説明

自動車用の暖房システム、熱輸送システム

【課題】 簡易な構造で効率よく駆動部等の熱源側から暖房システム側に熱を輸送することが可能であるとともに、暖房システム側からの熱が駆動舞踏の熱源側に逆流することを防止することが可能な自動車用の暖房システムを提供する。
【解決手段】 熱源側冷却経路3の一部には、第1の熱交換器である熱交換器19が設けられる。また、暖房側加熱経路5の一部には、第2の熱交換器である熱交換器21が設けられる。さらに、熱交換器19、21を接続するようにヒートパイプ7が設けられる。熱交換器21は、熱交換器19よりも高い位置に配置される。ヒートパイプ7は、好ましくはサーモサイフォン型のヒートパイプである。ヒートパイプ7は、熱源側冷却経路3から暖房側加熱経路5側に熱を輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるエンジンやモータなど熱源からの熱を利用して効率よく車内の暖房を行うことが可能な自動車用の暖房システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車内の暖房を行うためには、車内に噴出するエア等を加熱する加熱手段が必要となる。例えば、暖房装置内を循環する熱媒体をヒータ等で加熱して、高温の熱媒体とエアとを熱交換させながら、温風を車内に送風する。
【0003】
このような暖房システムにおいては、熱媒体を加熱するヒータ等の加熱装置が必要となる。しかし、エンジン等を始動した直後は、このような加熱装置による熱媒体の昇温に時間を要するため、車内の温度が上がるまでには時間を要するという問題があった。
【0004】
これに対し、水またはアルコール等の溶媒の添加により溶媒和物となるときに発熱してくる物質(塩化カルシウム)の溶媒和物を自動車のエンジンから排出される排気ガスから取出す高温の熱により、溶媒を分離した状態に復元せしめて溶媒和熱として蓄積させておき、その物質に随時溶媒を添加して溶媒和熱を発生させて、その熱量を自動車のキャビン内の暖房に用いるようにする自動車の室内即暖用の蓄熱方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−50841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようなシステムでは、塩化カルシウムが腐食を引き起こすため、メンテナンスが複雑であった。また、溶媒の添加にはバッテリー電源などを要するため、バッテリー上がりを引き起こす可能性もあった。また、蓄熱部を設ける必要があるため、狭いエンジンルーム等においては、そのレイアウト上の制約が大きく、また、システム自体が大型化するという問題がある。さらに、暖房用エアは、ヒートパイプによって熱輸送された熱と直接熱交換を行う。したがって、エアを加熱するための熱量は、ヒートパイプの熱輸送能力によって制限されるという問題がある。
【0007】
一方、近年は電気自動車やアイドリングストップ機能を有する自動車が増加しており、自動車の停車中には、エンジンやモータ等の駆動部が停止した状態となる場合がある。このような場合には、駆動部を冷却するための冷却経路の温度よりも、暖房側の熱媒体温度の方が、温度が高くなる場合がある。
【0008】
したがって、従来のシステムでは、暖房側加熱経路で加熱された熱媒体の熱が、駆動部冷却経路側に逃げてしまう恐れがある。このような状態となると、暖房効率が劣り、暖房側の加熱装置が過剰に電力等を消費する。このため、かえって燃費等を落とす結果となる恐れがある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易な構造で効率よく駆動部等の熱源側から暖房システム側に熱を輸送することが可能な自動車用の暖房システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、自動車用の暖房システムであって、自動車の駆動源である熱源を冷却する熱源側冷却経路と、自動車室内の暖房用のエア経路と、前記エア経路内のエアと熱交換することが可能な暖房側加熱経路と、前記熱源側冷却経路上に配置され、前記熱源側冷却経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第1の熱交換器と、前記暖房側加熱経路上に配置され、前記暖房側加熱経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第2の熱交換器と、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器とを接続する熱輸送手段からなることを特徴とする自動車用の暖房システムである。
