説明

自動調整型スタッド

履物品は、様々な種類の状況、環境変化、および加えられる力に適合する自動調整型スタッドを含みうる。自動調整型スタッドは、装着者がその上で歩いたり走ったりする表面の種類に基づき圧縮または伸張される、異なるレベルの圧縮性および/または収縮性の第1の部分および第2の部分を有しうる。この自動調整型スタッドを伴う履物は、表面に損傷をもたらすことなく、多様な硬度の表面間に容易に移行しうるが、装着者に、表面の種類毎に必要な量の静止摩擦ももたらす。装着者は、異なる表面に対する装着者の多様な静止摩擦の必要性に合わせるために自身の履物を複数回変更する必要なく、様々な表面上を移動することができるという恩恵を享受する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の局面は概して、製造品および衣料品のための静止摩擦(traction)要素に関する。いくつかのより具体的な例において、本発明の局面は、履物品のための自動調整型静止摩擦要素に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの衣料品が、静止摩擦要素から恩恵を受ける。そのような衣料品は、表面または別の部材と接触し、静止摩擦要素によりもたらされる摩擦および安定性の増加の恩恵を受ける。典型的には、静止摩擦要素は、衣料品の接地面の一部を形成する。多くの静止摩擦要素は、衣料品の表面から地面または衣料品と接触する他の表面に伸びる突起物を形成する。いくつかの静止摩擦要素は、衣料品が地面または表面と接触すると、地面または表面を突き刺すように形づくられるかまたは構成される。他の静止摩擦要素は、衣料品とそれと接触する表面との間の摩擦を増加させるように地面とかみ合うように形づくられるかまたはそのような特徴を有する。このような静止摩擦要素は、静止摩擦要素と地面または表面との間の側方安定性を向上させ、衣料品が地面または表面と接触するときに、それが滑り動くまたはスリップする危険性を減ずる。
【0003】
多くの人々は、履物、衣服、および運動競技者用かつ保護用の装具を着用し、これらの衣料品が使用中に静止摩擦と安定性をもたらすことを期待する。例えば、履物品は、履物品の接地面を形成するソール構造に取り付けられた静止摩擦要素を含みうる。静止摩擦要素は、着用者の足と地面との間に支持的かつ確実な接触をもたらすのを助ける保持特性をもたらす。典型的には、これらの静止摩擦要素は、履物の接地面の表面積を増大させ、多くの場合、地面を突き刺す、および/または履物の接地面とそれが接触する地面または表面との間に摩擦を生じさせるように通常形づくられるか構成される、突起物を形成する。
【0004】
通常、これらの静止摩擦要素は、履物品に対して静的である固体の突起物である。これは、静止摩擦要素および履物が単一のユニットとして動く、すなわち、静止摩擦要素は履物に対して固定された状態であることを意味する。静止摩擦要素は、歩みまたは走りのサイクルの屈伸運動および屈曲運動によって履物のソール構造の残りの部分と同じように前進する。この構成は、衣料品に加えられる様々な力または履物品が用いられている環境の変化に適合することができないため、静止摩擦能を制限する。
【0005】
サッカー、野球およびフットボールなどの特定のスポーツに取り組んでいる運動競技者は多くの場合、静止摩擦要素を有する履物を利用する。これらの運動競技者は、急なスタート、停止、ひねりおよび方向転換を有する様々な動きを行う。加えて、多くの運動競技者は、異なる状況および特徴を有する表面を伴う様々な環境下で履物品を履くことを望む。多くの場合、固定静止摩擦要素は、運動競技者が様々な動きを行うのに必要とするのに充分な支持および静止摩擦を提供することができない。固定静止摩擦要素は、これらの運動競技者の動きの変化、または運動競技者が履物品を履く様々な環境に適合することはとてもできない。むしろ、固定静止摩擦要素は、運動競技者により行われる動きの種類または履物品が履かれる環境の特徴に関わらず、全ての動きの間におよび全ての環境下で同じ種類および量の静止摩擦を与える。
【0006】
さらに、運動競技者がその上で履物品を履くことを望む様々な表面は、異なる硬度および外形を含む多くの異なる特徴を有する。例えば、運動競技者は、芝生または芝生と似た性質の合成物質で作られた競技場の上でスタッド付き履物を利用する可能性がある。これらの競技場の多くは屋外であり、かつフィールドの状況は、天候状況、表面に対して行われる様々な程度の保守、および地域的な(地理学的な)表面の違いなどに供される。例えば、どちらかと言えば軟らかい芝生のフィールド上で通常練習している運動競技者は、運動競技者が別の場所で競技を行うかまたはフィールド状況が天候によって表面が硬くなったときなどに、自身の滑り止めの付いた履物が硬い芝生のフィールド上では異なって機能することに気が付く可能性がある。全ての面に対して同一の滑り止めを装着することによって、装着者は、少なくとも履物品上に備え付けられた固定静止摩擦要素がフィールド状況下での使用に対してよく設計されていないような環境下で、落下する、滑り動く、および/または他の方法で自身を傷つける危険性がより高い。代替法は、様々な種類の静止摩擦を有する複数の異なる滑り止め付き履物を購入し、複数の異なる表面に対応することである。しかし、この方法は、費用がかかり、かつ不便である。
【0007】
したがって、いくつかの静止摩擦要素が現在入手可能だが、当技術分野において改良の余地がある。例えば、衣料品が接触する表面の種類と静止摩擦要素に加えられる力の種類に基づいて自動的に調整される静止摩擦をユーザーに与えるように自動調整しうる静止摩擦要素を備えた衣料品は、当技術分野において望ましい進歩である。
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明の局面の少なくとも一部の基本的な理解を提供するために、以下に本発明の局面の一般的な概要を示す。この概要は、本発明の広範な概説ではない。本発明の鍵となるまたはクリティカルな要素を特定すること、および/または本発明の範囲を線引きすることを意図しない。以下の概要は、下記に提供されるより詳細な説明の前段階として、本発明の概念の一部を一般的な形態で示すだけである。
【0009】
本発明の局面は、履物などの衣料品のための自動調整型静止摩擦要素に関する。例示的な履物の態様において、履物品は、1つまたは複数の自動調整型静止摩擦要素または「自動調整型スダット」を有するソール構造を組み込みうる。
【0010】
1つの例において、自動調整型スタッドは、第1の圧縮性を有する第1の部分、および第1の圧縮性より大きな第2の圧縮性を有する第2の部分を含みうる。第2の部分は、第1の部分を取り囲んでもよい。自動調整型スタッドが第1の硬度の表面と接触するとき、第1の部分および第2の部分は、実質的に圧縮され得ない。自動調整型スタッドが第2の硬度の表面と接触するとき、第1の部分は実質的に圧縮され得ず、かつ第2の部分は圧縮されうる、ここで第1の硬度が第2の硬度より小さい。
