説明

自動車ドア用シール

シールストリップ(4)は、ドア(D)と相互作用する管状のシール部(6)が接続された固定部(5)を含む。シール部(6)は、シールストリップ(4)がドア(D)の閉鎖によって押し潰されたときに、その中に包含する空気を外側に向かって放気することを可能にするのに適した複数の通気開口(15)を有し、ドアを閉鎖したときに、ストリップ(4)のエッジ(3)の、上部(3a)に適用される部分全体に亘って大きな接触圧力を作用させ、エッジ(3)の下部(3b)および側部(3c,3d)に適用される部分に小さい接触圧力を作用させるのに適した断面を有する。シール部(6)の通気開口(15)は、ストリップ(4)の、エッジ(3)の第2の側部(3d)に適用される部分にのみ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のシールストリップ一般に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、概ね垂直な軸の周りに開放位置と閉鎖位置との間で揺動可能なドアと係合する自動車の車体の開口のエッジのためのシールストリップに関する。前記開口のエッジは、前記軸の近くの第1の側部および前記軸から遠くの第2の側部によって接続された上部および下部を含む。
【0003】
特に、本発明は、ドアと相互作用することが企図される管状のシール部が接続された固定部を含むタイプのストリップであって、シール部は、該シール部がドアの閉鎖により押し潰されたときに、その中に包含する空気を大気に向かって放気可能にする複数の通気開口を有するものを提案する。
【背景技術】
【0004】
欧州特許出願EP0115750A1は、このタイプの押出エラストマストリップであって、シールの問題を解決し、管状のシール部がストリップの自動車の対応する開口のエッジの角部に結合させられることが意図される部分におけるシール部の外観を矯正するために、これらの角部において増大した壁厚を有するものを記載する。
【0005】
仏国特許出願FR2862574Aは、同様の自動車用シールストリップであって、車体により生成された低周波ノイズの車室への伝導を低減するために、シール部の壁厚を、車体の開口の上部の端部のみにおいて部分的に増加し、前記端部の間にある中間部分において減少したものが開示されている。この解決策は、水、空気および埃に対する密閉性の問題を大きくし、車体の開口の上部において、車室への外部ノイズの進入をもたらすかもしれない。
【0006】
欧州特許出願EP0407364A1は、管状のシール部が、ストリップの全長に亘って実質的に一定の壁厚を有するが、自動車の車体の対応する開口のエッジの重要な部分において拡大した断面を有する押出シールストリップを開示する。
【0007】
最初に説明したタイプのシールストリップは、現在、多くの問題があることが発見されている。
【0008】
第1に、有効な水、空気および埃に対する密閉性を提供するために、シール部は、ドアに対する接触圧力が最終的に高くなるように形成されなければならない。しかしながら、ドアを閉鎖するために必要な力(またはエネルギ)を最小化するために、ストリップのシール部は、ドアが閉じられたときに、少なくともドアによる変形に対抗力を提示しなければならない。
【0009】
よって、これら2つの要求、つまり、シール作用の効率とドアの閉鎖に必要なエネルギの低減とは、互いに相反する。
【0010】
他の設計上の要求によれば、上記のタイプのシールストリップは、自動車の中に進入しようとする外部ノイズの最大限の減衰を提供できることが望ましい。
【0011】
特に水に対するシール作用に関して、この要求は、自動車の車体の開口の前部および後部において、静止状態および動的状態において、これらの部分が浸潤の可能性に大きく晒されるために、より注目される。これは、一般に、自動車が高速で移動するとき、空力作用によって車室内の気圧が外部の圧力よりも高くなりがちであり、それにより圧力差が、ドアを、自動車の車体の対応する開口に固定された当接しているシールストリップから遠ざけるように移動させようとすると考えられるのであれば、明確となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの課題は、最適に機能して、自動車の車体の開口の様々な部分における上述の相反する要求を含む異なる要求に適合する押出シールストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題および他の課題は、本発明によれば、上述のタイプのシールストリップであって、
シール部が、ドアが閉じられたときに、ドアに対して、該ストリップの、自動車の開口のエッジの前記上部にされる部分の全てに亘って増大した接触圧力を、前記エッジの下部および側部に適用される部分に低減した接触圧力を作用させるのに適する断面を有し、
前記シール部の前記通気開口が、専ら、前記エッジのドアの揺動の軸から遠い方の第2の側部に適用されるストリップの側部に形成されている、シールストリップにより達成される。
【0014】
