説明

自動二輪車の転倒検出装置

【課題】自動二輪車が転倒したことを確実に検出できる転倒検出装置を提供する。
【解決手段】自動二輪車の車体の傾斜角が判定基準角度以上であることを検出する過大傾斜角検出手段2と、自動二輪車を駆動する原動機の回転速度を調節するスロットルの開度が設定された判定基準開度以下であることを検出するアクセル絞り操作検出手段3と、過大傾斜角検出手段2により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル絞り操作検出手段3によりスロットルの開度が判定基準開度以下であることが検出されているときに自動二輪車が転倒したことを検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車が転倒したことを検出する自動二輪車の転倒検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、自動二輪車が事故を起こして転倒したときに、後続車が事故に巻き込まれるのを防ぐために、事故が発生したことを検出する転倒検出装置を自動二輪車の車体に搭載して、該転倒検出装置が事故の発生を検出したときに、自動的にハザードランプを点滅させて後続車に事故を知らせることが提案されている。
【0003】
また事故で怪我をした乗員の救出を速やかに行わせたり、交通規制を的確に行わせたりするために、特許文献2に示されているように、転倒事故が発生したことを検出する検出装置を二輪車に搭載して、この検出装置により、転倒事故の発生が検出されたときに、事故車を特定するためのID情報や、GPSを利用して取得した事故発生地点の位置情報を含む信号を、無線通信網や電話通信網などを通して警察、消防署、或いは道路の管理センター等に送信するシステムを構築することが考えられている。
【0004】
特許文献1に記載された転倒検出装置においては、二輪車の車体の傾斜角を検出して、検出された傾斜角が一定値を超えたときに、車体が転倒したことを検出するようにしている。
【0005】
また特許文献2には、自動二輪車の転倒を検出する方法として、以下の方法が記載されている。
(a)保護体の内部に銅線を埋設した検出手段を二輪車の転倒時に地面に接する箇所に取付けておいて、転倒時に検出手段の保護体を破壊させることにより、その内部の銅線を断線させて事故を検出する方法。
(b)二輪車のサスペンションが延び切ったときに検出動作を行う転倒検出スイッチをサスペンションに取付けておいて、二輪車が転倒してそのサスペンションが延びきったときに転倒検出スイッチを動作させることにより転倒を検出する方法。
(c)二輪車の横方向に近接して物体が存在するときに検出動作を行う距離センサを車体に搭載しておいて、該距離センサが検出動作を行ったときに、該距離センサが地面を検出したものと判定して、転倒を検出する方法。
(d)二輪車の車速が急激に低下したときに車体が転倒したと判定する方法。
(e)二輪車の走行方向を検出する手段を設けて、走行方向が短時間の内に所定角度以上変化したときに転倒事故が発生したと判定する方法。
(f)エンジンキーのキーシリンダを脱落可能に設けるとともにこのキーシリンダの脱落を検出する手段を設けて、エンジンキーを運転者の体に紐で連結しておき、キーシリンダが脱落したことが検出されたときに転倒事故が発生したと判定する方法。
(g)ハンドルグリップやシート等、運転者が搭乗しているときに圧力が作用する箇所にその圧力を検出する圧力センサを設けておいて、該圧力センサが圧力を検出しなくなったときに転倒が発生したと判定する方法。
【特許文献1】特開2000−313381号公報
【特許文献2】特開2001−30971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された前記(a)の方法による場合には、二輪車が転倒した際に必ず検出手段が地面に接触するようにしておく必要があるが、二輪車が如何なる姿勢で転倒した場合でも、検出手段が地面に接触するようにしておくことは困難である。従って、この方法によった場合は、二輪車の転倒を確実に検出することは難しい。
【0007】
特許文献2に記載された(b)の方法によった場合には、通常は転倒の検出を行うことが可能であるが、車体が転倒時にサスペンションが破損して延びない状態にされたときに、転倒の検出を行うことができないという問題がある。
【0008】
特許文献2に記載された(c)の方法による場合、転倒した際に距離センサが地面に接近した状態にならないと、転倒を検出することができない。車両が如何なる姿勢で転倒した場合でも距離センサが地面を至近距離で検出するように、距離センサを取り付けておく必要があるが、このように構成するためには、多くの距離センサを設けておくことが必要であり、コストが高くなるのを避けられない。
【0009】
特許文献2に記載された(d)の方法による場合には、車両が急ブレーキをかけた際に反応しないようにしておく必要があるため、車速の低下割合を的確に設定することが難しい。また二輪車が何かに衝突して転倒した場合には、車速が急激に低下するが、二輪車がスリップして転倒した場合には、転倒した後も車輪が回転していることがあるため、車速の低下割合のみから二輪車の転倒を確実に検出することは難しい。
【0010】
特許文献2に記載された(e)の方法による場合には、二輪車が凍結した道路で発進時にスピンして向きを変えたような場合に、転倒に至らなくても転倒したとの誤検出が行われるおそれがある。
【0011】
特許文献2に記載された(f)の方法による場合には、運転者が搭乗する際にキースイッチを自分の体に連結しておくのを忘れた場合に、転倒を検出することができないという問題が生じる。
【0012】
特許文献2に記載された(g)の方法によった場合には、運転者がハンドルから手を離したり、悪路を走行する際に腰を浮かして運転したりした際に、二輪車が転倒したとの誤った判定がされるおそれがある。
【0013】
