説明

芝生の品質を向上させる殺菌剤組成物

【課題】芝草を裾腐れ病及び根腐れ病から保護する殺菌剤組成物を提供すること。
【解決手段】組成物は、(a)(i)亜リン酸のモノエステル塩(好ましくはエチル亜リン酸アルミニウム)と、(ii)亜リン酸またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩とから成るグループから選択された第一有効物質と、(b)ペンゾポルフィリン化合物とを有効物質として含む。好ましい組成物は、1重量部の第一有効物質と約0.01〜約0.1重量部のベンゾポルフィリン化合物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生の品質を向上させ、芝草の裾腐れ及び根腐れを防除する方法及び組成物に関するものであり、より特定的にはこのような目的に有用な相乗的な殺菌剤配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
裾腐れ病(crown rot)及び根腐れ病(root rot)は、芝草、特に、芝生、ゴルフ場、ナーセリー及びその他の景観構成用途で見られる非常に整備された芝草の深刻な病害である。現在使用されているこの病害の防除方法は完全に満足なものではなく、この病害に対処する新しい処理方法が常に要望されている。
【0003】
Horriereらの米国特許第4,698,334号及びHorriereらの米国特許第4,806,445号は、マンコゼブのような種々の接触性殺菌剤と配合した亜リン酸アルキルを主成分とする殺菌剤組成物を提案している。これらの組成物はブドウのベト病(mildew)の処理に有効である。Ducretらの米国特許第4,139,616号は、亜リン酸アルキルを主成分とする殺菌剤組成物を記載している。これらの参考文献はいずれも芝草の処理を目的とはしていない。
【0004】
Lucasの米国特許第5,336,661号は、亜リン酸のモノエステル塩とエチレンビスジチオカーバメート接触性殺菌剤との混合物から成る組成物を使用してベントグラス(bentgrass)の芝生の品質を向上させる方法を開示している。
【0005】
ゴルフ場経営には高品質の健康な芝草が必須である。従ってこの業界では、高品質の健康な芝草を提供するために、芝生の品質を向上させ芝草の裾腐れ病及び根腐れ病を防除する殺菌剤組成物の必要性が存続している。
【発明の開示】
【0006】
本発明の第一の目的は、芝草の品質を向上させ裾腐れ病及び根腐れ病から芝草を保護する殺菌剤組成物を提供することである。これらの組成物は、
(a)(i)式(I):
【0007】
【化5】

〔式中、
Rは炭素原子2〜4個を有するアルキル基であり、
Meはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウム原子であり、
nはMeの原子価に等しい1〜3の整数である〕で示される亜リン酸のモノエステル塩と、
(ii)亜リン酸またはそのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩とから成るグループから選択された第一有効物質と、
(b)ベンゾポルフィリン化合物との相乗的配合物から成る。
【0008】
本発明の第二の目的は、芝の品質を向上させ裾腐れ病及び根腐れ病から芝生を保護する方法を提供することである。該方法は、
(a)(i)前出の式(I)で示される亜リン酸のモノエステル塩と、
(ii)亜リン酸またはそのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩とから成るグループから選択された第一有効物質と、
(b)ベンゾポルフィリン化合物とを施用する処理から成る。
【0009】
該化合物は、芝の品質向上及び/または裾腐れ病及び根腐れ病から芝生を保護するのに有効な量で施用される。1のつ実施態様において、施用される有効物質は本質的にモノエステル塩とベンゾポルフィリン化合物とから成る。
【0010】
本発明の方法において有用なベンゾポルフィリン化合物の例は、置換及び未置換のベンゾポルフィリン及びその誘導体である。適当なベンゾポルフィリンとしては、テトラベンゾポルフィリン、アルキル置換ベンゾポルフィリン、ハロ置換ベンゾポルフィリン、などがある。1つの実施態様によれば、ベンゾポルフィリンは、式L−X−Lで示される配位錯体(coordination complex)であり、式中のX及びXは、各々がHであるか、または、XとXとが一緒に1つの遷移金属を表し、L、L、L及びLの各々は置換または未置換のイソインドール基であり、L、L、L及びLは互いに共有結合している。配位錯体の好適例においては、L、L、L及びLが一緒に式(II):
【0011】
【化6】

〔式中、a、b、c及びdの各々は独立に、正の整数0〜4から選択され、R、R、R及びRの各々は独立に、H、ハロゲン、C1−20の置換または未置換、飽和または不飽和、直鎖状、分枝状または環状のアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、オニウム、スルホニウム、スルフェート及びカルボキシレートから成るグループから選択される〕の配位子を形成する。
