説明

苗移植機

【課題】
植込稈の作動軌跡を切り換えるギア機構を植付部に設け、苗の植付間隔や植付深さの変更を容易に行える苗移植機を提供する。
【解決手段】
駆動軸1周りに回転する植付ケース2の中央部に、駆動軸1周りに太陽ギヤ3を装着し、植付ケース2の前後両端部に太陽ギヤ3からカウンタギヤ4を介して連動する遊星ギヤ5を有すると共に、駆動軸1の先端部に植込杆7を有する植付軸8を軸装して、駆動軸1の回転により各植込杆7に設けた植付爪6を略楕円形状の苗植軌跡線Dを描いて昇降させて苗植する苗移植機において、植付ケース2内の駆動軸1と各植付軸8の間に、植付爪6の作動による苗の植付間隔を変更する複数組の遊星ギヤ列を配置して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗移植機の植付装置に関し、苗植付爪を有する植込杆を軸装して回転する植付ケースに、この植付爪の植付軌跡を異にする複数組の遊星ギヤ列を組込んで、これを選択操作しながら目的に応じた苗の植付形態とするものである。
【背景技術】
【0002】
遊星ギヤ機構を有した植付ケースを駆動軸の回りに回転させて、この植付ケースの両端部に植付軸によって軸装される植込杆及びこの先端部の植付爪を、略楕円形状の植付軌跡線を描くように昇降させて苗植する技術(例えば、特許文献1、2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304339号公報
【特許文献2】特開2006−246709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記先行技術文献のように苗タンク及び植付装置等の数が多い、多条植形態の苗移植機においては、例えば、植付装置による苗の植付本数(苗量)を調節するには、苗タンク側の苗取口案内枠を前後方向へ移動調節する形態としても、全条の植付装置に対する案内枠の配置構成が均等に行われることを要するため、調節可能な幅が制限される。
【0005】
また、苗の植付深さ変更する場合も同様で、センタフロート及びサイドフロートの支持位置に対する各植付装置の位置が、例え横方向に水平、平行状に揃った状態にあっても、各条の植付装置毎に何らかの特異性があれば、全条の植付深さを均等の揃えることが難しく、調節作業に要する時間と労力が増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、前記のような苗取量の変更や植付深さの変更等を、各苗植条毎に植込杆を作動させる各植付ケースの遊星ギヤ列の切替によって各別に行わせるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、駆動軸(1)周りに回転する植付ケース(2)の中央部に、該駆動軸(1)周りに太陽ギヤ(3)を装着し、前記植付ケース(2)の前後両端部に該太陽ギヤ(3)からカウンタギヤ(4)を介して連動する遊星ギヤ(5)を有すると共に、該駆動軸(1)の先端部に植込杆(7)を有する植付軸(8)を軸装して、前記駆動軸(1)の回転により各植込杆(7)に設けた植付爪(6)を略楕円形状の苗植軌跡線(D)を描いて昇降させて苗植する苗移植機において、前記植付ケース(2)内の駆動軸(1)と各植付軸(8)の間に、前記植付爪(6)の作動による苗の植付間隔を変更する複数組の遊星ギヤ列を配置したことを特徴とする苗移植機とする。
【0008】
植込杆7は、植付ケース2の両端部の植付軸8に回動可能に取り付けられており、駆動軸1の回転によって前記植付ケース2と共に回転される。この植込杆7は先端部の植付爪6部を下方へ向けた植付姿勢を維持して回転されて、この植込杆7の下端部乃至植付爪6部が、側面視で上下方向の長径部と前後方向の短径部を形成した略楕円形状の植付軌跡線Dを描いて昇降作動する。
【0009】
この植込杆7の植付爪6は、前記植付軌跡線Dの上支点位置から下降する行程で苗タンクの苗取出部に介入して、この苗取口に繰出されているマット苗の繰出部から、所定本数の苗を分離保持して下方の土壌面へ挿苗する。
【0010】
また、この下支点の行程では、前記苗を保持している植付爪6が植込杆7の内部に設けているカム機構によって下方へ押出されて、保持している苗を土壌中へ所定の深さに挿し込む構成となっている。
