説明

自動車用鉛蓄電池

【課題】自動車用鉛蓄電池において、鉛の使用量を低減しつつ、ブッシングの破損を防止できるようにする。
【解決手段】電池蓋11から突出するブッシング20に極柱30を通し上端部を溶接して形成した端子12を有する自動車用鉛蓄電池において、溶接部35から離れた下側の極柱30の外面に大径部33を設けると共に、前記電池蓋11から突出する高さ範囲を3等分した範囲のうち、中間の範囲Q内に前記大径部33の少なくとも一部が位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池蓋から突出するブッシングに極柱を通し上端部を溶接して形成した端子を有する自動車用鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用などに用いられる始動用鉛蓄電池は、電槽を閉じる合成樹脂製の電池蓋を有し、この電池蓋に鉛合金製のブッシングをインサート成形するとともに、鉛合金製の極柱をブッシングに挿通して極柱とブッシングとを溶接することで、端子が形成される(例えば、特許文献1参照)。上記端子には、車両側の端子が締め付けられるようにして固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−168264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の鉛蓄電池では、ブッシングの内径部と極柱の外周部との間に隙間が設けられており、鉛蓄電池に車両側の端子を固定する際に車両側の端子が必要以上に締め付けられると、ブッシングが変形し、ブッシングが破損してしまう虞がある。また、上記隙間をブッシングや極柱の鉛で埋める構成とすることで、ブッシングの破損を防止できるが、鉛の使用量が増加するため、電池の重量が増加やコストが増加するという問題がでてくる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、自動車用鉛蓄電池において、鉛の使用量を低減しつつ、ブッシングの破損を防止できるようにすることを目定とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、電池蓋から突出するブッシングに極柱を通し上端部を溶接して形成した端子を有する自動車用鉛蓄電池において、前記溶接位置から離れた下側の前記ブッシング内面、又は/及び前記極柱の外面に凸部を設けると共に、前記電池蓋から突出する高さ範囲を3等分した範囲のうち、真ん中の範囲内に前記凸部の少なくとも一部が位置することを特徴とする。
【0006】
また、前記ブッシングの内面を前記上端部より下端部が広がるテーパー状に形成した構成としても良い。
さらに、前記下端部側から前記凸部までの間にできる前記ブッシングと前記極柱との間の隙間に前記電池蓋の樹脂を注入した構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極柱とブッシングとの溶接位置から離れた下側の前記ブッシング内面、又は/及び極柱の外面に凸部を設けると共に、前記電池蓋から突出する高さ範囲を3等分した範囲のうち、真ん中の範囲内に前記凸部の少なくとも一部が位置するため、凸部がブッシング内面、又は/及び極柱の外面に当接することで、締め付けられた際のブッシングの変形を防止でき、ブッシングの破損を効果的に防止できるとともに、凸部によってブッシングの変形の荷重を受けることで、ブッシングを薄くできるとともに極柱の径を小さくできるため、ブッシングや極柱の鉛の使用量を低減でき、電池を軽量化しつつコストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池の端子を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)はそのI−I断面図である。
【図2】ブッシングの正面断面図である。
【図3】ブッシングの水平断面図であり、(a)は図2のA−A断面図、(b)は図2のB−B断面図である。
【図4】第2の実施の形態の端子を示す図である。
【図5】第3の実施の形態の端子を示す図である。
【図6】第4の実施の形態の端子を示す図である。
【図7】第5の実施の形態の端子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池の端子を示す図であり、図1(a)は正面断面図、図1(b)は(a)のI−I断面図である。
自動車用鉛蓄電池10は、正極板と負極板とをセパレータを介して交互に積層して成る複数の極板群(不図示)が各セルに収納される合成樹脂製のモノブロック電槽(不図示)と、この電槽の上部に融着されて当該電槽を閉じる合成樹脂製の電池蓋11と、上記同極性の極板の耳群が接続されてなるストラップと一体に形成され、この上方に突出する極柱30に接続されるとともに電池蓋11に設けられる一対の端子12(他方の端子は不図示)とを備えて構成される。上記電槽には希硫酸等の電解液が満たされている。
