説明

自動車用ウェザーストリップ

【課題】芯金無しのウェザーストリップを余計な付帯部材を必要とせず、且つ、一動作でフランジに完全に装着し、コストダウンと自動車の軽量化に資する。
【解決手段】芯金無しのウェwェザーストリップ1のトリム部2の車内側トリム構成体4と車外側トリム構成体5の内壁面から、少なくとも1対のリップ6、7、8、9を、斜め上方に向けて突設し、フランジ12を軸13、及び軸13と一体に軸13の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14から構成し、リップそれぞれの全長(L)と、車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5のそれぞれの内壁面と、内壁面が対向するフランジ12の表面との間の距離(L1)との間の関係をL>L1となるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用ウェザーストリップに関する。より詳細には、本発明はインサートを不要としたにも係わらずフランジに対する締め付け力を保持向上させた自動車用ウェザーストリップに関する。
本発明は自動車用ウェザーストリップの構造に関する発明なので、ウェザーストリップを製造する原料には特段に制約を受けず、天然又はEPDMを含む各種合成ゴム、熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー或いはそれらの混合物から適宜選択される。
さらに、本発明の自動車用ウェザーストリップは、ドア−、テイルゲート、トランクリッド等自動車の各種開口部に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車用のウェザーストリップは、自動車のボディーサイド、ドア、サイドウィンドー、トランクリッド、テイルゲート等、いわゆる開口部に取り付けて、シール性の保持、車体微振動、ガラスの揺動を防止すると共に、車体部位の緩衝を目的とするものである。さらに、自動車用のウェザーストリップは、自動車の寸法ばらつきや建て付けのばらつきも吸収し、組み立て作業性が容易であることが要求される。
【0003】
図5は、従来の代表的なウェザーストリップの構造を示す断面図である。図5に示すように、従来のウェザーストリップは、主として、車内側トリム構成体4と車外側トリム構成体5から構成されるトリム部2と一体に成形された中空状のシール部3から構成されている。トリム部2は、開口部周縁のフランジ12に保持され且つフランジ12を挟持・固定するための部材である。トリム部2と一体に成形された中空状のシール部3は、開口部(図示せず)の縁部と弾接して、変形することにより、前述したシール性の保持、車体微振動、ガラスの揺動を防止すると共に、車体部位の緩衝等ウェザーストリップ本来の機能を奏功するための部材である。トリム部2の内壁面には、リップ6、7、及び8、9が、それぞれ、ほぼ対向してトリム部2と一体に突設されていて、フランジ12に弾接されている。リップ6、7,及び8、9は、フランジ12に弾接することにより、トリム部2が直接フランジ12に衝接するのを防止する緩衝機能と、水、砂塵、塵埃等が車内へ侵入するのを防止する機能を奏功する。18はトリム部2に内蔵されている金属製インサートである。金属製インサート18は無垢の板金ではなく、全面に小さな透孔や、長円形の穴を形成することにより軽量化と可撓性を付与し、自由に曲げ作業が可能なようになっている。図5のウェザーストリップをフランジ12に装着するには、金属製インサート18の可撓性を利用してトリム部2を外側に広げてフランジ12に挿入し、次いで金属製インサート18の可撓性を利用してトリム部2を内側に広げてフランジ12を締め付けることによりトリム部2のフランジ12への取り付け状態を安定状態に保持していた。
【0004】
金属製インサート入りウェザーストリップには多種多様なタイプがあるが、図5に示したような標準タイプで長さ1000mm、総質量173g、金属製インサートの質量64gである。即ち、従来の長さ1000mm、総質量173gのインサート入りウェザーストリップの金属製インサートが占める質量は約37%である。
【0005】
ところで、近年、自動車の質量を軽減することが至上命題となってきている。従って、従来の金属製インサート入りウェザーストリップは、フランジへの締結力は優れているが、金属製インサートの質量がウェザーストリップの総質量の約37%も占める点が欠点となっている。その解決策の一つとして、金属製インサートを使用しないウェザーストリップの研究開発が盛んであり且つ実用化段階に入っている。金属製インサートを使用しないウェザーストリップの場合の最も難しい解決すべき課題は、どのようにしてトリム部のフランジに対する締結力を高め且つ維持するかということである。
