説明

自走式貫孔機

【課題】異なる径の地中孔を穿孔する場合においても、その径に対応する複数の貫孔機本体を用意することを不要とし、設備コストの低減を実現する。
【解決手段】円筒状の胴体部10の前端側に尖頭状のヘッド部20が設けられ、ヘッド部20を胴体部10に対して出退移動させる形態で、地中孔を形成しながら前進移動するように構成された自走式貫孔機において、最大径が胴体部10よりも大径の円筒状に形成され、且つその前端側と後端側とが、端部ほど小径となる錐状に形成されたカバー体Cが、貫孔機本体Jに着脱自在に設けられ、カバー体Cは、貫孔機本体Jの前進移動時にヘッド部20と一体的に出退移動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の胴体部の前端側に尖頭状のヘッド部が設けられかつ後端側に底壁部が設けられ、前記ヘッド部が、前記胴体部の軸心方向に出退移動自在に具備されかつ引退方向に付勢された構成で、前記胴体部の内部に、その軸心方向に沿って摺動移動自在で、前記ヘッド部又は前記底壁部に対して衝撃力を付与自在なピストンが設けられた貫孔機本体を有して構成され、
コンプレッサにより、前記ピストンを前記胴体部の前端側又は後端側に駆動する加圧気体を前記貫孔機本体に供給して、前記ピストンを前記胴体部の前端側に移動させて前記ヘッド部に衝撃力を付与して、前記ヘッド部を前記胴体部に対して出退移動させる形態で、前記貫孔機本体が地中孔を形成しながら前進移動し、且つ、前記ピストンを前記胴体部の後端側に移動させて前記底壁部に衝撃力を付与して、前記貫孔機本体が穿孔した前記地中孔を後退移動するように構成された自走式貫孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる自走式貫孔機は、例えばガス管等を敷設するために、地面を開削することなく、開始側立坑を起点とし、終端側立坑を終点とする地中孔を穿孔するものである。
自走式貫孔機は、貫孔機本体を有して構成され、コンプレッサから間欠的に、その貫孔機本体に加圧気体を供給することで、地中を前進若しくは後退する。
さらに具体的には、貫孔機本体には、円筒状の胴体部の前端側に尖頭状のヘッド部が設けられ、胴体部の内部に設けられかつその軸心方向に沿って摺動移動自在なピストンが、コンプレッサから供給される加圧気体によってヘッド部に対して衝撃力を付与して、ヘッド部を胴体部に対して出退移動させる状態で、地中孔を形成しながら前進移動する。
また、上記貫孔機本体は、円筒状の胴体部の後端側に底壁部が設けられ、上記ピストンが、コンプレッサから供給される加圧気体によって底壁部に対して衝撃力を付与して、穿孔した前記地中孔を後退移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−136705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、上記のように構成される自走式貫孔機によって穿孔可能な地中孔の径は、貫孔機本体の円筒状の胴体部及びその前端側に備えられる尖頭状のヘッド部の径によって規定されていたため、目的とする地中孔の径に対応する貫孔機本体を複数用意して、選択的に使用する必要があった。このため、異なる複数の径の地中孔を穿孔するためには、目的の地中孔の径に対応する複数の貫孔機本体を用意しておく必要があり、設備コストが高くなっていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる径の地中孔を穿孔する場合においても、その径に対応する複数の貫孔機本体を用意することを不要とし、設備コストの低減を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る自走式貫孔機の第1特徴構成は、円筒状の胴体部の前端側に尖頭状のヘッド部が設けられかつ後端側に底壁部が設けられ、前記ヘッド部が、前記胴体部の軸心方向に出退移動自在に具備されかつ引退方向に付勢された構成で、前記胴体部の内部に、その軸心方向に沿って摺動移動自在で、前記ヘッド部又は前記底壁部に対して衝撃力を付与自在なピストンが設けられた貫孔機本体を有して構成され、
