、Immunol Lett. 74:75−9、2000;Ossendorp et al.、J. Exp. Med.187:693−702、1998)。一般に、例えば皮内注射によって患者に有効量の腫瘍関連抗原を投与することが可能である。しかし、注射はリンパ節内に行うことも可能である(Maloy et al.、ProcNatl Acad Sci USA 98:3299−303、2001)。それは樹状細胞への取り込みを促進する試薬と組み合わせて行うことも出来る。好ましい腫瘍関連抗原は、多くの癌患者の同種癌抗血清またはT細胞と反応するものを含む。しかし特に興味深いのは、自発的免疫応答が前から存在しないものに対するものである。明らかに、腫瘍を溶解しうるこれら免疫応答を誘導することが可能である(Keogh et al.、J. Immunol.167:787−96、2001; Appella etal.、Biomed Pept Proteins NucleicAcids 1:177−84、1995; Wentworth et al.、Mol Immunol. 32:603−12、1995)。
【0132】
本発明による医薬組成物はまた免疫化のためのワクチンとして使用することもできる。本発明によると、「免疫化」または「ワクチン接種」の語は、抗原に対する免疫応答の上昇または活性化を意味する。腫瘍関連抗原またはそれをコードする核酸の使用により癌に対する免疫効果を試験するために動物モデルを使用することができる。例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を導き、腫瘍関連抗原をコードする1または複数の核酸を投与すればよい。癌細胞に対する効果(例えば、腫瘍サイズの減少)は、核酸による免疫化の有効性のための尺度として測定すればよい。
【0133】
免疫化用組成物の一部として、1または複数の腫瘍関連抗原またはその刺激性の断片を1または複数のアジュバントとともに投与して免疫応答を誘導し、あるいは免疫応答を上昇させる。アジュバントは抗原に組み込まれるか、抗原と共に投与される物質であって、免疫応答を増強させるものである。アジュバントは、抗原蓄積(reservoir)の提供(細胞外またはマクロファージ中)、マクロファージの活性化および/または特定のリンパ球の刺激によって免疫応答を増強しうる。アジュバントは公知であり、これらに限定されないが以下を含む:一リン酸化脂質A(MPL、SmithKline Beecham)、サポニン、例えば、QS21(SmithKline Beecham)、DQS21 (SmithKlineBeecham; WO 96/33739)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1 (So et al.、Mol. Cell 7:178−186、1997)、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreig et al.、Nature 374:546−9、1995参照)および生分解性油、例えば、スクアレンおよび/またはトコフェロールから調製される様々な油中水乳剤。好ましくは、ペプチドはDQS21/MPLとの混合物として投与する。DQS21とMPLの比は典型的には約1:10〜10:1であり、好ましくは約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与用のワクチン製剤は典型的にはDQS21とMPLを約1μg〜約100μgの範囲で含む。
【0134】
患者の免疫応答を刺激するその他の物質を投与してもよい。例えば、リンパ球に対するその調節特性からサイトカインをワクチン接種に使用するのが可能である。かかるサイトカインには、例えばインターロイキン−12(IL−12)が含まれ、これは、ワクチンの保護作用を増強することが示されており(Science 268:1432−1434、1995参照)、またGM−CSFおよびIL−18も含まれる。
【0135】
免疫応答を増強し、それゆえワクチン接種に使用できる化合物が多数存在する。該化合物にはタンパク質または核酸の形態で提供される共刺激性分子が含まれる。かかる共刺激性分子の例はB7−1およびB7−2であり(それぞれCD80およびCD86)、樹状細胞(DC)上に発現されてT細胞上に発現するCD28分子と相互作用する。この相互作用は抗原/MHC/TCR−刺激(シグナル1)T細胞に対して共刺激(シグナル2)を提供し、それによって該T細胞の増殖およびエフェクター機能が増強される。B7はまたT細胞上のCTLA4(CD152)とも相互作用し、CTLA4およびB7リガンドについての研究により、B7−CTLA4相互作用は抗腫瘍免疫およびCTL増殖を増強しうることが示された(Zheng、P. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA95(11):6284−6289 (1998))。
【0136】
B7は典型的には腫瘍細胞では発現せず、したがってT細胞に対する有効な抗原提示細胞(APC)はない。B7発現の誘導は、腫瘍細胞がより有効に細胞障害性Tリンパ球の増殖とエフェクター機能を刺激するのを可能にする。B7/IL−6/IL−12の組み合わせによる共刺激により、T細胞集団におけるIFN−ガンマおよびTh1−サイトカインプロフィールの誘導が明らかとなり、その結果さらにT細胞活性が増強される(Gajewskiet al.、J. Immunol.154:5637−5648 (1995))。
【0137】
細胞障害性Tリンパ球の完全な活性化および完全なエフェクター機能には、該ヘルパーT細胞上のCD40リガンドと樹状細胞によって発現されるCD40分子との相互作用を介するヘルパーT細胞の関与が必要である(Ridge et al.、Nature 393:474(1998)、Bennett et al.、Nature 393:478 (1998)、Schonberger et al.、Nature 393:480 (1998))。この共刺激シグナルのメカニズムはおそらくB7産生の上昇と関係があり、該樹状細胞(抗原提示細胞)によるIL−6/IL−12産生を伴う。したがってCD40−CD40L相互作用はシグナル1(抗原/MHC−TCR)とシグナル2(B7−CD28)の相互作用を補充する。
【0138】
樹状細胞の刺激のための抗−CD40抗体の使用は、腫瘍抗原に対する応答を直接増強すると考えられ、これは通常炎症応答の範囲外であるか、あるいは非専門抗原提示細胞(腫瘍細胞)によって提示されるものである。かかる状況において、ヘルパーTおよびB7共刺激シグナルは提供されない。このメカニズムは、抗原でパルスされた樹状細胞に基づく治療に関係して利用されうる。
【0139】
本発明はまた、核酸、ポリペプチドまたはペプチドの投与を提供する。ポリペプチドおよびペプチドはそれ自体公知の方法で投与すればよい。一つの態様において、核酸はエキソビボ方法で投与され、即ち、患者から細胞を取り出して、該細胞の遺伝子操作により腫瘍関連抗原を取り込ませ、変化した細胞を患者に再導入する。これは一般に患者の細胞への遺伝子の機能的コピーのインビトロでの導入および遺伝的に変化した細胞の患者への再導入を含む。遺伝子の機能的コピーは調節要素の機能的制御下にあり、それによって遺伝子が遺伝的に改変された細胞で発現する。トランスフェクションおよび形質導入方法は当業者に知られている。本発明はまた、ベクター、例えば、ウイルスおよび標的制御リポソームを用いることによるインビボでの核酸の投与も提供する。
【0140】
好適な態様において、腫瘍関連抗原をコードする核酸の投与用のウイルスベクターは以下からなる群から選択される:アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスおよび弱毒ポックスウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様粒子。特に好ましいのはアデノウイルスおよびレトロウイルスである。レトロウイルスは典型的には複製欠損のものである(即ち、それらは感染性粒子を産生できない)。
【0141】
本発明によるとインビトロまたはインビボで細胞に核酸を導入するための様々な方法を利用できる。この種の方法には以下が含まれる:核酸CaPO4沈殿のトランスフェクション、DEAEによる核酸トランスフェクション、目的の核酸を担持する上記ウイルスによるトランスフェクションまたは感染、リポソーム媒介トランスフェクションなど。特定の態様において、特定の細胞に核酸を送達するのが好ましい。かかる態様において、細胞への核酸の投与に用いられる担体(例えば、レトロウイルスまたはリポソーム)は結合標的制御分子を有していてもよい。例えば、分子、例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質または標的細胞上の受容体のリガンドに特異的な抗体を核酸担体に組み込むか結合すればよい。好ましい抗体は腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームを介した核酸の投与が望ましい場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込んで、標的制御および/または取り込みを可能とすればよい。かかるタンパク質には、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはその断片、取り込まれるタンパク質に対する抗体、細胞内部位に案内するタンパク質等が含まれる。
【0142】
本発明の治療用組成物は医薬上許容される調製物中で投与すればよい。かかる調製物は通常、医薬上許容される濃度の塩、バッファー物質、保存料、担体、補助免疫増強物質、例えば、アジュバント、CpGおよびサイトカインならびに適切な場合、治療的に活性なその他の化合物を含む。
【0143】
本発明の治療的に活性な化合物はいずれの常套経路で投与してもよく、かかる経路には注射または注入によるものが含まれる。投与は例えば以下のように行えばよい:経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または経皮。好ましくは、抗体は肺噴霧剤により治療的に投与する。アンチセンス核酸は好ましくは、ゆっくりと静脈内から投与する。
【0144】
本発明の組成物は有効量にて投与される。「有効量」とは、単独でまたはさらなる用量とともに、所望の反応または所望の効果を達成する量をいう。1または複数の腫瘍関連抗原の発現によって特徴づけられる特定の疾患または特定の症状を治療する場合、所望の反応は疾患の経過の阻害である。これには疾患の進行の遅延が含まれ、特に、疾患の進行の妨害である。疾患または症状の治療における所望の反応は該疾患または症状の発症の遅延または発症の予防であってよい。
【0145】
本発明の組成物の有効量は治療すべき症状、疾患の重症度、患者の個々のパラメーター、例えば、年齢、生理状態、身長および体重、治療期間、併用療法の種類(存在する場合)、投与の特定の経路およびそういった因子に依存する。
【0146】
本発明の医薬組成物は好ましくは無菌であり、所望の反応または所望の効果を達成するために有効量の治療的に活性な物質を含む。
【0147】
本発明の組成物の投与用量は様々なパラメーター、例えば、投与タイプ、患者の症状、望ましい投与期間等に依存する。患者における反応が最初の用量で不十分な場合、より高い用量(あるいは別のより局所的な投与経路により達成される有効に高い用量)を用いればよい。
【0148】
一般に、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの用量の腫瘍関連抗原を製剤し、治療用または免疫応答の誘導または上昇のために投与する。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与が望ましい場合、1ng〜0.1mgの用量を製剤し、投与する。
【0149】
本発明の医薬組成物は、一般に医薬上許容される組成物中で医薬上許容される量を投与する。「医薬上許容される」の語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質をいう。この種の調製物は通常、塩、バッファー物質、保存料、担体および適当な場合はその他の治療的に活性な化合物を含む。医薬中に使用する場合、塩は医薬上許容されるものでなければならない。しかし、医薬上許容されない塩を用いて医薬上許容される塩を調製してもよく、これも本発明に含まれる。この種の薬理上および医薬上許容される塩としてはこれらに限定されないが、以下の酸から調製されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。医薬上許容される塩はアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製してもよい。
【0150】
本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体を含んでいてもよい。本発明によると、「医薬上許容される担体」の語は、1または複数のヒトへの投与に好適な適合性の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質をいう。「担体」の語は、適用を促進するためにその中に活性成分が混合される天然または合成の有機または無機成分をいう。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望の医薬効果を実質的に阻害する相互作用が起こらないようなものである。
【0151】
本発明の医薬組成物は好適なバッファー物質、例えば塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸を含んでいてもよい。
【0152】
医薬組成物は適当である場合、好適な保存料、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールを含んでいてもよい。
【0153】
医薬組成物は通常均一な剤形において提供され、それ自体公知の方法で調製できるものである。本発明の医薬組成物はカプセル、錠剤、トローチ剤、懸濁液、シロップ、エリキシルの形態または例えば乳濁液の形態であってよい。
【0154】
非経口投与に好適な組成物は通常、活性化合物の無菌の水性または非水性調製物を含み、それは好ましくはレシピエントの血液と等張である。許容される担体および溶媒の例は、リンゲル液および等張食塩水である。さらに、通常、無菌の不揮発性油が溶液または懸濁液の媒体として用いられる。
【0155】
本発明を以下の図面と実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは単に例示の目的であり、限定を意図するものではない。詳細な説明および実施例の記載により、本発明に含まれうるさらなる態様は当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、結腸癌組織診におけるGPR35 mRNA発現である。
【図2】図2は、正常および腫瘍組織におけるGUCY2C mRNA発現の定量的PCR分析である。
【図3】図3は、腫瘍特異的GUCY2Cスプライスバリアントの同定である。
【図4】図4は、正常肺および肺癌における選択的SCGB3A発現である。
【図5】図5は、胃、食道、胃癌および膵臓癌におけるクローディン18A2.1発現である。
【図6】図6は、腎臓および腎臓細胞癌におけるSLC13A1発現である。
【図7】図7は、結腸、結腸癌および胃癌におけるCLCA1発現である。
【図8】図8は、結腸および結腸癌におけるFLJ21477発現である。
【図9】図9は、結腸および結腸癌におけるFLJ20694発現である。
【図10】図10は、胃、肺および肺癌におけるvon Ebner発現である。
【図11】図11は、胸腺、肺および肺癌におけるPlunc発現である。
【図12】図12は、肺、肺癌および甲状腺におけるSLC26A9発現である。
【図13】図13は、胃、卵巣、肺および肺癌におけるTHC1005163発現である。
【図14】図14は、腎臓および腎臓細胞癌におけるLOC134288発現である。
【図15】図15は、腎臓および腎臓細胞癌におけるTHC943866発現である。
【図16】図16は、結腸および結腸癌におけるFLJ21458発現である。
【図17】図17は、GPR35の細胞内局在である。
【図18】図18は、GPR35の定量的発現である。
【図19】図19は、GUCY2Cの定量的発現である。
【図20】図20は、SCGB3A2の定量的発現である。
【図21】図21は、SCGB3A2−特異的抗体による免疫蛍光である。
【図22】図22は、クローディン18スプライスバリアントの模式図である。
【図23】図23は、クローディン−18、バリアントA1の定量的発現である。
【図24】図24は、クローディン18、バリアントA2の定量的発現である。
【図25】図25は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
【図26】図26は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
【図27】図27は、クローディン18のC−末端細胞外ドメインに対する抗体の使用である。
【図28】図28は、クローディン18A1−特異的抗体の使用である。
【図29】図29は、ウェスタンブロットにおけるクローディン18A2の検出である。
【図30】図30は、胃および胃腫瘍からのサンプルでのクローディン18A2ウェスタンブロッティングである。
【図31】図31は、肺腫瘍におけるクローディン18の発現である。
【図32】図32は、胃腫瘍組織におけるクローディン18A2−特異的抗体を用いるクローディン18の免疫組織化学分析である。
【図33】図33は、クローディン18−特異的ポリクローナル抗血清による胃−特異的Snu16細胞の間接的免疫蛍光である。
【図34】図34は、SLC13A1の定量的発現である。
【図35】図35は、SLC13A1の細胞内局在である。
【図36】図36は、CLCA1の定量的発現である。
【図37】図37は、FLJ21477の定量的発現である。
【図38】図38は、FLJ20694の定量的発現である。
【図39】図39は、FLJ21458の定量的発現である。
【図40】図40は、FLJ21458−特異的抗体による免疫蛍光である。
【図41】図41は、配列である。
【0157】
図面の簡単な説明
図1は、結腸癌組織診におけるGPR35 mRNA発現である。
DNA−無含有RNAを用いたRT−PCR研究は、ほとんどの結腸癌組織診でのGPR35発現を示す。一方、正常組織においては検出可能な発現はない(1乳房、2−肺、3−リンパ節、4胸腺、5結腸、6−15結腸癌、16−ネガティブコントロール)。
【0158】
図2は、正常および腫瘍組織におけるGUCY2C mRNA発現の定量的PCR分析である。
GUCY2C−特異的プライマー(配列番号22−23)を用いたリアルタイムPCR研究は、正常回腸、結腸、およびすべての結腸癌組織診における選択的mRNA発現を示す。顕著な量のGUCY2C転写産物が肝臓における結腸癌転移にも検出された。
【0159】
図3は、腫瘍特異的GUCY2Cスプライスバリアントの同定である。
正常結腸組織および結腸癌からのPCR産物をクローニングし、両群からのクローンを制限分析(EcoR I)によって確認し、配列決定した。
【0160】
図4は、正常肺および肺癌における選択的SCGB3A発現である。
遺伝子特異的SCGB3A2プライマー(配列番号37、38)を用いたRT−PCR分析は、正常肺(レーン8、14−15)および肺癌組織診(レーン16−24)においてもっぱらのcDNA増幅を示す(1−肝臓−N、2PBMC−N、3リンパ節−N、4胃−N、5精巣−N、6乳房−N、7腎臓−N、8−肺−N、9−胸腺−N、10−卵巣−N、11副腎−N、12脾臓−N、14−15−肺−N、16−24−肺癌、25ネガティブコントロール)。
【0161】
図5は、胃、食道、胃癌および膵臓癌におけるクローディン18A2.1発現である。
クローディン18A2.1−特異的プライマー(配列番号39、40)を用いたRT−PCR分析により、本発明によると8/10の胃癌組織診および3/6の膵臓癌組織診における顕著なクローディン18A2.1発現が示された。顕著な発現は胃および正常食道組織においても検出された。これに対して、卵巣および卵巣癌においては発現は検出されなかった。
【0162】
図6は、腎臓および腎臓細胞癌におけるSLC13A1発現である。
SLC13A1−特異的プライマー(配列番号49、50)を用いたRT−PCR分析により、7/8の腎臓細胞癌サンプルにおける発現が示された。しかし、正常組織における転写産物はもっぱら腎臓において検出された(1−2−腎臓、3−10−腎臓細胞癌、11乳房、12肺、13肝臓、14結腸、15リンパ節、16脾臓、17食道、18胸腺、19甲状腺、20PBMC、21卵巣、22精巣)。
