説明

自転車用靴

【課題】自転車用靴において、スパイクを装着しても足底に衝撃が伝わりにくくする。
【解決手段】自転車用靴10は、自転車用靴は、アッパー部と、靴底部14と、スパイク16と、スパイク固定部18と、クリート固定部20と、を備えている。アッパー部は、足の甲を覆う。靴底部14は、弾性体製の下ソール部24と、合成樹脂製の上ソール部26と、合成樹脂製の中間ソール部28と、を有している。下ソール部はアッパー部に固定されている。上ソール部は下ソール部の上方に足底に対向して配置される。中間ソール部は、下ソール部と上ソール部との間に配置され、上ソール部より外形が小さい。スパイクは、下ソール部から突出して配置される。スパイク固定部は、中間ソール部に設けられスパイクを固定可能である。クリート固定部は、中間ソール部に設けられクリート40を固定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特に、自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能な自転車用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用の靴には、自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能なものが従来知られている。クリートは、ペダルに設けられたビンディングに着脱自在に係止可能である。従来の自転車用靴は、足の甲を覆うアッパー部と、アッパー部に固定された靴底部と、を備えている。靴底部には、クリートを固定するためのねじ孔を有するクリート固定部が装着されている。
【0003】
この種の自転車用靴、特にマウンテンバイク用の靴において、歩行時の滑り止めのための金属製のスパイクを装着可能な靴が従来知られている(例えば、特許文献1参照)。スパイクは、靴底のつま先側に装着されたスパイク固定部に固定される。従来の自転車用靴の靴底部は、硬質の上ソール部(補強板)と、合成ゴム製の軟質の下ソール部(靴底)と、を有している。上ソール部に、クリート固定部が装着されクリートが固定される。また、上ソール部のつま先側にスパイク固定部が装着され、スパイクが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−523148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自転車用靴では、上ソール部にスパイクが装着されている。このため、歩行時にスパイクに衝撃が加わると、その衝撃が上ソール部から足底に直接伝わってしまう。このように歩行時に足底に直接衝撃が伝わると、衝撃によりライダーの足が疲れやすくなる。
【0006】
本発明の課題は、自転車用靴において、スパイクを装着しても足底に衝撃が伝わりにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用靴は、自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能な靴である。自転車用靴は、アッパー部と、靴底部と、少なくとも一つのスパイクと、スパイク固定部と、クリート固定部と、を備えている。アッパー部は、足の甲を覆う。靴底部は、弾性体製の下ソール部と、合成樹脂製の上ソール部と、合成樹脂製の中間ソール部と、を有している。下ソール部は、アッパー部に固定されたものである。上ソール部は、下ソール部の上方に足底に対向して配置される。中間ソール部は、下ソール部と上ソール部との間に配置され、上ソール部より外形が小さい。スパイクは、下ソール部から突出して配置される。スパイク固定部は、中間ソール部に設けられスパイクを固定可能である。クリート固定部は、中間ソール部に設けられクリートを固定可能である。
【0008】
この自転車用靴では、靴底部が下ソール部と、上ソール部と、中間ソール部の3つの部材で構成され、中間に配置された中間ソール部にスパイク固定部が設けられている。このため、スパイクに衝撃が作用しても、その衝撃が、中間ソール部から上ソール部を介して足底に伝わる。したがって、衝撃が足底に直接伝達されなくなり、スパイクを装着しても足底に衝撃が伝わりにくくなる。
【0009】
発明2に係る自転車用靴は、発明1に記載の靴において、下ソール部は、クリートが靴底部の底面から突出しないように収納するクリート収納部と、スパイクが通過可能な少なくとも一つのスパイク通過孔と、を有する。この場合には、弾性体製の下ソール部からクリートが突出しないので、接地面にクリートが接触しなくなり、ライダが歩行しやすくなる。
【0010】
発明3に係る自転車靴は、発明1又は2に記載の靴において、中間ソール部は、上ソール部より機械的強度が高い。この場合に、スパイクからの衝撃が作用する中間ソール部の機械的な強度が強いので、スパイクを強固に固定できるとともに、衝撃が上ソール部に伝わりにくくなる。
【0011】
発明4に係る自転車用靴は、発明1から3のいずれかに記載の靴において、下ソール部は、中間ソール部を収納可能な収納凹部を有する。上ソール部は、下面に中間ソール部と密着する密着凸部を有する。アッパー部は、下ソール部と上ソール部との間で下ソール部に接着されて固定される。
【0012】
この場合には、アッパー部に通常使用される合成皮革や通気性を有する素材などとの接着性が良好な弾性体製の下ソール部にアッパー部を接着できる。このため、アッパー部を強固に接着固定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、靴底部が下ソール部と、上ソール部と、中間ソール部の3つの部材で構成され、中間に配置された中間ソール部にスパイク固定部が設けられている。このため、スパイクに衝撃が作用しても、その衝撃が、中間ソール部から上ソール部を介して足底に伝わる。このため、衝撃が直接足底に伝達されなくなり、スパイクを装着しても足底に衝撃が伝わりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による自転車用靴の側面図。
