説明

航空機の散布支援装置及び散布支援方法

【課題】航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、その散布を効率的に行うことができるように、パイロットを支援する装置及び方法を提供する。
【解決手段】散布支援装置(消火支援装置)2は、少なくとも、航空機の機体速度、機体高度、及び風速の各情報が入力される入力部21、入力部に入力された各情報に基づいて、散布物を航空機から投下したときの、地表の到達位置と、地表における散布物の密度分布とに関する演算を行う演算部22、及び、演算部によって演算された到達位置及び密度分布に係る支援情報を表示部(HMD)3に表示させる表示制御部23、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、その散布物の投下を行うパイロットに対し支援情報を提供することにより、散布物の散布を効率的に行うための航空機の散布支援装置及び散布支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、山林火災等の広範な火災や、地上からの放水が困難な火災に対して、水等の消火剤を空中から投下する消防ヘリコプターが記載されている。この消防ヘリコプターには、機体速度及び機体高度の情報に基づいて、投下した消火剤の到達位置を演算し、その到達位置を、カメラにより撮像した画像に重ね合わせて表示することで、消化剤が命中し易いように、消火剤の投下を支援する装置が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−324499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載された技術は、消火剤の到達位置を、消火剤が自由落下するとの仮定の下で演算している。
【0005】
これに対し、地表の火災地点に、例えば航空機に搭載したタンク内の水や消火剤等の液体又は泡体等(以下、これらを総称して、散布物と呼ぶ)を散布して消火を行うときには、こうした散布物は、落下している最中に分裂して小さな液滴となりつつ拡散するため、地表においては、所定範囲に広がって散布されることになる。
【0006】
ここで、本願発明者らが検討したところ、例えば、散布物を投下する高度が高ければ高いほど、散布される範囲(つまり、散布面積)が広くなる一方で、地表での散布物の密度(つまり、単位長さ当たりの散布物の量)が低下してしまうことが判った。一方で、火災を有効に消火する上では、所定以上の散布物の密度が必要になる(例えば水の場合は、1.6リットル/平方m以上が必要とされている)ことから、散布物を投下する高度が高すぎると、火災を有効に消火する上で不利になる。
【0007】
また、散布物を投下する高度が低いと散布物の密度は高まり、火災の消火には有利になるものの、散布面積は小さくなるため、消火できる範囲は狭くなってしまう。このことは、火災を消火するために、散布物の投下を何度も繰り返さなければならないことを意味し、特に広範な火災に対しては、消火活動の効率が低下する。また、投下高度を下げることは、航空機の安全性を確保する点でも不利になる上に、投下高度が低すぎると、水等の散布物は塊状で地表に到達してしまい、地表での安全性に影響を与えてしまうという問題もある。
【0008】
従って、航空機から地表の火災地点に散布物を散布する際には、火災を消火する上で有効な散布物の密度以上となる範囲(以下、これを有効散布密度範囲という)が最大となる投下高度が存在し、その投下高度に従って消火活動を行うことが最も効率的かつ、安全である。特許文献1に記載された技術のように、消火剤の自由落下という仮定の下で、その到達位置だけを演算しても、投下高度を考慮しなければ消火作業を効果的に行うことは到底できない。
【0009】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、その散布を効率的かつ安全に行うことができるように、パイロットを支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示する技術は、航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、当該散布物の投下を行うパイロットに対し支援情報を提供することによって、その散布を効率的に行うための散布支援装置に係る。
【0011】
この散布支援装置は、少なくとも、前記航空機の機体速度、機体高度、及び風速の各情報が入力される入力部、前記入力部に入力された各情報に基づいて、前記散布物を前記航空機から投下したときの、地表の到達位置と、地表における前記散布物の密度分布とに関する演算を行う演算部、及び、前記演算部によって演算された前記到達位置及び前記密度分布に係る前記支援情報を表示部に表示させる表示制御部、を備えている。
【0012】
ここで、「航空機」は、飛行機やヘリコプター等、大気中を飛行する機械であれば、その種類は問わない。また、ここでいう「散布物」は、液体、泡体及び粉体等の、航空機から投下したときに、落下している最中に分解しかつ拡散することによって、地表に到達したときに、所定の範囲に亘って、所定の密度分布が生じる物体である。つまり、散布物は、それを投下する高度に応じて、投下高度が高いほど、散布される範囲が広くなる一方で、散布密度は低下し、投下高度が低いほど、散布される範囲が狭くなる一方で、散布密度は高まる特性を有する。散布物は、この散布支援装置が火災の消火に利用されるときには、例えば水や消火剤に相当する。
