説明

苗植付作業機

【課題】従来の苗植付作業機は、左右に2つの苗供給装置設けているために、機体の左右幅が広くなって、機体の移動時における操縦操作性が悪くなる。このために、本発明では、苗植付作業機を機体幅の狭い操縦性の良い構成にすることを課題とする。
【解決手段】苗収容体55aを機体の前部から後方へ移動するようにした苗供給装置4を機体の前後方向に長く配置して設け、この苗供給装置4の後部に苗収容体55aから受け取った鉢苗Nを圃場に植え付ける苗植付け体25を配置し、前記苗供給装置4の側部に作業者用座席70L,70Rを配置した苗植付作業機の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付作業機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特開2006−180720号公報に記載の如く、二人の作業者が機体の左右に設けた作業者用座席に座って、機体の中央側に並設する左右の苗供給装置の苗収容体に苗を供給して植え付け作業を行う苗植付作業機が有る。
【0003】
この左右の苗供給装置は、機体中央の左右二箇所でそれぞれ複数の苗収容体が機体平面視で前後方向に長い長円状軌跡で周回移動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−180720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の苗植付作業機は、左右に2つの苗供給装置設けているために、機体の左右幅が広くなって、機体の移動時における操縦操作性が悪くなる。
このために、本発明では、苗植付作業機を機体幅の狭い操縦性の良い構成にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、苗収容体55aを機体の前部から後方へ移動するようにした苗供給装置4を機体の前後方向に長く配置して設け、この苗供給装置4の後部に苗収容体55aから受け取った鉢苗Nを圃場に植え付ける苗植付け体25を配置し、前記苗供給装置4の側部に作業者用座席70L,70Rを配置した苗植付作業機の構成とする。
【0007】
この構成で、機体を走行させて、機体の側部に設けた作業者用座席70L,70Rに座った作業者が苗供給装置4の苗収容55aに鉢苗Nを供給しながら植え付け作業を行う。
請求項2に記載の発明は、左右横方向に苗収容体55aを複数個並設した供給ベルト55で苗供給装置4を構成し、この苗供給装置4の後部に左右複数の苗植付け体25を配置したことを特徴とする請求項1に記載の苗植付作業機とした。
【0008】
この構成で、機体の側部に設けた作業者用座席70L,70Rに座った作業者が供給ベルト55の左右横方向に複数個設けた苗収容体55aに鉢苗Nを供給しながら機体を走行させて植え付け作業を行う。
【0009】
請求項3に記載の発明は、隣接する複数の苗収容体55aの横方向設置位置を前後に適宜ずらせて設け、この複数の苗収容体55aから択一的に鉢苗Nを苗植付け体25に受け渡すようにしたことを特徴とする請求項2に記載の苗植付作業機とした。
【0010】
この構成で、複数の苗収容体55aに供給された鉢苗Nが移送終端で苗植付け体25に受け渡されて順次植え付けられる。
請求項4に記載の発明は、隣接する苗収容体55aを移送方向にずらした間隔で供給ベルト55を間欠的に駆動したことを特徴とする請求項2に記載の苗植付作業機とした。
【0011】
この構成で、隣接する複数の苗収容体55aに供給された鉢苗Nが確実に苗植付け体25に受け渡されて順次植え付けられる。
請求項5に記載の発明は、供給ベルト55の内側に苗収容体55aの底部を受ける苗受け板58を設けて鉢苗Nを終端まで受ける構成にしたことを特徴とする請求項2に記載の苗植付作業機とした。
【0012】
この構成で、苗収容体55aに供給された鉢苗Nが苗受け板58で受けられて終端部から苗植付け体25に落下して受け渡される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明で、機体の前側から後方へ苗収容体55aを移動する苗供給装置4の側部に作業者用座席70L,70Rを配置した構成であるために、従来の苗収容体55aが機体左右方向に長い楕円状に周回する構成に比べて、機体の左右幅を狭く出来て、操縦操作性が良くなる。
【0014】
請求項2の発明で、苗供給装置4の側部に設ける作業者用座席70L,70Rに座った作業者がゆっくり後方へ移動する苗収容体55aに鉢苗Nを供給することで、複数の列で植え付け作業が行える。
【0015】
請求項3の発明で、作業者が鉢苗Nを苗収容体55aに供給する際に苗収容体55aが接近していても送り方向にずれているために既に供給した鉢苗Nと供給する鉢苗Nが重なり難く、供給作業が楽に行える。
【0016】
請求項4の発明で、隣接する複数の苗収容体55aに供給された鉢苗Nが確実に苗植付け体25に受け渡されて順次植え付けられる。
請求項5の発明で、複数の苗収容体55aのそれぞれ底部に開閉底板を設けた従来の構成よりも簡単な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】苗植付作業機の側面図である。
