説明

色補正情報を備えたレンズ

【目的】撮影レンズなどの光学素子を介してカラー画像を記録するときに、記録後の色を記録前の色と一致させるために必要な情報を撮影レンズ側に持たせて色補正を容易にし、正確な色の再現可能にすること。
【構成】撮影レンズ11に、その撮影レンズ11によって形成した記録物の像の色を、肉眼で知覚されるその記録物の色に一致させるために必要な色補正情報として、その撮影レンズ11の分光透過率データまたはその撮影レンズ11による、RGBWの色度座標値の変化量データを記憶した色補正情報メモリ13を備えた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、レンズを通る前の光と通った後の光の色に関する情報を備えた、例えばディジタルカメラの撮影レンズに適したレンズに関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】近年、画像をディジタル画像信号として記録する手段が広まっている。ディジタル画像記録において、人間が肉眼で見た色と同じ色を、ディスプレイや、印刷した紙などに再現することの重要性が増加してきた。ディジタル画像の記録手段としては、例えばCCD 撮像素子などで撮像して電気的画像信号に変換して、磁気テープなどに磁気信号として記録し、ディスプレイに表示し、あるいはカラープリンターで紙に印刷する、コピーするなどの手段がある。いずれの場合も画像データは、レンズを介して形成された光学像をアナログまたはディジタル画像信号に変換して取り込み、メモリしている。
【0003】撮影レンズは完全な無色透明ではなく、レンズの素材は固有の色(固有の分光透過率)を有し、コーティングによっても分光透過率が変化する(図2参照)。したがって、人間が撮影レンズを通して見た色彩(色)と、撮影レンズを通さずに肉眼で見た色彩(色)とは異なる。そのため、撮影レンズを通さずに肉眼で見た色と同じ色、色彩(以下「True Color」(トゥルーカラー)という。)を、撮影レンズを通して形成した像を変換し画像信号で再現するためには、画像信号を補正する必要がある。
【0004】しかし、従来は、撮影レンズによって形成された被記録物の像を画像信号に変換して記録媒体に記録するが、その撮影レンズによって色彩がどのように変わったか、といったデータは無かった。そのため、一旦記録したディジタル画像信号を記録媒体から読み出して、ディスプレイに表示して表示したものと被記録物とを、あるいは印刷して印刷物と被記録物とを直接比較して補正するなどの方法しかなかった。
【0005】
【発明の目的】本発明は、撮影レンズなどの光学系を介してカラー画像を記録するときに、記録後の色を記録前の色と一致させるために必要な情報をレンズに持たせることで、原稿と記録画像データの色彩の一致度を高め、また色彩の補正を容易にすること、を目的とする。
【0006】
【発明の概要】この目的を達成する本発明は、レンズに、そのレンズによって形成した記録物の像の色を、肉眼で知覚されるその記録物の色に一致させるために必要な色補正情報を記憶した記憶手段を備えたこと、に特徴を有する色補正情報を備えたレンズである。色補正情報としては、そのレンズの分光透過率データ、あるいは、そのレンズによる、RGBW(赤、緑、青、白)の色度座標値、あるいは基準値からの変化量を使用する。この色補正情報を備えたレンズは、例えば、撮影レンズによって形成された像をディジタル画像データに変換する撮像手段と、そのディジタル画像データを記録媒体に記録する記録手段を備えたディジタルカメラに着脱可能な撮影レンズとして使用できる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明を説明する。図1は、本発明を適用した撮影レンズを使用するディジタルカメラの一実施の形態のブロック回路図である。このディジタルカメラは、カメラボディ21およびこのカメラボディ21に着脱可能な撮影レンズ11を備えている。撮影レンズ11は、この撮影レンズ11によって撮影した場合の色補正情報を書込んだ色補正情報メモリ13を備えている。
