説明

自動機のパネル開閉機構

【課題】
パネル上部に配した部品を避け、干渉しない様に開閉し、開閉途中に手を離しても緩やかに閉じ、開放状態を保つロックと、手バサミ防止のための一次停止機能のあるパネルの開閉機構を提供することにある。
【解決手段】
ヒンジ部に多軸を備え、多軸の一部にトルク機構(図6)と、ボールキャッチ機構(図5)とを備えたスライドヒンジ17により、開閉されるパネルを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動機等の跳ね上げ方式のパネルに関するものであり、特に開閉するパネル周囲に配した部品に干渉しない様に開閉操作できるスライドヒンジ機構を用いた開閉機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現金入出金機等の自動機は顧客が立った状態で操作し易い様に、自動機上部にカードや明細表、表示機等の顧客操作のユニットを配置し、自動機下部に現金関係の紙幣や硬貨を扱うユニットを搭載し、媒体口を前述の顧客操作のユニット下部に配置している。
【0003】
これら装置内部に搭載しているユニットは、定期的な媒体の補充や、ジャム除去等で保守作業を実施する必要がある。そのため装置には、内部ユニットにアクセスするための扉やパネル等が設けられており、それらを開閉し内部ユニットにアクセスし、保守作業を実施する。
【0004】
自動機の筐体構造として、現金関係を収納している筐体下部は、防犯対策のため強固な構造としており、反対に上部筐体は、下部筐体に比べると強化レベルを落とした構造となっている。つまり上部と下部とで筐体構造を分け、扉やパネル等も現金部へのアクセスとそれ以外のアクセスを区別した別々の開閉機構を設けている。
【0005】
上部筐体は、現金関係以外のカードや明細票、表示機等の顧客が直接操作する部位とは別に、これらのユニットを制御する制御装置なども搭載されており、保守時には大きな開口面積を必要する。
【0006】
そのため、開閉構造として筐体上部にヒンジを設け、この軸を支点に装置前面のほぼ全てが上方へ跳ね上がるパネル跳ね上げ方式がとられている。つまり、上部筐体の前面は、全てのパネルが開放可能な構造となっている。またこのパネルは閉まった状態と、開いた状態を保つために2つのロック機構を備えている。さらに開閉動作中に手を離して勢い良く閉まらない様に、ガススプリング等にて緩やかに閉まる様、安全機構を設けている。以下、上部筐体のパネルを上パネルと記載する。
【0007】
下部筐体は、操作者が立った状態で媒体口を上から見下ろすことになるため、上から見て媒体口が見易く、尚且つ取り易い様に、上部筐体よりやや前方に飛び出した状態で媒体口が設けられている。
【0008】
保守時、下部筐体の現金ユニットにアクセスするには、筐体前側の扉を開き、さらに媒体口周辺のパネルを上方へ跳ね上げ、ユニット自身をスライドレール等にて前方に引出しアクセスすることになる。
【0009】
媒体口周辺のパネルを扉側に設けていない理由は、本パネルが媒体口に合わせ前方に 突出した形状となっており、単純に扉と一体化すると、開いた時に扉の厚み方向の寸法が大きくなり、その分扉を大きく開かなければならなく、広い保守スペースが要求されることとなるためである。
【0010】
つまり、少ない設置スペースで保守作業を可能にするため媒体口の周辺のパネルを本体側に保持し、扉側に設けない構造としている。以下、媒体口の周辺のパネルを中間パネルと記載する。
【0011】
中間パネルの開閉構造は、上パネルと同様に大きな開口面積を確保するため上部にヒンジを設け、本ヒンジを支点に開く必要があるが、単純に上部にヒンジを設けただけでは、中間パネルを開くと上パネルに当たってしまいそれ以上開くことが出来ない。
【0012】
そのため従来は、図10に示す様に中間パネルを一旦スライドレール等にて前方に引き出し、上パネルを避ける位置に移動してから、中間パネルを開いていた。さらに開状態を保つロックと、開閉途中に手を離して手バサミが発生しない様に、閉まる直前にもロック機構を設けており、このロックを解除しないとパネルが完全に閉まらない様に安全機構を設けている。
【0013】
上パネル及び中間パネルに採用している軸が一つのヒンジは構造上、パネル開角度が90°を超えると支点上部に扉の厚み分突出する。そのため、この突出分を逃がすためのエリアが必要となる。
【0014】
