説明

自然気化式加湿装置

【課題】加湿エレメントを複雑な形状とすることなく、簡単な構成で加湿エレメントの良好な自立状態を維持でき、かつ効率よく室内の空気に対して加湿することのできる自然気化式加湿装置を提供すること。
【解決手段】上方に開口すると共に、加湿用の水を貯える貯水部を備えた本体ケースと、吸水性を有する加湿エレメントとを備え、前記貯水部の底部には、前記加湿エレメントの差し入れ及び抜き取りを自在とした溝部が形成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を必要とせず、水の自然蒸発を利用した自然気化式の加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、室内の空気が過度に乾燥するのを防止し、適当な湿度を保つために様々な加湿装置が利用されている。近年は、特に省エネルギーや環境への配慮から電力を使用せず、水の自然な蒸発作用を利用した自然気化式の加湿装置が多く用いられている(例えば下記特許文献1及び2参照)。
【0003】
これら従来の自然気化式の加湿装置は、いずれも吸水性を有する加湿エレメントを用い、当該加湿エレメントの一部(浸漬部)を水に浸漬させると共に一部(露出部)を水の外へ露出させたものであって、毛細管現象を利用して水を前記露出部から蒸発させるものである。すなわち、上記のような構成とすることにより、毛細管作用によって浸漬部から露出部へと水が浸潤し、その水が露出部から室内の空気中へと蒸発することによって、室内の加湿をするものである。
【0004】
このような従来の自然気化式加湿装置によれば、確かに電力を使用することなく、水の自然な蒸発作用を利用して室内の空気の乾燥を防止し、適度な湿度を維持するこが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−321184号公報
【特許文献2】特開2007−107768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の自然気化式加湿装置においては、以下のような不都合があった。すなわち、上記のような従来の自然気化式加湿装置においては、その加湿エレメントには、吸水性のある合成樹脂シートや不織布、紙などが用いられ、その下側が水に浸漬されるとともに上側が水から外へ露出するようにして、自立させたものとしている。この水から外へ露出した露出部は、効率よく水を蒸発させるためには、その表面積を大きくするのが好ましい。しかしながら一方、露出部を大きくすると、露出部まで水が浸潤するとその重みで加湿エレメントの自立状態が維持しずらくなってしまう。それゆえ、加湿エレメントの自立状態を維持するために、その形状を複雑なものとする必要があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を克服するためになされたものであり、加湿エレメントを複雑な形状とすることなく、簡単な構成で加湿エレメントの良好な自立状態を維持でき、かつ効率よく室内の空気に対して加湿することのできる自然気化式加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る自然気化式加湿装置は、上方に開口すると共に、加湿用の水を貯える貯水部を備えた本体ケースと、吸水性を有する加湿エレメントとを備え、前記貯水部の底部には、前記加湿エレメントの差し入れ及び抜き取りを自在とした溝部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る自然気化式加湿装置によれば、本体ケースの貯水部の底部に、加湿エレメントの差し入れ及び抜き取りを自在とした溝部が形成されているので、利用する加湿エレメントの材料や大きさなどに応じて所定の高さ寸法を有する溝部を備えるようにすれば、加湿エレメントが吸水したときにも、その好適な自立状態を維持できる。また、加湿エレメントは、前記溝部に差し入れ出来る形状をそなえていればよく、それゆえ加湿エレメントを単純な形状とでき、また様々な装飾的形状とすることも出来る。更に、加湿エレメントは、本体ケースの溝部に差し入れられているだけであって、かつ容易に抜き取りが可能であるため、加湿エレメントを交換したり、いったん抜き取って洗ったりすることも容易にできる。
【0010】
また、本発明に係る自然気化式加湿装置において、本体ケースの開口部を覆う蓋体を更に備え、該蓋体には、上下に貫通するスリットが形成され、加湿エレメントは前記スリットに挿通されて差し入れられるようにしてもよい。このようにすれば、本体ケースの開口部を蓋体で覆うことによって本体ケースの貯水部内に入れられた水がこぼれにくくなる。また、加湿エレメントは、蓋体に形成されたスリットに挿通されて本体ケースの溝部に差し入れられるので、本体ケースの溝部(を形成する側壁)と蓋体のスリットの周縁部との両方に支えられて、安定的な自立状態が維持される。
【0011】