【0008】本実施の形態における色補正情報は、被写体(物体)を、撮影レンズ11で結像したときの被写体像の色を、理想的な撮影レンズで形成された被写体像の色に一致させるために必要な情報としてある。例えば、被写体像の色を光の三原色RGB(赤、緑、青)に分解し、CIE色度座標値に変換して、撮影レンズ11を介して見たときの物体の色彩を、裸眼で見たときの物体の色彩と一致させるために必要なRGBW色度座標補正値を色補正情報とし、色補正情報メモリ13に書込む。
【0009】被写体像は、撮影レンズ11によってCCD撮像素子23の受光面に形成される。CCD撮像素子23は、R、G、B(赤色、緑色、青色)光に感度を有する3個の光電変換素子を1画素として、マトリックス状に規則的に繰り返し配置された多数の画素を備えている。そしてCCD撮像素子23は、撮像時には、各光電変換素子によって被写体像の各色成分を積分し、各積分値をR、G、B色信号として出力する。
【0010】CCD撮像素子23は通常、分光感度分布を有する。CCD撮像素子23がRGBフィルタを有する場合、R、G、Bフィルタの分光透過特性は、例えば図3に示すようになる。そこで、CCD撮像素子23がRGBフィルタを有する場合のRGBの色度座標値を、予めCCD撮像素子23のRGB画素出力に基づいて測定し、メモリしておくことで、その後の演算を簡略化できる。本実施例では、CCD撮像素子23の各R、G、B画素の分光感度情報として、R、G、B色度座標値およびW色度座標値をそれぞれ、CCD色成分情報メモリ35に書込んである。ここで、撮影レンズ11の色補正情報メモリ13に撮影レンズ11の色度座標値あるいは撮影レンズ11による色度座標値の変化量を書込んであれば、CCD色成分情報メモリ35には、R、G、B、W色度座標値を書込んでおけばよい。
【0011】CCD撮像素子23が出力するアナログのR、G、B色信号は、A/D 変換回路25で、それぞれ、例えば8ビットのディジタル信号に変換されて、画像メモリ27に順次書込まれる。1ライン分(1フィールド分または1フレーム分)のR、G、B色信号の書込みが終了すると、順次、画像メモリ27から読み出され、画像フォーマット回路29において所定の画像フォーマット、例えばTIFF(Tag Image File Format) に変換され、R、G、B色信号としてメモリカード31に書込まれる。メモリカード31には、フラッシュメモリ、SRAMなどが使用される。
【0012】色補正情報メモリ13に書込まれているR、G、B、W色度座標値は、図示しないが入出力インターフェースなどを介して、カメラボディ21の色度座標値生成回路33に読み込まれる。色度座標値生成回路33は、CCD色成分情報メモリ35から、CCD撮像素子23のR、G、B、W色度座標値を読み込み、これらのR、G、B、W色度座標値に基づいて、このディジタルカメラの撮像系のR、G、B、W色度座標値を演算する。そして、CCD撮像素子23が出力したR、G、B色信号をA/D 変換したディジタル画像データおよび撮像系のR、G、B、W色度座標値をメモリカード31に書込む。
【0013】R、G、B、W色度座標値は、通常、各フレームまたはフィールドの画像データを記録する毎にその画像データに対応させて記録するが、メモリカード31がディジタルカメラ21に装着されたとき、あるいは最初の画像データ記録時に1回だけ色補正情報を記録することも可能である。
【0014】カメラボディ21のCCD撮像素子23、A/D 変換回路25、画像メモリ27、画像フォーマット回路29、メモリカード31、色度座標値生成回路33の動作は、システムコントローラ37によって制御される。
【0015】このメモリカード31は、カメラボディ21から取り外され、図示しない画像処理装置の読出装置に装着される。画像処理装置は、メモリカード31から、RGB画像データおよびR、G、B、W色度座標情報を読み出して、RGB画像データを補正する。この補正によって、人間が肉眼で見たものと同じ色彩の画像データを再現できる。
【0016】本発明の実施の形態のディジタルスチルカメラによると、被写体、被記録物体として、平面的な原稿、あるいは立体的な物体をCCD撮像素子23によって撮像し、ディジタル画像データに変換する場合、最終的な色補正データとして、例えば、CIE色度図に基づくR、G、B三原色の色度座標値と、白色(W)の色度座標値を使用できる。