【0012】
本発明の上記及び他の特徴を以下の詳細な説明の項で詳しく説明する。
【0013】
発明の詳細な説明
本文に記載の方法及び組成物は、芝生の品質及び芝草の色を改善するために有用である。更に、本文に記載の方法及び組成物は、芝草の裾腐れ病及び根腐れ病を処理するために有用である。高温多湿の気候における芝草の品質低下を惹起する裾腐れ病及び根腐れ病は、環境上及び管理上の負荷の存在下でPythium種及びRhizoctonia種によって引き起こされることが明らかな複合病害である。
【0014】
第一有効物質は、亜リン酸のモノエステル塩と亜リン酸またはそのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩とから成るグループから選択される。前出の式(I)に与えられたような本発明を実施するために有用な亜リン酸のモノエステル塩は公知である。例えば、Ducretらの米国特許第4,139,616号、Horriereらの米国特許第4,698,334号、及び、Horriereらの米国特許第4,806,445号を参照するとよい(引用の全部の米国特許の記載内容は本発明に含まれるものとする)。その例としては、エチル亜リン酸カルシウム、エチル亜リン酸ナトリウム、エチル亜リン酸アルミニウム、イソプロピル亜リン酸マグネシウム、イソプロピル亜リン酸カルシウム、イソプロピル亜リン酸アルミニウム、エチル亜リン酸マグネシウム、イソブチル亜リン酸マグネシウム、sec−ブチル亜リン酸マグネシウム、イソブチル亜リン酸カルシウム、N−ブチル亜リン酸アルミニウム、sec−ブチル亜リン酸アルミニウム、イソブチル亜リン酸アルミニウムがある。エチル亜リン酸アルミニウム(アルミニウムトリス(O−エチルホスホナート)とも呼ばれる)が最も好ましい。
【0015】
あるいは、第一の有効物質は亜リン酸またはそのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩でもよい。適当なアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩としては例えば、亜リン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムの塩がある。通常はナトリウム、カリウム及びカルシウム塩または亜リン酸が好ましい。
【0016】
ベンゾポルフィリン化合物は、本発明の方法に有用なポルフィン化合物及びその誘導体の好ましいクラスである。有用なポルフィン化合物の例としては、置換及び未置換のポルフィン及びその誘導体がある。ポルフィンの適当な誘導体は、置換及び未置換のポルフィリンである。ポルフィリンは、テトラベンゾポルフィリン、アルキル置換ベンゾポルフィリン、ハロ置換ベンゾポルフィリンなどのようなベンゾポルフィリンでもよい。1つの実施態様によれば、ベンゾポルフィリンは、式L−X−Lで示される配位錯体であり、式中のX及びXは、各々がHを示すか、または、XとXとが一緒にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属から成るグループから選択される1つの金属を表し、L、L、L及びLの各々は置換または未置換のイソインドール基を示しており、 L、L、L及びLは(例えば、窒素原子または炭素原子、好ましくは窒素原子を介して)互いに共有結合している。これらが環構造、即ち−L−L−L−L−cyとして共有結合している〔式中、cyはLがLに共有結合していることを意味する〕ことは明らかであろう。好ましくは、XとXとが一緒に、IB族及びVIIIB族に属する1つの遷移金属を表している。L、L、L及びLによって表されるイソインドール基は未置換でもよく、または、各々が独立に、ハロゲン、C1−20の置換または未置換、飽和または不飽和、直鎖状、分枝状または環状のアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、オニウム、スルホニウム、スルフェート及びカルボキシレートから成るグループから選択された置換基によって1〜4回置換されていてもよい。
【0017】
−X−Lの配位錯体の好ましい実施態様においては、L、L、L及びLは一緒に、式(II):
【0018】
【化7】

〔式中、
a、b、c及びdの各々は独立に、正の整数0〜4から選択され、R、R、R及びRの各々は独立に、H、ハロゲン、C1−20の置換または未置換、飽和または不飽和、直鎖状、分枝状または環状のアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、オニウム、スルホニウム、スルフェート及びカルボキシレートから成るグループから選択される〕の配位子を形成している。
【0019】