【図2】本発明の一実施形態による自転車用靴の平面図。
【図3】その底面図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】靴底部の分解斜視図。
【図6】下ソール部の平面図。
【図7】上ソール部の平面図。
【図8】中間ソール部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図3において、本発明の一実施形態による自転車用靴10は、ビンディングを有するペダルPDと共に使用するためのクリート40を固定可能な靴である。自転車用靴10は、足の甲を覆うアッパー部12と、アッパー部12に固定された靴底部14とを備えている。また、自転車用靴10は、靴底部14から突出するスパイク16と、靴底部14に設けられスパイク16を固定するスパイク固定部18と、クリート40を固定するためのクリート固定部20と、を備えている。
【0016】
アッパー部12は、通気性を有する布地と合成皮革とを用いて構成されている。アッパー部12には、面ファスナで足の甲を締め付け可能な、複数(例えば3本)の締め付けベルト22a,22b,22cが装着されている。アッパー部12は、図4に示すように、靴底部14の後述する下ソール部24と上ソール部26との隙間に挿入されて下ソール部24及び上ソール部26に接着剤により固定されている。
【0017】
靴底部14は、図4及び図5に示すように、アッパー部12に固定された下ソール部24と、上ソール部26と、中間ソール部28と、敷き皮29と、を有している。
【0018】
下ソール部24は、例えば合成ゴム等の弾性体製の部材である。下ソール部24は、図3から図6に示すように、下面にクリート40を収納可能なクリート収納部24aと、ペダルPDから自転車用靴10が脱落するのを防止する靴脱落防止部24bと、を有している。また、つま先側にスパイク16が貫通するスパイク貫通孔24cが形成されている。下ソール部24は、上面に中間ソール部28を収納可能な収納凹部24dを有している。収納凹部24dは、中間ソール部28の厚みと実質的に同じ長さ凹んで形成されている。これにより、中間ソール部28の上面と下ソール部24の上面とが実質的に面一となる。
【0019】
クリート収納部24aは、クリート固定部20を含むように凹んで形成されている。クリート収納部24aは、クリート固定部20に固定されたクリート40を底面から突出しないように収納可能であり、この実施形態では、下ソール部24の上下面を貫通して形成されている。靴脱落防止部24bは、クリート固定部20の後方に凹んで形成されている。靴脱落防止部24bは、クリート収納部24aと連続して形成されており、後方に行くに従い先細りに形成されている。したがって、この実施形態では、靴脱落防止部24bは下ソール部24を貫通していない。
【0020】
上ソール部26は、図4,図5及び図7に示すように、下ソール部24の上方に、足底に対向して配置される部材である。上ソール部26は、例えばポリアミド樹脂等の比較的硬質な合成樹脂製の部材である。上ソール部26は、下ソール部24より僅かに小さい外形を有している。上ソール部26は、上面にクリート40を固定するためのボルト部材42がねじ込まれる雌ねじを有するナット部材44を配置するための概ね矩形の配置凹部26aを有している。配置凹部26aには、クリート固定部20を構成する2本のスリット20a,20bが前後方向に沿って形成されている。スリット20a,20bには、ナット部材44が装着されている。これにより、クリート40の装着位置を前後方向に調整できる。
【0021】
ナット部材44は、図4に示すように、第1スリット20a,20b及び後述する第2スリット20c,20dに嵌合する2つのナット部44aと、2つのナット部44aが両端に配置されたプレート部44bと、を有している。また、上ソール部26は、下面に中間ソール部28に密着する密着凸部26bを有している。密着凸部26bは、中間ソール部28の外形と実質的に同じ形状に突出して形成されている。このため、上ソール部26と下ソール部24との間には、密着凸部26bの周囲に隙間30(図4)が形成される。この隙間30に前述したようにアッパー部12が挿入されて固定される。
【0022】
中間ソール部28は、図4,図5及び図8に示すように、下ソール部24と上ソール部26との間に配置されている。具体的には、下ソール部24に形成された収納凹部24dに配置されている。中間ソール部28は、例えば、ポリアミド樹脂にガラス繊維を混入させたガラス繊維強化樹脂製であり、上ソール部26より硬質で機械的強度が高くなっている。中間ソール部28の前部(つま先側)には、間隔を隔てて一体形成された2つのスパイク固定部18が形成されている。スパイク固定部18は、筒状であり、その内周面にスパイク固定用の雌ねじ部18aが形成されている。スパイク固定部18は、前下方に向かって斜めに形成されている。中間ソール部28のスリット20a,20bに対向する位置には、クリート固定部20を構成する第2スリット20c,20dが形成されている。第2スリット20c,20dは、第1スリット20a,20bより僅かに幅が狭い。中間ソール部28と上ソール部26とは、両者のいずれか一方から突出して形成された位置決め凸部及びいずれか他方に凹んで形成された位置決め凹部により位置決めされる。
【0023】
敷き皮29は、例えば、上ソール部26の上面に接着されており、足底にあわせて湾曲して形成されている。なお、敷き皮29を上ソール部26に接着しなくても良い。
【0024】
スパイク16は、図5に示すように、先端に金属製の鋲部16aが一体形成された合成樹脂製の部材である。スパイクの基端には、ねじ部16bが形成されており、スパイク固定部18の雌ねじ部18aにねじ込み固定される。