上記端子12は、電池蓋11を樹脂成形する際に電池蓋11の上部のインサート成形部15でインサート成形によって電池蓋11に一体化される円筒状のブッシング20と、ブッシング20に挿入されて溶接される電流入出力用の極柱30とを備えている。
【0010】
図2は、ブッシング20の正面断面図である。図3は、ブッシング20の水平断面図であり、図3(a)は図2のA−A断面図であり、図3(b)は図2のB−B断面図である。
ブッシング20は、鉛合金からなる中空円筒状のブッシング本体21を有し、ブッシング本体21は、下半部に形成される環状突起部22と、上半部に形成されるテーパー状の端子接続部23と、ブッシング本体21の中央に形成されて軸方向に延びる孔部24とを有している。
【0011】
端子接続部23は、自動車用鉛蓄電池10が搭載される車両から延びるハーネスが接続される部分であり、電池蓋11のインサート成形部15の上面11Aから外側へ上方に突出している。端子接続部23は、上記ハーネスの端に設けられたリング状の取付金具19(図1)が、端子接続部23の外周面23Aに締め付けられることで、上記ハーネスに接続される。ブッシング20は鋳造によって製造されるものであり、端子接続部23の外周面23Aは、JIS−D5301(始動用鉛蓄電池)に示されるように、上端側ほど先細るテーパー状に形成されている。
孔部24は、端子接続部23の上端部23Bから略同一径で軸方向に延びるストレート部24Aを有している。
【0012】
環状突起部22は、ブッシング本体21の外周部から突出する環状突起22A〜22Eを有している。環状突起22A〜22Eは、上下複数段で設けられている。各環状突起22A〜22Eは、ブッシング本体21の周方向に連続して延びる鍔形状の突起であり、互いに隣り合う各環状突起22A〜22Eの間は環状溝部25となっている。
電池蓋11の樹脂は、インサート成形部15の上部では、環状突起22Aの上面と面一となる位置まで形成され、インサート成形部15の下部では、最下段の環状突起22Eの下面まで回り込んで形成されている。
環状突起部22及び環状溝部25が電池蓋11に埋め込まれることで、ブッシング20と電池蓋11との境界面の面積が増加し、ブッシング20の固定強度及び電池蓋11との間のシール性が確保されている。
【0013】
本第1の実施の形態では、環状突起部22は、上下に並ぶ5段の環状突起22A〜22Eを有し、上から2段目の環状突起22Bは、それぞれ略等しい外径を有する環状突起22A,22C,22D,22Eよりも大径に形成されている。
環状溝部25は、上から順に4段の環状溝25A〜25Dを有している。下段の環状溝25C,24Dの外周面26は、下側ほど大径となるようにテーパー状に形成されている。このように、環状溝25C,25Dの外周面26を下側ほど大径となるようにテーパー状に形成することで、ブッシング20を上方に引き抜く方向の力を、外周面26で受けることができ、ブッシング20と電池蓋11との結合強度を向上できる。
【0014】
図2及び図3(a)に示すように、最上段の環状溝25Aには、環状突起22Aの下面と環状突起22Bの上面とを上下に連結するリブ27が複数形成されている。リブ27は、環状溝25Aの周方向に等間隔を開けた4箇所の位置、すなわち、環状溝25Aの周方向に90°間隔となる位置に形成されている。
図2及び図3(b)に示すように、環状溝25Cには、環状突起22Cの下面と環状突起22Dの上面とを上下に連結するリブ28が複数形成されている。リブ28は、互いに対向する一対のリブ28A,28Aと、互いに対向する一対のリブ28B,28Bとを有している。各リブ28Aと各リブ28Bとは、環状溝25Cの周方向において90°毎に交互に配置されている。
リブ28B,28Bは、環状突起22Bの外径部の位置まで径方向に突出しており、環状溝25Cよりも外側に突出している。また、リブ28B,28Bは、環状突起22Cを超えて上方に延び、環状突起22Bの下面に連結されている。
【0015】
各リブ27、各リブ28A及び各リブ28Bは、環状溝部25から径方向に突出する凸部であり、ブッシング20が電池蓋11に埋め込まれた状態では、各リブ27、各リブ28A及び各リブ28Bの側面部が電池蓋11のインサート成形部15の境界面に当接し、ブッシング20の回り止めとして作用する。
上記ハーネスの取付金具19が端子接続部23に接続される際の締付けトルクは、各リブ27、各リブ28A及び各リブ28Bを介して電池蓋11で受け止められるため、締付けトルクに対する耐性が向上し、この締付けに伴うブッシング20と電池蓋11との境界面の隙間の広がりが抑制されるため、電解液の染み出しを防止できる。
【0016】