さらに、本発明に係る自然気化式加湿装置において、蓋体は、本体ケースに対して着脱自在とすることができる。このようにすれば、蓋体を外せば、容易に本体ケースの内部(貯水部)を洗浄することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明に係る自然気化式加湿装置によれば、本体ケースの貯水部の底部に、加湿エレメントの差し入れ及び抜き取りを自在とした溝部が形成されているので、利用する加湿エレメントの材料や大きさなどに応じて所定の高さ寸法を有する溝部を備えるようにすれば、加湿エレメントが吸水したときにも、その好適な自立状態を維持できる。また、加湿エレメントは、前記溝部に差し入れ出来る形状をそなえていればよく、それゆえ加湿エレメントを単純な形状とでき、また様々な装飾的形状とすることも出来る。更に、加湿エレメントは、本体ケースの溝部に差し入れられているだけであって、かつ容易に抜き取りが可能であるため、加湿エレメントを交換したり、いったん抜き取って洗ったりすることも容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る自然気化式加湿装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した自然気化式加湿装置の正面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示した実施形態における本体ケースと蓋体(蓋体を取り外した状態)を示す斜視図である。
【図5】図1に示した実施形態における本体ケースと蓋体とを示した図であり、(a)は、本体ケースに蓋体を取り付けた状態を示した斜視図であり、(b)は、(a)のB−B線における断面図である。
【図6】図4に示した本体ケースの(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、そして(d)は右側面図である。
【図7】図6に示した本体ケースの(a)はC−C線における断面図、(b)はD−D線における断面図、そして(c)はE−E線における断面図である。
【図8】図4に示した蓋体の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、そして(d)は右側面図である。
【図9】図8のF−F線間における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。


【0015】
図1〜3は、本発明に係る自然気化式加湿装置の一実施形態を示している。図1に示すように、この自然気化式加湿装置1は、本体ケース2と、蓋体3と、複数の加湿エレメント4(4a〜4f)を備えている。加湿エレメント4a〜4fは、吸水性を備えた不織布によって形成され、それぞれ草木や動物の形状を模ったものとなされている。この加湿エレメント4a〜4fの下側部は、図3に示すように、蓋体3のスリットに挿通されて本体ケース2内に配され、上側部は、本体ケースよりも上方へ露出するようになされている。
【0016】
尚、この加湿エレメント4を形成する材料は、不織布に限られない。吸水性能を備え、吸収した水を空気中に蒸発させる作用を有するものであれば、合成樹脂製のシートや紙など、任意の材料を適宜選択して用いることができる。また、この加湿エレメントには、抗菌・防カビなどの性能を付与する加工を施してもよく、或いは、加湿エレメントが吸水していることを目視できるように、吸水すると変色するインキを含浸させるなどの加工を施してもよい。
【0017】
本体ケース2は、図6及び図7に示すように、上面が開口した略直方体状の箱体であって、その内部すなわち貯水部21に水Wを貯えることができるものである(図3参照)。より詳しく説明すると、本体ケース2は、図6(a)の平面視から分かるように、その四隅が丸みを帯びた円弧状となされており、また、図6(b)及び(d)に示すように、その縦横の幅寸法が、下端部から上端部に向かって徐々に大きくなるようになされている。
【0018】
また、図6(a)、図7に示すように、本体ケース2の貯水部21の底部には、上方に向かって突出する突起部22が多数形成されている。この実施形態における突起部22は、図6(a)の平面視を基に説明すると、この図6(a)の左右方向に長く、上下方向(すなわち本体ケース2を例えばテーブル上に置いた場合における前後方向)に短い四角形状となされ、これが上方に突出して略直方体状の突起部22となされている(尚、当該突起部はその上端部近傍において先細りのテーパー形状を備えている)。この突起部22は、同じく図6(a)を基に説明すると左右方向に4つ、上下方向に7つ、いずれの方向へも直線状に並ぶように形成され、計28個の突起部22が設けられている。
【0019】
このようにして設けられた多数の突起部22によって、図6(a)の上下方向(すなわち本体ケース2を例えばテーブル上に置いた場合における前後方向)に並んだ複数の突起部22間に溝部23が形成され、この溝部23に加湿エレメント4の下端部が差し入れられるようになされている(図3参照)。
【0020】
上記突起部22の大きさや数、溝部23の幅寸法などは、任意に設定することが可能である。ただし、溝部23の幅寸法は、当該溝部23に差し入れられる加湿エレメント4とほぼ同じか、僅かに小さいものとすれば、加湿エレメント4の自立を好適に維持できるので、そのようにするのが好ましい。
【0021】
また、図6(a)の左右方向に4つ並んだ突起部22の間には第二の溝部24が形成されている。この左右方向に4つ並んだ突起部22は、この実施形態のように、第二の溝部24を形成することなく1つの横長の突起部22として形成してもよい。しかしながら、この実施形態のように第二の溝部24を形成することによって、貯水部21に入れられた水の水面が突起部の先端部の高さより下の位置に下がった状態においても、溝部23全体にムラなく水が行き渡るので、加湿エレメント4の好適な吸水が維持される。
【0022】