【0163】
図7は、結腸、結腸癌および胃癌におけるCLCA1発現である。
CLCA1−特異的プライマー(配列番号67、68)を用いたRT−PCR研究により結腸における選択的発現が確認され、調べた結腸癌(3/7)および胃癌サンプル(1/3)における高い発現が示された。その他の正常組織(NT)では発現が無いか、非常に弱いことが示された。
【0164】
図8は、結腸および結腸癌におけるFLJ21477発現である。
FLJ21477−特異的プライマー(配列番号69、70)によるRT−PCR研究により結腸における選択的発現、そしてさらに様々なレベルの調べた結腸癌サンプル(7/12)における発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0165】
図9は、結腸および結腸癌におけるFLJ20694発現である。
FLJ20694−特異的プライマー(配列番号71、72)を用いたRT−PCR研究により、結腸における選択的発現および様々なレベルの調べた結腸癌サンプル(5/9)における発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0166】
図10は、胃、肺および肺癌におけるvon Ebner発現である。
von Ebner−特異的プライマー(配列番号73、74)を用いたRT−PCR研究により、胃、肺および(5/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0167】
図11は、胸腺、肺および肺癌におけるPlunc発現である。
Plunc−特異的プライマー(配列番号75、76)を用いたRT−PCR研究により、胸腺、肺および(6/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0168】
図12は、肺、肺癌および甲状腺におけるSLC26A9発現である。
SLC26A9−特異的プライマー(配列番号77、78)を用いたRT−PCR研究により、肺およびすべての(13/13)調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された。その他の正常組織(NT)は甲状腺を除き、発現を示さなかった。
【0169】
図13は、胃、卵巣、肺および肺癌におけるTHC1005163発現である。
THC1005163−特異的プライマー(配列番号79)および非特異的オリゴdTタグプライマーを用いたRT−PCR研究により、胃、卵巣、肺および(5/9)の肺癌組織診における発現が示された。その他の正常組織(NT)は発現を示さなかった。
【0170】
図14は、腎臓および腎臓細胞癌におけるLOC134288発現である。
LOC134288−特異的プライマー(配列番号80、81)を用いたRT−PCR研究により、腎臓および(5/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された。
【0171】
図15は、腎臓および腎臓細胞癌におけるTHC943866発現である。
THC943866−特異的プライマー(配列番号82、83)を用いたRT−PCR研究により腎臓および(4/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された。
【0172】
図16は、結腸および結腸癌におけるFLJ21458発現である。
FLJ21458−特異的プライマー(配列番号86、87)を用いたRT−PCR研究により結腸および(7/10)の調べた結腸癌組織診における選択的発現が示された。(1−2−結腸、3−肝臓、4−PBMC、5−脾臓、6前立腺、7腎臓、8卵巣、9皮膚、10回腸、11肺、12精巣、13−22結腸癌、23−ネガティブコントロール)。
【0173】
図17は、GPR35の細胞内局在である。
GPR35−GFP融合タンパク質を発現するプラスミドのトランスフェクション後のGPR35の細胞内局在の検出のための免疫蛍光である。矢印は蛍光性GFPの膜結合蛍光を示す。
【0174】
図18は、GPR35の定量的発現である。
A. GPR35−特異的プライマー(配列番号88、89)を用いた定量的RT−PCRは、腸、結腸腫瘍サンプルおよび腸腫瘍からの転移における選択的発現を示す。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、胃、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、輸卵管、子宮内膜、小脳、脳。
B.結腸腫瘍およびその転移におけるGPR35の罹患率。GPR35はケースの90%以上で腫瘍および転移の両方に発現する。
【0175】
図19は、GUCY2Cの定量的発現である。
GUCY2C−特異的プライマー(配列番号98、99)による定量的RT−PCRは、正常結腸および胃組織における高い選択的発現(A)および結腸および胃腫瘍サンプルにおけるGUCY2C−特異的発現(B)を示す。GUCY2Cは11/12の結腸癌および7/10の胃癌において検出可能である。
【0176】
図20は、SCGB3A2の定量的発現である。
SCGB3A2−特異的プライマー(配列番号103、104)を用いた定量的RT−PCRは、肺サンプルおよび肺腫瘍サンプルにおける選択的発現を示す。19/20の肺腫瘍サンプルはSCGB3A2−陽性であり、SCGB3A2はサンプルの50%以上で少なくとも10倍過剰発現している。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、胃、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、輸卵管、子宮内膜、小脳、脳。
【0177】
図21は、SCGB3A2−特異的抗体による免疫蛍光である。
COS7細胞をSCGB3A2−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。
A.トランスフェクトした融合タンパク質のSCGB3A2−特異的ウサギ抗血清(配列番号105により免疫化)による検出。
B.GFP蛍光によるトランスフェクトした融合タンパク質の検出。
C.AおよびBからの2つの蛍光の重ね合わせ。黄色が2つの蛍光が重なり合った点でみられ、したがってSCGB3A2抗血清の特異性が示される。
【0178】
図22は、クローディン18スプライスバリアントの模式図である。
2つのクローディン18スプライスバリアントA1およびA2はN末端において異なり、異なる可能性のあるグリコシル化部位を示す。
【0179】
図23は、クローディン18、バリアントA1の定量的発現である。
クローディン−A1は多数の腫瘍組織において高度に活性化されている。特に強い発現が胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓癌および食道癌においてみられる。
【0180】
図24は、クローディン18、バリアントA2の定量的発現である。
バリアントA2は、バリアントA1と同様に、多くの腫瘍において活性化されている。
【0181】
図25は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
(上)クローディン18A2−陽性胃癌細胞(SNU−16)のペプチド(配列番号17)による免疫化によって産生された抗体での染色。膜染色は特に細胞/細胞相互作用領域において強く表れる。A免疫前、MeOH;B−免疫血清MeOH、5μg/ml;
(下)クローディン18A2−GFP−トランスフェクト293T細胞における共存分析による抗体の特異性を示す。Aクローディン18A2GFP;B抗−クローディン−A2;C重ね合わせ。
【0182】
図26は、クローディン18A2−特異的抗体(細胞外ドメイン)の使用である。
ペプチド(配列番号113、N末端に位置する細胞外ドメイン)による免疫化によって産生された抗体によるクローディン18A2−陽性胃癌細胞(SNU 16)の膜染色。
E−カドヘリンに対するモノクローナル抗体を対比染色法に用いた。
A抗体;B対比染色法;C重ね合わせ。
【0183】
図27は、クローディン18のC−末端細胞外ドメインに対する抗体の使用である。
(左、上および下)ペプチド(配列番号116、C末端に位置する細胞外ドメイン)による免疫化によって産生された抗体によるクローディン18A2−陽性胃癌細胞(SNU 16)の膜染色。E−カドヘリンに対するモノクローナル抗体を対比染色法に用いた(右、上、下)。
【0184】
図28は、クローディン18A1−特異的抗体の使用である。
(上)クローディン18A1−特異的ペプチド(配列番号115)による免疫化によって産生された抗体による胃癌細胞(SNU 16;クローディン18A2陽性)の弱い〜無い染色。
A−抗−E−カドヘリン;B抗−クローディン18A1;C重ね合わせ。
(下)クローディン18A1−GFP−トランスフェクト293T細胞における共存分析による抗体の特異性を示す。
A−GFP−クローディン18A1;B−抗−クローディン18A1;C−重ね合わせ。
【0185】
図29は、ウェスタンブロットにおけるクローディン18A2の検出である。
配列番号17のエピトープに対するクローディン18A2−特異的抗体を用いた様々な健康組織からの可溶化液を用いたウェスタンブロッティング。1胃;2精巣;3皮膚;4乳房;5肝臓;6結腸;7肺;8腎臓;9リンパ節。
【0186】
図30は、胃および胃腫瘍からのサンプルでのクローディン18A2ウェスタンブロッティングである。
胃および胃腫瘍からの可溶化液をブロットし、配列番号17を有するエピトープに対するクローディン18A2−特異的抗体を用いて試験した。胃腫瘍ではクローディン−18A2のグリコシル化形態が少なかった。胃可溶化液のPNGaseF処理により低−グリコシル化形態の形成が導かれる。
左:1−胃No#A;2−胃Tu#A;3胃No#B;4胃Tu#B
右:1−胃No#A;2−胃No#B;3−胃No#B+PNGaseF;4−胃Tu#C;5胃Tu#D;6胃Tu#D+PNGaseF
【0187】
図31は、肺腫瘍におけるクローディン18の発現である。
低−グリコシル化クローディン−18A2バリアントを図30にしたがって肺腫瘍において検出した。1胃No;2胃Tu;3 9−肺Tu
【0188】
図32は、胃腫瘍組織におけるクローディン18A2−特異的抗体を用いるクローディン18の免疫組織化学分析である。
【0189】
図33は、クローディン18−特異的ポリクローナル抗血清による胃−特異的Snu16細胞の間接的免疫蛍光である。
A.免疫化の前に作成された免疫前血清による染色;B.クローディン18−特異的血清による染色。
【0190】
図34は、SLC13A1の定量的発現である。
SLC13A1−特異的プライマー(配列番号121、122)を用いた定量的RT−PCRにより、正常腎臓組織における高い選択的発現(A)および腎臓細胞癌におけるSLC13A1−特異的発現が示される(B)。SLC13A1転写は5/8の腎臓細胞癌において検出可能である。
【0191】
図35は、SLC13A1の細胞内局在である。
SLC13A1−GFP融合タンパク質を提供するプラスミドでのトランスフェクション後のSLC13A1の細胞内局在を示す免疫蛍光。SLC13A1融合タンパク質の膜結合蛍光が明らかにみられる(トランスフェクト細胞のまわりの環として)。
【0192】
図36は、CLCA1の定量的発現である。
CLCA1−特異的プライマー(配列番号125、126)を用いた定量的RT−PCRにより、正常結腸組織および胃組織における高い選択的発現(A)および結腸および胃腫瘍サンプルにおけるCLCA1−特異的発現(B)が示される。CLCA1は6/12の結腸癌および7/10の胃癌において検出可能である。
【0193】
図37は、FLJ21477の定量的発現である。
FLJ21477−特異的プライマー(配列番号127、128)を用いた定量的RT−PCRにより、正常結腸および胃組織における高い選択的発現ならびに胸腺、食道および脳における弱い発現(A)そして結腸腫瘍サンプルにおけるFLJ21477−特異的発現(B)が示される。FLJ21477は11/12の結腸癌において検出可能である。
【0194】
図38は、FLJ20694の定量的発現である。
FLJ20694−特異的プライマー(配列番号129、130)を用いた定量的RT−PCRにより、正常結腸および胃組織における高い選択的発現(A)および結腸および胃腫瘍サンプルにおけるFLJ20694−特異的過剰発現(B)が示される。FLJ20694は、11/12の結腸癌および7/10の胃癌において検出可能である。
【0195】
図39は、FLJ21458の定量的発現である。
FLJ21458−特異的プライマー(配列番号133、134)を用いた定量的RT−PCRにより、精巣、胃および腸組織における選択的発現が示される。さらに、FLJ21458−特異的転写産物が20/20の結腸腫瘍および7/11の結腸転移において検出可能であった。以下の正常組織を分析した:肝臓、肺、リンパ節、脾臓、副腎、腎臓、食道、卵巣、精巣、胸腺、皮膚、乳房、膵臓、リンパ球、活性化リンパ球、前立腺、甲状腺、輸卵管、子宮内膜、小脳、脳。
【0196】
図40は、FLJ21458−特異的抗体による免疫蛍光である。
(上)293細胞をFLJ21458−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。
A:トランスフェクトした融合タンパク質のFLJ21458−特異的ウサギ抗血清(配列番号136での免疫化)による検出。
B:トランスフェクトした融合タンパク質のGFP蛍光による検出。
C:AとBからの2つの蛍光の重ね合わせ。
黄色が2つの蛍光が重なる点において生じ、したがってFLJ21458抗血清の特異性が示される。
(下)内因的にFLJ21458を合成するSnu16細胞の分析。
A:FLJ21458−特異的ウサギ抗血清(配列番号136による免疫化)を用いたタンパク質検出。
B:膜タンパク質E−カドヘリンの検出。
C:AとBからの2つの蛍光の重ね合わせ。
黄色が2つの蛍光が重なる点において生じ、FLJ21458の膜局在を示す。
【0197】
図41は、配列である。
参照される配列がここで作られ、示される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0198】
材料および方法「インシリコ」、「電子工学」および「ネットワーク上クローニング」の語は、データベースに基づく方法の使用を意味し、これはまた研究室での実験方法をシュミレーションするのにも用いられる。
【0199】
特に断りのない限り、その他のすべての用語および表現は当業者に理解されるように用いられる。言及する技術および方法はそれ自体公知の方法で行い、例えば、以下に記載されている。Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2nd Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、製造業者の指示にしたがって行われる。
【0200】
新規な腫瘍関連遺伝子の決定のためのデータマイニングに基づく戦略2つのインシリコ戦略、即ち、GenBankキーワード検索およびcDNAxProfilerを組み合わせた。NCBI ENTREZ Search and Retrieval System (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez)を用いて、GenBank検索を行い、特異的組織において特異的に発現するものとして解釈される候補遺伝子を検索した(Wheeler et al.、Nucleic AcidsResearch 28:10−14、2000)。
【0201】
キーワード、例えば「結腸−特異的遺伝子」、「胃−特異的遺伝子」または「腎臓−特異的遺伝子」、について検索を行い、候補遺伝子(GOI、目的の遺伝子)をデータベースから抽出した。生物について「ヒト」、分子タイプについて「mRNA」と制限することによってこれらデータベースのすべての情報の一部に制限して検索した。見いだされたGOIのリストを同じ配列についての違う名前を決定して検証および修正し、かかる重複を排除した。
【0202】
キーワード検索によって得られたすべての候補遺伝子を次にその組織分布に関して「電子工学ノザン(eNorthen)」方法によって調べた。eNorthernは、GOI配列とEST(expressed sequence tag)データベース(Adams et al.、Science 252:1651、1991)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)とのアラインメントに基づく。挿入されたGOIに相同的であることが見いだされた各ESTの組織起源を決定することが出来、そのようにしてすべてのESTの和から、GOIの組織分布の予備的評価が得られる。非器官特異的正常組織からのESTと相同性の無いGOIについてのみさらなる研究を行った。この評価では、共有財産が間違って解釈されたcDNAライブラリーを含むということも考慮した(Scheurle et al.、Cancer Res. 60:4037−4043、2000)(www.fau.edu/cmbb/publications/cancergenes6.htm)。
【0203】
使用した第二のデータマイニング方法はNCBI Cancer GenomeAnatomy ProjectのcDNA xProfilerであった(http://cgap.nci.nih.gov/Tissues/xProfiler)(Hillier et al.、Genome Research 6:807−828、1996; Pennisi、Science276:1023−1024、1997)。これによってデータベースに寄託されたトランスクリプトームのプールを論理演算子によって互いに関連づけることが可能となる。本発明者らは混合ライブラリーを除き、例えば結腸から調製されたすべての発現ライブラリーが割り当てられたプールAを規定した。結腸以外の正常組織から調製されたすべてのcDNAライブラリーをプールBに割り当てた。一般に、すべてのcDNAライブラリーを基礎となる調製方法とは独立に使用し、ただしサイズ>1000のものだけを許容した。プールBをデジタル処理でBUT NOT演算子によってプールAから差し引いた。このようにして見いだされたGOIのセットをまたeNorthern研究に供し、文献調査によって確認した。
【0204】
この組み合わせデータマイニングは全部で公共財産における約13000の全長遺伝子を含み、器官−特異的発現を示す可能性のある遺伝子を予測した。
【0205】
すべてのその他の遺伝子はまず特異的RT−PCRによって正常組織において評価した。非器官特異的正常組織において発現していることが判明したすべてのGOIは偽陽性と見なす必要があり、さらなる研究から除外した。残りのGOIを様々な腫瘍組織の大きなパネルにおいて研究した。以下に示す抗原は、腫瘍細胞において活性化されていることが判明した。
【0206】
RNA抽出、ポリ−d(T)プライムドcDNAの調製および常套のRT−PCR分析トータルRNAをカオトロピック剤としてグアニジウムイソチオシアナートを用いることによりネイティブな組織材料から抽出した(Chomczynski & Sacchi、Anal. Biochem. 162:156−9、1987)。酸性フェノールによる抽出およびイソプロパノール沈降の後、該RNAをDEPC−処理水に溶解した。
【0207】
2−4μgのトータルRNAからの第一鎖cDNA合成をSuperscript II(Invitrogen)によって製造業者の指示に従って20μlの反応混合物中において行った。用いたプライマーはdT(18)オリゴヌクレオチドであった。cDNAの完全性と質を30サイクルのPCRにおいてp53の増幅によって確認した(センスCGTGAGCGCTTCGAGATGTTCCG、アンチセンスCCTAACCAGCTGCCCAACTGTAG、ハイブリダイゼーション温度67℃)。
【0208】
第一鎖cDNAの記録を多数の正常組織および腫瘍集団から調製した。発現研究のために、0.5μlのこれらcDNAを30μlの反応混合物において増幅した。これにはGOI−特異的プライマー(以下参照)および1UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いた。各反応混合物は、0.3mMdNTP、0.3μM各プライマーおよび3μl10×反応バッファーを含むものであった。
【0209】
プライマーは2つの異なるエキソン中に位置するように選択し、偽陽性結果を導く汚染ゲノムDNAによる妨害の排除を、非逆転写DNAをテンプレートとして試験することによって確認した。HotStarTaq DNAポリメラーゼ活性化のための95℃、15分の後、35サイクルのPCRを行った(1分94℃、1分、特定のハイブリダイゼーション温度、2分72℃および最終伸長72℃6分)。