【0011】
別の例において、自動調整型スタッドは、それを通って伸びる穴およびスタッド本体中の穴を通って伸びるピンを備えるスタッド本体を含みうる。少なくともスタッド本体の一部およびピンの先端は、自動調整型スタッドの接地面を形成する。スタッド本体は、自動調整型スタッドが第1の硬度を有する表面と接触するとき、第1の伸張した位置にあり、自動調整型スタッドが第1の硬度より大きい第2の硬度を有する表面と接触するとき、第2の収縮した位置にありうる。
【0012】
さらに別の例において、ソール構造は、ソール基部材およびそれに取り付けた少なくとも1つの自動調整型スタッドを含みうる。自動調整型スタッドは、任意の上記の例示的態様であってもよい。いくつかの例において、ソール構造は、自動調整型スタッドの同じ態様または異なる態様のいずれかの1つを上回る自動調整型スタッドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明およびその特定の利点のより完全な理解は、添付の図面に沿って以下の説明を参照することによって得ることができ、図において、同様の参照番号は同様の特徴を示し、ここで:
【図1】本発明の局面による自動調整型スタッドを有する履物品の前足領域の底面斜視図を図示する。
【図2】本発明の局面による自動調整型スタッドを有する履物品のソール構造の底面図を図示する。
【図3A】本発明の局面による圧縮していない/収縮していない位置での自動調整型スタッドを有する履物品の前足領域の側面図を図示する。
【図3B】本発明の局面による圧縮させた/収縮した位置での自動調整型スタッドを有する履物品の前足領域の側面図を図示する。
【図4】図4Aおよび4Bは、本発明の局面による、圧縮していない/収縮していない位置での、および圧縮させた/収縮した位置での、圧縮性発泡体材料による自動調整型スタッドの側面図をそれぞれ図示する。
【図5】図5Aおよび5Bは、本発明の局面による、圧縮していない/収縮していない位置での、および圧縮させた/収縮した位置での、バネによる自動調整型スタッドの側面図をそれぞれ図示する。
【図6】本発明の局面による、1つの部分/端がスタッドの別の部分/端より圧縮されている自動調整型スタッドの側面図を図示する。
【図7】本発明の局面による、2つのピンを有する自動調整型スタッドを図示する。
【0014】
添付の図面は必ずしも実物大に描かれていないことを読者は留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明の様々な例示的態様の以下の説明において、本明細書の一部を形成し、かつ本発明の局面が実施されうる種々の例示的デバイス、システムおよび環境が例として示される、添付の図面について言及がなされる。本発明の範囲から逸脱することなく、部分の他の特定の配置、例示的デバイス、システム、および環境が利用されうること、および構造的および機能的改変がなされうることが、理解されるべきである。
【0016】
本明細書に開示の履物品は、自動調整型スタッドが接触する表面の種類および/または自動調整型スタッドに加えられる力の種類に基づきその静止摩擦特性を変化させ、それによりスタッドを付けた履物のより優れた全般的な他用途性および安定性を提供しかつ装着者が不測のまたは不慣れなフィールド状況によりけがをする機会を減らす、1つまたは複数の自動調整型スタッドを含む。
【0017】
A. 定義セクション
後の種々の態様の説明を助けかつ明確にするために、本明細書において様々な用語を定義する。他に指示のない限り、以下の定義が本明細書全体にわたって(特許請求の範囲を含む)適用される。
【0018】
本明細書で用いられる用語「圧縮性」は、凝縮する、よりコンパクトになる、または別の方法で大きさを低減させる第1の部分および/または第2の部分の能力を意味する。本明細書で用いられる用語「圧縮性」は、任意の方法で大きさを低減させる(高さ、幅、厚さ、容量、または任意の他の大きさの低減)自動調整型スタッドの部分の能力を記載するために用いられる。自動調整型スタッドの特定の部分は、特定のレベルの「圧縮性」を有するとして記載されてもよく、それは、自動調整型スタッドの別の部分と比較して圧縮される能力を有するよう構築されていることを意味する。
【0019】
例えば、自動調整型スタッドの第1の部分および第2の部分は、相互に関連するように、異なる「圧縮性」を割り当てられうる。第1の部分は、(体育館、人工芝、または凍結したもしくは凍結に近い状態の競技場のような硬い表面など)規定された硬度を有する表面に対して第2の部分より多くまたは少なく(態様に応じて)圧縮されうる。原子的に言うと、固形物に加えられる任意の力は、物体中の原子をある程度「圧縮」する(入手可能な最も硬い金属で作られている物体でさえ)。しかしながら、本明細書で用いられる用語「圧縮性」は、自動調整型スタッドの特定の部分で生じる圧縮の量の測定可能な違いを指すことを意味する。
【0020】
本明細書で用いられる用語「実質的に圧縮されていない」および「圧縮された」は、自動調整型スタッドの様々な部分の圧縮のレベルを記載することを意味する。上記のとおり、原子的に言うと、最も硬い物質で作られた物体であっても加えられた任意の力は、ある程度物体を「圧縮」する。用語「実質的に圧縮されていない」は、圧縮が生じないかまたは非常に少量の圧縮だけが生じる(例えば、原子同士が互いにほんのわずか近づくとき)圧縮のレベルを含むことを意図する。たとえば、チタンなどの硬い金属は、自動調整型スタッドの一部を形成するのに用いられうる。このチタン金属部分は典型的には、大抵の力が加えられても実質的に圧縮されずまたは大きさが低減しないため、「実質的に圧縮されていない」形態でそのような力に耐えることができる。
【0021】
用語「実質的に圧縮されていない」の使用は、上記のチタンの例など、原子のみが動くが、静止摩擦能の目に見えてわかる変化が生じないレベルの圧縮性を含むことを意味する。本明細書で用いられる用語「圧縮された」は、運動競技者またはユーザーの視点から自動調整型スタッドの任意の部分の容量もしくは大きさの目に見えて分かるもしくは検出可能な違い、または定規などの一般的に入手可能な測定ツールにより測定可能であるかまたは人間の目により検出可能である大きさもしくは容量の違いを記載するために用いられる。違いは、常にではないが、多くの場合、自動調整型スタッドの静止摩擦特性が運動競技者/装着者の視点から目に見えて分かる変化を呈するような大きさまたは容量の変化をもたらす。いくつかの例示的構造において、自動調整型スタッドは、その圧縮されていない大きさ/形状の5〜50%まで圧縮されうる。例えば、圧縮が垂直方向に生じている場合、自動調整型スタッドの高さは、圧縮されているときに実質的に圧縮されていないときより25%低下しうる。
【0022】