【0006】
従来、この解決手段として、特許文献1は、両面接着テープを使用する方法を提案している。即ち、特許文献1は、トランクルームの開口周縁のボディーフランジを開口内向に張出し、その開閉体側のフランジ面にウェザストリップの帯板状取付部を両面テープで接着することで組付容易化を図り、取付部に長手方向に連続する芯線を埋設することで軽量化と伸び防止を図ることが記載されている。そして、[0012]は、芯線として、スチルコ−ド、合成繊維コード、無機繊維コード等を例示している、さらに、[0025]には「上記構成のウェザストリップ1は、トランクルーム3の開口周縁における内向フランジ4の外側フランジ面4bに両面テープ14により貼着する。この際、まず、フランジ面4bに仮貼着し、取付位置を確認した後、ローラなどにより中空シール部12側から圧着させて本貼着する。仮貼着時に組付け不具合が発生したときでも、両面テープ14は再貼付性が良好なので、直ぐに取り外して修正できる。」と記載されている。 これらの記載から、特許文献1に記載された従来技術は下記の欠点を有している。
イ。ウェザーストリップをフランジに装着する作業は、本来、単一動作(ワン・アクション)で完了されるべきである。然しながら、特許文献1に記載されたような両面粘着テープを使用する方法は、両面粘着テープの片面を剥離し接着した後、他方の面を剥離して接着する作業を不可欠としており、その結果、作業コストを引き上げるという欠点を有している。
ロ。本来単純作業であるべきウェザーストリップをフランジに装着する作業に、両面粘着テープという余計な部材を必要とし、これが、部品コストを引き上げるという欠点を有している。
ハ。仮貼着後、取付位置を確認した後、ローラなどにより中空シール部側から圧着させて本貼着するという煩わしい工程を必要とし、作業コストを引き上げるという欠点を有している。
ニ。軽量化のために、従来ウェザストリップに使用していたインサートを不要としたのも係わらず、スチールコ−ド、合成繊維コード、無機繊維コード等芯線として必須部材としており、真の意味で軽量化とは言えない。また余計な部材を必要とし、これが、部品コストを引き上げるという欠点を有している。
【0007】
特許文献2は、「車両のドア開口周縁に沿って取付けられるウェザストリップの取付構造であって、前記ウェザストリップは、断面略U字状又はJ字状の金属インサートレスのトリム部と、スポンジ状又は軟質のゴム弾性を有する材料によって構成されるとともに、前記トリム部の一方の側壁から突出するように一体的に設けられ、ドア閉時にドア周縁が押付けられる中空状のシ−ル部とを備え、前記トリム部が前記ドア開口周縁のフランジに嵌合保持されるよう構成するとともに、前記トリム部の一方の側壁の先端部分が前記ドア開口周縁の前記フランジよりも車外側に設けられた係合凸部にて係合されるよう構成したことを特徴とするウェザストリップの取付構造」を記載している。
【0008】
特許文献2が記載しているウェザストリップの取付構造は、下記の諸点で特殊な構造である。
イ。トリム部の車内側側壁17が、車外側側壁18よりも極端に短いこと。
ロ。トリム部の車外側側壁18の先端部分がドア開口周縁のフランジ21よりも車外側に設けられた係合凸部34にて係合されること。
ハ。通常、トリム部の車内側側壁17及び車外側側壁18の内面にそれぞれ対向して突設されている突起31が、車外側側壁18の内面に5個のみ突設されているだけで、車内側側壁17の先端にはリップ部41が一個形成されているだけである。
ニ。フランジ(21、61,91,101)には段差部(35,77)又は拡径部(72,81)を設けている(請求項4〜6)。
以上を総覧すると、特許文献2に記載されているウェザストリップの取付構造は、フランジに段差部又は拡径部を設けているが、通常、トリム部の車内側側壁及び車外側側壁の内面にそれぞれ対向して突設されているべき突起(リップ)が、車外側側壁内面に複数個、他方車内側側壁先端にはリップ部が一個形成されているだけであるので、ウェザストリップのフランジに対する取り付けが確実に保障されていない。
【0009】
特許文献3は、概略、インサート無しのウェザストリップにおいて、トリム部の車内側側壁、車外側側壁の内面に、第1車外側フランジ保持リップと第2車外側フランジ保持リップ及び第1車内側フランジ保持リップと第2車内側フランジ保持リップを、それぞれ、ほぼ対向して底壁方向に斜めに形成し、第1車内側フランジ保持リップの先端と第2車内側フランジ保持リップの先端は、それぞれ第1車外側フランジ保持リップの先端と第2車外側フランジ保持リップの先端よりもトリム部の奥側に延設された自動車用ウェザストリップを開示している。