【0210】
20μlのこの反応を分画し、臭化エチジウム染色アガロースゲルで分析した。
【0211】
示すハイブリダイゼーション温度における対応する抗原の発現分析に以下のプライマーを用いた。
【0212】
GPR35(65℃)
センス:5’−AGGTACATGAGCATCAGCCTG−3’
アンチセンス:5’−GCAGCAGTTGGCATCTGAGAG−3’
GUCY2C(62℃)
センス:5’−GCAATAGACATTGCCAAGATG−3’
アンチセンス:5’−AACGCTGTTGATTCTCCACAG−3’
SCGB3A2(66℃)
センス:5’−CAGCCTTTGTAGTTACTCTGC−3’
アンチセンス:5’−TGTCACACCAAGTGTGATAGC−3’
クローディン18A2(68℃)
センス1:5’−GGTTCGTGGTTTCACTGATTGGGATTGC−3’
アンチセンス1:5’−CGGCTTTGTAGTTGGTTTCTTCTGGTG−3’
センス2:5’−TGTTTTCAACTACCAGGGGC−3’
アンチセンス2:5’−TGTTGGCTTTGGCAGAGTCC−3’
クローディン18A1(64℃)
センス:5’−GAGGCAGAGTTCAGGCTTCACCGA−3’
アンチセンス:5’−TGTTGGCTTTGGCAGAGTCC−3’
SLC13A1(64℃)
センス:5’−CAGATGGTTGTGAGGAGTCTG−3’
アンチセンス:5’−CCAGCTTTAACCATGTCAATG−3’
CLCA1(62℃)
センス:5’−ACACGAATGGTAGATACAGTG−3’
アンチセンス:5’−ATACTTGTGAGCTGTTCCATG−3’
FLJ21477(68℃)
センス:5’−ACTGTTACCTTGCATGGACTG−3’
アンチセンス:5’−CAATGAGAACACATGGACATG−3’
FLJ20694(64℃)
センス:5’−CCATGAAAGCTCCATGTCTA−3’
アンチセンス:5’−AGAGATGGCACATATTCTGTC
Ebner(70℃)
センス:5’−ATCGGCTGAAGTCAAGCATCG−3’
アンチセンス:5’−TGGTCAGTGAGGACTCAGCTG−3’
Plunc(55℃)
センス:5’−TTTCTCTGCTTGATGCACTTG−3’
アンチセンス:5’−GTGAGCACTGGGAAGCAGCTC−3’
SLC26A9(67℃)
センス:5’−GGCAAATGCTAGAGACGTGA−3’
アンチセンス5’−AGGTGTCCTTCAGCTGCCAAG−3’
THC1005163(60℃)
センス:5’−GTTAAGTGCTCTCTGGATTTG−3’
LOC134288(64℃)
センス:5’−ATCCTGATTGCTGTGTGCAAG−3’
アンチセンス:5’−CTCTTCTAGCTGGTCAACATC−3’
THC943866(59℃)
センス:5’−CCAGCAACAACTTACGTGGTC−3’
アンチセンス:5’−CCTTTATTCACCCAATCACTC−3’
FLJ21458(62℃)
センス:5’−ATTCATGGTTCCAGCAGGGAC−3’
アンチセンス:5’−GGGAGACAAAGTCACGTACTC−3’。
【0213】
ランダムヘキサマー−プライム化cDNAの調製および定量的リアルタイムPCRいくつかの遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって定量した。PCR産物をインターカレートレポーター色素としてSYBR Greenを用いて検出した。SYBR Greenのレポーター蛍光は溶液中で抑制されており、色素は二本鎖DNA断片と結合した後にのみ活性になる。各PCRサイクルの後のGOI−特異的プライマーを用いた特異的増幅の結果としてのSYBR Green蛍光の上昇を定量に用いる。標的遺伝子の発現を絶対的にあるいは調べる組織において一定に発現しているコントロール遺伝子の発現と比べて相対的に定量する。発現はΔΔ−Ct法(PE Biosystems、USA)を用いていわゆるハウスキーピング遺伝子としての18s RNAに対するサンプルの標準化の後に測定した。反応は二連で行い、三連で測定した。QuantiTect SYBRGreen PCRキット(Qiagen、Hilden)を製造業者の指示に従って用いた。cDNAを高容量cDNA Archive Kit(PE Biosystems、USA)を製造業者の指示に従って使用して、ヘキサマープライマーを用いて合成した。希釈したcDNAの各5μl部分を総容量25μlのPCRに用いた:センスプライマー300nM、アンチセンスプライマー300nM;最初の変性95℃、15分;95℃、30秒;30秒のアニーリング;72℃、30秒;40サイクル。使用したプライマーの配列はそれぞれの実施例に示す。
【0214】
クローニングおよび配列分析
全長および遺伝子断片のクローニングは常套方法によって行った。配列を確かめるため、対応する抗原をプルーフリーディングポリメラーゼpfu(Stratagene)を用いて増幅した。PCRの完了後、アデノシンを、HotStarTaq DNAポリメラーゼによってアンプリコンの末端に連結し、製造業者の指示に従って断片をTOPO−TAベクターにクローニングした。配列決定は業者サービスによって行った。配列を常套の予測プログラムとアルゴリズムを用いて分析した。
【0215】
ウェスタンブロッティング
標的タンパク質を含む可能性のある細胞培養物(標的遺伝子の内因性発現または標的タンパク質をコードする発現ベクターのトランスフェクション後の標的タンパク質の合成)または組織サンプルからの細胞を1%SDS溶液で溶解する。SDSは可溶化液に存在するタンパク質を変性させる。実験混合物の可溶化液を8−15%変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDS含有)での電気泳動によって予想タンパク質サイズに応じてサイズによって分画した(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)。タンパク質を半乾燥電気ブロッティング法(Biorad)によってニトロセルロースメンブレン(Schleicher & Schull)にトランスファーし、メンブレン上で所望のタンパク質が検出される。この目的のため、メンブレンをまず(例えば、粉乳により)ブロッキングし、次いで1:20−1:200(抗体の特異性による)の希釈度の特異的抗体とともに60分インキュベートする。洗浄工程の後、メンブレンをマーカー(例えば、酵素、例えば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)と結合させた一次抗体を認識する二次抗体とインキュベートする。さらなる洗浄工程の後、標的タンパク質を酵素反応(例えば、ECL、Amersham Bioscience)によるメンブレン上の発色または化学発光反応によって可視化する。結果を適当なカメラで撮影することにより記録する。
【0216】
タンパク質修飾の分析は通常ウェスタンブロッティングによって行う。通常数kDaのサイズを有するグリコシル化により、標的タンパク質の総分子量が大きくなり、これはSDS−PAGEで分画できる。特異的O−およびN−グリコシド結合を検出するために、組織または細胞からのタンパク質可溶化液をインキュベートした後、OまたはN−グリコシダーゼ(製造業者の指示に従って、例えば、PNgase、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、RocheDiagnostics)を用いてSDSによって変性させる。この後ウェスタンブロッティングを上記のように行う。したがって、グリコシダーゼとのインキュベーションの後、標的タンパク質のサイズが減少していれば、特異的グリコシル化を検出することが出来、そしてこのようにして、修飾の腫瘍特異性を分析できる。グリコシル化アミノ酸の正確な位置はアルゴリズムおよび予測プログラムを用いて予測できる。
【0217】
免疫蛍光
標的タンパク質を内因的に合成するか(RT−PCRにおけるRNAの検出またはウェスタンブロッティングによるタンパク質の検出)、プラスミドDNAをIFの前にトランスフェクトされた樹立細胞株の細胞を用いる。様々な方法(例えば、エレクトロポーレーション、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降)がDNAによる細胞株のトランスフェクトのために十分に確立されている(例えば、Lemoine et al. Methods Mol. Biol. 1997; 75: 441−7)。トランスフェクトされるプラスミドは免疫蛍光において非修飾タンパク質をコードするものでもよいし、様々なアミノ酸マーカーを標的タンパク質に結合させるものでもよい。もっとも重要なマーカーは、例えば、様々な蛍光性形態における蛍光性の「緑色蛍光性タンパク質」(GFP)および、それに対する高親和性および特異的抗体が入手可能な6−12アミノ酸の短いペプチド配列である。標的タンパク質を合成する細胞をパラホルムアルデヒド、サポニンまたはメタノールで固定する。所望の場合細胞を界面活性剤(例えば、0.2%Triton X 100)とのインキュベーションにより透過性にしてもよい。固定/透過性化の後、細胞を標的タンパク質に対する一次抗体または結合マーカーに対する一次抗体とともにインキュベートする。洗浄工程の後、混合物を蛍光性マーカー(例えば、フルオレセイン、Texas Red、Dako)と結合させた一次抗体と結合する二次抗体とインキュベートする。このようにして標識した細胞をグリセロールの層で被覆し、製造業者の指示に従って蛍光顕微鏡によって分析する。この場合特異的蛍光発光が用いる物質に応じた特異的励起によって達成される。分析は通常、標的タンパク質の信頼できる局在化を可能とし、抗体の質および標的タンパク質は標的タンパク質に加えてその局在が以前に文献に記載されている結合アミノ酸マーカーまたはその他のマーカータンパク質を染色する二重染色において確認される。GFPおよびその誘導体は直接励起でき、それ自体蛍光を発生する特別の場合を表し、したがって検出のための抗体は必要ではない。
【0218】
免疫組織化学
IHCは特に以下に役立つ:
(1)腫瘍および正常組織における標的タンパク質の量の評価を可能とする、
(2)腫瘍および健康組織におけるどれほど多くの細胞が標的遺伝子を合成しているかを分析する、および/または、
(3)標的タンパク質が検出可能である組織における細胞のタイプ(腫瘍、健康細胞)を規定する。
【0219】
異なるプロトコールを個々の抗体に応じて用いる必要がある(例えば、“Diagnostic Immunohistochemistry 、David J.、MD DabbsISBN: 0443065667”または“Microscopy、Immunohistochemistry、and Anigen Retrieval Methods: For Lightand Electron Microscopy ISBN: 0306467704”)。
【0220】
特異的組織サンプルにおける免疫組織化学(IHC)は、対応する組織におけるタンパク質の検出に役立つ。この方法の目的は、機能的にインタクトな組織集合体におけるタンパク質の局在を同定することである。IHCは特に以下に役立つ:
(1)腫瘍および正常組織における標的タンパク質の量の評価を可能とする、
(2)どれほど多くの腫瘍および健康組織における細胞が標的遺伝子を合成するかを分析する、そして、
(3)標的タンパク質が検出可能である組織における細胞タイプ(腫瘍、健康細胞)を規定する。
【0221】
あるいは、標的遺伝子のタンパク質の量はデジタルカメラおよび適当なソフトウェア(例えば、Tillvision、Till−photonics、Germany)を用いた組織免疫蛍光により定量できる。この技術は多く公表されており、染色と顕微鏡法についての詳細は例えば以下にみることができる:“Diagnostic Immunohisutochemistry”、David J.、MD DabbsISBN: 0443065667 または“Microscopy、Immunohisutochemistry、and Antigen Retrieval Methods: For Light and Electron Microscopy” ISBN:0306467704。抗体の性質によって、有効な結果を得るためには異なるプロトコールを用いなければならないことに注意されたい(一例を以下に示す)。
【0222】
通常、組織学的に規定された腫瘍組織および、参照として、対応する健康組織をIHCに用いる。標的遺伝子の存在がRT−PCR分析によって知られているポジティブおよびネガティブコントロール細胞株を用いることも可能である。バックグラウンドコントロールは常に含めなければならない。
【0223】
固定された組織(例えば、アルデヒド−含有物質、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはアルコール溶液による固定)または1−10μmの厚さのショック冷凍組織片をガラス台に乗せる。パラフィン包埋サンプルから例えばキシレンによってパラフィンを除く。サンプルをTBS−Tで洗浄し、血清中でブロッキングする。この後、一次抗体(希釈:1:2〜1:2000)との18時間のインキュベーションを行い、ここでアフィニティー精製抗体を通常用いる。洗浄工程の次にアルカリホスファターゼ(あるいは例えばペルオキシダーゼ)と結合した、一次抗体に対する二次抗体とのインキュベーションを約30−60分行う。この後、結合した酵素によって変換される色素基質を用いた着色反応を行う(例えば、Shi et al.、J. Histochem.Cytochem. 39: 741−748、1991;Shin et al.、Lab. Invest. 64: 693−702、1991を参照)。抗体特異性を示すために、反応を免疫原を先に添加することによってブロッキングしてもよい。
【0224】
免疫化
(Monoclonal Antibody: A Practical Approach、 Philip Shepherd、Christopher Dean isbn 0 19 963722 9; Antibody: A Laboratory Manual、Ed Harlow、David Lane ISBN: 0879693142;Using Antibody: A Laboratory Manual: Portable ProcotolNO.、Edward Harlow、David Lane、Ed Harlow ISBN:0879695447も参照されたい)。
【0225】
抗体の調製方法は以下に簡単に説明し、その詳細は引用文献にみられる。まず、動物(例えば、ウサギ)を所望の標的タンパク質の最初の注射により免疫する。免疫原に対する動物の免疫応答は所定の時間内での(先の免疫化の約2−4週間後)二回目または三回目の免疫化によって増強できる。様々な所定の時間後に(最初の採血は4週間後、次いで約2週間毎に計5回までの採血)、血液を動物から採取し、それから免疫血清を得る。
【0226】
動物は通常4つの確立された方法の1つで免疫するがその他の方法も利用できる。標的タンパク質に特異的なペプチドによって免疫することが出来、ここで全長タンパク質またはタンパク質の細胞外部分配列は実験的にまたは予測プログラムによって同定できる。
【0227】
(1)第一の場合において、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合したペプチド(長さ:8−12アミノ酸)を標準的インビトロ方法によって合成し、これらペプチドを免疫化に用いる。通常、3回の免疫化を行い、その濃度は5−1000μg/免疫化とする。免疫化はまた、サービス業者からのサービスとして行うことも出来る。
【0228】
(2)あるいは、免疫化は組換えタンパク質を用いて行うことも出来る。この目的のため、標的遺伝子のクローニングされたDNAを発現ベクターにクローニングし、標的タンパク質を特定の製造業者の条件と同様に、例えば細胞−フリーインビトロにて、細菌(例えば大腸菌)中、酵母(例えば、S. pombe)中、昆虫細胞中または哺乳類細胞中にて合成する(例えば、Roche Diagnostics、Invitrogen、Clontech、Qiagen)。系のいずれかでの合成の後、標的タンパク質を精製し、この場合精製は通常標準的クロマトグラフィー方法により行う。これに関しては、精製の助けとして分子アンカーを有する免疫化のためのタンパク質を用いてもよい(例えば、Hisタグ、Qiagen; FLAGタグ、Roche Diagnostics; Gst融合タンパク質)。多数のプロトコールが例えば以下においてみられる:“Current Protocolsin Molecular Biology”、John Wiley & Sons Ltd.、Wiley Interscience。
【0229】
(3)所望のタンパク質を内因的に合成する細胞株が入手可能な場合、この細胞株を用いて特異的抗血清を産生することが出来る。この場合、免疫化は各回約1−5×107細胞にて1−3回の注射にて行う。
【0230】
(4)免疫化はDNAの注射によって行うことも出来る(DNA免疫化)。この目的のため、標的遺伝子を最初に、標的配列が強力な真核プロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下になるように発現ベクターにクローニングする。次いで、5−100μgのDNAを「遺伝子銃」を用いて生物(例えば、マウス、ウサギ)における強い血流のある毛細血管領域に免疫原として移入する。移入されたDNAは動物細胞に取り込まれ、標的遺伝子が発現し、動物は最終的に標的遺伝子に対する免疫応答を発達させる(Jung et al.、Mol Cell 12:41−49、2001; Kasinrerk et al.、Hybrid Hybridomics 21:287−293、2002)。
【0231】
ポリクローナル血清または抗体の質の管理
細胞培養に基づくアッセイ、次いでウェスタンブロッティングは特異性を示すのにもっとも好適である(様々な改変が、例えば、Current Protocols in ProteinChemistry、John Wiley & Sons Ltd.、Wiley InterScienceに記載されている)。それを示すために、細胞に、強力な真核プロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター)の制御下の標的タンパク質に対するDNAをトランスフェクトする。様々な方法(例えば、エレクトロポーレーション、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降)がDNAによる細胞株のトランスフェクトについて確立されている(例えば、Lemoine et al.、Methods Mol. Biol. 75:441−7、1997)。標的遺伝子を内因的に発現する細胞株を用いることも可能である(標的遺伝子特異的RT−PCRによって示される)。コントロールとして理想的な場合においては相同的遺伝子を実験においてトランスフェクトし、以下のウェスタンブロットにおいて分析する抗体の特異性を確認することができる。
【0232】
次いでウェスタンブロットにおいて、標的タンパク質を含む可能性がある細胞培養物または組織サンプルからの細胞を1%SDS溶液で溶解し、タンパク質をそれによって変性させる。可溶化液を、8−15%変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDS含有)(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)において電気泳動によってサイズに応じて分画する。タンパク質を次いで複数のブロッティング方法の1つによって特定のメンブレン(例えば、ニトロセルロース、Schleicher & Schull)にトランスファーする(例えば、半乾燥電気ブロット; Biorad)。所望のタンパク質をこのメンブレン上で可視化できる。この目的のため、メンブレンをまず、標的タンパク質を認識する抗体(抗体の特異性に応じて希釈度約1:20−1:200)と60分間インキュベートする。洗浄工程後、メンブレンをマーカー(例えば、酵素、例えば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)と結合し、一次抗体を認識する二次抗体とインキュベートする。次いで着色または化学発光反応において(例えば、ECL、Amersham Bioscience)、メンブレン上で標的タンパク質を可視化することができる。標的タンパク質に対する高い特異性を有する抗体は理想的な場合において所望のタンパク質自体のみを認識するはずである。
