説明

自動車用ブレーキ液

【課題】液圧室の外側で形成された液膜に基づく潤滑性を発揮させることの容易な自動車用ブレーキ液を提供する。
【解決手段】自動車用ブレーキ液には、グリコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材が含有される。自動車用ブレーキ液には、脂肪族エステルが含有される。自動車用ブレーキ液には、脂肪族エステルとして炭素数が19以上の脂肪族エステルを含むことが好ましい。自動車用ブレーキ液中における脂肪族エステルの含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉱油系基材を含有する自動車用ブレーキ液に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ブレーキ液には、グリコール類等の非鉱油系基材を含むものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−536494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車用ブレーキの液圧系には、シリンダー本体と、そのシリンダー本体内を移動するピストンと、シリンダー本体内において液圧室の内外を区画するシール部材とが備えられている。シール部材は、シリンダー本体とピストンとの相対移動に伴って、ピストンの外周面又はシリンダー本体の内壁面と摺接される。例えば、シリンダー本体にシール部材が固定されている場合、ピストンの移動に伴ってピストンの外周面とシール部材とが摺接される。ここで、ピストンが液圧室の外側に向かって移動する際には、液圧室内に配置されていたピストンの一部が液圧室の外側に露出する。このとき、露出したピストンの外周面には、シール部材とピストンとの間から自動車用ブレーキ液が僅かに染み出すことで同ブレーキ液の液膜が形成される。そして、ピストンが液圧室の内側に向けて移動する際には、ピストンの外周面における前記液膜により潤滑されることで、シール部材とピストンの外周面との摩擦抵抗が低減される。これにより、シール部材への負荷が軽減されるようになる。こうした自動車用ブレーキ液による潤滑は、ピストンの外周面にシール部材が固定される場合においても同様に、シリンダー本体の内壁面とシール部材との間で行われる。
【0005】
上述した自動車用ブレーキ液による潤滑において、前記液膜は、液圧室の外側で空気に曝された状態となる。このように液膜が空気に曝され、その状態が継続すると、液膜に基づく潤滑性が発揮され難くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液圧室の外側で形成された液膜に基づく潤滑性を発揮させることの容易な自動車用ブレーキ液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の自動車用ブレーキ液は、グリコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有する自動車用ブレーキ液であって、脂肪族エステルを含有することを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用ブレーキ液において、前記脂肪族エステルとして炭素数が19以上の脂肪族エステルを含むことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自動車用ブレーキ液において、前記脂肪族エステルの含有量が1〜10質量%であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液圧室の外側で形成された液膜に基づく潤滑性を発揮させることの容易な自動車用ブレーキ液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の自動車用ブレーキ液を具体化した実施形態を詳細に説明する。
自動車用ブレーキ液は、グリコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有する。
【0011】
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及びヘキシレングリコールが挙げられる。
【0012】
グリコールエーテルは、そのホウ酸エステルであってもよい。グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルのホウ酸エステル、及びテトラエチレングリコールモノメチルエーテルのホウ酸エステルが挙げられる。
【0013】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコール(ポリテトラメチレングリコール)が挙げられる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、好ましくは150〜5000の範囲であり、より好ましくは500〜4000の範囲であり、さらに好ましくは1000〜4000の範囲である。
【0014】
非鉱油系基材は、単独種から構成してもよいし、複数種を混合した構成であってもよい。