本明細書で用いられる用語「硬度」は、自動調整型スタッドと接触する表面の種類を記載するために用いられる。例えば、軟表面は、硬表面より低い硬度レベルを有する。軟表面は、芝生の競技場または弾力性のある地面を有するフィールドを含みうる。硬表面は、人工的な競技場または堅い地面を有する競技場を含みうる。下記により詳細に記載するように、自動調整型スタッドは、態様に応じて、硬表面または軟表面のいずれか上で活性化され(圧縮され/収縮され)うる。
【0023】
B. 自動調整型スタッドを有する履物品の一般的な説明
以下の記載および添付の図は、自動調整型スタッドを備える様々な履物品を開示する。自動調整型スタッドは、これに限定されないが、履物、運動用具、防具、およびマットなどの、自動調整型スタッドから恩恵を受けうる任意の製造品または衣料品に組み込まれうる。
【0024】
履物品のソール構造は、自動調整型スタッドを備えうる。自動調整型スタッドは、ソール構造とは分離した要素であってもよく、またはソール構造と一体的に形成されるかもしくはソール構造内に取り込まれてもよい。いくつかの例において、自動調整型スタッドは、ソール構造から完全に着脱可能(および/または置換可能)であってもよい。他の例において、自動調整型スタッドは、ソール構造に恒久的に取り付けられてもよく、別個の構造であってもよく、またはソール構造と同じ材料片から形成されてもよい。
【0025】
ソール構造は、任意の種類の履物品内に組み込まれうる。さらに具体的な例では、ソール構造は、運動競技者が自動調整型スタッドを備えるソール構造から恩恵を受けうる、サッカー、フットボール、野球、陸上競技、ゴルフ、登山、ハイキング、および任意の他の運動または活動を含むがこれに限定されない、運動のための競技用履物内に組み込まれる。
【0026】
概して、履物品は、ソール構造に取り付けられたアッパーを含む。ソール構造は、履物品の長さに沿って伸び、履物品の接地面を形成するアウトソールを含みうる。静止摩擦要素は、ソール構造および/または接地面(例えばアウトソール)の部分に取り付けられかつそれを形成しうる。いくつかの例において、ソール構造は、ソール基部材および1つまたは複数の自動調整型スタッドを含む。
【0027】
履物品は一般的に、説明目的のために3つの領域に分けらうる。各領域の境界は、履物の様々な領域間の厳密な区分を定義することを意図しない。履物の領域は、前足領域、中足(midfoot)領域、およびかかと領域としうる。前足領域は概して、中足指節関節および指骨を含む装着者の足の部分に関する。中足領域は概して、中足骨および足の「アーチ」を含む装着者の足の部分に関する。かかと領域は概して、かかとまたは踵骨を含む装着者の足の部分に関する。
【0028】
1つまたは複数の自動調整型スタッドは、履物品のソール構造の任意の領域または領域の組み合わせにおいて配置されうる。例えば、1つまたは複数の自動調整型スタッドは、履物品の前足領域に配置されうる。さらに、自動調整型スタッドは、内側および外側を含む履物品の任意の側面上に配置されうる。より具体的な例において、自動調整型スタッドは、履物のソール構造の内側縁または外側縁に沿って配置されうる。自動調整型スタッドはまた、履物品のかかと領域に置かれうる。自動調整型スタッドは、装着者がそれを最も必要とするときに、すなわち、特定の目標とされた活動の間に、および/または特定の種類の力が地面および/または装着者の足によりソール構造に加えられたときに、さらなる静止摩擦を与えるように戦略的に配置されうる。自動調整型スタッドは、ソール構造上におよびソール構造の任意の領域中に任意の適当な構成で配置されうる。
【0029】
運動競技者は、特定の動きの間に彼らの履物における自動調整型スタッドのさらなる静止摩擦能により大きな恩恵を受けうる。運動競技活動に参加する運動競技者は、例えば、突然のまたは急激なスタート、停止、方向転換および/またはひねりの動きを行う必要がある可能性がある。運動競技者はまた、かれらの動きの方向の素早い変更も行う。さらに、運動競技者は、様々な表面(例えば、多種多様なフィールドの状況または地形)上で競争することを希望する可能性がある。運動競技者は、これらの動きの間におよびこれらの異なる使用環境において、自動調整型スタッドから恩恵を受ける可能性がある。
【0030】
概して、静止摩擦要素(および具体的は自動調整型スタッド)は、ソール構造とそれらが接触する地面または表面との間に摩擦を生じさせ、様々な動きの間に履物品のユーザーに支持と安定性をもたらす。静止摩擦要素は、ソール構造の表面領域を増大させ、多くの場合、地面との接触が生じると地面を突き刺すように成形されるおよび/または構成される。そのような接触は、地面による履物の側面および後部のスリップおよび滑りを低減し、装着者の安定性を向上させる。自動調整型スタッドは、特定の動きに合わせられ、かつソール構造が接触する地形または表面の種類およびソール構造に加えられる力の種類に基づきその特性を変化させることができる、静止摩擦を提供することができる。
【0031】
自動調整型スタッドは、任意の適当な形状および大きさであってよい。自動調整型スタッドの表面は、滑らかまたは粗い質感であってもよく、曲線状または比較的平面であってもよい。自動調整型スタッドは、滑らかな表面を有してよく、または多角形など、角または「面」を有してもよい。自動調整型スタッドは、円錐形、長方形、ピラミッド型、多角形、または他の任意の形状であってもよい。1つの例において、履物品は、形状が全て均一である複数の自動調整型スタッドを備えうる。別の例において、単一の履物品上の複数の自動調整型スタッドは、様々な形状を有しうる。自動調整型スタッドは、任意の大きさであってよい。複数の自動調整型スタッドがソール構造に取り付けられている例示的構成において、各自動調整型スタッドは、同じ大きさおよび/または形状である、またはそれらは様々な大きさおよび/または形状である可能性がある。自動調整型スタッドの接地面は、点、平面、または任意の他の適切な構成であってよい。
【0032】
ソール構造は、1つまたは複数の自動調整型スタッドを含みうる。いくつかの例において、ソール構造は、1つの自動調整型スタッドを備える。別の例において、ソール構造は、複数の自動調整型スタッドを備える。自動調整型スタッドは、ソール構造の前足領域またはソール構造の任意の他の領域内に配置されうる。例えば、ソール構造は、複数の自動調整型スタッドを含みうる。複数の自動調整型スタッドの第1の部分は、ソール構造の前足領域の内側縁に沿って配置され、複数の自動調整型スタッドの第2の部分は、ソール構造の前足領域の外側縁に沿って配置されうる。本質的には、複数のスタッドは、ソール構造の縁に沿って前足領域を枠で囲むように配置されうる。この配置は、側面の動きの間に装着者にさらなる静止摩擦をもたらすのを助ける。
【0033】
別の例において、自動調整型スタッドは、スタッドを付けた履物のソール構造のかかと領域に配置されうる。さらに他の例において、自動調整型スタッドは、前足領域とかかと領域の両方に配置されうる。自動調整型スタッドの構成を変化させることによって、履物の静止摩擦能の種類を変化させるおよび/またはさらにカスタマイズし、装着者が特定の動きを行うかまたは様々な特性を有する表面上で活動に参加するとき、装着者にさらなる静止摩擦を与えることができる。