【0233】
インシリコアプローチで同定された標的タンパク質の膜局在の確認には様々な方法が用いられる。上記抗体を用いる重要かつよく確立された方法は免疫蛍光(IF)である。標的タンパク質(RT−PCRにおけるRNAの検出またはウェスタンブロットにおけるタンパク質の検出)を合成するかあるいはプラスミドDNAをトランスフェクトされた樹立細胞株の細胞がこのために用いられる。様々な方法(例えば、エレクトロポーレーション、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降)がDNAによる細胞株のトランスフェクションのために確立されている(例えば、Lemoine et al.、Methods Mol. Biol. 75:441−7、1997)。細胞にトランスフェクトされたプラスミドは、免疫蛍光において、非修飾タンパク質をコードするかあるいは標的タンパク質に様々なアミノ酸マーカーを結合させうる。主要なマーカーは、例えば、蛍光性の様々な蛍光性形態における「緑色蛍光性タンパク質」(GFP)、6−12アミノ酸の短いペプチド配列であってそれに対する高親和性かつ特異的抗体が入手可能なもの、あるいはそのシステイン特異的蛍光物質(Invitrogen)を介して結合しうる短いアミノ酸配列Cys−Cys−X−X−Cys−Cysである。標的タンパク質を合成する細胞は、例えば、パラホルムアルデヒドやメタノールで固定される。次いで細胞は所望により界面活性剤(例えば、0.2%Triton X 100)とのインキュベーションによって透過性にされうる。細胞は次いで標的タンパク質または結合マーカーの1つに対する一次抗体とともにインキュベートされる。洗浄工程後、混合物を蛍光性マーカー(例えば、フルオレセイン、Texas Red、Dako)と結合し、一次抗体と結合する二次抗体とインキュベートする。このように標識した細胞は次いでグリセロール層で被覆し、製造業者の指示に従って蛍光顕微鏡によって分析される。特異的蛍光発光はこの場合、用いる物質に応じた特異的励起によって達成される。分析は通常標的タンパク質の信頼できる局在化を可能にし、抗体の質と標的タンパク質が標的タンパク質に加えて、その局在が既に文献に記載されている結合したアミノ酸マーカーまたはその他のマーカータンパク質の染色をする二重染色によって確認される。GFPおよびその誘導体は特別な場合を表し、直接励起可能でありそれ自体蛍光を発する。界面活性剤の使用により制御されうる膜透過性は、免疫原性エピトープが細胞の内側と外側のいずれに位置しているかを免疫蛍光において示すことを可能にする。選択されたタンパク質の予測はこのようにして実験的に支持される。別の可能性はフローサイトメトリーによる細胞外ドメインの検出である。この目的のために、細胞は非透過性条件下で固定され(例えば、PBS/Naアジド/2%FCS/5mM EDTA)、製造業者の指示に従ってフローサイトメーターにて分析される。細胞外エピトープのみがこの方法で分析される抗体によって認識されうる。免疫蛍光との違いは例えば、ヨウ化プロピジウムまたはトリパンブルーの使用によって死細胞と生細胞を区別することが可能であること、そして偽陽性結果を避けられることである。
【0234】
アフィニティー精製
ポリクローナル血清の精製は、ペプチド抗体の場合すべて、あるいは組換えタンパク質に対する抗体の場合、部分的に契約会社のサービスとして行った。この目的のために、両方の場合において、適当なペプチドまたは組換えタンパク質をマトリックスに共有結合させ、後者を結合後、ネイティブバッファー(PBS:リン酸緩衝食塩水)で平衡化し、次いで粗血清とインキュベートした。さらなるPBS洗浄工程の後、抗体を100mMグリシン、pH2.7で溶出し、溶出液をすぐに2M TRIS、pH8で中和した。このように精製した抗体を次いで、ウェスタンブロッティングおよび免疫蛍光による標的タンパク質の特異的検出に供し得た。
【0235】
EGFPトランスフェクタントの調製
異種発現した腫瘍関連抗原の免疫蛍光顕微鏡法のために、抗原の完全なORFをpEGFP C1およびpEGFP N3ベクター(Clontech)にクローニングした。スライド上で培養したCHOおよびNIH3T3細胞にFugeneトランスフェクション試薬(Roche)を用いて適当なプラスミドコンストラクトを製造業者の指示に従ってトランスフェクトし、12−24時間後、免疫蛍光顕微鏡法によって分析した。
【0236】
実施例1
診断上および治療上癌標的としてのGPR35の同定
GPR35(配列番号1)およびその翻訳産物(配列番号9)は、推定Gタンパク質共役受容体として記載されている。配列はGenbankにおいて登録番号AF089087として公表されている。この転写産物は309アミノ酸、分子量34kDaのタンパク質をコードしている。GPR35は、7つの膜貫通ドメインを有するGタンパク質共役受容体のスーパーファミリーに属すると予測された(O’Dowd et al.、Genomics 47:310−13、1998)。細胞における予測されたGPR35の局在を確認するために、タンパク質をレポーター分子としてのeGFPと融合させ、適当なプラスミドでのトランスフェクションの後、異種的に293細胞において発現させた。局在を次いで蛍光顕微鏡で分析した。本発明によると、GPR35は完全な膜貫通分子(図17)であることが確認された。ヒトGPR35に対する今日までの研究(とりわけ、Horikawa Y、Oda N、Cox NJ、Li X、Orho−Melander M、Hara M、Hinokio Y、Lindner TH、Mashima H、SchwarzPE、del Bosque−Plata L、Horikawa Y、Oda Y、Yoshiuchi I、Colilla S、Polonsky KS、Wei S、Concannon P、Iwasaki N、SchulzeJ、Baier LJ、Bogardus C、Groop L、Boerwinkle E、Hanis CL、Bell GI Nat Genet. 2000 Oct;26(2):163−75を参照されたい)は、GPR35は多くの健康組織で活性化されていることを示唆している。この遺伝子のリーディングフレームは1つのエキソンを含む。本発明によると、GPR35に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号20、21)をRT−PCR分析に用いて結腸および結腸癌(13/26)におけるcDNAを増幅した。一方、その他の正常組織においては有意な発現は検出不可能であった。GPR35は単一のエキソンからなるという事実により、イントロンにまたがるプライマーによってゲノムDNA不純物を検出することが出来ない。それゆえ、RNAサンプルのゲノムによる汚染を排除するために、すべてのRNAをDNAseで処理した。GPR35転写産物はDNA−無含有RNAを用いると本発明によると、結腸、直腸、精巣および結腸癌においてのみ検出された。
【0237】
表1:正常組織におけるGPR35発現
【表1】
【0238】
正常結腸組織および結腸癌組織診におけるGPR35転写産物の選択的かつ高い発現(図1)は以前には知られておらず、本発明による分子診断法に用いることが出来る。例えば、血清および骨髄における転移性腫瘍細胞の検出およびその他の組織における転移の検出のためのRT−PCRが挙げられる。特異的プライマー(配列番号88および89)を用いた定量的RT−PCRにより、GPR35が高度に選択的な腸−特異的分化抗原であることが確認され、これは腸腫瘍および腸腫瘍転移にも含まれる。いくつかの腸腫瘍において、それは実際正常腸に比較して1ログ過剰発する(図18)。GPR35タンパク質検出用の抗体をウサギの免疫化によって産生した。以下のペプチドをかかる抗体の増殖に用いた:
配列番号90 GSSDLTWPPAIKLGC(AA9−23)
配列番号91: DRYVAVRHPLRARGLR(AA112−127)
配列番号92: VAPRAKAHKSQDSLC(C末端)
配列番号93 CFRSTRHNFNSMR(細胞外ドメイン2)
【0239】
かかる抗体を用いた例えばウェスタンブロットによる染色により、腫瘍における発現が確認される。GPR35の4つのすべての細胞外ドメイン(配列番号9の配列における予測細胞外ドメインの位置、AA1−22(配列番号94);AA81−94(配列番号95);AA156−176(配列番号96);AA280−309(配列番号97))を本発明によるとモノクローナル抗体の標的構造として利用できる。かかる抗体は腫瘍細胞の細胞表面に特異的に結合し、そして、診断および治療方法の両方に利用できる。腫瘍におけるGPR35の過剰発現は、かかる使用に対するさらなる支持を提供する。さらに、タンパク質をコードする配列は本発明によると腫瘍特異的免疫応答(T細胞およびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するワクチン(RNA、DNA、ペプチド、タンパク質)として利用できる。さらに、驚くべきことにさらなる開始コドンが一般に知られている開始コドンの前の5’側に存在し、N末端が伸長したタンパク質を発現することが見いだされた。
【0240】
したがって本発明によると以前に遍在性に発現すると記載されていたタンパク質であるGPR35が、胃腸腫瘍、特に結腸腫瘍に選択的に過剰発現する腫瘍関連抗原であることが見いだされた。GPR35はそれゆえ特にかかる腫瘍の診断及び治療のための分子標的構造として好適である。ヒトGPR35の今日までの研究、例えば、Horikawa Y、Oda N、Cox NJ、Li X、Orho−Melander M、Hara M、Hinokio Y、Lindner TH、Mashima H、SchwarzPE、del Bosque−Plata L、Horikawa Y、Oda Y、Yoshiuchi I、Colilla S、Polonsky KS、Wei S、Concannon P、Iwasaki N、SchulzeJ、Baier LJ、Bogardus C、Groop L、Boerwinkle E、Hanis CL、Bell GI Nat Genet. 2000 Oct;26(2):163−75は、GPR35が多くの健康組織において活性化されていることを示唆している。一方、本発明の研究によると、GPR35は驚くべきことにほとんどの正常組織で有意に検出されず、それに対して、原発性および転移性結腸腫瘍において高度に活性化されていることが示された。さらに以前に記載されているGPR35配列の他に、本発明によると別の開始コドンを利用する新規な翻訳バリアントが見いだされた(配列番号10)。
【0241】
GPR35はG共役受容体(GPCR)の群のメンバーであり、G共役受容体(GPCR)の群は、その構造と機能が非常によく研究されている非常に大きなタンパク質ファミリーである。GPCRは医薬上活性な物質の開発のための標的構造として非常に好適である。というのはそれに必要な方法(例えば、受容体発現、精製、リガンドスクリーニング、突然変異誘発、機能阻害、アゴニスト性およびアンタゴニスト性リガンドの選択、リガンドの放射標識)が非常によく開発されており、例えば、以下に詳細に記載されているからである。“G Protein−CoupledReceptors” 、 Tatsuya Haga、Gabriel Berstein and Gabriel BernsteinISBN: 0849333849および、“Identification and Expression ofG− Protein Coupled Receptors Receptor Biochemistry and Methodology”、Kevin R. Lynch ASIN: 0471183105。本発明によると、GPR35はほとんどの健康組織で検出できず、細胞表面にて腫瘍関連発現をするという認識により、例えば、薬理活性リガンド、特に例えば、医薬物質としての放射性分子と組み合わせての使用など、その腫瘍関連標的構造としての利用が可能となる。特定の態様においてGPR35に結合する放射標識リガンドをインビボでの腫瘍細胞の検出または結腸腫瘍の治療に利用することが可能である。
【0242】
実施例2
診断上および治療上癌標的としての肝臓および卵巣腫瘍におけるGUCY2Cならびに新規GUCY2Cスプライスバリアントの同定
グアニル酸シクラーゼ2C(配列番号2;翻訳産物:配列番号11)−I型膜貫通タンパク質−はナトリウム利尿ペプチド受容体のファミリーに属する。その配列はGenbankにおいて登録番号NM_004963として公表されている。ペプチド、グアニリン(guanylin)およびウログアニリン(uroguanylin)あるいは耐熱性エンテロトキシン(STa)の結合は、細胞内cGMP濃度を上昇させ、したがって細胞内のシグナル伝達プロセスを誘導する。
【0243】
最近の研究はGUCY2Cの発現が腸外領域、例えば、胃および食道の原発性および転移性腺癌にも及ぶことを示している(Park et al.、Cancer EpidemiolBiomarkers Prev. 11: 739−44、2002)。腸の正常および形質転換組織の両方にみられるGUCYCのスプライスバリアントはエキソン1における142 bp欠失を含み、したがってGUCY2C−様産物の翻訳が妨げられる(Pearlman et al.、Dig. Dis. Sci. 45:298−05、2000)。現在までに記載されている唯一のスプライスバリアントは翻訳産物を導かない。
【0244】
本発明の目的は診断および治療の両方に利用できるGUCY2Cの腫瘍関連スプライスバリアントを同定することであった。
【0245】
GUCY2C−特異的プライマー対(配列番号22、23、98、99)を用いたRT−PCR研究は、正常結腸および胃における強いGUCY2C転写産物の発現、そして肝臓、精巣、卵巣、胸腺、脾臓、脳および肺における弱い発現を示した(表2、図19)。結腸および胃における発現はその他のすべての正常組織と比べて少なくとも50倍高かった。顕著なGUCY2C転写産物レベルが結腸癌および胃癌において検出された(表2)。これらの結果は定量的PCR分析により特定され、正常結腸、回腸、およびほぼすべての調べた結腸癌サンプルにおける顕著なGUCY2C発現を示した(図2、19B)。多大な過剰発現がいくつかの結腸癌サンプルにおいて検出可能であった。さらに、発現は7/10の胃腫瘍でみられた。本発明者らはまた驚くべきことに、該遺伝子が多くの以前に記載されていなかった腫瘍、とりわけ、卵巣、乳房、肝臓および前立腺腫瘍において活性化されていることを見いだした(図19B、表2)。
【0246】
表2:正常および腫瘍組織におけるGUC2C発現
【表2−1】
【0247】
【表2−2】
【0248】
以下のプライマー対を用いて結腸組織および結腸癌組織におけるスプライスバリアントを検出した:
GUCY2C−118s/GUCY2C−498as(配列番号24、29);
GUCY2C−621s/GUCY2C−1140as(配列番号25、30);
GUCY2C 1450s/GUCY2C−1790as(配列番号26、31);
GUCY2C 1993s/GUCY2C−2366as(配列番号27、32);
GUCY2C 2717s/GUCY2C−3200as(配列番号28、33);
GUCY2C 118s/GUCY2C−1140as(配列番号24、30);
GUCY2C 621s/GUCY2C−1790as(配列番号25、31);
GUCY2C 1450s/GUCY2C−2366as(配列番号26、32);
GUCY2C 1993s/GUCY2C−3200as(配列番号27、33)。
【0249】
結腸癌組織におけるスプライスバリアントの研究において3つの以前に知られていない形態が本発明によって同定された。
a)111アミノ酸長で位置111のアスパラギンがプロリンに置換されているGUCY2Cのバリアントを導くエキソン3の欠失(配列番号3)。
b)258アミノ酸長の発現産物をもたらすエキソン6の欠失(配列番号4)。これは13アミノ酸からなるC末端新エピトープを作る。
c)ヌクレオチド位置1606−1614、そして対応するアミノ酸L(536)、L(537)およびQ(538)が欠失しているバリアント(配列番号5)。
【0250】
エキソン3およびエキソン6がそれぞれ欠失している本発明によるスプライスバリアント(配列番号3、4)は、特に膜貫通ドメインを有さない翻訳産物(配列番号12、13)によって認識される。エキソン6の欠失の場合の結果は、13アミノ酸のC末端新エピトープであり、これは既知のいかなるタンパク質とも相同性を示さない。この新エピトープはしたがって免疫療法の標的構造に予定される。本発明の位置1606−1614において塩基が欠失したスプライスバリアント(配列番号5)およびその翻訳産物(配列番号14)は同様に新エピトープを含む。GUCY2Cタンパク質検出用の抗体をウサギの免疫化により産生した。以下のペプチドをこれら抗体の増殖に用いた:
配列番号100:HNGSYEISVLMMGNS(AA31−45)
配列番号101:NLPTPPTVENQQRLA(AA1009−1023)
かかる抗体は原理的には診断および治療目的で利用しうる。
【0251】
特に、GUCY2Cの細胞外ドメイン(配列番号11の配列からの推定細胞外ドメインの位置:AA454−1073(配列番号102))は本発明によると、モノクローナル抗体の標的構造として利用できる。しかし、構造予測はいくらか不明瞭であり、実験的に確認されておらず、したがって別の膜位置もあり得る。この場合、アミノ酸1−431は細胞外にあり、モノクローナル抗体の出発点として好適である。これら抗体は腫瘍細胞の細胞表面に特異的に結合し、診断および治療方法の両方に利用できる。特に結腸腫瘍におけるGUCY2Cの過剰発現は、かかる使用のさらなる支持を提供する。タンパク質をコードする配列はさらに本発明によると腫瘍特異的免疫応答(T細胞−およびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するワクチン(RNA、DNA、ペプチド、タンパク質)として使用できる。
【0252】
さらにGUCY2C分子の細胞機能によると本発明によると、腫瘍細胞に対する酵素の機能を調節する物質、特に低分子を開発することが出来る。酵素反応の生成物であるcGMPは、多数の機能を有する公知の細胞内シグナル分子である(Tremblay etal. Mol Cell Biochem 230、31)。
【0253】
実施例3
診断上および治療上の癌標的としてのSCGB3A2の同定
SCGB3A2(配列番号6)(翻訳産物:配列番号15)は分泌グロブリン(secretoglobin)遺伝子ファミリーに属する。配列はGenBankにおいて登録番号NM_054023として公表されている。SCGB3A2(UGRP1)はサイズ17kDaのホモ二量体分泌タンパク質であり、肺および気門にもっぱら発現している(Niimi et al.、Am J Hum Genet 70:718−25、2002)。プライマー対(配列番号37、38)を用いたRT−PCR研究により正常肺組織における選択的発現が確認された。肺−および気管−特異的遺伝子、例えばサーファクタントタンパク質に対する遺伝子は、脱分化の際に悪性腫瘍において高度に下方制御され、通常肺腫瘍においては検出不可能である。驚くべきことに、SCGB3A2が原発性および転移性肺腫瘍において活性であることが見いだされた。本発明による研究は、SCGB3A2が強くそして高頻度に気管支癌において発現していることが示された(図4)。その他の試験した23の正常組織は、肺および気管を除いて、発現を示さなかった(図20)。
【0254】
これをさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号103、104)(図20)において確認し、これはさらに50%以上の気管支癌における少なくとも1ログの過剰発現を示した。
【0255】
正常肺組織および肺癌組織診におけるSCGB3A2の選択的な高い発現は本発明によると血液および骨髄、痰、気管支吸引液または洗浄液における転移性腫瘍細胞の検出のため、そしてその他の組織、例えば局所リンパ節における転移の検出のための分子診断法、例えば、RT−PCRに利用することが出来る。健康肺において、SCGB3A2は特定の細胞によってもっぱら気管支へと分泌される。したがって、SCGB3A2タンパク質は健康な個体における気道の外の体液において検出されることは予測されない。一方、特に転移性腫瘍細胞はそれらタンパク質産物を直接血流に分泌する。本発明の一態様はそれゆえ肺腫瘍の診断発見としての特異的抗体アッセイを介して患者の血清または血漿におけるSCGB3A2産物の検出に関する。
【0256】
SCGB3A2タンパク質を検出するための抗体をウサギの免疫化によって産生した。以下のペプチドをこれら抗体の産生に用いた:
配列番号105:LINKVPLPVDKLAPL
配列番号106:SEAVKKLLEALSHLV。
【0257】
