説明

荷重制御システム

【課題】空圧機器の圧力を高精度に制御できる荷重制御システムを提供する。
【解決手段】荷重センサまたは圧力センサ14aを備えた空気圧シリンダ装置10と、一次圧の気体を二次圧の気体として空気圧シリンダ装置に供給する調圧機器本体60と、出力側の二次圧を設定する調圧ネジ61、調圧ネジを回動させて調圧度合いを調整する回転駆動装置41、所定の間隔で略対向配置された一対の、互いに接離方向に可撓性を有する椀型部材51、52を備え、該椀型部材の一方にはその略中央に回転駆動装置41のモータ軸42が連結され、椀型部材の他方にはその略中央に調圧ネジが連結されたモータ駆動式レギュレータ40と、空気圧シリンダ装置の荷重センサまたは圧力センサ14aから出力される荷重信号または圧力信号を受けて、該荷重信号または圧力信号が設定値を保持するように、回転駆動装置を駆動する駆動制御回路30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FA(ファクトリオートメーション)等において使用される空圧機器の荷重制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FA化が急速に進み、種々の工業製品の製造工程において空圧機器が使用されている。調圧装置に供給される空気圧源からの空気はコンプレッサで圧縮されたものであるから、調圧装置は供給された圧縮空気の脈動を防ぎかつ必要な圧力まで下げなければならない。さらに、空気圧源の圧力が変化しても出力側の空気圧は一体に保たなければならない。従来はこのような制御のために、パッシブ方式の調圧装置が使用されていた。また、精度のよい流量を確保するための調圧装置が開発されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11-95843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
工業製品の精密化が急速に進んできており、空圧機器の精密化が望まれている。つまり、空気圧源の圧力が変化しても減圧された空気は安定している必要があり、さらに調圧装置から供給される圧縮空気で駆動される空圧機器の圧力を設定値から極力変動しないように一定に保つために、応答性がよく、精度のよい流量を確保することも必要である。
【0004】
そこで本発明は、空圧機器の圧力を高精度に制御し、かつ圧力変動に対して迅速に対応できる荷重制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために本発明は、荷重センサまたは圧力センサを備えた空気圧シリンダ装置と、入力された一次圧の気体を二次圧の気体として前記空気圧シリンダ装置に供給する調圧機器本体と、前記調圧機器本体に連結された、出力側の二次圧を設定する調圧ネジ、該調圧ネジを回動させて調圧度合いを調整する回転駆動手段、前記調圧ネジと前記回転駆動手段との間に介在され、所定の間隔で略対向配置された一対の、互いに接離方向に可撓性を有する可撓性部材を備え、該可撓性部材の一方にはその略中央に回転駆動手段が連結され、可撓性部材の他方にはその略中央に前記調圧ネジが連結された調圧装置と、空気圧シリンダ装置の荷重センサまたは圧力センサから出力される荷重信号または圧力信号を受けて、該荷重信号または圧力信号が設定値を保持するように、前記調圧手段の回転駆動手段を駆動する制御手段としたことに特徴を有する。
【0006】
より実際的には、前記空気圧シリンダ装置は、ワークを設定された一定の圧力で押圧する荷重装置であって、前記調圧装置は、一定の圧力を保つように前記調圧機器本体を駆動制御する。
【0007】
前記回転駆動手段はステッピングモータを備え、前記制御手段はPID制御手段を備え、該PID制御手段は、前記荷重センサまたは圧力センサから出力された荷重信号または圧力信号から、前記ステッピングモータを駆動する駆動パルスを算出し、パルス駆動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調圧装置を調圧駆動する駆動機構にバックラッシュが無いので、調圧駆動の際の応答性がよく、迅速にかつ正確に調圧制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明を適用した荷重制御システムの実施形態をブロックで示す図である。空気圧シリンダ装置10は、シリンダ本体11から下方に突出したピストンロッド12の先端部に固定した押圧板13およびアタッチメント14を介して、ロードセル20を押圧する構成である。この空気圧シリンダ装置10には、コンプレッサ100から一次圧で供給された圧搾空気が、モータ駆動式レギュレータ40によって設定された二次圧に減圧されて供給される。空気圧シリンダ装置10のアタッチメント14には、荷重を測定する荷重センサまたは圧力センサ14aが備えられていて、荷重センサまたは圧力センサ14aが検出した荷重信号または圧力信号は、駆動制御回路30により処理され、モータ駆動式レギュレータ40が駆動されて、二次圧が調整される。
【0010】
駆動制御回路30に入力された荷重信号または圧力信号は、増幅アンプ31で増幅され、ローパスフィルタ32で高周波成分が除去され、A/D変換器33でデジタル信号に変換され、PID補償器34により、パルス変換回路35に入力されるパルス制御入力が演算される。そうしてパルス変換回路35により、モータ駆動式レギュレータ40を駆動するパルス信号が生成される。このようにPID制御により生成されたパルス信号によりモータ駆動ドライバ36を介して、モータ駆動式レギュレータ40が駆動される。
【0011】
図2に、モータ駆動式レギュレータ40の一部切断正面図を示し、図3にモータ駆動式レギュレータ40の側面図を示した。このモータ駆動式レギュレータ40は、コンプレッサ100から入力された一次圧空気(図2の矢印IN)を二次圧空気(図2の矢印OUT)として出力する際に、出力側の二次圧を調整するための調圧機器本体60と、出力側の二次圧を設定するために上記調圧機器本体60に連結される調圧ネジ61と、この調圧ネジ61を回して調圧度合いを調整するための回転駆動装置41と、前記調圧ネジ61と回転駆動装置41との間に介在される、回転駆動装置41の回転駆動力を調圧ネジ61に伝達するための連結継ぎ手50とを備えている。