【図2】苗植付作業機の平面図である。
【図3】苗供給装置の一部拡大側断面図である。
【図4】苗供給装置を取り除いた苗植付作業機の平面図である。
【図5】苗植付け体の昇降リンク機構の側面図である。
【図6】苗植付け体の昇降リンク機構の背面図である。
【図7】コンテナ係止部材にコンテナを設置した状態を示す斜視図である。
【図8】作業者用座席の側面図である。
【図9】別実施例を示す苗植付作業機の平面図である。
【図10】別実施例を示す苗植付作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態としての乗用型4条植えの苗植付作業機を以下に説明する。この乗用型4条植えの苗植付作業機は、ビニールポットで育苗した大きな床土部を有したトマト等の鉢苗N(所謂、鉢苗N)を植えることができるものである。
【0019】
尚、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前という。そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側が左としている。
【0020】
苗植付作業機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体上の左右中央に苗供給装置4を設け、この苗供給装置4の後端下部に昇降リンク機構3により各々駆動されて昇降動作する苗植付け体25を設け、該苗植付け体25の下部を前後に二分割した前側苗植付け体25Fと後側苗植付け体25Rを開閉する構成としている。
【0021】
走行装置1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪6,6と、該後輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。
【0022】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分8aを有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分8aにエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。
【0023】
ミッションケース8の左右両側部に伝動ケース9,9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9,9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸18の先端が入り込んで伝動ケース9,9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端部側方に突出する車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。
【0024】
また、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆13の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド14で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0025】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、機体に対する圃場面高さを検出するセンサーSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて機体を圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する構成となっている。
【0026】
また、操縦ハンドル2の近傍に配置した変更操作具としての後輪上下動レバー19の人為操作によって油圧バルブVを手動で切替えて、左右後輪6,6を下動或いは上動させて、機体を上昇或は下降させる構成としている。即ち、後輪上下動レバー19の人為操作によって左右後輪6,6を下動させて機体を上昇させた時には、苗植付け体25は圃場面から上方に離れた位置となり、後輪上下動レバー19によって左右後輪6,6を上動させて機体を下降させてセンサーSを接地させ、センサーSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて機体が圃場面高さに対して設定高さになる苗植付け状態にした時には、苗植付け体25は圃場に鉢苗Nを植付ける状態になる。
【0027】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、左伝動ケース9が回動して左後輪6が上下動して機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出する振り子式の錘センサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成としている。