【0017】また、銀塩フィルムを使用する場合、例えば、近年発表された規格APSなどのように、フィルムの磁気記録層にデータを記録できる場合は、磁気記録層にR、G、B、W色度座標補正値を記録すれば、フィルムスキャナーで取り込み、ディジタル画像データに変換する際にR、G、B、W色度座標値を読み出して利用することで、True Colorを実現できる。
【0018】以上は、本発明をディジタルスチルカメラに適用した第一の実施の形態であるが、色補正情報およびその演算についてより具体的に説明する。ディジタル画像データの一般的なフォーマットの一つであるTIFFに適用した場合について説明する。CCD撮像素子23のある一画素(R、G、B画素)のディジタル画像データを、P(r,g,b)と表わす。r、g、bはそれぞれ赤色、緑色、青色の輝度であって、一般に、いわゆる24ビットフルカラーでは、r、g、bそれぞれの色が256階調(8ビット)に変換される。R、G、B(赤、緑、青)の色度座標値のデフォルトは設定されていないが、テレビジョンの規格であるNTSC(またはPAL 、SECAM )の色度座標値に従う場合が多いので、NTSCの色度座標値をデフォルトとする。このNTSCに基づくデフォルトのr、g、bの各色度座標値は、次の通りである。
r(0.67, 0.33)、 g(0.21, 0.71)、 b(0.14, 0.08)
【0019】また、白(W)は、輝度値では、P(255, 255, 255 )の色のことであるが、NTSCに基づく色度座標値では、W(0.310, 0.316)となる。この色度座標値W(0.310, 0.316)の特性を持つ光源を、C光源とする。
【0020】本実施の形態では、図5に示すように、C光源41で均一の分光反射率ρ(λ)の被写体43を照射して、撮影レンズ11が形成した被写体43の像をCCD撮像素子23で撮像し、CCD撮像素子23が出力する各R、G、B画素信号の色度座標値を測定する。そして、基準色度座標値(基準色情報)と測定色度座標値とに基づいて、色度座標値補正データ(例えば差)を求める。この色度座標値補正データおよび基準色度座標値を、CCD色成分情報メモリ35に色補正情報として書込む。この実施の形態の色度座標値補正データは、撮影レンズ11からCCD撮像素子23までの撮像系の色補正情報を含むが、先に説明した実施の形態のように、撮影レンズ11およびCCD撮像素子23それぞれの色度座標値補正データを求めてそれぞれのメモリ13、35に記憶しておいてもよい。
【0021】そして、撮影レンズ11によって撮像し、CCD撮像素子23が出力したR、G、B画像データを、CCD色成分情報メモリ35から読み込んだ色度座標値補正データと共にメモリカード31に書込む。また、撮影レンズ11によって撮像し、CCD撮像素子23が出力したR、G、B画像データを、CCD色成分情報メモリ35から読み込んだ色度座標値補正データに基づいて補正し、補正後のR、G、B画像データを、基準色度座標値と共にメモリカード31に書込む。
【0022】以下、より具体的に、色度座標値の演算方法について説明する。C光源41の分光分布をS(λ)とする(図4参照)。ただし、λは波長(nm)である。さらに、C光源41で照射する被写体43(記録物体)の分光反射率をρ(λ)とし、撮影レンズ11の分光透過率をL(λ)とすると、C光源41で照射された被写体43をCCD撮像素子23で撮像するときの分光分布W(λ)は、W(λ)=S(λ)・ρ(λ)・e(λ)
となる。なお、ここで使用する被写体43には、全波長域で反射率が一定のものを使用する。
【0023】分光感度e(λ)は、R、G、Bそれぞれで相違するので、分光感度e(λ)を各色成分er (λ)、eg (λ)、eb (λ)で分けて、各色成分er (λ)、eg (λ)、eb (λ)を波長で積分する。
R=∫S(λ)・ρ(λ)・er (λ)dλG=∫S(λ)・ρ(λ)・eg (λ)dλB=∫S(λ)・ρ(λ)・eb (λ)dλ
