説明

自動ファスナ

【課題】 衣服やテントなどに用いられるファスナーを自動的に開閉する小型の自動ファスナを提供する。
【解決手段】 小型モータ30及び小型モータ30により回転駆動されるウォーム歯車34回転すると、ウォーム歯車34はファスナの左右の爪4に係合しているから、ガイド筒24及び自動開閉スライダ21がファスナの係合縁に沿って移動し、ファスナの爪4を互いに係合又は係合解除する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衣服やテントなどに用いられるファスナーを自動的に開閉する小型の自動ファスナに関するものである。
【従来の技術】相対向する布端に多数の爪が設けられ、それらが互いに噛みあうようになったファスナーは従来人手によって開閉されていた。これを自動化するものとしてフアスナの自動開閉装置(特開平1−313002号公報参照)が存在する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】近年、高齢化社会を迎えて高齢者人口が増加しており、各方面において、高齢者が快適な生活を送れるため機器の開発が期待されている。例えば、衣服等の分野についてみれば、四肢の一部に麻痺のある身障者や、関節の屈曲角度に制限のある高齢者などは、衣服の着脱に多大な困難と時間を要する。そこで介護者の助けを借りることになるが、これでは身障者や老人の自立心を損なうことになる。ファスナーが自動的に開閉できれば、よりわずかな時間で衣服の着脱を行うことが可能となり、身障者や高齢者のより積極的な社会参加が期待できる。
【0003】このようなことから、日常着用する衣服等に利用される小型のファスナにおいて自動的に開閉可能なファスナの開発が待たれている。ところで、従来開発された上記フアスナの自動開閉装置は、利用分野として漁網やチューブコンベア等の大型の装置を対象としており、その構造、機構は、衣服やテント等日常の身の回りに使用する小型のものには適していなかった。
【0004】このような、身障者、高齢者用にとどまらず、健常者の衣服の着脱を容易化することも可能であり、さらに手の届かない箇所も自動的に開閉可能なファスナを適用できるようにすることにより、これまでにない自由かつ斬新な発想に基づく衣服のデザインも可能性がでてくる。さらに、テント等に用いれば設営の効率化に寄与できる。
【0005】本発明は、このような目的を達成し、可能性を試みることのできる自動ファスナを実現すること、特に、単純かつコンパクトなメカニズムで自動開閉機能をを有する自動ファスナを実現することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、ファスナのガイド筒に付設され、ファスナの係合縁に沿って走行する自動開閉スライダを備え、該自動開閉スライダが走行することにより上記ファスナが自動的に開閉する自動ファスナであって、上記自動開閉スライダは、小型モータ及び該小型モータにより回転駆動される左右一対の互いに噛み合う歯車を有し、上記左右一対の移動用歯車は、上記ファスナの左右一対の爪列の間に位置し、上記左右一対の爪列の内側において、ファスナの左右の爪に夫々係合するように配設されており、上記左右一対の移動用歯車が回転すると、ガイド筒及び自動開閉スライダはファスナの係合縁に沿って移動するとともに上記一対の爪列を互いに係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とする自動ファスナを提供する。
【0007】さらに、本発明は、上記課題を解決するために、ファスナのガイド筒に付設され、ファスナの係合縁に沿って走行する自動開閉スライダを備え、該自動開閉スライダが走行することにより上記ファスナが自動的に開閉する自動ファスナであって、上記自動開閉スライダは、小型モータ及び該小型モータにより回転駆動されるウォーム歯車を有し、該ウォーム歯車は、上記ファスナの左右一対の爪列の間に位置し、上記左右一対の爪列の内側において、ファスナの左右の爪に夫々係合するように配設されており、上記ウォーム歯車が回転すると、ガイド筒及び自動開閉スライダはファスナの係合縁に沿って移動するとともに上記一対の爪列を互いに係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とする自動ファスナを提供する。