【0013】
また、「散布を効率的に行う」とは、所望の散布密度となる範囲が最大になるように、散布物の投下を行うことであり、例えば火災の消火においては、火災を有効に消火することができる散布密度の範囲が最大となるように、放水を行うことである。
【0014】
前記の構成によると、散布支援装置の入力部には、航空機の機体速度、機体高度、及び風速の各情報が少なくとも入力される。ここで風速は、機体の進行方向に相当する機軸成分と、機体の進行方向に直交する方向に相当する横風成分とを含むようにすればよい。これらの情報は、散布物を航空機から投下したときに、その散布物の地表の到達位置と、地表における散布物の密度分布とに関連する投下条件に相当する。
【0015】
演算部は、入力された各情報から、前述したように、散布物の地表の到達位置と、地表における散布物の密度分布とに関する演算を行う。これは、言い換えると、散布物を投下したときに、どこに、どれだけの量の散布物が散布されるか、ということを把握する。
【0016】
そうして、表示制御部は、演算された到達位置及び密度分布に係る支援情報を表示部に表示させる。
【0017】
このように、表示部に表示される支援情報には、散布物の到達位置だけでなく、散布物の投下高度に関連する散布物の密度分布に係る情報も含まれるため、パイロットは、表示部に表示されたこの支援情報に従って散布物の投下を行うことにより、散布物を効率的に散布することを実現できる。また、散布物の密度分布に係る情報に基づき、投下高度を必要以上に低くすることが回避されるため、安全性が確保される。
【0018】
前記散布物は、火災地点に散布される水又は消火剤であり、前記入力部には、前記目標地点である前記火災地点の位置情報がさらに入力され、前記演算部は、入力された各情報に基づいて、前記火災地点に対して、火災の消火に有効な密度以上の散布物を散布可能となる、前記散布物の投下位置及び投下高度を演算し、前記表示制御部は、前記支援情報として前記散布物の投下位置及び投下高度に係る情報を前記表示部に表示させる、としてもよい。
【0019】
つまり、入力部に入力される機体高度等の情報から、散布物を投下したと仮定したときの、火災の消火に有効な密度以上となる散布物の散布範囲(つまり、有効散布密度範囲)と、その有効散布密度範囲の位置とを演算可能であるから、これとは逆に、火災地点の位置情報を特定することによって、当該火災地点に対し、火災の消火に有効な密度以上の散布物を散布可能となる、散布物の投下位置及び投下高度を演算することが可能である。
【0020】
そこで、演算部が散布物の投下位置及び投下高度を演算し、表示制御部は、支援情報として、投下位置及び投下高度に係る情報を表示部に表示させる。こうすることでパイロットは、投下位置及び投下高度に到達するように、航空機を操縦し、航空機が投下位置及び投下高度に到達したタイミングで、散布物を投下すればよい。このことにより、消火に有効な量以上の散布物を、火災地点の、できるだけ広い範囲に散布することができ、火災の消火を効率的に行うことができる。
【0021】
前記入力部には、前記航空機の位置情報がさらに入力され、前記表示制御部は、前記支援情報として、前記航空機の機体位置及び機体高度と、演算した前記投下位置及び前記投下高度とのずれに係る情報を前記表示部にリアルタイムで表示させる、としてもよい。
【0022】
こうすることで、パイロットは、航空機の機体位置及び機体高度と、演算した投下位置及び投下高度とのずれが無くなるように航空機を操縦すれば、航空機は投下位置及び投下高度に到達することになる。そうして、航空機が投下位置及び投下高度に到達したタイミングで、散布物を投下することによって、消火に有効な量以上の散布物を、火災地点の、できるだけ広い範囲に散布することができ、パイロットの負担を軽減しつつ、火災の消火を効率的に行うことができる。
【0023】
前記演算部は、前記航空機が前記投下位置及び投下高度に至るまでの経路をさらに演算し、前記表示制御部は、前記支援情報として、前記演算された経路の情報と、前記散布物を投下するタイミングに係る情報とを前記表示部にリアルタイムで表示させる、としてもよい。
【0024】
つまり、演算された散布物の投下位置及び投下高度までの経路に従って、表示制御部は、支援情報として、その経路情報を表示部にリアルタイムで表示させる。パイロットは、経路に沿って移動するように航空機を操縦することで、航空機は投下位置及び投下高度に到達することになる。表示部にはまた、支援情報として散布物を投下するタイミングに係る情報が表示されるため、パイロットは、その情報に従って散布物を投下する。このことにより、投下位置及び投下高度で散布物が投下されるから、消火に有効な量以上の散布物を、火災地点の、できるだけ広い範囲に散布することができ、パイロットの負担を軽減しつつ、火災の消火を効率的に行うことができる。
【0025】
ここで、航空機の散布支援装置は、前記航空機が前記投下位置及び投下高度に到達したときに、前記散布物を投下する投下手段をさらに備えている、としてもよい。
【0026】