1つの実施形態において、シール部は、前記エッジの上部全体に亘って増大した厚み(外側に向かっておよび/または内側に向かって)を有し、このエッジの下部および側部に沿って減少した厚みを有する。
【発明の効果】
【0015】
自動車の車体の開口の上部のストリップのシール部の増大した壁厚は、より浸潤の危険に晒されると知られている部分において、水、空気および埃に関するシール作用を実質的に改善する。同時に、この壁厚の増大は、外側から車室内に進入しようとするノイズのよりよい減衰を提供する。外部ノイズの減衰は、自動車の使用中に乗客の耳に近く、それ故にノイズの進入の観点でより重要なストリップの上部のシール部に通気開口が存在しないことによってさらに増大する。
【0016】
シールの下部および側部の管状のシール部の壁厚の減少は、ドアを閉鎖するために必要なエネルギの低減を可能にする。ストリップの下部およびドアの旋回の軸に近いストリップの側部に通気開口が存在しないことは、車室へのノイズの伝導のさらなる低減の提供を助ける。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、単なる非限定的例示の方法として提供され、添付の図面を参照する以下の詳細な説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るシールストリップを備える、側部ドア用開口を有する自動車の車体の部分側面図である。
【図2】実質的に図1のII−II線を通してとった部分断面図である。
【図3】実質的に図1のIII−III線を通してとった部分断面図である。
【図4】実質的に図1のIV−IV線を通してとった部分断面図である。
【図5】管状のシール部の壁厚の変化を示す、本発明に係るシールストリップの断面図である。
【図6】管状のシール部の壁厚の変化を示す、本発明に係るシールストリップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、符号1は、開口2を有する乗用車のような自動車の車体の全体を示す。図示した例示的実施形態において、開口2は、自動車の前側の側部ドア(不図示)のために開口している。
【0020】
以下の説明において、開口2に係合するドアは、公知の方法で開放位置と閉鎖位置との間で、図1においてA−Aで示した少なくとも概ね垂直な軸の周りに揺動され得る。
【0021】
開口2は、軸A−Aに近い第1側部3cおよび軸A−Aから遠い第2側部3dによって接続された上部3aおよび下部3bを含んだエッジ3を有する。
【0022】
全体を4で示した押出シールストリップが、開口2のエッジ3に固定されている。
【0023】
例えば図2を参照すると、ストリップ4は、実質的にU字型または溝型で、弾性材料からなる固定部5を有し、固定部5には、例えば多孔質の弾性材料からなり、固定部5と一体に押し出し成形された管状のシール部6が接続されている。
【0024】
図示した例示的実施形態において、固定部5は、例えば金属からなり、押出成形の際に組み込まれたコア7を含む。
【0025】
固定部5は、自動車の車体の開口のフランジ状のエッジ3の両側に係合する、対向する2列の柔軟な保持フィン8および9を含む。
【0026】
図示した例示的実施形態において、固定部5は、また、使用時に自動車の内側に面する側部羽根10と、シールフィン11(例えば図2参照)とを有する。
【0027】
図示した例示的構成の管状のシール部6は、内部を2つの隣接するチャンバ13および14に分割する中間長手区分壁12を有する(しかしながら、中間長手区分壁12の存在は必須ではない)。加えて、シール部6の周辺壁は、壁または半壁6bに接続された、壁または半壁6aを含む。壁または半壁6aは、湾曲した外側に凸状の部分である。壁または半壁6bは、断面において曲がった形状を有し、根元または近位部が外側に凸状で、遠位部が外側に凹状である。しかしながら、この構成は、シール部6が図6に示すように単純な湾曲形状を有してもよいので、必須ではない。
【0028】
図2を参照すると、凸型に湾曲した壁6aの遠位部は、特にこの図では破線で示した自動車のドアDと係合することが意図される。
【0029】
本発明によれば、ストリップ4のシール部は、少なくともストリップの壁部6aにおいて、上部3aでは増大した厚み(外側に向かっておよび/または内側に向かって)を有し、下部3bおよび側部3c,3dでは減少した壁厚を有する。これは、図2,3および4を見比べることで明らかとなる。
【0030】
加えて、ストリップ4の、開口2のエッジの軸A−Aから遠い側部3dに適用される部分のみにおいて、管状のシール部6は、ドアDの閉鎖により側部3dが押し潰されたときに、この部分チャンバ13に含まれる空気を外側に向かって放気するのに適した複数の通気穴15(図3)を有する。
【0031】
開口15は、貫通穴で有り得、例えば、円形であるか、スロット状に延長され得る。これらの穴または開口は、例えば機械的切断またはレーザによる材料の除去によって形成され得る。
【0032】
図5は、特にその壁部6aにおいて、シールストリップ6の壁厚の変化の範囲を示す。この図において、実線で示した壁6aの外形は、自動車の開口2のエッジの上部に隣接しているが、下に破線で示した形状は、ストリップの、自動車の車体の前記開口の部分3b−3dに適用される部分のシール部の外形を示す。