【0008】さらに、本発明は、上記課題を解決するために、ファスナのガイド筒に付設され、ファスナの係合縁に沿って走行する自動開閉スライダを備え、該自動開閉スライダが走行することにより上記ファスナが自動的に開又は閉する自動ファスナであって、上記自動開閉スライダは、振動子、該振動子により振動する左右一対の摩擦板及び左右一対の摩擦板に対応した押さえ片を有し、該左右一対の摩擦板は、夫々その内面にガイドがスライドする方向のうち一方向に向けられて傾斜し、ファスナの布縁に当接する多数の摩擦突片が取り付けられており、上記左右一対の押さえ片は、上記一対の摩擦板に対応して布縁の裏面から押さえるものであり、上記左右一対の摩擦板が振動すると、上記ガイド筒及び自動開閉スライダはファスナの係合縁に沿って上記一方向と反対方向に移動するとともに上記一対の爪列を互いに係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とする自動ファスナを提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】(実施例1)本発明に係る自動ファスナの実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る自動ファスナの実施例1を説明する図である。図1(a)は自動ファスナ1の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。左右の布片2の夫々の側縁に複数の爪3から成る爪列が取り付けられファスナ4が構成されている。このファスナ4を自動開閉スライダ5により開閉することができる。
【0010】自動開閉スライダ5は、外壁6、内壁7及び側壁等から内部に空間8の形成されたガイド筒9を備えている。ガイド筒9は、基体ガイド部10及び二股ガイド部11から成るY字状のガイド部12を備え、さらに、二股ガイド部11の間に中央スペース部13を備えている。基体ガイド部10及び二股ガイド部11の夫々の端部は開口している。自動開閉スライダ5を図1(a)で上方に移動することで、このガイド筒9の二股ガイド部11の夫々に、左右の布片2の爪列が挿入され、基体部ガイド部12内でで左右の爪列が互いに係合し、ファスナが閉じられるように構成されている。
【0011】中央スペース部13内に、外壁6及び内壁7に左右一対の回転軸14が回転可能に取り付けられている。この左右の回転軸14に固定され、かつ互いに噛み合う左右一対の移動用歯車15、15’が中央スペース部13内に配設されている。右側の回転軸14の先端にはさらに中間歯車16が固定されており、この中間歯車16は、内壁7を隔てて配設されている。
【0012】自動開閉スライダ5の上端部には、小型モータ17及びその電源としての電池18が配設されており、モータ17の出力軸19には出力歯車20が取り付けられている。この出力歯車20は中間歯車16と噛み合って配設されている。モータ17は、リモートラインの先にスイッチを付設したリモートスイッチ、あるいは電波によりオン・オフするリモートスイッチ等、使用者に操作しやすいスイッチにより制御される。
【0013】以上の構成から成る実施例1に係る自動ファスナ1の作用を説明する。モータ17のスイッチをオンにして、図1(a)において、モータ17を駆動し、出力歯車20、中間歯車16を介して右側移動用歯車15’を時計方向に、左側移動用歯車15を反時計方向に回転させる。すると、自動開閉スライダ5は、上方に移動しながら、ファスナ4の左右一対の爪列を互いに係合しファスナ4を自動的に閉じることができる。モータ17を逆転することにより、移動用歯車15を逆転させ、自動開閉スライダ5は下方に移動し、ファスナ4を自動的に開くことができる。
【0014】(実施例2)次に本発明に係る自動ファスナの実施例2を図2において説明する。図2(a)は、実施例2に係る自動ファスナの平面図であり、図2(b)は、分解斜視図である。左右の布片2の夫々の側縁に複数の爪3から成る爪列が取り付けられファスナ4が構成されている。このファスナ4を自動開閉スライダ21により開閉することができる。