上記のように、従来提案されている種々の転倒検出方法は、二輪車の転倒を確実に検出できる方法とは言い難い面があった。二輪車の転倒をハザードランプの点滅により後続車に知らせるだけでよい場合には、二輪車が転倒していないにもかかわらず、転倒したとの誤検出がたまに行われても大きい問題にはならないが、転倒事故が発生したことを、事故車のID情報や位置情報とともに警察や消防署、或いは道路管理センター等に報知するシステムにおいては、誤検出が行われると無用の混乱を招くことになるので、二輪車の転倒の検出を可能な限り正確に行うことができるようにしておくことが必要である。
【0014】
特許文献1に示されたように、車体の傾斜角を検出して、検出された傾斜角が所定の大きさ以上になったときに転倒事故が発生したと判定するようにすれば、上記のような諸問題は発生せず、自動二輪車の転倒事故を比較的正確に検出することができる。しかし、特許文献1に示されているように、単に車体の傾斜角のみを検出して、検出した傾斜角が一定値を超えたときに転倒事故が発生したと判定するようにした場合には、バンクやオフロードを走行している状態で、車体が大きく傾いたときに、転倒したとの誤った判定がされるおそれがあり、好ましくない。
【0015】
本発明の目的は、自動二輪車が転倒事故を起こしたことを従来よりも正確に検出することができるようにした自動二輪車の転倒検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、自動二輪車が転倒したことを検出する転倒検出装置に係わるものである。本発明に係わる転倒検出装置は、自動二輪車の走行中にその車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、自動二輪車の走行速度を調節する際に操作されるアクセルの開度が設定された判定基準開度以下になったことを検出するアクセル絞り操作検出手段とを備え、過大傾斜角検出手段により自動二輪車の走行中に車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル絞り操作検出手段によりアクセルの開度が判定基準開度以下になったことが検出されたときに自動二輪車が転倒したことを検出するように構成されている。
【0017】
本発明において、車体の傾斜角は、自動二輪車の後輪の中心軸線と直交する平面が沿直面に対してなす角度を意味する。
【0018】
本発明において、「アクセル」は自動二輪車の走行速度を調節する際に操作される部材で、通常は、ハンドルグリップがアクセルとして用いられる。アクセルの開度(車速を零とする時の位置からの変位量)は、アクセルの変位を検出するアクセル開度センサを設けて、該アクセル開度センサにより直接検出するようにしてもよく、アクセルの変位に対応して変位する他の部材の変位を検出することにより、間接的に検出するようにしてもよい。
【0019】
自動二輪車を駆動する原動機がエンジンである場合には、多くの場合、エンジンのスロットル開度を制御するために、スロットル開度を検出するスロットルセンサがスロットルボディに取付けられる。スロットル開度はアクセルの開度に対応しているため、スロットルセンサが設けられている場合には、コストの上昇を防ぐために、アクセルの開度を検出するセンサを特に設けずに、スロットルセンサの出力信号からアクセルの開度を検出するようにするのが好ましい。
【0020】
自動二輪車に電子制御スロットルが用いられる場合のように、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサとの双方が設けられる場合には、いずれのセンサからアクセルの開度の情報を得ても良い。
【0021】
自動二輪車を駆動する原動機が電動機である場合には、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサを設けて、このセンサの出力信号からアクセルの開度を検出するようにする。
【0022】
上記判定基準角度は、車体の転倒を検出するために適した角度、例えば通常走行時に転倒せずに車体が取り得る最大傾斜角よりも大きい角度に設定しておく。また上記アクセルの判定基準開度は、バンク走行時のように車体を大きく傾斜させて走行する際に、転倒することなく走行状態を維持するために必要なアクセルの開度よりも小さい開度に設定しておく。通常は、アクセルの判定基準開度を、走行停止時の開度、即ち、原動機がエンジンである場合にはアイドリング運転時の開度(開度=0)、原動機が電動機である場合には電動機を停止させる際の開度(開度=0)に設定しておけばよい。
【0023】
上記のように、自動二輪車の走行中に、車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、アクセルの開度が設定された判定基準開度以下になったことを検出するアクセル絞り操作検出手段とを設けて、走行中に過大傾斜角検出手段により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル絞り操作検出手段によりアクセルの開度が判定基準開度以下になったことが検出されたときに自動二輪車が転倒したことを検出するように構成すると、車体が傾いただけでは、転倒事故の検出は行われず、自動二輪車が走行中に転倒して、運転者が投げ出されるなどして、アクセルから手を離したときに初めて転倒事故が検出されるので、バンク走行時や、オフロード走行時に車体が大きく傾いた状態を誤って転倒状態と判定して誤検出を行うおそれをなくすことができ、自動二輪車の転倒事故の検出を正確に行うことができる。
【0024】
自動二輪車を駆動する原動機がエンジンである場合、アクセル絞り操作検出手段は、エンジンのスロットル開度を検出するスロットルセンサと、スロットルセンサから得られるスロットル開度検出信号の大きさを基準値と比較することによりアクセルの開度が判定基準角度以下であるか否かを判定するアクセル開度判定手段とを備えた構成とすることができる。
【0025】
自動二輪車を駆動する原動機が電動機である場合、上記アクセル絞り操作検出手段は、アクセルの変位量を検出するアクセルセンサと、アクセルセンサから得られる検出信号の大きさを基準値と比較することによりアクセルの開度が判定基準角度以下であるか否かを判定するアクセル開度判定手段とを備えた構成とすることができる。
【0026】