【0011】
前記熱輸送手段は、少なくとも一部がヒートパイプからなることが望ましく、この場合、前記ヒートパイプは、サーモサイフォン型ヒートパイプであり、前記ヒートパイプの前記第1の熱交換器から熱を受け取る側の端部に対して、前記第2の熱交換器に熱を放出する側の端部が高い位置に配置されることが望ましい。前記ヒートパイプは、略鉛直に配置されることが望ましい。
【0012】
前記熱源側冷却経路は、前記熱源と、熱媒体を循環させるポンプと、熱媒体を冷却する冷却部と、を具備し、ポンプによる前記熱源側冷却経路における熱媒体の循環方向に対し、前記第1の熱交換器は、前記熱源から前記冷却部までの間に配置されることが望ましい。
【0013】
前記暖房側加熱経路は、熱媒体を循環させるポンプと、熱媒体を加熱するヒータと、熱媒体と暖房気流との熱交換を行う放熱部と、を具備し、ポンプによる前記暖房側加熱経路における熱媒体の循環方向に対し、前記第2の熱交換器は、前記放熱部から前記ヒータまでの間に配置されることが望ましい。
【0014】
前記第1の熱交換器は、前記熱源側冷却経路において、前記熱源よりも高い位置に配置され、前記第2の熱交換器は、前記暖房側加熱経路において、熱媒体を加熱するヒータよりも低い位置に配置されることが望ましい。
【0015】
第1の発明によれば、熱源側冷却経路に配置される第1の熱交換器と、暖房側加熱経路に配置される第2の熱交換器とが熱輸送手段で接続される。このため、熱源側冷却経路の熱媒体の熱を、暖房側加熱経路の熱媒体に熱輸送することができる。さらに、暖房側加熱経路の熱媒体に熱を蓄積することができる。これにより、いままで単に放熱させていた、熱源側冷却経路の熱媒体の熱を、暖房用に活用できるようになる。
【0016】
また、この際、暖房側加熱経路の熱媒体に蓄熱されている熱を、暖房側加熱経路内を循環させつつ直接暖房用のエアと熱交換させることができる。したがって、特に暖房稼働初期において、エアに放熱する熱量がヒートパイプ等の熱輸送能力等に制限されることがなく、効率良く熱媒体の熱をエアに伝達することができる。
【0017】
また、熱源側冷却経路に配置される第1の熱交換器と、暖房側加熱経路に配置される第2の熱交換器とがヒートパイプで接続されれば、電源が不要で、メンテナンス性に優れた熱伝達を行うことができる。
【0018】
また、当該ヒートパイプがサーモサイフォン型のヒートパイプで接続され、ヒートパイプの第1の熱交換器から熱を受け取る側の端部に対して、第2の熱交換器に熱を放出する側の端部が高い位置に配置することにより、第1の熱交換器側が高温部となり、第2の熱交換器側が低温部となる場合には、第1の熱交換器側から第2の熱交換器側へヒートパイプを用いて効率よく熱を輸送可能である。また、高温部と低温部とが逆になると、ヒートパイプによる熱輸送が停止し、暖房側加熱経路から熱源側冷却経路への熱の逆流を防止することができる。
【0019】
したがって、熱源側冷却経路の熱を有効に利用することができる。また、エンジン停止後であっても、熱源側冷却経路の温度がヒートパイプの作動温度よりも高温である限り、熱の輸送が継続し、暖房側加熱経路の温度低下を抑制することができる。したがって、例えば一定時間の停車時においても、暖房側加熱経路の温度を保持することができる。このため、自動車の再始動後においても、即座に暖房効果を発揮することができる。
【0020】
また、例えば、渋滞等において、前述のようにモータやエンジンが停止した状態が継続した場合に、熱源側冷却経路の温度が低下したとしても、暖房側加熱経路の温度がこれにより低下することもない。
【0021】
このような効果は、ヒートパイプを略鉛直に配置することで、より高い効果を得ることができる。
【0022】
また、第1の熱交換器が、熱源側冷却経路における熱媒体の循環方向に対して、エンジン等の熱源から、熱媒体の冷却を行う冷却部の間に配置されることで、熱源側冷却経路を流れる熱媒体の熱を効率よく利用することができる。
【0023】
また、第2の熱交換器が、暖房側加熱経路における熱媒体の循環方向に対して、熱交換部から、熱媒体を加熱するヒータまでの間に配置されることで、暖房側加熱経路を流れる熱媒体に対して熱を効率よく伝達することができる。
【0024】
