説明

舗装材組成物、舗装材組成物を使用した舗装材、及び舗装材の施工方法

【課題】施工現場で調製する必要がなく、ハンドリング性等に優れた舗装材組成物を使用した舗装材の提供を課題とするものである。
【解決手段】舗装材2aは、細粒状の天然石を含有してなる砂利状骨材4と、及び砂利状骨材4と混合され、ポリビニルアルコール成分6を含有する一液乾燥硬化型の水性エマルジョン7とを具備し、砂利状骨材4及び水性エマルジョン7が予め規定された混合比率で混練され、所望の粘度に調製された混合物として構成され、混合物の状態で各施工現場に供給される舗装材組成物を利用し、そのまま施工対象面12に所定の塗工厚さで塗工し、乾燥及び養生させて形成される。これにより、施工現場での施工作業者の負担を軽減することができ、可使時間の長い舗装材組成物を利用して、広範囲の施工対象面を一度にまとめて施工することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装材組成物、舗装材組成物を使用した舗装材(以下、単に「舗装材」と称す)、及び舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法(以下、単に「施工方法」と称す)に関するものであり、特に、天然石を含む無機系の砂利状骨材を利用した舗装材組成物、舗装材、及び施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の周囲等の路面や地面、或いは室内の床面、及び建築物の壁面の一部に対し、路面保護、防塵対策、環境対策等の観点からアスファルト舗装、セメント舗装、及びコンクリート舗装等の各種舗装材を敷設することが行われている。さらに、近年のガーデニング等のブームによって、建築物の敷地内の庭を居住者の趣向に合わせて設計し、改良することが行われ、係るケースにおいて庭に設けた歩道の部分等を舗装材によって舗装し、美観的な装飾を施すことも行われている。
【0003】
特に、美観や景観の向上を目的として敷設される舗装材は、例えば、数mm〜数十mm程度の天然石等の細粒状の骨材を利用し、無色透明のエポキシ樹脂やウレタン樹脂等の合成樹脂を含むエマルジョン系接着剤(以下、単に「接着剤」と称す)と混合し、これらの混合物を硬化させることにより、硬質素材の舗装材を得ることができる。これにより、十分な強度の舗装材が形成され、かつ骨材として使用する天然石等の骨材の石の種類、採石場所の違い、色、サイズ、及び形等を適宜変更することにより、建築物の居住者の趣向に応じた舗装材を任意に設計することができる。
【0004】
ここで、骨材及び舗装材について、さらに具体的に説明すると、骨材及び接着剤を混合してなる舗装材組成物は、骨材に対し、主剤及び硬化剤の二液によって構成される二液硬化型の接着剤が主に利用されている。ここで、接着剤は、細流状の骨材を互いに凝集して固め、舗装材として一定の形状(例えば、平板状)を維持するために耐衝撃性に優れた接着剤として作用するものであり、さらに、舗装材として所定の厚さを有して施工するために鏝塗り作業等の施工時のハンドリング性が良好な所定の粘度に調製された液状体のものが使用される。例えば、ウレタン樹脂の原料となる主剤の成分(アルコール基を有するポリオール成分)、及び、硬化剤の成分(イソシアネート基を有するジイソシアネート成分)をそれぞれトルエンやキシレン等の有機溶剤に溶解させ、骨材に対し、主剤及び硬化剤をそれぞれ規定量ずつ混合することにより、主剤及び硬化剤の間でウレタン結合が生成し、硬化反応が進行することとなる。このとき、揮発性の有機溶剤であるトルエン等は硬化及び乾燥工程に伴って大気中に蒸散されることとなる。なお、二液硬化型の接着剤は、湿気(水分)によって硬化反応が促進されるものもある。
【0005】
一方、本願出願人は、ポリプロピレン等の有機ポリマーと、ポリビニルアルコールなどの分散剤と、水とを混合することで形成される高分子系の水性エマルジョンを開発している。これにより、有機溶剤を全く使用することなく、製造時、塗装仕上時において、作業者に危険が及ぶことがない。また、係る水性エマルジョンは、基材に対する高い付着力を示し、塗装における下地調製剤としての使用が好適である(特許文献1参照)。さらに、ポリビニルアルコールを使用した場合の耐水性を改良した下地調製材等を開発している(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した舗装材組成物及びこれによって形成される舗装材は、下記に掲げるような問題点を生ずることがあった。すなわち、上述のように、舗装材組成物(主に接着剤)の中にトルエン等の有機溶剤を含有しているため、作業時において、その強い引火性のために舗装材組成物の取扱いに十分留意する必要があった。また、トルエン等は人体及び環境に対して極めて有害な物質であることが知られ、施工作業を行う作業者の安全性を確保するために、施工場所の換気条件に留意する必要があった。そのため、火災発生の危険性が高い場所や、換気対策が十分でない室内等では、上記の舗装材組成物を使用して舗装材を施工することができないことがあった。