コンプレッサにより、前記ピストンを前記胴体部の前端側又は後端側に駆動する加圧気体を前記貫孔機本体に供給して、前記ピストンを前記胴体部の前端側に移動させて前記ヘッド部に衝撃力を付与して、前記ヘッド部を前記胴体部に対して出退移動させる形態で、前記貫孔機本体が地中孔を形成しながら前進移動し、且つ、前記ピストンを前記胴体部の後端側に移動させて前記底壁部に衝撃力を付与して、前記貫孔機本体が穿孔した前記地中孔を後退移動するように構成されたものであって、
最大径が前記胴体部よりも大径の円筒状に形成され、且つその前端側と後端側とが、端部ほど小径となる錐状に形成されたカバー体が、前記貫孔機本体の前端側に着脱自在に設けられ、
前記カバー体は、前記貫孔機本体の前進移動時に前記ヘッド部と一体的に出退移動するように構成されている点にある。
【0007】
すなわち、円筒状の胴体部の前端側に尖頭状のヘッド部が設けられかつ後端側に底壁部が設けられた貫孔機本体の前端側に、最大径が胴体部よりも大径の円筒状に形成され、かつ、貫孔機本体の前進移動時にヘッド部と一体的に出退移動するカバー体を装着することになる。したがって、貫孔機本体の前進移動時には、最大径が胴体部よりも大径であるカバー体の径の地中孔を穿孔することができるものとなる。
【0008】
そして、一の貫孔機本体に対して、その貫孔機本体の径よりも大径となる一つ又は複数のカバー体を用意しておけば、異なる径の地中孔を穿孔する場合においても、複数の径の貫孔機本体を用意する必要がないものとなる。カバー体は、貫孔機本体よりも単純な構造であり、製造コストが安価であるため、第1特徴構成の如く、貫孔機本体に対してカバー体を装着自在な構成とすることによって、異なる径の複数の貫孔機本体を用意するよりも、設備コストを低減させることができるものとなる。
【0009】
要するに、第1特徴構成によれば、異なる径の地中孔を穿孔する場合においても、その径に対応する複数の貫孔機本体を用意することを不要とし、設備コストの低減が実現できる。
【0010】
本発明に係る自走式貫孔機の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記カバー体の外周部に、前記カバー体の軸心方向への移動に対して周囲の土石との間で抵抗を生じる抵抗部が設けられている点にある。
【0011】
すなわち、カバー体の外周部に設けられた抵抗部とカバー体の周囲の土石との間の抵抗によって、カバー体の軸心方向への移動が抑制されることになる。カバー体は、貫孔機本体のヘッド部と一体的に出退移動することになるが、貫孔機本体の前進移動時においてヘッド部が引退移動する際に、カバー体と周囲の土石との間の抵抗が小さければ、ヘッド部と一体的に出退移動するカバー体が、胴体部に引き寄せられる状態で引退してしまう虞があり、貫孔機本体を前進移動し難いものとなる。これに対して、第2特徴構成によれば、抵抗部によってカバー体と周囲の土石との間で抵抗が生じるため、貫孔機本体の前進移動時においてヘッド部が引退移動する際に、カバー体は周囲の土石との間の間でその軸心方向への移動を抑制され、カバー体は地中孔において位置を固定された状態で、胴体部を前進方向に引き寄せることになる。したがって、カバー体を貫孔機本体のヘッド部と一体的に出退移動させる形態で、効率的に地中孔を穿孔することができるものとなる。
【0012】
本発明に係る自走式貫孔機の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記抵抗部が、前記カバー体の周方向に沿う複数の溝部である点にある。
【0013】
すなわち、抵抗部がカバー体の周方向に沿う複数の溝部によって構成されるから、カバー体の軸心方向への移動に対しては、溝部における、カバー体の径方向に沿う面、或いは、カバー体の外周面に対して傾斜する面が、周囲の土石に対する抵抗を生じさせることになる。しかも、抵抗部は、カバー体に対してその周方向に溝部を形成するという簡易な構成であるため、加工に要するコストを低減することができる。
【0014】
本発明に係る自走式貫孔機の第4特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記カバー体が、その前端側の錐状部分の内周面が前記ヘッド部の外周面に沿う形状に形成され、
前記カバー体の装着状態で、前記貫孔機本体の後退移動時に前記カバー体を前記貫孔機本体に対して軸方向に位置保持する保持手段を備えている点にある。
【0015】
すなわち、カバー体の前端側の錐状部分の内周面が前記ヘッド部の外周面に沿う形状に形成されるから、ヘッド部が胴体部から突出する際には、カバー体前端側の錐状部分の内周面がヘッド部の外周面と当接する状態でカバー体がヘッド部と一体的に胴体部から突出移動することになる。