また、第1の熱交換器が熱源側冷却経路における熱源よりも高い位置に配置され、第2の熱交換器が暖房側加熱経路におけるヒータよりも低い位置に配置されることで、それぞれの経路内における自然対流を利用して、より有効に熱を利用することができる。
【0025】
第2の発明は、熱輸送システムであって、熱源を冷却する熱源側冷却経路と、流体が流れる流体経路と、熱を利用し、前記流体経路内の流体と熱交換可能な熱利用経路と、前記熱源側冷却経路上に配置され、前記熱源側冷却経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第1の熱交換器と、前記熱利用経路上に配置され、前記熱利用経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第2の熱交換器と、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器とを接続する熱輸送手段と、を具備することを特徴とする熱輸送システムである。
【0026】
第2の発明によれば、熱源側冷却経路に配置される第1の熱交換器と、熱利用経路に配置される第2の熱交換器とが熱輸送手段で接続されるため、熱源側冷却経路の熱媒体の熱を、熱利用経路の熱媒体に熱輸送することができる。さらに、熱利用経路の熱媒体に熱を蓄積することができる。これにより、いままで単に放熱させていた、熱源側冷却経路の熱媒体の熱を、有効に活用できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電源などを用いなくとも、メンテナンス性に優れ、簡易な構造で効率よく駆動部等の熱源側から暖房システム側に熱を輸送することが可能な自動車用の暖房システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】暖房システム1を示すシステム構成図。
【図2】ヒートパイプ7近傍を示す拡大図であり、熱交換器19側が高温部である状態を示す図。
【図3】ヒートパイプ7近傍を示す拡大図であり、熱交換器21側が高温部である状態を示す図。
【図4】暖房システム1aを示すシステム構成図。
【図5】暖房システム1bを示すシステム構成図。
【図6】暖房システム1cを示すシステム構成図。
【図7】暖房システム1dを示すシステム構成図。
【図8】暖房システム1eを示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態にかかる暖房システム1について説明する。図1は、暖房システム1を示すシステム構成図である。なお、以下に示す図1〜図8は、システムの側方から見た概念図である。暖房システム1は、主に、熱源側冷却経路3、暖房側加熱経路5、エア経路6、ヒートパイプ7等から構成される。暖房システム1は、自動車用の暖房システムである。
【0030】
熱源側冷却経路3は、例えばエンジンやモータなどの自動車の駆動部を冷却する経路である。熱源側冷却経路3には、熱媒体として冷却水等が循環する。熱源側冷却経路3には、モータ9、ポンプ11、冷却部12等が設けられる。
【0031】
モータ9は、自動車の駆動部であり、熱源となる部位である。なお、本実施形態においては、熱源がモータ9のみである電気自動車の例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、熱源として、通常のエンジンであっても良く、その両者が配置されても良い。また、熱源としては、駆動部のみに限られず、自動車の走行等において発熱する部位であればよい。
【0032】
ポンプ11は、熱源側冷却経路3内の熱媒体を循環させるものである(図中矢印A方向)。また、冷却部12は、熱源側冷却経路3内の熱媒体を冷却する部位である。冷却部12は、例えばラジエータ等であり、熱を外部に放出する。
【0033】
熱源側冷却経路からの熱を利用する熱利用経路である暖房側加熱経路5は、例えば、車内を暖房するためのエアを加熱する経路である。暖房側加熱経路5には、熱媒体として水等が循環する。暖房側加熱経路5には、ヒータ13、ポンプ15、放熱部17等が設けられる。
【0034】
ヒータ13は、暖房側加熱経路5内の熱媒体を加熱する部位である。ポンプ15は、暖房側加熱経路5内の熱媒体を循環させるものである(図中矢印B方向)。また、放熱部17は、暖房側加熱経路5内の熱媒体の熱をエア経路6内のエアに放熱する部位である。すなわち、放熱部17は、暖房側加熱経路5とエア経路6との交わる部位に形成される。エア経路6内には、外気または車内から取り込まれたエアが流される。エア経路6内を流れるエアは、放熱部17によって加熱されて車内に送り込まれる。すなわち、エア経路6内のエアは、暖房側加熱経路5内の熱媒体と熱交換される。