こうすることで、パイロットは、設定された投下位置及び投下高度に到達するように航空機を操縦すれば、投下手段によって散布物が自動的に投下されるようになる。このことによって、パイロットの負担を大幅に軽減しつつ、火災地点に、正確に散布物を散布することが可能になる。尚、投下手段は、航空機が前記投下位置及び投下高度に到達したという条件だけでなく、パイロットが投下を許可しているという条件、例えば投下スイッチをオン操作しているという条件とが共に成立したときに、散布物を投下するようにしてもよい。つまり、投下スイッチをオン操作している状態で、航空機が投下位置及び投下高度に到達したときに、投下手段が散布物を投下するようにしてもよい。
【0027】
前記演算部は、火災の消火に有効な散布物の密度以上となる範囲である有効散布密度範囲とその位置とを演算し、前記表示制御部は、前記支援情報として、現時点で前記散布物を投下したときの前記有効散布密度範囲とその位置とを前記表示部にリアルタイムで表示させる、としてもよい。
【0028】
こうすることで、表示部には、現時点で散布物を投下したときの有効散布密度範囲とその位置とが、航空機の移動に伴い変化しながらリアルタイムで表示されるため、パイロットは、これらの情報に基づいて散布物の投下を行うことができる。
【0029】
例えば、表示部として、HMD(Helmet Mounted Display、又は、Head Mounted Display)やHUD(Head-Up Display)を利用したときには、有効散布密度範囲を示す境界線を、航空機の窓外の景色と重なるように、表示すればよい。パイロットは、目視している火災地点と、表示されている有効散布密度範囲とが重なるように航空機を操縦し、それらが互いに重なったタイミングで散布物を投下すればよい。こうすることで、消火に有効な量以上の散布物を、火災地点の、できるだけ広い範囲に散布することができ、火災の消火を効率的に行うことができる。尚、表示部はHMDやHUDでなくてもよく、例えば火災地点を示す地図上に、有効散布密度範囲を重ねて表示してもよい。
【0030】
前記演算部は、前記入力された各情報と、予め設定されたテーブルデータとに基づいて、前記散布物の前記到達位置及び前記密度分布に関する演算を行う、としてもよい。
【0031】
つまり、散布物を投下したときの挙動を、例えばCFD解析等を利用して予め解析しておき、その解析データに基づく散布物の到達位置及び密度分布の情報を、散布物の投下条件と共に、テーブルデータとして設定しておく。このことにより、演算部は、入力された各情報から、テーブルデータを参照することにより、散布物の到達位置及び密度分布を演算することが可能になる。また、火災地点の情報が入力されたときには、テーブルデータを参照することにより、散布物の投下位置及び投下高度を演算することが可能になる。
【0032】
尚、テーブルデータを設定する代わりに、散布物の投下時の挙動をモデル化したモデル式を設定しておき、演算部は、入力された各情報とモデル式とから、散布物の到達位置及び密度分布を演算したり、散布物の投下位置及び投下高度を演算したりしてもよい。
【0033】
ここに開示する別の技術は、航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、当該散布物の投下を行うパイロットに対し支援情報を提供することによって、その散布を効率的に行うための散布支援方法である。
【0034】
この散布支援方法は、少なくとも、前記航空機の機体速度、機体高度、及び風速の各情報を入力し、前記入力した各情報に基づいて、前記散布物を前記航空機から投下したときの、地表の到達位置と、地表における前記散布物の密度分布とに関する演算を行い、そして、前記演算した前記到達位置及び前記密度分布に係る前記支援情報を表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、前記の航空機の散布支援装置及び散布支援方法は、散布物の地表の到達位置と、地表における散布物の密度分布とに関する演算を行うと共に、到達位置及び密度分布に係る支援情報を表示部に表示させることで、パイロットは、表示部に表示されたこの支援情報に従って散布物の投下を行うことが可能になり、散布物を効率的に散布することが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】消防飛行艇の概略構成を示す斜視図である。
【図2】消防飛行艇に搭載されているタンクの断面図である。
【図3】消火支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】放水範囲表示方式において、HMDに表示される画面の一例を示す図である。
【図5】放水範囲表示方式の概念図である。
【図6】放水位置表示方式において、HMDに表示される画面の一例を示す図である。
【図7】放水位置表示方式の概念図である。