【0033】
本発明に係る押出シールストリップは、ストリップの、自動車の開口2の下部3bおよび側部3c,3dに適用される部分は、シール部6の壁厚を減少することで「軽量化」され、本明細書の冒頭に記載の相反する要求を含む要求に合致する最適な方法を提供する。これは、ドアを閉鎖するのに必要なエネルギを低減可能にする。
【0034】
一方、開口2のエッジ3の上部3aに隣接するシール部6の壁を外側に向かっておよび/または内側に向かって厚くすることは、シール作用および外部の伊豆の減衰の効果を改善する。
【0035】
ストリップの、側部3d(ドアの旋回の軸A−Aから遠い)に適用すべき部分のみへの通気開口の提供は、さらに、外側から自動車の内側に到達し得るノイズのレベルを制限する。
【0036】
当然に、本発明の原則を同じくしたまま、実施形態の形態および構造の細部を、単に非限定的例示の方法として提供した、説明および図示したものに対して、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の範囲から逸脱することなく、広範に変形してもよい。
【0037】
特に、本発明は、前側の側部ドア用のシールストリップに限定されず、同様に後側の側部ドアおよび、他のタイプのヒンジドアまたはハッチにより一般的に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体(1)の開口(2)のエッジ(3)用のシールストリップ(4)であって、
前記開口は、少なくとも概ね垂直な軸(A−A)の周りに開放位置と閉鎖位置との間で揺動可能なドア(D)と係合し、前記開口(2)のエッジ(3)は、前記軸(A−A)に近い第1の側部(3c)および前記軸(A−A)から遠い第2の側部(3d)によって接続された上部(3a)および下部(3b)を含み、
前記シールストリップ(4)は、前記ドア(D)と相互作用するように企図された管状のシール部(6)が接続された固定部(5)を含み、
前記シール部(6)は、前記シールストリップ(4)が前記ドア(D)の閉鎖によって押し潰されたときに、その中に包含する空気を外側に向かって放気することを可能にするのに適した複数の通気開口(15)を有し、
前記シール部は、前記ドア(D)に対して、前記ドアを閉鎖したときに、前記ストリップ(4)の前記エッジ(3)の、前記上部(3a)に適用される部分全体に亘って大きな接触圧力を作用させ、前記エッジ(3)の前記下部(3b)および側部(3c,3d)に適用される部分に小さい接触圧力を作用させるのに適した断面を有し、
前記シール部(6)の前記通気開口(15)は、前記ストリップ(4)の、前記エッジ(3)の前記第2の側部(3d)に適用される部分にのみ設けられていることを特徴とするシールストリップ(4)。
【請求項2】
前記シール部(6)は、前記ストリップ(4)の、前記エッジ(3)の上部(3a)に適用される部分全体に亘って大きな壁厚を有し、前記ストリップ(4)の、前記エッジ(3)の前記下部(3b)および側部(3c,3d)に適用される部分において小さな壁厚を有する請求項1に記載のシールストリップ。
【請求項3】
押出成形されたストリップとして製造され、前記シール部(6)の断面または壁厚の変化が、前記ストリップ(4)の押出成形において得られた、請求項1または2に記載のシールストリップ。
【請求項4】
前記シール部(6)の周囲の壁は、使用状態で前記固定部(5)から前記ドア(D)に向かって延伸する前記2つの半壁(6a,6b)を有し、前記半壁(6a,6b)の少なくとも一方は、前記ストリップ(4)の、前記自動車の車体の前記開口(2)の前記エッジ(3)の前記上部(3a)に適用されることが企図される部分において大きな厚みを有する、請求項1から3のいずれかに記載のシールストリップ。
【請求項5】
前記シール部(6)の前記壁の一部または前記半壁(6a)は、湾曲して凸状の外形を有する、請求項4に記載のシールストリップ。
【請求項6】
前記シール部(6)は、その内部を2つの隣接するチャンバ(13,14)に分割する中間長手区分壁(12)を有する、請求項1から5のいずれかに記載のシールストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−521181(P2013−521181A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555530(P2012−555530)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050885
【国際公開番号】WO2011/107947
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512228967)クーパー−スタンダード・オートモーティヴ・イタリー・ソシエタ・ペル・アチオニ (1)
【氏名又は名称原語表記】COOPER−STANDARD AUTOMOTIVE ITALY S.p.A.
【Fターム(参考)】