【0007】
さらに、二液硬化型の接着剤を使用するため、主剤及び硬化剤をそれぞれ個別に管理し、施工直前にこれらを骨材とともに混合する必要があった。すなわち、主剤及び硬化剤が混合されると、硬化反応は速やかに進行するため、これらを予め混合しておくことはできなかった。そのため、骨材及び接着剤の混合作業は、必然的に施工現場において行う必要があり、作業者が係る作業を行わなければならなかった。さらに、骨材に対する接着剤の配合量、主剤に対する硬化剤の添加量、及び混合時の温度条件等によって、主剤及び硬化剤の硬化反応の速度が大きく変化することが知られ、作業者は決められた条件の下で上記混合作業を行う必要があり、施工現場で正確な計量及び規定された条件の下で混合作業を行うことが困難な場合も多かった。
【0008】
さらに、正確な配合量を計量するための計量器具(秤等)、骨材及び接着剤の混合に使用する混合用容器(所謂「トロ舟」等)、及び混合のためのクワ、撹拌棒、若しくは攪拌機(ミキサー)等の撹拌器具など、種々の設備や器具を施工現場まで作業毎に搬入する必要があり、施工業者にとって負担となることがあった。
【0009】
また、主剤及び硬化剤の混合後は、硬化反応が速やかに進行するため、舗装材組成物を塗工することができる作業時間(可使時間)が一定に制限されることになった。そのため、事前に混合することは当然できず、さらに施工現場で主剤及び硬化剤を混合したとしても、可使時間が経過し、混合した舗装材組成物の全量を使い切ることができないことがあった。すなわち、広範囲の施工対象面に舗装材を施工しようとしても、一度に大量の骨材及び接着剤を混合し、舗装材組成物を調製することができず、施工対象面の面積に応じて骨材及び接着剤の計量及び混合作業を複数回に亘って実施する必要があった。また、計量や混合のために使用した器具や設備等を硬化が完了する前に洗浄する必要があり、洗浄のために有機溶剤を使用する必要があった。ここで、使用した洗浄用の有機溶剤は、施工現場において処理することができず、施工業者が持ち帰り、専用の廃棄処理施設で処分する必要があった。
【0010】
加えて、二液硬化型の接着剤を使用した場合、硬化が完了した舗装材は、硬質の素材となっていた。そのため、許容以上の強い衝撃が加えられると、ほとんど弾性変形することなく、舗装材の一部または全部にヒビ割れが生じたり、或いは舗装材が欠ける等の問題を生じることがあった。すなわち、衝撃に対する耐性がなかった。
【0011】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、施工現場で舗装材組成物を施工作業者が調製することなく、そのまま使用することが可能であり、かつ施工時のハンドリング性能や舗装材の施工後の取扱いのようなプレミックスタイプの舗装材組成物、舗装材、及び施工方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の舗装材組成物は、「砂利状骨材と、前記砂利状骨材と混合される一液乾燥硬化型の水性エマルジョンとを具備し、前記砂利状骨材及び前記水性エマルジョンは、所定の混合比率で予め混練され、粘度を調製した混合物の状態で供給される」ものから主に構成されている。
【0013】
ここで、砂利状骨材とは、例えば、数mm程度から数十mm程度の砂、砂利、岩石等の天然石、砕石、或いはセラミックス粒等の主に無機物からなる無機系の骨材を想定している。なお、無機系の骨材以外に、ゴムチップ等を細片化し、砂利の態様に類似させた骨材を使用することが可能である。さらに、水性エマルジョンとは、従来の二液硬化型の接着剤のように、有機溶剤を使用するものではなく、主剤を分散剤を利用して水中に分散させ、乳化状態としたものであり、例えば、アクリル酸エステル等の周知の素材を利用することが可能である。なお、水性エマルジョンは、大気中に放置することにより、含有する水分が徐々に蒸散し、乾燥することにより粘着性を有することになり、接着機能を奏する性質を有している。そして、最終的に乾燥が完了すると固化(硬化)し、混合された各骨材同士を互いに接着させ、板状等の所望の形状の舗装材に整形することが可能となる。すなわち、従来の二液硬化型の接着剤のように、主剤及び硬化剤を混合し、硬化反応を促進させる作業を行う必要がない。