図1に示すように、極柱30は、円柱状に形成されており、ブッシング本体21の孔部24に挿通される接続部31と、接続部31に連続して自動車用鉛蓄電池10の内部へ延びる基部32とを有している。接続部31及び基部32は、上端側ほど先細るテーパー状に形成されている。
極柱30は、接続部31の上端部31A(不図示)が、端子接続部23の上端部23Bより突出するまでブッシング20に挿通された状態で、それぞれの先端部(端子接続部23の上端部23B及び極柱30の接続部31の上端部31A)をバーナー等により加熱溶融した後に再凝固させ溶接して、端子12を形成する。
接続部31は、基部32に連続するとともに、孔部24のストレート部24Aに挿通可能な程度にストレート部24Aよりもわずかに小径に形成された大径部33(凸部)と、大径部33と同軸に大径部33の上方へ連続し、大径部33よりも小径に形成された小径部34とを有している。すなわち、大径部33は、小径部34の外周面(外面)から径方向に突出する段部によって構成される凸部である。
また、上端部31Aが上端部23Bに溶接される溶接部35(溶接位置)は小径部34の上端に形成される。
【0017】
端子接続部23が電池蓋11のインサート部の上面11Aから突出する部分を、図1に示すように、上面11A側の範囲P、中間の範囲Q(真ん中の範囲)、及び上端側の範囲Rのように3等分した場合、大径部33は、範囲Pの全域、及び範囲Qの一部に亘って設けられている。また、小径部34は、範囲Qの残りの部分と範囲Rに亘って設けられている。
このように、大径部33を上面11Aから突出する端子接続部23の孔部24の内側に設けるとともに、先端に小径部34を設けることで、孔部24の内周面と大径部33の外周面との間のクリアランスを小さくしつつ、小径部34の部分では極柱30の体積を減らすことができる。このため、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を大径部33で受けてブッシング20の破損を防止できるとともに、小径部34によって、極柱30の鉛の使用量を低減でき、自動車用鉛蓄電池10を軽量化しつつコストも低減できる。
【0018】
さらに、大径部33を、端子接続部23を3等分した場合の中間の範囲Qに設けることで、取付金具19の締付けによって最も大きく変形する部分を大径部33で受けることができるため、ブッシング20の破損を効果的に防止できる。また、中間の範囲Qに大径部33を設けつつ、上端側の範囲Rは小径部34を設けたため、ブッシング20の破損を防止しつつ、軽量化及びコストの低減も図ることができる。
【0019】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、極柱30とブッシング20との溶接部35から離れた下側の極柱30の外周面に大径部33を設けたため、大径部33がブッシング20の孔部24のストレート部24Aの内周面に当接することで、端子接続部23が取付金具19によって締め付けられた際の端子接続部23の変形を防止でき、ブッシング20の破損を防止できるとともに、大径部33によって端子接続部23の変形の荷重を受けることで、ブッシング20を薄くできるとともに極柱30に小径部34を設けることができるため、ブッシング20や極柱30の鉛の使用量を低減でき、自動車用鉛蓄電池10を軽量化しつつコストも低減できる。
【0020】
また、電池蓋11のインサート部の上面11Aから突出する端子接続部23の高さ範囲を3等分した範囲のうち、中間の範囲Q内に大径部33の少なくとも一部が位置するため、ブッシング20が締め付けられた際に最も荷重がかかる部分の変形を防止でき、ブッシング20の破損を防止できる。
【0021】
なお、上記第1の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記第1の実施の形態では、中間の範囲Q内に大径部33の少なくとも一部が位置するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、大径部33の上端を範囲Qの上端に位置させ、大径部33を中間の範囲Qの全域に設けても良い。また、大径部33は、中間の範囲Qのみに設けられても良い。
また、上記第1の実施の形態では、孔部24を端子接続部23の上端部23Bから略同一径で軸方向に延びるストレート部24Aのみからなるものとして説明したが、他の実施の形態中で後述するように、前記ストレート部24Aに加え、ストレート部24Aの下端からブッシング20の下端まで延びると共に、下方ほど径が大きく形成されているテーパー部24B(図示しない)とで構成されるようにしても良い。
このような構成によれば、ブッシング20の孔部24にテーパー部24Bを設けたため、テーパー部24Bの分だけブッシング20の体積を小さくして軽量化を図ることができるとともに、テーパー部24Bで極柱30をガイドできるため、極柱30が挿通し易くなる。