また上記アクセル絞り操作検出手段は、アクセルの開度が判定基準開度以下になっているときにオン状態またはオフ状態を保持することにより、アクセルの開度が判定基準開度以下になっていることを検出するアクセル開度検出スイッチにより構成することもできる。このアクセル開度検出スイッチは、例えば、アクセルの開度が判定基準開度以下になったときに、アクセル(ハンドルグリップ)の一部に設けられた突起により駆動されてオン動作またはオフ動作する機械的スイッチや、アクセルの開度が判定基準開度以下になったときにアクセルの一部に取り付けられた磁石により駆動されてオン動作またはオフ動作をするリードスイッチにより構成することができる。
【0027】
本発明の他の好ましい態様では、本発明に係わる転倒検出装置が、自動二輪車の車体の傾斜角が設定された判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、自動二輪車の走行速度を調節する際に操作されるアクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、アクセル開度センサの出力の大きさが一定値以下になっている状態が設定された時間継続したときにアクセルが一定時間操作されていないと判定するアクセル操作停止判定手段とを備えていて、自動二輪車の走行中に過大傾斜角検出手段により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル操作停止判定手段によりアクセルが一定時間操作されていないと判定されたときに自動二輪車が転倒したことを検出するように構成される。
【0028】
自動二輪車が転倒したときには、運転者が投げ出される等してアクセルから手を離すか、アクセルから手を離さないにしても、アクセルを操作できない状態になるのが普通であるため、アクセルは操作されない状態になる。従って、上記のように構成した場合にも、自動二輪車が転倒したことを確実に検出することができる。
【0029】
前述のように、走行中に車体の傾斜角が判定基準角度以上になり、かつアクセルの開度が判定基準開度以下になったときに二輪車が転倒したことを検出するようにした場合には、二輪車が転倒する際にハンドルグリップが破壊する等してアクセルの開度が判定基準開度よりも大きい開度でロックした場合に、二輪車の転倒を検出することができないが、上記のように、走行中に車体の傾斜角が判定基準角度以上になり、かつアクセルが一定時間操作されないことが検出された場合に二輪車が転倒したことを検出するようにした場合には、アクセルの開度が判定基準開度よりも大きい開度でロックした場合(アクセルの位置が走行時の位置にロックされた場合)でも、二輪車が転倒したことを検出することができる。従って、上記のように構成した場合には、二輪車の転倒を更に確実に検出することができる。
【0030】
上記過大傾斜角検出手段は、自動二輪車の車体の傾斜角に相応した検出信号を発生する傾斜角センサと、傾斜角センサが発生している検出信号の大きさを判定基準角度に相応する値に設定された判定値と比較して、検出信号の大きさが該判定値以上になったときに車体の傾斜角が判定基準角度以上であると判定する傾斜角判定手段とにより構成できる。
【0031】
上記過大傾斜角検出手段はまた、自動二輪車の車体の傾斜角の変化に応じて出力信号の大きさが変化する向きにして車体に取付けられた加速度センサと、加速度センサの出力信号から得られる車体の傾斜角の情報を用いて、車体の傾斜角が判定基準角度以上であるか否かを判定する傾斜角判定手段とを備えた構成とすることができる。
【0032】
この場合、傾斜角判定手段は、加速度センサの出力信号の大きさそのものを所定の判定値と比較することにより、車体の傾斜角が判定基準角度以上であるか否かを判定する比較手段により構成してもよく、加速度センサの出力から車体の傾斜角を演算する傾斜角演算手段と、傾斜角演算手段により演算された傾斜角を前記判定基準角度と比較する比較手段とにより構成してもよい。
【0033】
上記過大傾斜角検出手段はまた、自動二輪車の車体の傾斜角が判定基準角度以上になっているときにオン状態またはオフ状態を保持することにより車体の傾斜角が判定基準角度以上であることを検出する機械的な傾斜角検出スイッチにより構成することができる。
【0034】
上記のような傾斜角検出スイッチとしては、例えば、振り子と、車体の傾きが零であるときに振り子との間の角度間隔が判定基準角度に等しくなるようにして、振り子の両側の対称位置に配置された一対のリミットスイッチとを備えて、車体の傾斜角が判定基準角度に達したときに振り子が一対のリミットスイッチの内のいずれかに接触して該リミットスイッチを動作させるようにしたものを用いることができる。
【0035】
傾斜角検出スイッチとして上記のような機械的な検出スイッチを用いる場合には、振動により誤検出が起こるのを防ぐために、該検出スイッチが一定時間動作状態(オン状態またはオフ状態)を継続したときに車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことの検出を行うように検出信号の処理回路を構成しておくのが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
上記のように、本発明においては、自動二輪車の走行中に、車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、アクセルの開度が設定された判定基準開度以下になったことを検出するアクセル絞り操作検出手段とを設けて、走行中に過大傾斜角検出手段により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル絞り操作検出手段によりアクセルの開度が判定基準開度以下になったことが検出されたときに自動二輪車が転倒したと判定するようにしたので、車体が傾いただけでは、転倒事故の検出は行われず、自動二輪車が走行中に転倒して、運転者が投げ出されるなどして、アクセル操作を止めたときに初めて転倒事故が検出される。従って、バンク走行時や、オフロード走行時に車体が大きく傾いた状態を誤って転倒状態と判定して誤検出を行うおそれをなくすことができ、自動二輪車の転倒事故の検出を正確に行うことができる。