【0028】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム16の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸17,17に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【0029】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース8の後端部にボルトにて固定された横フレーム8bに前端部を固定した機体フレーム2bの後端部に取り付けている。機体フレーム2bは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0030】
苗供給装置4は、機体の左右中央で左右に設けるサイドフレーム54R,54Lに軸支する従動ローラ56と駆動ローラ57に供給ベルト55を巻き掛けた構成で、この供給ベルト55に横方向8個の苗収容体55aとしての苗受け穴を、隣接する隣接する苗収容体55a,55aが半ピッチずつ前後にずらした状態で全周面に形成している。
【0031】
そして、供給ベルト55の上側周回部分の内側に苗収容体55aの底部を受ける苗受け板58を設けている。この苗受け板58の後端側には左右に隣接する苗収容体55a,55aから落下する苗を受ける落下受け部55bが設けられており、該落下受け部55bにて受止められた苗が下方に案内されて後述する苗ガイド37内に各々落下供給される。
【0032】
供給ベルト55は、苗収容体55aの半ピッチずつ間欠的に後方へ駆動されるので、左右に隣接する苗収容体55a,55aは半ピッチずつ前後にずらしているために、供給ベルト55の駆動で送られる苗収容体55aの鉢苗Nが交互に苗ガイド37へ落下するようになる。
【0033】
なお、隣接する苗収容体55a,55aの配置は、1ピッチ或いは適宜ピッチでずらしても良く、その際に供給ベルト55はずらしたピッチ分で間欠駆動する。
苗植付け体25は、左右に設定間隔で四体並べて配備した四条植えの構成としている。
【0034】
四体の苗植付け体25,…は、機体フレーム2bに下部を固定した取付部材32の上部に装着した伝動ケース28の左右両側部に設けた上下動機構26,26に二体ずつ装着している。
【0035】
先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体25,…の前側苗植付け体25F,…の上部で後側にのびる左右のアーム部25Fa,25Fa…の後端部を後側の苗植付け体支持軸34に回動自在に取付け、後側苗植付け体25R,…の上部で前側にのびる左右のアーム部25Ra,25Ra…の前端部を前側の苗植付け体支持軸33に回動自在に取付け、前側苗植付け体25F,…のアーム部25Fa,25Fa…と後側苗植付け体25R,…のアーム部25Ra,25Ra…のそれぞれ前後中間部では、一方側のアーム部に設けた横方向のピン25a、25a…を他方側のアーム部に設けた左右方向の長孔25b,25b…に係合させている。前後の苗植付け体支持軸33,34の左右両端部は、連結部材35,35で連結している。
【0036】
そして、前後の苗植付け体支持軸33,34の左右中間部はそれぞれ苗ガイド連結部材36,36を介して、苗を苗植付け体25内に案内する筒状の苗ガイド37に連結している。更に、左右の苗ガイド37,37には、その左右間側に連結部材38,38を着脱自在に且つ一体的に装着していて、その連結部材38、38を介して、左右の苗ガイド37,37の左右間に配置した連結部材39,39と連結している。その連結部材39,39は、上下動機構26の上下の昇降リンク40a,40bの各先端部を上下に連結している。
【0037】
後側苗植付け体25R,…のアーム部25Ra,25Raが前側の苗植付け体支持軸33回りに上方に回動すると、前記ピン25a,25aによる連結によって前側苗植付け体25F,…のアーム部25Fa,25Faも連動して上方に回動し、よって、前側苗植付け体25F,…は、後側の苗植付け体支持軸34回りの回動によって前方に移動し、後側苗植付け体25R,…は、前側の苗植付け体支持軸33回りの回動によって後方に移動し、よって、苗植付け体25,…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。また、逆の動作によって、前後に開いた苗植付け体25,…の下部側は閉じる。
【0038】
前記苗ガイド37は、苗供給装置4から供給された苗を苗植付け体25内に案内する筒状体であり、上部には、苗供給装置4の落下口55bの下方に向ってのびる上部ガイド37aを設けている。これにより、苗植付け体25が苗供給装置4の落下口55b下方からずれて位置していても、苗供給装置4から落下供給される苗を適確に苗植付け体25内に供給することができる。
【0039】
