説明

荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子およびその製造方法

本発明は荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子およびその製造方法に関する。本発明によれば、生体適合性高分子を用いて多孔性粒子を製造すると共に、前記多孔性粒子の空隙の内部に荷電分子を固着することができて、前記多孔性粒子に様々な電荷物質を担持することができ、静電気的引力および多孔の性質に起因して現れる毛細管現象による吸収または吸着が可能であることから種々の薬物または機能性物質を担持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体適合性生分解性高分子は手術用縫合糸、組織再生誘導膜、傷治療用保護膜、薬物担体などとして医療分野において広く使用されている。特に、生分解性高分子の中で、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)およびラクチドとグリコリドとの共重合体(PLGA)は生体適合性に優れており、体内において分解されて二酸化炭素と水など人体に無害な物質に分解されて消失するため多くの研究が行われており、既に商品化されている。
【0003】
特に、前記生分解性生体適合性高分子を薬物担体として利用するために多孔性粒子を製造する技術に対する関心が高まりつつある。その代表例として、高分子の内部に空隙を形成可能な物質(progen)を添加して多孔状の粒子を製造する方法が報告されている(Park, T.G. et al., Biomaterals 27, 152:159, 2006; Park, T.G. et al., J. Control Release 112, 167:174, 2006)。
【0004】
一方、薬物担体としての利用のための多孔性粒子の他の例として、多孔性シリカには構造内にランダムな気孔を有するシリカキセロゲルと極めて均一な気孔径および配列を有するメソ多孔性シリカなどがある。多孔性シリカは生体親和性があり、体内においてはシロキサン結合の加水分解により低分子量のシリカに分解された後にインプラント周りの組織に放出されて血管またはリンパ管を介して腎臓から尿として排泄される。現在、薬物の放出速度を制御するために、シリカキセロゲルとP(CL/DL−LA)(Poly(ε-caprolactone-co-DL-lactide))ポリマーとの有機無機複合体(organic-inorganic complexes)に関する研究がなされている(International J. Pharmaceutics, 212:121, 2001)。
【0005】
また、鋳型を用いた多孔性炭素物質の合成についていくつかの報告された論文がある。球状のシリカ粒子を有するコロイド結晶鋳型に、炭水化物や高分子単量体などの前駆体を注入することによって重合反応過炭素化過程を行った後、鋳型を溶かして除去することにより規則的であり、且つ、一定のサイズを有する新規なマクロ多孔性炭素物質の合成に対する技術が報告されている(Zajhidov A.A. et al., Science, 282:879, 1998)。
【0006】
かような多孔性粒子は薬物、遺伝子、タンパク質などを伝達するための担体または媒体(vehicle)、細胞増殖のための細胞支持体などとして使用されているが、上述した従来の技術において多孔性粒子は空隙を形成するための鋳型を別途に使用することを余儀なくされる点、多孔性粒子の空隙に担持可能な物質に限界がある点などの欠点がある。
【0007】
そこで、本発明者らは前記従来の技術の問題点を改善するために鋭意努力した結果、二重乳化法を用いて多孔性高分子粒子を製造すると共に、荷電分子を前記多孔性高分子粒子の内部に固定化することができ、前記荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子に反対の電荷を帯びる物質を担持することができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の要約】
【0008】
