説明

膝裏押圧器

【課題】人の手を借りずに、リラックスした状態で、膝に負担を掛けることなく指圧を受けることができる膝裏押圧器を提供する。
【解決手段】人体の膝の形状に適合する形状に形成され、膝に巻き付けられる帯状体(10)と、帯状体の内側に設けられ、流体の供給および排出により膨張および収縮が行なわれる袋部(16)と、帯状体の内側に向けて突設され、帯状体(10)の巻き付け時に袋部(16)の膨張により膝裏の膝窩動脈を押圧する突起部(15)とが具備されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液循環を促進し、肩こり、不眠や疲労等を軽減する指圧効果を得るための膝裏押圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
膝裏のツボに突起の先端部を宛がって密着させて正座することによって該ツボの経絡を押圧刺激する膝裏ツボ経絡押圧器が開発されている(特許文献1参照)。これは突起の先端部分が膝裏のくぼみにすっぽりはまるように膝を折り曲げて宛がって膝裏のツボ経絡を押圧刺激する押圧器であるが、これは、膝裏ツボ経絡を押圧するものであり、単なる生ゴムの固定バンドによる固定であり押圧箇所が適切に定まらない欠点があった。
【0003】
一方、疲労回復、肩こり、不眠や手足の冷え等の対処方法として、膝裏の膝窩動脈を指圧する、所謂膝裏健康法が知られている。これは、体表を温めるか経脈・経路への温熱刺激による効果によって疲労回復効果を高める温熱治療器、温灸治療器等による健康法と違って、下腿動脈を用いて動脈圧迫刺激により体温上昇による疲労回復効果のみならず、排泄効果、睡眠効果等脳循環への効果があることが知られている。
この膝裏健康法を1人で行なう場合は、片方の膝を真っすぐ伸ばした後、膝窩に指を当て膝窩動脈の拍動を探し、膝窩動脈の位置を見つけ、膝窩動脈を8本の指で所定時間強く押圧し、手を急に離す。この動作を数回繰り返す。(非特許文献1参照)
【0004】
膝裏健康法を2人1組で行なう場合は、先ず、楽な姿勢でうつ伏せになる。しかる後、両手の親指を膝裏に当てて膝窩動脈の拍動を探し、膝窩動脈の位置を見つける。そこに、両手の親指を置き、体重を掛けるようにして、膝窩動脈を真上から所定時間押圧し、急に手を離す。この動作を数回繰り返す。(非特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−314482号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】入間川清子,「血めぐりがみるみるよくなる100のコツ」,株式会社主婦の友社,平成20年6月30日,p.89〜92
【非特許文献2】入間川清子著,「ひざ裏健康法」,株式会社扶桑社,1996年6月30日,p.78〜93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の膝裏健康法を1人で行なう場合は、指圧効果は得られるものの、自らの手で指圧を行なうため、自分自身が体を休め、リラックスしながらの指圧が難しいという事情がある。
【0008】
また、他人の手を借りて行なう場合は、自らは体を休めたリラックスした状態での指圧が可能となるが、他人の手を借りなければならないので、自分が必要のときに指圧を受けられず、他人に負担を掛けてしまう。また、うつ伏せの状態で、膝が押圧されるので、膝のお皿(膝蓋骨)を圧迫し、痛めるという事情がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、膝に負担を掛けることなく膝裏の膝窩動脈を押圧することができる膝裏押圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る膝裏押圧器は、人体の膝に適合する形状に形成され、前記膝に巻き付けられる帯状体(10)と、膝に巻き付けられるとき前記帯状体の内側に設けられ、流体の供給および排出により膨張および収縮が行なわれる袋部(16)と、前記帯状体の内側に向けて突設され、前記帯状体(10)の巻き付け時に前記袋部の膨張により膝窩動脈を押圧する突起部(15)と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
好ましい態様としては、前記袋部(16)は、エアーバックであり、前記エアーバック(16)への空気の供給および前記エアーバックからの空気の排気を制御する制御手段(51)が設けられたことが好ましい。これにより、エアーバックに対する空気の給排気が制御され、突起部による膝窩動脈の押圧力、押圧時間および押圧回数等が制御される。
【0012】
上記態様では、前記制御手段(51)は、前記突起部(15)が膝窩動脈を押圧する押圧力、押圧時間および押圧回数に関する所定のデータを格納したメモリ部(51b)を有することが好ましい。これにより、膝窩動脈は、所定の圧力、時間および回数で押圧され、人の手を借りずに、リラックスした状態で、膝に負担を掛けることなく膝裏の膝窩動脈を押圧することができる。
【0013】
