航空障害灯
【課題】鉛直角方向における配光規格を満足しながら全周方向の発光光度を均一化することができる航空障害灯を提供する。
【解決手段】 基体と;表面に複数の発光ダイオードが配列され前記基体に取り付けられる発光ダイオードユニットと;を具備し、前記発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが相互に異なる;ことを特徴とする。
【解決手段】 基体と;表面に複数の発光ダイオードが配列され前記基体に取り付けられる発光ダイオードユニットと;を具備し、前記発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが相互に異なる;ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の光源を備えた航空障害灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間に飛行する航空機の障害となる建物等の存在を示すために、航空障害灯が用いられている。航空障害灯は、建物の最上部等に設置されて、全周方向に発光する灯器である。航空機の安全な運行を担保するために、航空障害灯は、その配光規格が灯仕によって規定されている。この配光規格では、航空障害灯の鉛直角方向の光度についても規定されている。
【0003】
このような航空障害灯として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の装置では、円錐筒状の基体と、この基体の外周面に装着されたLEDと、LEDをカバーするように設けられた透光性のグローブとによって構成される。また、特許文献1の提案では、LEDを円錐筒状の基体の外周面に設け、グローブレンズにレンズ加工を施すことで、配光規格に従った鉛直角方向の光度を満足する照明を可能にしている。
【0004】
一方、全周方向の配光を広げて均一化を図るために、グローブに縦方向の溝を設けたものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−260202号公報
【特許文献2】特許第4050652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の提案では、グローブのレンズ加工の位置とLEDの位置とを高精度に位置合わせする必要がある。即ち、グローブとLEDとの位置関係がずれると、所定の鉛直角方向の配向特性を得られなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、鉛直角方向における配光規格を満足しながら全周方向の発光光度を均一化することができる航空障害灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る航空障害灯は、基体と;表面に複数の発光ダイオードが配列され前記基体に取り付けられる発光ダイオードユニットと;を具備し、前記発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが相互に異なる;ことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、前記発光ダイオードユニットの表面に直交する方向よりも鉛直下方側に配光ピークが位置する配光特性を有する;ことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、発光部とレンズ部とを有し;前記レンズ部は、垂直方向と水平方向とで曲率半径が異なる;ことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、発光部とレンズ部とを有し;前記発光部の中心と前記レンズ部の中心とは、垂直方向に偏位している;ことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、アノードとカソードとを結ぶ直線の方向を垂直方向に沿う方向となるように配置される;ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の本発明によれば、発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが異なり、水平方向への光の拡がりを鉛直角方向よりも大きくし、水平方向における光度を均一化することが可能である。これにより、鉛直角方向の特性のばらつきを低減して、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0014】
請求項2の本発明によれば、発光ダイオードは、発光ダイオードユニットの表面に直交する方向よりも鉛直下方側に配光ピークが位置する配光特性を有することから、発光ダイオードユニットの配光ピーク位置と灯仕の配光規格に基づくピーク位置とを近づけることができ、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0015】
請求項3の本発明によれば、発光部とレンズ部の曲率半径を相違させることで配光を制御しており、水平方向について高精度の配光制御が可能である。
【0016】
請求項4の本発明によれば、発光部の中心とレンズ部の中心とは垂直方向に偏位しているので、垂直方向について高精度の配光制御が可能である。
【0017】
請求項5の本発明によれば、アノードとカソードとを結ぶ直線の方向が垂直方向に沿う方向となるように発光ダイオードが配置されており、発光ダイオードによる配光の向きを垂直方向に沿う方向には変わりにくくすることができ、垂直方向に沿う方向について高精度の配光制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る航空障害灯を示す断面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】発光ダイオード41の構成の一例を示す説明図。
【図5】ユニットプレート32上の複数の発光ダイオード41の配列の様子を説明するための平面図。
【図6】図5の側面図。
【図7】本実施の形態において採用される発光ダイオード41の外形状を示す平面図。
【図8】図7の発光ダイオード41の配光特性を説明するための説明図。
【図9】周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41の配光特性を示すグラフ。
【図10】横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、従来例における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフ。
【図11】周方向に配光角度をとり径方向に距離をとって配光特性を示すグラフ。
【図12】横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、第1の実施の形態における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフ。
【図13】ユニットプレート60上の複数の発光ダイオード41L,41Rの配列の様子を説明するための平面図。
【図14】図13の側面図。
【図15】第2の実施の形態において採用される発光ダイオード41Lの外形状を示す平面図。
【図16】第2の実施の形態において採用される発光ダイオード41Rの外形状を示す平面図。