【図8】軌道表示方式において、HMDに表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、航空機の散布支援装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。図1は、散布支援装置としての消火支援装置が適用される消防飛行艇1を示している。この消防飛行艇1は、例えば山林火災やコンビナート火災といった広い範囲での消火を空中から行ったり、住宅地等においてピンポイントの放水を空中から行ったりする場合に利用される。消防飛行艇1は、その詳細構成の図示は省略するが、陸上及び水上のそれぞれにおいて離着陸が可能な飛行機であり、空中からの放水を可能にするために、消防飛行艇1は、機体の中央下部に水を貯留するタンク11を有している。このタンク11は、例えば湖や海等において、水上を滑走することにより、タンク11内に水を取り入れることが可能に構成されている。尚、タンク11の水に、泡剤(消火剤)を混ぜることも可能である。
【0038】
ここでタンク11は、図1に示すように、機体の前後方向に並んだ前タンク111と後タンク112との2つのタンクによって構成されていると共に、各タンク111、112はそれぞれ、図2に示すように、その内部が4室に区画されている。各タンク111、112における各室の下部には、開閉可能な扉113が個別に設けられている。図例では、一部の扉113は閉じた状態で、一部の扉113は開けた状態で示している。この扉113を個別に開けることによって、計8室の各室に貯留されている水や消火剤等の液体又は泡体が、消防飛行艇1から投下されることになる。各扉113は、図2においては概念的に示すが、扉113を開閉するためのアクチュエータ12を備えており、消防飛行艇1の操縦席に設けられた放水スイッチ13をパイロットが操作することによって各アクチュエータ12が作動をして、扉113が開閉する。つまり、この消防飛行艇1では、パイロットが、放水タイミングを含む放水の実行を決定することになる。尚、詳細は後述するが、放水を、機体側が自動的に行う自動放水、又は、パイロットが放水スイッチ13を操作していることを条件に、機体側が自動的に放水を行う半自動放水を採用してもよい。
【0039】
タンク11に設けられた扉113は、一つずつ開けることの他に、複数の扉113を一度に開けることも可能に構成されており、開ける扉113の数によって、放水量を変更することが可能である。複数の扉113を一度に開けることは、火災地点を集中的に消火するような、初期消火に有効である。また、複数の扉113を一つずつ連続的に開けることも可能であり、この場合は、消防飛行艇1の飛行に伴い線状に放水を行うことが可能である。これは、防火帯の形成に有効である。尚、以下の説明は主に、初期消火を前提としている。
【0040】
パイロットは、放水に際し消防飛行艇1からの放水量を設定する。この設定は、例えば放水量を直接指定するようにしてもよいし、開ける扉113の数を指定することにより、放水量を設定してもよい。
【0041】
タンク11の容量は、例えば15t程度の比較的大容量に設定されており、これによって、放水量を比較的多くすることが可能である。一度に放水する量を多くすることは、高い高度から投下しても水の広がりが抑制される結果、詳しくは後述するが、消火に有効な有効散布密度を確保することを可能にする。つまり、この消防飛行艇1は、放水高度を比較的高く設定することが可能であり、このことは、消火活動の安全性を高める上で有利である。
【0042】
一方で、放水高度が高くなればなるほど、地表の火災地点に正確に放水することが難しくなる。そこで、この消防飛行艇1には、火災地点に正確かつ、適切に放水を行って、消火活動の効率化を図るべく、消火支援装置2が搭載されている。この消火支援装置2は、パイロットに対して放水に関する支援情報を提供するよう構成されている。
【0043】
図3は、消火支援装置2の構成を示す機能ブロック図である。消火支援装置2は、消防飛行艇1の機体システムから提供される各種情報が入力される入力部21と、入力された情報に基づいて、支援情報に関するデータの演算を行う演算部22と、演算結果に基づき、パイロットが装着するHMD(つまり、表示部)3に、支援情報を表示させる表示制御部23との機能ブロックを含む。この消火支援装置2は、図3に示す各機能ブロックを実現するためのソフトウエアを読み込んだコンピュータによって構成される。
【0044】
入力部21に入力される情報は、消防飛行艇1の機体速度、機体高度、風速(機体に対する向かい方向の風速及びそれに直交する方向の風速)、及び、パイロットによって設定された放水量の情報である。機体速度、機体高度及び放水量の各情報は機体諸元であり、風速(及び風向)の情報は大気条件であり、これら機体諸元及び大気条件は放水条件に係る。この放水条件は、後述するように有効散布密度範囲やその位置に関連する。入力部21には、各情報が随時入力される。
【0045】
演算部22は、入力された情報に基づいて、有効散布密度範囲と、その位置とを演算する。ここで、有効散布密度範囲とは、消防飛行艇1から投下した水が地表に到達したときの密度が、所定量以上となる地表での範囲を意味する。つまり、水等の液体は落下している最中に分裂して小さな水滴となりつつ拡散することで、地表においては所定の範囲に広がって散布されることになる。例えば投下する機体高度が高いほど、水が広がる範囲は広くなる一方で、散布密度は小さくなり、投下する機体高度が低いほど、水が広がる範囲は狭くなる一方で、散布密度は高くなる。一方で、火災を有効に消火するためには、水では1.6リットル/平方m以上、消火剤では0.8リットル/平方m以上、の散布密度が必要であり、この散布密度を、消火における有効散布密度といい、有効散布密度が確保される地表の範囲が有効散布密度範囲である(図5も参照)。本願発明者らが風洞における放水実験やCFD解析を行うことにより放水した水の挙動を検証したところ、有効散布密度範囲の大きさは、水を投下する機体高度に応じて変化し、有効散布密度範囲が最大となる機体高度が存在していることが判った。また、有効散布密度範囲は、放水点を挟んだ左右それぞれにおいて、機体の進行方向に延びる長楕円によって近似することが可能であることも判った。