【0022】
[第2の実施の形態]
以下、図4を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、大径部33は、小径部34の外周面から径方向に突出する段部によって構成される凸部であり、大径部33によって端子接続部23の変形の荷重を受けるものとして説明したが、本第2の実施の形態は、接続部231に形成された突起部233で端子接続部23の変形の荷重を受けるように構成されている点が、上記第1の実施の形態と異なっている。
【0023】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池の端子を示す図であり、図4(a)は正面断面図、図4(b)は図4(a)のIV−IV断面図である。
図4(a)に示すように、ブッシング220は、軸方向に延びる孔部224を有し、孔部224は、端子接続部23の上端部23Bからブッシング220の下部まで下部側ほど拡径する上部テーパー部224Aと、上部テーパー部224Aに連続して上部テーパー部224Aよりも大きな傾斜で下端まで延びる下部テーパー部224Bとを有している。
【0024】
極柱230は、円柱状に形成されており、孔部224に挿通される接続部231と、接続部231に連続して自動車用鉛蓄電池10の内部へ延びる基部232とを有している。接続部231及び基部232は、上端側ほど先細るテーパー状に形成されている。
極柱230は、接続部231の上端部231A(不図示)が、端子接続部23の上端部23Bより突出するまでブッシング220に挿通された状態で、それぞれの先端部(接続部231の上端部23B及び極柱230の接続部231の上端部231A)をバーナー等により加熱溶融した後に再凝固させ溶接して溶接部235を形成し、端子12を形成する。
【0025】
極柱230の接続部231は、孔部224の上部テーパー部224Aよりも小径に形成された小径部234と、小径部234の外周面(外面)から径方向に突出する突起部233(凸部)とを有している。突起部233は、小径部234と同軸に形成された円板状の突起部であり、その外径は、端子接続部23が取付金具19によって締め付けられて変形した際に上部テーパー部224Aが突起部233の外周面に当接するように、上部テーパー部224Aよりもわずかに小さく形成されている。
【0026】
突起部233は、範囲Pの上部及び範囲Qの下部の範囲に亘って設けられている。また、突起部233を除いた接続部231の他の部分は小径部234となっている。
このように、突起部233を範囲Pの上部及び範囲Qの下部の範囲に設け、接続部231の他の部分を小径部234とすることで、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を突起部233によって受けつつ、小径部234の部分によって極柱230の体積を減らすことができる。このため、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を突起部233で受けてブッシング220の破損を防止できるとともに、小径部234によって、極柱230の鉛の使用量を低減でき、自動車用鉛蓄電池10を軽量化しつつコストも低減できる。
また、孔部224に上部テーパー部224A及び下部テーパー部224Bを設けて、孔部224を全体に亘ってテーパー形状としたため、第1の実施の形態の変形例として説明したように、部分的にテーパー部を形成するよりも、さらにブッシング220の重量を低減できる。
[第3の実施の形態]
以下、図5を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第2の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第2の実施の形態では、極柱230に突起部233を設け、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を突起部233で受けるものとして説明したが、本第3の実施形態は、荷重を受ける突起部333をブッシング320の孔部224に設けた点が、上記第2の実施の形態と異なっている。
【0027】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池の端子を示す図であり、図5(a)は正面断面図、図5(b)は図5(a)のV−V断面図である。
図5(a)に示すように、ブッシング320は、孔部224を有し、孔部224は、上部テーパー部224A及び下部テーパー部224Bを有している。
極柱330は、上端から下端まで一様なテーパー形状を有して先端側ほど先細りとなる円柱状に形成されており、孔部224に挿通される接続部331と、自動車用鉛蓄電池10の内部へ延びる基部332とを有している。
【0028】