【図17】図15及び図16の発光ダイオード41L,41Rの配光特性を説明するための説明図。
【図18】配光特性を説明するための説明図。
【図19】周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41L,41Rの配光特性を示すグラフ。
【図20】横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態の航空障害灯に係り、図1は図2のI−I断面図、図2は側面図、図3は平面図である。
【0021】
図1に示す航空障害灯10は基体1を有している。基体1は、図示しない建造物の外壁等に取り付けられるアルミニウム製の下部灯体部3と、この下部灯体部3上に設けられる上部灯体部2とによって構成されている。下部灯体部3は、径大の取付部4を有し、取付部4の下面の周縁には台座などに固定するフランジ5が突出形成されている。下部灯体部3は、取付部4上に四角筒状の柱部6が設けられ、この柱部6の先端は、上部灯体部2の嵌合凹部7に嵌合されるようになっている。なお、基体1は、取付部4の底面が水平となるように、建造物等に取り付けられるようになっている。
【0022】
上部灯体部2はほぼ円盤状に形成され、図2に示すように、放射状に複数の放熱フィン8が突出形成され、これら放熱フィン8の中央部に対応する位置には平面四角状の嵌合凹部7が形成されている。
【0023】
上部灯体部2の上面にはほぼ中央に平面円形状の回路収納部11が形成され、回路収納部11には点灯回路12が収納される。点灯回路12には、上部灯体部2及び下部灯体部3の内部に連通される電源線13によって電力が供給されるようになっている。
【0024】
上部灯体部2の上方には、内部が中空の截頭円錐筒状のプレート取付部21が取り付けられる。プレート取付部21は、プレート取付部21より径小の円筒状の支持部22が形成され、この支持部22の最下部には径方向に突出したフランジ部23が形成されている。そして、フランジ部23の下面には上部灯体部2の上面に形成された嵌合凹溝9に嵌合される円周状の嵌合突条24が突出形成され、嵌合突条24の90°毎にねじ25により、上部灯体部2にプレート取付部21が取り付けられるようになっている。
【0025】
プレート取付部21には、発光ダイオードユニット31が取り付けられるようになっている。発光ダイオードユニット31は、プレート取付部21の外周に取り付けられる複数のユニットプレート32と各ユニットプレート32に取り付けられる複数の発光ダイオード41によって構成される。発光ダイオード41は、接続線14及び電流制限用の抵抗15を介して点灯回路12によって点灯制御されるようになっている。16は電流制限用の抵抗15を実装している回路基板である。
【0026】
ユニットプレート32は、アルミニウム製の板状部材であり、上下方向に長く伸びた帯形状を有する。ユニットプレート32の短手方向及び長手方向には、複数の発光ダイオード41が配設されている。
【0027】
ユニットプレート32は、プレート取付部21の外周面に、長手方向が上下方向に向くように配設される。ユニットプレート32は、プレート取付部21の円周方向に渡って、複数並設されている。これにより、発光ダイオード41は円周方向の全域に配置されて、全周方向に発光可能である。
【0028】
また、プレート取付部21の外周面は、鉛直角方向に対して所定の傾斜角を有しており、これにより、発光ダイオードは、水平に対して所定の角度だけ上方に傾斜するように設けられて、配光方向が規定されている。
【0029】
なお、発光ダイオードユニット31を水密に覆う下面が開口したドーム状の透光性を有する例えば赤色のグローブ体35が上部灯体部2に取り付けられている。
【0030】
図4は発光ダイオード41の構成の一例を示す説明図である。
【0031】
一対のリードフレームの一方はアノード51であり、他方はカソード52である。カソード52には凹部によるカップ部53が一体形成されており、カップ部53の斜面によってリフレクタ53aが構成される。カップ部53内にLEDチップ54が実装されている。LEDチップ54は、ボンディングワイヤ56によってカソード52に接続され、ボンディングワイヤ57によってアノード51に接続されている。
【0032】
LEDチップ54は、周囲がエポキシ樹脂等の樹脂部材58によって砲弾型にモールドされている。樹脂部材58の前方側はレンズ部58aを構成し、LEDチップ54からの光を所定方向に拡散するようになっている。なお、LEDチップ54として白色LEDチップを採用する場合には、リードフレームのカップ部53内に蛍光体を分散させた樹脂を封入し、その回りを砲弾型にエポキシ樹脂でモールドする。
【0033】
図5はユニットプレート32上の複数の発光ダイオード41の配列の様子を説明するための平面図であり、図6はその側面図である。
【0034】
上述したように、ユニットプレート32は、その長手方向が、プレート取付部21の鉛直角方向から若干傾斜した斜面に沿って縦方向に配置されると共に、短手方向がプレート取付部21の周方向に配置されて、プレート取付部21の全周に複数のユニットプレート32が取り付けられる。
【0035】
図5はユニットプレート32の短手方向(周方向)に発光ダイオード41を2列で配列した例を示している。図5及び図6に示すように、ユニットプレート32上には、各発光ダイオード41に対応させて複数の端子部62,63が設けられている。各端子部62,63は周方向に2列で、縦方向に順次配列される。各端子部62には各発光ダイオード41のアノード51が接続され、各端子部63には各発光ダイオード41のカソード52が接続される。隣接する発光ダイオード41に接続される各端子部62,63同士は、相互に配線66によって接続される。こうして、各発光ダイオード41は、正極性端子部64と負極性端子部65との間において、配線66により直列接続される。
【0036】
本実施の形態においては、発光ダイオード41は、図5の縦方向と周方向とで、異なる配光特性を有するように構成されている。
【0037】
図7は本実施の形態において採用される発光ダイオード41の外形状を示す平面図であり、図8は図7の発光ダイオード41の配光特性を説明するための説明図である。
【0038】
図7(a)は図5の周方向側から見た平面形状を示し、図7(b)は図5の縦方向から見た平面形状を示している。図7に示すように、レンズ部58aを構成する樹脂部材58の形状が、周方向と縦方向とで異なる形状に構成されている。レンズ部58aは、縦方向の曲率半径に比べて周方向の曲率半径の方が大きい。例えば、縦方向の曲率半径は、2.45mmであるのに対し、周方向の曲率半径は3.5mmである。
【0039】
図8(a)は発光ダイオード41からの光束の縦方向の拡がりを示し、図8(b)は発光ダイオード41からの光束の周方向の拡がりを示している。図8に示すように、レンズ部58aによって、周方向の光束71’は、縦方向の光束71に比べて十分な拡がりを有する。
【0040】
図9は周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41の配光特性を示すグラフである。図9(a)は周方向の配光特性を示し、図9(b)は発光ダイオード41の光軸方向を0°として縦方向の配光特性を示している。図9からも明らかなように、発光ダイオード41は縦方向に比べて周方向に十分な拡がり有する光を出射することができる。