上パネル上部は装置外面となるため、本突出が問題となることは無いが、中間パネルの上部は上パネルが存在するため、開くと上パネルと干渉することになる。これを回避するため、中間パネルは一旦前方へ引き出す必要がある。つまり中間パネルは開閉機構だけでなくスライド機構も必要となる。
【0015】
また、従来のスライドヒンジとしては、例えば特開平9-279927(特許文献1)に示されるスライドヒンジが提案されている。
【0016】
【特許文献1】特開平9-279927
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
中間パネルの回転支点が一つの軸ヒンジであるパネルを開くと、支点上部にパネル厚み分だけパネルの上部が突出する。上部にスペースのない中間パネルの場合、これを避けるため一旦前方へスライドする必要があり、余分な機構が必要となる。また中間パネルを開いた際、保守途中でパネルが閉まらない様にするためのロック機構や、パネル開閉動作中に手を離された時の安全対策として、閉まる直前の手バサミ防止用のロック機構が開閉機構とは別に必要であった。
【0018】
また、特許文献1に記載されたスライドヒンジは、幅を有しており、本発明の対象とする自動機のようにスペースのない装置への設置には適さない。特に、特許文献1では、幅のある構造におけるスライドヒンジであるため、スペースのない空間で利用できるトルク機構やキャッチボール機構は備えていない。さらに特許文献1にスライドヒンジは、ロック機構の保持力を変えるためにバネを交換する必要がある。
【0019】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、開閉の前段階であるスライド機構を必要とせず、少ない部品点数でパネル開状態を保つロックと、開閉途中に手を離しても手バサミの恐れの無いパネルの開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
装置に固着される本体ベース部と、パネルを固着させるパネルベース部と、本体ベース部の前部に回転軸を有する中間リンク部と、本体ベース部の後部に回転軸を有する後部リンク部と、中間リンク部及び後部リンク部に締結されたアーム部と、中間リンク部と前記パネルベース部とを締結する前部リンク部と、パネルベース部は、アーム部の前部に回転軸を有し、パネルベース部と前記前部リンク部との締結部は、摩擦抵抗に基づくトルク機構を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安全で簡素なスライドヒンジ機構を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図1から図8を用いて、コンビニエンスストア等に設置される狭小タイプの自動機の筐体構造について説明する。
図1は、中間パネルが閉まった状態のスライドヒンジ17(図8)の詳細図を示す。図2は、図1を左側面から見た図を示す。図3は、中間パネルを少し開いた状態のスライドヒンジ17の詳細図を示す。図4は、中間パネルを全開に開いた状態のスライドヒンジ17の詳細図を示す。図5は、上部トルク軸の部品を軸方向に展開した詳細図を示す。図6は、下部トルク軸の部品を軸方向に展開した詳細図を示す。図7は、本発明の一実施例である自動機を正面から見た図を示し、内部ユニット配置の説明図を示す。図8は、本発明の一実施例を側面から見た説明図を示す。図9は、本発明の一実施例である中間パネルの回動状態を側面から見た図を示し、回動軌跡の説明図を示す。まず図7、図8を用いて内部実装機器と筐体各部を説明する。なお、以下実施例では、筐体左側面に設置されるスライドヒンジ17について説明を行うが、同様の機構を備えたスライドヒンジ17(図2の左右を逆にした)が筐体右側面にも設置される。
【0023】
筐体は、主に現金ユニットを搭載する下部筐体19と、主に現金以外のユニットを搭載する上部筐体18に分けられ、それら筐体をボルトや溶接等により締結している。下部筐体19内部のユニット配置は、正面から見て右側に紙幣を扱う紙幣ユニット20、左側に硬貨を扱う硬貨ユニット21を配置し、硬貨ユニット21の下部には装置電源ユニット22を配置する。
【0024】