配位錯体L−X−Lから成るベンゾポルフィリンの好適例は、フタロシアニン染料である。適当なフタロシアニン染料は、無金属フタロシアニンでもよくまたは金属フタロシアニンでもよい。金属フタロシアニンの金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属から選択され得るが、遷移金属が好ましい。適当な金属の非限定例としては、アルカリ金属ファミリーのリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム;アルカリ土類金属ファミリーのベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウム;遷移金属ファミリーの銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金がある。本発明方法には銅、ニッケル、コバルト、鉄及び亜鉛のフタロシアニン染料が特に好ましい。
【0020】
本発明方法に有用なフタロシアニン染料は置換及び未置換の染料を含む。適当な置換フタロシアニン染料は、無金属フタロシアニンでもよくまたは金属フタロシアニンでもよく、各々のイソインドール基が独立に1〜4回置換されてもよい。フタロシアニン染料のイソインドール基の適当な置換基の非限定例としては、ハロゲン、置換または未置換、飽和または不飽和、直鎖状、分枝状または環状のアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、オニウム、スルホニウム、スルフェート及びカルボキシレートがある。適当なフタロシアニン染料は市販されており、その非限定例は、Pigment Blue 16、Vat Blue 29、Pigment Blue 15、Heliogen Green GG、Ingrain Blue 14、Ingrain Blue 5、Ingrain Blue 1、Pigment Green 37及びPigment Green 7である。1つの好ましい実施態様において、フタロシアニン染料はPigment Blue 15である。別の好ましい実施態様において、フタロシアニン染料は、Pigment Blue 15以外の任意のフタロシアニン染料である。
【0021】
上記の2種類の有効成分の相乗的組み合せ(本文中では以後、双方を併せて「有効物質」と呼ぶ)は一般に、1重量部の前出の式(I)の化合物と0.01〜0.1、好ましくは0.04〜0.05重量部のベンゾポルフィリン化合物との組合せである。より好ましくは、上記有効物質は、1重量部の前出の式(I)の化合物と、0.01〜0.1重量部のベンゾポルフィリン化合物との組合せを含む。特に好ましい組合せは、1重量部の前出の式(I)の化合物と0.04〜0.05重量部のPigment Blue 15と組合せである。
【0022】
本発明による相乗的配合物は、互いに混合して使用してもよく、または他の公知の殺菌剤と混合して使用してもよいという利点を有している。例えば、銅の塩基性塩または水酸化物(オキシクロリド、オキシスルフェート)、(テトラヒドロ)フタルイミド(キャプタン(Captan)、キャプタホル(Captafol)、ホルペル(Folpel))、メチル−1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンゾイミダゾールカーバメート(ベノミル(Benomyl))、ジメチル(1,2−フェニレン)ビス(イミノ−カルボノチオイル)ビス(カーバメート)(チオファネート−メチル(Thiophanate−methyl))のようなチオファネート、テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル(Chlorothalonil))、3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−(1−メチルエチル)−2,4−ジオキソ−1−イミダゾリジンカルボキサミド(イプロジオン(Iprodione))、1−〔2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル〕−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール(Propiconazole))、1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1(1H−1,2,4−トリアゾル−1−イル)−2−ブタノン(トリアジマホン(Triadimafon))または他の殺菌剤を、本発明化合物の作用範囲を補完するためまたはその作用を持続させるために本発明化合物と混合して使用し得る。
【0023】
本発明の相乗的配合物はまた、他の殺菌剤、他の抗ベト病(anti-midew)リン誘導体、特に2−ヒドロキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン、ベータ−ヒドロキシエチルホスファイト、及び、亜リン酸とその塩、などと混合してもよい。