然しながら、特許文献3に記載されている自動車用ウェザストリップのフランジの先端はフラットである。そのために、第1車内側フランジ保持リップの先端と第2車内側フランジ保持リップの先端は、それぞれ第1車外側フランジ保持リップの先端と第2車外側フランジ保持リップの先端よりもトリム部の奥側に延設しただけでは、フランジがトリムから脱落するのを完全に防止することは不可能である。
【特許文献1】特開2001−18732号公開公報
【特許文献2】特開2004−98888号公開公報
【特許文献3】特開2008−230258号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明が解決しようとする課題は、インサート無しの自動車用ウェザーストリップを余計な付帯部材を必要とせす、且つ、一動作(ワン・アクション)でフランジに装着でき、フランジに対する締付力を向上させ、もってコストダウンと自動車の軽量化に資することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、下記の各項に記載する手段により解決することができる。
1.自動車の開口部周縁に突設されたフランジに嵌着されるほぼU字形のトリム部と、トリム部と一体に成形され自動車の開口部の縁部と弾接して変形することによりシール機能を発揮する中空状のシール部とから主として構成され、インサート無しの自動車用ウェザーストリップであって、
前記トリム部が車内側トリム構成体と車外側トリム構成体から構成されていて、前記トリム部の車内側トリム構成体及び車外側トリム構成体の内壁面から、少なくとも1対のリップが、それぞれほぼ対向して斜め上方に向けて突設されている自動車用ウェザーストリップにおいて、
前記フランジが軸、及び軸と一体に軸の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起から構成されていること、
前記リップのそれぞれの全長Lと、車内側トリム構成体及び車外側トリム構成体のそれぞれの内壁面と、前記内壁面が対向する前記フランジの表面との間の距離L1との間の関係がL>L1となるように設定されたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【0012】
2.前記1項において、前記フランジを、軸、及び軸と一体に軸の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起とから構成し、突起の面は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、面の下端が上端より、トリム部の車内側トリム構成体又は車外側トリム構成体の内壁面に向けて迫り出しているような形状にする。
【0013】
3.前記1又は2項において、前記フランジを、軸、及び軸と一体に軸の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起とから構成し、突起の面は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、面の下端が上端より、トリム部の車内側トリム構成体又は車外側トリム構成体の内壁面に向けて迫り出しているような形状にし、突起が形成された端部と対向する端部を面取り構造にする。
【0014】
4.前記1〜3項のいずれかにおいて、自動車用ウェザーストリップを、天然又はEPDMを含む各種合成ゴム、熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー或いはそれらの混合物から成る群から選択された原料で製造する。
【0015】
5.前記1〜4項のいずれかにおいて、前記フランジを金属または合成樹脂で製造する。
【0016】
6.前記5項において、前記合成樹脂を、複合強化ポリプロピレンとする。
【0017】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載した自動車用ウェザーストリップを、ドア−、テイルゲート、又はトランクリッド用として使用する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した発明により「自動車の開口部周縁に突設されたフランジ12に嵌着されるほぼU字形のトリム部2と、トリム部2と一体に成形され自動車の開口部の縁部と弾接して変形することによりシール機能を発揮する中空状のシール部3とから主として構成され、インサート無しの自動車用ウェザーストリップ1であって、
前記トリム部2が車内側トリム構成体4と車外側トリム構成体5から構成されていて、前記トリム部2の車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5の内壁面から、少なくとも1対のリップ6、7及び8、9が、それぞれほぼ対向して斜め上方に向けて突設されている自動車用ウェザーストリップ1において、