また、保持手段が、カバー体の装着状態で貫孔機本体の後退移動時にカバー体を貫孔機本体に対して軸方向に位置保持するものであるから、貫孔機本体を後退移動するときにおいては、保持手段によってカバー体が貫孔機本体に対して軸方向に位置保持され、貫孔機本体が後退移動しても、カバー体が貫孔機本体から軸方向で位置が変わることなく、つまり、カバー体を土石中の元の位置に残したままで貫孔機本体のみが後退移動する状態が発生することなく、カバー体と貫孔機本体とを一体的に後退移動させることができる。
【0016】
本発明に係る自走式貫孔機の第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、前記カバー体が、前記貫孔機本体の長手方向において前端側となる前端側部分と後端側となる後端側部分とから構成され、前記前端側部分と前記後端側部分とが装着状態で連結されるように構成され、前記カバー体の前記前端側部分と前記後端側部分とを連結した状態において、前記カバー体の内周面に沿って連続しかつ径方向外方に凹入する溝部が、前記前端側部分と前記後端側部分との境界が軸心方向視における一方の壁面となる構成で、
前記胴体部に前記カバー体を装着する際に、前記保持手段としての環状の係止体を、前記溝部に嵌合する状態で介在させるように構成されている点にある。
【0017】
すなわち、カバー体が、貫孔機本体の長手方向において前端側となる前端側部分と後端側となる後端側部分とから構成されるものであるから、カバー体を貫孔機本体に装着する場合には、カバー体の前端側部分を貫孔機本体の前端側から挿嵌し、後端側部分を貫孔機本体の後端側から挿嵌して前端側部分と後端側部分とを装着状態で連結することになる。このようにカバー体の前端側部分と後端側部分とを連結した状態において、前端側部分と後端側部分との境界が軸心方向視における一方の壁面となる構成で、かつ、カバー体の内周面に沿って連続しかつ径方向外方に凹入する溝部が形成されるから、前端側部分と後端側部分とを連結していない状態では前端側部分と後端側部分との境界面側から後述する環状の係止体を内嵌することが可能となり、前端側部分と後端側部分とを連結した状態では、係止体が溝部に嵌合されて貫孔機本体の軸方向への移動を抑制される状態となる。したがって、胴体部にカバー体を装着する際に、溝部に保持手段としての環状の係止体を容易に嵌合させることが可能となるとともに、胴体部にカバー体を装着した後は、環状の係止体が溝部に嵌合されて、カバー体の貫孔機本体の軸方向への位置保持を適切に行うことが可能となる。
【0018】
本発明に係る自走式貫孔機の第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、前記環状の係止体が、2つの半円部分に分割自在に構成され、且つ、それら2つの半円部分の夫々が、貫孔機本体に磁気吸着可能な磁性体で形成されている点にある。
【0019】
すなわち、2つの半円部分に分割自在に構成された環状の係止体を貫孔機本体に吸着させることで、環状形態を維持させることができるから、貫孔機本体にカバー体を装着するときに、まず係止体を貫孔機本体の外周部に沿う環状形態となる状態で装着し、その後、貫孔機本体との間に係止体を介在させた状態でカバー体を装着することができる。したがって、例えば粘着テープで2つの半円部分を相互に固定して環状形態を維持させる状態としたり、2つの半円部分を留め具等によって相互に固定する等の煩雑な手順が不要となり、貫孔機本体にカバー体を装着する際に、環状の係止体を貫孔機本体とカバー体との間に介在させる作業を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】自走式貫孔機の使用状態を表す図
【図2】貫孔機本体の構成を説明する図
【図3】貫孔機本体とカバー体との関係を説明する図
【図4】係止体の2つの半円部分を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、開始側立坑50から終端側立坑51に向けて、貫孔機本体Jを前進移動させながら地中孔52を穿孔している状態を示している。
図2に示すように、貫孔機本体Jは、円筒状の胴体部10の前端側に尖頭状のヘッド部20を備え、且つ、後端側に底壁部10Tを備えて構成されている。
ヘッド部20は、胴体部10の軸心方向に出退移動自在に具備されかつスプリングSPにより引退方向に付勢される状態で設けられている。
