説明

芯違い量調整機構付き歯車箱吊り装置

【課題】鉄道車両用可撓継手に生じる芯違いは吊り装置ライナーを入替えることで正規位置に調整される。本調整は狭いピット線空間で作業者が吊り装置下部を分解しライナーを入替える煩雑で負荷の大きな作業となっている。また、調整代はライナー単位となっており、また十分な調整代を確保するためにライナーは複数枚必要となり吊り装置の部品点数増加の要因となっている。
【解決手段】歯車装置を台車に吊支した吊り装置において、歯車装置と吊り装置の接続にハードロックナットを2組用い、継手芯違いはこれを回すのみで正規位置に調整可能とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の動力伝達機構として車軸に設けられる歯車装置の吊り装置(垂直吊り方式)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用歯車装置と吊り装置は図2に示される。図2において、歯車装置Aと台車Bは吊り装置Dを介して接続されている。台車Bと吊り装置Dは、吊りボルト11、特殊ナット12、受金13、緩衝ゴム14およびゴム座15を用いて接続されている。吊りボルト11両端部にはおねじ加工が施されている。図2に示すように当おねじ部上端側に吊り装置構成部品および台車Bが組込まれる。吊りボルト11と台車Bは特殊ナット12を締付けることにより発生する締付け力によって、緩衝ゴム14に適切な圧縮力を付与することで固定される。一方歯車装置Aと吊り装置Dは、吊りボルト11、受金(下)16、緩衝ゴム(下)17、ゴム座(下)18、ライナー19および特殊ナット(下)20を用いて接続されている。図示していない主電動機軸と図示していない小歯車軸は、図示していない可撓継手を介して接続され、これによって車両走行時に発生する、主電動機軸中心aと小歯車軸中心bの芯違い(偏差)を吸収する。継手の許容芯違い量には限界があり、許容を超える継手芯違い量および回転時のアンバランスは継手の寿命を大幅に短縮し、場合によっては破損の原因となる。よって車両の検査時に合わせ定期的に継手芯違い量の調整作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−216877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両用台車および駆動装置は車両の走行にしたがい各部部品の磨耗、ばねおよびゴムのへたりが発生し、その影響から次第に継手芯違い量は大きくなる。継手芯違いは吊り装置下部に設けられたライナーのゴム座15またはゴム座19の上下の枚数を入替えることにより正規位置に調整される。しかし、継手は台車部に設置されることから、ピット線内の狭い空間での芯違い調整作業を強いられる。調整代はライナー単位となり、正規位置に調整するためにはライナーの煩雑な入換えを必要とし、その都度吊り装置下部構成部品を分解する必要があることから作業には熟練と時間を要する。さらに、十分な調整代を確保するためライナーは複数枚必要となり、吊り装置部品点数の増加を招く要因にもなっている。ライナーレスで芯違い調整可能な吊り装置を実現し、芯違い調整作業負荷を軽減することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1の発明によれば、車両用歯車装置の吊り装置において、前記歯車装置を前記吊り装置の吊りボルトに2組のハードロックナットを上下に組み合わせて接続することを特徴とする芯違い量調整機構付き歯車箱吊り装置で、継手芯違いはハードロックナットを回すのみで正規位置に調整することができる。
【発明の効果】
【0006】
おねじの中間位置においても緩み止め効果を有するハードロックナットを使用することで、ハードロックナットを回すのみで任意の位置において歯車装置と吊り装置の接続が可能となり、作業負荷の大きいライナー入替え作業を行うことなく継手芯違いを正規位置に調整することが可能となる。さらに任意の位置で接続が可能となることから調整の精密化も可能となる。また、吊り装置の構成部品点数削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例を示す歯車装置の側面図および吊り装置の断面図である。
【図2】従来の歯車装置の側面図および吊り装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明の一実施例を示す、歯車装置側面図および断面図である。
【実施例】
【0009】
図1において、台車Bと吊り装置Cは、吊りボルト1、特殊ナット2、受金(上)3、緩衝ゴム(上)4およびゴム座(上)5を用いて接続されている。吊りボルト1上端部にはおねじ加工が施されている。当おねじ部に吊り装置構成部品および台車Bが組込まれる。吊りボルト1と台車Bは特殊ナット2を締付けることにより発生する締付け力によって、緩衝ゴム(上)4に適切な圧縮力を付与することで固定される。一方歯車装置Aと吊り装置Cは、吊りボルト1、ハードロックナット(上)6、ハードロックナット(下)7、受金(下)8、緩衝ゴム(下)9およびゴム座(下)10を用いて接続されている。吊りボルト1は中間部および下端部におねじ加工が施されており、当おねじ部間に吊り装置構成部品6から10および歯車装置Aが組込まれる。吊りボルト1と歯車装置Aはハードロックナット(上)6およびハードロックナット(下)7を締付けることにより発生する締付け力によって、緩衝ゴム(下)9に適切な圧縮力を付与することで固定される。ハードロックナットはおねじの中間位置においても緩み止め効果を有することから、吊りボルト1のおねじ部の任意位置において歯車装置Aを固定することが可能となっている。
【0010】
継手芯違いを正規位置に調整する場合、ハードロックナット(上)6を回転させ緩め、次にハードロックナット(下)7を回転させ継手芯違いが正規位置となるよう、および緩衝ゴム9に適切な圧縮力を付与するよう調整する。従来の吊り装置のように、分解を伴う作業負荷の大きいライナーの入替え作業は必要なく、スパナを用いてハードロックナットを回転させるのみで継手芯違いを正規位置に調整することが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0011】
吊り装置にハードロックナットを2組組合せるライナーレス構造とすることにより、芯違い量調整はナットを回すのみで可能となることから作業の大幅な省力化が図れる。さらに、本構造を採用することにより、ライナー方式に比べ精密な芯違い量調整が可能となる。また、ライナーレスとすることで部品点数の削減が可能となり吊り装置自体の故障に対する信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0012】
1 吊りボルト
2 特殊ナット
3 受金(上)
4 緩衝ゴム(上)
5 ゴム座(上)
6 ハードロックナット(上)
7 ハードロックナット(下)
8 受金(下)
9 緩衝ゴム(下)
10 ゴム座(下)
11 吊りボルト
12 特殊ナット(上)
13 受金(上)
14 緩衝ゴム(上)
15 ゴム座(上)
16 受金(下)
17 緩衝ゴム(下)
18 ゴム座(下)
19 ライナー
20 特殊ナット(下)
A 歯車装置(歯車箱)
B 台車
C 吊り装置
D 吊り装置
a 主電動機軸中心
b 小歯車軸中心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用歯車装置を台車に吊支した吊り装置において、前記歯車装置を前記吊り装置の吊りボルトに2組のハードロックナットを上下に組み合わせて接続することを特徴とする芯違い量調整機構付き歯車箱吊り装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86709(P2013−86709A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230653(P2011−230653)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)