【0037】
また本発明において、自動二輪車の走行中にその車体の傾斜角が設定された判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、自動二輪車の走行速度を調節する際に操作されるアクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、アクセル開度センサの出力の大きさが一定値以下になっている状態が設定された時間継続したときにアクセルが一定時間操作されていないと判定するアクセル操作停止判定手段とを設けて、自動二輪車の走行中に過大傾斜角検出手段により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル操作停止判定手段によりアクセルが一定時間操作されていないと判定されたときに自動二輪車が転倒したことを検出するように構成した場合には、転倒時に運転者がアクセル操作を止めたときに転倒事故を検出することができるのはもちろん、転倒時にアクセルの開度が判定基準開度よりも大きい開度でロックした場合でも、二輪車が転倒したことを検出できるので、二輪車の転倒を更に確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の構成を概略的に示したブロック図で、本実施形態では、自動二輪車を駆動する原動機がエンジン(内燃機関)であるとする。図1において、1は本発明に係わる転倒検出装置で、この転倒検出装置は、自動二輪車の走行中にその車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段2と、自動二輪車の走行速度を調節する際に操作されるアクセルの開度が設定された判定基準開度以下になったことを検出するアクセル絞り操作検出手段3とを備えている。
【0039】
過大傾斜角検出手段2は、自動二輪車が走行中にその車体の傾斜角を検出する傾斜角センサ4と、傾斜角センサ4が発生する検出信号の大きさを判定基準角度を与える基準信号の大きさと比較する傾斜角判定手段5とを備えている。傾斜角判定手段5は、傾斜角センサにより検出された傾斜角が判定基準角度以上になったときに、車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する。判定基準角度は、例えば通常走行時に転倒せずに車体が取り得る最大傾斜角よりも大きい角度に設定されている。
【0040】
傾斜角判定手段5は、自動二輪車に搭載されるECU内のマイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより構成してもよく、傾斜角センサ4の出力信号と判定基準角度に相応する大きさの判定値を与える基準信号とを比較して、両信号の大小関係に応じて出力電圧のレベルを変化させる電圧比較器を用いて構成しても良い。
【0041】
またアクセル絞り操作検出手段3は、エンジンのスロットル開度を検出するためにスロットルボディに取り付けられたスロットルセンサ6と、スロットルセンサ6が発生しているスロットル開度検出信号の大きさを判定基準開度を与える基準信号の大きさと比較するアクセル開度判定手段7とを備えている。アクセル開度判定手段7は、スロットル開度検出信号の大きさが判定基準開度を与える基準信号の大きさ以下になったときに、アクセルの開度が判定基準角度以下になったことを検出する。アクセルの判定基準開度は、バンク走行時のように車体を大きく傾斜させて走行する際に、転倒することなく走行状態を維持するために必要なアクセルの開度よりも小さい開度に設定されている。
【0042】
アクセル開度判定手段7は、ECU内のマイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより構成してもよく、スロットルセンサ6の出力信号とアクセルの判定基準開度に相当する大きさの判定値を与える基準信号とを比較して、両信号の大小関係に応じて出力電圧のレベルを変化させる電圧比較器を用いて構成しても良い。
【0043】
図1において、8は車体の傾斜角が判定基準角度以上になっていることと、アクセルの開度が判定基準開度以下になっていることとの2つの条件が共に成立しているか否か(アンド条件が成立しているか否か)を判定するアンド条件判定手段を示しており、転倒検出装置1は、上記アンド条件が成立したとき、即ち、過大傾斜角検出手段2により自動二輪車の走行中に車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル絞り操作検出手段3によりアクセルの開度が判定基準開度以下になったことが検出されたときに、自動二輪車が転倒したことを検出するように構成されている。
【0044】
また図1において9はエンジンの気筒に取り付けられた点火プラグ10に点火用の高電圧Vhを印加して点火動作を行わせる点火装置、11はエンジンの吸気管などに取り付けられたインジェクタ12に駆動電圧Vjを与えて該インジェクタから燃料を噴射させる燃料噴射装置である。
【0045】
点火装置9は、一次コイル及び二次コイルを有する点火コイルと、点火コイルの一次電流を制御する点火制御用のスイッチと、エンジンの点火時期に点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせるように点火制御用スイッチを制御する点火制御部とを備えた公知の装置である。点火装置9としては、コンデンサ放電式の点火装置や、電流遮断型の点火装置が知られているが、本発明では、いずれの形式の点火装置を用いても良い。
【0046】
コンデンサ放電式の点火装置は、点火コイルの一次側に設けられた点火用コンデンサと、このコンデンサを充電するコンデンサ充電回路と、オン状態になった時に点火用コンデンサに蓄積された電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させるように設けられた点火制御用スイッチと、エンジンの点火時期に点火制御用スイッチにトリガ信号を与えて該点火用スイッチをオン状態にする点火制御部とを備えた点火装置である。この点火装置においては、点火用コンデンサの放電により点火コイルの一次コイルに高い電圧を誘起させ、この電圧を点火コイルの昇圧比により更に昇圧することにより、点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧Vhを誘起させて、点火プラグで火花放電を生じさせる。