前記フランジ12が軸13、及び軸13と一体に軸13の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14から構成されていること、
前記リップ6、7、8及び9それぞれの全長(L)と、車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5のそれぞれの内壁面と、前記内壁面が対向する前記フランジ12の表面との間の距離(L1)との間の関係がL>L1となるように設定されたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ1」が提供されるので、下記に例示される効果を奏功する。
イ。インサートを使用しないので、近年の自動車開発で重要な至上課題の一つである質量の軽減化に資することができる。
ロ。フランンジ12をトリム部2内に挿入するときは、全てのリップ6、7、8、及び9がフランンジ12の挿入進行方向に曲がり挿入を容易にし、全てのリップ6、7、8及び9がフランンジ12の表面に付勢され衝接され、一旦挿入されたフランンジ12を引き抜くとき、または、脱落するようなときは、リップ6が、フランジ12の上端の少なくとも一方の端部に形成された所定の形状の突起114と嵌合状態になり、フランンジ12の引き抜き、または、脱落が防止される。
【0019】
請求項2に記載した発明により、フランジ12を、軸13、及び軸13と一体に軸13の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14とから構成し、突起14の垂直面15は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、垂直面15の下端が上端より、トリム部2の車内側トリム構成体4又は車外側トリム構成体5の内壁面に向けて迫り出しているような形状にしたので、フランジ12を、トリム部2のリップ6,7及び8,9が形成する空間部に挿入する際に、容易に挿入することができる。
【0020】
請求項3に記載した発明により、請求項1又は2に記載した自動車用ウェザーストリップ1において、フランジ12を、軸13、及び軸13と一体に軸13の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14とから構成し、突起14の垂直面15は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、垂直面15の下端が上端より、トリム部2の車内側トリム構成体4又は車外側トリム構成体5の内壁面に向けて迫り出しているような形状にし、突起14が形成された端部と対向する端部16を面取り構造にしたので、フランジ12を、トリム部2のリップ6,7及び8,9が形成する空間部に挿入する際に、容易に挿入することができる。
【0021】
請求項4に記載した発明により、請求項1〜3のいずれかに記載した自動車用ウェザーストリップを、天然又はEPDMを含む各種合成ゴム、熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー或いはそれらの混合物から成る群から選択された原料で製造されるので、自動車用ウェザーストリップの材料の選択の幅が広くなる。
【0022】
請求項5に記載した発明により、請求項1〜4のいずれかに記載した自動車用ウェザーストリップにおいて、フランジ12を金属または合成樹脂で製造するので、従来金属に限定されていたフランジ12の材料の選択の幅が広くなる。
【0023】
請求項6に記載した発明により、請求項5に記載した自動車用ウェザーストリップ1のフランジ12を複合強化ポリプロピレンで製造するので、従来の金属製フランジに比べて軽量化され、さらに、請求項1に記載した発明の効果の一つであるインサート無しによる質量の軽減化と相乗的に作用して、自動車全体の質量の軽減化に資することができる。
【0024】
請求項7に記載した発明により、請求項1〜6のいずれか1項に記載した自動車用ウェザーストリップが、ドア−、テイルゲート、又はトランクリッド用等汎用性がある自動車用ウェザーストリップが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例として記載する。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明の実施例の全体構造を示す断面図である。図2は、本発明の実施例の特定の部材の寸法を示す一部断面図である。図3は、本発明の自動車用ウェザーストリップをフランジに挿入、引き抜きする際の状態を示す一部断面図である。図4は、本発明で使用するフランジの1例を示す断面図である。図5は、従来の自動車用ウェザーストリップの一例を示す断面図である。