また、上記態様では、前記帯状体(10)の両端部には、面ファスナー(17)が設けられ、前記帯状体の巻き付け後、前記帯状体の両端部が結合されることが好ましい。これにより、帯状体は、膝に容易かつ確実に固定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の膝裏押圧器によれば、帯状体が人の膝に適合する形状に形成され、その内側に袋部が設けられ、該袋部内への流体の供給および該袋部内からの流体の排出により膨張および収縮が行なわれると、帯状体の内側に向けて突設された突起部が袋部の膨張により膝裏の膝窩動脈を押圧し、袋部の収縮によって押圧が緩められるので、膝に負担を掛けることなく、膝窩動脈を押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る手動式膝裏押圧器の平面図である。
【図2】図1に示す膝裏押圧器のA−A断面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る自動式膝裏押圧器の斜視図である。
【図4】図3の膝裏押圧器の制御系を示すブロック図である。
【図5】図3の膝裏押圧器を用いた指圧動作を説明するフローチャートである。
【図6】図3に示す膝裏押圧器の突起部の押圧力と時間の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の膝裏押圧器に係る一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施例において同一部材については同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る膝裏押圧器の平面図を示す。図1に示す膝裏押圧器1は、手動式であり、人体の膝に巻き付けられる帯状体10と帯状体10を加圧する加圧ゴム球20から構成されている。帯状体10は、膝窩の形状および大きさに適合するベース11を有し、このベース11の両側には、バンド12、13が連結されている。本実施例において、帯状体10はポリエステル製であり、加圧ゴム球20はポリ塩化ビニル製である。
【0018】
ベース11の内面(装着したとき脚に向く面)上部には、矩形状の台座14が貼着されている。そして、この台座14上には、図2にその断面図を示すように、円柱形の突起部15が突設され、突起部15の先端部は、膝窩下の膝窩動脈を押圧するのに適宜な大きさの球形状に形成されている。好適には、ゴルフボールの形状および大きさである。
【0019】
突起部15は、ベース11を膝窩に宛がったとき、膝窩動脈上に位置するように設けられており、突起部15が膝窩動脈に容易に位置決めされるようになっている。突起部15は、膝窩動脈の押圧時に心地良さを感じるように、適度に軟質な硬度の硬質ゴム等の弾性部材により形成することができる。
【0020】
バンド12の内側には、弾力性および伸縮性を有するエアーバック(「袋部」に相当する)16が設けられている。このエアーバック16は、排気弁(図示略す)を有する加圧ゴム球20にエアー管30によって接続されている。加圧ゴム球20は、手動操作によりエアーバック16に対する空気の給排気を行ない、エアーバック16の膨張および収縮を行なうものである。
【0021】
バンド12、13の先端部には、面ファスナー17、18がそれぞれ設けられ、帯状体10を膝に巻き付けた際に、面ファスナー17と18とが結合され、帯状体10が膝に容易かつ確実に巻き付け固定されるようになっている。
【実施例2】
【0022】
図3は、本発明の実施例2に係る膝裏押圧器の斜視図を示し、ヒトが左脚の膝部(膝裏)に装着しているところを示す。
図3において、膝裏押圧器2は、自動式であり、膝60に巻き付けされる帯状体40および駆動ボックス50からなる。帯状体40は、そのベース11(図1参照)の内面に巻き付け時の内部圧力を検出することができる圧力センサー(図示略す)を有している。その他の構成は、実施例1の帯状体10と同一なので、その説明を割愛する。
【0023】
図4は、実施例2の膝裏押圧器の制御系を示すブロック図である。駆動ボックス50内には、図4に示すように、制御手段51、操作部52、エアーバック16を膨張させるための空気を供給するエアーポンプ54、空気の給排気を制御する電磁弁55、および突起部15(図1参照)の押圧時間を計測するタイマー56や押圧回数をカウントするカウンター57等が設けられている。
【0024】
制御手段51は、種々のプログラムを有し、このプログラムによって様々な数値計算や情報処理、動作のタイミング等を制御する処理部51aと、突起部15が膝窩動脈を押圧する押圧力、押圧時間および押圧回数等に関する所定のデータを格納したメモリ部51bとを有している。処理部51aには、上述した圧力センサー53からの信号が入り、この信号に基づいて後述するように押圧動作が制御される。
【0025】
図3に戻って、エアーポンプ54と帯状体40のエアーバック(図示略す)はエアー管70によって接続され、駆動ボックス50内にある処理部(図示略す)と帯状体40の圧力センサー(図示略す)はリード線80によって接続されている。また、駆動ボックス50の操作部(図示略す)は、各種操作スイッチを有している。
【実施例3】
【0026】
次に、かかる構成の膝裏押圧器2を用いた押圧動作を図5により説明する。
先ず、帯状体40のベース11を膝窩に宛がう。これにより、該ベース11の内側に突設された突起部15が膝窩動脈上に自動的に位置合わせされる(ステップS1)。その後、帯状体40を膝に巻き付け、膝のお皿の下で、面ファスナー17と18とを相互に結合すると、帯状体40が膝に巻き付け固定される(ステップS2)。
【0027】
次に、エアーポンプ54が作動し、空気がエアーバック16に供給されると、エアーバック16が膨張し、突起部15に押圧力が付与される(ステップS3)。このとき、当該押圧力は、圧力センサー53により検出される。
【0028】