自動車用ブレーキ液中における非鉱油系基材の含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上である。
【0015】
自動車用ブレーキ液には、脂肪族エステルが含有される。脂肪族エステルは、自動車用ブレーキの液圧系において、シリンダーの内周面又はピストンの外周面に形成された自動車用ブレーキ液の液膜を維持させるために含有される。
【0016】
脂肪族エステルとしては、上記の非鉱油系基材に溶解し得るものであればよく、例えばモノエステル、ジエステル、及びヒンダードエステルのいずれであってもよい。脂肪族エステルとしては、例えば炭素数が13〜45の脂肪族エステルを用いることができる。
【0017】
炭素数が13の脂肪族エステルとしては、例えば、NPG・ジ(n−ブタノエート)、及びNPG・ジ(2−メチルプロパノエート)が挙げられる。但し、「NPG」は、「ネオペンチルグリコール」を示す。
【0018】
炭素数が15の脂肪族エステルとしては、例えば、NPG・ジ(n−ペンタノエート)、及びNPG・ジ(2−メチルブタノエート)が挙げられる。炭素数が16の脂肪族エステルとしては、例えば、カプリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0019】
炭素数が17の脂肪族エステルとしては、例えば、ペラルゴン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、NPG・ジ(n−ヘキサノエート)、NPG・ジ(2−エチルブタノエート)、及びNPG・ジ(3−エチルブタノエート)が挙げられる。炭素数が18の脂肪族エステルとしては、例えば、カプリン酸2−エチルヘキシル、TMP・トリ(n−ブタノエート)、及びTMP・トリ(2−メチルプロパノエート)が挙げられる。但し、「TMP」は、「トリメチロールプロパン」を示す。
【0020】
炭素数が19の脂肪族エステルとしては、例えば、オレイン酸メチル、NPG・ジ(n−ヘプタノエート)、及びNPG・ジ(2−エチルペンタノエート)が挙げられる。炭素数が20の脂肪族エステルとしては、例えば、ラウリン酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0021】
炭素数が21の脂肪族エステルとしては、例えば、NPG・ジ(n−オクタノエート)、NPG・ジ(2−エチルヘキサノエート)、TMP・トリ(n−ペンタノエート)、TMP・トリ(2−メチルブタノエート)、PE・テトラ(n−ブタノエート)、及びPE・テトラ(2−メチルプロパノエート)が挙げられる。但し、「PE」は、ペンタエリスリトールを示す。
【0022】
炭素数が22の脂肪族エステルとしては、例えば、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸イソブチル、ステアリン酸n−ブチル、及びジ−2−エチルヘキシルアジペートが挙げられる。炭素数が23の脂肪族エステルとしては、例えば、NPG・ジ(n−ノナネート)、及びNPG・ジ(イソノナネート)が挙げられる。
【0023】
炭素数が24の脂肪族エステルとしては、例えば、パルミチン酸2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、TMP・トリ(n−ヘキサノエート)、及びTMP・トリ(3−エチルブタノエート)が挙げられる。炭素数が25の脂肪族エステルとしては、例えば、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−n−オクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、NPG・ジ(n−デカノエート)、PE・テトラ(n−ペンタノエート)、PE・テトラ(2−メチルブタノエート)、PE・テトラ(2−メチルブタノエート)、及びPE・テトラ(2,2−ジメチルプロパノエート)が挙げられる。
【0024】
炭素数が26の脂肪族エステルとしては、例えば、ステアリン酸2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、及びアゼライン酸ジイソデシルが挙げられる。炭素数が27の脂肪族エステルとしては、例えば、TMP・トリ(n−ヘプタノエート)、及びTMP・トリ(2−エチルペンタノエート)が挙げられる。
【0025】
炭素数が29の脂肪族エステルとしては、例えば、アゼライン酸ジイソデシル、PE・テトラ(n−ヘキサノエート)、PE・テトラ(2−エチルブタノエート)、及びPE・テトラ(2,2−ジメチルブタノエート)が挙げられる。炭素数が30の脂肪族エステルとしては、例えば、TMP・トリ(n−オクタノエート)、及びTMP・トリ(2エチルヘキサノエート)が挙げられる。
【0026】
炭素数が33の脂肪族エステルとしては、例えば、TMP・トリ(n−ノナネート)、TMP・トリ(イソノナネート)、PE・テトラ(n−ヘプタノエート)、及びPE・テトラ(2−エチルペンタノエート)が挙げられる。炭素数が36の脂肪族エステルとしては、例えば、TMP・トリ(n−デカノエート)、及びTMP・トリ(イソデカノエート)が挙げられる。
【0027】