【0022】
胴体部10の内部には、その軸心方向に沿って摺動移動自在で、ヘッド部20又は底壁部10Tに対して衝撃力を付与自在なピストン10Pが設けられている。
貫孔機本体Jの後端側には、ピストン10Pを胴体部10の前端側又は後端側に駆動する加圧気体を供給する加圧気体供給ホース10Hの一端側が接続され、加圧気体供給ホース10Hの他端側には空気を圧縮して加圧気体供給ホース10Hに送出するコンプレッサKが接続されている。
【0023】
ピストン10Pは、加圧気体供給ホース10Hを介して供給されるコンプレッサKからの加圧気体(具体的には、コンプレッサKによって圧縮された圧縮空気)により、貫孔機本体Jの前端側、又は、貫孔機本体Jの後端側に衝撃力を付与すべく摺動移動するように構成されている。
加圧気体の送り込み構造に関しては図示省略するが、前進時にはピストンが底壁部側からヘッド部側に衝撃的に移動するように間欠的に送り込み、後退時にはピストンがヘッド部側から底壁部側に衝撃的に移動するように間欠的に送り込むように構成されている。
詳細には、ピストン10Pは、圧縮空気により貫孔機本体Jの前端側に衝撃力を付与される場合には、胴体部10に対して出退移動自在に備えられるヘッド部20を打撃して、ヘッド部20を胴体部10から突出移動させて、貫孔機本体Jの前端部側に向かう推進力を発生させる。その後、ヘッド部20は、スプリングSPの付勢力により、突出距離分だけ胴体部10に引退移動し、衝撃力を付与される前の状態に復帰する。
また、ピストン10Pは、圧縮空気により貫孔機本体Jの後端側に衝撃力を付与される場合には、胴体部10の底壁部を打撃して、貫孔機本体Jの後端部側に向かう推進力を発生させる。
【0024】
〔カバー体〕
貫孔機本体Jの前端側には、図1〜3に示すカバー体Cが着脱自在に構成されている。
カバー体Cは、図1、2に示すように、貫孔機本体Jの長手方向において前端側となる前端側部分30と後端側となる後端側部分31とから構成され、最大径が胴体部10の径よりも大径の円筒状に形成されている。また、前端側部分30の前端は端部ほど小径となる錐状部30Sとして形成され、後端側部分31の後端は、端部ほど小径となる錐状部31Sとして形成されている。錐状部30Sの内径は、ヘッド部20の外径形状に概略合致されており、先端側程縮径する構造が採用されている。従って、ヘッド部20の前進に伴って一体的に錐状部30S(ひいてはカバー体C)が、前進する。そして、前端側部分30と後端側部分31とは、螺合により連結されるように構成されている。
【0025】
カバー体Cにおける後端側部分31の、錐状部31Sを除く部分の外周部の一部に、その周方向に沿う複数の溝部31Tが設けられている。溝部31Tは、カバー体Cの軸心方向に沿う断面視で矩形状となっており、カバー体Cの径方向に沿う面が、カバー体Cの軸心方向への移動に対して周囲の土石との間で抵抗を生じる抵抗部として作用する。
【0026】
前端側部分30における錐状部30Sの内周面30Nは、ヘッド部20の外周面20Gに沿う形状に形成されている。また、後端側部分31の内周面は、その長手方向の全長に亘って、胴体部10の外周面10Gに沿う形状に形成されている。
また、前端側部分30と後端側部分31とを連結した状態において、カバー体Cの内周面に沿って連続しかつ径方向外方に凹入する溝部30Mが、前端側部分30と後端側部分31との境界面(後端側部分31の端面31M)が軸心方向視における壁面となる形態で構成されている。
これにより、前端側部分30と後端側部分31とを連結していない状態では前端側部分30と後端側部分31との境界面側から後述する環状の係止体32を内嵌することが可能となり、前端側部分30と後端側部分31とを連結した状態では、係止体32が溝部30Mに嵌合された状態となって、係止体32のカバー体C軸心方向への移動が制限されることになる。つまり、環状の係止体32が、カバー体Cの装着状態で、貫孔機本体Jの後退移動時にカバー体Cを貫孔機本体Jに対して軸方向に位置保持する保持手段として機能する。
【0027】
〔係止体〕
係止体32は、図4に示すように、2つの半円部分32α、32βに分割自在に構成された環状の磁性体から構成されている。図4(a)は分割された状態を、図4(b)は一体化された状態を示しており、貫孔機本体Jに吸着させた状態において、2つの半円部分の夫々32α、32βが、図4(b)に示すように環状形態を維持して係止体32を構成するように構成されている。