【0034】
履物品は、様々な種類の自動調整型スタッドを含みうる。いくつかの自動調整型スタッドは、表面状況が変化すると(すなわち、硬度および外形など)、活性化されうる。例えば、自動調整型スタッドのいくつかは、表面状況が比較的軟らかい状況から比較的硬い状況へと変化するときに活性化されうる。自動調整型スタッドは、履物品が接触する表面の状況の任意の変化により活性化されうる。
【0035】
1つの例において、自動調整型スタッドは以下を含む:第1の圧縮性を有する第1の部分、および第1の圧縮性より大きな第2の圧縮性を有する第2の部分。第2の部分は第1の部分を取り囲む。自動調整型スタッドが第1の硬度の表面と接触するとき、第1の部分および第2の部分は、実質的に圧縮されていない。自動調整型スタッドが第2の硬度の表面と接触するとき、第1の部分は実質的に圧縮されず、かつ第2の部分は圧縮される。第1の硬度は、第2の硬度より小さい。
【0036】
第1の部分は、硬質熱可塑性ポリウレタン(TPU)、金属、ゴムなどを含むがこれに限定されない、任意の種類の材料を含みうる。硬質TPUは、Shore A硬度計で90またはそれを上回る硬度、またはShore D硬度計で40より大きな硬度を有しうる。金属は、金属(例えば、鉄、アルミニウム、チタン、これらの金属の1つまたは複数を含む合金など)の合金であってもよい。第1の部分はまた、高い硬度を有する様々なプラスチックおよび他の適当な材料も含みうる。第1の部分は、本質的には第2の部分と比べて、硬い材料である。第1の部分は、第1の硬度(比較的軟らかい表面)を有する表面および第2の硬度(比較的硬い表面)を有する表面の両方と接触するとき、実質的に圧縮されない状態のままである。第1の部分は、通常の状況(例えば、硬いもしくは軟らかいフィールド、人工フィールド、または他の表面など通常の表面上で履物を履いた運動競技者により行われる通常のランニング、跳躍、および他の運動活動)下で、多数の表面と接触しても実質的に圧縮されない材料を含む。
【0037】
第1の部分はピンであってもよい。ピンは、第1の部分に関する上記の記載のように、これに限定されないが、硬質TPU、金属、金属合金、ゴム、および硬質プラスチックなどの任意の適当な材料を含みうる。ピンは、その幅より大きな長さを有しうる。いくつかの例示的態様において、ピンは、ピンの先端が第2の部分の接地面と同じ高さであるかそれを超えて伸びるように、第2の部分の高さと少なくとも同じ大きさの長さを有しうる。ピンは、丸い、平らな、もしくは斜めの先端、または任意の他の適当な先端を有しうる。ピンの先端および第2の部分の接地面は、自動調整型スタッドの接地面を形成しうる。ピンの先端は、第2の部分の表面と同一平面であってもよく、または第2の部分が実質的に圧縮されていないとき、第2の部分内に引っ込んでもよい。任意の構成において、ピンの先端は、第2の部分が少なくとも予め定められた容量に圧縮されると、第2の部分の表面を超えて伸びる。ピンの幅は、自動調整型スタッドの接地面の25%未満を占めうる(すなわち、それは第2の部分の表面よりかなり小さい可能性がある)。
【0038】
この例示的自動調整型スタッドの第2の部分は、圧縮可能である。第2の部分は、圧縮可能な発泡体、ゴム、および軟質熱可塑性ポリウレタン(TPU)など、圧縮することができる任意の様々な材料を含みうる。第2の部分はまた、第2の部分の大きさを低減することができる2プレート構造、または他の「圧縮する」方法も含みうる。この2プレート構造は、第1のプレートに力が掛かると2つのプレート間の空間が減少する(または無くなるまで低減される)ように、お互いに離れて間隔をおいて配置される第1のプレートおよび第2のプレートを少なくとも含む。圧縮可能な発泡体またはバネ(巻バネ、板バネなど)は、力が第1のプレートに加えられるときに圧縮可能な発泡体またはバネが圧縮されるように、第1のプレートと第2のプレートの間の空間内に位置づけてもよく、力が第1のプレートから取り除かれた後に、プレートをお互いから離して元の状態に戻るようバイアスをかけることを助ける。第2の部分は、この例示的構築物において3 mmまで圧縮されうる。
【0039】
第2の部分は、自動調整型スタッドのこの例では第1の部分を完全に取り囲むが、これは全てのそのような構造における必要状況ではない。より具体的な例として、第2の部分は、第1の部分に近接して配置されてもよく、または第1の部分から少し離れて配置されてもよい。第2の部分は、第1の部分に近接して、およびこの例では第1の部分に物理的に触れる位置で、配置されうる。第2の部分は、第2の部分が第1の部分の長さに沿って圧縮されうるように、第1の部分に対して任意の適切な様式で配置されうる。第1の部分がピンである上記の例において、第2の部分は、力が自動調整型スタッドに加えられると(例えば、自動調整型スタッドが硬い表面に接触すると)、第2の部分が圧縮されるにつれて、第2の部分がピンの縦方向の長さの表面に沿って滑り動くことを可能にする様式で、第1の部分と近接しておよび第1の部分と直接物理的に接触して配置されうる。
【0040】
自動調整型スタッドのこの態様において、自動調整型スタッドが第1の硬度の表面と接触するとき、第1の部分および第2の部分は実質的に圧縮されない。自動調整型スタッドが第2の硬度の表面と接触するとき、第1の部分は実質的に圧縮されず、かつ第2の部分は圧縮される。この例において、第1の硬度は第2の硬度より小さい(すなわち、第1の硬度の表面は、第2の硬度の表面より「軟らかい」または「柔軟性がある」)。このように、第2の部分は、地面から離れる方向に「剥離する」、圧縮される、または他の方法で収縮されるが、第1の部分は、実質的に圧縮されない状態のままであり、地面に突き刺さる。第2の部分が圧縮されると、より多くの量の第1の部分が露出する。第1の部分はピンであるこの例において、ピンの長さの多くは、第2の部分が圧縮されると露出する。これは、ピンの多くの長さが地面または他の表面に突き刺さることを可能にし、さらなる静止摩擦を与える。いくつかの例示的構造において、第2の部分は、(地面から離れて)ピンの長さに沿って3 mmまでまたはそれを上回って圧縮される。
【0041】
いくつかの例において、ピン(または第1の部分)は、第2の部分が実質的に圧縮されていないとき、その先端が第2の部分の表面を超えて伸びるように配置される。この構成において、ピンの先端は、第2の部分の表面をわずかに超えて伸び、よって第2の部分が実質的に圧縮されていないとき、ある程度の静止摩擦を与える。第2の部分が圧縮されると、ピンのより多くの長さが地面に突き刺さりうるため、ピンが与えることができる静止摩擦のレベルおよび/または静止摩擦の種類が増大する。他の例において、ピンは、第2の部分と同じ高さである、または第2の部分内にさらに引っ込み、その場合、第2の部分が実質的に圧縮されていないとき、ピンがほとんどまたは全く静止摩擦を与えない。この他の例において、第2の部分が圧縮されるまたは他の方法で収縮されるときにだけ、ピンが露出する。第2の部分が圧縮される/収縮されると、ピンは地面に突き刺さることができ、それによってさらなる静止摩擦を有する自動調整型スタッドがもたらされる。
