説明

荷役物運搬機の力点周辺機構

【課題】コンパクトな力点周辺機構で、昇降のバランス状態の維持を可能とする。
【解決手段】シリンダはスライド部を有し、シリンダのロッドの先端はアームの力点に支承され、スライド部は溝部に嵌められスライドが可能であり、アームの昇降動作とシリンダのスライド動作が同期してシリンダの姿勢が不変であり、昇降のバランス状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータにエアーシリンダーを用いたスカラ型アームの荷役物運搬機の力点周辺の機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術を図6で説明する。シリンダ51のチューブ52は本体プレート53に固定されている。シリンダ51のロッド54の先端は昇降プレート55に固定されている。昇降プレート55は、長穴部56を備えている。昇降プレート55は、ガイドローラ57を備えている。ガイドレール58は、本体プレート53に固定されている。アーム59の力点60のローラ61は、長穴部56に嵌められている。ガイドローラ57は、ガイドレール58に嵌められている。よって、図5(a)から図5(b)の状態にアーム59が下降するには、シリンダ51が縮むことにより昇降プレート55が上昇し、アーム59が下降する。力点60のローラ61は円弧に動くので、図5(a)の力点60のローラ61は、長穴部56の中を左に移動して、図5(b)の様になる。
【0003】
しかし、ガイドレールや、大型の昇降プレートが必要で、部品点数が多く、コンパクトにならない欠点があった。
【0004】
また、モータを使った電気式では、引用文献1・2・3があった。エアーシリンダを用いた荷役物運搬機に引用文献1を応用すると図5となり、図5と同様の欠点があった。
【0005】
引用文献2は、ボールネジが揺動して動く構成だが、ボールネジが傾いても電気式モータの特性で昇降が安定する制御であった。これを仮に本発明で使用するエアー式のシリンダに置き換えると、荷役物を手で持って昇降できるバランス制御では、シリンダが揺動することでシリンダが傾き、力点への垂直方向への力の伝わり方が一定にならず、バランスが崩れる現象となり、思った場所に停止しないという欠点があった。例えば、シリンダが垂直姿勢の場合に、垂直方向へは100kgの力で力点を押す。一方、シリンダが30度傾くと、垂直方向へ押す力は86.6kgとなる。この押す力の差は、シリンダが傾く角度により変化して、制御するには複雑な制御が必要であった。
【0006】
引用文献3は、電気式モータでの構成で、本発明で使用するエアー式シリンダでの応用はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−4987号公報
【特許文献2】実開昭63−189382号公報
【特許文献3】実開昭63−189381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、ガイドレールや大型の昇降プレートが必要で、部品点数が多く、コンパクトにならない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体プレートにスライドプレートを固定し、スライドプレートは長穴部を有し、シリンダはスライド部を有し、シリンダのロッドの先端はアームの端に支承され、スライド部は長穴部に嵌められスライドが可能であり、アームの昇降動作とシリンダのスライド動作が同期してシリンダの姿勢が不変であり、昇降のバランス状態を維持することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の荷役物運搬機の力点周辺機構は、コンパクトな力点周辺機構で、昇降のバランス状態の維持を可能とするという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は荷役物運搬機の総体図である。
【図2】図2は荷役物運搬機の力点周辺機構を示した説明図である。(実施例1)
【図3】図3はスライドプレート関連の拡大図である。
【図4】図4は荷役物運搬機の力点周辺機構を示した説明図である。(実施例2)
【図5】図5は荷役物運搬機の力点周辺機構を示した説明図である。(実施例3)
【図6】図6は従来の技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ガイドレールや大型の昇降プレートが無く、部品点数が少なく、コンパクトな荷役物運搬機の力点周辺機構を実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例の荷役物運搬機の総体図ある。荷役物運搬機1はスカラ型であり、旋回台2と本体部3と第1アーム4と第2アーム5と操作部6と吊り具7で構成している。第1アーム4は、上第1アーム8と下第1アーム9を備えている。本体部3は、本体プレート10を有している。旋回台2は、天井台座(図示せず)に固定してあり、荷役物運搬機1が旋回する。第1アーム4と第2アーム5は旋回部11で係合されている。よって、作業者12が操作部6で重量切り替えスイッチ(図示せず)を操作することにより、吊り具7に吊られた荷役物13を作業者12の手で持って昇降及び旋回ができ3次元に運搬できる。
【0014】