【0024】
実際に施用する場合、相乗的配合物の活性成分は、原則として本発明の有効物質に加えて担体(support)及び/または界面活性剤を含有する配合製剤の一部として使用される。
【0025】
本発明の記載に使用される担体という用語は、植物、種子もしくは土壌に対する有効物質の施用または有効物質の運搬及び/または取扱いを容易にするために有効物質と併用する有機または無機、天然または合成の物質を意味する。担体は固体(クレー、天然または合成のシリケート、樹脂、ロウ、固体肥料)でもよく、または、流体(水、アルコール、ケトン、石油留分、塩素化炭化水素、液化ガス)でもよい。
【0026】
界面活性剤は、イオン性または非イオン性の乳化剤、分散剤または湿展剤でよく、例えば、ポリアクリル酸及びリグニンスルホン酸の塩、エチレンオキシドと脂肪アルコール、脂肪酸または脂肪アミンとの縮合物がある。
【0027】
本発明組成物は、水和剤、可溶性粉末、散粉用粉末、顆粒剤、液剤、乳剤、エマルジョン、懸濁剤、エアゾールの形態に調製され得る。
【0028】
本発明の水和剤は、20〜95重量%の有効物質を含有するように調製され得、通常は、固体担体に加えて、0〜5重量%の湿展剤と、3〜10重量%の分散剤とを含有し、必要な場合には、0〜10重量%の1種または複数の安定剤及び/または他の添加剤、例えば、浸透剤、接着剤または凝固防止剤(anti-lumping agent)、着色剤、などを含有している。
【0029】
水和剤の組成の一例を以下の表1に与える。
【0030】
【表1】

【0031】
水溶性粉末は、20〜95重量%の有効物質と、0〜10%の凝固防止剤と、残りの割合を構成する主として塩から成る水溶性充填剤とを混合することによって得られる。
【0032】
水溶性粉末の形態の本発明の組成物の一例を以下の表2に与える。
【0033】
【表2】

【0034】
例えば、本発明の水和剤または乳剤を水で希釈することによって得られた組成物である水性分散液及びエマルジョンは本発明の普遍的範囲に包含される。これらのエマルジョンは油中水型または水中油型のいずれでもよく、「マヨネーズ」のような濃厚なコンシステンシーを有していてもよい。
【0035】
本発明組成物は、例えば、保護コロイド、接着剤または増粘剤、揺変剤、安定剤または金属イオン封鎖剤のような他の成分、並びに、農薬特性を有することが判っている他の公知の有効物質、特に殺ダニ剤または殺虫剤を含有し得る。
【0036】
本発明は、寒地型芝草(cool season turfgrasses)及び暖地型芝草(warm season turfgrasses)を含むすべての芝草に実際に使用し得る。寒地型芝草の例は、ブルーグラス類(Poa L.)のケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis L.)、ラフブルーグラス(Poa trivialis L.)、カナダブルーブラス(Poa compressa L.)、アニュアルブルーグラス(Poa annua L.)、アップランドブルーグラス(Poa glaucantha Gaudin)、ウッドブルーグラス(Poa nemoralis L.)及びバルバスブルーグラス(Poa bulbosa L.);ベンドグラス及びレッドトップ類(Agrostis L.)のクリーピングベントグラス(Agrostis palustris Huds.)、コロニアルベントグラス(Agrostis tenius Sibth.)、ベルベットベントグラス(Agrostis canina L.)、サウスジャーマンミックスドベントグラス(Agrostis L.)及びレッドトップ(Agrostis alba L.);フェスキュー類(Festuca L.)のレッドフェスキュー(Festuca rubra L.)、チューイングフェスキュー(Festuca rubra var.commutata Gaud.)、シープフェスキュー(Festuca ovina L.)、ハードフェスキュー(Festuca ovina var.duriuscula L.Koch)、ヘヤーフェスキュー(Festuca capillata Lam.)、トールフェスキュー(Festuca arundinacea Schreb.)及びメドーフェスキュー(Festuca,elatior L.);ライグラス類(Lolium L.)のペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)及びイタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.);ウィートグラス類(Agropyron Gaertn.)のフェアーウェイウィートグラス(Agropyron cristatum (L.) Gaertn.)及びウエスタンウィートグラス(Agropyron smithii Rydb.)などである。他の寒地型芝草としては、ビーチグラス(Ammophila Host.)