【0042】
第2の部分は、履物品のソール構造または任意の他の部分と一体的に形成されてもよく、またはそれらに取り付けられてもよい。ピンもまた、履物品のソール構造または任意の他の部分と一体的に形成されてもよく、またはそれらに取り付けられてもよい。例えば、ピンは、履物品のソール構造の基部プレートに取り付けられてもよく、かつ第2の部分は、ソール構造のアウトソールに取り付けられるかまたはそれと一体的に形成されてもよい。この例において、ピンは、ソール構造の基部プレートにセメントで接合させる、接着剤で接着させる(glued)、結合させる(bonded)、および/または機械的コネクタを介して取り付けることができる。
【0043】
自動調整型スタッドのこれらの例示的構成は、自動調整型スタッドが比較的硬い地面(例えば、第2の部分を圧縮させるのに十分な硬度の地面)と接触するときに有用である。これらの構成は、硬い地面が第2の部分と接触し、それを圧縮させかつ第1の部分(またはピン)の一部(または大部分)を露出させたときに、自動調整型スタッドを「活性化」する。次いで、ピンは、固い地面に突き刺さり、硬い地面でさらなる静止摩擦を与えることができる。この例示的自動調整型スタッドが、第2の部分を実質的に圧縮させずかつ第1の部分または第1の部分の大部分を露出させない軟らかい地面と接触する際には、さらなる静止摩擦は活性化されない。
【0044】
これらの例示的構成において、第2の部分は任意の適当な量を圧縮しうる。例えば、圧縮された第2の部分の大きさは、圧縮されていない第2の部分の大きさより少なくとも5%小さくてもよい。別の例において、圧縮された第2の部分の大きさは、圧縮されていない第2の部分の大きさより少なくとも25%小さく、またはさらに少なくとも50%小さくてもよい。
【0045】
本発明の具体的な例は、下記により詳細に記載される。読者は、これらの具体的な例が本発明の例を例示するためだけに記載されており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを、理解するはずである。
【0046】
C. 自動調整型スタッドを有する履物品の具体的な例
本願における様々な図が、本発明による自動調整型スタッドを有する履物品の例を図示する。同じ参照番号が1つより多い図面で現れるとき、その参照番号は、全体を通して同一のまたは類似する部分を指すように本明細書および図面において一貫して用いられる。
【0047】
図1〜7は、「自動調整型スタッドを有する履物品の一般的な説明」と題する段落において上記に記載される態様1の具体的な例を図示する。図1は、履物品100の前足領域の一部の底面斜視図を図示する。履物品100は、アッパー102およびアッパー102に取り付けられたソール構造104を有する。4つの自動調整型スタッド106、108、110および112は、ソール構造104に取り付けられるか、またはそれと一体的に形成される。2つの固定静止摩擦要素114、116もまた、ソール構造104に取り付けられるか、またはそれと一体的に形成される。自動調整型スタッド106、108、110および112はそれぞれ、スタッド本体118およびピン120を含む。スタッド本体118は、スタッド本体118を通って伸びる穴を画定する。この例において、穴は、スタッド本体118の高さ122全体を通じて伸びる。他の例において、穴は、スタッド本体118の高さ122の一部だけわたって伸張しうる。
【0048】
図1および2に図示する例示的構築物において、スタッド本体118の穴は、スタッド本体118が第1の伸張した位置から第2の収縮した位置まで収縮したときに、ピン120の長さに沿って滑り動くかまたは他の方法で動くことができるように、ピン120の半径よりわずかに大きい半径を有する大きさである。ピン120は、スタッド本体118の穴の少なくとも一部を通って伸張する長さを有する。この例において、ピン120は、スタッド本体118が第1の伸張した位置および第2の収縮した位置の両方であるとき、スタッド本体118の高さ122を超える高さを有する。いくつかの例において、ピン120は、スタッド本体118が第2の収縮した位置であるときのみに、スタッド本体118の高さ122を超える高さを有する(例えば、ピンの高さが、スタッド本体が第1の伸張した位置であるときに、スタッド本体の高さより低いかまたは同じであるとき)。他の例示的構成において、ピン120は、スタッド本体118の高さ122より低いまたはそれと同じ高さを有しうる。
【0049】
図1および2に図示する例において、ピン120の先端124は、スタッド本体118の第2端128の表面を超えて伸張する。他の例において、ピン120の先端124は、スタッド本体118の第2端128の表面と同じ高さであるか、またはスタッド本体118内に引っ込んでいてもよい。スタッド本体118内のピン120の位置決めに関係なく、この例示的構造のピン120の長さは、ピン120の半径(または形状によっては幅)を超える。本質的には、ピン120は、縦長である。図1および2に図示する態様などのいくつかの例において、ピン120は概して、長く細い。
【0050】
スタッド本体118は、ソール構造104に近接する第1端126、第1端126の反対側の第2端128、および第1端126および第2端128を相互に連結させる側壁130を有する。第1端126は、ソール構造104に恒久的に取り付けられるかもしくはそれと一体的に形成されてもよく、またはソール構造104から選択的に取り外し可能であってもよい。この例示的構造において、側壁130は、自動調整型スタッド106、108、110および112の全般的な形状が概して、涙のしずく状の三次元形状となるように、滑らかかつ曲げられている。さらに、側壁130は、自動調整型スタッド106、108、110および112がソール構造104から離れるにつれ先が細くなるように成形される。自動調整型スタッド106、108、110および112は、任意の適切な様式で成形された1つまたは複数の側壁130を備えうる。自動調整型スタッド106、108、110および112の全般的な形状は、任意の適当な形状であってもよい。第2端128およびピン120の先端124は、自動調整型スタッド106、108、110および112の接地面を形成する。スタッド本体118の第2端128は平面であるが、任意の他の適当な構成(例えば、斜めの、尖った、角のあるなど)を有しうる。ピン120の先端124は、この例では丸みを帯びており、任意の他の適当な構成(例えば、斜めの、尖った、角のあるなど)を有してもよい。
【0051】