【0041】
次にこのように構成された実施の形態の作用について図10乃至図12を参照して説明する。図10は横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、従来例における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフである。また、図11は航空障害灯から5mき距離において測定した配光特性を示すグラフである。図11は全周を90度間隔で測定している。また、図12は横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、第1の実施の形態における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフである。図10及び図12においては、基体1の鉛直角方向の所定位置を基準0度とし、鉛直上方側を正の符号、鉛直下方側を負の符号とし、鉛直角方向の配光方向を角度によって示している。
【0042】
図10の特性81は灯仕の配光規格による配光特性を示している。図10は、灯仕によって、鉛直下方の約−3度から鉛直上方の約10度までの間の光度が100カンデラ(cd)以上となるように定められている例を示している。
【0043】
図11は基体1の周方向における配光特性を示している。図11の特性83は、従来例における航空障害灯の配光特性を示している。従来例における航空障害灯においては、本実施の形態と同様に発光ダイオードを周方向配列することで、全周方向への発光を可能にしている。しかしながら、各発光ダイオードの発光のばらつきによって周方向で光度にばらつきが生じるだけでなく、発光ダイオード相互間の隙間によって、周方向の光度は均一とならず、図11の特性83に示すように、発光ダイオードの周方向の配置に応じて光度の変化が生じる。
【0044】
従って、航空障害灯全体では、図10の特性82に示すように、鉛直角方向の配光特性についても、周方向毎に異なる配光特性となる。即ち、特性82に示すように、従来の航空障害灯は、灯仕によって十分な光度が必要とされる鉛直角近傍において光度のばらつきが大きい。このばらつきによって、鉛直角方向の明るさを十分低減させるために各発光ダイオードの明るさを単純に低下させると、灯仕の配光規格を満足しなくなる虞があり、明るさを十分に低減させることはできない。
【0045】
これに対し本実施の形態においては、各発光ダイオード41は、周方向には縦方向よりも、十分な拡がりを有する光を出射する。これにより、各発光ダイオード41の周方向の相互間についても、十分な明るさが得られ、図11の特性84に示すように、周方向の光度を略均一にして、発光ダイオードの周方向の配置に応じた光度の変化を抑制することができる。
【0046】
図12はこの場合の鉛直角方向の特性を示している。周方向の光度の変化が抑制されるので、第1の実施の形態における航空障害灯10は、図12の特性85に示すように、鉛直角方向の配光特性についてのばらつきが小さい。従って、本実施の形態におていは、各発光ダイオードの明るさを単純に低下させた場合でも、灯仕の配光規格を満足させることができ、明るさを十分に低減させることはできる。こうして、本実施の形態においては、図11の特性84に示すように、従来に比べて、十分に明るさを低減させることが可能である。
【0047】
このように本実施の形態においては、基体に配置した各発光ダイオードについて、レンズの周方向の曲率半径を縦方向の曲率半径よりも大きくすることで、基体周方向への光の拡がりを大きくし、周方向における光度を均一化している。これにより、鉛直角方向の配光特性のばらつきを低減して、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0048】
図13乃至図17は本発明の第2の実施の形態に係り、図13はユニットプレート60上の複数の発光ダイオード41L,41Rの配列の様子を説明するための平面図であり、図14はその側面図である。図15及び図16は夫々第2の実施の形態において採用される発光ダイオード41L,41Rの外形状を示す平面図である。図17は図15及び図16の発光ダイオード41L,41Rの配光特性を説明するための説明図である。
【0049】
図12に示すように、灯仕の配光規格に基づく特性81と第1の実施の形態による配光特性85とは、ピーク位置がずれている。このため、灯仕の配光規格を満足させようとすると、明るさを十分に低減させることができない。そこで、本実施の形態においては、配光特性のピークを灯仕の配光規格と一致させることによって、明るさを一層低減させることを可能にしたものである。
【0050】
本実施の形態においては、発光ダイオード41に代えて、発光ダイオード41L,41Rを採用すると共に、ユニットプレート32に代えてユニットプレート60を採用した点が第1の実施の形態と異なるのみである。
【0051】
図13において、ユニットプレート60は端子部62,63に代えて端子部62L,62R及び端子部63L,63Rを採用した点が第1の実施の形態と異なるのみであり、ユニットプレート60のプレート取付部21への取り付けは第1の実施の形態と同様である。なお、図13においては、紙面の上下方向とユニットプレート60が取り付けられる基体1の上下方向とは一致しているものとする。即ち、ユニットプレート60の端子部64,65が基体1の下方側に配置されるように、ユニットプレート60がプレート取付部21に取り付けられるものとして説明する。
【0052】
図13においても、ユニットプレート60の短手方向(周方向)に発光ダイオード41L,41Rを2列で配列した例を示している。ユニットプレート60の紙面左側には、複数の発光ダイオード41Lによる発光ダイオード群61Lが配置され、ユニットプレート60の紙面右側には、複数の発光ダイオード41Rによる発光ダイオード群61Rが配置される。
【0053】
図13及び図14に示すように、ユニットプレート60上には、各発光ダイオード41Lに対応させて複数の端子部62L,63Lが設けられ、各発光ダイオード41Rに対応させて複数の端子部62R,63Rが設けられている。各端子部62L,62R及び端子部63L,63Rは周方向に2列で、縦方向に順次配列される。
【0054】
発光ダイオード群61Lにおいては、各端子部62Lに各発光ダイオード41Lのアノード51L(図4参照)が接続され、各端子部63Lに各発光ダイオード41Lのカソード52Lが接続される。また、発光ダイオード群61Rにおいては、各端子部62Rに各発光ダイオード41Rのアノード51R(図14参照)が接続され、各端子部63Rに各発光ダイオード41Rのカソード52Rが接続される。
【0055】
隣接する発光ダイオード41L,41Rに接続される各端子部62L,63L同士又は端子部62R,63R同士は、相互に配線66によって接続される。こうして、各発光ダイオード41L及び各発光ダイオード41Rは、正極性端子部64と負極性端子部65との間において、配線66により直列接続される。
【0056】
発光ダイオード41L,41Rは、図4に示す発光ダイオード41に対して、カップ部53の位置がレンズ部58aの中心から縦方向にずれている点が異なる。即ち、図15に示すように、発光ダイオード41Lは、レンズ58aの中心に対してカップ部53(図4参照)が紙面右側(カソード52L側)、即ち、基体1の上方側に偏位している。また、発光ダイオード41Rは、図16に示すように、レンズ58aの中心に対してカップ部53(図4参照)が紙面左側(アノード51R側)、即ち、基体1の上方側に偏位している。