SCGB3A2−特異的反応は免疫蛍光において検出可能であった(図21)。分泌タンパク質について予測されるように、細胞におけるSCGB3A2の分泌は小胞体および分泌顆粒が行い得た(図21A)。特異性を確認するために、細胞をSCGB3A2−GFP融合タンパク質を合成するプラスミドで並行してトランスフェクトした。タンパク質検出はこの場合自己蛍光性GFP(緑色蛍光性タンパク質)(図21B)を介して行った。2つの蛍光の図の重ね合わせにより明らかに、免疫血清が特異的にSCGB3A2タンパク質を認識すること(図21C)が示された。
【0258】
本発明によるとかかる抗体は例えば診断および治療用途でイムノアッセイの形態で利用できる。
【0259】
実施例4
診断上および治療上癌標的としてのクローディン18A1およびクローディン18A2スプライスバリアントの同定
クローディン18遺伝子は4つの膜貫通ドメインおよび細胞内N末端およびC末端を有する表面膜分子をコードする。Niimiら(Mol. Cell. Biol. 21:7380−90、2001)は肺組織(クローディン18A1)および胃組織(クローディン18A2)においてそれぞれ選択的に発現すると記載されているマウスおよびヒトのクローディン18の2つのスプライスバリアントを記載している。これらバリアントはN末端において相違している(図22)。
【0260】
本発明によると、スプライスバリアントであるクローディン18A2(配列番号7)とクローディン18A1(配列番号117)、ならびにそれらの翻訳産物(配列番号16および118)が、腫瘍のためのマーカーまたは治療標的構造としてどの程度利用できるかを調べた。2つのバリアントを識別できる定量的PCRはをA1−特異的(配列番号109&110)およびA2特異的(配列番号107&108)プライマー対を選択することによって確立した。A2スプライスバリアントはさらに常套のPCRによって第二のプライマー対(配列番号39&40)を用いて試験した。A1バリアントは正常肺においてのみ活性であると記載されている。しかし、驚くべきことに本発明によると、A1バリアントが胃粘膜においても活性であることが見いだされた。胃および肺のみが有意な活性化を示す正常組織である。その他のすべての正常組織はクローディンA1について陰性である。腫瘍を調べると、驚くべきことにクローディンA1が多数の腫瘍組織において高度に活性化されていることが見いだされた。特に強い発現は胃腫瘍、肺腫瘍、膵臓癌、食道癌(図23)、ENT腫瘍および前立腺癌においてみられた。ENT、前立腺、膵臓および食道腫瘍におけるクローディンA1発現レベルは100−10000倍対応する正常組織のレベルより高かった。クローディンA2スプライスバリアントの研究に用いたオリゴヌクレオチドはこの転写産物の増幅を特異的に可能とするものであった(配列番号39&40および107&108)。研究により、A2スプライスバリアントは胃粘膜と程度は低いが精巣組織以外の20を超える調べた正常組織のいずれにおいても発現していないことが明らかとなった。本発明者らは、A2バリアントも、A1バリアントと同様に、多くの腫瘍において活性化されていることを見いだした(例えば図24に示す)。これらには胃腫瘍(8/10)、膵臓腫瘍(6/6)、食道癌(5/10)および肝臓癌が含まれる。健康肺においてはクローディン18A2の活性化は検出されなかったが、驚くべきことにいくらかの肺腫瘍がA2.1スプライスバリアントを発現することが見いだされた。
【0261】
図3A:正常および腫瘍組織におけるクローディン18A2の発現
【表3−1】
【0262】
表3B:正常および腫瘍組織におけるクローディン18A1の発現
【表3−2】
【0263】
独立のコントロール研究としての常套のPCRもまた、定量的PCRの結果を確認するものであった。これに用いたオリゴヌクレオチド(配列番号39、40)はA2スプライスバリアントの特異的増幅を可能とする。本発明によると、8/10の胃癌および試験した膵臓癌の半分がこのスプライスバリアントの強い発現を示した(図5)。一方、常套のPCRによってはその他の組織における発現は検出されなかった。特に、肺、肝臓、血液、リンパ節、乳房組織および腎臓組織では発現は無かった(表3)。
【0264】
したがって該スプライスバリアントは、本発明によると、上部胃腸管ならびに肺腫瘍、ENT腫瘍、前立腺癌およびその転移の腫瘍に対する高度に特異的な分子マーカーを表す。これら分子マーカーを本発明によると腫瘍細胞の検出に利用できる。腫瘍の検出は本発明によると上記オリゴヌクレオチドを利用して行うことが出来る(配列番号39、40、107−110)。特に好適なオリゴヌクレオチドは、少なくともその一方が、180塩基対長であって一方(配列番号8)または他方のスプライスバリアント(配列番号119)に特異的な転写産物のセグメントとストリンジェントな条件下で結合するプライマー対である。
【0265】
タンパク質レベルでこれらのデータを確認するために、クローディン−特異的抗体および免疫血清を動物の免疫化により測定した。クローディン18の細胞膜局在およびタンパク質トポロジーを、バイオインフォマティクスツール(TMHMM、TMPRED)による膜貫通ドメインの分析および増強GFPをタグ付加されたクローディン18融合タンパク質を発現する細胞の免疫蛍光研究によって確認した。クローディン18は2つの細胞外ドメインを有する。N末端細胞外ドメインは2つのスプライスバリアントにおいて配列において異なる(A1は配列番号111およびA2は配列番号112)。C末端細胞外ドメインは両方のバリアントについて同一である(配列番号137)。今日まで、クローディン18の細胞外ドメインに結合する抗体は記載されていない。本発明によると、細胞外に位置し、バリアントA1またはA2に特異的な、または両バリアントに存在するペプチドエピトープを免疫化に選択した。クローディン18の両方のバリアントは古典的なグリコシル化モチーフを有さず、タンパク質のグリコシル化はそれゆえ予測されなかった。にもかかわらず、アスパラギン、セリン、スレオニンを含むエピトープが古典的グリコシル化部位が無くてもまれにグリコシル化される可能性があることを考慮して、エピトープの選択に注意を払った。エピトープのグリコシル化はこのエピトープに対して特異的な抗体の結合を妨害しうる。とりわけ、エピトープは本発明によると、それによって作られる抗体が、抗原のグリコシル化状態の識別を可能とするように選択した。以下のペプチドをとりわけ、免疫化のために抗体の産生に選択した:
【0266】
配列番号17:DQWSTQDLYN(N−末端細胞外ドメイン、A2−特異的、グリコシル化と関係なく結合)
配列番号18:NNPVTAVFNYQ(N−末端細胞外ドメイン、A2−特異的、非グリコシル化形態に主に結合、N37)
配列番号113:STQDLYNNPVTAVF(N−末端細胞外ドメイン、A2−特異的、非グリコシル化形態のみに結合、N37)
配列番号114:DMWSTQDLYDNP(N−末端細胞外ドメイン、A1−特異的)
配列番号115:CRPYFTILGLPA(N−末端細胞外ドメイン、主にA1に特異的)
配列番号116:TNFWMSTANMYTG(C−末端細胞外ドメイン、A1とA2との両方を認識)。
【0267】
配列番号17による免疫化により産生されたA2−特異的抗体についてのデータを例示により示す。特異的抗体は免疫蛍光研究のための様々な固定条件下で利用できる。RT−PCR−陽性および陰性細胞株の比較染色により、容易に検出可能な量において、対応するタンパク質は陽性とされる胃癌細胞株において特異的に検出できる(図25)。内因性タンパク質は膜に位置し、膜上に比較的大きな限局的な集合体を形成する。この抗体をさらにウェスタンブロッティングにおけるタンパク質検出に用いた。予測されたように、タンパク質は胃にのみ検出され、その他の正常組織においては、肺においてさえ検出されなかった(図29)。患者からの胃腫瘍と隣接する正常胃組織の対比染色により、驚くべきことに、クローディン18A2が、このタンパク質が検出されるすべての胃腫瘍において小さい分子量を有していることが明らかとなった(図30、左)。本発明によると一連の実験において、正常胃組織の可溶化液を脱グリコシル化剤PNGase Fで処理した場合にもこのレベルのバンドが現れることが判明した(図30、右)。一方A2バリアントのグリコシル化形態はもっぱらすべての正常胃組織において検出可能であり、A2は60%以上の調べた胃癌において検出可能であり、特にもっぱら脱グリコシル化形態におけるものであった。クローディン18のA2バリアントはタンパク質レベルにおいてさえ正常肺では検出されないが、それは気管支癌においてはみられ、定量的RT−PCRによって調べたとおりであった。この場合も、脱グリコシル化バリアントのみが存在した(図31)。本発明によるとクローディン18A2スプライスバリアントの細胞外ドメインを認識する抗体を産生した。さらに、クローディン18A1スプライスバリアントのN末端ドメインを選択的に認識する抗体(図28)およびC末端細胞外ドメインの領域において両方のバリアントに結合する抗体(図27)を産生した。本発明によると診断目的でのかかる抗体の使用、例えば、免疫組織学(図32)、だけでなく上述のように治療目的での使用が可能である。さらに重要な態様はクローディン18の示差的にグリコシル化されたドメインに関する。本発明によると非グリコシル化エピトープにのみ結合する抗体を産生した。クローディン18自体は胃組織(A2)ならびに肺および胃(A1)に対する高度に選択的な分化抗原である。腫瘍においてはそれはグリコシル化機構における変化によって明らかに影響を受けるため、特定の脱グリコシル化されたA2のバリアントが腫瘍において産生される。これは診断および治療に利用できる。免疫血清、例えばここで記載する免疫血清(配列番号17のペプチドに対するもの)を診断に、例えば、ウェスタンブロッティングにおいて利用できる。例えば配列番号113のペプチドでの免疫化によって生じる、グリコシル化されたエピトープにまったく結合することが出来ない抗体(図26)は、結合において腫瘍組織を正常組織と区別できる。特にかかる抗体の治療での使用が可能である。というのはそれらは高度に選択的であるからである。産生された抗体は、キメラまたはヒト化組換え抗体の産生に直接用いることも出来る。これはまたウサギから得た抗体を用いて直接行いうる(これについては、J Biol Chem. 2000 May5;275(18):13668−76 by Rader C、Ritter G、Nathan S、Elia M、GoutI、Jungbluth AA、Cohen LS、Welt S、Old LJ、BarbasCF 3rd. “The rabbit antiody repertoire as a novelsource for the generation of therapeutic human antibody”を参照)。この目的のために、免疫した動物からのリンパ球を保存した。アミノ酸1−47(配列番号19および120)もまた免疫療法、例えば、ワクチンおよび抗原−特異的Tリンパ球の養子移入、の特に良好なエピトープである。
【0268】
実施例5
診断上および治療上癌標的としてのSLC13A1の同定
SLC13A1は硫酸ナトリウム共輸送体のファミリーに属する。ヒト遺伝子は、この遺伝子のマウスホモログと異なり、腎臓において選択的に発現する(Lee et al.、Genomics 70:354−63)。SLC13A1は595 アミノ酸のタンパク質をコードし、13の推定膜貫通ドメインを含む。選択的スプライシングにより、4種類の転写産物(配列番号41−44)およびその対応する翻訳産物(配列番号45−48)が生じる。SLC13A1が腎臓腫瘍のマーカーとして利用できるかを調べた。SLC13A1の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号49、50)をこの目的のために用いた。
【0269】
表4:正常および腫瘍組織におけるSLC13A1の発現
【表4】
【0270】
SLC13A1−特異的プライマー対(配列番号49、50)を用いたRT−PCR研究により、実質的に腎臓における選択的発現が確認され、本発明により示されるように調べた腎臓細胞癌組織診の実質的にすべて(7/8)において高発現していた(表4、図6)。特異的プライマー(配列番号121、122)を用いた定量的RT−PCRもまたこれらのデータを確認した(図34)。弱いシグナルが以下の正常組織において検出可能であった:結腸、胃、精巣、乳房、肝臓および脳。腎臓癌における発現はしかし、その他のすべての正常組織よりも、少なくとも100倍高かった。
【0271】
細胞におけるSLC13A1の細胞内局在を分析するために、タンパク質をレポーター分子としてのeGFPと融合させ、適当なプラスミドでのトランスフェクションの後、293細胞において異種発現させた。局在を次いで蛍光顕微鏡下で分析した。本発明者らのデータは驚くべきことにSLC13A1が膜内在性分子であることを確認した(図35)。
【0272】
SLC13A1タンパク質の検出用の抗体をウサギの免疫化により産生した。配列番号123および124のペプチドをこれら抗体の産生に用いた。かかる抗体は原理的に診断および治療目的で利用できる。
【0273】
SLC13A1タンパク質は13の膜貫通ドメインおよび7つの細胞外領域を有する。SLC13A1のこれら細胞外ドメインは特に本発明によるとモノクローナル抗体の標的構造として利用できる。SLC13A1はイオンの輸送にチャンネルタンパク質として関与している。健康腎臓におけるSLC13A1の細胞外ドメインは極性によって尿路(管腔内)の方向を向いている。しかし治療に用いられる高分子量モノクローナル抗体は尿路に入らないため、健康腎臓においてはSLC13A1への結合は起こらない。一方、SLC13A1の極性は腫瘍細胞においては無くなり、タンパク質は血流を介して直接抗体標的化に用いられる。腎臓細胞癌におけるSLC13A1の顕著な発現および高頻度により、このタンパク質は本発明によると非常に興味深い診断上および治療上のマーカーとなる。これは本発明によるとRT−PCRによる、血清、骨髄、尿における転移性の腫瘍細胞の検出およびその他の組織における転移の検出を含む。さらに本発明によると、SLC13A1の細胞外ドメインは、モノクローナル抗体を用いる免疫診断および治療のための標的構造としての使用が可能である。SLC13A1はさらに本発明によると腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。これは、本発明によると、SLC13A1の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発も含み、腎臓腫瘍の治療用に利用することが出来る。
【0274】
実施例6
診断上および治療上癌標的としてのCLCA1の同定
CLCA1(配列番号51;翻訳産物:配列番号60)は、Ca++−活性化Cl−チャンネルのファミリーに属する。配列はGenbankにおいて登録番号NM_001285として公表されている。CLCA1はもっぱら腸陰窩上皮および杯細胞に発現している(Gruber et al.、Genomics 54:200−14、1998)。CLCA1が結腸癌および胃癌のマーカーとして利用できるかを調べた。CLCA1の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号67、68)をこの目的のために用いた。このプライマーセットを用いたRT−PCR研究により結腸における選択的発現が確認され、本発明によると(3/7)の調べた結腸癌および(1/3)の調べた胃癌サンプルにおける高い発現が示された(図7)。その他の正常組織は、発現を示さないか非常に弱い発現を示した。これはさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号125、126)によって確認され、ここで、発現は分析した正常組織においては検出されなかった(図36)。この実験で調べた腫瘍サンプルの中で、6/12の結腸癌サンプルと5/10の胃癌サンプルはCLCA1について陽性であった。総じて、この遺伝子の腫瘍における発現は無調節であるようであった。非常に強い発現を示すサンプルに加えて、CLCA1はその他のサンプルにおいて顕著に下方制御されていた。
【0275】
タンパク質は4つの膜貫通ドメイン、全部で2つの細胞外領域を有すると予測される。CLCA1のこれら細胞外ドメインは、特に本発明によるとモノクローナル抗体のための標的構造として利用できる。
【0276】
CLCA1が胃癌および結腸癌において強力に発現していることそして高頻度であることにより、このタンパク質は本発明によると興味深い診断上および治療上のマーカーとなる。これには本発明によると、RT−PCRによる血清、骨髄、尿の転移性腫瘍細胞の検出ならびにその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに本発明によるとCLCA1の細胞外ドメインをモノクローナル抗体による免疫診断および治療の標的構造として利用できる。CLCA1は本発明によるとさらに腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘発するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。これには本発明によるとCLCA1の輸送タンパク質としての生理活性を調節し、胃腸腫瘍の治療に利用できるいわゆる低分子化合物の開発が含まれる。
【0277】
実施例7
診断上および治療上癌標的としてのFLJ21477の同定
FLJ21477(配列番号52)およびその推定翻訳産物(配列番号61)は仮定上のタンパク質としてGenbankにおいて登録番号.NM_025153として公表されている。それはATPase活性および4つの膜貫通ドメインを有する膜内在性タンパク質であり、したがって特異的抗体による治療に好適である。FLJ21477−特異的プライマー(配列番号69、70)を用いたRT−PCR研究により結腸における選択的発現、さらに(7/12)の調べた結腸癌サンプルにおいて様々なレベルの発現が示された(図8)。その他の正常組織は発現を示さなかった。これをさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号127、128)により確認した。FLJ21477−特異的発現は結腸(図37A)および11/12の結腸癌において検出可能であった。結腸組織における発現の他に、発現はさらに胃組織でも検出可能であった。さらに、定量的RT−PCRの条件下で、脳、胸腺および食道において検出可能な発現は、結腸および胃と比較して顕著に弱かった(図37A)。さらに以下の腫瘍サンプルにおけるFLJ21477−特異的発現を検出することが出来た:胃、膵臓、食道および肝臓。
【0278】
タンパク質は4つの膜貫通ドメインと全部で2つの細胞外領域を有すると予測される。これらFLJ21477の細胞外ドメインは、本発明によると特にモノクローナル抗体のための標的構造として利用できる。
【0279】
胃および結腸癌におけるFLJ21477の発現とその高い頻度により、該タンパク質は本発明によると、有用な診断上および治療上マーカーとなる。これには本発明によるとRT−PCRによる血清、骨髄、尿における転移性腫瘍細胞の検出ならびにその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに、FLJ21477の細胞外ドメインは本発明によるとモノクローナル抗体による免疫診断および治療の標的構造として利用できる。さらに本発明によると、FLJ21477は腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。
【0280】
実施例8
FLJ20694の診断上および治療上癌標的としての同定
FLJ20694(配列番号53)およびその翻訳産物(配列番号62)は仮定上のタンパク質としてGenbankに登録番号.NM_017928として公表されている。このタンパク質は膜内在性分子(膜貫通ドメインAA33−54)であり、チオレドキシン機能を有するようである。FLJ20694−特異的プライマー(配列番号71、72)を用いたRT−PCR研究により、結腸における選択的発現、さらに(5/9)の結腸癌サンプルにおける様々なレベルの発現が示された(図9)。その他の正常組織は発現を示さなかった。これはさらに特異的定量的RT−PCR(配列番号129、130)により確認された(図38)。FLJ29694発現は結腸および胃(最初の実験では分析していない)以外のその他の正常組織では検出されなかった。
【0281】
タンパク質は1つの膜貫通ドメインと1つの細胞外領域を有すると予測される。FLJ20694のこれら細胞外ドメインは特に本発明によると、モノクローナル抗体のための標的構造として利用できる。
【0282】