、スムースブローム(Bromus inermis Leyss.)、チモシー(Phleum L.)、オオチャードグラス(Dactylis glomerata L.)、クレステッドドッグステイル(Cynosurus cristatus L.)がある。暖地型芝草の例は、バーミューダグラス(Cynodon L.C.Rich)、ゾイシアグラス(Zoysia Willd.)、セイントオーガスチングラス(Stenotaphrum secundatum (Walt.) Kuntze)、センチペドグラス(Eremochloa ophuroides (Munro.) Hack.)、カーペットグラス(Axonopus Beauv.)、バヒアグラス(Paspalum notatum Flugge.)、キクユグラス(Pennisetum clandestinum Hochst. ex Chiov.)、バッファローグラス(Buchloe dactyloides (Nutt.) Engelm.)、ブルーグラマ(Bouteloua gracilis (H.B.K.) Lag. ex Steud.)及びサイドオーツグラマ(Bouteloua curtipendula (Michx.Torr.))である。寒地型芝草が好ましい。ブルーグラス、ベントグラス及びレッドトップ、フェスキュー、並びにライグラスがより好ましい。ベントグラスが最も好ましい。
【0037】
一般には、有効物質の液体製剤(例えば、エマルジョンのような水性製剤または油基剤の製剤)を芝草に噴霧することによって複数の有効物質を一緒にまたは個別に芝草に施用する。エチレンビスジチオカーバメートから成る接触性殺菌剤は典型的には、1エーカーあたり10〜25ポンド(1ヘクタールあたり約10〜25kg)の量、より好ましくは1エーカーあたり15〜20ポンド(1ヘクタールあたり約15〜20kg)の量、更に好ましくは1エーカーあたり17〜18ポンド(1ヘクタールあたり約17〜18kg)の量で施用される。一般には式(I)の化合物を1エーカーあたり約5〜17ポンドの量で施用する。
【0038】
本発明を説明するためにいくつかの実施例を以下に例示するが、本発明がこれらの実施例に限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0039】
実施例1〜3
これらの実施例は、芝の品質及び色を改善し、裾腐れ病及び根腐れ病、並びにブラウンパッチ(brown patch)に対して活性を有する殺菌剤及びその配合物を同定するために行った。米国、北カロライナ州、ラレー(Raleigh,North Carolina,USA)でベントグラスの品種“Penncross”の一年目の立毛に対して殺菌剤の効果を試験した。ベントグラスを現地土壌に植付け、草高0.635cm(0.25インチ)に刈り込んでゴルフグリーンと同様の条件下に維持した。Pythium種に対する活性を有 する殺菌剤は、Grace−Sierraから得られるKOBANTM(登録商標)(有効成分:エトリジアゾール)、Rhone−Poulencから得られるALIETTETM(登録商標)(有効成分:ホセチル−Al)、及び、Ciba−Giegyから得られるSUBDUETM(登録商標)(有効成分:メタラキシル)である。Pythium種及びRhizoctonia種に対する活性を有する殺菌剤は、Rhom and Haasから得られるFORETM(登録商標)(有効成分:マンコゼブ、Pigment Blue 15も含有)、DuPontから得られるMANZATETM(登録商標)(有効成 分:マンコゼブ)、Lescoから得られるLESCO MN80TM(登録商標)(有効成分:マンコゼブ)、Elf Atochemから得られるPENCOZEB DF75TM(登録商標)(有効成分:マンコゼブ)、W.A.Clearyから得られるPROTECT DG 80TM(登録商標)(有効成分:マンコゼブ)、及び、Rhom and Haasから得られるDITHANETM(登録商標)(有効成分:マンコゼブ)である。
【0040】
裾腐れ及び根腐れによる芝生の品質低下の徴候が現れる前にベントグラスの1.5m×1.5m(5フィート×5フィート)の試験区に表示量の殺菌剤を個別または一緒に施用した。TEEJETTM(登録商標)8004ノズルを用いて(30ポンドpsiで)殺菌剤処理を行うために、背負い型CO噴霧器を使用し、93平方メートル(1000平方フィート)あたり9.5リットル(2.5ガロン)の割合で殺菌剤希釈液を施用した。殺菌剤を最初に施用し、次いで14日後に再度施用した。いくつかの実験では、Teejet 8004ノズルを用いて30psiでこの処理を行うために電気ポンプ噴霧器を使用した。
【0041】
芝生の理想的な品質及び色を等級9とし芝生が全て枯死した状態を等級1とする1−9の9段階によって芝生の品質、色及び罹病率%を評価して毎週記録した。各試験区でブラウンパッチの症状を示した面積のパーセントに基づいて罹病率を計算した。芝生の品質及び色の等級は、ベントグラスの健康並びに裾腐れ及び根腐れに伴う損傷量の指標となる。試験期間中の実験でPythium種及びRhizoctonia種の菌類をベントグラスから単離した。