【0024】次に、積分したR、G、B各色の色度座標値を求めるが、xyz系座標値に変換するために、スペクトル三刺激値 ~x(λ)、 ~y(λ)、 ~z(λ)を用いると、Rの色度座標X、Y、Z値は下記式によって求まる。
r =∫R(λ)・ ~x(λ)dλYr =∫R(λ)・ ~y(λ)dλZr =∫R(λ)・ ~z(λ)dλここで、Rの分光分布R(λ)は、 R(λ)=S(λ)・ρ(λ)・er (λ) 1-1 である。同様にG、Bの分光分布G(λ)、B(λ)は、下記式のようになる。
G(λ)=S(λ)・ρ(λ)・eg (λ) 1-2 B(λ)=S(λ)・ρ(λ)・eb (λ) 1-3
【0025】以上のR、G、Bの分光分布式1-1 から1-3 から、R、G、Bの色度座標値x、yは、次のように求まる。
r =Xr /(Xr +Yr +Zr ) 1-4 yr =Yr /(Xr +Yr +Zr ) 1-5 xg =Xg /(Xg +Yg +Zg ) 1-6 yg =Yg /(Xg +Yg +Zg ) 1-7 xb =Xb /(Xb +Yb +Zb ) 1-8 yb =Yb /(Xb +Yb +Zb ) 1-9
【0026】W(白色)は、R、G、Bに一定の補正係数R′、G′、B′を掛けて合成したものが、C光源41の色温度座標値と同一になるように補正係数R′、G′、B′を調整する。Wについての色度座標値XW 、YW 、ZW は、次のようになる。
w =∫(R′(R(λ)+G′G(λ)+B′B(λ))・ ~x(λ))dλ =R′Xr +G′Xg +B′Xb 1-10Yw =R′Yr +G′Yg +B′Yb 1-11Zw =R′Zr +G′Zg +B′Zb 1-12したがって、xw 、yw は、次の通り求めることができる。
w =Xw /(Xw +Yw +Zw )=0.310 1-13yw =Yw /(Xw +Yw +Zw )=0.316 1−14
【0027】上記1−13式および1-14式を満足する補正係数R′、G′、B′によって、CCD撮像素子23の各RGB色信号のゲインをコントロールすることで、True Colorが実現できる。
【0028】以上の式は理想的な撮影レンズの場合であり、実際の撮影レンズ11の分光透過率L(λ)を考慮していない。式1-1 から1-12に、撮影レンズ11の分光透過率L(λ)を加えたものを、右肩にLを付して表わすと、下記の通りになる。
L (λ)=S(λ)・ρ(λ)・L(λ)・er (λ) 2-1 GL (λ)=S(λ)・ρ(λ)・L(λ)・eg (λ) 2-2 BL (λ)=S(λ)・ρ(λ)・L(λ)・eb (λ) 2-3
【0029】
rL=XrL/(XrL+YrL+ZrL) 2-4 yrL=YrL/(XrL+YrL+ZrL) 2-5 xgL=XgL/(XgL+YgL+ZgL) 2-6 ygL=YgL/(XgL+YgL+ZgL) 2-7 xbL=XbL/(XbL+YbL+ZbL) 2-8 ybL=YbL/(XbL+YbL+ZbL) 2-9
【0030】
wL=R′XrL+G′XgL+B′XbL 2-10 YwL=R′YrL+G′YgL+B′YbL 2-11 ZwL=R′ZrL+G′ZgL+B′ZbL 2-12よって、xwL、ywLは、下記式によって求められる。
wL=XwL/(XwL+YwL+ZwL) 2-13 ywL=YwL/(XwL+YwL+ZwL) 2-14
【0031】式1-1〜1-14は、撮影レンズに依存しないカメラ固有のものなので、例えば、式1-1 〜1-3 をカメラボディ21のメモリ(CCD色成分情報メモリ35)に書込んでおく。そして、R、G、B各波長における分光透過率L(λ)データを撮影レンズ11のメモリ(色補正情報メモリ13)に書込んでおけば、演算手段(システムコントローラ37)は、これらのデータによって式1-1 〜1-14、2-1〜2-14の演算が可能になり、True Colorを実現できる。
【0032】また、撮影レンズを装着しないときに対する、撮影レンズ11を装着したときの差分色度座標値をΔx、Δyとすると、式1-4 〜1-9 、1-13、1-14、式2-4 〜2-9 、2-13、2-14から、R、G、B、Wの各差分色度座標値は、次の通り求められる。
Δxr =XrL/(XrL+YrL+ZrL)−Xr /(Xr +Yr +Zr