【0027】
図1において、1は本発明によるインサート無しの自動車用ウェザーストリップの一例を示す断面図である。本発明によるインサート無しの自動車用ウェザーストリップ1は、自動車の開口部周縁に突設されたフランジ12に嵌着されるほぼU字形のトリム部2と、トリム部2と一体に成形され自動車の開口部の縁部と弾接して変形することによりシール機能を発揮する中空状のシール部3とから主として構成されている。トリム部2は、車内側トリム構成体4と車外側トリム構成体5から構成されていて、前記トリム部2の車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5の内壁面から、少なくとも1対のリップ6、7、及び8、9が、それぞれほぼ対向して斜め上方に向けて突設されている。
【0028】
図2−1は、本発明の自動車用ウェザーストリップの車外側トリム構成体5の内壁面に形成されたリップ7及び9の構成を示す一部断面図である。図2−2は、本発明の自動車用ウェザーストリップの寸法図である。車外側トリム構成体5の内壁面に形成されたリップ7及び9の構成を示す一部断面図である図2−1は、フランジ12及び車外側トリム構成体4を省略してあるが、線対称として同じ図である。図2−1に示したように、リップ7及び9は、それぞれ、斜め方向リップ片10,10及び斜め方向リップ片10、10と一体成形されていて斜め方向リップ片10、10から斜め上方へ立ち上げた立ち上げリップ片11,11から構成されている。即ち、リップ7及び9は、それぞれ、斜め方向リップ片10、10及び立ち上げリップ片11、10とから一体に成形されている。斜め方向リップ片10、10の長さk1、立ち上げリップ片11、11の長さk2、及び幅k3の寸法は特段に限定されないが、実施例では、幅(k3)を1mm、斜め方向リップ片10、10の長さ(k1)を2.3mm、及び立ち上げリップ片11,11の長さ(k2)を1.2mmとした。立ち上げリップ片11,11の長さ(k2)は、長ければ、長いほど、フランジ12の表面との接触面積が大きくなり、フランジ12に嵌着されたウェザーストリップ1が脱落し難くなるが、立ち上げリップ片11,11の長さ(k2)は、斜め方向リップ片10、10の長さ(k1)とバランスをもって決定されるべきである。
【0029】
斜め方向リップ片10、10の長さ(k1)と立ち上げリップ片11、11の長さ(k2)の和をLとする。図2−2においてL1は、車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5のそれぞれの内壁面と、前記内壁面が対向するフランジ12の表面との間の距離である。本発明では、LとL1との間の関係がL>L1となるように設定することが好ましい。即ち、車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5のそれぞれの内壁面と、前記内壁面が対向するフランジ12の表面との間の距離L1を、斜め方向リップ片10、10の長さ(k1)と立ち上げリップ片11、11の長さ(k2)の和、即ち、全長Lより短くすることにより、フランジ12をトリム部2の空洞部に圧入する場合、フランジ12によりリップ6,7,8及び9がフランジ12の圧入方向に変形する変形量が大きくなり、その結果、フランジ12の表面との接触面積が大きくなり、ウェザーストリップ1が脱落し難くなる。
【0030】
本発明の自動車用ウェザーストリップは、天然又はEPDMを含む各種合成ゴム、熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー或いはそれらの混合物から成る群から選択された原料で製造され、特段に材料は限定されない。たとえば、サントプレン(登録商標)等熱可塑性エラストマー(TPE)を使用すると、加硫工程を必要としないので、天然又はEPDMを含む各種合成ゴムに比べて、加硫装置、加硫材料が不要となり、総コストの低減化につながる。
【0031】
本発明の自動車用ウェザーストリップに使用するフランジの材料は、金属または合成樹脂で製造する。ただし、フランジ12を合成樹脂、たとえば、複合強化ポリプロピレンで製造することにより、従来の金属製フランジに比べて軽量化されるので、好ましい。
【0032】
図3は、本発明の実施例による自動車用ウェザーストリップをフランジに挿入、引き抜きする際の状態を示す一部断面図で、図3−1は、同挿入時、図3−2は同引き抜きする際の状態を示す一部断面図である。図3−1に示すように、本発明の実施例による自動車用ウェザーストリップ1のトリム2へフランジ12を挿入する場合、フランジ12の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14が、リップ7、9を構成する斜め方向リップ片10,10、及び斜め方向リップ片10,10と一体成形されていて斜め方向リップ片10,10から斜め上方へ立ち上げた立ち上げリップ片11,11を、フランジ12の挿入方向に、車外側トリム構成体5の内壁面に向けて点線で想定したように変形させフランジ12の挿入を容易にする。