【0042】
以下の表1は、ALIETTETM(登録商標)+FORETM(登録商標)の施用(処理#4)によって芝生の品質及び色の改善が観察され、理想的な状態を9としたときに、芝生の品質については7.5及び芝生の色については7.8と評価が得られたことを示す。ALIETTETM(登録商標)+MANZATETM(登録商標)の配合物の評価は、芝生の品質6.8及び芝生の色7.0まで低下した。
【0043】
【表3】

【0044】
以下の表2は第二の試験でも同様の結果が観察されたことを示す。データは、ALIETTETM(登録商標)+FORETM(登録商標)(処理#8)を用いた場合に芝生の品質が7.8及び8.0を獲得し、ALIETTETM(登録商標)+マンコゼブ+AURAGREENTM(登録商標)(別の種類の緑色染料)(処理#5)を用いた場合の7.0及び7.3よりも優れていることを示す。ALIETTETM(登録商標)と青色顔料との実験用配合物(EXP10622)+マンコゼブの組合せ(処理#10)を用いた場合には芝生の品質が処理#5よりも高い評価の7.5及び8.0を獲得し、これはALIETTETM(登録商標)+FORETM(登録商標)と同等の高い評価であった。
【0045】
【表4】

【0046】
表3は、マンコゼブの種々の配合物の効果を示す比較試験である。マンコゼブ+Pigment Blue 15を含むFORETM(登録商標)のWP80TM(登録商標)及びFL4.0TM(登録商標)配合物は、Pigment Blue 15非含有の他のマンコゼブ配合物に比較して芝生の品質及び芝生の色の双方で優れた結果を与えた。ALIETTETM(登録商標)+FORETM(登録商標)FL4.0TM(登録商標)+BLENDEXTM(登録商標)(ブレンド剤)による処理#7は更に優れた結果を与えた。処理#7は処理#2よりも多い割合のPigment Blue 25を含んでいた。
【0047】
【表5】

【0048】
結局、Pigment Blue 15を含むALIETTETM(登録商標)+FORETM(登録商標)の配合物が、Pigment Blue 15を含まないALIETTETM(登録商標)とマンコゼブとの配合物よりも芝生の品質及び色の双方の改善に有効であることが判明した。これらの結果は、Pigment Blue 15の存在が、相乗的に相互作用するALIETTETM(登録商標)とマンコゼブとの活性増進に有効であることを証明する。
【0049】
上記は本発明の単なる例示であり、本発明を制限すると解釈されてはならない。本発明は請求の範囲によって定義されており、請求の範囲に等価の概念は本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝草の芝生としての品質を向上させる方法において、
(a)(i)式(I):
【化1】

〔式中、
Rは炭素原子2〜4個を有するアルキル基であり、
Meはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウム原子であり、
nはMeの原子価に等しい1〜3の整数である〕で示される亜リン酸のモノエステル塩;及び
(ii)亜リン酸またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
から成るグループから選択された1重量部の第一有効物質;並びに
(b)0.01〜0.1重量部のベンゾポルフィリン化合物;を芝生の品質向上に有効な量で芝草に施用することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ベンゾポルフィリン化合物がテトラベンゾポルフィリン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベンゾポルフィリン化合物が、式L−X−L〔式中、X及びXは、各々がHであるか、または、XとXとが一緒に1つの遷移金属を表し、L、L、L及びLの各々は置換または未置換のイソインドール基であり、L、L、L及びLは互いに共有結合している〕で示される配位錯体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベンゾポルフィリン化合物が、式L−X−L〔式中、X及びXは、各々がHであるか、または、XとXとが一緒に1つの遷移金属を表し、L、L、L及びLが一緒に式(II):
【化2】