【0015】自動開閉スライダ21は、図2(b)に示すように、上下の半割殻体22、23から内部に空間の形成されたガイド筒24を備えている。ガイド筒24は、基体ガイド部25及び二股ガイド部26とから成るY字状のガイド部27を備え、さらに、二股ガイド部26の間に中央スペース部28を備えている。基体ガイド部25及び二股ガイド部26の夫々の端部は開口している。自動開閉スライダ21を図2(a)で上方に移動することで、このガイド筒24の二股ガイド部26の夫々に、左右の布片2の爪列が挿入され、基体ガイド部25で左右の爪列が互いに係合し、ファスナ4が閉じられるように構成されている。
【0016】下部半殻体23の中央スペース部28内に、電池29、モータ30、減速器31、軸受32で支持された回転軸33及びウォーム歯車34が図2(b)に示すように配設されている。モータ30の出力が減速器31を介して回転軸33を減速回転する。この回転軸33にウォーム歯車34が取り付けられている。ウォーム歯車34は、ファスナ4の左右の爪列に噛み合うように構成されている。なお、ウォーム歯車34の代わりに鋼線を螺旋に爪のピッチと一致するよう巻いたものを利用しても良い。
【0017】以上の構成から成る実施例2に係る自動ファスナの作用を説明する。実施例1同様に、スイッチをオンしてモータ30を駆動すると、減速器31を回転軸33及びウォーム歯車34が矢印方向に回動する。ウォーム歯車34は、ファスナ4の左右の爪列に噛み合っているから、ウォーム歯車34が回動すると、自動開閉スライダ21は、図2(a)において、上方に移動し、ファスナ4を自動的に閉じる。モータ30を逆転させると、ウォーム歯車34も逆転して、自動開閉スライダ21は下方に移動しファスナ4を自動的に開くことができる。
【0018】(実施例3)次に本発明に係る自動ファスナの実施例3を図3において説明する。図3(a)は、実施例3に係る自動ファスナの平面図であり、図3(c)は、そのB−B断面図である。左右の布片2の夫々の側縁に複数の爪3から成る爪列が取り付けられファスナ4が構成されている。このファスナ4を自動開閉スライダ35により開又は閉じることができる。
【0019】実施例3に係る自動開閉スライダ35は、周知のY字状のガイド筒36を備えており、このガイド筒36の移動によりファスナ4の開閉が行われる。この自動開閉スライダ35は、ガイド筒36の外表面に橋絡板37が固着されている。橋絡板37の中央部上には振動子38及び振動子38の電源となる電池39が取り付けられている。振動子38は、電磁的手段40等により電気的に振動される手段で構成され、実施例1同様に、リモースイッチをオンとして電源に接続され、ファスナ4の取り付けられた布片4に沿う方向に振動する。
【0020】橋絡板37の左右側端には、夫々摩擦板41が布片2に沿う方向に取り付けられている。この摩擦板41は、その内面に布片に当接するように複数の摩擦突片42が並設されている。この複数の摩擦突片42全て、ファスナ4の長手方向について一方向(図3(b)の下方)に向けて斜めに取り付けられている。自動開閉スライダ35のガイド筒36の裏面に、押さえ板43が取り付けられており、その両側部が、左右の摩擦板41に対向して布片2を裏側から受けて押さえられるように配設されている。
【0021】以上の構成から成る実施例3に係る自動ファスナの作用を説明する。スイッチをオンとして振動子38を駆動する。すると、振動子38は布片2に沿って振動し、摩擦突片42が布片2と係合かつ図3(a)中上方へのスライドを繰り返す。これによって、自動開閉スライダ35全体が、摩擦突片42の傾斜して先端が向かっている方向とは逆方向(図3(b)の上方)にスライドして移動していく。
【0022】以上本発明に係る自動ファスナの実施の形態を実施例1〜3に基づいて説明したが、本発明は、特にこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内でその他いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【0023】
【発明の効果】発明は以上の構成であるから、単純かつコンパクトなメカニズムの自動ファスナを提供することができ、高齢者、身障者にとってファスナの開閉作業に伴う苦痛を解放することができ、高齢化社会を迎えて、高齢者等の快適な生活のための一助をとなる。
