説明

自走式作業機械

【課題】道幅が狭かったり障害物が存在する作業現場への進入が容易となり、車載輸送時のコンパクト化によって輸送コストの低減が図れる自走式作業機械を提供する。
【解決手段】自走式作業機械1の左右に位置して平行するクローラ走行装置2の配置間隔を変更可能とし、旋回台5の上面に設けたブーム7を、根元側の大径角筒7aと先端側の小径角筒7bを組み合わせ、内部に組み込んだ油圧シリンダ20によって伸縮自在となるように形成し、前記ブーム7の先端に設けたアーム10は、ブーム7を形成する小径角筒7bの先端に、このブーム7の伏倒方向に向かって屈曲するように固定され、このアーム10が油圧シリンダ21で伸縮自在となるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、立坑工事、鋼管パイル工事、コンクリートパイル工事、オーガー工事等の多様な土木工事の施工に用いる自走式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事の施工に用いる一般的な自走式作業機械は、左右にクローラ走行装置を有する走行機台の上に旋回台を設け、前記旋回台の上面にブームをシリンダによって起伏動するように取付け、このブームの先端にアームをシリンダで角度可変となるように設けた構造を有し、前記アームの先端に、施工せんとする工事の種類に応じたアタッチメントである工事用機器を取付けることになる。
【0003】
このような自走式作業機械は、左右のクローラ走行装置によって走行可能となり、作業時に、自走式作業機械を所定位置で停止させ、旋回台の旋回によってブームを作業方向に向け、工事用機器をブームの起伏動とアームの角度調整によって作業位置に臨ませ、この工事用機器を作動させることで工事を施工するものである。
【0004】
従来の自走式作業機械は、左右のクローラ走行装置の配置間隔が固定化されており、また、ブームは一本物の構造が採用され、旋回台との間に設けてシリンダで起伏動が付与され、このブームの先端に取付けたアームは、ブームの起伏方向に沿って回動自在となり、ブームとの間に設けたシリンダで、ブームに対する角度が可変になっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−146833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自走式作業機械を用いた各種土木工事の施工において、施工現場やその周辺の条件は常に一定ではなく、道幅が狭かったり障害物が存在する等の様様な状況に遭遇することになり、従来の自走式作業機械のように、左右のクローラ走行装置の配置間隔が固定化されている構造では、道幅が狭かったり障害物が存在すると、作業現場に到着することができない事態が発生する。
【0007】
また、自走式作業機械を作業現場に持ち込むのは、自動車搬送になるが、左右のクローラ走行装置の配置間隔が固定化されている構造では、荷台の幅が広い大型の自動車が必要になり、その分輸送コストが高く付くという問題もある。
【0008】
更に、従来の自走式作業機械は、ブームが一本物の構造になっているので、どうしてもブームが長くなり、車載時にブームを起立格納すると、空中にある障害物に接触する危険性があり、ブームを伏倒格納すると前後が長くなって大型の自動車が必要になるという不便がある。
【0009】
また、従来の自走式作業機械は、アームを回動可能にしているため、ブームに沿って折り畳み状に格納することができるという利点はあるが、実際の土木工事において回動可能の機能を生かす種類は少なく、例えば、立坑工事、鋼管パイル工事、コンクリートパイル工事、オーガー工事等においては使用しない機能である。
【0010】
そこで、この発明の課題は、クローラ走行装置の配置間隔を可変とし、かつ、ブームを伸縮可能とすることで、道幅が狭かったり障害物が存在する作業現場への進入が容易となり、車載輸送時のコンパクト化によって輸送コストの低減が図れる自走式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明は、左右にクローラ走行装置を有する走行機台の上に旋回台を設け、前記旋回台の上面にブームを起伏動するように取付け、このブームの先端にアームを設けた自走式作業機械において、前記左右に位置して平行するクローラ走行装置の配置間隔を変更可能とし、旋回台の上面に設けたブームを、根元側の大径筒と先端側の小径筒を組み合わせ、内部に組み込んだシリンダによって伸縮自在となるように形成し、前記アームは、ブームを形成する小径筒の先端に、このブームの伏倒方向に向かって屈曲するように固定され、このアームが伸縮自在に形成されているようにしたものである。