【0047】
電流遮断形の点火装置は、点火コイルと、点火電源から点火コイルの一次コイルを通して流す一次電流をオンオフするように設けられた点火制御用スイッチと、エンジンの点火時期よりも進んだタイミングで点火コイルに一次電流を流し、エンジンの点火時期に該一次電流を遮断するように点火制御用スイッチに制御信号を与えるを点火制御部とを備えた点火装置である。この点火装置においては、点火コイルの一次コイルに流しておいた一次電流を遮断することにより、点火コイルの一次コイルに高い電圧を誘起させ、この電圧を点火コイルの昇圧比により更に昇圧することにより、点火コイルの二次コイルに点火用高電圧Vhを誘起させる。
【0048】
燃料噴射装置11は、エンジンの回転速度やスロットル開度等の各種の制御条件に応じて、エンジンの気筒に供給する混合気の空燃比を適正な値に保つために必要な燃料噴射量を演算する燃料噴射量演算手段と、燃料噴射タイミングを検出する燃料噴射タイミング検出手段と、燃料噴射タイミングが検出された時に燃料噴射量に相応した信号幅を有する噴射指令信号を発生する噴射指令発生手段と、噴射指令が与えられている間インジェクタ12に駆動電圧Vjを与えるインジェクタ駆動回路とを備えている。インジェクタ12には常時一定の圧力で燃料が供給されていて、インジェクタ12に所定レベル以上の駆動電圧が与えられている間、インジェクタ12からエンジンの吸気管内や気筒内などに燃料が噴射される。
【0049】
傾斜角センサ4としては、ケース内に封入された液状の誘電体と、該誘電体を間にして相対する電極とを備えて電極間に静電容量を生じる検出部と、検出部が傾斜したときに液状誘電体の液面の傾斜に伴って生じる静電容量の変化を傾斜角に比例した信号に変換する電子回路とを備えた静電容量式のもの、加速度センサを用いたもの、或いは、検出対象の傾斜角に相応した変位を生じるように支持された錘を備えた検出部と、検出部内の錘の変位を電気信号に変換する適宜のトランスデューサとを備えたもの等がある。本発明において用いる傾斜角センサは、自動二輪車の車体に取り付けるのに適した大きさと、自動二輪車の転倒時のショックにも耐え得る機械的強度とを有して、自動二輪車の車体の傾斜角に相応する検出信号を発生するものであればよく、その形式の如何は問わない。
【0050】
前述のように、自動二輪車の車体の傾斜角は、自動二輪車の後輪の中心軸線と直交する平面が沿直面に対してなす角度である。
【0051】
図1に示した転倒検出装置1は、傾斜角センサ4の出力と、スロットルセンサ6の出力とを常時監視して、自動二輪車の走行中に傾斜角センサ4により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、続いてスロットルセンサ6によりアクセルの開度が判定基準開度以下になったことが検出されたときに、自動二輪車が転倒したと判定して、点火装置9及び燃料噴射装置11にそれぞれ点火停止指令及び燃料噴射停止指令を与えるように構成されている。点火装置9は、点火停止指令が与えられたときに点火動作を停止させてエンジンを失火させるように構成されており、燃料噴射装置11は、噴射停止指令が与えられたときに燃料の噴射を停止させるように構成されている。
【0052】
本実施形態においては、過大傾斜角検出手段2の傾斜角判定手段5と、アクセル絞り操作検出手段3のアクセル開度判定手段7と、アンド条件判定手段8とを、ECU内に設けられたマイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより構成する。図2は、傾斜角判定手段5、アクセル開度判定手段7及びアンド条件判定手段8を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスク処理のアルゴリズムを示したもので、このタスク処理はエンジンの走行中微少時間間隔で繰り返し実行される。
【0053】
図2のタスクか開始されると、先ずステップ101で自動二輪車が走行中か否かを判定する。この判定は、例えば、自動二輪車に設けられているスピードメータへの入力信号が設定値以上であるか否か(車輪が回転しているか否か)を見ることにより行う。ステップ101で自動二輪車が走行中でないと判定されたときにはこのタスクを終了する。
【0054】
ステップ101で自動二輪車が走行中であると判定されたときには、ステップ102に移行して、傾斜角センサが検出している車体の傾斜角αを読み込む。次いでステップ103で傾斜角αが判定基準角度αs以上であるか否かを判定する。その結果、傾斜角αが判定基準角度αs以上でない場合にはステップ104に移行し、通常のエンジン制御を継続させてこのタスクを抜ける。
【0055】
ステップ103で傾斜角αが判定基準角度αs以上であると判定されたときには、ステップ105に移行して、スロットル開度θthを読み込み、ステップ106で、読み込んだスロットル開度θthが判定値θths以下であるか否かを判定する。その結果、スロットル開度θthが判定値θths以下でないと判定されたときにはアクセル開度が判定基準開度を超えているとしてステップ104に移行し、通常のエンジン制御を継続させてこのタスクを抜ける。
【0056】
ステップ106で、スロットル開度θthが判定値θths以下であるか否かを判定した結果、スロットル開度θthが判定値θths以下であると判定されたときには、アクセル開度が判定基準開度以下であるとしてステップ107に移行し、転倒事故が発生したことを報知する転倒事故報知手段を動作させる。転倒事故報知手段は、例えば、事故車を特定するためのID情報や、GPSを利用して取得した事故発生地点の位置情報を含む信号を、無線通信網や移動体電話通信網などを通して警察、消防署、或いは道路の管理センター等に送信する手段や、ハザードランプを点滅させる手段である。
【0057】