本発明の目的は、荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子およびその製造方法を提供するところにある。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)高分子有機溶液に荷電分子および前記荷電分子に親和性であるタンパク質が溶解された水溶液を分散させて第1分散液を製造するステップと、(b)乳化剤水溶液に前記第1分散液を分散させて第2分散液を製造するステップと、(c)前記第2分散液を攪拌および分離して前記(a)ステップの高分子有機溶液の有機溶媒および(b)ステップの乳化剤を除去した後、多孔性高分子粒子を得るステップと、を含む荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明において、前記高分子は生分解性ポリエステル系高分子であることを特徴とし、前記生分解性ポリエステル系高分子は、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−D−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリヒドロキシブチラートおよびポリヒドロキシバレラートよりなる群から選ばれることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記高分子有機溶液の有機溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、エチルアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、クロロフルオロカーボン、ジクロロメタン、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、エチルホルメート、エチルビニルエーテル、メチルエチルケトン、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、ブタノール、トリエチルアミン、ニトロメタン、オクタン、ペンタン、テトラヒドロフラン、トルエン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレンおよびキシレンよりなる群から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒であることを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記荷電分子に親和性であるタンパク質は、血清タンパク質、血清アルブミン、リポプロテイン、トランスフェリンおよび分子量100以上のペプチド錯体よりなる群から選ばれることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記荷電分子は、染料、蛍光ダイ、治療剤、診断用試薬、抗菌剤、造影剤、抗生剤、蛍光分子および特定の分子に対する標的化分子よりなる群から選ばれることを特徴とし、前記特定の分子に対する標的化分子は、抗体、ポリペプチド、多糖類、DNA、RNA、核酸、脂質および炭水化物よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の組み合わせであることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記乳化剤は、PVA、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤および両性界面活性剤よりなる群から選ばれることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記方法により製造され、荷電分子が固着されており、粒子直径および空隙直径がそれぞれ1〜1000μmおよび100nm〜100μmである多孔性高分子粒子を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、多孔性高分子粒子の荷電分子に薬物が結合されていることを特徴とする薬物担体を提供する。本発明において、前記結合は、静電気的引力、吸収および吸着よりなる群から選ばれる方法によるものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の特徴および実現例は下記の詳細な説明および特許請求の範囲から一層明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従い荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子を製造する過程に対する模式図である。
【図2】本発明に従い製造された多孔性PLGA/HSA/ICGマイクロ粒子のSEM写真を示すものである。
【図3】本発明に従い製造された多孔性PLGA/HSA/Ru−Dyeマイクロ粒子のSEM写真を示すものである。
【図4】本発明に従い製造された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子のSEM写真を示すものである。
【図5】本発明に従い製造された多孔性PLGA/HSA/PSSマイクロ粒子のSEM写真を示すものである。