上部筐体18内部のユニット配置は、正面上側に表示とタッチ操作可能なタッチパネル機能付きの表示機23を配置する。表示機23の右下には暗証番号入力用のキーパット24を配置し、その左横にはカードを扱うカードユニット25を配置し、さらにその左側には明細票を発行するプリンタユニット26を配置する。表示機23の後方は、装置全体を制御するための制御装置27を配置する。
【0025】
上部筐体18の前面には、保守作業時に装置内部へアクセスするための上パネル15を設けており、パネル上部に設けた一軸のヒンジを回転支点として上方へ跳ね上げる様に開閉する。
【0026】
この上パネル15には、表示機23とキーパット24を、金具を介してネジ固定しておき、上パネル15を開けると上部筐体18の前面部が大きく開口され、カードユニット25、プリンタユニット26、制御装置27にアクセス可能となる。
尚、上パネル15を開いた状態では、ヒンジ上部にパネル厚み分、上部へ突出するが、本部位は装置外部のため、突出が問題となることはない。
【0027】
また上パネル15の下部両側面には、図示しないパネル閉状態を保持するためのロック機構を設けており、上パネル15前面に配置した鍵と連動し、パネルロックが解除する構造となっている。さらにパネルの重量を軽減する図示しないガススプリングと、開状態を保持するロック機構を設けている。
【0028】
下部筐体19の媒体口周辺は、保守のため中間パネル14を設けており、パネル上部に設けたスライドヒンジ17を回転の支点として、前方へスライドしながら上方へ跳ね上げる様に開閉する。
【0029】
前述の中間パネル14の下部には、扉16を配置しており、筐体右側面に設けた扉ヒンジ16aにより開閉する。扉16には、図示しない鍵と連動したロック機構を設けており、本鍵を回して扉16を開く。また中間パネル14は、正面から見て扉16とラップする位置までフランジ14aを伸ばしており、扉16を開かないと中間パネル14を開くことが出来ず、扉16の鍵1箇所で扉16と中間パネル14の両方のセキュリティとなる構造としている。
【0030】
下部筐体19内部のユニットを保守するには、扉16と中間パネル14を開き、下部筐体19からスライドレール等にて硬貨及び紙幣ユニットを前方に引出し、保守作業を実施する。
【0031】
次に図1〜図6を用いて、スライドヒンジ17部の動作ついて詳細に説明する。
図1は中間パネル14が閉まった状態の中間パネル14の左側に設置されたスライドヒンジ17を示す。図2は、図1を左側面から見た状態を示している。スライドヒンジ17は、本体ベース1、パネルベース2、アーム3、前部リンク4、中間リンク5、後部リンク6を備えている。
【0032】
本体ベース1は前後に長い形状となっている。前部と後部下側の2ヶ所に穴1a、1bを設けており、リベット9、12がそれぞれ挿入される。リベット9、12はそれぞれ中間リンク5と、後部リンク6に回動自在に連結するための部材である。また本体ベース1の上部には、長穴1cが設けられており、本部分にてスライドヒンジ17は、下部筐体にネジにて固定される。長穴1cはスライドヒンジ17を固定する際の前後方向の調整用として設けている。
【0033】
アーム3は、前後に長いL字型の形状となっている。前部上側と中央部、さらに後部に穴を設けており、前部上側の穴3aは上部トルク軸7が挿入され、中央部と後部の穴はリベット11、13が挿入される。上部トルク軸7はパネルベースに、リベット11、13はそれぞれ中間リンク5、後部リンク6に、回動自在に連結するための部材である。
【0034】
パネルベース2は、図1の左側から見ると(装置前面から見ると)L字型の形状(図2)となっている。パネルベース2は、装置左側面(図1)の上部と中央のやや下よりの部分に穴を設けており、上部の穴2aには、上部トルク軸7が挿入され、中央下よりの穴2bには、下部トルク軸8が挿入される。
【0035】
上部トルク軸7はアーム3に、下部トルク軸8は前部リンク4に、回動自在に連結するための部材である。またパネルベース2には、装置左側面から見て下側と、装置前面からみて左側にそれぞれ長穴2cが設けられており、本部分にて中間パネル14をネジにて固定している。
【0036】
長穴2cは、中間パネル14を固定する際の上下方向の調整用として設けられている。つまり本体ベース1の長穴1cと合わせると、中間パネル14をスライドヒンジ17に介して固定することで、前後と上下に調整して固定可能となり、部品公差や組立公差などによる下部筐体19と中間パネル14の隙間、または上部パネル15と中間パネル14の隙間のバラツキを吸収し固定することができる。