ステップ107で転倒事故報知手段を動作させた後、ステップ108でエンジン停止制御を行わせてこのタスクを終了する。エンジン停止制御では、点火装置9への点火指令の供給及び燃料噴射装置11への噴射指令の供給を停止させて、点火装置及び燃料噴射装置の動作を停止させる。このように、転倒事故が発生したときに点火装置及び燃料噴射装置の動作を停止させてエンジンを停止させるようにすると、漏れた燃料に引火して火災が発生する等の二次災害が発生するのを防ぐことができる。
【0058】
図2に示したアルゴリズムによる場合には、ステップ102及び103により、過大傾斜角検出手段2が構成され、ステップ105及び106によりアクセル絞り操作検出手段3が構成される。また傾斜角が判定基準角度以上になったことと、アクセル開度が判定基準開度以下になったこととの2つの条件が成立したときにステップ107に移行して転倒事故が発生したことの報知を行うアルゴリズムになっていることにより、図1に示したアンド条件判定手段8が構成されている。
【0059】
上記の実施形態では、傾斜角センサにより検出された車体の傾斜角を判定基準角度と比較することにより、車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出するように過大傾斜角検出手段2を構成したが、本発明は、過大傾斜角検出手段2を上記のように構成する場合に限定されない。
【0060】
例えば、図3に示すように、自動二輪車の車体の傾斜角の変化に応じて出力信号の大きさが変化する向きにして車体に取付けられた加速度センサ20と、加速度センサの出力信号から得られる車体の傾斜角の情報を用いて、車体の傾斜角が判定基準角度以上であるか否かを判定する傾斜角判定手段5とにより過大傾斜角検出手段2を構成することができる。
【0061】
ここで、加速度センサ20として一軸センサを用い、図4(A)に示すように、該加速度センサ20の検出軸を車体の後輪の中心軸線に対して直角な平面O1−O1に対して直角な方向に向けて取り付けたとする。重力の加速度をG、車体の鉛直面O2−O2に対する傾斜角をθとすると、車体が傾斜したときに加速度センサ20により検出される加速度Gxは、Gx=Gsinθで与えられる。
【0062】
また図4(B)に示すように、車体が起立しているときに、検出軸が鉛直方向に向くように一軸加速度センサ20を取り付けたとする。このとき重力の加速度をG、車体の鉛直面O2−O2に対する傾斜角をθとすると、車体が傾斜したときに加速度センサ20により検出される加速度Gxは、Gx=Gcosθで与えられる。
【0063】
図3に示した傾斜角判定手段5は、加速度センサ20から得られる検出信号の大きさを、判定基準角度に相応する判定値と比較して、検出信号の大きさが判定値以上になったときに車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出するように構成されている。
【0064】
図5は、過大傾斜角検出手段2の他の構成例を示したもので、この例では、自動二輪車の車体の傾斜角の変化に応じて出力信号の大きさが変化する向きにして車体に取付けられた加速度センサ20と、加速度センサ20の出力信号から車体の傾斜角を演算する傾斜角演算手段21と、演算された傾斜角θを判定基準角度と比較することにより、傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する傾斜角判定手段5とにより、過大傾斜角検出手段2が構成されている。傾斜角θは、加速度センサの取り付け方向に応じて、θ=sin−1(Gx/G)または、θ=cos−1(Gx/G)により演算することができる。
【0065】
また過大傾斜角検出手段2は、図6に示すように、自動二輪車の車体の傾斜角が判定基準角度以上になっているときにオン状態またはオフ状態を保持することにより車体の傾斜角が判定基準角度以上であることを検出する傾斜角検出スイッチ4′により構成することもできる。
【0066】
このような検出スイッチを用いる場合には、例えば図7(A)に示すように、一定の直流電圧が印加された抵抗R1ないしR3の直列回路の1つの抵抗R3の両端に検出スイッチ4′を並列接続して、スイッチ4′がオン状態にあるときとオフ状態にあるときとで、出力信号Vsのレベルを異ならせるか、または、図7(B)に示すように、抵抗R1及びR2と検出スイッチ4′との直列回路の両端に一定の直流電圧を印加して、スイッチ4′がオン状態にあるときとオフ状態にあるときとで、出力信号Vsのレベルを異ならせることにより、検出スイッチ4′がオン状態にあるかオフ状態にあるかをマイクロプロセッサに認識させることができる。
【0067】
上記実施形態のように、自動二輪車の走行中に、車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段2と、アクセルの開度が設定された判定基準開度以下になったことを検出するアクセル絞り操作検出手段3とを設けて、走行中に過大傾斜角検出手段により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル絞り操作検出手段によりアクセルの開度が判定基準開度以下になったことが検出されたときに自動二輪車が転倒したことを検出するように構成すると、車体が傾いただけでは、転倒事故の検出は行われず、自動二輪車が走行中に転倒して、運転者が投げ出されるなどして、アクセルから手を離したときまたはアクセルの操作を止めたときに初めて転倒事故が検出されるので、バンク走行時や、オフロード走行時に車体が大きく傾いた状態を誤って転倒状態と判定して誤検出を行うおそれをなくすことができる。
【0068】
上記の実施形態では、アクセル絞り操作検出手段3を、エンジンのスロットル開度を検出するスロットルセンサ6と、スロットルセンサ6から得られるスロットル開度検出信号の大きさを判定基準開度を与える基準値と比較することによりアクセルの開度が判定基準角度以下であるか否かを判定するように構成したが、アクセルの開度を直接検出してアクセルの開度にほぼ比例した検出出力を発生するアクセル開度センサを設けて、このアクセル開度センサの出力からアクセルの開度を検出するようにしても良い。アクセルがハンドルグリップからなっている場合、アクセル開度センサは、ハンドルグリップの回転を検出する変位センサ(例えばポテンショメータ)により構成することができる。