【図6】本発明に従い製造された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子にICG蛍光ダイを電荷結合させた後、蛍光顕微鏡により観察した写真を示すものである。
【図7】本発明に従い製造された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子にオボアルブミン−蛍光ダイを電荷結合させた後、蛍光顕微鏡により観察した写真を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、二重乳化法を用いて多孔性高分子粒子を製造すると共に、荷電分子を前記多孔性高分子粒子の内部に固着することができ、前記荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子に他の種類の電荷を帯びる物質を担持することを特徴とする。
【0020】
本発明において、二重乳化法は、W/O/W(water-in-oil-in water)の形態を利用するものであり、具体的に、二重乳化法とは、水溶液内に分散される油相の高分子粒子の内部にさらに水溶性物質を含漬させる方法である(Cohen, S. et al., Pharm. Res. 8, 713:720, 1991)。
【0021】
本発明においては、前記二重乳化法に従い、高分子有機溶液にタンパク質および荷電分子の混合水溶液を分散させた後、前記混合水溶液が分散された高分子有機溶液を乳化剤水溶液に分散させて荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子を製造する。
【0022】
本発明において使用される高分子としては、生分解性ポリエステル系高分子を使用することが好ましく、特に、PLGAを使用することが好ましい。PLGAは米国食薬庁において医療用に承認された高分子材料であって、毒性の問題がなくて他の高分子に比べて薬物伝達システムまたは生体材料などの医療用としての直接的な応用が一層容易であるというメリットがある。
【0023】
本発明において使用されるタンパク質は荷電分子に親和性であって乳化安定剤として機能し、これらに限定されるものではないが、アルブミン、グロブリン、フィブリノゲンなどの血清タンパク質、血清アルブミン、リポプロテイン、トランスフェリンおよび分子量100以上のペプチド錯体を使用することができ、特に、血清アルブミンを使用することが好ましい。
【0024】
一般的に、血清アルブミンは、非共有的結合による栄養供給の機能だけではなく、人体内の浸透圧を調節し、カルシウムイオン、様々な金属イオン、低分子量物質、ビリルビン薬物およびステロイドの伝達などの広範な機能を有している。なお、これらの内因性および外因性物質を結合させる機能により、血清アルブミンは、慢性腎不全症、肝硬変およびショック性障害などの疾病および血液と体液損失の治療に使用可能である(Gayathri, V.P., Drug Development Reasearch 58, 219:247, 2003)。
【0025】
本発明において使用される荷電分子は陰電荷または陽電荷を帯びる物質であれば制限なしに使用可能であり、本発明に従い製造された多孔性高分子粒子の空隙の内部表面に固着されて反対の電荷を帯びる物質を前記多孔性高分子粒子に担持させるように機能する。従って、荷電分子は、前記多孔性高分子粒子が薬物および機能性物質を接合して前記薬物および機能性物質の伝達体および細胞支持体として活用できるようにする。
【0026】
本発明において使用される乳化剤水溶液は乳化剤を3次蒸留水に溶解させて製造し、本発明においては、特に、乳化剤水溶液としてポリビニールアセテート(PVA)水溶液を使用することが好ましい。PVAは高分子粒子を安定化させる界面活性剤としての役割を果たし、本発明においては、乳化剤として、PVAの他に、ドモノステアリン酸グリセリンおよびステアリンなどの多価アルコール誘導体、ソルビタンエステル類、ポリソルベート類などを含む非イオン性界面活性剤およびセチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの陽イオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩などの陰イオン性界面活性剤および高級アルキルアミノ酸、ポリアミノモノカルボン酸、レシチンなどの両性界面活性剤を使用することができるが、これらに制限されない。
【0027】