【0014】
したがって、本発明の舗装材組成物によれば、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンが利用され、さらに予め混練され、粘度の調製された状態の混合物として舗装材組成物が供給される。これにより、所定の混合比率で砂利状骨材及び水性エマルジョンを混練する舗装材組成物の製造工場でプレミックスされ、係る状態で各施工現場まで供給されることになる。その結果、施工現場での骨材及び水性エマルジョンの混合及び調製作業を行う必要がない。なお、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンを使用しているため、乾燥及び硬化反応が急激に進行するものではなく、施工時における十分な可使時間を確保することができる。
【0015】
さらに、本発明の舗装材組成物は、上記構成に加え、「前記砂利状骨材及び前記水性エマルジョンが混練された前記混合物は、大気との接触を遮断した密閉容器に収容されて施工現場まで移送される」ものであっても構わない。
【0016】
したがって、本発明の舗装材組成物によれば、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンが密閉容器内に収容され、大気の接触が遮断された状態となる。ここで、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンは、前述したように、大気と接触すると、含有する水分が蒸発し、硬化反応が進行することにより、接着性を奏する。そのため、密閉容器に収容し、大気との接触を可能な限り避けることにより、保管時及び施工現場までの流通時に、調製された粘度を維持することが可能となる。そのため、施工現場で施工作業を行う場合、密閉容器を開封しただけで、施工作業者は塗工作業を開始することが可能となる。
【0017】
ここで、密閉容器の一例としては、20kg容量の樹脂製のポリペール缶を想定することができる。係る場合、密閉容器に収容された舗装材組成物の上に空気が透過しないポリエチレン製のフィルム状シートを被せ、容器蓋で密閉することにより、大気との接触を確実に遮断する構成を有するものであっても構わない。さらに、密閉容器の内部空間に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを封入し、乾燥及び硬化反応をさらに抑制するものであってもよい。また、舗装材組成物の長期保管を可能とするため、周知の殺菌剤や防腐剤等の添加量を必要に応じて加えるものであっても構わない。
【0018】
さらに、本実施形態の舗装材組成物は、上記構成に加え、「前記水性エマルジョンは、少なくとも一種類の有機ポリマーと、前記有機ポリマーと混合される鹸化度が95%以上のポリビニルアルコール成分と、水とを有する」ものであっても構わない。
【0019】
ここで水性エマルジョンに使用される有機ポリマーとは、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂や、スチレン重合体、塩化ビニル重合体、酢酸ビニル重合体等のポリマー若しくはコポリマー、及びブチラール樹脂等のその他各種の周知の熱可塑性を有する合成樹脂を使用することが可能であり、係る合成樹脂が少なくとも一種類以上選択されて使用される。さらに、水性エマルジョンの改質のためにアクリル酸アルキル・スチレン共重合体等の共重合体成分を必要に応じて加えるものであっても構わない。
【0020】
一方、ポリビニルアルコール成分は、一般に水溶性状を呈するものであり、周知の合成樹脂として知られている。ポリビニルアルコール成分は、有機ポリマーを分散し、乳化状態に維持することにより水性エマルジョンの状態を保つための分散剤として作用している。ここで、上記舗装材組成物による舗装材の施工が行われる場所は、一部を除き、建築物の周囲の屋外の路面等であることが多い。そのため、本発明の舗装材組成物は、施工完了後の舗装材の状態で、雨水等の水分に対して十分な耐水性を有している必要がある。上述したように、ポリビニルアルコール成分は一般に水溶性を呈するため、上記の舗装材組成物にポリビニルアルコール成分を分散剤として使用することは、乾燥硬化後の舗装材の耐水性が低くなる可能性がある。
【0021】