【0033】
図3−2は、フランジ12を引き抜きする際の状態を示す一部断面図である。図3−2に示すように、本発明の実施例による自動車用ウェザーストリップ1のトリム2からフランジ12を引き抜く、または、自然にまたは故意に脱落する場合、フランジ12の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14と、リップ7を構成する立ち上げリップ片11が嵌合して、フランジ12がトリム2からを引き抜かれたり、或いは自然にまたは故意に脱落する場合、点線で想定したように立ち上げリップ片11を変形させフランジ12の引き抜き、或いは脱落が防止される。
【0034】
図4は、本発明で使用するフランジ12の一例を示す断面図である。本発明で使用するフランジ12は、軸13と、軸13と一体に軸13の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起14とから構成されている。フランジ12の軸13と、突起14等の寸法は特段に限定されないが、軸13の幅は、たとえば、2.4mm、突起14が軸13が張り出している部文の長さk4は、たとえば、0.8mm、幅k5は、たとえば、0.8mmが好ましい。また、突起14の垂直面15は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、垂直面15の下端が上端より、トリム部2の車内側トリム構成体4又は車外側トリム構成体5の内壁面に向けて迫り出しているような形状にすることが好ましい。このような形状にすることにより、フランジ12を、トリム部2のリップ6,7及び8,9が形成する空間部に挿入する際に、容易に挿入することができる。この場合、突起14の垂直面15の傾斜角度θは特段に限定されないが、たとえば、4°程度である。
【0035】
さらに、フランジ12の軸13の他方の上端部16は、面取りをすることが好ましい。このようにフランジ12の軸13の他方の上端部16を面取りすることにより、フランジ12を、トリム部2のリップ6,7及び8,9が形成する空間部に挿入する際に、容易に挿入することができる。
【0036】
フランジ12の材料は、金属または合成樹脂で製造する。ただし、フランジ12を合成樹脂、たとえば、複合強化ポリプロピレンで製造することにより、従来の金属製フランジに比べて軽量化されるので、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上詳述した本発明の自動車用ウェザーストリップは、従来の自動車用ウェザーストリップが、必須要素としていた金属製又は合成樹脂製のインンサート(芯金)を必要としないにも係わらず、接着剤或いは両面テープ等余計な付帯部材を必要とせずに、一動作(ワン・アクション)でフランジに装着できフランジに対する締付力を向上させ、フランジに装着後の引き抜き又は脱落するような際にも、ウェザーストリップのトリムの内壁面に形成されたリップがフランジに突設された突起に嵌合して、フランジに装着後の引き抜き又は脱落が防止される。従って、新規な自動車用ウェザーストリップとして、作業性を向上させ、コストダウンと自動車の軽量化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例の全体構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例の特定の部材の寸法を示す一部断面図である。〔図2−1〕フランジを除去した、本発明の実施例の特定の部材の寸法を示す一部断面図である。〔図2−2〕フランジを記載した、本発明の実施例の特定の部材の寸法を示す一部断面図である。
【図3】本発明の自動車用ウェザーストリップをフランジに挿入、引き抜きする際の状態を示す一部断面図である。〔図3−1〕本発明の自動車用ウェザーストリップをフランジに挿入する際の状態を示す一部断面図である。〔図3−2〕本発明の自動車用ウェザーストリップに挿入したフランジを引き抜く際の状態を示す一部断面図である。
【図4】本発明で使用するフランジの1例を示す断面図である。
【図5】従来の自動車用ウェザーストリップの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車用ウェザーストリップ
2 トリム部
3 中空状のシール部
4 車内側トリム構成体
5 車外側トリム構成体
6,7,8,9 リップ
10 斜め方向リップ片
11 立ち上げリップ片
12 フランジ