【0012】
上記旋回台は、伸長時にこの旋回台とクローラ走行装置を地面から浮かすことのできるアウトリガーが前後四隅の位置に設けられ、前記クローラ走行装置は、走行機台に設けたガイドに沿って接近離反動可能となり、前記ガイドとクローラ走行装置を結合するシリンダの伸縮によって配置間隔の変更が可能になっているようにすることができる。
【0013】
上記ブームは、旋回台の前後方向に沿って起伏動するよう、旋回台の上面に設けたブラケットに大径筒の根元側を枢止し、この大径筒と旋回台の間に設けたシリンダの伸縮によって起伏動し、上記アームは、ブームを形成する小径筒の先端に、このブームの伏倒方向に向かって屈曲するように固定された外筒と、この外筒に嵌り合う内筒からなり、外筒と内筒を結合するシリンダによって伸縮自在に形成され、前記内筒の先端に工事用機器の取付け部が設けられている構造とすることができる。
【0014】
上記旋回台の旋回、ブームの起伏動と伸縮、アームの伸縮が有線によるリモートコントロールによって操作できるようにしてもよい。
【0015】
ここで、上記旋回台は、クローラ走行装置よりも長い前後長さを有する矩形状に形成され、その前後四隅に設けたアウトリガーを接地させることにより、作業時に発生する荷重を支持するようになっており、この旋回台の上面に簡易運転台と油圧発生用の装置が搭載され、この簡易運転台又はオールワイヤーのリモコンによるリモートコントローラによって、油圧を駆動源として、クローラ走行装置の起動による走行、旋回台の旋回、アウトリガーの伸縮、ブームの起伏動と伸縮、アームの伸縮を制御できるようになっている。
【0016】
上記アームを形成する内筒の先端に設けた取付け部は、先端に水平のピン孔を備えたブラケットによって形成され、前記ピン孔とこれに抜き差しするピンを用いて工事用機器を取換え可能に取付けるようになっており、前記工事用機器の種類としては、コンクリートコア引き抜き作業用アタッチメント、地中の場所打ち杭作業用アタッチメント、PC杭打作業用アタッチメント、引き抜き工事用アタッチメントを例示することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、左右に位置して平行するクローラ走行装置の配置間隔を変更可能としたので、左右クローラ走行装置の間隔を狭くすれば、道幅が狭かったり障害物が存在すると作業現場への進入が容易となり、作業現場や周辺の条件に制約を受けることが少なくなり、また、車載輸送時においても、荷台の幅が狭い自動車での輸送が可能になり、輸送コストの低減が図れる。
【0018】
また、旋回台の上面に設けたブームをシリンダによって伸縮自在となるようにしたので、作業内容に合わせてブームの長さを調整できるだけでなく、ブームを収縮させることで全体がコンパクトになり、走行時の小回りがきくだけでなく、車載輸送時に前後寸法が短くなり、荷台の短い自動車での輸送が可能になり、輸送コストの低減が図れる。
【0019】
更に、ブームの先端に設けたアームをブームに対して固定し、このアームを伸縮自在に形成したので、アームを直接回動させないので構造の簡素化が図れ、伸縮自在とすることで作業条件に対して広範な対応が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る自走式作業機械の作業を行わないときや車載時の状態を示す正面図
【図2】この発明に係る自走式作業機械のブームとアームの伸縮とブームの起伏動を示す正面図
【図3】この発明に係る自走式作業機械の作業時の状態を示す正面図
【図4】(a)は左右に一対となるクローラ走行装置の間隔を狭めた狭幅状態の側面図、(b)はクローラ走行装置の間隔を広めた拡張状態の側面図
【図5】(a)は左右に一対となるクローラ走行装置の間隔を狭めた狭幅状態の平面図、(b)はクローラ走行装置の間隔を広めた拡張状態の一部切欠き平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0022】
図1乃至図3のように、この発明に係る自走式作業機械1は、左右に一対のクローラ走行装置2を有する走行機台3の上に旋回機構4を介して旋回台5を設け、この旋回台5の前後四隅に、両側幅方向に出し入れ可能となり、油圧シリンダによって上下に伸縮するアウトリガー6を取付けると共に、前記旋回台5の上面に、旋回台5の前後方向に沿って起伏動するブーム7と、簡易運転台8と、油圧発生用の装置9が設けられ、前記ブーム7の先端にアーム10が固定されている。