係止体32は、溝部30Mに嵌合された状態において、カバー体Cの前端部側に位置する前端面32Kが径内方に突出し、ヘッド部20の後端面20Kと接触するように構成されている。これにより、貫孔機本体Jの後退進行時に、所定の軸方向位置で、カバー体Cがヘッド部20を介して実質的に貫孔機本体J(胴体部10及びヘッド部20)から相対離間しない、即ち、係止体32が、カバー体と貫孔機本体とを一体的に後退するように構成されている。
【0028】
〔自走式貫孔機の使用態様〕
次に、本発明に係る自走式貫孔機の使用態様について説明する。
自走式貫孔機を使用する際は、図1に示すように、穿孔すべき地中孔の始端側と終端側に、穿孔すべき地中孔の地表面からの深さよりも深い状態に形成した開始側立坑50と終端側立坑51とを穿孔形成する。このとき、開始側立坑50の地中孔52形成方向の長さが、貫孔機本体Jが、その開始側立坑50内において目的の終端位置を向く初期姿勢をとることができる長さとなるように開始側立坑50を穿孔する。
【0029】
〔貫孔機本体Jのみで穿孔可能な径の穿孔〕
穿孔すべき地中孔52の径が、貫孔機本体Jのみで穿孔可能な径(例えば65mm)である場合、貫孔機本体Jにカバー体Cを装着しない状態で、開始側立坑50の所定の位置に配置する。
その後、コンプレッサKから加圧気体として間欠的に圧縮空気を送ると、ピストン10Pが胴体部10の前端側に移動し、ヘッド部20を打撃する。ヘッド部20は、衝撃力により胴体部10から前方に突出して土石を押しのける。続いて、貫孔機本体Jは、自動的に圧縮空気を排気し、スプリングSPの付勢力によってヘッド部20が元の位置に後退する。この時、ヘッド部20の前方には空間が形成される。そして、再びコンプレッサKから圧縮空気を送ると、ヘッド部20が前方へ突出して土石を押しのけるとともに、その突出動作に引っ張られて胴体部10が前進し、前方の空間をうめる。上記の動作を繰り返すことで、貫孔機本体Jが地中を推進し、地中孔52が形成される。
【0030】
次に、貫孔機本体Jが終端側立坑51に達した場合について説明する。
終端側立坑51の地中孔52方向の長さが貫孔機本体Jの長手方向の長さよりも十分に長い場合には、貫孔機本体Jを地中孔52から引き出し、加圧気体供給ホース10Hを取り外して貫孔機本体Jを回収する。また、地中孔52に残された加圧気体供給ホース10Hは、開始側立坑50側から引き抜くことで回収することができる。
【0031】
終端側立坑51の地中孔52方向の長さが貫孔機本体Jの長手方向の長さよりも短い場合、貫孔機本体Jを地中孔52から引き出すことができないため、穿孔した地中孔52中を後退移動するように貫孔機本体Jを操作することになる。具体的には、図示しない圧縮空気供給方向切換手段を用いて、上記ピストン10Pが貫孔機本体Jの胴体部10における底壁部10Tを打撃する方向に圧縮空気の供給方向を切換える。この切換えは、地上のコンプレッサK近傍において操作可能とされている。
圧縮空気の供給方向を切換えた状態でコンプレッサKから圧縮空気を送ると、ピストン10Pが底壁部10Tを打撃して、その反作用により貫孔機本体Jが開始側立坑50側に後退移動する。
【0032】
〔貫孔機本体Jにカバー体を装着した状態での穿孔〕
穿孔すべき地中孔52の径が、貫孔機本体Jのみで穿孔可能な径よりも大径(例えば75mm)である場合、上述したように、貫孔機本体Jとカバー体Cとの間に係止体32を介在させる状態で貫孔機本体Jにカバー体Cを装着して、開始側立坑50の所定の位置に配置する。
その後、コンプレッサKから間欠的に圧縮空気を送ると、ピストン10Pが胴体部10の前端側に移動し、ヘッド部20を打撃する。ヘッド部20は、衝撃力により胴体部10から前方に突出する。胴体部10から突出したヘッド部20の外周面20Gは、カバー体Cの前端側部分30における錐状部30Sの内周面30Nに当接する状態となるため、カバー体Cは、ヘッド部20と一体的に突出移動する(図3(b))。続いて、貫孔機本体Jは、自動的に圧縮空気を排気し、スプリングSPの付勢力によってヘッド部20が元の位置に後退しようとする。このとき、カバー体Cの後端側部分31にはその周方向に沿う複数の溝部31Tが設けられているため、カバー体Cの軸心方向への移動が抑制されて、胴体部10がカバー体Cに引き寄せられる状態で前進移動することになる。上記の動作を繰り返すことで、カバー体Cが貫孔機本体Jのヘッド部20と一体的に出退移動する状態で地中を推進し、地中孔52が形成される。