【0057】
なお、図15及び図16の例は、カップ部53の変位量が0.15mmの例を示している。
【0058】
図17(a)はカップ部53の中心とレンズ58aの中心が一致している場合の例を示し、図17(b)は図15及び図16の例における発光ダイオード41L,41Rの鉛直角方向における光束の拡がり方を示している。
【0059】
図17(a)の例では、光束は、レンズ58aの軸を中心にして、鉛直角方向の上下両方向に均等に拡がっている。これに対し、図17(b)に示すように、本実施の形態における発光ダイオード411L,41Rは、レンズ58aの軸を中心にして、縦方向の上方よりも下方側に拡がり有する光束(ピークが下方側にシフト)を発生する。このような発光ダイオード41L,41Rが装着されたユニットプレート60をプレート取付部21に取り付けることにより、プレート取付部21の傾斜に対して鉛直角方向下向きに拡がりを有する光束を得ることができる。
【0060】
また、本実施の形態においては、電気的には直列接続された複数の発光ダイオードを折り返して2列に配置したことから、2種類の発光ダイオード41L,41Rを設ける必要があったが、カップ部53がレンズ部58aに対して鉛直角方向の上方側に偏位していればよく、発光ダイオードを1列に配置する場合においては、1種類の発光ダイオードによって構成することも可能である。
【0061】
なお、図18に示すように、発光ダイオード41L,41Rは、カップ部53からレンズ部48aまでの距離を小さくすることによって、より拡がりを有する光束を得るように構成してもよい。図18(a)はカップ部53からレンズ部48aまでの距離が4.7mmの例であり、図18(b)はカップ部53からレンズ部48aまでの距離が4.5mmの例である。
【0062】
図19は周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41L,41Rの配光特性を示すグラフである。図19(a)は周方向の配光特性を示し、図19(b)は図17(a)の光軸を0°として縦方向の配光特性を示している。発光ダイオード41L,41Rは、カップ部53が一方はカソード52L側に偏位し、他方はアノード51R側に変位しているが、配置する方向が相互に180度異なることから、鉛直角方向(縦方向)における配向特性は同一となる。
【0063】
図19からも明らかなように、発光ダイオード41L,41Rは、縦方向上方よりも縦方向下方側に拡がり有する光を出射することができる。
【0064】
ところで、発光ダイオード41L,41Rは、アノード51L,51R及びカソード52L,52Rによってユニットプレート60上に支持されている。従って、これらのアノード51L(51R)とカソード52L(52R)とを結ぶ方向に対して直交する方向には、アノード51L,51R及びカソード52L,52Rは曲がりやすく、樹脂部58の向きが変わりやすい。即ち、発光ダイオード41L,41Rは、アノード51L(51R)及びカソード52L(52R)とを結ぶ方向に対して直交する方向には、配光方向がずれやすい。
【0065】
そこで、この理由から、本実施の形態においては、各発光ダイオード41L,41Rは、アノード51L(51R)とカソード52L(52R)とを鉛直角方向に沿って配置するように構成する。これにより、アノード51L,51R及びカソード52L,52Rが曲がりやすい場合でも、発光ダイオード41L,41Rの配光方向が鉛直角方向にずれることを防止することができる。
【0066】
なお、発光ダイオード41L,41Rの配光方向が周方向に多少ずれたとしても、本実施の形態においては第1の実施の形態と同様に、周方向には拡がりを有する配光特性を有しており、特には問題はない。
【0067】
次にこのように構成された実施の形態の作用について図20を参照して説明する。図20は横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフである。図20においては、基体1の鉛直角方向の所定位置を基準0度とし、鉛直上方側を正の符号、鉛直下方側を負の符号とし、光の鉛直角方向の配光方向を角度によって示している。なお、図20では説明を簡略化するために、全周方向の光度の平均的な値を示している。
【0068】
図20の特性81は灯仕の配光規格による配光特性を示している。これに対し本実施の形態においては、各発光ダイオード41L,41Rは、縦方向には上方向よりも下方向に拡がりを有する光を出射する。これにより、発光ダイオードユニット31からは、従来に比して、鉛直角方向には下方向に拡がりを有する光が出射される。結局、本実施の形態における配光特性は、図20の従来の特性90に比べて、ピーク位置が鉛直角方向下方にシフトした特性91に示すものとなる。
【0069】
特性91は、ピーク位置が鉛直下方側にシフトして、灯仕に基づく配光規格の特性81のピーク位置の中心近傍にピーク位置が位置する。これにより、本実施の形態においては、配光規格の特性81以上の光度を満足させながら、光度を十分に低下させることができる。
【0070】
このように本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の効果を有すると共に、基体に配置した各発光ダイオードについて、レンズ部に対してカップ部を鉛直角方向にシフトさせて、配光のピーク位置を鉛直下方にシフトさせたことにより、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0071】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…基体、
2…上部灯体部、
3…下部灯体部、
10…航空障害灯、
12…点灯回路、
21…プレート取付部、
31…発光ダイオードユニット、
32…ユニットプレート、
41,41L,41R…発光ダイオード、
51…アノード、
52…カソード、
53…カップ部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の光源を備えた航空障害灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間に飛行する航空機の障害となる建物等の存在を示すために、航空障害灯が用いられている。航空障害灯は、建物の最上部等に設置されて、全周方向に発光する灯器である。航空機の安全な運行を担保するために、航空障害灯は、その配光規格が灯仕によって規定されている。この配光規格では、航空障害灯の鉛直角方向の光度についても規定されている。
【0003】
このような航空障害灯として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の装置では、円錐筒状の基体と、この基体の外周面に装着されたLEDと、LEDをカバーするように設けられた透光性のグローブとによって構成される。また、特許文献1の提案では、LEDを円錐筒状の基体の外周面に設け、グローブレンズにレンズ加工を施すことで、配光規格に従った鉛直角方向の光度を満足する照明を可能にしている。
【0004】
一方、全周方向の配光を広げて均一化を図るために、グローブに縦方向の溝を設けたものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−260202号公報