【0011】
前記植付ケース2及び植込杆7は、駆動軸1と一体的に回転されるが、この植込杆7は遊星ギヤ5を介して前記植付ケース2の回転とは逆向きに低速で伝動される植付軸8の回動によって、この植込杆7の植付姿勢を直立状にしながら挿苗する。しかも、この植付軸8の植付ケース2に対する回動速は、植付ケース2の回転位置によって異なるため、この植付軸8を連動回転するための遊星ギヤ機構としては不等速ギヤ等を用いて、植付爪6が植付軌跡線Dに円滑に作動するように連動構成している。
【0012】
従って、この遊星ギヤ機構のギヤ径、歯数乃至不等速ギヤ等の如きギヤ形状等を変更することによって、植付軌跡線Dの作動回数や、一部を変更した仕様形態に作動させることができる。
【0013】
このため、前記遊星ギヤ5機構列は、苗植間隔を変更して苗植作業を行うために、例えば、標準植付間隔に作動させるための標準伝動ギヤ列Nと、これに対して前後方向の植付間隔を密にするように作動する密植伝動ギヤ列Mと、植付間隔を粗くする疎植伝動ギヤ列Lとの三ギヤ列から、目的の植付間隔に適合するいずれか一つの遊星ギヤ列L、M、Nを切替選択して苗植作用を行わせる。
【0014】
これらの遊星ギヤ列L、M、N間の切替は、操作レバー10またはスイッチを操作し、前記駆動軸1外周部の太陽ギヤ3との間に設けるノックピン9を移動させることによって、このノックピン9の係合された太陽ギヤ3を固定して、この太陽ギヤ3に噛合の遊星ギヤ列L、M、またはNを伝動させる構成としている(図1参照)。
【0015】
このような標準ギヤ列N、疎植ギヤ列M、密植ギヤ列Lのうち、太陽ギヤ3にノックピン9を噛合させたものだけが回転停止状態に固定され、カウンタギヤ4を介して遊星ギヤ5を回転させて、植込杆7の植付軌跡線Dを決定する。
【0016】
そして、ノックピン9の噛んでいない太陽ギヤ3は、単に植付ケース2と一緒に回転する。
請求項2に記載の発明は、前記植付ケース(2)内の駆動軸(1)と各植付軸(8)の間に、前記植付爪(6)の作動による苗植付深さを変更可能な複数組の遊星ギヤ列を配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0017】
前記植込杆7の作動による苗植込深さを切り替える場合も、前項の発明の形態と略同様である。但し、この場合は植付軌跡線Dの変化が植付深さを変更するものであるから、前記複数組の遊動ギヤ列E、F、Gは、標準伝動ギヤ列G、深植伝動ギヤ列E、及び浅植伝動ギヤ列F等として設定し、これらのギヤ列G、E、Fを前記操作レバー10によってノックピン9を切替係合させて選択する。
【0018】
そして、これら各標準ギヤ列G、浅植ギヤ列F、深植ギヤ列Eのうち、太陽ギヤ3にノックピン9を噛ませたものだけが固定され、カウンタギヤ4を介して遊星ギヤ5を回転させて、植込杆7の植付軌跡線Dを決定する。
【0019】
また、ノックピン9が噛んでない太陽ギヤ3は、植付ケース2と一緒に回転する(図2参照)。
請求項3に記載の発明は、前記遊星ギヤ列の切替変更は、駆動軸(1)に対して回転自在に軸装された太陽ギヤ(3)をノックピン(9)の係合操作によって植付爪(6)による植付作動停止の状態に切替えて固定することを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機とした。
【0020】
前記のように植込杆7を作動させる植付ケース2には、複数組の遊星ギヤ列が組み込まれていて、苗植付間隔を変更したり、苗植付深さを変更するときは、操作レバー10等によってノックピン9の太陽ギヤ3に対する係合操作することによって、このノックピン9の係合されたギヤ列の太陽ギヤ3のみを固定させて、この太陽ギヤ3を含む遊星ギヤ列を連動して遊星ギヤ5、及びこの植付軸8を回動させるものである(図1、図2参照)。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記各太陽ギヤ(3)に噛合する隣接相互のカウンタギヤ(4)を一体で回転する形態として、前記ノックピン(9)の係合によって切り替られた側の太陽ギヤ(3)の歯数に合わせてカウンタギヤ(4)を回転させて、前記植込杆(7)を作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【0022】