スタッド本体118は、軟質TPU(Shore Aスケールで90を下回る硬度を有するTPU)、ゴム、および圧縮可能な発泡体などを含むがこれに限定されない、任意の適当な材料を含みうる。ピン120は、硬質TPU(Shore Aスケールで90を上回る硬度またはShore Dスケールで40を上回る硬度を有するTPU)、金属または金属合金などを含むがこれに限定されない、任意の適当な材料を含みうる。
【0052】
図2は、履物品100のソール構造104の底面図を図示する。ソール構造104は、4つの自動調整型スタッド106、108、110および112ならびに4つの固定静止摩擦要素114、116、132および134を備える。4つの自動調整型スタッド106、108、110および112は、ソール構造104の前足領域に配置される。第1および第2の自動調整型スタッド106および108は、前足領域においてソール構造104の内側縁に沿って配置される。第3および第4の自動調整型スタッド110および112は、前足領域においてソール構造104の外側縁に沿って配置される。第1の自動調整型スタッド106は、装着者の足が履物品100内に位置づけられるとき、第1指骨(「足の親指」)の少なくとも一部の真下に及ぶように、ソール構造104上に配置される。第2の自動調整型スタッド108は、装着者の足が履物品100内に位置づけられるとき、第1中足指節関節のほぼ真下に伸びるように、ソール構造104上に配置される。第3の自動調整型スタッド110は、装着者の足が履物品100内に位置づけられるとき、第5指骨の少なくとも一部の真下に伸びるように、ソール構造104上に配置される。第4の自動調整型スタッド112は、装着者の足が履物品100内に位置づけられるとき、装着者の足の第5中足指節関節の少なくとも一部の真下に伸びるように、ソール構造104上に配置される。
【0053】
ピン120は、スタッド本体118の任意の部分内に配置されうる。たとえば、ピン120は、スタッド本体118の中心に、またはスタッド本体118の1つまたは複数の縁に沿って配置されうる。図1および2に図示する例において、ピン120は、スタッド本体118の縁の近くに配置される。
【0054】
図2に図示したソール構造104はまた、4つの固定静止摩擦要素114、116、132および134も含む。固定静止摩擦要素114、116、132および134は、任意の種類の力がソール構造104および/または固定静止摩擦要素114、116、132および134に加えられるとき、固定された状態のままである。この例示的構造において固定静止摩擦要素114、116、132および134は、力が固定静止摩擦要素114、116、132および134ならびに/またはソール構造104に加えられたとき、その形状、大きさ、または機能を調整しないまたは他の方法で変化させない。第1の固定静止摩擦要素114および第2の固定静止摩擦要素116は、内側縁と外側縁の間のほぼ中央に位置する、履物品100の前足領域に配置される。
【0055】
第1の固定静止摩擦要素114は、装着者の足が履物品100内に位置づけられるとき、装着者の足の第2、第3および/または第4中足骨の少なくとも一部のほぼ真下のソール構造104上に配置される。第2の固定静止摩擦要素116は、装着者の足が履物品100内に位置づけられるとき、装着者の足の第2、第3および/または第4中足指節関節の少なくとも一部のほぼ真下のソール構造104上に配置される。第1および第2の固定静止摩擦要素114、116は、この例では同じような形状をしているが、それぞれ任意の適切なまたは望ましい形状をとりうる。第1および第2の固定静止摩擦要素114、116は、ソール構造104の表面から離れるにつれ先細になり、その接地面でエッジ136を画定する。第1および第2の固定静止摩擦要素114、116のエッジ136は、図1および2に図示する例では丸みを帯びている。しかし、固定静止摩擦要素114、116の接地面は、任意の適当な形状または構成(例えば、鋭い先端、斜めの端、平面など)をとってもよい。
【0056】
図2に図示した第3および第4の固定静止摩擦要素132、134は、履物品100のかかと領域のソール構造104上に配置される。第3の固定静止摩擦要素132は、かかと領域においてソール構造104の内側縁に沿って配置され、第4の固定静止摩擦要素134は、かかと領域においてソール構造104の外側縁に沿って配置される。この例において、第3および第4の固定静止摩擦要素132、134は、2つの静止摩擦領域138、および2つの静止摩擦領域138を相互に接続するブリッジ140を備える。第3および第4の固定静止摩擦要素132、134は、任意の適当なまたは望ましい様式に成形されうる。
【0057】
スタッド本体118の少なくとも一部およびピン120の先端124は、自動調整型スタッド106、108、110および112の接地面を形成する。スタッド本体118は、自動調整型スタッド106、108、110および112が第1の硬度を有する表面と接触するとき、第1の伸張した位置をとり、スタッド本体118は、自動調整型スタッド106、108、110および112が第1の硬度より大きい第2の硬度を有する表面と接触するとき、第2の収縮した位置をとる。図3Aおよび3Bは、第1の伸張した位置および第2の収縮した位置でのスタッド本体118をそれぞれ図示する。第1の伸張した位置では、図3Aに図示するとおり、ピン120の先端124がスタッド本体の高さ122をわずかに越えて伸びる。第2の収縮した位置では、図3Bに示すとおり、スタッド本体118は、ピン120の大部分が露出する(例えば、ピン120の先端124にピン120の本体142沿って追加の長さを加える)ように、収縮する(または他の方法で圧縮される、大きさおよび/もしくは容量が低減されるなど)。この相対的に細く、狭く、硬いピン120は、スタッド本体118が収縮すると、硬い地面により深く突き刺さり、それにより硬い地面に食い込み、硬い地面において改善された静止摩擦を与えることができる。
【0058】
図4Aおよび4Bは、自動調整型スタッドのある態様の側面図を図示する。この例において、スタッド本体118は、力がスタッド本体118に加えられると圧縮される、圧縮可能な発泡体またはゴム様の材料を含む(力は、図4Bでは矢印で図示される)。自動調整型スタッド本体118は、十分な硬度を有する表面と接触すると圧縮される。本明細書で用いられる「十分な硬度」は、スタッド本体118を圧縮/収縮させるのに十分な力をスタッド本体118に加える任意の表面を含むことを意味する。力が取り除かれると、スタッド本体118はその「圧縮されていない」または「収縮していない」(すわなち、自然な)状態に戻るよう伸張する。スタッド本体118の圧縮可能な発泡体材料は、その圧縮されていない/収縮されていない位置に戻るようスタッド本体118にバイアスをかける。バネもまた、スタッド本体118に含まれる可能性があり、さらに自動調整型スタッドから力が取り除かれた後にその圧縮されていない/収縮されていない位置に戻るようスタッド本体118にバイアスをかけるのを助けうる。バネは、巻バネまたは板バネなどの任意の種類のバネであってもよい。
【0059】