13 フランジ12の軸
14 突起
15 突起14の垂直面
16 フランジ12の軸13の他方の上端部
17 フランジ12の上底面
18 金属製芯金
k1 斜め方向リップ片10、10の長さ
k2 立ち上げリップ片11、11の長さ
k3、リップの幅に長さ
k4 突起14の軸13が張り出している部分の長さ
k5 突起14の垂直面15の長さ
L 斜め方向リップ片10の長さ(k1)と立ち上げリップ片11の長さ(k2)の和
L1 車内側トリム構成体4及び車外側トリム構成体5のそれぞれの内壁面と、前記内壁面が対向するフランジ12の表面との間の距離
θ 垂直面15の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の開口部周縁に突設されたフランジ(12)に嵌着されるほぼU字形のトリム部(2)と、トリム部(2)と一体に成形され自動車の開口部の縁部と弾接して変形することによりシール機能を発揮する中空状のシール部(3)とから主として構成され、インサート無しの自動車用ウェザーストリップ(1)であって、
前記トリム部(2)が車内側トリム構成体(4)と車外側トリム構成体(5)から構成されていて、前記トリム部(2)の車内側トリム構成体(4)及び車外側トリム構成体(5)の内壁面から、少なくとも1対のリップ(6)、(7)及び(8)(9)が、それぞれほぼ対向して斜め上方に向けて突設されている自動車用ウェザーストリップ(1)において、
前記フランジ(12)が軸(13)、及び軸(13)と一体に軸(13)の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起(14)から構成されていること、
前記リップ(6)(7)(8)及び(9)それぞれの全長(L)と、車内側トリム構成体(4)及び車外側トリム構成体(5)のそれぞれの内壁面と、前記内壁面が対向する前記フランジ(12)の表面との間の距離(L1)との間の関係がL>L1となるように設定されたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ(1)。
【請求項2】
前記フランジ(12)を、軸(13)、及び軸(13)と一体に軸(13)の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起(14)とから構成し、突起(14)の垂直面(15)は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、垂直面(15)の下端が上端より、トリム部(2)の車内側トリム構成体(4)又は車外側トリム構成体(5)の内壁面に向けて迫り出しているような形状にしたことを特徴とする請求項1に記載した自動車用ウェザーストリップ(1)。
【請求項3】
前記フランジ(12)を、軸(13)、及び軸(13)と一体に軸(13)の上端の少なくとも1方の端部に突設された所定の形状の突起(14)とから構成し、突起(14)の面(15)は、下方に向かう従って、徐々に傾斜させて、垂直面(15)の下端が上端より、トリム部(2)の車内側トリム構成体(4)又は車外側トリム構成体(5)の内壁面に向けて迫り出しているような形状にし、突起(14)が形成された端部と対向する端部(16)を面取り構造にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載した自動車用ウェザーストリップ(1)。
【請求項4】
天然又はEPDMを含む各種合成ゴム、熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー或いはそれらの混合物から成る群から選択された原料で製造したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載した自動車用ウェザーストリップ。
【請求項5】
前記フランジ(12)を金属または合成樹脂で製造したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した自動車用ウェザーストリップ。
【請求項6】
前記合成樹脂が、複合強化ポリプロピレンである請求項5に記載した自動車用ウェザーストリップ。
【請求項7】
ウェザーストリップが、ドア−、テイルゲート、又はトランクリッド用である請求項1〜6のいずれか1項に記載した自動車用ウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116451(P2012−116451A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285118(P2010−285118)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】