前記のように太陽ギヤ3と、カウンタギヤ4、及び遊星ギヤ5等からなる一連の遊星ギヤ列は、前記苗植付間隔の切替のように疎植伝動ギヤ列L、密植伝動ギヤ列M、及び標準植伝動ギヤ列Nや、苗植付深さの切替のように深植伝動ギヤ列E、浅植伝動ギヤ列F、及び標準植伝動ギヤ列Gのように、各ギヤ列ともに三枚のギヤ3、4、5列を一組として切替段数に対応した組数のギヤ列を備えるものであるが、ここでは前記のように各植付ケース2内における隣接するカウンタギヤ4同士を一体で回転する構成とし、どちらの太陽ギヤ3にノックピン9が噛んでいても、両方のカウンタギヤ4が回転する。
【0023】
このとき、カウンタギヤ4の回転は、ノックピン9が噛んだ方の太陽ギヤ3の歯数に応じて変わるので、ギヤの枚数を減らしながら、植付軌跡線Dを変更することができる(図3参照)。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記植付ケース(2)の両端部に設けられる各植付軸(8)を連動する遊星ギヤ列のうち、いずれか一方の側の植付軸(8)上の遊星ギヤ(5)及びカウンタギヤ(4)を欠いた形態として、前記ノックピン(9)の係合によって切り替えられた側の太陽ギヤ(3)の歯数に合わせてカウンタギヤ(4)を回転させて、前記植込杆(7)を作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【0025】
前記のとおり駆動軸1の周りに回転する植付ケース2の両端部に植付軸8を設けて各植込杆7を作動させる形態において、前記植付ケース2の一端側の植付軸8上の遊星ギヤ5と、この遊星ギヤ列のカウンタギヤ4を取除いた形態として、疎植の苗植伝動することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記植付ケース(2)の両端部に設けられる各植付軸(8)を連動する遊星ギヤ列のうち、いずれか一方の側の植付軸(8)上の遊星ギヤ(5)及びカウンタギヤ(4)を欠いた形態として、前記ノックピン(9)の操作による疎植操作において欠植させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【0027】
前記のように各遊星ギヤ列の太陽ギヤ3、遊星ギヤ5、及びカウンタギヤ4等が揃って配置される形態では、疎植伝動ギヤ列Lによる疎植では、ギヤ相互間の噛み合いにより、走行速度を上げ過ぎると植込杆7が一瞬ロックしたり、揺れて苗を取れなくなる「シャクリ」現象を発生するが、前記の構成では一方の遊星ギヤ5や、カウンタギヤ4が無いため、このようなシャクリ現象等を生じることが防止され、高速化作動させることができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の発明は、苗の植付前後間隔を決める遊星ギヤ列を複数組配置して、植付軌跡線Dを変更する操作レバー等によって切替えて、苗条件や、圃場条件等に応じた苗植間隔に植付作業することができる。
【0029】
そして、多条植形態の苗移植機にあっては、各苗植条毎の植付ケース2に複数組の遊星ギヤ列L、M、Nを配置する簡潔なギヤ列の形態とすることによって、一部の苗植条においてのみ株間間隔を変更して植付ける場合は、その切替えを簡単、容易にして、誤操作を少くすることができる。
【0030】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、苗の植付深さを決める遊星ギヤ列を複数組配置して、この植付軌跡線Dを変更する操作レバー等によって切替えて、苗条件や、圃場条件等に応じた苗植付深さに植付作業することができる。
【0031】
また、多条植形態の苗移植機にあっては、各苗植条毎の植付けケース2に複数組の遊星ギヤ列E、F、Gを配置する簡潔なギヤ列の形態とすることによって、一部の苗植条においてのみ植付深さを変更して植付ける場合は、その切替えを簡単、容易にして、誤操作を少くすることができる。