図5Aおよび5Bは、自動調整型スタッドのある態様の側面図を図示する。この態様において、スタッド本体118は、それらの間に空間148の範囲を画定する、第1のプレート144および第2のプレート146を含む2プレート構造を含む。スタッド本体118が第1の伸張した(圧縮されていない)位置をとるとき、第1のプレート144と第2のプレート146の間の空間148は、第1の距離150となる。スタッド本体118を圧縮するのに十分な力が十分に自動調整型スタッドに加えられるとき(例えば、自動調整型スタッドが硬い地面と接触するとき)、スタッド本体118は、その第2の収縮された(圧縮された)位置に収縮されるまたは圧縮される。第2の収縮された(圧縮された)位置では、第1のプレート144と第2のプレート146との間の空間148は、第2の距離152となる。第1のプレート144と第2のプレート146との間の第1の距離150(スタッド本体118が、その第1の収縮されていない/圧縮されていない位置であるとき)は、第1のプレート144と第2のプレート146との間の第2の距離152(スタッド本体118が、その第2の収縮した/圧縮した位置であるとき)より大きい。第1のプレート144と第2のプレート146の間の空間148内に、圧縮可能な発泡体、バネ(たとえば、巻バネまたは板バネ)、または第1のプレート144および第2のプレート146にもとの状態へ離すようバイアスをかける(すわなち、加えられた力が取り除かれた後、スタッド本体118の収縮されていない/圧縮されていない位置に戻す)任意の他のメカニズムが配置されうる。
【0060】
図6は、自動調整型スタッドの側面図を図示する。いくつかの例において、スタッド本体118は、異なる量を圧縮/収縮するかつ復元/回復することができる第1の部分および第2の部分を備える。図6は、第1の部分がスタッド本体118の第1端154にあり、かつ第2の部分が第1端154の反対側の第2端156にある、例示的構築物を図示する。この例では、力が自動調整型スタッドに加えられると、第1端154は第1の距離160に圧縮/収縮され、第2端156は、第1の距離160より大きな第2の距離158に圧縮/収縮される。このスタッド本体118の長さに沿って異なる量を圧縮する能力は、加えられた力が1歩サイクルの間にソール構造に沿って移動するため、より自然かつ心地よい感触を提供する助けとなることができる。
【0061】
図4A〜7は、スタッド本体118の少なくとも一部が圧縮される、様々な例示的構築物を図示する。スタッド本体118は、任意の望ましい量を圧縮しうる。例えば、スタッド本体118は、スタッド本体118の元の圧縮されていない高さの50%まで圧縮されうる。他の例では、スタッド本体118の一部が、スタッド本体118の元の圧縮されていない高さの50%まで圧縮されうる。例えば、図5Aおよび5Bは、圧縮されていない状態(図5A)および圧縮した状態(図5B)のスタッド本体118をそれぞれ図示する。図5Bに図示したスタッド本体118の圧縮状態は、図5Aに図示した圧縮していない状態のスタッド本体118の高さのおよそ25%である。
【0062】
図7は、自動調整型スタッドの別の例示的構築物の側面図を図示する。この例では、自動調整型スタッドは、第1の穴および第2の穴を有するスタッド本体118を含む。自動調整型スタッドはまた、第1の穴を通って伸びる第1のピン162および第2の穴を通って伸びる第2のピン164も含む。自動調整型スタッドは、任意の適当なまたは望ましい数のピンおよび対応する穴を含みうる。
【0063】
自動調整型スタッドのこの例示的態様は、滑らかな曲線形を有する要素によって記載され、例示される。代替的な態様は、1つまたは複数の平らな側面またな任意の他の外形および形状の構成を有する要素を含みうる。
【0064】
D. 履物品における自動調整型スタッド
自動調整型スタッドを組み込む履物品は、「クリートシューズ」または「スパイクシューズ」として公知の運動競技用履物であってもよい。そのような自動調整型スタッドを備えたクリートシューズは、サッカー、野球、ゴルフ、フットボール、ハイキング、登山、ラクロス、およびフィールドホッケーなどの多様な運動において有用でありうる。
【0065】
履物品は、装着者の足を収容するための空間の範囲を共に画定する、ソール構造およびソール構造に取り付けられたアッパーを含みうる。ソール構造は、ソール基部材および少なくとも1つの上記自動調整型スタッドを含みうる。自動調整型スタッドは、ソール基部材に取り付けられる、またはそれと一体的に形成される。ソール構造は、2つまたはそれを上回る自動調整型スタッドを含んでもよい。ソール構造が2つまたはそれを上回る自動調整型スタッドを含む例では、自動調整型スタッドは全て同じ構築物であってもよく、またはそれらは異なる構築物であってもよい。例えば、ソール構造は、一方が上記の第1の態様に記載の構築物のものであり、かつ2番目が上記の第2の態様に記載の構築物のものである、2つの自動調整型スタッドを含みうる。
【0066】
自動調整型スタッドは、ソール構造の任意の領域においてソール基部材上に配置されうる。例えば、1つまたは複数の自動調整型スタッドは、ソール構造の前足領域および/またはかかと領域に配置されうる。より具体的には、1つまたは複数の自動調整型スタッドは、ソール構造の前足領域および/またはかかと領域の内側縁および外側縁のいずれかまたはその両方に沿って配置されうる。
【0067】
D. 結論
本発明は、本発明を実行する現在の実施形態を含む特定の例について記載しているが、多数の変形形態ならびに上記システムおよび方法の置換も実行されうる。よって、本発明の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲に記載のとおりに広範に解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧縮性を有する第1の部分;および
第1の部分を取り囲む、第1の圧縮性より大きい第2の圧縮性を有する第2の部分
を含む、自動調整型スタッドであって、自動調整型スタッドが第1の硬度の表面と接触する際に、第1の部分および第2の部分は実質的に圧縮されず、かつ自動調整型スタッドが第2の硬度の表面と接触する際に、第1の部分は実質的に圧縮されずかつ第2の部分は圧縮され、かつ第1の硬度は第2の硬度よりも小さい、自動調整型スタッド。
【請求項2】
第1の部分が熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項3】
第1の部分が金属を含む、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項4】
第1の部分がピンである、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項5】
第2の部分が実質的に圧縮されていないとき、ピンの自由端が第2の部分の外面と同じ高さである、請求項4記載の自動調整型スタッド。