さらに、FLJ20694は本発明によると腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘発するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用できる。これには本発明によるとFLJ20694の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発も含まれ、胃腸腫瘍の治療に利用できる。
【0283】
実施例9
von Ebner’sタンパク質(c20orf114)の診断上および治療上癌標的としての同定
von Ebner’sタンパク質(配列番号54)およびその翻訳産物(配列番号63)は上気道および鼻咽頭上皮のPlunc−関連タンパク質としてGenbankにおいて登録番号.AF364078として公表されている。本発明によると、von Ebner’sタンパク質が肺癌のマーカーとして利用できるかを調べた。Ebner’sタンパク質の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号73、74)をこの目的のために用いた。このプライマーセットによるRT−PCR研究は、肺および(5/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現を示した(図10)。正常組織の群において胃での発現も示された。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0284】
実施例10
Pluncの診断上および治療上癌標的としての同定
Plunc(配列番号55)およびその翻訳産物(配列番号64)はGenbankに登録番号.NM_016583として公表されている。ヒトPluncは256アミノ酸であってマウスPluncタンパク質と72%の相同性を示すタンパク質をコードする(Bingle and Bingle、Biochem Biophys Acta 1493:363−7、2000)。Pluncの発現は気管、上気道、鼻咽頭上皮および唾液腺に限定されている。
【0285】
本発明により、Pluncが肺癌のマーカーとして利用できるかを調べた。Pluncの特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号75、76)をこの目的のために使用した。
【0286】
このプライマーセットを用いたRT−PCR研究により、胸腺、肺および(6/10)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された(図11)。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0287】
実施例11
SLC26A9の診断上および治療上癌標的としての同定
SLC26A9(配列番号56)およびその翻訳産物(配列番号65)はGenbankに登録番号.NM_134325として公表されている。SLC26A9は陰イオン交換体のファミリーに属する。SLC26A9の発現は細気管支および肺の肺胞上皮に限定されている(Lohi et al.、J Biol Chem 277:14246−54、2002)。
【0288】
SLC26A9が肺癌のマーカーとして利用できるかを調べた。この目的のためにSLC26A9の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号77、78)を用いた。SLC26A9−特異的プライマー(配列番号77、78)を用いたRT−PCR研究により、肺およびすべて(13/13)の調べた肺癌サンプルにおける選択的発現が示された(図12)。甲状腺を除くその他の正常組織は発現を示さなかった。まず、配列番号131および132のプライマーを用いた定量的RT−PCR実験においてこれらの結果を確認することが出来、さらなる情報が得られた。4−5の腫瘍組織のプールされたサンプルにおいて、肺、結腸、膵臓および胃腫瘍におけるSLC26A9−特異的RNAの高い発現レベルを検出することが出来た。SLC26A9は膜貫通陰イオン輸送体のファミリーのメンバーである。健康な肺において、タンパク質は気道の方向において管腔内に向いており、したがって血液からのIgG抗体を直接用いることは出来ない。一方、タンパク質の極性は腫瘍では失われている。したがって本発明によると、特定の腫瘍、とりわけ、肺腫瘍、胃癌、膵臓癌においてモノクローナル抗体を用いた治療標的としてSLC26A9を用いることが出来る。肺、胃、膵臓および食道癌におけるSLC26A9の顕著な高発現および高頻度により、このタンパク質は本発明によると、良好な診断上および治療上マーカーとなる。これには本発明によるとRT−PCRによる血清、骨髄および尿における転移性腫瘍細胞の検出ならびにその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに、SLC26A9の細胞外ドメインは本発明によると、モノクローナル抗体による免疫診断および治療のための標的構造として利用することが出来る。さらに本発明によると腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)の誘発のためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)としてSLC26A9を用いることが出来る。これには本発明によると、SLC26A9の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発も含まれ、肺腫瘍および胃腸腫瘍の治療に利用できる。
【0289】
実施例12
THC1005163の診断上および治療上癌標的としての同定
THC1005163(配列番号57)はTIGR遺伝子インデックスからの遺伝子断片である。該遺伝子は3’領域のみ明らかになっており、ORFは欠失している。RT−PCR研究をTHC1005163−特異的プライマー(配列番号79)および5’末端に21特異的塩基の特異的タグを有するオリゴdT18プライマーを用いて行った。このタグは公知の配列との相同性についてのデータベースサーチプログラムを用いて調べた。この特異的プライマーをまずゲノムDNAの汚染を除くためにcDNA合成に用いた。このプライマーセットを用いたRT−PCR研究により、胃、卵巣、肺および(5/9)の肺癌組織診における発現が示された(図13)。その他の正常組織は発現を示さなかった。
【0290】
実施例13
LOC134288の診断上および治療上癌標的としての同定
LOC134288(配列番号58)およびその推定翻訳産物(配列番号66)はGenbankに登録番号.XM_059703として公表されている。
【0291】
本発明によると、LOC134288が腎臓細胞癌のマーカーとして利用できるかを調べた。LOC134288の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号80、81)をこの目的のために用いた。RT−PCR研究により腎臓および(5/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された(図14)。
【0292】
実施例14
THC943866の診断上および治療上癌標的としての同定
THC943866(配列番号59)はTIGR遺伝子インデックスからの遺伝子断片である。THC943866が腎臓細胞癌のマーカーとして利用できるかを調べた。THC943866の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号82、83)をこの目的のために用いた。
【0293】
THC943866−特異的プライマー(配列番号82、83)を用いたRT−PCR研究により、腎臓および(4/8)の調べた腎臓細胞癌組織診における選択的発現が示された(図15)。
【0294】
実施例15
FLJ21458の診断上および治療上癌標的としての同定
FLJ21458(配列番号84)およびその推定翻訳産物(配列番号85)はGenbankに登録番号.NM_034850として公表されている。配列分析により、該タンパク質が新規なブチロフィリンファミリーのメンバーを表すことが明らかとなった。構造分析によりそれは1つの細胞外免疫グロブリンドメインを有する1型膜貫通タンパク質であることが明らかとなった。FLJ21458の特異的増幅を可能とするオリゴヌクレオチド(配列番号86、87)を発現の調査に用いた。FLJ21458−特異的プライマー(配列番号86、87)によるRT−PCR研究は、結腸および(7/10)の調べた結腸癌組織診における選択的発現を示した(図16、表5)。特異的プライマー(配列番号133、134)を用いた定量的RT−PCRにより、選択的発現プロフィールが確認された(図39)。さらにこの実験において結腸、胃、直腸および盲腸におけるFLJ21458の胃腸−特異的検出および精巣における検出を行うことが可能であった。7/11の結腸転移サンプルも定量的PCRにおいて陽性であった。FLJ21458−特異的発現はその他の腫瘍にも拡張され、タンパク質−特異的発現は胃、膵臓および肝臓腫瘍において検出可能であった(表5)。FLJ21458タンパク質の検出用の抗体はウサギの免疫化によって産生した。以下のペプチドをこれら抗体の産生に用いた:
配列番号135:QWQVFGPDKPVQAL
配列番号136:AKWKGPQGQDLSTDS。
【0295】
FLJ21458−特異的反応は免疫蛍光において検出可能であった(図40)。抗体の特異性を確認するために、293細胞をFLJ21458−GFP融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。特異性は一方でFLJ21458−特異的抗体を用いた共存研究により確認され、他方で自己蛍光性GFPにより確認された。2つの蛍光図の重ね合わせは、免疫血清が特異的にFLJ21458タンパク質を認識することを明白に示した(図40a)。タンパク質の過剰発現により結果として得られた細胞染色は散在性であり、明白なタンパク質の局在化は出来なかった。このため、さらなる免疫蛍光実験をFLJ21458を内因的に発現する胃腫瘍特異的細胞株Snu16を用いて行った(図41B)。細胞をFLJ21458−特異的抗血清および膜タンパク質E−カドヘリンを認識するもう1つの抗体で染色した。FLJ21458−特異的抗体は少なくとも弱く細胞膜を染色し、したがってFLF21458が細胞膜に局在することが証明された。
【0296】
バイオインフォマティクス研究により、FLJ21458によってコードされるタンパク質が細胞表面分子であり、免疫グロブリン超分子ドメインを有することが示された。この表面分子の選択的発現により、それは、腫瘍細胞の検出の診断方法および腫瘍細胞を排除する治療方法の開発のための良好な標的となる。
【0297】
胃癌および結腸癌におけるFLJ21458の高発現および高頻度によりこのタンパク質は本発明によると、非常に興味深い診断上および治療上のマーカーとなる。これには本発明によると、RT−PCRによる、血清、骨髄および尿における転移性腫瘍細胞の検出およびその他の器官における転移の検出が含まれる。さらに本発明によるとFLJ21458の細胞外ドメインを、モノクローナル抗体による免疫診断および治療のための標的構造として利用することが出来る。さらに本発明によるとFLJ21458を腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞−媒介免疫応答)を誘導するワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として用いることが出来る。これには、本発明によるとFLJ21458の生理活性を調節するいわゆる低分子化合物の開発が含まれ、胃腸腫瘍の治療に利用することが出来る。
【0298】
表5:正常および腫瘍組織におけるFLJ21458発現
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する剤を含む医薬組成物、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項2】
腫瘍関連抗原を発現するか、または異常に発現する細胞に選択的な腫瘍阻害活性を有する剤を含む医薬組成物、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項3】
剤が、細胞死の誘導、細胞増殖の低下、細胞膜の損傷またはサイトカインの分泌を引き起こす請求項2の医薬組成物。
【請求項4】
剤が腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である請求項1または2の医薬組成物。
【請求項5】
剤が腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である請求項1または2の医薬組成物。
【請求項6】
剤が腫瘍関連抗原に選択的に結合する補体活性化抗体である請求項2の医薬組成物。
【請求項7】
投与された場合にHLA分子と腫瘍関連抗原またはその部分の複合体の量を選択的に増加させる剤を含む医薬組成物、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項8】
剤が1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む請求項7の医薬組成物:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体。
【請求項9】
剤がいずれも異なる腫瘍関連抗原の発現または活性を選択的に阻害し、いずれも異なる腫瘍関連抗原を発現する細胞に選択的であるか、あるいは異なる腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との複合体の量を増加させる2以上の剤を含み、ここで少なくとも該腫瘍関連抗原の1つが以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する、請求項1、2または7の医薬組成物:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項10】
以下からなる群から選択される1または複数の成分を含む医薬組成物:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分と結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(vi)腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体、ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項11】
(ii)の核酸が発現ベクター中に存在する請求項8または10の医薬組成物。
【請求項12】
(ii)の核酸がプロモーターに機能的に連結している請求項8または10の医薬組成物。
【請求項13】
宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分を分泌する請求項8または10の医薬組成物。
【請求項14】
宿主細胞がさらに腫瘍関連抗原またはその部分に結合するHLA分子を発現する請求項8または10の医薬組成物。
【請求項15】
宿主細胞が組換えによりHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する請求項14の医薬組成物。
【請求項16】
宿主細胞が内因的にHLA分子を発現する請求項14の医薬組成物。
【請求項17】
宿主細胞が抗原提示細胞である請求項8、10、14または16の医薬組成物。
【請求項18】
抗原提示細胞が樹状細胞またはマクロファージである請求項17の医薬組成物。
【請求項19】
宿主細胞が非増殖性である請求項8、10および13−18のいずれかの医薬組成物。
【請求項20】
抗体がモノクローナル抗体である請求項5または10の医薬組成物。
【請求項21】
抗体がキメラまたはヒト化抗体である請求項5または10の医薬組成物。
【請求項22】
抗体が天然の抗体の断片である請求項5または10の医薬組成物。
【請求項23】
抗体が治療薬または診断薬と結合している請求項5または10の医薬組成物。
【請求項24】
アンチセンス核酸が腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチド配列を含む請求項4または10の医薬組成物。
【請求項25】
該医薬組成物によって提供される腫瘍関連抗原またはその部分が、異常量の該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞の表面上でMHC分子に結合する請求項8および10−13のいずれかの医薬組成物。
【請求項26】
結合が細胞溶解性反応を引き起こす、および/または、サイトカイン放出を誘導する、請求項25の医薬組成物。
【請求項27】
さらに医薬上許容される担体および/またはアジュバントを含む請求項1−26のいずれかの医薬組成物。
【請求項28】
アジュバントが、サポニン、GM−CSF、CpG、サイトカインまたはケモカインである請求項27の医薬組成物。
【請求項29】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療に用いられ得る請求項1−28のいずれかの医薬組成物。
【請求項30】
疾患が癌である請求項29の医薬組成物。
【請求項31】
疾患が、肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、メラノーマ、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、ENT腫瘍、腎臓細胞癌または子宮頸癌、結腸癌あるいは乳癌である請求項29の医薬組成物。
【請求項32】
腫瘍関連抗原が、配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項1−31のいずれかの医薬組成物。
【請求項33】
以下を含む腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の診断方法:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の検出、および/または、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の検出、および/または、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に対する抗体の検出、および/または、
(iv)患者から単離された生物学的サンプルにおける腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出、ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸を含む核酸配列、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項34】
検出が以下の工程を含む請求項33の方法:
(i)生物学的サンプルと、腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、または抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球に特異的に結合する剤とを、接触させる工程、および、
(ii)剤と、核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球との複合体の形成を検出する工程。
【請求項35】
検出を対応する正常生物学的サンプルにおける検出と比較する請求項33または34の方法。
【請求項36】
疾患が2種類以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、検出が、該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の検出、該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分の検出、該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分に対する2以上の抗体の結合の検出、該2種類以上の腫瘍関連抗原に対して特異的な2以上の細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出を含む、請求項33−35のいずれかの方法。
【請求項37】
核酸またはその部分が該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて検出される請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項38】
ポリヌクレオチドプローブが、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチドの配列を含む請求項37の方法。