【0033】
次に、カバー体Cを装着した貫孔機本体Jが終端側立坑51に達した場合について説明する。
終端側立坑51の地中孔52方向の長さが貫孔機本体Jの長手方向の長さよりも十分に長い場合には、カバー体Cを装着ていない貫孔機本体Jの場合と同様に、貫孔機本体Jを地中孔52から引き出し、加圧気体供給ホース10Hを取り外して貫孔機本体Jを回収する。また、地中孔52に残された加圧気体供給ホース10Hは、開始側立坑50側から引き抜くことで回収することができる。
【0034】
終端側立坑51の地中孔52方向の長さが貫孔機本体Jの長手方向の長さよりも短い場合、貫孔機本体Jを地中孔52から引き出すことができないため、穿孔した地中孔52中を後退移動させるべく、図示しない圧縮空気供給方向切換手段を用いて、上記ピストン10Pが貫孔機本体Jの胴体部10における底壁部10Tを打撃する方向に圧縮空気の供給方向を切換える。
圧縮空気の供給方向を切換えた状態でコンプレッサKから圧縮空気を送ると、ピストン10Pが底壁部10Tを打撃して、その反作用により貫孔機本体Jが開始側立坑50側に後退移動する。このとき、前述のように、係止体32の前端面32Kとヘッド部の後端面20Kとが接触することによって、カバー体Cから貫孔機本体Jが脱落しない状態で、貫孔機本体Jとカバー体Cとを一体的に後退移動させ、開始側立坑50側に戻す状態で貫孔機本体Jとカバー体Cと回収することができる。
【0035】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態においては、加圧気体として圧縮空気を用いて、ピストン10Pによってヘッド部20又は底壁部10Tを打撃する構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、空気以外の気体を加圧して用いたり、水又は油等の流体を用いる構成としてもよい。その他、ヘッド部20又は底壁部10Tに衝撃力を付与できる構成であれば、各種の構成を適用可能である。
【0036】
(2)上記実施形態においては、カバー体Cにおける後端側部分31の、錐状部31Sを除く部分の外周部の一部に、その周方向に沿う複数の溝部31Tを設け、この複数の溝部31Tを抵抗部として作用させる構成を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、カバー体Cにおける前端側部分30の錐状部30S及び後端側部分31の錐状部31Sを除く外周部全体に溝部31Tを設ける構成としてもよい。また、抵抗部として、複数の溝部31Tに代えて、複数の突起部を備える構成としてもよい。あるいは、この種の抵抗部を設けなくてもよい。
【0037】
(3)上記実施形態においては、ヘッド部20の外周面20Gがカバー体Cの前端側部分30における錐状部30Sの内周面30Nに当接する状態となる構成で、カバー体Cがヘッド部20と一体的に突出移動する構成を例示したが、このような構成に代えて、ヘッド部とカバー体Cとを、例えば螺合やボルト留め等によって固定的に接続する構成としてもよい。尚、このように構成する場合には、係止体32は不要となる。
【0038】
(4)上記実施形態においては、係止体32を2つの半円部分32α、32βに分割自在な環状の磁性体から構成し、2つの半円部分32α、32βの夫々を吸着させて環状形態を維持して係止体32を構成するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、2つの半円部分32α、32βを粘着テープで相互に固定して環状形態を維持させたり、2つの半円部分32α、32βの夫々を相互にかすがい状の部材やくさび状の部材にて止め付けて環状形態を維持させる構成としてもよい。
【0039】
(5)上記実施形態においては、ヘッド部20を、スプリングSPによって胴体部10に引退する方向に付勢する構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、たとえば、ゴム等の弾性体や、ヘッド部20を胴体部10から突出移動させるために用いたコンプレッサKからの圧縮気体の一部を用いて付勢する等、各種の付勢方法を適用することができる。
【0040】