【特許文献2】特許第4050652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の提案では、グローブのレンズ加工の位置とLEDの位置とを高精度に位置合わせする必要がある。即ち、グローブとLEDとの位置関係がずれると、所定の鉛直角方向の配向特性を得られなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、鉛直角方向における配光規格を満足しながら全周方向の発光光度を均一化することができる航空障害灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る航空障害灯は、基体と;表面に複数の発光ダイオードが配列され前記基体に取り付けられる発光ダイオードユニットと;を具備し、前記発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが相互に異なる;ことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、前記発光ダイオードユニットの表面に直交する方向よりも鉛直下方側に配光ピークが位置する配光特性を有する;ことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、発光部とレンズ部とを有し;前記レンズ部は、垂直方向と水平方向とで曲率半径が異なる;ことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、発光部とレンズ部とを有し;前記発光部の中心と前記レンズ部の中心とは、垂直方向に偏位している;ことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に係る航空障害灯は、前記発光ダイオードが、アノードとカソードとを結ぶ直線の方向を垂直方向に沿う方向となるように配置される;ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の本発明によれば、発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが異なり、水平方向への光の拡がりを鉛直角方向よりも大きくし、水平方向における光度を均一化することが可能である。これにより、鉛直角方向の特性のばらつきを低減して、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0014】
請求項2の本発明によれば、発光ダイオードは、発光ダイオードユニットの表面に直交する方向よりも鉛直下方側に配光ピークが位置する配光特性を有することから、発光ダイオードユニットの配光ピーク位置と灯仕の配光規格に基づくピーク位置とを近づけることができ、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0015】
請求項3の本発明によれば、発光部とレンズ部の曲率半径を相違させることで配光を制御しており、水平方向について高精度の配光制御が可能である。
【0016】
請求項4の本発明によれば、発光部の中心とレンズ部の中心とは垂直方向に偏位しているので、垂直方向について高精度の配光制御が可能である。
【0017】
請求項5の本発明によれば、アノードとカソードとを結ぶ直線の方向が垂直方向に沿う方向となるように発光ダイオードが配置されており、発光ダイオードによる配光の向きを垂直方向に沿う方向には変わりにくくすることができ、垂直方向に沿う方向について高精度の配光制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る航空障害灯を示す断面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】発光ダイオード41の構成の一例を示す説明図。
【図5】ユニットプレート32上の複数の発光ダイオード41の配列の様子を説明するための平面図。
【図6】図5の側面図。
【図7】本実施の形態において採用される発光ダイオード41の外形状を示す平面図。
【図8】図7の発光ダイオード41の配光特性を説明するための説明図。
【図9】周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41の配光特性を示すグラフ。
【図10】横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、従来例における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフ。
【図11】周方向に配光角度をとり径方向に距離をとって配光特性を示すグラフ。
【図12】横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、第1の実施の形態における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフ。
【図13】ユニットプレート60上の複数の発光ダイオード41L,41Rの配列の様子を説明するための平面図。
【図14】図13の側面図。
【図15】第2の実施の形態において採用される発光ダイオード41Lの外形状を示す平面図。
【図16】第2の実施の形態において採用される発光ダイオード41Rの外形状を示す平面図。
【図17】図15及び図16の発光ダイオード41L,41Rの配光特性を説明するための説明図。
【図18】配光特性を説明するための説明図。
【図19】周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41L,41Rの配光特性を示すグラフ。
【図20】横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態の航空障害灯に係り、図1は図2のI−I断面図、図2は側面図、図3は平面図である。
【0021】
図1に示す航空障害灯10は基体1を有している。基体1は、図示しない建造物の外壁等に取り付けられるアルミニウム製の下部灯体部3と、この下部灯体部3上に設けられる上部灯体部2とによって構成されている。下部灯体部3は、径大の取付部4を有し、取付部4の下面の周縁には台座などに固定するフランジ5が突出形成されている。下部灯体部3は、取付部4上に四角筒状の柱部6が設けられ、この柱部6の先端は、上部灯体部2の嵌合凹部7に嵌合されるようになっている。なお、基体1は、取付部4の底面が水平となるように、建造物等に取り付けられるようになっている。
【0022】
上部灯体部2はほぼ円盤状に形成され、図2に示すように、放射状に複数の放熱フィン8が突出形成され、これら放熱フィン8の中央部に対応する位置には平面四角状の嵌合凹部7が形成されている。
【0023】
上部灯体部2の上面にはほぼ中央に平面円形状の回路収納部11が形成され、回路収納部11には点灯回路12が収納される。点灯回路12には、上部灯体部2及び下部灯体部3の内部に連通される電源線13によって電力が供給されるようになっている。
【0024】