【0012】
調圧機器本体60は、調圧ネジ61を回動させて軸方向に上下させることにより、調圧機器本体60の出力側の二次圧を調整することができるようになっている。
【0013】
回転駆動装置41には、回転駆動源としてのモータが備えられている。この実施例ではモータとして、回転角制御精度が極めて高く、遠隔制御が可能なステッピングモータを備えた。
【0014】
回転駆動装置41のモータ軸42には、接続部材43を介して連結継ぎ手50が接続される。連結継ぎ手50は、所定の間隔を空けて対向配置された、間隔が変化する方向に可撓性を有する一対の半球形の椀型部材51、52を備えている。椀型部材51、52には、頂点(中央)に接続用の円形の穴が形成されている。一方の椀型部材51の穴には接続部材43が挿入され、一体に回動するように穴の周縁部に固定され、他方の椀型部材52の穴には、調圧ネジ61の突出端部に固定された接続部材62が挿入され、一体に回動するように穴の周縁部に固定されている。
【0015】
一対の椀型部材51、52は、対向する円形の周縁部が互いに接合され、リング状の固定部材53で固定されている。なお、椀型部材51、52は固定部材53を用いることなく接合することができる。例えば、椀型部材51、52の周縁部を当接させた後に、これらの開口周縁部を融着させて固着させてもよい。
【0016】
回転駆動装置41に駆動制御回路30が接続されている。そうして、駆動制御回路30から出力されるパルス信号によりステップモータがステップ回動し、モータ軸42、連結継ぎ手50を介して調圧ネジ61を回転駆動して調圧する。つまり、回転駆動装置41のモータ軸42が回転すると、椀型部材51、52を介して調圧ネジ61が回動し、該調圧ネジ61がそのリードにしたがって回転しながら上方または下方に移動することにより、調圧機器本体60の出力側の二次圧を調整することができる。
【0017】
モータ軸42は、回転にかかわらず軸方向には移動しないが、椀型部材51、52が軸方向に変形して調圧ネジ61がモータ軸42に対して接離移動するのを許容する。その際、一対の椀型部材51、52は、軸周りの捻れ力に対してはほとんど撓まないのでバックラッシュ等が無く、モータ軸42の回転を調圧ネジ61に、遅延なく1対1の回転比で伝達することができる。
【0018】
図4には、本実施形態による動作特性をグラフで示した。符号Pは従来のパッシブ制御方式Pの場合を、符号Aは本実施形態のアクティブ制御方式の場合を示していて、ロードセル20を加振した場合の応答特性を示している。このように本実施形態によれば、ロードセル20の荷重が変化しようとしても、その変化を打ち消すように迅速にモータ駆動式レギュレータ40が動作して、荷重、圧力を一定に保つことができる。
【0019】
調圧機器本体60には公知の種々の構造のものを用いることができるが、高精度で応答時間が短いものがよい。
可撓性の連結継ぎ手50は、図示の半球形状の椀型部材51、52に限定されず、錐形状でもよく、接合部の外周形は多角形でもよい。
駆動制御回路30はパーソナルコンピュータ等で構成することが可能であり、制御方式もPID制御に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した荷重制御システムの実施形態をブロックで示す図である。
【図2】同荷重制御システムに使用した調圧装置の実施例であるモータ駆動式レギュレータの一部切断正面図である。
【図3】同荷重制御システムに使用した調圧装置の実施例であるモータ駆動式レギュレータの側面図である。
【図4】本発明を適用した荷重制御システムの実施形態において、ロードセルを加振した場合の応答特性をグラフで示した図である。
【符号の説明】
【0021】
10 空気圧シリンダ装置
11 シリンダ本体
12 ピストンロッド
13 押圧板
14 アタッチメント
20 ロードセル
30 駆動制御回路
31 増幅アンプ
32 ローパスフィルタ
33 A/D変換器
34 PID補償器
36 モータ駆動ドライバ
40 モータ駆動式レギュレータ
41 回転駆動装置
42 モータ軸
50 連結継ぎ手
51 52 椀型部材
53 固定部材
60 調圧機器本体
61 調圧ネジ
62 接続部材
100 コンプレッサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重センサまたは圧力センサを備えた空気圧シリンダ装置と、
入力された一次圧の気体を二次圧の気体として前記空気圧シリンダ装置に供給する調圧機器本体と、
前記調圧機器本体に連結された、出力側の二次圧を設定する調圧ネジ、該調圧ネジを回動させて調圧度合いを調整する回転駆動手段、前記調圧ネジと前記回転駆動手段との間に介在され、所定の間隔で略対向配置された一対の、互いに接離方向に可撓性を有する可撓性部材を備え、該可撓性部材の一方にはその略中央に回転駆動手段が連結され、可撓性部材の他方にはその略中央に前記調圧ネジが連結された調圧装置と、
空気圧シリンダ装置の荷重センサまたは圧力センサから出力される荷重信号または圧力信号を受けて、該荷重信号または圧力信号が設定値を保持するように、前記調圧手段の回転駆動手段を駆動する制御手段と、を備えたことを特徴とする荷重制御システム。
【請求項2】
前記空気圧シリンダ装置は、ワークを設定圧力で押圧する荷重装置であって、前記調圧装置は前記設定圧力を一定に保つように前記調圧機器本体を駆動制御する請求項1記載の荷重制御システム。
【請求項3】
前記回転駆動手段はステッピングモータであって、前記制御手段はPID制御手段を備え、該PID制御手段は、前記荷重センサまたは圧力センサから出力された荷重信号または圧力信号から、前記ステッピングモータを駆動する駆動パルスを算出し、パルス駆動する請求項1または2記載の荷重制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−99690(P2006−99690A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288069(P2004−288069)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】