(6)上記実施形態においては、カバー体Cの前端側部分30と後端側部分31とを螺合により連結する構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、たとえば、くさび状の連結部材で前端側部分30と後端側部分31とを連結する構成等、各種の連結機構を用いることができる。
【0041】
(7)上記実施形態においては、貫孔機本体Jを65mmの地中孔を穿孔することができる規格のものとし、カバー体Cを、75mm径の地中孔を穿孔可能なものとするように構成したが、このような形態に限定されるものではなく、たとえば、65mmの地中孔を穿孔することができる規格の貫孔機本体Jに、75mm以上の径の地中孔を穿孔可能なカバー体Cを装着可能な構成としてもよく、必要な地中孔の径に対応する複数のカバー体Cを用意しておくように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、異なる径の地中孔を穿孔する場合においても、その径に対応する複数の貫孔機本体を用意することを不要とし、設備コストの低減を実現可能な自走式貫孔機を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10 胴体部
10T 底壁部
20 ヘッド部
10P ピストン
J 貫孔機本体
K コンプレッサ
C カバー体
31T 溝部(抵抗部)
30 前端側部分
31 後端側部分
32 係止体
32α、32β 半円部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴体部の前端側に尖頭状のヘッド部が設けられかつ後端側に底壁部が設けられ、前記ヘッド部が、前記胴体部の軸心方向に出退移動自在に具備されかつ引退方向に付勢された構成で、前記胴体部の内部に、その軸心方向に沿って摺動移動自在で、前記ヘッド部又は前記底壁部に対して衝撃力を付与自在なピストンが設けられた貫孔機本体を有して構成され、
コンプレッサにより、前記ピストンを前記胴体部の前端側又は後端側に駆動する加圧気体を前記貫孔機本体に供給して、前記ピストンを前記胴体部の前端側に移動させて前記ヘッド部に衝撃力を付与して、前記ヘッド部を前記胴体部に対して出退移動させる形態で、前記貫孔機本体が地中孔を形成しながら前進移動し、前記ピストンを前記胴体部の後端側に移動させて前記底壁部に衝撃力を付与して、前記貫孔機本体が穿孔した前記地中孔を後退移動するように構成された自走式貫孔機であって、
最大径が前記胴体部よりも大径の円筒状に形成され、且つその前端側と後端側とが、端部ほど小径となる錐状に形成されたカバー体が、前記貫孔機本体の前端側に着脱自在に設けられ、
前記カバー体は、前記貫孔機本体の前進移動時に前記ヘッド部と一体的に出退移動するように構成されている自走式貫孔機。
【請求項2】
前記カバー体の外周部に、前記カバー体の軸心方向への移動に対して周囲の土石との間で抵抗を生じる抵抗部が設けられている請求項1記載の自走式貫孔機。
【請求項3】
前記抵抗部が、前記カバー体の周方向に沿う複数の溝部である請求項2記載の自走式貫孔機。
【請求項4】
前記カバー体が、その前端側の錐状部分の内周面が前記ヘッド部の外周面に沿う形状に形成され、
前記カバー体の装着状態で、前記貫孔機本体の後退移動時に前記カバー体を前記貫孔機本体に対して軸方向に位置保持する保持手段を備えた請求項1〜3のいずれか1項記載の自走式貫孔機。
【請求項5】
前記カバー体が、前記貫孔機本体の長手方向において前端側となる前端側部分と後端側となる後端側部分とから構成され、
前記前端側部分と前記後端側部分とが装着状態で連結されるように構成され、
前記カバー体の前記前端側部分と前記後端側部分とを連結した状態において、前記カバー体の内周面に沿って連続しかつ径方向外方に凹入する溝部が、前記前端側部分と前記後端側部分との境界が軸心方向視における一方の壁面となる構成で、
前記貫孔機本体に前記カバー体を装着する際に、前記保持手段としての環状の係止体を、前記溝部に嵌合する状態で介在させるように構成されている請求項4に記載の自走式貫孔機。
【請求項6】
前記環状の係止体が、2つの半円部分に分割自在に構成され、且つ、それら2つの半円部分の夫々が、環状形態を維持すべく貫孔機本体に磁気吸着可能な磁性体で形成されている請求項5記載の自走式貫孔機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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