上部灯体部2の上方には、内部が中空の截頭円錐筒状のプレート取付部21が取り付けられる。プレート取付部21は、プレート取付部21より径小の円筒状の支持部22が形成され、この支持部22の最下部には径方向に突出したフランジ部23が形成されている。そして、フランジ部23の下面には上部灯体部2の上面に形成された嵌合凹溝9に嵌合される円周状の嵌合突条24が突出形成され、嵌合突条24の90°毎にねじ25により、上部灯体部2にプレート取付部21が取り付けられるようになっている。
【0025】
プレート取付部21には、発光ダイオードユニット31が取り付けられるようになっている。発光ダイオードユニット31は、プレート取付部21の外周に取り付けられる複数のユニットプレート32と各ユニットプレート32に取り付けられる複数の発光ダイオード41によって構成される。発光ダイオード41は、接続線14及び電流制限用の抵抗15を介して点灯回路12によって点灯制御されるようになっている。16は電流制限用の抵抗15を実装している回路基板である。
【0026】
ユニットプレート32は、アルミニウム製の板状部材であり、上下方向に長く伸びた帯形状を有する。ユニットプレート32の短手方向及び長手方向には、複数の発光ダイオード41が配設されている。
【0027】
ユニットプレート32は、プレート取付部21の外周面に、長手方向が上下方向に向くように配設される。ユニットプレート32は、プレート取付部21の円周方向に渡って、複数並設されている。これにより、発光ダイオード41は円周方向の全域に配置されて、全周方向に発光可能である。
【0028】
また、プレート取付部21の外周面は、鉛直角方向に対して所定の傾斜角を有しており、これにより、発光ダイオードは、水平に対して所定の角度だけ上方に傾斜するように設けられて、配光方向が規定されている。
【0029】
なお、発光ダイオードユニット31を水密に覆う下面が開口したドーム状の透光性を有する例えば赤色のグローブ体35が上部灯体部2に取り付けられている。
【0030】
図4は発光ダイオード41の構成の一例を示す説明図である。
【0031】
一対のリードフレームの一方はアノード51であり、他方はカソード52である。カソード52には凹部によるカップ部53が一体形成されており、カップ部53の斜面によってリフレクタ53aが構成される。カップ部53内にLEDチップ54が実装されている。LEDチップ54は、ボンディングワイヤ56によってカソード52に接続され、ボンディングワイヤ57によってアノード51に接続されている。
【0032】
LEDチップ54は、周囲がエポキシ樹脂等の樹脂部材58によって砲弾型にモールドされている。樹脂部材58の前方側はレンズ部58aを構成し、LEDチップ54からの光を所定方向に拡散するようになっている。なお、LEDチップ54として白色LEDチップを採用する場合には、リードフレームのカップ部53内に蛍光体を分散させた樹脂を封入し、その回りを砲弾型にエポキシ樹脂でモールドする。
【0033】
図5はユニットプレート32上の複数の発光ダイオード41の配列の様子を説明するための平面図であり、図6はその側面図である。
【0034】
上述したように、ユニットプレート32は、その長手方向が、プレート取付部21の鉛直角方向から若干傾斜した斜面に沿って縦方向に配置されると共に、短手方向がプレート取付部21の周方向に配置されて、プレート取付部21の全周に複数のユニットプレート32が取り付けられる。
【0035】
図5はユニットプレート32の短手方向(周方向)に発光ダイオード41を2列で配列した例を示している。図5及び図6に示すように、ユニットプレート32上には、各発光ダイオード41に対応させて複数の端子部62,63が設けられている。各端子部62,63は周方向に2列で、縦方向に順次配列される。各端子部62には各発光ダイオード41のアノード51が接続され、各端子部63には各発光ダイオード41のカソード52が接続される。隣接する発光ダイオード41に接続される各端子部62,63同士は、相互に配線66によって接続される。こうして、各発光ダイオード41は、正極性端子部64と負極性端子部65との間において、配線66により直列接続される。
【0036】
本実施の形態においては、発光ダイオード41は、図5の縦方向と周方向とで、異なる配光特性を有するように構成されている。
【0037】
図7は本実施の形態において採用される発光ダイオード41の外形状を示す平面図であり、図8は図7の発光ダイオード41の配光特性を説明するための説明図である。
【0038】
図7(a)は図5の周方向側から見た平面形状を示し、図7(b)は図5の縦方向から見た平面形状を示している。図7に示すように、レンズ部58aを構成する樹脂部材58の形状が、周方向と縦方向とで異なる形状に構成されている。レンズ部58aは、縦方向の曲率半径に比べて周方向の曲率半径の方が大きい。例えば、縦方向の曲率半径は、2.45mmであるのに対し、周方向の曲率半径は3.5mmである。
【0039】
図8(a)は発光ダイオード41からの光束の縦方向の拡がりを示し、図8(b)は発光ダイオード41からの光束の周方向の拡がりを示している。図8に示すように、レンズ部58aによって、周方向の光束71’は、縦方向の光束71に比べて十分な拡がりを有する。
【0040】
図9は周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41の配光特性を示すグラフである。図9(a)は周方向の配光特性を示し、図9(b)は発光ダイオード41の光軸方向を0°として縦方向の配光特性を示している。図9からも明らかなように、発光ダイオード41は縦方向に比べて周方向に十分な拡がり有する光を出射することができる。
【0041】
次にこのように構成された実施の形態の作用について図10乃至図12を参照して説明する。図10は横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、従来例における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフである。また、図11は航空障害灯から5mき距離において測定した配光特性を示すグラフである。図11は全周を90度間隔で測定している。また、図12は横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、第1の実施の形態における航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフである。図10及び図12においては、基体1の鉛直角方向の所定位置を基準0度とし、鉛直上方側を正の符号、鉛直下方側を負の符号とし、鉛直角方向の配光方向を角度によって示している。
【0042】
図10の特性81は灯仕の配光規格による配光特性を示している。図10は、灯仕によって、鉛直下方の約−3度から鉛直上方の約10度までの間の光度が100カンデラ(cd)以上となるように定められている例を示している。
【0043】
図11は基体1の周方向における配光特性を示している。図11の特性83は、従来例における航空障害灯の配光特性を示している。従来例における航空障害灯においては、本実施の形態と同様に発光ダイオードを周方向配列することで、全周方向への発光を可能にしている。しかしながら、各発光ダイオードの発光のばらつきによって周方向で光度にばらつきが生じるだけでなく、発光ダイオード相互間の隙間によって、周方向の光度は均一とならず、図11の特性83に示すように、発光ダイオードの周方向の配置に応じて光度の変化が生じる。
【0044】