【0032】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、前記植付ケース2内の太陽ギヤ3に係合して、遊星ギヤ5の連動回転を行わせるノックピン9を設けて、複数の遊星ギヤ列のうちの一部の遊星ギヤ列のみ連動させて植付軌跡線Dを切替えるものであるから、ノックピン9の係合された太陽ギヤ3は非回転状態に停止状態にあって、この太陽ギヤ5の周りにカウンタギヤ4を介して噛合回転する遊星ギヤ5の遊星連動回転を円滑に、正確に、安定して伝動維持し、正確な植付軌跡線Dを描かせることができ、苗の植付精度を向上する。
【0033】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、太陽ギヤ3に噛合する同じカウンタ軸上の隣接相互のカウンタギヤ4を一体構成として、前記ノックピン9の係合によって切り替えられた側の太陽ギヤ3の歯数に応じてこのカウンタギヤ4を回転して植込杆7を作動させるものであるから、使用するギヤの枚数を削減することができ、構成を簡単にして、コスト低減することができる。
【0034】
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、植付ケース2の一端部の植付軸8に軸装された植込杆7は、遊星ギヤ5とカウンタギヤ4の欠除形態によって、苗分離乃至挿植作用が行われないようになるので、苗の植付前後間隔を広くすることができ、簡単な疎植設定とすることができる。
【0035】
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、一方の遊星ギヤ5とカウンタギヤ4を設けないことにより、車速を高速化してもギヤ相互間の噛み合いによる揺動発生を防止することができ、疎植時の作業能率を高めることができる。
【0036】
しかも、使用するギヤの枚数を少なくして、構成を軽量、簡単化して、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】植付装置部の平断面図
【図2】一部別例を示す植付装置の平断面図
【図3】一部別例を示す植付装置の平断面図
【図4】一部別例を示す植付装置の平断面図
【図5】苗移植機の側面図
【図6】苗移植機の平面図
【図7】操縦部の要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面に基づいて、車体11中央部上に搭載のエンジン12カバー13上に運転席14を設け、この前側にステアリングポスト15上のハンドル16によって操向の前輪17、車体11後部の後輪18等を配置して走行する乗用四輪走行形態の車体11の後部に、リヤフレーム19に対して昇降シリンダ20によって昇降可能のリフトリンク21を介して苗植装置22、及び代掻装置23が連結される。
【0039】
また、車体11上の運転席14、及びステアリングポスト15等の左右にはフロア24が設けられて、このフロア24の外側に補助苗載枠25を設け、運転席14の後側部に施肥装置26を設けている。
【0040】
苗植装置22は、多条植形態として、伝動ケース27や、この前側に一体の支持フレーム28等を主体とする苗移植機体の下側に、センタフロート29と、この左右両側に配置のサイドフロート30をフロートアーム36に揺動自在に支持して設け、土壌面を滑走支持して均平する形態である。
【0041】
前記苗移植機体の上側には後下り傾斜の苗タンク31を支持して、略苗タンク31一枚幅相当間隔に亘り左右横方向へ往復移動することができ、この苗タンク31の左端、又は右端に移動したとき毎にタンク底部の繰出ベルト32を適量間歇的に一駒駆動させて、マット苗の後下端縁を苗取口33を形成した苗案内枠34に摺接させて、苗植付装置35の各植付爪6による苗分離作用を受けさせる。
【0042】
前記苗植装置22の前側に配置の支持フレーム28は、上端部に苗タンク31の上端裏面を支持して移動案内させるが、この前側下部には、上下のリンク50を介して代掻フレーム51、及びこの下端部のロータケース52を支持して、このロータケース52の前側に前記センタフロート29の前側域を代掻整地するセンタロータ53を配置し、後側には前記サイドフロート30の前側域を代掻整地するサイドロータ54を配置して、これら各ロータ53、54を、車体11側のリヤアクスルハウジング55部から取出す連動軸56によって駆動回転させて、代掻作動させるものである。