苗植付け体25,…の上下動機構26は、伝動ケース28の左右両側部に設けている。具体的には、前記昇降リンク機構3の後端部の連結軸21に回動自在に装着した植付部フレーム12a上部に固着した伝動ケース28の左右側方に突出させた軸に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体25,…に連結した上側と下側の昇降リンク40a,40bと、伝動ケース28の側部から突出させた駆動回転する駆動軸41と、該駆動軸41の先端部に一端側を一体回転するように取付けた駆動アーム42と、該駆動アーム42の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク40aとに回動自在に連結する連動アーム42aとで構成している。
【0040】
そして、上側と下側の昇降リンク40a,40bの各後端部を前記苗植付け体支持軸33,34の左右中間部付近に取付けた連結部材39に回動自在に取付け、上側と下側の昇降リンク40a,40bと伝動ケース28と連結部材39とでリンク機構を形成するように設けている。従って、駆動軸41の回転により駆動アーム42が駆動回転すると、前記昇降リンク40a,40bが伝動ケース28の左右側部に設けた二つの軸40aS,40bSを回動中心に上下動して、左右の苗植付け体25,…が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0041】
また、この苗植付作業機では、苗植付け体25,…を昇降する上下動機構26を、第一軸40aS回りに昇降駆動される第一昇降リンク40aと、該第一昇降リンク40aの下側で第二軸40bS回りに昇降自在に設けた第二昇降リンク40bと、該第一昇降リンク40a及び第二昇降リンク40bの各先端部を連結する連結部材39とで構成し、該連結部材39と苗植付け体25,…を連結して苗植付け体25,…を昇降する構成とし、前記第一軸40aSを、伝動ケース28内の伝動機構を介して伝達された動力により回転駆動される回転軸40aRの先端部に偏芯状態で形成し、該回転軸40aRの回転によって回転軸40aRの軸芯を中心として偏芯量を半径として回転駆動される構成とし、前記第一昇降リンク40aの昇降駆動中に前記回転軸40aRが回転駆動することにより苗植付け体25をその昇降動中に前後に傾けるように構成している。
【0042】
そして、苗植付け体25,…の昇降軌跡上部側での上昇時の姿勢を、直立姿勢に対して下部が上部より後側になる前倒姿勢となるように設定している。
また、苗植付け体25,…の下降時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より前側になった後倒姿勢となるように設定し、下降下端位置で後倒姿勢から前倒姿勢に姿勢変更するように設け、前記苗植付け体25,…の上昇時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より後側になった前倒姿勢となるように設定している。
【0043】
苗植付け体25,…の開閉機構27は、後側苗植付け体25R,…の上部で後側にのびる開閉用アーム部25Rb,…の先端部を各苗植付け体25,…において設け、一方、上側の昇降リンク40aの基部を枢着している軸に回動自在に取付けた作動アーム44を設け、この作動アーム44の先端部を長さ調節可能な連結ロッド45で連結し、そして、作動アーム44が、駆動軸41の駆動回転中に、該駆動軸41に一体回転するよう取付けたカム46の作用を受けて、設定したタイミングで苗植付け体25,…に対して上昇動作するようにして構成している。
【0044】
これにより、駆動軸41が駆動回転して苗植付け体25,…が上下動すると、作動アーム44も苗植付け体25,…と共に上下回動し、そして、苗植付け体25,…の下降下端位置に達すると、カム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25,…に対して上昇動作し、これにより、後側苗植付け体25R,…が前側の苗植付け体支持軸33回りに回動して後方に移動し、また、これに連動して前側苗植付け体25F,…が後側の苗植付け体支持軸34回りに回動して前方に移動して、苗植付け体25,…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体25,…が上昇してカム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25,…に対して元の位置に下降動作して、前後に開いた苗植付け体25,…の下部側が閉じる。
【0045】
伝動ケース28を機体フレーム2bに取付ける取付部材32と、ミッションケース8と走行用の伝動ケース9,9の間に設けたアクスルケース9a,9aを支持する支持フレーム9b、9bとの間とを、支持フレーム32a,32aで連結し、伝動ケース28と苗植付装置3と苗供給装置4との支持強度を向上させている。
【0046】
苗供給装置4に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業が行えるよう、作業者が座る作業者用座席70L,70Rを設けている。具体的には、苗供給装置4の前側部の左外側近傍に左側の作業者用座席70Lを配置し、苗供給装置4の前側部の右外側近傍に右側の作業者用座席70Rを配置している。これらの座席70L,70Rの背凭れは、それぞれ機体の左右方向外側に位置するよう設けていて、その座席70L,70Rに座る作業者は、苗供給装置4の前側部に向って機体内側向き姿勢で着座して、苗供給装置4の前側部に対して苗補給作業を行う。