従って、航空障害灯全体では、図10の特性82に示すように、鉛直角方向の配光特性についても、周方向毎に異なる配光特性となる。即ち、特性82に示すように、従来の航空障害灯は、灯仕によって十分な光度が必要とされる鉛直角近傍において光度のばらつきが大きい。このばらつきによって、鉛直角方向の明るさを十分低減させるために各発光ダイオードの明るさを単純に低下させると、灯仕の配光規格を満足しなくなる虞があり、明るさを十分に低減させることはできない。
【0045】
これに対し本実施の形態においては、各発光ダイオード41は、周方向には縦方向よりも、十分な拡がりを有する光を出射する。これにより、各発光ダイオード41の周方向の相互間についても、十分な明るさが得られ、図11の特性84に示すように、周方向の光度を略均一にして、発光ダイオードの周方向の配置に応じた光度の変化を抑制することができる。
【0046】
図12はこの場合の鉛直角方向の特性を示している。周方向の光度の変化が抑制されるので、第1の実施の形態における航空障害灯10は、図12の特性85に示すように、鉛直角方向の配光特性についてのばらつきが小さい。従って、本実施の形態におていは、各発光ダイオードの明るさを単純に低下させた場合でも、灯仕の配光規格を満足させることができ、明るさを十分に低減させることはできる。こうして、本実施の形態においては、図11の特性84に示すように、従来に比べて、十分に明るさを低減させることが可能である。
【0047】
このように本実施の形態においては、基体に配置した各発光ダイオードについて、レンズの周方向の曲率半径を縦方向の曲率半径よりも大きくすることで、基体周方向への光の拡がりを大きくし、周方向における光度を均一化している。これにより、鉛直角方向の配光特性のばらつきを低減して、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0048】
図13乃至図17は本発明の第2の実施の形態に係り、図13はユニットプレート60上の複数の発光ダイオード41L,41Rの配列の様子を説明するための平面図であり、図14はその側面図である。図15及び図16は夫々第2の実施の形態において採用される発光ダイオード41L,41Rの外形状を示す平面図である。図17は図15及び図16の発光ダイオード41L,41Rの配光特性を説明するための説明図である。
【0049】
図12に示すように、灯仕の配光規格に基づく特性81と第1の実施の形態による配光特性85とは、ピーク位置がずれている。このため、灯仕の配光規格を満足させようとすると、明るさを十分に低減させることができない。そこで、本実施の形態においては、配光特性のピークを灯仕の配光規格と一致させることによって、明るさを一層低減させることを可能にしたものである。
【0050】
本実施の形態においては、発光ダイオード41に代えて、発光ダイオード41L,41Rを採用すると共に、ユニットプレート32に代えてユニットプレート60を採用した点が第1の実施の形態と異なるのみである。
【0051】
図13において、ユニットプレート60は端子部62,63に代えて端子部62L,62R及び端子部63L,63Rを採用した点が第1の実施の形態と異なるのみであり、ユニットプレート60のプレート取付部21への取り付けは第1の実施の形態と同様である。なお、図13においては、紙面の上下方向とユニットプレート60が取り付けられる基体1の上下方向とは一致しているものとする。即ち、ユニットプレート60の端子部64,65が基体1の下方側に配置されるように、ユニットプレート60がプレート取付部21に取り付けられるものとして説明する。
【0052】
図13においても、ユニットプレート60の短手方向(周方向)に発光ダイオード41L,41Rを2列で配列した例を示している。ユニットプレート60の紙面左側には、複数の発光ダイオード41Lによる発光ダイオード群61Lが配置され、ユニットプレート60の紙面右側には、複数の発光ダイオード41Rによる発光ダイオード群61Rが配置される。
【0053】
図13及び図14に示すように、ユニットプレート60上には、各発光ダイオード41Lに対応させて複数の端子部62L,63Lが設けられ、各発光ダイオード41Rに対応させて複数の端子部62R,63Rが設けられている。各端子部62L,62R及び端子部63L,63Rは周方向に2列で、縦方向に順次配列される。
【0054】
発光ダイオード群61Lにおいては、各端子部62Lに各発光ダイオード41Lのアノード51L(図4参照)が接続され、各端子部63Lに各発光ダイオード41Lのカソード52Lが接続される。また、発光ダイオード群61Rにおいては、各端子部62Rに各発光ダイオード41Rのアノード51R(図14参照)が接続され、各端子部63Rに各発光ダイオード41Rのカソード52Rが接続される。
【0055】
隣接する発光ダイオード41L,41Rに接続される各端子部62L,63L同士又は端子部62R,63R同士は、相互に配線66によって接続される。こうして、各発光ダイオード41L及び各発光ダイオード41Rは、正極性端子部64と負極性端子部65との間において、配線66により直列接続される。
【0056】
発光ダイオード41L,41Rは、図4に示す発光ダイオード41に対して、カップ部53の位置がレンズ部58aの中心から縦方向にずれている点が異なる。即ち、図15に示すように、発光ダイオード41Lは、レンズ58aの中心に対してカップ部53(図4参照)が紙面右側(カソード52L側)、即ち、基体1の上方側に偏位している。また、発光ダイオード41Rは、図16に示すように、レンズ58aの中心に対してカップ部53(図4参照)が紙面左側(アノード51R側)、即ち、基体1の上方側に偏位している。
【0057】
なお、図15及び図16の例は、カップ部53の変位量が0.15mmの例を示している。
【0058】
図17(a)はカップ部53の中心とレンズ58aの中心が一致している場合の例を示し、図17(b)は図15及び図16の例における発光ダイオード41L,41Rの鉛直角方向における光束の拡がり方を示している。
【0059】
図17(a)の例では、光束は、レンズ58aの軸を中心にして、鉛直角方向の上下両方向に均等に拡がっている。これに対し、図17(b)に示すように、本実施の形態における発光ダイオード411L,41Rは、レンズ58aの軸を中心にして、縦方向の上方よりも下方側に拡がり有する光束(ピークが下方側にシフト)を発生する。このような発光ダイオード41L,41Rが装着されたユニットプレート60をプレート取付部21に取り付けることにより、プレート取付部21の傾斜に対して鉛直角方向下向きに拡がりを有する光束を得ることができる。
【0060】
また、本実施の形態においては、電気的には直列接続された複数の発光ダイオードを折り返して2列に配置したことから、2種類の発光ダイオード41L,41Rを設ける必要があったが、カップ部53がレンズ部58aに対して鉛直角方向の上方側に偏位していればよく、発光ダイオードを1列に配置する場合においては、1種類の発光ダイオードによって構成することも可能である。
【0061】
なお、図18に示すように、発光ダイオード41L,41Rは、カップ部53からレンズ部48aまでの距離を小さくすることによって、より拡がりを有する光束を得るように構成してもよい。図18(a)はカップ部53からレンズ部48aまでの距離が4.7mmの例であり、図18(b)はカップ部53からレンズ部48aまでの距離が4.5mmの例である。
【0062】