図2は、荷役物運搬機の力点周辺機構を示した説明図である。図2(a)はアームが上昇した位置で、図2(b)はアームが下降した位置である。上第1アーム8と下第1アーム9は、本体プレート10の支点14に支承されている。第1アーム4と第2アーム5は、旋回部11で係合されている。スライドプレート15は本体プレート10に固定されている。スライドプレート15は、長穴部16を備えている。シリンダ17のチューブ18側の先端に、スライド部19が固定されている。スライド部19はローラ20を備えている。シリンダ17のロッド21の先端は上第1アーム8の先端に支承されており、力点22となる。長穴部16に、ローラ20が嵌っており、水平方向にローラ20が移動する。ローラ20は水平方向に複数配置され、シリンダ17は常に垂直姿勢である。
【0015】
図3はスライドプレート関連の拡大図である。スライドプレート15は、長穴部16を備えている。シリンダ17のチューブ18側の先端に、スライド部19が固定されている。スライド部19はローラ20を備えている。長穴部16に、ローラ20が嵌っており、水平方向にローラ20が移動する。ローラ20は水平方向に複数配置され、シリンダ17は常に垂直姿勢である。長穴部16の縦方向の高さと、ローラ20の直径には若干の差があるので、シリンダ17は若干だが垂直でない場合もあるが、問題ではない。
【0016】
図1と図2と図3で、作用を説明する。作業者12が荷役物13を把持して図2(a)の状態から荷役物13を下降させると、シリンダ17のロッド21が縮み、図2(b)の状態になる。図2(a)から図2(b)の移行する過程では、上第1アーム8先端の力点22が円弧の軌跡を描く為、ローラ20を備えたスライド部19が図に向って左に移動する。その時シリンダ17は垂直姿勢を保って左に移動する。よって、アームの昇降動作とシリンダ17のスライド動作が同期してシリンダ17の姿勢が不変であり、昇降のバランス状態を維持する。
【実施例2】
【0017】
図4の実施例は、図2のローラに駆動装置を取り付けた構成である。よって、図4の符号は、駆動装置付きローラ23以外は図2と同じである。実施例1では、上第1アーム8の動きに合わせて、駆動なしでスライド部19が水平移動する。一方、実施例2は駆動装置により強制的に水平移動する。荷役物運搬機1が大型化した場合は、実施例1では、スライド部19がこじる場合もあり、駆動装置で上第1アーム8の動きに合わせて駆動させる。図4は駆動装置だが、上第1アーム8の動きをリンク機構でスライド部19に伝えてスライド部19を強制的に水平移動させる事も可能である。実施例1と実施例2のいずれもシリンダ17の垂直姿勢は維持される。また、シリンダ17とスライド部19とスライドプレート15を上第1アーム8の先端の下側に取り付けても良い。
【実施例3】
【0018】
図5は、荷役物運搬機の力点周辺機構を示した説明図である。図5(a)はアームが上昇した位置で、図5(b)はアームが下降した位置である。上第1アーム8と下第1アーム9は、本体プレートの支点14に支承されている。第1アーム4と第2アーム5は、旋回部11で係合されている。スライドプレート15は本体プレート10に固定されている。スライドプレート15は、長穴部16を備えている。シリンダのチューブ18側の先端に、スライド部19が固定されている。スライド部19はローラ20を備えている。シリンダ17のロッド21の先端は下第1アーム9の中間に支承されており、力点となる。長穴部16に、ローラ20が嵌っており、水平方向にローラ20が移動する。ローラ20は水平方向に複数配置され、シリンダ17は常に垂直姿勢である。
【符号の説明】
【0019】
1 荷役物運搬機
2 旋回台
3 本体部
4 第1アーム
5 第2アーム
6 操作部
7 吊り具
8 上第1アーム
9 下第1アーム
10 本体プレート
11 旋回部
12 作業者
13 荷役物
14 支点
15 スライドプレート
16 長穴部
17 シリンダ
18 チューブ
19 スライド部
20 ローラ
21 ロッド
22 力点
23 駆動装置付きローラ
51 シリンダ
52 チューブ
53 本体プレート
54 ロッド
55 昇降プレート
56 長穴部
57 ガイドローラ
58 ガイドレール
59 アーム
60 力点
61 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを昇降させるアクチュエータにエアー式のシリンダを用いた荷役物運搬機において、本体プレートにスライドプレートを固定し、スライドプレートは長穴部を有し、シリンダはスライド部を有し、シリンダのロッドの先端はアームの力点に支承され、スライド部は長穴部に嵌められスライドが可能であり、アームの昇降動作とシリンダのスライド動作が同期してもシリンダの姿勢が不変で昇降のバランス状態を維持する事を特徴とする荷役物運搬機の力点周辺機構。
【請求項2】
シリンダのスライド部は、駆動装置により駆動されてスライド作動する事を特徴とする請求項1記載の荷役物運搬機の力点周辺機構。
【請求項3】
リンク機構を有し、リンク機構の一端がアームに支承され、リンク機構の他端がスライド部に支承され、アームの動きがリンク機構を介してスライド部をスライド作動させる事を特徴とする請求項1記載の荷役物運搬機の力点周辺機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107775(P2013−107775A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224956(P2012−224956)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000100735)アイコクアルファ株式会社 (17)