本発明においては、高分子有機溶媒に、タンパク質および荷電分子の混合水溶液を分散させるとき、逆エマルジョン状態(water-in-oil emulsion)で分散させることが好ましい。ここで、逆エマルジョン状態とは、油相内に水相が液滴を形成しながら分散された形態を言うものであり、本発明においては、水相としての荷電分子および前記荷電分子に親和性であるタンパク質の混合水溶液が液滴を形成しながら高分子有機溶液に分散されて、最終的に得られる多孔性高分子粒子の空隙を形成することになる。
【0028】
また、前記荷電分子および荷電分子に親和性であるタンパク質の混合水溶液が高分子有機溶液に分散されて液滴を形成するとき、前記荷電分子がそれぞれの液滴の内部に均一に分散されて前記高分子有機溶媒に分散された混合水溶液液滴の塊化現象が電荷反発力により防止されて、最終的に得られる多孔性高分子粒子の空隙を形成することになる。
【0029】
本発明において、前記荷電分子および荷電分子に親和性であるタンパク質の混合水溶液が分散された高分子有機溶液を乳化剤水溶液に分散させると、前記乳化剤水溶液は液滴を形成し、このとき、前記高分子有機溶液の有機溶媒を除去した後、前記高分子の固形化により多孔性高分子粒子を得ることができる。
【0030】
本発明に従い製造された多孔性高分子粒子の空隙の内部には荷電分子が固着されていて、反対の電荷を帯びる他の物質を前記多孔性高分子粒子の内部に容易に担持することができる。特に、前記荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子は医療用薬物を担持する上で有効であるため薬物担体としての効用が多大であるといえる。
【0031】
本発明に係る荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子を薬物担体として活用するためには、前記多孔性高分子粒子の空隙の内部に薬物を結合させることが好ましく、このとき、薬物が多孔性高分子粒子の空隙の内部に結合される原理は、静電気的引力、吸収または吸着に基づく。
【0032】
先ず、静電気的引力による結合を説明すると、前記多孔性高分子粒子の空隙に固着された荷電分子と前記荷電分子とは反対の電荷を帯びる薬物の静電気的引力により薬物が多孔性高分子粒子の空隙に結合される。
【0033】
また、多孔性高分子粒子の多孔性による吸収および吸着によっても薬物が多孔性高分子粒子の空隙に結合可能であるが、本発明において、多孔性による吸収又は吸着とは、多孔性粒子に形成された空隙の特性による吸収または吸着現象を意味する。
【0034】
一般的に、活性炭やゼオライト、金属酸化物およびシリカを用いて製造された多孔性粒子は空隙の粒径が小さくて毛細管現象による吸収および毛細管凝結の性質を有しており、界面の多くの空隙により気体、液体、固体などの他の相との物理的吸着が増大される性質を有していることが知られている(Olivier, J.P., Studies in Surface Science and Catalysis, 149, 1:33, 2004 ; Stevik, T.K. et al., Water Research 38(6), 1355:1367, 2004; Steele, W., Applied Surface Science 196(1-4), 3:12, 2002)。
【0035】
本発明に従い製造された多孔性高分子粒子からも毛細管現象を観察することができ、このような毛細管現象により液体を吸収して空隙に結合させることができ、また、吸着により多孔性高分子粒子の空隙に担持しようとする物質を結合させることができ、特に、本発明の多孔性高分子粒子は空隙に起因して比表面積が大きくなるため多量の物質を吸着することができる。
【0036】
上述したように、本発明に係る多孔性高分子粒子の結合能力を用いて、動物、植物、微生物、ウィルスなどの抽出物を原料として製造された薬物および化学的合成法により製造された薬物を担持することができて、薬物伝達システムとして使用可能であり、さらに、薬物以外の種々の機能性物質を担持することにより各種の産業分野に適用することができる。
【0037】
特に、前記動物、植物、微生物およびウィルスよりなる群から選ばれるいずれか一種の抽出物を原料とする薬物は、DNA、RNA、ペプチド、アミノ酸、タンパク質、コラーゲン、ゼラチン、脂肪酸、ヒアルロン酸、胎盤、ビタミン、単糖類、多糖類、ボトックスおよび金属化合物を含み、前記化学的合成法により製造された薬物は抗精神病薬物、抗うつ剤、抗不安剤、鎮痛剤、抗菌剤、鎮静睡眠剤、抗痙攣剤、パーキンソン病治療剤、麻薬性鎮痛剤、非麻薬性鎮痛消炎剤、コリン性薬物、アドレナリン性薬物、抗高血圧剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、抗不整脈剤、強心剤、抗アレルギー性薬物、抗潰瘍剤、プロスタグランジンアナログ、抗生物質、抗真菌剤、抗原生動物薬物、駆虫剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、ホルモン関連薬物、糖尿病治療剤、動脈硬化治療剤および利尿剤を含むが、これらに制限されない。