{式中、a、b、c及びdの各々は独立に、正の整数0〜4から選択され、R、R、R及びRの各々は独立に、H、ハロ、C1−20の置換または未置換、飽和または不飽和、直鎖状、分枝状または環状のアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、オニウム、スルホニウム、スルフェート及びカルボキシレートから成るグループから選択される}の配位子を形成している〕で示される配位錯体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ベンゾポルフィリン化合物がフタロシアニン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記施用段階が、1重量部の前記第一有効物質と0.05重量部の前記ベンゾポルフィリン化合物との施用から成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フタロシアニン化合物がPigment Blue 15であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記フタロシアニン化合物がPigment Blue 15でないことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記施用段階が、前記第一有効物質と前記ベンゾポルフィリン化合物とを共通担体中で一緒に前記芝草に施用することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記芝草がベントグラスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記芝草がバーミューダグラスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第一有効物質が1エーカーあたり約8〜約16ポンドの有効成分となる量で前記芝草に施用され、前記ベンゾポルフィリンが1エーカーあたり約0.2〜約0.8ポンドとなる量で前記芝草に施用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
本質的に、1エーカーあたり約8〜約16ポンドの有効成分となる量の前記第一有効物質と、1エーカーあたり約0.2〜約0.8ポンドとなる量の前記ベンゾポルフィリンとを前記芝草に施用することから成る請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(a)(i)式(I):
【化3】

〔式中、
Rは炭素原子2〜4個を有するアルキル基であり、
Meはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウム原子であり、
nはMeの原子価に等しい1〜3の整数である〕で示される亜リン酸のモノエステル塩;及び
(ii)亜リン酸またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;
から成るグループから選択された1重量部の第一有効物質;並びに
(b)0.01〜0.1重量部のベンゾポルフィリン化合物;から成る有効物質を含む、芝生の品質を向上させる殺菌剤組成物。
【請求項15】
前記ベンゾポルフィリン化合物がテトラベンゾポルフィリン化合物であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ベンゾポルフィリン化合物が、式L−X−L〔式中、X及びXは、各々がHであるか、または、XとXとが一緒に1つの遷移金属を表し、L、L、L及びLの各々は置換または未置換のイソインドール基であり、L、L、L及びLは互いに共有結合している〕で示される配位錯体であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記ベンゾポルフィリン化合物が、式L−X−L〔式中、X及びXは、各々がHであるか、または、XとXとが一緒に1つの遷移金属を表し、L、L、L及びLが一緒に式(II):
【化4】

{式中、a、b、c及びdの各々は独立に、正の整数0〜4から選択され、R、R、R及びRの各々は独立に、H、ハロ、C1−20の置換または未置換、飽和または不飽和、直鎖状、分枝状または環状のアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、オニウム、スルホニウム、スルフェート及びカルボキシレートから成るグループから選択される}の配位子を形成している〕で示される配位錯体であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記ベンゾポルフィリン化合物がフタロシアニン化合物であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記第一有効物質が前記亜リン酸モノエステル塩であり、Rが、エチル、プロピル及びブチルから成るグループから選択されることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
前記第一有効物質が前記亜リン酸モノエステル塩であり、Meがアルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びナトリウムから成るグループから選択されることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