【0024】身障者、高齢者にとどまらず、健常者の衣服の着脱を容易化するととに、自動ファスナの機能を積極的にを衣服に適用することで、これまでにない自由かつ斬新な発想に基づく衣服のデザインをする可能性となる。さらに、テント等に用いれて、設営の効率化に寄与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る自動ファスナの実施例1を説明する図であり、図1(a)は自動ファスナの平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る自動ファスナの実施例2を説明する図であり、図2(a)は自動ファスナの平面図であり、図2(b)は、斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係る自動ファスナの実施例3を説明する図であり、図3(a)は自動ファスナの平面図であり、図3(b)はガイド筒内部の状態を示す図であり、図3(c)は、図3(a)のB−B断面図である。
【符号の説明】
1 自動ファスナ
2 布片
3 爪
4 ファスナ
5、21、35 自動開閉スライダ
9、24 ガイド筒
12 ガイド部
14 回転軸
15、15’ 左右の移動用歯車
16 中間歯車
17、30 小型モータ
18、29、39 電池
20 出力歯車
21
27、36 Y字状ガイド部
31 減速器
34 ウォーム歯車
38 振動子
41 摩擦板
42 摩擦突片
43 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ファスナのガイド筒に付設され、ファスナの係合縁に沿って走行する自動開閉スライダを備え、該自動開閉スライダが走行することにより上記ファスナが自動的に開閉する自動ファスナであって、上記自動開閉スライダは、小型モータ及び該小型モータにより回転駆動される左右一対の互いに噛み合う歯車を有し、上記左右一対の移動用歯車は、上記ファスナの左右一対の爪列の間に位置し、上記左右一対の爪列の内側において、ファスナの左右の爪に夫々係合するように配設されており、上記左右一対の移動用歯車が回転すると、ガイド筒及び自動開閉スライダはファスナの係合縁に沿って移動するとともに上記一対の爪列を互いに係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とする自動ファスナ。
【請求項2】 ファスナのガイド筒に付設され、ファスナの係合縁に沿って走行する自動開閉スライダを備え、該自動開閉スライダが走行することにより上記ファスナが自動的に開閉する自動ファスナであって、上記自動開閉スライダは、小型モータ及び該小型モータにより回転駆動されるウォーム歯車を有し、該ウォーム歯車は、上記ファスナの左右一対の爪列の間に位置し、上記左右一対の爪列の内側において、ファスナの左右の爪に夫々係合するように配設されており、上記ウォーム歯車が回転すると、ガイド筒及び自動開閉スライダはファスナの係合縁に沿って移動するとともに上記一対の爪列を互いに係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とする自動ファスナ。
【請求項3】 ファスナのガイド筒に付設され、ファスナの係合縁に沿って走行する自動開閉スライダを備え、該自動開閉スライダが走行することにより上記ファスナが自動的に開又は閉する自動ファスナであって、上記自動開閉スライダは、振動子、該振動子により振動する左右一対の摩擦板及び左右一対の摩擦板に対応した押さえ片を有し、該左右一対の摩擦板は、夫々その内面にガイドがスライドする方向のうち一方向に向けられて傾斜し、ファスナの布縁に当接する多数の摩擦突片が取り付けられており、上記左右一対の押さえ片は、上記一対の摩擦板に対応して布縁の裏面から押さえるものであり、上記左右一対の摩擦板が振動すると、上記ガイド筒及び自動開閉スライダはファスナの係合縁に沿って上記一方向と反対方向に移動するとともに上記一対の爪列を互いに係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とする自動ファスナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−269203(P2001−269203A)
【公開日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−86969(P2000−86969)
【出願日】平成12年3月27日(2000.3.27)
【出願人】(301000011)経済産業省産業技術総合研究所長 (7)
【Fターム(参考)】