しかしながら、本実施形態の舗装材組成物は、鹸化度が95%以上のポリビニルアルコール成分が採用されている。ここで、鹸化度の値が小さい場合には、上述のように水に対する溶解性が高いことを意味するものであり、一方、95%以上の鹸化度であれば、水に対する不溶性が高いことを意味している。そのため、本実施形態の舗装材組成物の水性エマルジョンは、鹸化度の高いポリビニルアルコール成分を使用することにより、水性エマルジョンとして構成されることができ、かつ乾燥硬化後であっても雨水等により溶解することのない強い耐水性を発揮することが可能となる。その結果、屋外等に対する舗装材の施工が可能となる。
【0022】
したがって、本発明の舗装材組成物によれば、有機ポリマー及び鹸化度の調整されたポリビニルアルコール成分によって耐水性の高い水性エマルジョンを形成することが可能となり、屋外等における使用が制限されることがない。ここで、水性エマルジョンに使用される有機ポリマーは、例えば、平均分子量が3000以上100000以下のものが使用され、ポリビニルアルコール成分は、平均分子量が500以上3000以下のものを使用するものを例示することができる。
【0023】
一方、本発明の舗装材は、「上記舗装材組成物を使用した舗装材であって、砂利状骨材及び前記砂利状骨材と混合される一液乾燥硬化型の水性エマルジョンを所定の混合比率で予め混練し、粘度を調製した混合物の状態で供給される舗装材組成物を所定の厚さに塗工し、乾燥硬化して形成され、応力に対して易変形可能な軟質性状を有する」ものから主に構成されている。
【0024】
ここで、舗装材は、上述の舗装材組成物を使用し、所定の塗工厚さとなるように鏝塗り等によって塗工(塗布)され、係る状態で長時間放置することにより、自然乾燥によって水性エマルジョンを硬化することによって形成されるものである。これにより、建築物の周囲の路面等に対し、美観的な装飾や景観に合致した雰囲気の歩道等を構築することが可能となる。ここで、舗装材は、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンの性状によって、硬化した形状を完全に保持するものではなく、一定以上の応力が加えられた場合には、当該応力に対して変形可能な軟質部材としての性状を有している。具体的に説明すると、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンは、二液硬化型の接着剤のように、主剤及び硬化剤の反応によって当該接着剤中でウレタン結合等の強固な結合が生成されるものではなく、水性エマルジョンに包含する水分が徐々に大気中に蒸散し、乾燥によって所定形状を維持することができる程度の接着力を発揮するものである。そのため、特に美観的な装飾を施すために、曲面や凹凸面を有する施工対象面に対して舗装材組成物を塗工し、舗装材を形成しようとする場合、施工作業時、乾燥途中、及び乾燥完了後のいずれかの段階であっても、施工対象面の形状に合わせた修正及び変形作業を容易に行えることとなる。すなわち、施工後の事後修正が可能となる。これにより、施工の失敗等によりやり直しを行う場合であっても、容易に形を整え、最終形態に整えることが可能となる。
【0025】
さらに、本発明の舗装材は、上記構成に加え、「建築物の路面及び壁面が交叉する立上がりの形状に沿って曲折し、変形した状態で施工される」ものであっても構わない。
【0026】
したがって、本発明の舗装材によれば、上述したように応力に対して易変形する性状を有することにより、建築物の周囲の路面又は床面と、壁面とが交叉した所謂「立上がり」の部分に対し、上記舗装材組成物を塗工し、乾燥硬化させることが可能となる。このとき、路面等及び壁面の角度(一般に、90°)に対し、緩やかな曲線状の面を有するように舗装材組成物を施工し、係る状態を保つように乾燥及び硬化させることができる。その結果、既存の建築物の立上がりでは、表現することのできなかった美観的な装飾に優れた舗装材を形成することが可能となる。なお、立上がりのような急激な角度の変化を伴うものではなく、緩やかな曲線形状で形成された壁面等の施工対象面に沿って舗装材を構築することも容易に行える。
【0027】
一方、本発明の施工方法は、「上記舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法であって、砂利状骨材及び前記砂利状骨材と混合される一液乾燥硬化型の水性エマルジョンを所定の混合比率で予め混練し、粘度を調製した混合物の状態で供給される舗装材組成物を大気と遮断された密閉容器内から施工現場で取り出し、施工対象面に所定の塗工厚さとなるように塗工する塗工工程と、塗工された前記舗装材組成物を乾燥させ、養生することにより舗装材を形成する乾燥養生工程と」を具備して主に構成されている。