【0046】
そこで、そうしたCFD解析や風洞実験から得られた結果に基づいて、各種の放水条件と有効散布密度範囲を示す楕円の大きさや位置との関係をテーブルデータ24として作成しておき、消火支援装置2は、そのテーブルデータ24を、HDDやフラッシュメモリ等の記憶手段に予め記憶して有している。尚、CFD解析は、特定のCFD解析に限定されるものではなく、適宜のCFD解析を任意に採用することが可能である。
【0047】
また、水を投下する場合と、消火剤を投下する場合とでは有効散布密度範囲が異なることから、水を投下する場合のテーブルデータと、消火剤を投下する場合のテーブルデータとをそれぞれ有していてもよい。また、複数種のテーブルデータを有する代わりに、ベースとなるテーブルデータ(例えば水を投下する場合のテーブルデータ)に係数を付与することによって、消火剤を投下する場合の有効散布密度範囲を演算してもよい。
【0048】
演算部22は、入力部21に入力された機体速度、機体高度、風向及び放水量の、放水条件に基づいて、テーブルデータ24を参照することにより、有効散布密度範囲(つまり、長楕円の形状及び大きさ)と、その地表の位置とを演算する。ここで、図3に示すように、入力部21に、散布物が水であるか消火剤であるかを特定する放水種別情報が入力されるときには、水を投下する場合は前述の通り、水投下用のテーブルデータを参照して有効散布密度範囲とその位置とを演算し、消火剤を投下する場合は、消火剤投下用のテーブルデータを参照して有効散布密度範囲とその位置とを演算してもよい。
【0049】
入力部21に入力される放水条件は、随時変化することから、演算部22は、入力部21に入力される放水条件に応じて演算を行い、有効散布密度範囲とその位置と随時更新する。
【0050】
尚、この例では、消火支援装置2は、テーブルデータ24を有しているが、テーブルデータの代わりに、投下した水の挙動をモデル化したモデル式を有するようにし、演算部22は、放水条件からモデル式を使って、有効散布密度範囲とその位置とを演算するようにしてもよい。
【0051】
HMD3は、詳細な図示は省略するが、パイロットの頭部に装着されかつ、消防飛行艇1の窓外の景色を透過して視ることができると共に、表示制御部23の制御によって、各種の情報を、その景色に重ね合わせて表示することができる表示装置である。表示制御部23は、HMD3の向きに応じて、言い換えると、パイロットの頭部が向いている方向が変わることに伴いHMD3を通じて見える景色が変化することに応じて、HMD3に表示する内容を変更する。
【0052】
表示制御部23は、前述の通り、支援情報をHMD3に表示するように構成されており、支援情報は、放水範囲表示方式、放水位置表示方式及び軌道表示方式の3つの方式の内のいずれかの表示方式で表示される。3つの表示方式は、いずれか一つが設定されていてもよいし、その内の2つ又は3つが設定されていて、パイロットが任意に選択するようにしてもよい。以下、3つの表示方式について、順に説明する。
【0053】
(放水範囲表示方式)
図4は、放水範囲表示方式での、支援情報の表示例を示している。この放水範囲表示方式では、前述した有効散布密度範囲を示す長楕円41、41(図例では楕円の一部)が、HMD3を通じて見える窓外の景色と重なるように表示される。また、放水範囲表示方式では、投下した水の落下方向を示す放水ライン42と、放水高度指標43と、左右の有効散布密度範囲の中心位置同士の中間点44とが、それぞれ表示される。尚、符号45は、最低安全高度を示す高度指標である。これらの情報は、前述したように、演算部22が有効散布密度範囲やその位置を随時更新するに従って、リアルタイムに表示される。例えば中間点44の位置は、機体高度が変更されるに従い変更され、放水高度指標43と中間点44とが重なる機体高度が、有効散布密度範囲が最大となる最適放水高度になる。また、楕円41の大きさや位置も、機体高度等の放水条件が変化するに伴い、変更されて表示される(図5の概念図も参照)。
【0054】
このように、放水範囲表示方式では、現時点で水の投下を行ったときに、地表においてその水が到達する位置及び範囲が示されることになり、パイロットは、水が、どこに、どの程度の範囲で到達するかを、視認することが可能である。従って、パイロットは、放水目標である火災地点をHMD3を通じて視ながら、その火災地点と、楕円41、41とが重なるようにかつ、放水高度指標43と中間点44とが重なるように消防飛行艇1を操縦すると共に、それらが重なったタイミングで放水スイッチ13を操作することになる。こうして、火災地点の広い範囲に、消火に有効な量の水を、適確に放水することが可能になる。その結果、消火を効率的に行うことが可能になる。
【0055】