【0037】
前部リンク4は、上下に長い形状となっている。長手方向のそれぞれの端には穴4a、4bを設けており、それぞれ下部トルク軸8とリベット10が挿入され、パネルベース2と中間リンク5に回動自在に連結される。
【0038】
中間リンク5は、上側が細く下側が太い形状となっている。上部、中央部、下部の3箇所には穴5a、5b、5cを設けており、リベット9、11、10が挿入され、本体ベース1、前部リンク4とアーム3に回動自在に連結される。
【0039】
後部リンク6は、正面(図1)から見ると横方向に長い長方形に前部上面が突出した形状となっている。この突出部と後部下側には穴6a、6bを設けており、リベット12、13が挿入され、本体ベース1とアーム3に回動自在に連結される。
【0040】
次にスライドヒンジ17を構成する部品の前後方向の位置関係と、部品形状の詳細について説明する。
【0041】
本体ベース1と中間リンク5は、前後方向で同一面になる様に本体ベース1の前部は段曲げ形状1eとなって連結している。この段曲げ形状1eは、中間リンク5が細く、本体ベース1が中間リンク5を逃げる様に一部を切欠いた形状としており、それぞれの金具が干渉しない形状としている。
【0042】
アーム3は、本体ベース1と中間リンク5の図1の手前側に来るように連結している。アーム3は、下部トルク軸8を避けるため、装置前面側に行くほど細くなる構造を有している。
【0043】
後部リンク6は、中央部に段曲げ形状6cを有しており、後部リンク6の前部が図1の本体ベース1の裏面と、後部が図1のアーム3の裏面と連結されている。つまり、後部リンク6の前部は、本体ベース1の前部と同一面になるように位置し、後部リンク6の後部は、本体ベース1の後部、及び中間リンク5と同一面になるように位置する。また本体ベース1後部の下側に一部突起1dが下向きに出ており、本部位が後部リンク6の後部に当たるストッパとなっており、スライドヒンジ17閉時のストッパとして機能する。
【0044】
パネルベース2の装置左側面(図1)の中央部から上方は、中間リンク5と同一面にある。そのため中間リンク5と干渉しない様に、中央部分から上方にかけて、下方に比べ細い形状としている。また下部固定穴2cの周辺は、下部固定穴2cにてスライドヒンジ17に接続される中間パネル14の側面と高さを合わせるため、段曲げ形状2eとなっている。
【0045】
前部リンク4は、中間リンク5とパネルベース2の奥側に連結している。
以上のように、スライドヒンジ17を構成する各部品は、段曲げ形状及び一部を欠いた形状を有することにより、中間パネル14に固定する部位を除き、前後方向の厚みが薄くなる様に配置することで、下部筐体19に実装した際、筐体側面と現金ユニット間の僅かな隙間に実装可能な形状としている。
【0046】
次に、スライドヒンジ17の動作について図3と図8を用いて説明する。
【0047】
図3は、中間パネル14を少し開いた状態でのスライドヒンジ17を示している。中間パネル14を開くには、パネル下部の取っ手14b(図8)を手前に引く、するとスライドヒンジ17のパネルベース2が手前に引かれる。
【0048】
動作初期において、パネルベース2は、上部トルク軸7を回転支点として、下側が前方に引っ張られながら回動する。前部リンク4はパネルベース2に、中間リンク5は前部リンク4に、軸で連結されているため、パネルベース2の動きに合わせ連動して動く。
【0049】
中間リンク5は、下部筐体19と固定している本体ベース1との連結部(1a、5a、9)を支点にして回動するとともに、中間リンク5に連結しているアーム3を下側に引っ張りながら回動する。
【0050】
下側に引っ張られたアーム3は、後部リンク6と中間リンク5にて連結されているため、下側にスライドしながら前方へ移動する。
【0051】
つまり、パネルベース2の下部が手前側に回動するに従い、アーム3が下側にスライドしながら前方へ移動し、回転支点である上部トルク軸7は、下方向にスライドしながら前方に動く。この結果、パネルベース2に接続された中間パネル14は、前方の斜め下方向にスライドしながら回動する。
【0052】
そのため、一軸のヒンジの様に、中間パネル上部に回転のためのエリアを必要とせず、中間パネル14の上面が、上パネル15と面接触していても開閉は可能となる。このまま開閉を続けると、図9に示す回動軌跡を描き、最終的にスライドヒンジ17は図4に示す様にパネルベース2が前方にせり出し、下部が跳ね上がった状態まで回動する。