【0028】
したがって、本発明の施工方法によれば、施工現場で主剤及び硬化剤を混合する作業が必要なく、プレミックスされた混合物の状態の舗装材組成物を密閉容器から取り出してそのまま使用し、舗装材を形成するための施工作業を行うことが可能となる。これにより、施工作業者の作業負担を大幅に軽減し、施工現場における効率化を図ることが可能となる。加えて、有機溶剤を一切しない構成のため、火気や換気に対する規制がほとんどなく、建築物の室内等における使用が制限されることがない。このため、安全かつ容易に舗装材を施工することができる。
【0029】
さらに、本発明の施工方法は、上記構成に加え、「前記乾燥養生工程の前に実施され、前記施工対象面に塗工された前記舗装材組成物に対し、前記水性エマルジョンを上方から散布する水性エマルジョン散布工程」を具備するものであっても構わない。
【0030】
したがって、本発明の施工方法によれば、舗装材組成物を塗工した後で液状の水性エマルジョンをスプレー等によって散布することが行われる。これにより、乾燥前の舗装材組成物に対しさらに水性エマルジョンの比率を高めることができる。その結果、水性エマルジョンによる砂利状骨材の結合力が強固なものとなる。この場合、製造工場では、砂利状骨材と予め混練される水性エマルジョンの配合比率を低く抑えることもできる。すなわち、プレミックスされ、混合物として調製された舗装材組成物は、水性エマルジョンの配合量が多い程、流通過程における乾燥及び硬化の対策が必要となる。そこで、塗工のために必要な粘度を呈することができる最低限の配合量の水性エマルジョンを使用し、予め混練し、施工現場で散布することにより結合力を高めることができる。この場合、施工現場では混合等が必要ないため、施工作業者の負担はそれほど大きなものとならない。なお、可能であれば、施工対象面に砂利状骨材を直接敷設し、その上から液状の水性エマルジョンを散布しても構わない。これにより、施工作業がより簡易なものとなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の舗装材組成物等の効果によれば、有機溶剤を一切使用することなく、一液乾燥硬化型の水性エマルジョンを使用することにより、プレミックスされた混合物の状態で施工現場まで移送することができ、そのまま施工作業に取りかかることができる。すなわち、施工現場での調製作業等が不要となり、現場での施工作業者の負担及び作業ミスを著しく減らすことができる。また、有機溶剤に対する火気や換気等の対策及び取扱いの制限が緩和され、室内等での施工も可能となる。さらに、鹸化度の高いポリビニルアルコール成分を含む水性エマルジョンを使用することにより、屋外での使用が可能となり、さらに応力に対して変形可能な軟質性素材により、施工後の修正や立上がりに対する舗装材の施工が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態の(a)舗装材の構成、(b)舗装材組成物の密閉容器への収容及び収容された状態を示す説明図である。
【図2】舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【図3】応力によって変形し、湾曲した舗装材の一例を示す説明図である。
【図4】立上がりに施工した舗装材の施工例を示す説明図である。
【図5】舗装材の施工の別例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態である舗装材組成物1、舗装材2a等、及び施工方法3について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の(a)舗装材2aの構成、(b)舗装材組成物1の密閉容器8への収容及び収容された状態を示す説明図であり、図2は舗装材組成物1を使用した舗装材2a等の施工方法3の流れの一例を示すフローチャートであり、図3は応力によって変形し、湾曲した舗装材2bの一例を示す説明図であり、図4は立上がりCに施工した舗装材2cの一例を示す説明図であり、図5は舗装材2dの施工方法の別例を示す説明図である。
【0034】