【0035】
熱源側冷却経路3の一部には、第1の熱交換器である熱交換器19が設けられる。また、暖房側加熱経路5の一部には、第2の熱交換器である熱交換器21が設けられる。さらに、熱交換器19、21を接続するようにヒートパイプ7が設けられる。
【0036】
熱交換器19は、熱源側冷却経路3内の熱媒体と、ヒートパイプ7の一方の端部との間で熱交換を行うものである。また、熱交換器21は、ヒートパイプ7の他方の端部と暖房側加熱経路5内の熱媒体との間で熱交換を行うものである。ここで、熱交換器21は、熱交換器19よりも高い位置に配置される。したがって、熱交換器19、21と接続されるヒートパイプ7は、一方の端部に対して他方の端部が高い位置に配置される。
【0037】
ヒートパイプ7は、熱輸送を行うことができる手段(熱輸送デバイス)であれば、他の形態でも構わない。好ましくはヒートパイプである。ヒートパイプは、たとえば、端部を密閉した金属の内部に、溶媒を配置して、溶媒の蒸発と凝縮により熱を伝達することができる。主に銅の内部に水を入れたヒートパイプが多く用いられている。このため、電源を用いなくても熱伝達を行うことができ、また、密閉されているので水が減少することもないのでメンテナンス性にも優れる。さらに好ましくはサーモサイフォン型のヒートパイプである。
【0038】
図2、図3は、ヒートパイプ7近傍の拡大断面図であり、ヒートパイプ7の機能を示す図である。前述の通り、熱源側冷却経路3には、熱交換器19が設けられ、熱交換器19にはヒートパイプ7の端部が接続される。また、暖房側加熱経路5には、熱交換器21が設けられ、熱交換器21にヒートパイプ7の他端が接続される。
【0039】
図2に示すように、熱交換器19がヒートパイプの作動温度以上となって高温部となり、熱交換器21側が低温部となると、熱交換器19によりヒートパイプ7の端部が加熱される。ヒートパイプ7の端部が加熱されると、ヒートパイプ7内部の作動液が蒸発して、当該部位の熱を奪い、蒸気が熱交換器21側に輸送される(図中矢印C)。低温部である熱交換器21では、蒸気が凝縮して熱を放出する。放出された熱は、熱交換器21により暖房側加熱経路5を流れる熱媒体に伝達される。
【0040】
熱交換器21側で凝縮した作動液は、ヒートパイプ7の内面を伝わり、重力によってより低い位置にある熱交換器19側に移動する(図中矢印D方向)。以上を繰り返すことで、熱源側冷却経路3の熱が、暖房側加熱経路5側に伝達される(図中矢印E方向)。このとき、一般的なヒートパイプは、向きにかかわらず熱を伝達できる。よってヒートパイプの向き、形状(たとえばL字や凹字など)自由に配置できるので、狭いエンジンルーム内での配置が容易になる。
【0041】
また、好ましい形態として、熱輸送手段の一部または全部として、サーモサイフォン型のヒートパイプを、鉛直方向に長くなるように配置する。すると、図3に示すように、熱交換器19が低温部となり、熱交換器21側が高温部となった場合、ヒートパイプ7の作動液は、熱交換器19側に溜まった状態となり、ヒートパイプ7は、熱輸送を行うことがない。したがって、暖房側加熱経路5内の熱媒体の熱が、熱源側冷却経路3側に逃げることがなくなるので、さらに効率のよい暖房が可能となる。
【0042】
すなわち、熱交換器19から熱を受け取る側のヒートパイプ7の端部に対して、熱交換器21に熱を放出する側のヒートパイプ7の端部が高い位置となるように配置されることで、ヒートパイプ7は、熱源側冷却経路3から暖房側加熱経路5側に熱を輸送するが、暖房側加熱経路5から熱源側冷却経路3への熱の輸送を行うことがない。なお、このような効果をより高めるためには、ヒートパイプ7を略鉛直方向に配置することが望ましい。また、図5で後述するように、鉛直方向に配置したサーモサイフォン型のヒートパイプに、所定の形状に配置した別の熱輸送手段を接続することで、上記の一方向熱輸送という効果と、エンジンルームでの配置が容易になる効果を両立させることもできる。
【0043】
次に、図1を用いて暖房システム1の機能を説明する。前述の通り、熱源側冷却経路3内の熱媒体は、ポンプ11によって熱源側冷却経路内を循環する(図中矢印A方向)。例えば駆動中(発熱中)であるモータ9を流れる熱媒体は、モータ9からの熱を奪い、モータ9を冷却する。
【0044】