処理部51aは、圧力センサー53による検出結果が、メモリ部51bに格納された所定の押圧力であるか否かを判断する。所定の押圧力でなければ、ステップS3に戻り、所定の押圧力であれば、次のステップS5に進む(ステップS4)。
【0029】
ここで、所定の押圧力は、エアーポンプ54の出力で調節される。たとえば、突起部15の膝窩動脈への押圧力を弱くするため、エアーポンプ54の出力を弱く設定すると、エアーバック16が膨らむまでに時間が掛かり、エアーバック16の膨らみ開始から所定の押圧力が膝窩動脈に加わるまでにタイムラグが生じ、円滑な押圧ができないことがある。
【0030】
そこで、突起部15の押圧力を小さく設定した場合であっても、エアーバック16の膨張開始からの所定時間は、エアーポンプ54の出力を大きくし、途中から設定したポンプ出力で、エアーバック16を膨張させることにより、タイムラグを小さくできる。
【0031】
次に、ステップS5において、突起部15が膝窩動脈を押圧し、このときの押圧時間がタイマー56により計測される。ステップS6において、処理部51aは、カウント結果が所定時間(たとえば3秒間)でないと判断すると、ステップS5に戻る。また、所定の押圧時間であれば、空気を急排気し、エアーバック16を収縮させ(ステップS7)、膝窩動脈の押圧を解除する (ステップS8)。
【0032】
上述した突起部15による膝窩動脈の押圧および押圧解除が数回繰り返され、カウンター57によるカウントが所定回数に達していないと判断されたら、ステップS3に戻り、所定回数に達したと判断されたら(ステップS9)、全行程が終了する。
【0033】
図6は、かかる指圧動作時の突起部15の押圧力と時間の特性図を示す。即ち、突起部15の押圧力は、エアーバック16の膨張に伴って、徐々に上昇し、5秒間で所定の押圧力(たとえば、20〜25Kgw)に達すると、その圧力が所定時間(たとえば、3秒間)保持され、空気の急排気によるエアーバック16の収縮により急激に0Kgwに下降する。そして、このような一連の動作は、5秒間の間隔を置いて所定回数(たとえば、3回)繰り返される。
【0034】
このように、本発明では、膝窩動脈の押圧が、膝裏押圧器1、2を用いて行われるので、膝窩動脈は、人の手を借りずに、リラックスした状態で、膝に負担を掛けることなく押圧され、たとえ、非力な高齢者や女性、指圧の未経験者であっても、一定の指圧効果を期待することができる。
また、膝裏押圧器2において、制御手段51は、最適な圧力、時間および回数で膝窩動脈を押圧するように制御するので、より効果的な指圧が行なわれる。
【0035】
本発明に係る膝裏押圧器は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【0036】
たとえば、上述の実施例では、突起部15は、硬質ゴム等の弾性部材により形成されたが、突起部15の表面のみを、適度に軟質な硬度のゴム材により形成してもよい。また、突起部15は、木製、金属製または合成樹脂製の円錐形に形成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る膝裏押圧器は、被施療者が膝窩動脈の指圧を受けることができる指圧器として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1、2 膝裏押圧器
10、40 帯状体
11 ベース
12、13 バンド
14 台座
15 突起部
16 エアーバック(袋部)
17、18 面ファスナー
20 加圧ゴム球
30、70 エアー管
50 駆動ボックス
51 制御手段
51a 処理部
51b メモリ部
80 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の膝に適合する形状に形成され、膝に巻き付けられる帯状体と、膝に巻き付けられるとき前記帯状体の内側に設けられ、流体の供給および排出により膨張および収縮が行なわれる袋部と、前記帯状体の内側に向けて突設され、前記帯状体の巻き付け時に前記袋部の膨張により膝窩動脈を押圧する突起部と、を具備したことを特徴とする膝裏押圧器。
【請求項2】
前記袋部は、エアーバックであり、前記エアーバックへの空気の供給および前記エアーバックからの空気の排気を制御する制御手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の膝裏押圧器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記突起部が膝窩動脈を押圧する押圧力、押圧時間および押圧回数に関する所定のデータを格納したメモリ部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の膝裏押圧器。
【請求項4】
前記帯状体の両端部には、面ファスナーが設けられ、前記帯状体の巻き付け後、前記帯状体の両端部が結合されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の膝裏押圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63115(P2013−63115A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202153(P2011−202153)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(511225561)
【Fターム(参考)】