Δyr =YrL/(XrL+YrL+ZrL)−Yr /(Xr +Yr +Zr
Δxg =XgL/(XgL+YgL+ZgL)−Xg /(Xg +Yg +Zg
Δyg =YgL/(XgL+YgL+ZgL)−Yg /(Xg +Yg +Zg
Δxb =XbL/(XbL+YbL+ZbL)−Xb /(Xb +Yb +Zb
Δyb =YbL/(XbL+YbL+ZbL)−Yb /(Xb +Yb +Zb
Δxw =XwL/(XwL+YwL+ZwL)−Xw /(Xw +Yw +Zw
Δyw =YwL/(XwL+YwL+ZwL)−Yw /(Xw +Yw +Zw
【0033】これらの値は、CCD撮像素子23の分光透過率e(λ)に依存するので、CCD撮像素子23毎に分光透過率e(λ)を測定し、カメラボディのメモリ(CCD色成分情報メモリ35)に書込んでおくことで、カメラ毎に正確に色補正ができる。また、CCD撮像素子23の分光透過率e(λ)の個体間のばらつきが小さいときには、同一の分光透過率e(λ)を使用することも可能である。
【0034】以上の通り、本発明の実施の形態では、撮影光学系の色度座標値と撮像素子から出力されたディジタル画像データ(RGB画像データ)を、TIFF形式では、次の二態様でTIFF画像ファイルに書込む。
【0035】第1の態様では、撮影レンズ11のR、G、B、W色度座標値およびカメラボディ21のR、G、B、W色度座標値に基づいた撮像系の色度座標値を、CCD撮像素子23で撮像し、ディジタル信号に変換したR、G、B画像データ(R、G、B輝度データ)とともに、表1に示す態様で別個にメモリカードに書込む。この場合は、コンピュータなどの画像処理装置において、メモリカードから読み込んだR、G、B輝度データを、メモリカードから読み込んだ色度座標値に基づいて補正することで、True Colorを実現できる。
【表1】
撮像系の色度補正値 R=(0.69, 0.35) G=(0.20, 0.73) B=(0.16, 0.10) W=(0.320, 0.318) 補正しないR、G、B画像 R G B R G B R データ 100 027 014
【0036】第2の態様では、撮影レンズ11のR、G、B、W色度座標値およびカメラボディ21のR、G、B、W色度座標値に基づいた撮像系の色度座標値と、C光源によるデフォルトの色度座標値とによって、CCD撮像素子23でディジタル信号に変換したR、G、B画像データの色度座標値を基準色度座標値に基づくR、G、B画像データに変換して、変換後のR、G、B画像データ(R、G、B輝度データ)を、基準色度座標値とともに、表2に示した画像フォーマットでメモリカードに書込む。この場合は、コンピュータなどの画像処理装置において、メモリカードから読み込んだ補正後のR、G、B画像データを、メモリカードから読み込んだ基準色度座標値に基づいて変換することで、True Colorを実現できる。
【表2】
系の色度補正値 R=(0.67, 0.33) G=(0.21, 0.71) B=(0.14, 0.08) W=(0.310, 0.316) 補正後のR、G、B画像 R G B R G B R データ 103 029 011
【0037】以上の通り本実施の形態では、撮影レンズによって影響される色彩に関する情報を撮影レンズにメモリしたので、この撮影レンズの情報を利用することで、簡単にTrue Colorを実現できる。本発明の実施の形態では、TIFFフォーマットで記録する場合について説明したが、記録形式はこれに限定されない。また、本発明は、ディジタルビデオカメラ、スキャナなどに使用されるレンズ一般に適用できることはいうまでもない。
【0038】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り本発明は、レンズに、そのレンズによって形成した記録物の像の色を、肉眼で知覚されるその記録物の色に一致させるために必要な色補正情報を記憶した記憶手段を備えたので、レンズによって形成された像を画像信号に変換し、この画像信号を記録する際に色補正情報も記録するか、あるいは画像信号を色補正情報に基づいて補正してから記録することが可能になる。つまり、肉眼で見たその記録物の色と同じ色のその記録物の画像信号を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したディジタルスチルカメラの一実施の形態の主要部を示すブロック回路図である。