また、火災地点の緯度経度情報を予め取得し、この火災地点の位置を、HMD3にシンボル表示するようにしてもよい。こうすることで、パイロットは、HMD3に表示されている火災地点のシンボルと、楕円41、41との相対位置を確認しながら、放水を行うことが可能になる。尚、火災地点の緯度経度情報の入力は、例えばパイロットが手動で行えばよく、具体的にはHMD3を通じて視認される窓外景色において、火災地点をポインティングデバイス等によって指定することにより、火災地点の緯度経度情報を取得可能に構成してもよい。また、地図上において火災地点を指定することにより、火災地点の緯度経度情報を取得してもよい。
【0056】
尚、図4に示す楕円41、放水ライン42、放水高度指標43、中間点44、及び最低安全高度指標45は、有効散布密度範囲及びその位置を表示するための一例である。有効散布密度範囲及びその位置を表示する上では、様々な表示形態を適宜採用することが可能である。
【0057】
(放水位置表示方式)
図6は、放水位置表示方式での支援情報の表示例を示している。この放水位置表示方式では先ず、図7に概念図を示すように、火災地点の緯度経度情報を予め取得し、この火災地点に対して有効に放水をするために、水を投下すべき機体位置(緯度経度)及び機体高度(以下、これを放水目標点という)の情報を演算する。そうして、放水位置表示方式では、現時点での機体位置(緯度経度)及び機体高度と、放水目標点とのずれについての情報を、支援情報としてHMD3に表示する。
【0058】
具体的に、放水位置表示方式では先ず、火災地点の位置、言い換えると緯度経度を設定する。そのためにこの表示方式を採用するときには、入力部21に対して、火災地点の位置情報が入力される。また、消防飛行艇1の現在地(つまり、機体位置)の情報も入力部21に随時入力される(図3参照)。ここで、火災地点の位置情報の入力はパイロットが手動で行えばよく、前述したように、HMD3を利用して、又は、地図上において、火災地点の位置情報を入力すればよい。
【0059】
前述の通り、入力部21に入力される放水条件に基づき、テーブルデータ24を参照することによって有効散布密度範囲とその位置とを演算することが可能であるから、それとは逆に、設定された火災地点の緯度経度情報から、この火災地点に対して、有効散布密度範囲が最大となるように水を投下することが可能な、機体の緯度経度及び機体高度つまり、放水目標点を演算することが可能である。そこで、演算部22は、入力部21に入力される放水条件に基づき、テーブルデータ24を参照することによって放水目標点を演算する。演算部22はまた、演算した放水目標点に従って、消防飛行艇1の現在地、つまり機体の緯度経度及び機体高度と、放水目標点とのずれを演算する。ここで、放水目標点は、機体速度や大気条件が変化することに応じて変更されることから、演算部22は、入力部21に随時入力される放水条件に基づき放水目標点を随時更新すると共に、放水目標点と消防飛行艇1の現在地とのずれの情報もまた、随時更新する。
【0060】
そうして、表示制御部23は、機体の緯度経度及び機体高度と放水目標点とのずれに係る情報を、支援情報としてHMD3に表示する。
【0061】
放水位置表示方式では、図7に概念図を示すように、演算した放水目標点に向かうための目標針路及び機体の降下角とを設定し、設定した目標針路及び機体の降下角に基づいて、放水目標点に向かうように、消防飛行艇1を誘導する。具体的に放水位置表示方式では、図6に示すように、消防飛行艇1の現在地とその針路の情報とから決定される、消防飛行艇1の将来の位置を示すフライトパスシンボル61と、放水目標点に向かうために設定された目標針路に係るステアリングライン62と、縦の経路角に係る放水高度指標63とが、HMD3を通じて見える窓外の景色と重なるように、リアルタイムで表示される。
【0062】
放水位置表示方式ではまた、機体の現在地と放水目標点との相対距離と機体速度との情報に基づいて、放水タイミングを示すリリースキュー64が表示される。尚、リリースキュー64は、機体の現在地と放水目標点との相対距離に係るため、機体の現在地と放水目標点とのずれに関する情報ということができる。リリースキュー64は、図例では、三角印の矢印641と、その矢印が移動をする縦線642とによって構成されており、このリリースキュー64は、機体が放水目標点に接近するに従って、矢印641が下向きに移動をし、その矢印641が縦線642の最下端に到達したときに、機体が放水目標点に到達したことを示す。尚、消防飛行艇1が放水を許容することができる誤差範囲内に到達したときに、リリースキュー64を点滅表示させたり、リリースキュー64の表示色を変更させたり、又は、点滅及び色の変更を組み合わせたりしてもよい。
【0063】
こうして放水位置表示方式では、パイロットは、フライトパスシンボル61が、ステアリングライン62及び放水高度指標63に重なるように操縦し、さらに、リリースキュー64の表示に従って、放水スイッチ13を操作することになる。放水位置表示方式では、機体の現在地と放水目標点とのずれに関する情報を提供するだけであるため、パイロットは、火災地点への進入方位や進入速度等を、任意に設定することが可能であるという利点がある。そうして、HMD3に表示されるフライトパスシンボル61、ステアリングライン62、放水高度指標63及びリリースキュー64の指示に従って放水スイッチ13を操作することにより、放水目標点付近で放水を行うことができるから、火災地点の広い範囲に、消火に有効な量の水を適確に放水することが可能になり、消火を効率的に行うことが可能になる。この放水位置表示方式では、予め最適な放水位置及び放水高度が設定され、そこに到達するように誘導される上に、放水タイミングも指示されることから、パイロットは、火災地点を視認しながら、放水操作を行う必要がなく、パイロットの負担が軽減する。