【請求項39】
核酸またはその部分が該核酸または該その部分を選択的に増幅することによって検出される請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項40】
検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分がMHC分子との複合体である請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項41】
MHC分子がHLA分子である請求項40の方法。
【請求項42】
腫瘍関連抗原またはその部分が、該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的に結合する抗体を用いて検出される請求項33−36および40−41のいずれかの方法。
【請求項43】
抗体が該抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを用いて検出される請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項44】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の退行、経過または発症を判定する方法であって、該疾患を患う患者または該疾患に罹患すると予測される患者からのサンプルを、以下からなる群から選択される1または複数のパラメーターについてモニタリングすることを含む方法:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の量、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体の量、および、
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性またはサイトカイン−放出性T細胞の量、
ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項45】
第一の時点での第一のサンプルにおけるパラメーターと第二の時点でのさらなるサンプルにおけるパラメーターとを測定することを含み、疾患の経過を2つのサンプルの比較によって判定する請求項44の方法。
【請求項46】
疾患が2種類以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、モニタリングが以下をモニタリングすることを含む、請求項44または45の方法:
(i)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の量、
(ii)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分に結合する2以上の抗体の量、および/または、
(iv)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な2以上の細胞溶解性またはサイトカイン−放出性T細胞の量。
【請求項47】
核酸またはその部分の量を該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いてモニタリングする、請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項48】
ポリヌクレオチドプローブが腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチドの配列を含む請求項47の方法。
【請求項49】
核酸またはその部分の量が該核酸または該その部分を選択的に増幅することによってモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項50】
腫瘍関連抗原またはその部分の量が該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的に結合する抗体を用いてモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項51】
抗体の量が抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを用いてモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項52】
細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の量が、腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体を提示する細胞を用いてモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項53】
ポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質またはペプチドあるいは細胞が検出可能な様式で標識される請求項37−38、42、43、47−48および50−52のいずれかの方法。
【請求項54】
検出可能なマーカーが放射性マーカーまたは酵素マーカーである請求項53の方法。
【請求項55】
サンプルが体液および/または体組織を含む請求項33−54のいずれかの方法。
【請求項56】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法であって、該方法が請求項1−32のいずれかの医薬組成物を投与することを含む方法、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項57】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療、診断またはモニタリング方法であって、該腫瘍関連抗原またはその部分に結合し、治療薬または診断剤と結合した抗体を投与することを含む方法、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項58】
抗体がモノクローナル抗体である請求項42、50または57のいずれかの方法。
【請求項59】
抗体がキメラまたはヒト化抗体である請求項42、50または57のいずれかの方法。
【請求項60】
抗体が天然の抗体の断片である請求項42、50または57のいずれかの方法。
【請求項61】
以下の工程を含む、腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法:
(i)該患者から免疫反応性細胞を含むサンプルを取り出す工程、
(ii)該サンプルと該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞を、該腫瘍関連抗原またはその部分に対する細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生に好適な条件下で接触させる工程、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞を溶解するのに好適な量の細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞を患者に導入する工程、
ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項62】
宿主細胞が組換えにより腫瘍関連抗原またはその部分に結合するHLA分子を発現する請求項61の方法。
【請求項63】
宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分に結合するHLA分子を内因的に発現する請求項62の方法。
【請求項64】
以下の工程を含む、腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を患う患者の治療方法:
(i)該疾患に関連する細胞によって発現される核酸を同定する工程、ここで該核酸は以下からなる群から選択される:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸、
(ii)宿主細胞を該核酸またはその部分でトランスフェクトする工程、
(iii)トランスフェクトされた宿主細胞を該核酸の発現のために培養する工程、および、
(iv)疾患に関連する患者の細胞に対する免疫応答を上昇させるのに好適な量、患者に宿主細胞またはその抽出物を導入する工程。
【請求項65】
腫瘍関連抗原またはその部分を提示するMHC分子を同定する工程をさらに含み、該宿主細胞が同定されたMHC分子を発現し腫瘍関連抗原またはその部分を提示する、請求項64の方法。
【請求項66】
免疫応答がB細胞応答またはT細胞応答を含む請求項64または65の方法。
【請求項67】
免疫応答が腫瘍関連抗原またはその部分を提示する宿主細胞に特異的であるか、または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する患者の細胞に特異的である細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生を含むT細胞応答である請求項66の方法。
【請求項68】
宿主細胞が非増殖性である請求項61−67のいずれかの方法。
【請求項69】
以下の工程を含む腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法:
(i)異常な量の腫瘍関連抗原を発現する患者からの細胞を同定する工程、
(ii)該細胞のサンプルを単離する工程、
(iii)該細胞を培養する工程、および、
(iv)細胞に対する免疫応答をトリガーするのに好適な量の該細胞を患者に導入する工程、
ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項70】
疾患が癌である請求項33−69のいずれかの方法。
【請求項71】
有効量の請求項1−32のいずれかの医薬組成物を投与することを含む、患者における癌の進行の阻害方法。
【請求項72】
腫瘍関連抗原が配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項33−71の方法。
【請求項73】
以下からなる群から選択される核酸:
(a)配列番号3−5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項74】
配列番号10、および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸、その一部または誘導体。
【請求項75】
請求項73または74の核酸を含む組換えDNAまたはRNA分子。
【請求項76】
ベクターである請求項75の組換えDNA分子。
【請求項77】
ベクターがウイルスベクターまたはバクテリオファージである請求項76の組換えDNA分子。
【請求項78】
核酸の発現を制御する発現制御配列をさらに含む、請求項75−77のいずれかの組換えDNA分子。
【請求項79】
発現制御配列が核酸と同種または異種である請求項78の組換えDNA分子。
【請求項80】
請求項73または74の核酸または請求項75−79のいずれかの組換えDNA分子を含む宿主細胞。
【請求項81】
HLA分子をコードする核酸をさらに含む請求項80の宿主細胞。
【請求項82】
請求項73の核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチド。
【請求項83】
配列番号10、および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチド、その一部または誘導体。
【請求項84】
請求項82または83のタンパク質またはポリペプチドの免疫原性断片。
【請求項85】
ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する請求項82または83のタンパク質またはポリペプチドの断片。
【請求項86】
タンパク質またはポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する剤、ここで該タンパク質またはポリペプチドが以下からなる群から選択される核酸によってコードされる:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項87】
タンパク質またはポリペプチドが配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項86の剤。
【請求項88】
抗体である請求項86または87の剤。
【請求項89】
抗体が、モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体あるいは抗体の断片である請求項88の剤。
【請求項90】
以下の(i)および(ii)の複合体に選択的に結合する抗体:
(i)タンパク質またはポリペプチドまたはその部分、および
(ii)該タンパク質またはポリペプチドまたは該その部分が結合するMHC分子、
ここで該抗体は(i)または(ii)の単独には結合せず、該タンパク質またはポリペプチドは以下からなる群から選択される核酸によってコードされる:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項91】
タンパク質またはポリペプチドが配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項90の抗体。
【請求項92】
モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体あるいは抗体の断片である請求項90または91の抗体。
【請求項93】
請求項86−89のいずれかの剤または請求項90−92のいずれかの抗体と治療薬または診断薬との結合体。
【請求項94】
治療薬または診断薬が毒素である請求項93の結合体。
【請求項95】
以下の検出のための剤を含む腫瘍関連抗原の発現または異常発現を検出するためのキット:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、および/または、
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的なT細胞、ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項96】
腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸を検出するための剤が、該核酸の選択的増幅のための核酸分子である請求項95のキット。
【請求項97】
核酸の選択的増幅のための核酸分子が、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチドの配列を含む、請求項96のキット。
【請求項98】
配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列に由来するプロモーター領域を含む組換えDNA分子。
【請求項1】
腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する剤を含む医薬組成物、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項2】
腫瘍関連抗原を発現するか、または異常に発現する細胞に選択的な腫瘍阻害活性を有する剤を含む医薬組成物、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項3】
剤が、細胞死の誘導、細胞増殖の低下、細胞膜の損傷またはサイトカインの分泌を引き起こす請求項2の医薬組成物。
【請求項4】
剤が腫瘍関連抗原をコードする核酸に選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である請求項1または2の医薬組成物。
【請求項5】
剤が腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である請求項1または2の医薬組成物。
【請求項6】
剤が腫瘍関連抗原に選択的に結合する補体活性化抗体である請求項2の医薬組成物。
【請求項7】
投与された場合にHLA分子と腫瘍関連抗原またはその部分の複合体の量を選択的に増加させる剤を含む医薬組成物、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項8】
剤が1または複数の以下からなる群から選択される成分を含む請求項7の医薬組成物:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体。
【請求項9】
剤がいずれも異なる腫瘍関連抗原の発現または活性を選択的に阻害し、いずれも異なる腫瘍関連抗原を発現する細胞に選択的であるか、あるいは異なる腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との複合体の量を増加させる2以上の剤を含み、ここで少なくとも該腫瘍関連抗原の1つが以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する、請求項1、2または7の医薬組成物:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項10】
以下からなる群から選択される1または複数の成分を含む医薬組成物:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分と結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞、および、
(vi)腫瘍関連抗原またはその部分とHLA分子との単離複合体、ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項11】
(ii)の核酸が発現ベクター中に存在する請求項8または10の医薬組成物。
【請求項12】
(ii)の核酸がプロモーターに機能的に連結している請求項8または10の医薬組成物。
【請求項13】
宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分を分泌する請求項8または10の医薬組成物。
【請求項14】
宿主細胞がさらに腫瘍関連抗原またはその部分に結合するHLA分子を発現する請求項8または10の医薬組成物。
【請求項15】
宿主細胞が組換えによりHLA分子および/または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する請求項14の医薬組成物。
【請求項16】
宿主細胞が内因的にHLA分子を発現する請求項14の医薬組成物。
【請求項17】
宿主細胞が抗原提示細胞である請求項8、10、14または16の医薬組成物。
【請求項18】
抗原提示細胞が樹状細胞またはマクロファージである請求項17の医薬組成物。
【請求項19】
宿主細胞が非増殖性である請求項8、10および13−18のいずれかの医薬組成物。
【請求項20】
抗体がモノクローナル抗体である請求項5または10の医薬組成物。
【請求項21】
抗体がキメラまたはヒト化抗体である請求項5または10の医薬組成物。
【請求項22】
抗体が天然の抗体の断片である請求項5または10の医薬組成物。
【請求項23】
抗体が治療薬または診断薬と結合している請求項5または10の医薬組成物。
【請求項24】
アンチセンス核酸が腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチド配列を含む請求項4または10の医薬組成物。
【請求項25】
該医薬組成物によって提供される腫瘍関連抗原またはその部分が、異常量の該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞の表面上でMHC分子に結合する請求項8および10−13のいずれかの医薬組成物。
【請求項26】
結合が細胞溶解性反応を引き起こす、および/または、サイトカイン放出を誘導する、請求項25の医薬組成物。
【請求項27】
さらに医薬上許容される担体および/またはアジュバントを含む請求項1−26のいずれかの医薬組成物。
【請求項28】
アジュバントが、サポニン、GM−CSF、CpG、サイトカインまたはケモカインである請求項27の医薬組成物。
【請求項29】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療に用いられ得る請求項1−28のいずれかの医薬組成物。
【請求項30】
疾患が癌である請求項29の医薬組成物。
【請求項31】
疾患が、肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、メラノーマ、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、ENT腫瘍、腎臓細胞癌または子宮頸癌、結腸癌あるいは乳癌である請求項29の医薬組成物。