【0053】
次に、トルクを掛けた軸について図6を用いて詳細に説明する。回転軸にてトルクを発生させるには、オイルの粘性を利用したものや、部品同士の摩擦によるもの等の方式があるが、本実施形態では、摩擦を利用した方式を採用している。
【0054】
これは手荒い扱いを受けた時のオイル漏れや、装置の製品寿命が比較的長いため、寿命によるオイル漏れを考慮してのことである。オイル漏れが発生するとトルクの低下だけでなく、漏れたオイルが内部ユニットに悪影響を与える恐れがあるためである以下、トルクを掛けた軸をトルク軸と記載する。
【0055】
本実施形態でのトルク軸は、上部トルク軸7と下部トルク軸8(図1)に採用している。
【0056】
上部トルク軸7の締結部は、さらにボールキャッチ機能を付加しているため、トルク軸7については、後述し、図6では、下部トルク軸8の締結部について説明する。
【0057】
図6は、下部トルク軸8の部品を軸方向に展開した図を示している。前部リンク4の上部穴4aにネジを切った軸4cをカシメ等にて取付け、その軸4cにワッシャー8a、パネルベース2の下部穴2b、ワッシャー8a、複数枚の板バネ8b、ワッシャー8a、ナット8cの順にて締結する。
【0058】
これらの部品同士の重ね合わせによる接触面での摩擦抵抗をトルクとして利用し、トルクの値は、ナットの閉め具合による板バネ8bの変形量を変えることでコントロールする。
【0059】
本実施形態のスライドヒンジ17では、上部と下部の2ヶ所の軸に採用している。2箇所に分けた理由は、2箇所に分散させることで、一つ一つの軸でのトルクの値を低く抑え、パネル開閉により部品同士の磨耗を軽減させるためである。
このように軸にトルクを掛けているため、開閉途中に手を離しても、パネルは急に閉じることなく、緩やかに閉じ、手バサミの危険を軽減し、操作者に安心間を与える。 つまり従来技術ではガススプリング等にて実現していた機能を本実施形態では、トルク軸にて実現している。
【0060】
次にボールキャッチ機構について図5を用いて説明する。本発明では、上部トルク軸7の締結部にボールキャッチ機構を搭載している。
【0061】
パネルベース2の上部穴2aにネジを切った軸2dをカシメ等にて取付け、この軸2dにワッシャー7a、アーム3の順で挿し込む。アーム3の軸穴3a周辺には、軸より一定の距離を開けて穴3dを設けている。また、パネルベース2に取付けた軸2dは、アーム3までを円柱としておき、そこを過ぎた部分から円柱の左右の面をカットした形状としておく。
【0062】
そして、このカットした形状に合わせた穴を持つワッシャー7dを差し込む。ワッシャー7dにもアーム3と同様に軸穴から一定距離離した部分に穴を開け、パネルベース2を回転すると丁度孔同士が重なり合う位置関係としておく。ただし、アーム3側の穴径は、ワッシャー7dよりも小さくしておき、このワッシャー7dの穴に、同径よりやや小さいサイズのボール7eを入れる。
【0063】
ボール7eは、ワッシャー7dの板厚より大きくしておき、穴に嵌めると、一部がワッシャー7dより飛び出すことになる。さらに、ワッシャー7dの手前側に穴無しのワッシャー7a、複数枚の板バネ7b、ナット7cの順で軸に締結する。
【0064】
アーム3が回転すると、軸と連動したボール7e入りのワッシャー7dが回転し、穴同士が合うと、ボール7eがアーム3側の穴3dに落ち込みロック機構として機能する。このロック機構を解除するには、ボール7eが穴3dを乗り上げるだけの力を回転方向に加えてやる。つまり、板バネ7bにてボール7eを穴3dに落とし込み、これをロック機構として利用したものがボールキャッチ機構である。本実施形態ではこれを上部トルク軸7に盛り込んでいる。
【0065】
本実施形態では、本ボールキャッチ機構を2箇所の位置に設けている。1箇所はパネル全開状態の時である。これによりパネルを全開した場合のロック機構として働き、保守途中でパネルが閉まらない様にしている。もう一箇所は、パネルを閉める少し手前の位置である。これは、トルク軸の働きによりパネルが緩やかにしまるが、パネルが閉まる直前にて再度パネルを停止させることにより、手バサミの危険をさらに低減する効果がある。
【0066】