【0064】
尚、放水位置表示方式では、放水目標点を演算するため、パイロットが放水スイッチ13の操作を行う代わりに、消防飛行艇1が放水目標点に到達したタイミングで、機体側がアクチュエータ12に作動信号を出力することで、放水を自動で行うようにすることも可能である。また、パイロットの放水スイッチ13の操作と、消防飛行艇1が放水目標点に到達したこととの2つの条件が成立したときに、アクチュエータ12に作動信号を出力して放水を行うようにしてもよい。この場合、パイロットは、放水目標点付近で放水スイッチ13を押し続けておくことにより、消防飛行艇1が放水目標点に到達したときに、自動的に放水が行われるようになる。これは、半自動放水ということができる。こうした自動放水、又は、半自動放水は、パイロットの負担を大幅に軽減しつつ、正確な放水を可能にする。
【0065】
また、図6に示すフライトパスシンボル61、ステアリングライン62、放水高度指標63、及びリリースキュー64は、消防飛行艇1の現在地と放水目標点とのずれを表示するための一例である。消防飛行艇1の現在地と放水目標点とのずれを表示する上で、様々な表示形態を適宜採用することが可能である。
【0066】
(軌道表示方式)
図8は、軌道表示方式での支援情報の表示例を示している。この軌道表示方式では、放水位置表示方式と同様に放水目標点を演算する一方で、放水位置表示方式とは異なり、その放水目標点に至るまでの飛行経路を設定し、その飛行経路を、支援情報としてHMD3に表示する。
【0067】
具体的に、経路表示方式では、前記と同様に、入力部21に対して、火災地点の位置情報及び機体の現在地の情報が入力され、演算部22は、入力された情報に基づいて、放水目標点と、その放水目標点に至るまでの飛行経路とを、それぞれ設定する。飛行経路の設定に際し、パイロットは、火災地点に対する進入方位や進入速度を予め設定するようにしてもよい。
【0068】
表示制御部23は、設定された飛行経路に従って、それを支援情報としてHMD3に表示する。図8に示すように、軌道表示方式では、フライトパスシンボル81が表示されると共に、設定された経路が、消防飛行艇1の進行方向に向かって延びるようなトンネルによって表示される(以下この表示を、トンネル82と呼ぶ)。これらフライトパスシンボル81及びトンネル82は、HMD3を通じて見える窓外の景色と重なるように、リアルタイムで表示される。また、軌道表示方式においても、前記と同様のリリースキュー83が表示される。
【0069】
パイロットは、軌道表示方式では、フライトパスシンボル81がトンネル82内を、設定された速度で通過するように操縦する。これによって、消防飛行艇1は、放水目標点に到達することになる。それと共にパイロットは、前述したようなリリースキュー83による指示に従って、放水操作を行う。これによって、火災地点の広い範囲に、消火に有効な量の水を適確に放水することが可能になり、消火を効率的に行うことが可能になる。この軌道表示方式でも、放水位置表示方式と同様に、予め最適な放水位置及び放水高度が設定され、そこに到達するように誘導される上に、放水タイミングも指示されることから、パイロットの負担が軽減する。
【0070】
また、放水の実行は手動で行う代わりに、前述したように自動放水としてもよいし、パイロットによる放水スイッチ13の操作を含む半自動放水としてもよい。
【0071】
尚、図8に示すフライトパスシンボル81、トンネル82、及びリリースキュー83は、消防飛行艇1の経路と放水タイミングとを表示するための一例である。消防飛行艇1の経路と放水タイミングとを表示する上で、様々な表示形態を適宜採用することが可能である。
【0072】
このように、消火支援装置2は、投下した水等の到達位置だけでなく、投下高度に係る有効散布密度範囲に関する情報を、パイロットに提供しているため、パイロットは、火災地点に対して、正確にかつ効率的に水等を散布することが可能になり、消火活動の効率化に有利になる。また、有効散布密度範囲の概念を利用することによって、消防飛行艇1の高度を、必要以上に下げることがなくなるから、消火活動の安全性を確保する上でも有利である。
【0073】
尚、前述した消火支援装置2は、表示部としてHMD3を利用しているが、表示部としては、例えばHUDを利用してもよい。また、フラットパネルディスプレイ等の表示部に、地図情報を表示しつつ、その地図情報に重なるように支援情報を表示してもよい。
【0074】
また、ここに開示する消火支援装置2が搭載される航空機は、消防飛行艇に限定されず例えば消防ヘリコプターに消火支援装置2を搭載してもよい。
【0075】