【請求項32】
腫瘍関連抗原が、配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項1−31のいずれかの医薬組成物。
【請求項33】
以下を含む腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の診断方法:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の検出、および/または、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の検出、および/または、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に対する抗体の検出、および/または、
(iv)患者から単離された生物学的サンプルにおける腫瘍関連抗原またはその部分に特異的な細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出、ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸を含む核酸配列、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項34】
検出が以下の工程を含む請求項33の方法:
(i)生物学的サンプルと、腫瘍関連抗原をコードする核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、または抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球に特異的に結合する剤とを、接触させる工程、および、
(ii)剤と、核酸またはその部分、腫瘍関連抗原またはその部分、抗体あるいは細胞障害性またはヘルパーTリンパ球との複合体の形成を検出する工程。
【請求項35】
検出を対応する正常生物学的サンプルにおける検出と比較する請求項33または34の方法。
【請求項36】
疾患が2種類以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、検出が、該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の検出、該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分の検出、該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分に対する2以上の抗体の結合の検出、該2種類以上の腫瘍関連抗原に対して特異的な2以上の細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の検出を含む、請求項33−35のいずれかの方法。
【請求項37】
核酸またはその部分が該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて検出される請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項38】
ポリヌクレオチドプローブが、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチドの配列を含む請求項37の方法。
【請求項39】
核酸またはその部分が該核酸または該その部分を選択的に増幅することによって検出される請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項40】
検出すべき腫瘍関連抗原またはその部分がMHC分子との複合体である請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項41】
MHC分子がHLA分子である請求項40の方法。
【請求項42】
腫瘍関連抗原またはその部分が、該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的に結合する抗体を用いて検出される請求項33−36および40−41のいずれかの方法。
【請求項43】
抗体が該抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを用いて検出される請求項33−36のいずれかの方法。
【請求項44】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の退行、経過または発症を判定する方法であって、該疾患を患う患者または該疾患に罹患すると予測される患者からのサンプルを、以下からなる群から選択される1または複数のパラメーターについてモニタリングすることを含む方法:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸の量、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体の量、および、
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な細胞溶解性またはサイトカイン−放出性T細胞の量、
ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項45】
第一の時点での第一のサンプルにおけるパラメーターと第二の時点でのさらなるサンプルにおけるパラメーターとを測定することを含み、疾患の経過を2つのサンプルの比較によって判定する請求項44の方法。
【請求項46】
疾患が2種類以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられ、モニタリングが以下をモニタリングすることを含む、請求項44または45の方法:
(i)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分をコードする2以上の核酸の量、
(ii)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分の量、
(iii)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分に結合する2以上の抗体の量、および/または、
(iv)該2種類以上の腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的な2以上の細胞溶解性またはサイトカイン−放出性T細胞の量。
【請求項47】
核酸またはその部分の量を該核酸または該その部分に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いてモニタリングする、請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項48】
ポリヌクレオチドプローブが腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチドの配列を含む請求項47の方法。
【請求項49】
核酸またはその部分の量が該核酸または該その部分を選択的に増幅することによってモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項50】
腫瘍関連抗原またはその部分の量が該腫瘍関連抗原または該その部分に特異的に結合する抗体を用いてモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項51】
抗体の量が抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを用いてモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項52】
細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の量が、腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体を提示する細胞を用いてモニタリングされる請求項44−46のいずれかの方法。
【請求項53】
ポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質またはペプチドあるいは細胞が検出可能な様式で標識される請求項37−38、42、43、47−48および50−52のいずれかの方法。
【請求項54】
検出可能なマーカーが放射性マーカーまたは酵素マーカーである請求項53の方法。
【請求項55】
サンプルが体液および/または体組織を含む請求項33−54のいずれかの方法。
【請求項56】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法であって、該方法が請求項1−32のいずれかの医薬組成物を投与することを含む方法、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項57】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療、診断またはモニタリング方法であって、該腫瘍関連抗原またはその部分に結合し、治療薬または診断剤と結合した抗体を投与することを含む方法、ここで該腫瘍関連抗原が以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項58】
抗体がモノクローナル抗体である請求項42、50または57のいずれかの方法。
【請求項59】
抗体がキメラまたはヒト化抗体である請求項42、50または57のいずれかの方法。
【請求項60】
抗体が天然の抗体の断片である請求項42、50または57のいずれかの方法。
【請求項61】
以下の工程を含む、腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を有する患者の治療方法:
(i)該患者から免疫反応性細胞を含むサンプルを取り出す工程、
(ii)該サンプルと該腫瘍関連抗原またはその部分を発現する宿主細胞を、該腫瘍関連抗原またはその部分に対する細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生に好適な条件下で接触させる工程、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分を発現する細胞を溶解するのに好適な量の細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞を患者に導入する工程、
ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項62】
宿主細胞が組換えにより腫瘍関連抗原またはその部分に結合するHLA分子を発現する請求項61の方法。
【請求項63】
宿主細胞が腫瘍関連抗原またはその部分に結合するHLA分子を内因的に発現する請求項62の方法。
【請求項64】
以下の工程を含む、腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患を患う患者の治療方法:
(i)該疾患に関連する細胞によって発現される核酸を同定する工程、ここで該核酸は以下からなる群から選択される:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸、
(ii)宿主細胞を該核酸またはその部分でトランスフェクトする工程、
(iii)トランスフェクトされた宿主細胞を該核酸の発現のために培養する工程、および、
(iv)疾患に関連する患者の細胞に対する免疫応答を上昇させるのに好適な量、患者に宿主細胞またはその抽出物を導入する工程。
【請求項65】
腫瘍関連抗原またはその部分を提示するMHC分子を同定する工程をさらに含み、該宿主細胞が同定されたMHC分子を発現し腫瘍関連抗原またはその部分を提示する、請求項64の方法。
【請求項66】
免疫応答がB細胞応答またはT細胞応答を含む請求項64または65の方法。
【請求項67】
免疫応答が腫瘍関連抗原またはその部分を提示する宿主細胞に特異的であるか、または腫瘍関連抗原またはその部分を発現する患者の細胞に特異的である細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生を含むT細胞応答である請求項66の方法。
【請求項68】
宿主細胞が非増殖性である請求項61−67のいずれかの方法。
【請求項69】
以下の工程を含む腫瘍関連抗原の発現または異常発現によって特徴づけられる疾患の治療方法:
(i)異常な量の腫瘍関連抗原を発現する患者からの細胞を同定する工程、
(ii)該細胞のサンプルを単離する工程、
(iii)該細胞を培養する工程、および、
(iv)細胞に対する免疫応答をトリガーするのに好適な量の該細胞を患者に導入する工程、
ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸と相補的な核酸。
【請求項70】
疾患が癌である請求項33−69のいずれかの方法。
【請求項71】
有効量の請求項1−32のいずれかの医薬組成物を投与することを含む、患者における癌の進行の阻害方法。
【請求項72】
腫瘍関連抗原が配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項33−71の方法。
【請求項73】
以下からなる群から選択される核酸:
(a)配列番号3−5からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項74】
配列番号10、および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸、その一部または誘導体。
【請求項75】
請求項73または74の核酸を含む組換えDNAまたはRNA分子。
【請求項76】
ベクターである請求項75の組換えDNA分子。
【請求項77】
ベクターがウイルスベクターまたはバクテリオファージである請求項76の組換えDNA分子。
【請求項78】
核酸の発現を制御する発現制御配列をさらに含む、請求項75−77のいずれかの組換えDNA分子。
【請求項79】
発現制御配列が核酸と同種または異種である請求項78の組換えDNA分子。
【請求項80】
請求項73または74の核酸または請求項75−79のいずれかの組換えDNA分子を含む宿主細胞。
【請求項81】
HLA分子をコードする核酸をさらに含む請求項80の宿主細胞。
【請求項82】
請求項73の核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチド。
【請求項83】
配列番号10、および12−14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチド、その一部または誘導体。
【請求項84】
請求項82または83のタンパク質またはポリペプチドの免疫原性断片。
【請求項85】
ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する請求項82または83のタンパク質またはポリペプチドの断片。
【請求項86】
タンパク質またはポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する剤、ここで該タンパク質またはポリペプチドが以下からなる群から選択される核酸によってコードされる:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項87】
タンパク質またはポリペプチドが配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項86の剤。
【請求項88】
抗体である請求項86または87の剤。
【請求項89】
抗体が、モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体あるいは抗体の断片である請求項88の剤。
【請求項90】
以下の(i)および(ii)の複合体に選択的に結合する抗体:
(i)タンパク質またはポリペプチドまたはその部分、および
(ii)該タンパク質またはポリペプチドまたは該その部分が結合するMHC分子、
ここで該抗体は(i)または(ii)の単独には結合せず、該タンパク質またはポリペプチドは以下からなる群から選択される核酸によってコードされる:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項91】
タンパク質またはポリペプチドが配列番号9−19、45−48、60−66、85、90−97、100−102、105、106、111−116、118、120、123、124、および135−137からなる群から選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む請求項90の抗体。
【請求項92】
モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体あるいは抗体の断片である請求項90または91の抗体。
【請求項93】
請求項86−89のいずれかの剤または請求項90−92のいずれかの抗体と治療薬または診断薬との結合体。
【請求項94】
治療薬または診断薬が毒素である請求項93の結合体。
【請求項95】
以下の検出のための剤を含む腫瘍関連抗原の発現または異常発現を検出するためのキット:
(i)腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸、
(ii)腫瘍関連抗原またはその部分、
(iii)腫瘍関連抗原またはその部分に結合する抗体、および/または、
(iv)腫瘍関連抗原またはその部分とMHC分子との複合体に特異的なT細胞、ここで該腫瘍関連抗原は以下からなる群から選択される核酸によってコードされる配列を有する:
(a)配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、
(b)(a)の核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の核酸と縮重する核酸、および、
(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸。
【請求項96】
腫瘍関連抗原またはその部分をコードする核酸を検出するための剤が、該核酸の選択的増幅のための核酸分子である請求項95のキット。
【請求項97】
核酸の選択的増幅のための核酸分子が、腫瘍関連抗原をコードする核酸の6−50の連続するヌクレオチドの配列を含む、請求項96のキット。
【請求項98】
配列番号1−8、41−44、51−59、84、117、および119からなる群から選択される核酸配列に由来するプロモーター領域を含む組換えDNA分子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図41−14】
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【図41−17】
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【図41−10】
【図41−11】
【図41−12】
【図41−13】
【図41−14】
【図41−15】
【図41−16】
【図41−17】
【公開番号】特開2013−46626(P2013−46626A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228760(P2012−228760)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2010−32059(P2010−32059)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(505186821)ガニュメート・ファーマシューティカルズ・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】GANYMED PHARMACEUTICALS AG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2010−32059(P2010−32059)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(505186821)ガニュメート・ファーマシューティカルズ・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】GANYMED PHARMACEUTICALS AG
【Fターム(参考)】
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