炭素数が37の脂肪族エステルとしては、例えば、PE・テトラ(n−オクタノエート)、及びPE・テトラ(2−エチルヘキサノエート)が挙げられる。炭素数が41の脂肪族エステルとしては、例えば、PE・テトラ(n−ノナネート)、及びPE・テトラ(イソノナネート)が挙げられる。炭素数が45の脂肪族エステルとしては、例えば、PE・テトラ(n−デカノエート)、及びPE・テトラ(イソデカノエート)が挙げられる。
【0028】
なお、上述した脂肪族エステルのうち、NPG、TMP、又はPEのポリオールエステルがヒンダードエステルに分類される。
脂肪族エステルは、単独種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
自動車用ブレーキ液は、上述した脂肪族エステルの中でも、炭素数が19以上の脂肪族エステルを含むことが好ましい。炭素数が19以上の脂肪族エステルを含む場合、例えば、炭素鎖の親油性の向上や一分子中の炭素鎖数の増加に伴って、脂肪族エステルがシリンダーの内周面又はピストンの外周面に吸着し易くなると推測される。すなわち、炭素数が19以上の脂肪族エステルを含む場合、シリンダーの内周面又はピストンの外周面に形成された自動車用ブレーキ液の液膜がさらに維持され易くなる。
【0030】
一方、脂肪族エステルの炭素数の上限は、例えば45以下であることが好ましい。この場合、脂肪族エステルの動粘度、すなわち自動車用ブレーキ液の動粘度が過剰に高まることを回避することが容易となる。また、脂肪族エステルの熱安定性や耐加水分解性が得られ易くなるという観点からは、脂肪族エステルとしてヒンダードエステルを含有させることが好ましい。
【0031】
自動車用ブレーキ液中における脂肪族エステルの含有量は、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは5〜10質量%である。脂肪族エステルの含有量が1質量%以上の場合、上記液膜を維持させる作用がさらに得られ易くなる。一方、脂肪族エステルの含有量が10質量%を超える場合、自動車用ブレーキ液の動粘度が高まることにより、ブレーキの作動時における応答性が低下する傾向となる。
【0032】
自動車用ブレーキ液には、脂肪族エステル以外の添加剤を必要に応じて含有させてもよい。添加剤としては、例えば、腐食抑制剤、酸化防止剤、及びpH調整剤が挙げられる。
腐食抑制剤としては、例えば、ラウリン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸、ベンゾト
リアゾール、トリルトリアゾール等のトリアゾール類が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、例えば、4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のビスフェノール系化合物、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール系化合物が挙げられる。
【0034】
pH調整剤としては、例えば、アミン化合物が挙げられる。アミン化合物としては、例えばトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、及び、モルホリン等の環状アミンが挙げられる。
【0035】
自動車用ブレーキ液には、その他の添加剤として、粘度調整剤、潤滑剤、殺菌剤、消泡剤、又は染料を含有させることもできる。
次に、自動車用ブレーキ液の使用状態について作用とともに説明する。
【0036】
自動車用ブレーキの液圧系は、シリンダー本体と、そのシリンダー本体内を移動するピストンと、シリンダー本体内において液圧室を区画するシール部材とを備えている。シリンダー本体及びピストンは、金属材料又は樹脂材料から形成される。金属材料としては、例えば、アルミニウム、鋳鉄、及び鋼が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、及びフェノール系樹脂が挙げられる。
【0037】
シール部材は、ゴム系材料から形成される。ゴム系材料としては、例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレンゴム、及び塩化ブチルゴムが挙げられる。
【0038】
シール部材は、シリンダー本体とピストンとの相対移動に伴って、ピストンの外周面又はシリンダー本体の内壁面と摺接される。このとき、液圧室内から染み出した自動車用ブレーキ液は、ピストンの外周面又はシリンダーの内周面に液膜を形成する。この液膜によって、シール部材と、ピストンの外周面又はシリンダー本体の内壁面とが潤滑されることで、シール部材と、ピストンの外周面又はシリンダー本体の内壁面との摩擦抵抗が低減される。これにより、シール部材への負荷が軽減されるようになる。このような潤滑の行われる箇所としては、例えば、ブレーキマスターシリンダーの他に、ブレーキキャリパー、ホイールシリンダー等のブレーキアクチュエーターが挙げられる。
【0039】