孔部224の上部テーパー部224Aには、極柱330の接続部331の外周面に向かって内方へ突出する突起部333(凸部)が形成されている。突起部333は、接続部331の外周面を囲うように円環状に形成されており、その内径は、端子接続部23が取付金具19によって締め付けられて変形した際に、突起部333の内径部が接続部331の外周面に当接するように、接続部331の外径よりもわずかに大きく形成されている。また、突起部333は、範囲Pの上部及び範囲Qの下部の範囲に亘って設けられている。
端子接続部23が取付金具19で締め付けられた際には、孔部224に設けられた突起部333が接続部331に当接するため、突起部333が突出する分だけ極柱330の接続部331の径を小さくすることができる。
【0029】
このように、突起部333を範囲Pの上部及び範囲Qの下部の範囲に設けるとともに、極柱330の接続部331の径を小さくすることで、取付金具19が締め付けられた際の荷重を突起部333によって受けつつ、極柱330の体積を減らすことができる。このため、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を突起部333で受けてブッシング320の破損を防止できるとともに、極柱330の鉛の使用量を低減でき、自動車用鉛蓄電池10を軽量化しつつコストも低減できる。
【0030】
[第4の実施の形態]
以下、図6を参照して、本発明を適用した第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、極柱30に凸部である大径部33を設け、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を大径部33で受けるものとして説明したが、本第4の実施の形態は、荷重を受ける突出部433をブッシング420の孔部424に設けた点が、上記第1の実施の形態と異なっている。
【0031】
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池の端子を示す図であり、図6(a)は正面断面図、図6(b)は図6(a)のVI−VI断面図である。
図6(a)に示すように、ブッシング420は、孔部424を有し、孔部424は、端子接続部23の上端部23Bから軸方向に真直ぐに延びるストレート部424Aと、ストレート部424Aの下端からブッシング420の下端まで延びるテーパー部424Bとを有している。テーパー部424Bは、下方ほど径が大きく形成されている。
極柱430は、上端から下端まで一様なテーパー形状を有して先端側ほど先細りとなる円柱状に形成されており、孔部424に挿通される接続部431と、自動車用鉛蓄電池10の内部へ延びる基部432とを有している。
【0032】
孔部424のストレート部424Aの下部には、極柱430の接続部431の外周面に向かって内方へ突出する突出部433(凸部)が形成されている。突出部433は、ストレート部424Aの内周面(内面)が段状に突出した部分であり、突出部433内径は、端子接続部23が取付金具19によって締め付けられて変形した際に、突出部433の内径部が接続部431の外周面に当接するように、接続部431の外径よりもわずかに大きく形成されている。
【0033】
突出部433は、環状突起部22の上部の内径部から範囲Pの全域を経て範囲Qの下部の範囲まで設けられている。また、突出部433が形成されていないストレート部424Aの上部426は、接続部431の外周面から離間しており、上部426の部分の端子接続部23の肉厚は薄くなっている。
端子接続部23が取付金具19で締め付けられた際には、孔部424に設けられた突出部433が接続部431に当接するため、突出部433が突出する分だけストレート部424Aの上部426の肉厚を小さくすることができる。
【0034】
このように、突出部433を範囲P及び範囲Qの下部の範囲に設け、孔部424の上部426の肉厚を小さくすることで、取付金具19が締め付けられた際の荷重を突出部433によって受けつつ、ブッシング420の体積を減らすことができる。このため、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を突出部433で受けてブッシング420の破損を防止できるとともに、ブッシング420の鉛の使用量を低減でき、自動車用鉛蓄電池10を軽量化しつつコストも低減できる。
【0035】
[第5の実施の形態]
以下、図7を参照して、本発明を適用した第5の実施の形態について説明する。この第5の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、電池蓋11の樹脂は、インサート成形部15の下部では、最下段の環状突起22Eの下面まで回り込んで形成されているものとして説明したが、本第5の実施の形態は、電池蓋11の樹脂がテーパー部24Bまで回り込んでいる点、さらに、ブッシング20が、その孔部24において、端子接続部23の上端部23Bから軸方向に真直ぐに延びるストレート部24Aと、ストレート部24Aの下端からブッシング20の下端まで延びるテーパー部24Bとを有している点が、上記第1の実施の形態と異なっている。