【0023】
上記クローラ走行装置2は、フレーム11の両端に設けたスプロケット間の外側にエンドレス帯12を巻回し、油圧モータ13で一方スプロケットを駆動することでエンドレス帯12を回動させて走行する周知の構造を有している。
【0024】
上記走行機台3は、図1と図4、図5のように、前後の位置に角筒形となる幅方向に長いガイド14が設けられ、両側のクローラ走行装置2は、フレーム11に設けたスライド部材15が前記ガイド14の両端側に嵌り合い、前記フレーム11を油圧シリンダ16で結合した構造になっており、油圧シリンダ16の伸縮により、両側のクローラ走行装置2は、平行する状態でその配置間隔が可変となり、図4(a)と図5(a)は、油圧シリンダ16を収縮させて両側のクローラ走行装置2を接近させた幅狭状態を、図4(b)と図5(b)は油圧シリンダ16を伸長させて両側のクローラ走行装置2を離反させた張り出し状態を示している。
【0025】
前記ブーム7は、大径角筒7aとこの大径角筒7a内に納まって軸方向に移動可能となる小径角筒7bとの組み合わせによって伸縮自在となり、前記大径角筒7aの後端が旋回台5の上面に立設した支持ブラケット17に枢軸18で取付けられ、この枢軸18を支点に旋回台5の前後方向に起伏回動可能となり、旋回台5と大径角筒7aの上端部を結合する油圧シリンダ19の伸縮によって起伏動が与えられると共に、前記大径角筒7aと小径角筒7bはその内部に納まる油圧シリンダ20で結合し、この油圧シリンダ20によって伸縮動することになる。
【0026】
ブーム7の先端に設けたアーム10は、上記小径角筒7bの先端に固定され、ブーム7の起伏方向の前方に向けて突出するよう、前記小径角筒7bの長さ方向に対して内角が鈍角となる角度をもって屈曲するように突設されている。
【0027】
このアーム10は、上記小径角筒7bの先端に固定した大径外筒10aと、この大径外筒10a内に納まって軸方向に移動可能となる小径内筒10bとの組み合わせによって伸縮自在となり、大径外筒と小径内筒はその内部に納まる油圧シリンダ21で結合し、この油圧シリンダ21によって伸縮動するようになっている。
【0028】
従って、ブーム7とアーム10は、図2に示すように、油圧シリンダ19の伸縮によって旋回台5の前後方向に起伏動し、ブーム7とアーム10の伸縮を選択することで、アーム10の先端を必要とする作業位置に移動させることができる。
【0029】
上記小径内筒10bの先端に、工事の種類に応じたアタッチメントである工事用機器Aをピン22での結合によって着脱自在に取付けるためのブラケット23が設けられ、前記工事用機器Aとしては、コンクリートコア引き抜き作業用アタッチメント、地中の場所打ち杭作業用アタッチメント、PC杭打作業用アタッチメント、引き抜き工事用アタッチメントを例示することができる。
【0030】
上記した簡易運転台8の部分に制御器材24を設置し、簡易運転台8で走行や旋回台の旋回、ブームの起伏動と伸縮、アームの伸縮が制御できるが、前記制御器材24にオールワイヤーによる有線でリモートコントローラを接続することによって、旋回台5の旋回、ブーム7の起伏動と伸縮、アーム10の伸縮等が離れた位置からリモコンによる操作できるようにし、電波障害をなくすと同時に作業部分に人が近づく必要をなくして作業の安全性を向上させるようになっている。
【0031】
この発明の自走式作業機械1は、上記のような構成であり、作業を行わないときや車載時は、図1のように、ブーム7とアーム10を共に収縮させてブーム7を水平の伏倒状態とし、アウトリガー6を収縮させれば、左右一対のクローラ走行装置2で走行できることになり、ブーム7を収縮させることで全体がコンパクトになり、走行時の小回りがきくだけでなく、車載輸送時に前後寸法が短くなり、荷台の短い自動車での輸送を可能にして輸送コストの低減を図ることができる。
【0032】
自走式作業機械1の走行時において、道幅が狭いような場合や車載時は、図4(a)と図5(a)のように、左右一対のクローラ走行装置2の間隔をシリンダ16の収縮によって接近させ、また、作業時の安定性を図ったり道幅が広い場合は、図4(b)と図5(b)のように、左右一対のクローラ走行装置2の間隔をシリンダ16の伸長によって拡張させる。
【0033】
上記のようなクローラ走行装置2の間隔変更は、アウトリガー6を伸長させて旋回台5を持ち上げ、クローラ走行装置2を地面から浮かして負荷がかからないようにした状態で、シリンダ16を伸縮させることによって行うことができる。