モータ9により加熱された熱媒体は、熱交換器19で熱交換され、その熱の一部がヒートパイプ7に伝達される。ヒートパイプ7の下端で受熱すると、ヒートパイプ7は上方の熱交換器21へ熱を輸送する。さらに、熱交換器21によって、熱を暖房側加熱経路5内の熱媒体に伝達する。
【0045】
なお、熱交換器19に熱を伝達した熱源側冷却経路内の熱媒体は、冷却部12に送られて、外気等に熱を放出して冷却される。冷却された熱媒体は、再度モータ9に送られ、モータ9を冷却する。熱交換器19は、熱源側冷却経路3内の熱媒体の循環方向に対して、モータ9から冷却部12までの間に配置される。モータ9から熱を受けた直後の、より高温の熱媒体と熱交換を行わせるためである。
【0046】
暖房側加熱経路5内の熱媒体は、ポンプ15によって循環される(図中矢印B方向)。熱交換器21により加熱された熱媒体は、ヒータ13に移動する。熱媒体の温度が十分でない場合には、必要に応じてヒータ13によってさらに熱媒体が加熱される。
【0047】
所定の温度以上に加熱された熱媒体は放熱部17でエア経路6内のエアに熱を放出し、温風が車内に送られる。以上により、モータ9の熱を有効に利用して、ヒータ13による加熱を最小限に抑えて暖房を行うことが可能となる。なお、熱交換器21は、暖房側加熱経路5内の熱媒体の循環方向に対して、放熱部17からヒータ13までの間に配置される。放熱部17で放熱した直後の、より低温の熱媒体と熱交換を行わせるためである。
【0048】
また、例えば駐車時等、完全に自動車を停止した場合でも、熱源側冷却経路3の温度が高温である限り、暖房側加熱経路5への熱の輸送が行われる。したがって、暖房側加熱経路5内の熱媒体の温度低下を抑制することができる。このため、次回乗車時に、即座に暖気を車内に送ることができる。
【0049】
また、停車時などで、モータ9が作動を停止すると、熱源側冷却経路3内の熱媒体温度が低下する。しかし、乗車中は、暖房システムを作動させ続ける必要があるため、熱源側冷却経路3の熱を利用せずに、ヒータ13のみで熱媒体の加熱を行う必要がある。しかし、この場合でも、暖房側加熱経路5の温度がヒートパイプ7を介して熱源側冷却経路に移動することがないため、効率よく暖房を行うことができる。
【0050】
なお、車を停車する場合において、人が降車した後であっても、所定時間だけ、各経路内の熱媒体を循環させても良い。そうすることで、より効率的に熱源側冷却経路3内に残る熱を暖房側加熱経路5に輸送することができる。
【0051】
また、熱源側冷却経路3内における熱交換器19の配置を、モータ9よりも高い位置に配置してもよい。このようにすることで、循環を停止した後であっても、モータ9からの熱が自然対流によって熱源側冷却経路3の上方に移動し、より長期にわたって熱源側冷却経路3から暖房側加熱経路5に熱を移動させることができる。
【0052】
同様に、暖房側加熱経路5内における熱交換器21の配置を、ヒータ13よりも低い位置に配置してもよい。このようにすることで、循環を停止した後であっても、熱交換器21からの熱が自然対流によって暖房側加熱経路5の上方に移動し、ヒータ13近傍を保温することができる。また、熱交換器21近傍の熱を、暖房側加熱経路5上方に対流させることができるため、熱交換器21近傍に熱が溜まることがなく、効率よく熱源側冷却経路からの熱を受け取ることができる。
【0053】
本発明によれば、モータ9のような駆動部等の熱源から発生する熱を効率よく暖房側加熱経路に伝えることができるため、暖房側加熱経路を効率よく加熱することができる。このため、ヒータ13による発熱量を抑えることができる。
【0054】
また、熱交換器19よりも熱交換器21を高い位置として、サーモサイフォン型のヒートパイプ7を用いることで、暖房側加熱経路5から熱源側冷却経路3へ熱が逆流することがない。したがって、渋滞中や信号待ちなどで自動車が停止し、これに伴いモータ9等が停止した場合であっても、熱源側冷却経路3の温度低下に伴う、暖房側加熱経路5からの熱の逃げがない。
【0055】
また、一定時間自動車を停止しても、暖房側加熱経路5の温度低下が抑制されているため、次回運転時に、短時間で暖気を送風することが可能である。
【0056】
特に、暖房側加熱経路5内の熱媒体が熱を蓄熱し、再稼働時には、当該熱媒体の熱を循環させながら、エア経路6内のエアに放熱することができる。したがって、蓄熱された熱を他のヒートパイプ等の熱輸送媒体を用いてエア加熱部に輸送して、さらにその熱によってエアを加熱するような場合と比較して、短時間で大量の熱をエアに放熱することができる。したがって、特に暖房の再稼働直後において、短時間で暖気を車内に送風することができる。