【0036】
図7は、本発明の第5の実施の形態に係る自動車用鉛蓄電池の端子の正面断面図である。
図7に示すように、ブッシング20の孔部24において、ストレート部24Aとテーパー部24Bとの間には、ストレート部24Aよりも大径の拡径部24Cが形成されている。拡径部24Cは、大径部33の下方近傍に位置している。
インサート成形部15の下部では、電池蓋11の樹脂は、孔部24の内部に回り込む回り込み部11B(電池蓋の樹脂)を有し、回り込み部11Bは、環状突起22Eの下面を超えてテーパー部24Bの内周面に沿って孔部24の内部に回り込み、拡径部24Cまで注入されている。拡径部24Cの近傍の回り込み部11Bは、極柱30の接続部31の外周面に当接している。
本第5の実施の形態では、ブッシング20の下端部側から大径部33までの間にできるブッシング20の孔部24と極柱30との間の隙間に電池蓋11の樹脂を注入したため、上記隙間に設けられた回り込み部11Bによって、自動車用鉛蓄電池10の電解液がブッシング20の端子接続部23側の内部に侵入することを防止できる。
【0037】
なお、上記第5の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記第5の実施の形態では、樹脂の回り込み部11Bは、環状突起部22の中腹の22Bの辺りまで形成されているが、ブッシング20と極柱30の先端部の溶融の際に影響が出ない範囲で、前記電池蓋から突出する高さ範囲を3等分した範囲のうち、真ん中の範囲内に前記回り込み部11Bの少なくとも一部が位置するように形成しても良い。
上記第5の実施の形態では、ブッシング20の孔部24と極柱30との間の隙間に回り込み部11Bを設けるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2〜第4の実施の形態においても、孔部と極柱との間の隙間に回り込み部11Bを設けても良い。
また、上記第1〜第5の実施の形態では、ブッシングの内面又は極柱の外面のいずれかに、凸部を設けるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ブッシングの内面及び極柱の外面の両方に凸部を設ける構成としても良い。例えば、第2の実施の形態の構成において、突起部233の突出量を小さくするとともに、上部テーパー部224Aに第3の実施の形態の突起部333よりも突出量が小さな突起部を設け、取付金具19によって締め付けられた際の荷重を、この突起部と突起部233とを当接させることで受ける構成としても良い。或いは、第2の実施の形態の構成において、第3の実施の形態の突起部333を突起部233の上方に設け、突起部233及び突起部333の両方で荷重を受けるように構成しても良い。すなわち、凸部は、ブッシング内面、又は/及び前記極柱の外面に設ければ良い。
【符号の説明】
【0038】
10 自動車用鉛蓄電池
11 電池蓋
11B 回り込み部(電池蓋の樹脂)
12 端子
20,220,320,420 ブッシング
30,230,330,430 極柱
33 大径部(凸部)
35,235 溶接部(溶接位置)
233 突起部(凸部)
333 突起部(凸部)
433 突出部(凸部)
Q 中間の範囲(真ん中の範囲)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池蓋から突出するブッシングに極柱を通し上端部を溶接して形成した端子を有する自動車用鉛蓄電池において、
前記溶接位置から離れた下側の前記ブッシング内面、又は/及び前記極柱の外面に凸部を設けると共に、前記電池蓋から突出する高さ範囲を3等分した範囲のうち、真ん中の範囲内に前記凸部の少なくとも一部が位置することを特徴とする自動車用鉛蓄電池。
【請求項2】
前記ブッシングの内面を前記上端部より下端部が広がるテーパー状に形成したことを特徴とする請求項1記載の自動車用鉛蓄電池。
【請求項3】
前記下端部側から前記凸部までの間にできる前記ブッシングと前記極柱との間の隙間に前記電池蓋の樹脂を注入したことを特徴とする請求項2記載の自動車用鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97974(P2013−97974A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238872(P2011−238872)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】