本実施形態の舗装材組成物1は、数mm程度の細流状の天然石を含む砂利状骨材4と、砂利状骨材4と混合され、ポリプロピレン樹脂からなる有機ポリマー5をポリビニルアルコール成分6を分散剤として使用し、水中に分散させて乳化状態にした水性エマルジョン7とを具備して構成されている。ここで、砂利状骨材4及び水性エマルジョン7は、予め規定の混合比率で混練され、粘度を調製した状態の混合物として樹脂製の密閉容器8の中に収容され、大気との接触を遮断した状態で各施工現場に供給される(図1(b)参照)。さらに詳細に説明すると、舗装材組成物1は、樹脂製の20kg容量のポリペール缶の密閉容器8の内部に粘度の調製された混合物の状態で収容され、上方に開口した容器開口部9に空気を透過しない性質を有するポリエチレン製のシート10を被せ、収容された舗装材組成物1を覆うようにして密着させ、その上から容器蓋11で密閉して形成されている。これにより、製造工場で粘度を調製してプレミックスされた状態の舗装材組成物1は、製造後の保管時及び施工現場までの移送時(流通時)において、大気と接触することがない。すなわち、施工現場で容器蓋11を外し、密閉容器8を開封するまで大気との非接触の状態が保たれる。そのため、保管時及び流通時に密閉容器8内で舗装材組成物1の乾燥及び硬化が進行することがない。
【0035】
さらに、水性エマルジョン7に使用されるポリビニルアルコール成分6は、鹸化度が95%以上のものが使用され、乾燥硬化後の雨水等に対する耐水性を有している。ここで、ポリビニルアルコール成分6の鹸化度は、約98%が理論的な上限値であることが知られ、本実施形態では、95%以上、98%以下の範囲の鹸化度のポリビニルアルコール成分6が使用されている。
【0036】
したがって、プレミックスされた混合物の状態の舗装材組成物1を使用し、施工現場では施工作業者が何ら特別な作業を行う必要がなく、密閉容器8を開封すれば、直ぐに舗装材2を形成するための施工作業を行うことができる。このため、従来の二液硬化型の接着剤を使用するものに比べ、作業の軽減化を図ることができる。さらに、開封後であっても、舗装材組成物1の乾燥及び硬化は、緩やかに進行するため、施工現場における可使時間が長くなる。そのため、施工作業に時間をかけることができる。
【0037】
次に、本実施形態の舗装材組成物1を使用した舗装材2、及びその施工方法3の一例について、主に図2のフローチャートに基づいて説明する。始めに、通常の舗装材における施工と同様に、舗装材2aを敷設する施工対象面となる下地12から、埃等の夾雑物及び油分等を除去する(ステップS1)。係る夾雑物等の存在によって、敷設された舗装材2aと下地12との密着性が低下するのを防ぐためにである。さらに、周知のプライマーを当該下地12に対し、ローラや刷毛塗り等によって塗布する(ステップS2)。ここで、本実施形態の舗装材2a等を敷設する下地12は、特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート、モルタル、ブロック、レンガ、鉄、木、合板、アルミ、及びプラスチック等の種々の素材に対して適用することが可能である。なお、最終的な塗装面の仕上を良くするために、なるべく平滑な面であることが好ましい。そして、製造工場でプレミックスされ、施工現場まで密閉容器8に収容されてきた舗装材組成物1(図1(b)参照)を、密閉容器8の容器蓋11を取外して開封する(ステップS3)。このとき、舗装材組成物1に被せられたシート10も同時に取り除く。
【0038】
舗装材組成物1は、上記の密閉容器8等に収容されていたため、大気と接触することがなく、製造直後の調製された粘度を保持した状態にある。そのため、特に前作業を必要がなく、そのまま密閉容器8から取出し、鏝塗り等によってプライマーの塗布された施工対象面の下地12に所定の塗工厚さとなるように塗工を行う(ステップS4)。なお、舗装材組成物1の塗工量は、例えば、1平方メートル当たり、8〜10kg程度の塗工量のものが想定される。ここで、密閉容器8から取出した後、鏝等で所望の粘度になるように舗装材組成物1を混練しても構わない。
【0039】
これにより、下地12の上に数cm程度の塗工厚さの舗装材組成物1が形成される。係る状態で舗装材組成物1を乾燥させ、養生することにより舗装材2aを形成する(ステップS5)。なお、乾燥及び養生の工程は、おおよそ24時間以上が本実施形態の場合必要となる。すなわち、一液乾燥硬化型の水性エマルジョン7を使用しているため、完全に乾燥及び硬化するまでの時間は、従来の二液硬化型の接着剤に比べ、長く必要となる。このとき、施工対象面が屋外に設けられた場合、外気温が低く、通常よりも乾燥及び硬化に時間がかかることがある。さらに、養生時の降雨、夜露、結露、及び強風等の影響により、敷設される舗装材2a等の仕上りが変化するため、なるべく温度変化や気候変化の小さなタイミングを選んで施工する必要がある。また、降雨や防塵用の対策用シートを養生時に上方から被せ、雨や埃等から保護する対策を行うものであっても構わない。