また、ここに開示する散布支援装置は、火災地点の消火に利用するだけでなく、航空機を利用して、液体、泡体又は粉体等の散布物を地表に散布する際に広く利用可能である。つまり、散布物を効率的に散布するという問題は、火災の消火活動に限定されるものではない。例えば農薬等の薬剤を広範に散布するとき等、航空機から散布物を投下するような種々の作業においても同じであって、そこに有効散布密度範囲という概念を適用することが可能である。尚、有効散布密度範囲は、散布物の種類や、散布の目的に応じて変更される。つまり、ここに開示する散布支援装置は、薬剤等の散布に利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、ここに開示した航空機の散布支援装置及び散布支援方法は、散布物の散布を効率的に行うことができ、山林火災等の消防活動や、その他、様々な散布作業に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 消防飛行艇(航空機)
113 扉(投下手段)
12 アクチュエータ(投下手段)
2 消火支援装置(散布支援装置)
21 入力部
22 演算部
23 表示制御部
24 テーブルデータ
3 HMD(表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、当該散布物の投下を行うパイロットに対し支援情報を提供することによって、その散布を効率的に行うための散布支援装置であって、
少なくとも、前記航空機の機体速度、機体高度、及び風速の各情報が入力される入力部、
前記入力部に入力された各情報に基づいて、前記散布物を前記航空機から投下したときの、地表の到達位置と、地表における前記散布物の密度分布とに関する演算を行う演算部、及び、
前記演算部によって演算された前記到達位置及び前記密度分布に係る前記支援情報を表示部に表示させる表示制御部、を備えている航空機の散布支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機の散布支援装置において、
前記散布物は、火災地点に散布される水又は消火剤であり、
前記入力部には、前記目標地点である前記火災地点の位置情報がさらに入力され、
前記演算部は、入力された各情報に基づいて、前記火災地点に対して、火災の消火に有効な密度以上の散布物を散布可能となる、前記散布物の投下位置及び投下高度を演算し、
前記表示制御部は、前記支援情報として前記散布物の投下位置及び投下高度に係る情報を前記表示部に表示させる散布支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の航空機の散布支援装置において、
前記入力部には、前記航空機の位置情報がさらに入力され、
前記表示制御部は、前記支援情報として、前記航空機の機体位置及び機体高度と、演算した前記投下位置及び前記投下高度とのずれに係る情報を前記表示部にリアルタイムで表示させる航空機の散布支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の航空機の散布支援装置において、
前記入力部には、前記航空機の位置情報がさらに入力され、
前記演算部は、前記航空機が前記投下位置及び投下高度に至るまでの経路をさらに演算し、
前記表示制御部は、前記支援情報として、前記演算された経路の情報と、前記散布物を投下するタイミングに係る情報とを前記表示部にリアルタイムで表示させる航空機の散布支援装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の航空機の散布支援装置において、
前記航空機が前記投下位置及び投下高度に到達したときに、前記散布物を投下する投下手段をさらに備えている航空機の散布支援装置。
【請求項6】
請求項1に記載の航空機の散布支援装置において、
前記散布物は、火災地点に散布される水又は消火剤であり、
前記演算部は、火災の消火に有効な散布物の密度以上となる範囲である有効散布密度範囲とその位置とを演算し、
前記表示制御部は、前記支援情報として、現時点で前記散布物を投下したときの前記有効散布密度範囲とその位置とを前記表示部にリアルタイムで表示させる航空機の散布支援装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の航空機の散布支援装置において、
前記演算部は、前記入力された各情報と、予め設定されたテーブルデータとに基づいて、前記散布物の前記到達位置及び前記密度分布を演算する航空機の散布支援装置。
【請求項8】
航空機から地表の目標地点に散布物を散布する際に、当該散布物の投下を行うパイロットに対し支援情報を提供することによって、その散布を効率的に行うための散布支援方法であって、
少なくとも、前記航空機の機体速度、機体高度、及び風速の各情報を入力し、
前記入力した各情報に基づいて、前記散布物を前記航空機から投下したときの、地表の到達位置と、地表における前記散布物の密度分布と、を演算し、そして、
前記演算した前記到達位置及び前記密度分布に係る前記支援情報を表示部に表示させる航空機の散布支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91341(P2013−91341A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232894(P2011−232894)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)