【図2】撮影レンズの分光透過率をグラフで示す図である。
【図3】CCD撮像素子のRGBフィルタの分光透過率を示す図である。
【図4】C光源の分光分布をグラフで示す図である。
【図5】本実施の形態のディジタルスチルカメラで、C光源で照射した物体を撮影する様子を示す図である。
【符号の説明】
11 撮影レンズ
13 色補正情報メモリ
23 CCD撮像素子
25 A/D 変換回路
27 画像メモリ
29 画像フォーマット回路
31 メモリカード
33 色度座標値生成回路
35 CCD色成分情報メモリ
37 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レンズに、そのレンズによって形成される記録物の像の色を、肉眼で知覚されるその記録物の色に一致させるために必要な色補正情報を記憶した記憶手段を備えたこと、を特徴とする色補正情報を備えたレンズ。
【請求項2】 前記色補正情報は、人間の視覚によって感知した色を、前記撮影レンズを通った光により再現できる色補正情報であること、を特徴とする請求項1に記載の色補正情報を備えたレンズ。
【請求項3】 前記色補正情報は、前記レンズの分光透過率データであること、を特徴とする請求項1に記載の色補正情報を備えたレンズ。
【請求項4】 前記色補正情報は、レンズの赤、緑、青および白の色度座標値であること、を特徴とする請求項1または2に記載の色補正情報を備えたレンズ。
【請求項5】 前記色補正情報は、光の赤、緑、青および白の色度座標値が、その撮影レンズを通ることによって変化する変化量であること、を特徴とする請求項1または2に記載の色補正情報を備えたレンズ。
【請求項6】 前記色補正情報は、肉眼で見た場合の物体のR、G、B、W(赤色、緑色、青色、白色)色度座標値と、そのレンズによって形成された前記物体像のR、G、B、W色度座標値との相違に関する情報であること、を特徴とする請求項1または2に記載の色補正情報を備えたレンズ。
【請求項7】 請求項1から6のいずれか一項に記載の色補正情報を備えたレンズは、撮影レンズによって形成された像をディジタル画像データに変換する撮像手段と、そのディジタル画像データを記録媒体に記録する記録手段を備えたディジタルカメラに着脱可能な撮影レンズであること、を特徴とする色補正情報を備えたレンズ。
【請求項8】 請求項7に記載の色補正情報を備えたレンズを撮影レンズとして着脱可能なディジタルカメラであって、このディジタルカメラは、撮影レンズによって形成された像をディジタル画像データに変換する撮像手段と、そのディジタル画像データを記録媒体に記録する記録手段を備えていることを特徴とするディジタルカメラ。
【請求項9】 請求項8に記載のディジタルカメラは、基準色情報に基づいて前記ディジタル画像データの色を補正する色補正情報を記憶した記憶手段を備え、前記ディジタル画像データとともに、前記撮影レンズの記憶手段から読み込んだ色補正情報および前記記憶手段から読み込んだ色補正情報に基づいた色補正データを前記記録媒体に書込むこと、を特徴とするディジタルカメラ。
【請求項10】 請求項8に記載のディジタルカメラは、基準色情報に基づいて前記ディジタル画像データの色を補正する色補正情報を記憶した記憶手段を備え、前記ディジタル画像データを、前記レンズの記憶手段から読み込んだ色補正情報および前記記憶手段から読み込んだ色補正情報に基づいて基準色情報に基づくディジタル画像データに変換し、変換したディジタル画像データおよび基準色情報を前記記録媒体に書込むこと、を特徴とするディジタルカメラ。
【請求項11】 請求項9または10に記載のディジタルカメラにおいて、前記基準色情報および色補正情報は、色度座標値であること、を特徴とするディジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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