図7に示すように、本体ケース2の周側壁の内側面には、その中央よりもやや上の高さ位置に、段差部25が形成されている。この段差部25の上面に、蓋体3の周縁部が載置され、これにより蓋体3が本体ケース2の開口部を覆うようにして所定位置に保持されるようになされている(図3、及び図5(b)参照)。
【0023】
尚、この本体ケース2は、この実施形態においてはポリプロピレンによって作製されたものであるが、これに限られず任意の合成樹脂材料、ゴム、金属、セラミックス材料等を用いて作製することができる。
【0024】
蓋体3は、図8に示すように、平面視略四角形状の板状体31の上面中心部につまみ部32が設けられてなるものである。また、図8及び図9の断面図に示すように、この蓋体3には、左右方向に延び、上下に貫通するスリット33が8箇所形成されている。尚、この蓋体3は、この実施形態においては本体ケース3と同様、ポリプロピレンによって作製されたものであるが、これに限られず任意の合成樹脂材料、ゴム、金属、セラミックス材料等を用いて作製してよいものである。
【0025】
この蓋体3は、図4の矢印Xに示すとおり、上方から本体ケース2の開口部を覆うようにして本体ケース2内に入れられ、図5に示すように、その周縁部の下面部を本体ケース2の段差部25に載置するようにして、本体ケース2内の所定位置に保持される。尚、蓋体3に上面につまみ部32が形成されていることで、このつまみ部32を手で摘んで蓋体3を本体ケース2に対して着脱動作をすることができる。
【0026】
以上のような形態を備えたこの加湿装置1を利用するときは、先ず、蓋体3を取り外した状態の本体ケース2の貯水部21に水Wを入れ、蓋体3で本体ケース2の開口部を覆う(図5の状態)。加湿エレメント4を上方から蓋体3のスリット33内に挿通させる。更に、加湿エレメント4の下端部を貯水部21の底部に形成された溝部23に差し入れるようにして、加湿エレメントを自立させる。そうすると、加湿エレメント4は、水Wに漬かった部分から吸水し、当該吸収された水は、毛細管現象によって、水Wから外へ露出している加湿エレメント4全体に導かれ、当該露出部分の表面から自然蒸発して室内の空気に加湿する。
【0027】
尚、この加湿エレメント4を長期間にわたって使用すると、水Wの中に含まれている不純物や硬度成分、あるいは外部から侵入する異物などが、加湿エレメント4の内部に蓄積して吸水性能を低下させ、結果として加湿性能を低下させることがある。その場合、本発明に係る自然気化式加湿装置1においては、容易に加湿エレメント4を本体ケース2から抜き取って、また差し入れることが可能なので、いったん加湿エレメント4を抜き取って水洗いその他の方法で洗浄したのち、再度本体ケース2に差し入れて使用することが可能である。
【0028】
また、加湿エレメント4は、この実施形態においては、草木や動物の形を模したものとしているが、これに限られず、任意の形のものを自由に作製して用いることが可能なものである。例えば、この加湿エレメントを使用する季節にふさわしい風物を模したり、部屋のインテリアや雰囲気に合わせた形状、色のものを作製するようにしてもよい。
【0029】
以上のとおり、具体的な実施形態を示して本発明に係る自然気化式加湿装置を説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々に形態等を変更することが可能なものである。すなわち、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定され、また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるものである。
【0030】
例えば、本体ケース2は、上述した実施形態のように直方体形状のものに限られず、円柱形状、三角柱形状、その他任意の形状のものとすることができる。また、本体ケース2の溝部23や蓋体3のスリット33は、上述した実施形態においては直線状のものとしているが、これに限られず曲線状のものとしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 自然気化式加湿装置
2 本体ケース
21 貯水部
22 突起部
23 溝部
24 第二の溝部
25 段差部
3 蓋体
31 板状体
32 つまみ部
33 スリット
4 加湿エレメント




【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口すると共に、加湿用の水を貯える貯水部を備えた本体ケースと、
吸水性を有する加湿エレメントとを備え、
前記貯水部の底部には、前記加湿エレメントの差し入れ及び抜き取りを自在とした溝部が形成されていることを特徴とする自然気化式加湿装置。
【請求項2】
本体ケースの開口部を覆う蓋体を更に備え、
該蓋体には、上下に貫通するスリットが形成され、加湿エレメントは前記スリットに挿通されて差し入れられるようになされたことを特徴とする請求項1に記載の自然気化式加湿装置。
【請求項3】
蓋体は、本体ケースに対して着脱自在となされたことを特徴とする請求項2に記載の自然気化式加湿装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−108653(P2013−108653A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252982(P2011−252982)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】