【0043】
前記苗植付装置35は、伝動ケース27の後端部に設け、植付作動の先端部に位置する植付爪6を、前記各フロート29、30の均平土壌面跡に対向して作動させるように多条植形態に配置するもので、各フロート29、30の中央線上に沿って配置の伝動ケース27の後端部に横方向水平に軸装の駆動軸1の左右両端部に植付ケース2を配置して、左右二条の苗植付を行わせるように構成する。
【0044】
この苗植付装置35の伝動構成は、前記伝動ケース27のチエン37を介して回転される駆動軸1の左右両側部周りに、この伝動ケース27から一体的に突出するメタルカラー38を設け、植付ケース2の中央部が、このメタルカラー38、及びこのメタルカラー38外周のベアリング39等を介して回転自在に設けられる。前記伝動ケース27に固定のメタルカラー38は駆動軸1を回転自在に嵌合させて、このメタルカラー38の外周に回転自在の三枚の太陽ギヤ3が嵌合支持されている。
【0045】
これらメタルカラー38の外周と太陽ギヤ3の内周との間に亘るキー溝40を軸方向に沿って形成し、このキー溝40に嵌合するノックピン9を軸方向に移動することによって、このノックピン9をいずれかの太陽ギヤ3に係合させることができる。このノックピン9の係合された太陽ギヤ3がメタルカラー38を介して伝動ケース27と一体的に固定されて、太陽ギヤ3としての機能を果すことができる。
【0046】
前記植付ケース2の前後端部には、前記駆動軸1と平行状に植付軸8を回転自在に軸受けして、この植付軸8の外側端に植込杆7の植込ケース41部を一体的構成として、この植付軸8の回動によって植込杆7を前後方向へ回動させて、先端部の植付け爪6の作動軌跡を植付軌跡線Dに沿って昇降作動させる。
【0047】
前記植込杆7の植込ケース41部には、植付爪6が上下方向へ移動できるように設けられていて、植付軸8と一体回動する押出カム42によって回動される押出アーム43を介して押出爪44を作動するもので、植付爪6に保持している苗を押出爪44で土壌面へ押出して植付ける。前記植付軸8の植付ケース2内には、遊星ギヤ5を三枚配置して一体回転する構成である。
【0048】
前記駆動軸8上の各太陽ギヤ5と、植付軸8上の各遊星ギヤ5との間に、カウンタ軸45上のカウンタギヤ4を噛合させて、一連の遊星ギヤ列を三組並列配置している。そして、前記ノックピン9の噛合によって選択された太陽ギヤ5を含む遊星ギヤ列を連動させて、この遊星ギヤ列に応じた植込杆7の植付軌跡線Dに沿って苗植作動させる。
【0049】
前記ノックピン9は、操作レバー10の操作によって、ワイヤー46、アーム47、及びスプリング等を経て駆動軸1方向に沿うキー溝40を摺動案内されて、いずれかのギヤ列の太陽ギヤ5のキー溝40に係合して、伝動ケース27側と一体のメタルカラー38と一体に固定して、この太陽ギヤ5を回転しないようにする。
【0050】
前記遊星ギヤ列を配置する植付ケース2内の各太陽ギヤ3、カウンタギヤ4、及び遊星ギヤ5の配置形態について、前記図1、図2のように、疎植、密植、標準植等の伝動ギヤ列L、M、Nの三枚毎のギヤ3、4、5を各軸1、45、8上に配置したり、深植、浅植、標準植等の伝動ギヤ列E、F、Gの三枚毎のギヤ3、4、5を各軸1、45、8上に配置するが、この形態に代えて、図3、または図4のように一部のギヤ配置の形態を変更することもできる。
【0051】
図3の形態では、隣接するカウンタギヤ4を一体回転する構成とし、どちらの太陽ギヤ3にノックピン9が噛んでいても、両方のカウンタギヤ4を回転して、このカウンタギヤ4の回転をノックピン9が噛んだ方の太陽ギヤ3の歯数に応じて変速させるものである。この二枚のカウンタギヤ4を一体とした二段ギヤ形態では、遊星ギヤ5を一枚削減した形態とすることもできる。
【0052】
また、同図例では同一植付ケース2の両端部の植付軸8のうち一方の植付軸8には遊星ギヤ5を設けないで、他方の植付軸8側のみ太陽ギヤ3、及びカウンタギヤ4を介して連動される遊星ギヤ5を設けて、疎植伝動ギヤ列Lを構成する。そして、このギヤ列Lの連動で植付作動される植込杆7によって苗植作用を行い、他方の植付軸8上の植込杆7による苗植作用を休止させた状態として、この植付ケース2の一回転によりこの両端部の植込杆7による苗植付は一株として、一株置きの植付間隔として疎植状態とすることができる。