【0034】
ちなみに、上記旋回台5の幅を2000mm、クローラ走行装置2におけるエンドレス帯12の幅を500mmに設定した場合、左右一対のクローラ走行装置2は、その接近時に外側間の間隔寸法を旋回台5の幅に等しくなるよう設定することで、道路幅員が2100mm以内で進入可能になり、また、左右一対のクローラ走行装置2の間隔を拡張させた場合、外側間の間隔寸法を2500mmの張り出し状態にすることで、自走式作業機械1の安定性を向上させることができる。
【0035】
図3は、自走式作業機械1を用いた作業状態を示し、アーム10の先端に設けた取付け部材であるブラケット23に工事用機器Aを取付け、アウトリガー6を伸長させて接地させること旋回台5を地面に固定化し、リモートコントロールによって、ブーム7とアーム10の伸縮及びブーム7の起伏角度を調整することにより、工事用機器Aを作業位置に配置して所定の作業を行うことができる。
【0036】
自走式作業機械1に取付けた工事用機器Aを用いた作業内容としては、コンクリートコア引き抜き作業、地中の場所打ち杭作業、PC杭打作業、引き抜き工事等を行なうことができる。
【0037】
なお、ブーム7を旋回させる場合は、アウトリガー6を収縮させ、旋回台5を旋回機構4によって回動させることによって得られる。
【0038】
上記のようなブーム7とアーム10の伸縮及びブーム7の起伏動は、自走式作業機械1から離れた位置でオールワイヤーのリモコンでリモートコントロールすることにより、電波障害をなくして作業の安全性を向上させることができ、ブーム7とアーム10の伸縮及びブーム7の起伏動で工事用機器Aの作業位置を調整することができ、作業条件に対して広範な対応が可能になる。
【符号の説明】
【0039】
1 自走式作業機械
2 クローラ走行装置
3 走行機台
4 旋回機構
5 旋回台
6 アウトリガー
7 ブーム
8 簡易運転台
9 油圧発生用の装置
10 アーム
11 フレーム
12 エンドレス帯
13 油圧モータ
14 ガイド
15 スライド部材
16 油圧シリンダ
17 支持ブラケット
18 枢軸
19 油圧シリンダ
20 油圧シリンダ
21 油圧シリンダ
22 ピン
23 ブラケット
24 制御器材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右にクローラ走行装置を有する走行機台の上に旋回台を設け、前記旋回台の上面にブームを起伏動するように取付け、このブームの先端にアームを設けた自走式作業機械において、
前記左右に位置して平行するクローラ走行装置の配置間隔を変更可能とし、旋回台の上面に設けたブームを、根元側の大径筒と先端側の小径筒を組み合わせ、内部に組み込んだシリンダによって伸縮自在となるように形成し、前記アームは、ブームを形成する小径筒の先端に、このブームの伏倒方向に向かって屈曲するように固定され、このアームが伸縮自在に形成されていることを特徴とする自走式作業機械。
【請求項2】
上記旋回台は、伸長時にこの旋回台とクローラ走行装置を地面から浮かすことのできるアウトリガーが前後四隅の位置に設けられ、前記クローラ走行装置は、走行機台に設けたガイドに沿って接近離反動可能となり、前記ガイドとクローラ走行装置を結合するシリンダの伸縮によって配置間隔の変更が可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の自走式作業機械。
【請求項3】
上記ブームは、旋回台の前後方向に沿って起伏動するよう、旋回台の上面に設けたブラケットに大径筒の根元側を枢止し、この大径筒と旋回台の間に設けたシリンダの伸縮によって起伏動し、上記アームは、ブームを形成する小径筒の先端に、このブームの伏倒方向に向かって屈曲するように固定された外筒と、この外筒に嵌り合う内筒からなり、外筒と内筒を結合するシリンダによって伸縮自在に形成され、前記内筒の先端に工事用機器の取付け部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自走式作業機械。
【請求項4】
上記旋回台の旋回、ブームの起伏動と伸縮、アームの伸縮が有線によるリモートコントロールによって操作できるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自走式作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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