【0047】
また、左右の作業者用座席70L,70Rは、前輪7,7の車軸17,17位置より後側で且つ後輪6,6の車軸10,10位置より前側に位置させて配置している。更に、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップするように配置している。また、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で走行用の伝動ケース9,9の回動軸心の上方に配置しており、前輪7,7は、走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xより前側に配置した構成としている。
【0048】
作業者用座席70L,70Rは、図8に示す如く、座席支柱66の上端に固着した座席受67の前起立部67aに底部の取付片68をピン69で枢支して、90°回動して底面を前起立部67aに当接することで、背凭れを機体の内側に向けて倒すようにしている。
【0049】
この苗植付作業機は、左右の作業者用座席70L,70Rの各機体左右方向内側下方にステップ71L,71Rを設けている。このステップ71L,71Rは、機体側面視で作業者用座席70L,70Rの下方位置で前輪7,7の上方位置から後輪6,6の上方位置にわたって延設していて、作業者用座席70L,70Rの前側からでも後側からでも搭乗出来る。機体側面視で、ステップ71L,71Rの前側部分が前輪7,7の上方に位置し、ステップ71L,71Rの後端が後輪6,6真上までにするすることで、作業者が植付跡を確認出来るように設けている。
【0050】
このステップ71L,71Rは、後側をアクスルケース9a,9aの上部に取付け、前側を、バンパーフレーム91に内端部を固着したステップ支持フレーム92,92と、該ステップ支持フレーム92,92の外端部と固着した支持プレート9c,9cと一体のステップ支持プレート93,93との上に固定して取付けている。
【0051】
エンジン5の上方で苗供給装置4の前側には、苗置き台76を設けている。この苗置き台76は横スライド可能で、そのスライド空間に作業者用座席70L,70Rを斜め前方へ向けて取り付けて、作業者が一人でも植え付け作業を行えるようにしても良い。
【0052】
作業者用座席70L,70Rの前側近傍で前輪7,7の上方位置に、苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナC、Cを設置可能に設けている。本例では、プラスチック等で成形された箱状のコンテナCの両側部に形成された取手孔C1,C1の一方側に係合してコンテナCを支持するコンテナ係合部材94,94を設けて、これにより、コンテナC、Cを設置可能に設けていて、コンテナ支持部の構造が簡単なものとなり、且つ、コンテナを設置していないときにコンテナ支持部が大きな空間を占めず、機体のコンパクト化と軽量化、低コスト化が図れる。
【0053】
コンテナ支持の具体構成は、コンテナ係合部材94,94の上端部がクランク状に屈曲していて、その上端部をコンテナCの取手孔C1に外側から挿入してクランク状の屈曲部で取手孔C1が引っ掛かるようにすることで、コンテナCをコンテナ係合部材94に支持させることができる。また、コンテナ係合部材94は、連結フレーム73に固着している。
【0054】
50は覆土装置であって、各苗植付け体25によって圃場に植付けられた各々の鉢苗Nに対し各々左右から覆土し鎮圧する転動自在な左右覆土輪51を各々覆土輪支持フレーム52で回転自在に枢支して支持している(覆土装置50は、各苗植付け体25の後方位置に設けられている)。
【0055】
そして、覆土装置50の各々の左右覆土輪51の内側には該覆土輪51を支持する覆土輪支持フレーム52に固着した左右各々の苗巻き込み防止板53を設けている。該左右苗巻き込み防止板53は、ゴム製であり、苗植付け体25によって植え付けた各々の鉢苗Nが覆土輪51に干渉して巻き込まれるようなことを防止している。
【0056】
図9と図10には、苗供給装置4の別実施例を示している。
苗供給装置4は、苗収容体55aを前後に長い楕円状のループを描いて周回する構成として、前側の左右で供給された鉢苗Nを後方へ搬送して後端部で下方の苗植付け体25へ落下供給する。この苗供給装置4の前下側から苗収容体55aのループ軌跡の内側を通って後上方へコンテナCを移送するコンテナ搬送装置61を設けている。
【0057】
機体を走行させて、作業者用座席70L,70Rに座った作業者がコンテナ搬送装置61上を搬送されるコンテナCから鉢苗Nを取出して苗収容体55aに供給する作業を行うことで、植え付け作業が行える。
【0058】
なお、空のコンテナCは、コンテナ搬送装置61の終端からコンテナ受台62上へ落下して積み重ねられるので、回収作業が楽に行える。
次に、上記の乗用型2条植えの苗植付作業機を用いてハウス内でトマトの鉢苗Nを移植する作業について説明する。
【0059】