【0053】
このギヤ配列の形態では、カウンタ軸45上のカウンタギヤ4一枚と、植付軸8上の遊星ギヤ5一枚を削除することができるから、植付ケース2としては更にギヤ枚数を減すことができる。
【0054】
図4の形態では、植付ケース2の一端部の植付軸8における疎植伝動ギヤ列Lの遊星ギヤとこれに噛合するカウンタギヤ4とを取除いた形態として、この植付杆7が植付軌跡線Dから外れた状態で苗植付けをおこなわないようにする。これにより、植付ケース2の一回転により植付作用を一回行う形態とする。
【0055】
疎植伝動ギヤ列Lによる苗植込杆7の植付作動は、遊星ギヤ5を有する植込杆7により行われて、遊星ギヤを有しない植込杆7による植付作動を行わせないで、植付間隔を疎間隔にする。この形態においても、カウンタ軸45上のカウンタギヤ一枚と、植付軸8上の遊星ギヤ5一枚とを、取り除くことができ、構成を簡単化できる。
【0056】
ここにおいて、駆動軸1周りに回転する植付ケース2の中央部に、この駆動軸1周りに軸装の太陽ギヤ3を設け、前記植付ケース2の前後両端部に、前記太陽ギヤ3からカウンタギヤ4を介して連動の遊星ギヤ5を有すると共に、先端部に植付爪6を形成の植込杆7を有した植付軸8を軸装して、前記駆動軸1の回転により各植込杆7の植付爪6を略楕円形状の植付軌跡線Dを描いて昇降させて苗植する苗移植機において、前記植付ケース2内の駆動軸1と各植付軸8との間に、前記植付爪6の作動による苗植間隔を変更可能の複数組の遊星ギヤ列を配置した植付装置の構成とする。
【0057】
植込杆7は、植付ケース2の両端部の植付軸8に回動可能に取付られており、駆動軸1の回転によって前記植付ケース2と共に回転される。この植込杆7は先端部の植付爪6を下方へ向けた植付姿勢を維持して回転されて、この植込杆7の下端部乃至植付爪6が、側面視で上下方向の長径部と、前後方向の短径部を形成した略楕円形状の植付軌跡線Dを描いて昇降作動する。この植込杆7の植付爪6は、前記植付軌跡線Dの上支点位置から下降する行程で苗タンクの苗取出部に介入して、この苗取口に繰出されているマット苗の繰出部から、所定本数の苗を分離保持して下方の土壌面へ挿苗する。
【0058】
また、この下支点の行程では、前記苗を保持している植付爪6が、植込杆7の内部に設けているカム機構によって下方へ押出されて、保持している苗を土壌中へ所定の深さに挿込む。
【0059】
前記植付ケース2及び植込杆7は、駆動軸1と一体的に回転されるが、この植込杆7は遊星ギヤ5を介して前記植付ケース2の回転とは逆向きに低速で伝動される植付軸8の回動によって、この植込杆7の植付姿勢を直立状にしながら挿苗する。
【0060】
しかも、この植付軸8の植付ケース2に対する回動速は、植付ケース2の回転位置によって異なるため、この植付軸8を連動回転するための遊星ギヤ機構としては不等速ギヤ等を用いて、植付爪6が植付軌跡線Dに円滑に作動するように連動構成している。
【0061】
従って、この遊星ギヤ機構のギヤ径や、歯数乃至不等速ギヤ等の如きギヤ形状等を変更することによって、植付軌跡線Dの作動回数や、一部を変更した仕様形態に作動させることができる。このため、前記遊星ギヤ5機構列は、苗植間隔を変更して苗植作業を行うために、例えば、標準植付間隔に作動させるための標準伝動ギヤ列Nと、これに対して前後方向の植付間隔を密にするように作動する密植伝動ギヤ列Mと、植付間隔を粗くする疎植伝動ギヤ列Lとの三ギヤ列から、目的の植付間隔に適合するいずれか一つの遊星ギヤ列L、M、Nを切替選択して苗植作用を行わせる。
【0062】
これらの遊星ギヤ列L、M、N間の切替えは、操作レバー10、又はスイッチ操作等によって、前記駆動軸1外周部の太陽ギヤ3との間に設けるノックピン9を移動させることによって、このノックピン9の係合された太陽ギヤ3を固定して、この太陽ギヤ3に噛合の遊星ギヤ列L、M、又はNを伝動させる(図1参照)。
【0063】
このような標準ギヤ列N、疎植ギヤ列M、密植ギヤ列Lのうち、太陽ギヤ3にノックピン9を噛合させたものだけが回転停止状態に固定され、カウンタギヤ4を介して遊星ギヤ5を回転させて、植込杆7の植付軌跡線Dを決定する。そして、ノックピン9の噛んでいない太陽ギヤ3は、単に植付ケース2と一緒に回転する。