上述した自動車用ブレーキ液による潤滑において、前記液膜は、液圧室の外側で空気に曝された状態となる。このように液膜が空気に曝され、その状態が継続すると、液膜に基づく潤滑性が発揮され難くなるおそれがある。この点、本実施形態の自動車用ブレーキ液には、脂肪族エステルが含有されている。この自動車用ブレーキ液により形成される液膜は、空気に曝された状態が継続したとしても維持され易い。
【0040】
脂肪族エステルの含有による効果は、自動車用ブレーキ液を所定の温度条件下で放置する加速試験により確認することができる。この加速試験では、例えば、自動車用ブレーキ液を金属板上に載せた状態とし、50℃で5時間放置し、その放置後の金属板と、シール部材と仮定したゴム部材との動摩擦係数を測定する。この測定の結果、動摩擦係数が小さいものほど、脂肪族エステルの含有による効果に優れる。
【0041】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)自動車用ブレーキ液には、脂肪族エステルが含有されている。この自動車用ブレーキ液により形成される液膜は、空気に曝された状態が継続したとしても維持され易いため、液圧室の外側で形成された液膜に基づく潤滑性を発揮させることが容易となる。これにより、シール部材への負荷が軽減されるため、例えばシール部材の耐久性を向上させることができるようになる。
【0042】
(2)脂肪族エステルとして炭素数が19以上の脂肪族エステルを含むことで、上記(1)欄で述べた効果を高めることがさらに容易となる。
(3)自動車用ブレーキ液中における脂肪族エステルの含有量が1〜10質量%であることで、上記(1)欄で述べた効果を高めることがさらに容易であり、かつ、ブレーキの作動時における応答性への影響を抑制することができる。また、脂肪族エステルの含有量が10質量%以下であることで、自動車用ブレーキ液の動粘度が高まることを抑制できることから、例えば、JIS K 2233:2006に記載の「6種(BF−6)」に適合させることが容易となる。
【0043】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記自動車用ブレーキ液において、前記脂肪族エステルの炭素数が45以下である自動車用ブレーキ液。
【0044】
(ロ)前記自動車用ブレーキ液において、前記脂肪族エステルの炭素数が19〜45であり、その脂肪族エステルは、モノエステル、ジエステル、及びヒンダードエステルから選ばれる少なくとも一種である自動車用ブレーキ液。
【実施例】
【0045】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜6)
表1に示すように、非鉱油系基材に脂肪族エステルを混合することで、各例の自動車用ブレーキ液を調製した。非鉱油系基材としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた。表1中に示す“脂肪族エステルA”は、オレイン酸メチル(炭素数:19、日油株式会社製、M−182A)、“脂肪族エステルB”は、トリメチロールプロパンと炭素数6〜10の酸とのヒンダードエステル(炭素数:24〜36、日油株式会社製、H−327R)、“脂肪族エステルC”は、アゼライン酸ジ−n−オクチル(炭素数:25、和光純薬工業株式会社製)である。表1中の各成分の配合量を示す数値の単位は質量%である。
【0046】
(比較例1)
表1に示すように、比較例1の自動車用ブレーキ液は、非鉱油系基材であるトリエチレングリコールモノメチルエーテルのみから構成した。
【0047】
<潤滑性の評価>
自動車用ブレーキ液を金属板上に1滴垂らし、その金属板を50℃で5時間放置した。次に、表面性試験機(新東科学株式会社製、商品名:HEIDON、TYPE:14FW)を用いて、各例の自動車用ブレーキ液の付着した金属板の上面とゴム部材(エチレン−プロピレン−ジエンゴム製)との動摩擦係数を測定した。各例の自動車用ブレーキ液の測定結果を表1の“動摩擦係数”欄に示す。
【0048】
【表1】

各実施例の自動車用ブレーキ液の動摩擦係数は、比較例1の自動車用ブレーキ液の動摩擦係数よりも小さい。従って、各実施例の自動車用ブレーキ液では、潤滑性が発揮され易いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール、グリコールエーテル、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の非鉱油系基材を含有する自動車用ブレーキ液であって、脂肪族エステルを含有することを特徴とする自動車用ブレーキ液。
【請求項2】
前記脂肪族エステルとして炭素数が19以上の脂肪族エステルを含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車用ブレーキ液。
【請求項3】
前記脂肪族エステルの含有量が1〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用ブレーキ液。

【公開番号】特開2013−14660(P2013−14660A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147362(P2011−147362)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】