先ず、エンジン5を始動して、後輪上下動操作具Aを操作し、左右後輪6,6が最も下降した位置にして苗植付作業機の機体を上昇させ、左右後輪6,6を駆動回転させて機体を移動させハウス内の植付け開始位置まで機体を移動させる。次に、後輪上下動操作具Aによって左右後輪6,6を上動させて機体を下降させてセンサーSを接地させ、センサーSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて機体が圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する苗植付け状態にする。
【0060】
そして、中央安全ポール80の中央検知部82及び左右安全ポール84の左右検知部87の上端高さを座席70に着座した作業者の頭よりも若干高い位置に調節し、左右安全ポール84の検知部87の左右位置を機体の左右外側端よりも若干左右方向に突出した位置に調節する。
【0061】
また、苗置き台76にトマトの鉢苗Nを多数収納したコンテナCを各々載置し、作業者用座席70L,70Rの前外側にもコンテナCを載置する。
次に、作業者は苗供給装置4に向いて作業者用座席70L,70Rへ着座し、苗置き台76上に載置されたコンテナCのトマトの鉢苗Nを一つずつ苗収容体55aに入れ、左右後輪6,6を駆動回転させて機体を前進させると共に、苗植付け体25を作動させる。
【0062】
すると、供給ベルト55が後方へ移動して各苗植付け体25内にトマトの鉢苗Nが供給される。そして、最上昇位置にある他方の苗植付け体25が下動して圃場にトマトの鉢苗Nを植付ける。このようにして、作業者が順次苗置き台76上のコンテナCに載置されたトマトの鉢苗Nを一つずつ苗収容体55aに入れることにより、苗植付け体25がトマトの鉢苗Nを植付けることができる。
【0063】
この時、機体は、圃場表面に接地しているセンサーSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて圃場面高さに対して設定高さに維持された状態で前進し、苗植付け体25は適切に圃場にトマトの鉢苗Nを植付けることができる。
【0064】
そして、苗置き台76上のコンテナCトマトの鉢苗Nが残り少なくなった時には、作業者は作業者用座席70L,70R側部のコンテナCを取出して、苗置き台76上に載置して、苗移植作業を続行する。
【0065】
上記の苗移植作業時に、中央安全ポール80の中央検知部82及び左右安全ポール84の左右検知部87の上端高さを座席70に着座した作業者の頭よりも若干高い位置に調節し、左右安全ポール84の検知部87の左右位置を機体の左右外側端よりも若干左右方向に突出した位置に調節しているので、ハウス内での苗移植作業を行なうときに、該中央安全ポール80の中央検知部82又は左右安全ポール84の左右検知部87がハウス内の構造物(骨組み)に接当して撓んだ場合に、該撓みを検出して警報を鳴らして作業者に警告し、自動的に主クラッチを切って機体を停止して、作業者が該構造物(骨組み)に当たって怪我をすることや機体が柱などの構造物に接当して破損することを防止することができる。
【0066】
尚、本形態では苗植付け体25が前後に開いて鉢苗Nを植え付ける構成について説明したが、左右に開いて鉢苗Nを植え付ける苗植付け具を採用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
N 鉢苗
4 苗供給装置
25 苗植付け体
55 供給ベルト
55a 苗収容体
58 苗受け板
70L,70R 作業者用座席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗収容体(55a)を機体の前部から後方へ移動するようにした苗供給装置(4)を機体の前後方向に長く配置して設け、この苗供給装置(4)の後部に苗収容体(55a)から受け取った鉢苗(N)を圃場に植え付ける苗植付け体(25)を配置し、前記苗供給装置(4)の側部に作業者用座席(70L,70R)を配置した苗植付作業機。
【請求項2】
左右横方向に苗収容体(55a)を複数個並設した供給ベルト(55)で苗供給装置(4)を構成し、この苗供給装置(4)の後部に左右複数の苗植付け体(25)を配置したことを特徴とする請求項1に記載の苗植付作業機。
【請求項3】
隣接する複数の苗収容体(55a)の横方向設置位置を前後に適宜ずらせて設け、この複数の苗収容体(55a)から択一的に鉢苗(N)を苗植付け体(25)に受け渡すようにしたことを特徴とする請求項2に記載の苗植付作業機。
【請求項4】
隣接する苗収容体(55a)を移送方向にずらした間隔で供給ベルト(55)を間欠的に駆動したことを特徴とする請求項2に記載の苗植付作業機。
【請求項5】
供給ベルト(55)の内側に苗収容体(55a)の底部を受ける苗受け板(58)を設けて鉢苗Nを終端まで受ける構成にしたことを特徴とする請求項2に記載の苗植付作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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