【0025】
スパイク固定部18は、前述したように中間ソール部28の先端に中間ソール部28と一体形成されている。
【0026】
クリート固定部20は、前述したスリット20a,20b及びスリット20c,20dと、ボルト部材42と、ナット部材44と、を有している。クリート40には、一面に長円形凹部40aが形成されており、長円形凹部40aには、長円形凹部40aより小径の長円形孔40bが形成されている。長円形凹部40aには、2つの固定孔46aを有する長円形のワッシャ部材46が装着されている。この固定孔46aを貫通して2本のボルト部材42がナット部材44にねじ込まれてクリート40が自転車用靴10に固定されている。また、このとき、上ソール部26と中間ソール部28とがボルト部材42により締結される。
【0027】
このように構成された自転車用靴10では、靴底部14が、下ソール部24と、上ソール部26と、中間ソール部28の3つの部材で構成され、中間に配置された中間ソール部28にスパイク固定部18が設けられている。このため、スパイク16に衝撃が作用しても、その衝撃が、中間ソール部28から上ソール部26を介して足底に伝わる。このため、衝撃が直接足底に伝達されなくなり、スパイク16を装着しても足底に衝撃が伝わりにくくなる。
【0028】
また、クリート40をペダルPDから外して自転車用靴10を前方にずらし、図3に示すように、靴脱落防止部24bをペダルPDに配置すると、凹んで形成された靴脱落防止部24bの縁部がペダルPDに引っ掛かる。このため、クリート40をペダルPDに係止しなくても、ペダルPDが左右に移動しにくくなり、ペダルPDから自転車用靴10が容易に脱落するのを防止できる。
【0029】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0030】
(a)前記実施形態では、上ソール部26にポリアミド樹脂を用い、中間ソール部28にポリアミド樹脂にガラス繊維を混入させたガラス繊維強化樹脂を用いたが本発明はこれに限定されなない。中間ソール部28は、上ソール部26より機械的強度が高いものが好ましい。たとえば、中間ソール部28に用いるものとしては、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)や炭素繊維強化樹脂(GFRP)等の繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂を用いても良い。また、弾性を有する金属素材を用いても良い。さらに金属素材と合成樹脂素材とをインサート成型等の手法により一体形成したハイブリッド素材を用いても良い。
【0031】
(b)前記実施形態では、スパイク固定部18を中間ソール部28に一体形成したが、スパイク固定部18は、中間ソール部28と別体であっても良い。たとえば、中間ソール部に金属製のナット部材を回り止めして装着しても良い。また、中間ソール部に金属製のナット部材をインサート成型により固定しても良い。
【0032】
(c)前記実施形態では、クリート固定部20を構成するスリット20a,20bを上ソール部26にも形成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上ソール部に貫通する収納凹部を形成し、中間ソール部にだけスリットを形成しても良い。この場合、ねじ部材のナット部は、中間ソール部のスリットに係合する。
【0033】
(d)前記実施形態では、クリート固定部20のナット部材44を中間ソール部28と別体で構成したが、中間ソール部と一体形成しても良い。
【符号の説明】
【0034】
10 自転車用靴
12 アッパー部
14 靴底部
16 スパイク
18 スパイク固定部
20 クリート固定部
24 下ソール部
24a クリート収納部
24b 靴脱落防止部
26 上ソール部
26a 収納凹部
26b 密着凸部
28 中間ソール部
40 クリート
PD ペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のペダルと共に使用するためのクリートを固定可能な自転車用靴であって、
足の甲を覆うアッパー部と、
前記アッパー部に固定された弾性体製の下ソール部、前記下ソール部の上方に、足底に対向して配置される合成樹脂製の上ソール部、及び前記下ソール部と前記上ソール部との間に配置され、前記上ソール部より外形が小さい合成樹脂製の中間ソール部、を有する靴底部と、
前記下ソール部から突出して配置される少なくとも一つのスパイクと、
前記中間ソール部に設けられ前記スパイクを固定可能なスパイク固定部と、
前記中間ソール部に設けられ前記クリートを固定可能なクリート固定部と、
を備えた自転車用靴。
【請求項2】
前記下ソール部は、前記クリートが前記靴底部の底面から突出しないように収納するクリート収納部と、前記スパイクが通過可能な少なくとも一つのスパイク通過孔と、を有する、請求項1に記載の自転車用靴。
【請求項3】
前記中間ソール部は、前記上ソール部より機械的強度が高い、請求項1又は2に記載の自転車用靴。
【請求項4】
前記下ソール部は、前記中間ソール部を収納可能な収納凹部を有し、
前記上ソール部は、下面に前記中間ソール部と密着する密着凸部を有し、
前記アッパー部は、前記下ソール部と前記上ソール部との間で前記下ソール部に接着されて固定される、請求項1から3のいずれか1項に記載の自転車用靴。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−263969(P2010−263969A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116144(P2009−116144)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】