図19は周方向に配光角度をとり径方向に正規化した距離をとって、発光ダイオード41L,41Rの配光特性を示すグラフである。図19(a)は周方向の配光特性を示し、図19(b)は図17(a)の光軸を0°として縦方向の配光特性を示している。発光ダイオード41L,41Rは、カップ部53が一方はカソード52L側に偏位し、他方はアノード51R側に変位しているが、配置する方向が相互に180度異なることから、鉛直角方向(縦方向)における配向特性は同一となる。
【0063】
図19からも明らかなように、発光ダイオード41L,41Rは、縦方向上方よりも縦方向下方側に拡がり有する光を出射することができる。
【0064】
ところで、発光ダイオード41L,41Rは、アノード51L,51R及びカソード52L,52Rによってユニットプレート60上に支持されている。従って、これらのアノード51L(51R)とカソード52L(52R)とを結ぶ方向に対して直交する方向には、アノード51L,51R及びカソード52L,52Rは曲がりやすく、樹脂部58の向きが変わりやすい。即ち、発光ダイオード41L,41Rは、アノード51L(51R)及びカソード52L(52R)とを結ぶ方向に対して直交する方向には、配光方向がずれやすい。
【0065】
そこで、この理由から、本実施の形態においては、各発光ダイオード41L,41Rは、アノード51L(51R)とカソード52L(52R)とを鉛直角方向に沿って配置するように構成する。これにより、アノード51L,51R及びカソード52L,52Rが曲がりやすい場合でも、発光ダイオード41L,41Rの配光方向が鉛直角方向にずれることを防止することができる。
【0066】
なお、発光ダイオード41L,41Rの配光方向が周方向に多少ずれたとしても、本実施の形態においては第1の実施の形態と同様に、周方向には拡がりを有する配光特性を有しており、特には問題はない。
【0067】
次にこのように構成された実施の形態の作用について図20を参照して説明する。図20は横軸に鉛直角をとり縦軸に光度をとって、航空障害灯の鉛直角方向の配光特性を示すグラフである。図20においては、基体1の鉛直角方向の所定位置を基準0度とし、鉛直上方側を正の符号、鉛直下方側を負の符号とし、光の鉛直角方向の配光方向を角度によって示している。なお、図20では説明を簡略化するために、全周方向の光度の平均的な値を示している。
【0068】
図20の特性81は灯仕の配光規格による配光特性を示している。これに対し本実施の形態においては、各発光ダイオード41L,41Rは、縦方向には上方向よりも下方向に拡がりを有する光を出射する。これにより、発光ダイオードユニット31からは、従来に比して、鉛直角方向には下方向に拡がりを有する光が出射される。結局、本実施の形態における配光特性は、図20の従来の特性90に比べて、ピーク位置が鉛直角方向下方にシフトした特性91に示すものとなる。
【0069】
特性91は、ピーク位置が鉛直下方側にシフトして、灯仕に基づく配光規格の特性81のピーク位置の中心近傍にピーク位置が位置する。これにより、本実施の形態においては、配光規格の特性81以上の光度を満足させながら、光度を十分に低下させることができる。
【0070】
このように本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の効果を有すると共に、基体に配置した各発光ダイオードについて、レンズ部に対してカップ部を鉛直角方向にシフトさせて、配光のピーク位置を鉛直下方にシフトさせたことにより、灯仕の鉛直角方向の配光規格を満足させながら、明るさを十分に低減させることができる。
【0071】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…基体、
2…上部灯体部、
3…下部灯体部、
10…航空障害灯、
12…点灯回路、
21…プレート取付部、
31…発光ダイオードユニット、
32…ユニットプレート、
41,41L,41R…発光ダイオード、
51…アノード、
52…カソード、
53…カップ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と;
表面に複数の発光ダイオードが配列され前記基体に取り付けられる発光ダイオードユニットと;
を具備し、
前記発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが相互に異なる;
ことを特徴とする航空障害灯。
【請求項2】
前記発光ダイオードは、
前記発光ダイオードユニットの表面に直交する方向よりも鉛直下方側に配光ピークが位置する配光特性を有する;
ことを特徴とする請求項1に記載の航空障害灯。
【請求項3】
前記発光ダイオードは、発光部とレンズ部とを有し;
前記レンズ部は、垂直方向と水平方向とで曲率半径が異なる;
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の航空障害灯。
【請求項4】
前記発光ダイオードは、発光部とレンズ部とを有し;
前記発光部の中心と前記レンズ部の中心とは、垂直方向に偏位している;
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の航空障害灯。
【請求項5】
前記発光ダイオードは、
アノードとカソードとを結ぶ直線の方向を垂直方向に沿う方向となるように配置される;
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の航空障害灯。
【請求項1】
基体と;
表面に複数の発光ダイオードが配列され前記基体に取り付けられる発光ダイオードユニットと;
を具備し、
前記発光ダイオードは、鉛直角方向の配光の拡がりと水平方向の配光の拡がりとが相互に異なる;
ことを特徴とする航空障害灯。
【請求項2】
前記発光ダイオードは、
前記発光ダイオードユニットの表面に直交する方向よりも鉛直下方側に配光ピークが位置する配光特性を有する;
ことを特徴とする請求項1に記載の航空障害灯。
【請求項3】
前記発光ダイオードは、発光部とレンズ部とを有し;
前記レンズ部は、垂直方向と水平方向とで曲率半径が異なる;
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の航空障害灯。
【請求項4】
前記発光ダイオードは、発光部とレンズ部とを有し;
前記発光部の中心と前記レンズ部の中心とは、垂直方向に偏位している;
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の航空障害灯。
【請求項5】
前記発光ダイオードは、
アノードとカソードとを結ぶ直線の方向を垂直方向に沿う方向となるように配置される;
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の航空障害灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−204433(P2011−204433A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69803(P2010−69803)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】
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