【0064】
また、前記植付ケース2内の駆動軸1と各植付軸8との間に、前記植付爪6の作動による苗植付深さを変更可能の複数組の遊星ギヤ列を配置する。
前記植込杆7の作動による苗植込深さを切替える場合も、前項の発明の形態と略同様である。但し、この場合は植付軌跡線Dの変化が植付深さを変更するものであるから、前記複数組の遊動ギヤ列E、F、Gは、標準伝動ギヤ列G、深植伝動ギヤ列E、及び浅植伝動ギヤ列F等として設定し、これらのギヤ列G、E、Fを前記操作レバー10によってノックピン9を切替係合させて選択する。そして、これら各標準ギヤ列G、浅植ギヤ列F、深植ギヤ列Eのうち、太陽ギヤ3にノックピン9を噛ませたものだけが固定され、カウンタギヤ4を介して遊星ギヤ5を回転させて、植込杆7の植付軌跡線Dを決定する。
【0065】
また、ノックピン9が噛んでない太陽ギヤ3は、植付ケース2と一緒に回転する(図2参照)。
さらに、前記遊星ギヤ列の切替変更は、駆動軸1に対して回転自在に軸装された太陽ギヤ3を、ノックピン9の係合操作によって植付爪6による苗植作動停止の状態に切替えて固定する。
【0066】
前記のように植込杆7を作動させる植付ケース2には、複数組の遊星ギヤ列が組込まれていて、苗植付間隔を変更したり、苗植付深さを変更するときは、操作レバー10等によってノックピン9の太陽ギヤ3に対する係合操作することによって、このノックピン9の係合されたギヤ列の太陽ギヤ3のみを固定させて、この太陽ギヤ3を含む遊星ギヤ列を連動して遊星ギヤ5、及びこの植付軸8を回動させるものである(図1、図2参照)。
【0067】
また、前記各太陽ギヤ3に噛合する隣接相互のカウンタギヤ4を一体で回転する形態として、前記ノックピン9の係合によって切替られた側の太陽ギヤ3の歯数に応じてカウンタギヤ4を回転して植込杆7を作動させる。
【0068】
前記のように太陽ギヤ3とカウンタギヤ4及び遊星ギヤ5等からなる一連の遊星ギヤ列は、前記苗植付間隔の切替えのように疎植伝動ギヤ列L、密植伝動ギヤ列M、及び標準植伝動ギヤ列Nや、苗植付深さの切替のように深植伝動ギヤ列E、浅植伝動ギヤ列F、及び標準植伝動ギヤ列Gのように、各ギヤ列ともに三枚のギヤ3、4、5列を一組として切替段数に対応した組数のギヤ列を備えるものであるが、ここでは、前記のように、各植付ケース2内における隣接するカウンタギヤ4同士を一体で回転する構成とし、どちらの太陽ギヤ3にノックピン9が噛んでいても、両方のカウンタギヤ4が回転する。
【0069】
このとき、カウンタギヤ4の回転は、ノックピン9が噛んだ方の太陽ギヤ3の歯数に応じて変わるので、ギヤの枚数を減らしながら、植付軌跡線Dの変更を行うことができる(図3参照)。
【0070】
さらには、前記植付ケース2の両端部に設けられる各植付軸8を連動する遊星ギヤ列のうち、いずれか一方の側の植付軸8上の遊星ギヤ5、及びカウンタギヤ4を欠いた形態として、前記ノックピン9の係合によって切替えられた側の太陽ギヤ3の歯数に応じてカウンタギヤ4を回転して植込杆7を作動させる。
【0071】
前記のように駆動軸1の周りに回転する植付ケース2の両端部に植付軸8を設けて各植込杆7を作動させる形態において、前記植付ケース2の一端側の植付軸8上の遊星ギヤ5と、この遊星ギヤ列のカウンタギヤ4を取除いた形態として、 植の苗植伝動することができる。
【0072】
図4において、疎植伝動ギヤ列Lの遊星ギヤ5を一つ取り除いた形態とすると、一方の植込杆7が苗を取る軌跡線Dから外れたままの状態になる。これにより、一回転で植付けを一回行う構成となるので、株間が広くなり、疎植状態となる。
【0073】
前記のように各遊星ギヤ列の太陽ギヤ3、遊星ギヤ5、及びカウンタギヤ4等が揃って配置される形態では、疎植伝動ギヤ列Lによる疎植付では、ギヤ相互間の噛み合いにより、走行速度を上げ過ぎると、植込杆7が一瞬ロックしたり、揺れて苗を取れなくなる「シャクリ」現象を発生するが、前記の構成では、一方の遊星ギヤ5や、カウンタギヤ4が無いため、このようなシャクリ現象等を生じないで、高速化作動させることができる。
【0074】