【0040】
そして、所定の養生時間(24時間以上)が経過すると、舗装材組成物1は、乾燥及び硬化が完了し、下地12の上に舗装材2aが形成される(ステップS6:図1(a)参照)。このとき、水性エマルジョン7と混練する砂利状骨材4の色、種類、サイズ等を適宜変化させることによって、周囲の景観に合致する雰囲気を呈する舗装材2aを構築することができる。ここで、水性エマルジョン7は、無色透明のもの、或いは使用時には白色等を呈する場合であっても乾燥後には無色透明に変化するものがほとんどであり、乾燥及び硬化が完了すると内部に包含された砂利状骨材4の色や形状を視認することができる。すなわち、水性エマルジョン7によって舗装材2a等の美観性が損なわれることはない。
【0041】
ここで、本実施形態の舗装材2b等は、一液乾燥硬化型の水性エマルジョン7を使用するため、乾燥硬化時及び乾燥硬化後であっても、応力に対して易変形可能な軟質性状を呈している。そのため、舗装材2b等を敷設する施工時及び乾燥後に、所定の応力を加えることにより、舗装材2b等に撓みを持たせることができる(図3参照)。係る性質を利用することにより、例えば、図4に示すように、建築物の壁面W及び路面Rの交叉する所謂「立上がりC」等の箇所に対し、適宜変形を施した状態で舗装材2cを施工することができる。すなわち、従来の二液硬化型の接着剤は、乾燥硬化後は硬質の素材として形成され、かつ施工作業が可能な可使時間が短いため、上記のような施工対象面の形状に沿って変形させた舗装材を形成することが不可能であった。そのため、従来の舗装材では対応することのできない新しい場所に対して舗装材2c等を敷設することができる。
【0042】
さらに、前述したように、従来の舗装材は、二液硬化型の接着剤を使用するため、硬質の性状を呈するため、強い衝撃が加えられた場合、ほとんど変形することなく、割れや欠けなどが発生することがあった。そのため、歩道部分等に適用した場合、舗装材に加えられた衝撃によって容易に破損することがあり、係る場合の修復が十分にできない場合があった。これに対し、本実施形態の舗装材2b,2cは、応力に対し易変形可能な性状を呈するため、衝撃が加えられた場合であっても、ある程度の衝撃力を変形によって吸収することができる。これによって、割れ等の不具合を生ずることがない。なお、易変形可能な性状であっても、舗装材2b等の形状を維持するための力学的な強度は有している。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態の舗装材組成物1によれば、95%以上の鹸化度を有するポリビニルアルコール成分6を含む水性エマルジョン7を使用することにより、有機溶剤を使用することなく、かつ耐水性に優れた舗装材2a等を形成することができる。これにより、施工業者の人体及び環境に対する影響がすくなく、施工現場の安全性を確保した状態で、施工作業を進めることができる。さらに、舗装材組成物1がプレミックスされた状態で施工現場まで移送されるため、当該現場における作業が簡略化され、施工業者の作業負担を軽減することができる。また、乾燥硬化後等の舗装材2b等は、容易に変形可能な性状を呈し、施工後の整形及び修復作業が容易となり、かつ耐衝撃性に優れる素材として幅広い範囲で使用することができる。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
すなわち、本実施形態の舗装材2a等の施工において、プレミックスされた舗装材組成物1を、密閉容器8から取出し、そのままの状態で下地12に塗工するものを示したが、これに限定されるものではない。つまり、密閉容器8から取出し後、鏝等によって所望の粘度に調整した上で塗工を開始するものであっても構わない。一方、舗装材組成物1に液状の水性エマルジョン7をさらに付与し、粘度を調整するものであっても構わない。さらに、下地12に所定の塗工厚さで塗工された舗装材組成物1に対し、上方から液状の水性エマルジョン7をさらに散布するものであっても構わない(水性エマルジョン散布工程S7:図2及び図5参照)。
【0046】
これについて具体的に説明すると、所定の粘度に調整され、ハンドリング性に優れた混合物として供給された舗装材組成物1から舗装材2a等を形成する場合、下地12に所定の塗工厚さに舗装材組成物1を塗工した後、水性エマルジョン7を空気圧によって霧状にして噴霧する噴霧スプレー13を利用し、舗装材組成物1の表面上に噴霧するものであっても構わない。