a、b、c及びdの各々が0であり、X及びXがHであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
とXとが一緒に、IB族及びVIIIB族の遷移金属から成るグループから選択された1つの遷移金属を表すことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
とXとが一緒に、コバルト、銅、ニッケル、鉄及び亜鉛から成るグループから選択された1つの遷移金属を表すことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
とXとが一緒に、銅を表すことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
a、b、c及びdの各々が2であり、R、R、R及びRの各々がハロゲンであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項26】
a、b、c及びdの各々が4であり、R、R、R及びRの各々がハロゲンであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項27】
、R、R及びRの各々がオニウムであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項28】
、R、R及びRの各々がスルフェートであることを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項29】
a、b、c及びdの各々が0であり、XとXとが一緒に、銅を表すことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
【請求項30】
前記第一有効物質が前記亜リン酸モノエステル塩であり、前記式(I)の化合物が、エチル亜リン酸カルシウム、エチル亜リン酸ナトリウム、エチル亜リン酸アルミニウム、イソプロピル亜リン酸マグネシウム、イソプロピル亜リン酸カルシウム、イソプロピル亜リン酸アルミニウム、エチル亜リン酸マグネシウム、イソブチル亜リン酸マグネシウム、sec−ブチル亜リン酸マグネシウム、イソブチル亜リン酸カルシウム、N−ブチル亜リン酸アルミニウム、sec−ブチル亜リン酸アルミニウム及びイソブチル亜リン酸アルミニウムから成るグループから選択されることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項31】
前記第一有効物質が前記亜リン酸モノエステル塩であり、前記式(I)の化合物が、エチル亜リン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項32】
前記フタロシアニン化合物が、Pigment Blue 16、Vat Blue 29、Pigment Blue 15、Heliogen Green GG、Ingrain Blue 14、Ingrain Blue 5、Ingrain Blue 1、Pigment Green 37及びPigment Green 7から成るグループから選択されることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項33】
前記フタロシアニン化合物が、Pigment Blue 15であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項34】
前記フタロシアニン化合物が、Pigment Blue 15でないことを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項35】
1重量部の前記第一有効物質と約0.01〜約0.1重量部の前記ベンゾポルフィリン化合物とを含む請求項14に記載の組成物。
【請求項36】
本質的に1重量部の前記第一有効物質と約0.01〜約0.1重量部の前記ベンゾポルフィリン化合物とから成る請求項14に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が水性懸濁液であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が水和剤であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−213740(P2006−213740A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140563(P2006−140563)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【分割の表示】特願平8−531043の分割
【原出願日】平成8年4月1日(1996.4.1)
【出願人】(590001935)
【Fターム(参考)】