次に、主として図1、図7に基づいて、前記車体11の前端部には、畦越えや、この苗移植機をトレラー等に積み降しするときの車体11前部の持上げ移動操作等を行うための畦越ハンドル60を設けているが、この畦越ハンドル60を操作するとき、この近傍位置にHSTサブレバー61を設けて、車体11の走行、停止操作を行い易くしたものである。前記エンジン12、前方のフロントアクスルハウジング63を有したミッションケース64上部に油圧無段変速装置65を設け、この油圧無段変速装置65をエンジン12からベルト66伝動して、無段変速操作しながら前輪17や、後輪18を伝動する主変速操作を行う形態としている。
【0075】
前記HSTサブレバー61は、この油圧無段変速装置65のトラニオンアーム67をベルクランク68や、リンクロッド69等を介して連動操作できる形態である。70はステアリングポスト15上方に設けているHSTレバーで、リンク機構71を介してベルクランク68に連動して、トラニオンアーム67を主変速操作する構成としている。
【符号の説明】
【0076】
1 駆動軸
2 植付ケース
3 太陽ギヤ
4 カウンタギヤ
5 遊星ギヤ
6 植付爪
7 植込杆
8 植付軸
9 ノックピン
10 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(1)周りに回転する植付ケース(2)の中央部に、該駆動軸(1)周りに太陽ギヤ(3)を装着し、前記植付ケース(2)の前後両端部に該太陽ギヤ(3)からカウンタギヤ(4)を介して連動する遊星ギヤ(5)を有すると共に、該駆動軸(1)の先端部に植込杆(7)を有する植付軸(8)を軸装して、前記駆動軸(1)の回転により各植込杆(7)に設けた植付爪(6)を略楕円形状の苗植軌跡線(D)を描いて昇降させて苗植する苗移植機において、前記植付ケース(2)内の駆動軸(1)と各植付軸(8)の間に、前記植付爪(6)の作動による苗の植付間隔を変更する複数組の遊星ギヤ列を配置したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記植付ケース(2)内の駆動軸(1)と各植付軸(8)の間に、前記植付爪(6)の作動による苗植付深さを変更可能な複数組の遊星ギヤ列を配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記遊星ギヤ列の切替変更は、駆動軸(1)に対して回転自在に軸装された太陽ギヤ(3)をノックピン(9)の係合操作によって植付爪(6)による植付作動停止の状態に切替えて固定することを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記各太陽ギヤ(3)に噛合する隣接相互のカウンタギヤ(4)を一体で回転する形態として、前記ノックピン(9)の係合によって切り替られた側の太陽ギヤ(3)の歯数に合わせてカウンタギヤ(4)を回転させて、前記植込杆(7)を作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記植付ケース(2)の両端部に設けられる各植付軸(8)を連動する遊星ギヤ列のうち、いずれか一方の側の植付軸(8)上の遊星ギヤ(5)及びカウンタギヤ(4)を欠いた形態として、前記ノックピン(9)の係合によって切り替えられた側の太陽ギヤ(3)の歯数に合わせてカウンタギヤ(4)を回転させて、前記植込杆(7)を作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
前記植付ケース(2)の両端部に設けられる各植付軸(8)を連動する遊星ギヤ列のうち、いずれか一方の側の植付軸(8)上の遊星ギヤ(5)及びカウンタギヤ(4)を欠いた形態として、前記ノックピン(9)の操作による疎植操作において欠植させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94099(P2013−94099A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239151(P2011−239151)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】