【0057】
また、特殊な蓄熱部等が不要であり、特殊な制御も不要であるため、システムが簡易な構造であり、コンパクトな暖房システムを得ることができる。
【0058】
なお、暖房側加熱経路5に設けたヒータ13は、必ずしも必要ではない。熱源側冷却経路3からの熱のみで、十分に暖房側加熱経路5の温度を昇温することができ、暖房用のエアを加熱することができるのであれば、ヒータ13は不要である。また、熱交換器19は、熱源(モータ9)に直接取り付けられても良い。また、熱交換器21は、ヒータ13に直接取り付けられても良い。
【0059】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、熱交換器19は、熱源側冷却経路3上に配置されるが、図4に示す暖房システム1aのように、直接熱源であるモータ9と熱交換させても良い。このようにしても、前述した暖房システム1と同様の効果を得ることができる。なお、この場合であっても熱交換器19は、熱源側冷却経路3に配置されていると称する。
【0061】
また、図5に示す暖房システム1bのように、ヒートパイプ7と熱交換器19との間に他の伝熱部材20を配置してもよい。伝熱部材20としては、金属部材や、通常のヒートパイプを用いることができる。また、ヒートパイプ7と伝熱部材20との間に、他の熱交換器を設けてもよい。
【0062】
このようにしても、前述した暖房システム1と同様の効果を得ることができる。なお、このように、熱交換器19とヒートパイプ7の間に他の部材が設けられ、他の部材を介して互いに接続される場合であっても、熱交換器19はヒートパイプ7と接続されると称する。
【0063】
また、図6に示す暖房システム1cのように、ヒートパイプ7と熱交換器19との間に他の伝熱部材20aを配置してもよい。伝熱部材20aとしては、通常のヒートパイプを用いることができる。なお、ヒートパイプ7と伝熱部材20aとの間に、他の熱交換器を設けてもよい。暖房システム1cでは、熱交換器19は熱交換器21よりも低い位置に配置される。
【0064】
しかしながら、熱交換器19からの受熱部側であるヒートパイプ7の端部は、熱交換器21への放熱部側の端部よりも低い。すなわち、ヒートパイプ7は、受熱部側であるヒートパイプ7の下端から放熱側の上端方向へは熱を輸送するが、その逆方向には熱を輸送することがない。したがって、前述した暖房システム1と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、図7に示す暖房システム1dのように、伝熱部材20bで熱交換器19と熱交換器21とを接続してもよい。伝熱部材20bとしては、金属部材や、通常のヒートパイプを用いることができる。この場合には、熱交換器19は、熱源側冷却経路3内の熱媒体と、伝熱部材20bの一方の端部との間で熱交換を行うものである。また、熱交換器21は、伝熱部材20bの他方の端部と暖房側加熱経路5内の熱媒体との間で熱交換を行うものである。
【0066】
暖房システム1dでは、熱交換器19と熱交換器21は略同じ高さに配置される。したがって、伝熱部材20bは略水平に配置される。この場合には、伝熱部材20bとして、サーモサイフォン式のヒートパイプを採用することはできない。
【0067】
しかしながら、熱源側冷却経路3側が常に高温側となれば、熱源側冷却経路3(熱交換器19)から暖房側加熱経路5(熱交換器21)へ熱を有効に輸送することができる。すなわち、熱源側冷却経路3が常に高温側となれば、暖房側加熱経路5側から熱源側冷却経路3へ熱が逆流することはない。したがって、前述した暖房システム1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、図8に示す暖房システム1eのように、伝熱部材20cで熱交換器19と熱交換器21とを接続してもよい。伝熱部材20cとしては、金属部材や、通常のヒートパイプを用いることができる。暖房システム1eでは、熱交換器19は、熱交換器21よりも高い位置に形成される。この場合には、伝熱部材20cとして、サーモサイフォン式のヒートパイプを採用することはできない。
【0069】