【0069】
また図8に示すように、アクセルの開度が判定基準開度以下になっているときにオン状態またはオフ状態を保持することにより、アクセルの開度が判定基準開度以下になっていることを検出するアクセル開度検出スイッチ6′により、アクセル絞り操作検出手段3を構成することができる。この場合も、図7の検出スイッチ4′に代えてアクセル開度検出スイッチ6′を接続した回路を構成することにより、アクセル開度検出スイッチ6′がオン状態にあるのかオフ状態にあるのかをマイクロプロセッサに認識させることができる。
【0070】
図9は本発明の他の実施形態を示したものである。この実施形態の転倒検出装置1は、図1に示されたアクセル絞り操作検出手段3に代えて、アクセル開度センサの出力の大きさが一定値以下になっている状態が設定された時間継続したときにアクセルが一定時間操作されていないと判定するアクセル操作停止判定手段30を備えていて、自動二輪車の走行中に過大傾斜角検出手段2により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつアクセル操作停止判定手段30によりアクセルが一定時間操作されていないと判定されたときに自動二輪車が転倒したことを検出するように構成されている。
【0071】
図9の実施形態において、過大傾斜角検出手段2及びアクセル操作停止検出手段30を構成するためにマイクロプロセッサに微少時間間隔で繰り返し実行させるタスクのアルゴリズムを図10に示した。図10のタスクが開始されると、先ずステップ201で自動二輪車が走行中か否かを判定する。ステップ201で自動二輪車が走行中でないと判定されたときにはこのタスクを終了する。
【0072】
ステップ201で自動二輪車が走行中であると判定されたときには、ステップ202に移行して、傾斜角センサが検出している車体の傾斜角αを読み込む。次いでステップ203で傾斜角αが判定基準角度αs以上であるか否かを判定する。その結果、傾斜角αが判定基準角度αs以上でない場合にはステップ204に移行し、通常のエンジン制御を継続させてこのタスクを抜ける。
【0073】
ステップ203で傾斜角αが判定基準角度αs以上であると判定されたときには、ステップ205に移行して、スロットル開度θtnを読み込み、ステップ206で、変数kをインクリメントした後、ステップ207で今回読み込んだスロットル開度θtnと前回読み込んだスロットル開度との差θtn−θtn-1の絶対値が、十分に小さい値に設定された判定値θs以下であるか否かを判定する。その結果、θtn−θtn-1の絶対値が判定値θs以下でないと判定されたときには、アクセル操作が行われたとして、ステップ208で変数kを0とした後、ステップ204に移行して通常のエンジン制御を継続させる。
【0074】
ステップ207で、今回読み込んだスロットル開度θtnと前回読み込んだスロットル開度との差θtn−θtn-1の絶対値が、判定値θs以下であると判定されたときには、アクセル操作が行われていないとして、ステップ209に移行し、変数kが設定値ks以上であるか否かを判定する。その結果、変数kの値が設定値ksに達していないと判定されたとき(アクセルが操作されない状態が未だ一定の時間の間継続していないと判定されたとき)には、ステップ204に移行して、通常のエンジン制御を継続させる。
【0075】
ステップ207で今回読み込んだスロットル開度θtnと前回読み込んだスロットル開度との差θtn−θtn-1の絶対値が、十分に小さい値に設定された判定値θs以下であると判定され、ステップ209で変数kが設定値ksに達したと判定されたとき(アクセルが操作されない状態が一定の時間の間継続したとき)にステップ210に移行して、転倒事故が発生したことを報知する転倒事故報知手段を動作させる。
【0076】
ステップ210で転倒事故報知手段を動作させた後、ステップ211でエンジン停止制御を行わせてこのタスクを終了する。エンジン停止制御では、点火装置9への点火指令の供給及び燃料噴射装置11への噴射指令の供給を停止させて、点火装置及び燃料噴射装置の動作を停止させる。
【0077】
図10に示したアルゴリズムによる場合には、ステップ202及び203により、過大傾斜角検出手段2を構成し、ステップ205ないし209によりアクセル操作停止検出手段30を構成している。また傾斜角が判定基準角度以上になったことと、アクセル開度が判定基準開度以下になったこととの2つの条件が成立したときにステップ210に移行して転倒事故が発生したことの報知を行うアルゴリズムとしたことにより、図9に示したアンド条件判定手段8を構成している。
【0078】
上記の各実施形態では、スロットルセンサの出力からアクセル(ハンドルグリップ)の開度を間接的に検出するようにしているが、アクセルの変位を直接検出するアクセル開度センサを設けて、該アクセル開度センサの出力からアクセルの開度を検出するようにしてもよい。
【0079】
上記の各実施形態では、傾斜角判定手段5及びアクセル開度判定手段7をマイクロプロセッサを用いて構成するようにしたが、これらの手段をアナログ回路からなる電圧比較器を用いて構成して、転倒検出装置1全体をアナログ回路により構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を概略的に示したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の各部を構成するためにマイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図3】本発明で用いる過大傾斜角検出手段の他の構成例を示したブロック図である。
【図4】(A)及び(B)は加速度センサが検出する加速度と重力の加速度との関係を示したベクトル図である。
【図5】本発明で用いる過大傾斜角検出手段の更に他の構成例を示したブロック図である。
【図6】本発明で用いる過大傾斜角検出手段の更に他の構成例を示したブロック図である。