【請求項6】
第2の部分が実質的に圧縮されていないとき、ピンが第2の部分内に引っ込む、請求項4記載の自動調整型スタッド。
【請求項7】
第2の部分が圧縮可能な発泡体材料を含む、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項8】
第2の部分が、力が第1のプレートに加えられるときに第1のプレートと第2のプレートの間の空間が減少するように、離れて間隔をおいてある第1のプレートおよび第2のプレートを含む2プレート構造を含む、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項9】
第1のプレートと第2のプレートの間の空間が、圧縮可能な発泡体材料で少なくとも部分的に満たされている、請求項8記載の自動調整型スタッド。
【請求項10】
バネが、第1のプレートと第2のプレートの間の空間内に配置され、かつ第2第1の部分が圧縮されるとき、バネが圧縮される、請求項8記載の自動調整型スタッド。
【請求項11】
バネが板バネを含む、請求項10記載の自動調整型スタッド。
【請求項12】
圧縮された第2の部分の大きさが、圧縮されない第2の部分の大きさより少なくとも5%小さい、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項13】
圧縮された第2の部分の大きさが、圧縮されない第2の部分の大きさより少なくとも25%小さい、請求項1記載の自動調整型スタッド。
【請求項14】
その中心領域を通って伸びる穴を有するスタッド本体;および
スタッド本体中の穴を通って伸びるピンであって、スタッド本体の少なくとも一部およびピンの先端が自動調整型スタッドの接地面を形成する、ピン
を含む、自動調整型スタッドであって、自動調整型スタッドが第1の硬度を有する表面と接触する際に、スタッド本体は第1の伸張した位置にあり、かつ自動調整型スタッドが第1の硬度より大きい第2の硬度を有する表面と接触する際に、スタッド本体は第2の収縮した位置にある、自動調整型スタッド。
【請求項15】
スタッド本体が熱可塑性ポリウレタン材料を含む、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項16】
スタッド本体が、圧縮可能な発泡体材料を含む、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項17】
ピンが金属材料を含む、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項18】
スタッド本体が、第1のプレートおよび第2のプレートを含む2プレート構造、ならびにそれらの間に画定される空間を含み、スタッド本体が第1の伸張した位置にある際、第1のプレートと第2のプレートの間の空間は第1の距離となり、かつスタッド本体が第2の収縮した位置にある際、第1のプレートと第2のプレートの間の空間は第2の距離となり、第1の距離が第2の距離より大きい、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項19】
空間が、圧縮可能な発泡体材料で少なくとも部分的に満たされている、請求項18記載の自動調整型スタッド。
【請求項20】
第1のプレートと第2のプレートの間の空間内に配置されているバネをさらに含む、請求項18記載の自動調整型スタッド。
【請求項21】
バネが板バネである、請求項20記載の自動調整型スタッド。
【請求項22】
スタッド本体中の穴が、スタッド本体が収縮する際にスタッド本体がピンの長さに沿って滑り動くことができるように、ピンの半径よりわずかに大きい半径を有するような大きさに作られている、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項23】
ピンが、スタッド本体の穴を通って伸びる長さを有し、ピンの長さはピンの幅を超えている、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項24】
ピンが第1のピンであり、かつスタッド本体は、そこを通って伸びる第2の穴を有し、かつスタッド本体中の第2の穴を通って伸びる第2のピンをさらに含んでいる、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項25】
ピンの先端が丸みを帯びている、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項26】
ピンが、スタッド本体の穴を通って伸びる長さを有し、かつピンの長さが、スタッド本体が第2の収縮した位置をとる際に、スタッド本体の高さを超える、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項27】
ピンが、スタッド本体の穴を通って伸びる長さを有し、かつピンの長さが、スタッド本体が第1の伸張した位置をとる際に、スタッド本体の高さを超える、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項28】
スタッド本体が第1の部分および第2の部分を有し、かつ、スタッド本体が第2の収縮した位置にある際に、第1の部分が第1の量を収縮し、かつ第2の部分が第1の量より大きい第2の量を収縮する、請求項14記載の自動調整型スタッド。
【請求項29】
第一の部分がスタッド本体の第1端であり、かつ第2の部分が、第1端の反対側にあるスタッド本体の第2端である、請求項28記載の自動調整型スタッド。
【請求項30】
ソール基部材;および
ソール基部材に取り付けられている、少なくとも1つの請求項1記載の自動調整型スタッドを
含む、ソール構造。
【請求項31】
請求項1記載の第1の自動調整型スタッドおよび請求項1記載の第2の自動調整型スタッドを含む、少なくとも2つの自動調整型スタッドをさらに含む、請求項30記載のソール構造。
【請求項32】
第1の自動調整型スタッドが、ソール構造の前足領域の内側縁に沿ってソール基部材に取り付けられ、かつ第2の自動調整型スタッドが、ソール構造の前足領域の外側縁に沿ってソール基部材に取り付けられている、請求項31記載のソール構造。
【請求項33】
自動調整型スタッドが、ソール構造のかかと領域でソール基部材に取り付けられている、請求項30記載のソール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−520230(P2013−520230A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553920(P2012−553920)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022841
【国際公開番号】WO2011/102950
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】