しかしながら、暖房システム1dと同様に、熱源側冷却経路3が常に高温側となれば、熱源側冷却経路3(熱交換器19)から暖房側加熱経路5(熱交換器21)へ熱を有効に輸送することができる。すなわち、熱源側冷却経路3が常に高温側となれば、暖房側加熱経路5側から熱源側冷却経路3へ熱が逆流することはない。したがって、前述した暖房システム1と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、前述の各実施形態では、本発明の熱輸送システムを自動車の暖房システムに適用する例を示したが、本発明は、熱源を冷却する経路と、熱を利用する経路とが存在すれば、他のシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1、1a、1b、1c、1d、1e………暖房システム
3………熱源側冷却経路
5………暖房側加熱経路
6………エア経路
7………ヒートパイプ
9………モータ
11………ポンプ
12………冷却部
13………ヒータ
15………ポンプ
17………放熱部
19、21………熱交換器
20、20a、20b、20c………伝熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の暖房システムであって、
自動車の駆動源である熱源を冷却する熱源側冷却経路と、
自動車室内の暖房用のエアが流れるエア経路と、
前記エア経路内のエアと熱交換することが可能な暖房側加熱経路と、
前記熱源側冷却経路上に配置され、前記熱源側冷却経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記暖房側加熱経路上に配置され、前記暖房側加熱経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器とを接続する熱輸送手段からなることを特徴とする自動車用の暖房システム。
【請求項2】
前記熱輸送手段は、少なくとも一部がヒートパイプからなることを特徴とする請求項1記載の自動車用の暖房システム。
【請求項3】
前記ヒートパイプは、サーモサイフォン型ヒートパイプであり、
前記ヒートパイプの前記第1の熱交換器から熱を受け取る側の端部に対して、前記第2の熱交換器に熱を放出する側の端部が高い位置に配置されることを特徴とする請求項2記載の自動車用の暖房システム。
【請求項4】
前記ヒートパイプは、略鉛直に配置されることを特徴とする請求項3記載の自動車用の暖房システム。
【請求項5】
前記熱源側冷却経路は、前記熱源と、熱媒体を循環させるポンプと、熱媒体を冷却する冷却部と、を具備し、
前記ポンプによる前記熱源側冷却経路における前記熱媒体の循環方向に対し、前記第1の熱交換器は、前記熱源から前記冷却部までの間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動車用の暖房システム。
【請求項6】
前記暖房側加熱経路は、熱媒体を循環させるポンプと、熱媒体を加熱するヒータと、熱媒体と暖房気流との熱交換を行う放熱部と、を具備し、
前記ポンプによる前記暖房側加熱経路における前記熱媒体の循環方向に対し、前記第2の熱交換器は、前記放熱部から前記ヒータまでの間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の自動車用の暖房システム。
【請求項7】
前記第1の熱交換器は、前記熱源側冷却経路において、前記熱源よりも高い位置に配置され、
前記第2の熱交換器は、前記暖房側加熱経路において、熱媒体を加熱するヒータよりも低い位置に配置されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動車用の暖房システム。
【請求項8】
熱輸送システムであって、
熱源を冷却する熱源側冷却経路と、
流体が流れる流体経路と、
熱を利用し、前記流体経路内の流体と熱交換可能な熱利用経路と、
前記熱源側冷却経路上に配置され、前記熱源側冷却経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記熱利用経路上に配置され、前記熱利用経路を流れる熱媒体と熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器とを接続する熱輸送手段と、
を具備することを特徴とする熱輸送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103632(P2013−103632A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249505(P2011−249505)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】