上述したキャッチボール機構及びトルク機構は、内部に機構を有しているため、他の軸に比べると締結部の厚みが厚くなる。このため、スペースの少ない本体装置側の軸にこれらの機構を備えるのではなく、軸の締結部に厚みがあってもパネルにて覆うことの出来る上部トルク軸7及び下部トルク軸8に備える構造としているが、他の締結部にボールキャッチ機構、トルク機構を備えてもよい。
【0067】
以上の構造により、ヒンジとは別にスライド機構を必要とせず、開閉途中に手を離しても緩やかに閉じ、操作者に安心感を与え、尚且つパネル開状態のロック機構と、手バサミ防止に閉まる直前での一次停止機構を合わせもち、ロックの保持力を締結部の締結力により容易に変更可能な開閉機構を安価で、小スペースで提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】中間パネルが閉まった状態のスライドヒンジ詳細図
【図2】図1を左側面から見た説明図
【図3】中間パネルを少し開いた状態のスライドヒンジ詳細図
【図4】中間パネルを全開に開いた状態のスライドヒンジ詳細図
【図5】上部トルク軸の部品を軸方向に展開した詳細図
【図6】下部トルク軸の部品を軸方向に展開した詳細図
【図7】本発明の一実施形態である自動機を正面から見た図を示し、内部ユニット配置の説明図
【図8】図7を側面から見た説明図
【図9】本発明の一実施形態である中間パネルの回動状態を側面から見た図を示し、回動軌跡の説明図
【図10】従来例である中間パネルの回動状態を側面から見た図を示し、回動軌跡の説明図
【符号の説明】
【0069】
1・・・本体ベース、1a・・・前部穴、1b・・・後部穴、1c・・・固定穴、1d・・・突起、1e・・・段曲げ形状、2・・・パネルベース、2a・・・上部穴、2b・・・中央部穴、2c・・・固定穴、2d・・・軸、2e・・・段曲げ形状、3・・・アーム、3a・・・前部上側穴、3b・・・中央部穴、3c・・・後部穴、3d・・・ボール用穴、4・・・前部リンク、4a・・・上部穴、4b・・・下部穴、4c・・・、軸5・・・中間リンク、5a・・・上部穴、5b・・・中央部穴、5c・・・下部穴、6・・・後部リンク、6a・・・前部穴、6b・・・後部穴、6c・・・段曲げ形状、7・・・上部トルク軸、7a・・・ワッシャー、7b・・・板バネ、7c・・・ナット、7e・・・ボール、7d・・・ボール入りワッシャー、8・・・下部トルク軸、8a・・・ワッシャー、8b・・・板バネ、8c・・・ナット、9・・・リベット、10・・・リベット、11・・・リベット、12・・・リベット、13・・・リベット、14・・・中間パネル、14a・・・フランジ、14b・・・取っ手、15・・・上パネル、16・・・扉、16a・・・扉ヒンジ、17・・・スライドヒンジ、18・・・上部筐体、19・・・下部筐体、20・・・紙幣ユニット、21・・・硬貨ユニット、22・・・装置電源ユニット、23・・・表示部、24・・・キーパッド、25・・・カードユニット、26・・・プリンタユニット、27・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に固着される本体ベース部と、
パネルを固着させるパネルベース部と、
前記本体ベース部の前部に回転軸を有する中間リンク部と、
前記本体ベース部の後部に回転軸を有する後部リンク部と、
前記中間リンク部及び前記後部リンク部に締結されたアーム部と、
前記中間リンク部と前記パネルベース部とを締結する前部リンク部と、
前記パネルベース部は、前記アーム部の前部に回転軸を有し、
前記パネルベース部と前記前部リンク部との締結部は、摩擦抵抗に基づくトルク機構を有することを特徴とするスライドヒンジ。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドヒンジであって、
前記パネルベース部と前記アーム部との回転軸は締結部を備え、
該締結部は、摩擦抵抗に基づくトルク機構及びロック機構を有することを特徴とするスライドヒンジ。
【請求項3】
請求項1〜2に記載のスライドヒンジにより開閉されるパネルを有することを特徴とする自動機。
【請求項4】
請求項3に記載の自動機であって、
前記パネルは、自動機の前面に突出し、
前記パネルの上側に、他のパネルを備えることを特徴とする自動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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