【0038】
本発明の一実現例によれば、高分子としてPLGA、有機溶媒として塩化メチレン、乳化安定剤としてヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)、荷電分子としてインドシアニングリーン(ICG:Indocyanine Green)および乳化剤水溶液としてPVA溶液を用いて、荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子を製造することができる。
【0039】
図1に示すように、ステージ1においては、PLGAを塩化メチレン溶媒に溶解させてPLGA有機溶液(O)を製造し、HSAおよびICGを3次蒸留水に溶解させたHSA−ICG水溶液(W)を製造した後、前記PLGA有機溶液にHSA−ICG水溶液を逆硫化状態(W/O)で分散させた。ステージ2においては、逆硫化状態で分散されたPLGA/HSA−ICG溶液をPVA水溶液(W)に分散させ(W/O/W)、ステージ3においては、塩化メチレン溶媒の自発性蒸発およびPVAのコアセルベーション現象を確認し、ステージ4においては、PLGAの固形化によりPLGA粒子の内部にHSA−ICG水溶液がPLGA有機溶液に分散された形態で残留して多孔性を示し、前記多孔の内部にHSAおよびICGが固着された多孔性PLGA粒子を得た。
【0040】
ここで、コアセルベーションとは、親水性コロイドが液滴を形成する現象をいい、本発明においては乳化剤水溶液が液滴を形成することを言う。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0042】
実施例1:多孔性PLGA/ヒト血清アルブミン(HSA)/インドシアニングリーン(ICG)マイクロ粒子の製造
PLGA100mgを塩化メチレン2mlに溶解させてPLGA有機溶液を製造し、ヒト血清アルブミン(HSA)15mgおよびインドシアニングリーン(ICG)5mg(陰電荷)を3次蒸留水250μlに順次、溶解させて混合水溶液を製造した。前記PLGA有機溶液に前記混合水溶液を分散させて攪拌した後、前記混合水溶液が分散されたPLGA有機溶液を4%−PVA溶液30mlに徐々に滴下しながらホモジナイザーを用いて25000rpmで、5分間分散させた後、一晩中攪拌させて塩化メチレン溶媒を除去した。その後、8000rpmにて10分間遠心分離して多孔性PLGA/HSA/ICGマイクロ粒子を得た。上清みは注ぎ捨て、蒸留水を添加して超音波にて再分散させた後、さらに遠心分離する過程を3回繰り返し行った後、多孔性PLGA/HSA/ICGマイクロ粒子を最終的に得、凍結乾燥して4℃で保管した。
【0043】
最終的に得られた前記多孔性PLGA/HSA/ICGマイクロ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した結果、粒子直径は1〜50μmであり、空隙直径は100nm〜2μmであった(図2)。
【0044】
実施例2:多孔性PLGA/HSA/Ru−Dye[トリス(2.2’-ビピリジル)ジクロロ-ルテニウム(II)DYES]マイクロ粒子の製造
PLGA100mgを塩化メチレン2mlに溶解させてPLGA有機溶液を製造し、ヒト血清アルブミン(HSA)15mgおよびRu−Dye 5mg(陽電荷)を3次蒸留水250μlに順次に溶解させて混合水溶液を製造した。前記PLGA有機溶液に前記混合水溶液を分散させて攪拌した後、前記混合水溶液が分散されたPLGA有機溶液を4%−PVA溶液30mlに徐々に滴下しながらホモジナイザーを用いて25000rpmにて5分間分散させた後、一晩中攪拌させて塩化メチレン溶媒を除去した。その後、8000rpmにて10分間遠心分離して多孔性PLGA/HSA/Ru−Dyeマイクロ粒子を得た。上清みは注ぎ捨て、蒸留水を添加して超音波にて再分散させた後、さらに遠心分離する過程を3回繰り返し行った後、前記多孔性PLGA/HSA/Ru−Dyeマイクロ粒子を最終的に得、凍結乾燥して4℃で保管した。
【0045】
最終的に得られた前記多孔性PLGA/HSA/Ru−Dyeマイクロ粒子をSEMにより観察した結果、粒子直径は1〜50μmであり、空隙直径は100nm〜5μmであった(図3)。
【0046】
実施例3:多孔性PLGA/HSA/PEI(ポリエチレンイミン)マイクロ粒子の製造