【0047】
これにより、散布された水性エマルジョン7が舗装材組成物1の表面から内部に浸透し、舗装材組成物1に対する水性エマルジョン7の比率が高められる。すなわち、砂利状骨材4及び舗装材2dの下地12に対する接着力が強固なものとなる。これにより、衝撃等が加えられても下地12から剥離したり、舗装材2d自体が破壊されるおそれが小さくなる。この場合、予め粘度調整される混合物としての舗装材組成物1の水性エマルジョン7の混合比率をハンドリング性を損なわない程度に低く抑えることができる。これにより、保管時や移送時における乾燥及び硬化による不良発生を抑えることができる。なお、施工現場で、下地12に対して砂利状骨材4のみを所定の塗工厚さになるように敷設し、その上から液状の水性エマルジョン7を散布するものであっても構わない。これにより、予め混練する作業を省略することができる。すなわち、製造工場及び施工現場のいずれにおいても、砂利状骨材4及び水性エマルジョン7を混練する作業が不要となり、舗装材組成物1の製造が簡略化される。
【符号の説明】
【0048】
1 舗装材組成物
2a,2b,2c,2d 舗装材(舗装材組成物を使用した舗装材)
3 施工方法(舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法)
4 砂利状骨材
5 有機ポリマー
6 ポリビニルアルコール成分
7 水性エマルジョン
8 密閉容器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特公昭53−002652号公報
【特許文献2】特願2007−329054

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂利状骨材と、
前記砂利状骨材と混合される一液乾燥硬化型の水性エマルジョンと
を具備し、
前記砂利状骨材及び前記水性エマルジョンは、所定の混合比率で予め混練され、粘度を調製した混合物の状態で供給されることを特徴とする舗装材組成物。
【請求項2】
前記砂利状骨材及び前記水性エマルジョンが混練された前記混合物は、
大気との接触を遮断した密閉容器に収容されて施工現場まで移送されることを特徴とする請求項1に記載の舗装材組成物。
【請求項3】
前記水性エマルジョンは、
少なくとも一種類の有機ポリマーと、
前記有機ポリマーと混合される鹸化度が95%以上のポリビニルアルコール成分と、
水と
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の舗装材組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の舗装材組成物を使用した舗装材であって、
砂利状骨材及び前記砂利状骨材と混合される一液乾燥硬化型の水性エマルジョンを所定の混合比率で予め混練し、粘度を調製した混合物の状態で供給される舗装材組成物を所定の厚さに塗工し、乾燥硬化して形成され、応力に対して易変形可能な軟質性状を有することを特徴とする舗装材。
【請求項5】
建築物の路面及び壁面が交叉する立上がりの形状に沿って曲折し、変形した状態で施工されることを特徴とする請求項4に記載の舗装材。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法であって、
砂利状骨材及び前記砂利状骨材と混合される一液乾燥硬化型の水性エマルジョンを所定の混合比率で予め混練し、粘度を調製した混合物の状態で供給される舗装材組成物を大気と遮断された密閉容器内から施工現場で取り出し、施工対象面に所定の塗工厚さとなるように塗工する塗工工程と、
塗工された前記舗装材組成物を乾燥させ、養生することにより舗装材を形成する乾燥養生工程と
を具備することを特徴とする舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法。
【請求項7】
前記乾燥養生工程の前に実施され、前記施工対象面に塗工された前記舗装材組成物に対し、前記水性エマルジョンを上方から散布する水性エマルジョン散布工程をさらに具備することを特徴とする請求項6に記載の舗装材組成物を使用した舗装材の施工方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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