【図7】(A)及び(B)はそれぞれ過大傾斜角検出手段を図6に示したように構成する場合に、傾斜角検出スイッチと共に用いる回路の異なる構成例を示した回路図である。
【図8】本発明で用いるアクセル絞り操作検出手段の他の構成例を示したブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の構成を概略的に示したブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の各部を構成するためにマイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 転倒検出装置
2 過大傾斜角検出手段
3 アクセル絞り操作検出手段
4 傾斜角センサ
5 傾斜角判定手段
6 スロットルセンサ
7 アクセル開度判定手段
8 アンド条件判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車が転倒したことを検出する転倒検出装置において、
前記自動二輪車の走行中にその車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、
前記自動二輪車の走行速度を調節する際に操作されるアクセルの開度が設定された判定基準開度以下になったことを検出するアクセル絞り操作検出手段と、
を具備し、
前記過大傾斜角検出手段により前記自動二輪車の走行中に車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつ前記アクセル絞り操作検出手段によりアクセルの開度が前記判定基準開度以下になったことが検出されたときに前記自動二輪車が転倒したことを検出するように構成されていること、
を特徴とする自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項2】
前記自動二輪車を駆動する原動機はエンジンであり、
前記アクセル絞り操作検出手段は、前記エンジンのスロットル開度を検出するスロットルセンサと、前記スロットルセンサから得られるスロットル開度検出信号の大きさを基準値と比較することにより前記アクセルの開度が判定基準角度以下であるか否かを判定するアクセル開度判定手段とを備えている請求項1に記載の自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項3】
前記自動二輪車を駆動する原動機は電動機であり、
前記アクセル絞り操作検出手段は、前記アクセルの変位量を検出するアクセルセンサと、前記アクセルセンサから得られる検出信号の大きさを基準値と比較することにより前記アクセルの開度が判定基準角度以下であるか否かを判定するアクセル開度判定手段とを備えている請求項1に記載の自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項4】
前記アクセル絞り操作検出手段は、前記アクセルの開度が判定基準開度以下になっているときにオン状態またはオフ状態を保持することにより、前記アクセルの開度が判定基準開度以下になっていることを検出するアクセル開度検出スイッチからなっている請求項1に記載の自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項5】
自動二輪車が転倒したことを検出する転倒検出装置において、
前記自動二輪車の走行中に前記自動二輪車の車体の傾斜角が設定された判定基準角度以上になったことを検出する過大傾斜角検出手段と、
前記自動二輪車の走行速度を調節する際に操作されるアクセルの開度を検出するアクセル開度センサと、
前記アクセル開度センサの出力の大きさが一定値以下になっている状態が設定された時間継続したときに前記アクセルが一定時間操作されていないと判定するアクセル操作停止判定手段と、
を具備し、
前記自動二輪車の走行中に前記過大傾斜角検出手段により車体の傾斜角が判定基準角度以上になったことが検出され、かつ前記アクセル操作停止判定手段により前記アクセルが一定時間操作されていないと判定されたときに前記自動二輪車が転倒したことを検出するように構成されていること、
を特徴とする自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項6】
前記過大傾斜角検出手段は、前記自動二輪車の車体の傾斜角に相応した検出信号を発生する傾斜角センサと、前記傾斜角センサが発生している検出信号の大きさを前記判定基準角度に相応する値に設定された判定値と比較して、検出信号の大きさが該判定値以上になったときに前記車体の傾斜角が前記判定基準角度以上であると判定する傾斜角判定手段とを備えている請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項7】
前記過大傾斜角検出手段は、前記自動二輪車の車体の傾斜角の変化に応じて出力信号の大きさが変化する向きにして前記車体に取付けられた加速度センサと、前記加速度センサの出力信号から得られる前記車体の傾斜角の情報を用いて、前記車体の傾斜角が前記判定基準角度以上であるか否かを判定する傾斜角判定手段とを備えている請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動二輪車の転倒検出装置。
【請求項8】
前記過大傾斜角検出手段は、前記自動二輪車の車体の傾斜角が前記判定基準角度以上になっているときにオン状態またはオフ状態を保持することにより前記車体の傾斜角が前記判定基準角度以上であることを検出する傾斜角検出スイッチからなっている請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動二輪車の転倒検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−196396(P2009−196396A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37262(P2008−37262)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)