PLGA100mgを塩化メチレン2mlに溶解させてPLGA有機溶液を製造し、ヒト血清アルブミン(HSA)15mgおよびPEI(ポリエチレンイミン)5mg(陽電荷)を3次蒸留水250μlに順次、溶解させて混合水溶液を製造した。前記PLGA有機溶液に前記混合水溶液を分散させて攪拌した後、前記混合水溶液が分散されたPLGA有機溶液を4%−PVA溶液30mlに徐々に滴下しながらホモジナイザーを用いて25000rpmで、5分間分散させた後、一晩中攪拌させて塩化メチレン溶媒を除去した。その後、8000rpmにて10分間遠心分離して多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子を得た。上清みは注ぎ捨て、蒸留水を添加して超音波により再分散させた後、さらに遠心分離する過程を3回繰り返し行った後、前記多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子を最終的に得、凍結乾燥して4℃で保管した。
【0047】
最終的に得られた前記多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子をSEMにより観察した結果、粒子直径は1〜50μmであり、空隙直径は100nm〜10μmであった(図4)。
【0048】
実施例4:多孔性PLGA/HSA/PSS[ポリ(ソジウム4−スチレンスルホナート)]マイクロ粒子の製造
PLGA100mgを塩化メチレン2mlに溶解させてPLGA有機溶液を製造し、ヒト血清アルブミン(HSA)15mgおよびPSS[ポリ(ソジウム4−スチレンスルホナート)]5mg(陽電荷)を3次蒸留水250μlに順次、溶解させて混合水溶液を製造した。前記PLGA有機溶液に前記混合水溶液を分散させて攪拌した後、前記混合水溶液が分散されたPLGA有機溶液を4%−PVA溶液30mlに徐々に滴下しながらホモジナイザーを用いて25000rpmで、5分間分散させた後、一晩中攪拌させて塩化メチレン溶媒を除去した。その後、8000rpmにて10分間遠心分離して多孔性PLGA/HSA/PSSマイクロ粒子を得た。上清みは注ぎ捨て、蒸留水を添加して超音波により再分散させた後、さらに遠心分離する過程を3回繰り返し行った後、前記多孔性PLGA/HSA/PSSマイクロ粒子を最終的に得、凍結乾燥して4℃で保管した。
【0049】
最終的に得られた前記多孔性PLGA/HSA/PSSマイクロ粒子をSEMにより観察した結果、粒子直径は1〜50μmであり、空隙直径は100nm〜10μmであった(図5)。
【0050】
実施例5:多孔性PLGA/HSA/PEI(ポリエチレンイミン)マイクロ粒子へのICG蛍光ダイ電荷結合実験
実施例3に従い製造され、空隙の内部に陽電荷が固着された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子をPBS(pH7.4)溶液に添加して約3mg/mlの濃度にて溶液を製造した後、前記溶液1mlに弱い陰電荷を帯びるICG(インドシアニングリーン)5mgを添加した後、20分間攪拌させて混合溶液を製造した。前記混合溶液を約5分間10000rpmで、遠心分離し、PBS溶媒に再分散させる過程を3回繰り返し行った後、ICGが特異的に電荷結合された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子を得た。
【0051】
前記得られたICGが電荷結合された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子を蛍光顕微鏡により観察した結果、ICGが空隙の内部にのみ特異的に電荷結合されていることを確認した(図6)。
【0052】
実施例6:多孔性PLGA/HSA/PEI(ポリエチレンイミン)マイクロ粒子へのオボアルブミン−蛍光ダイ電荷結合実験
実施例3に従い製造され、空隙の内部に陽電荷が固着された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子をPBS(pH7.4)溶液に添加して約3mg/mlの濃度にて溶液を製造した後、前記溶液1mlにpH7.4において陰電荷を帯びるオボアルブミン−蛍光ダイ(45kDa、pI=4.6)5mgを添加した後、20分間攪拌させて混合溶液を製造した。前記混合溶液を約5分間1000rpmにて遠心分離し、PBS溶媒に再分散させる過程を3回繰り返し行った後、オボアルブミン−蛍光ダイが特異的に電荷結合された多孔性PLGA/HSA/PEIマイクロ粒子を得た(図7)。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上述べたように、本発明によれば、生体適合性高分子を用いて多孔性粒子を製造すると共に、前記多孔性粒子の空隙の内部に荷電分子を固着することにより、前記多孔性粒子に様々な電荷物質を担持することができ、静電気的引力および多孔の性質に起因して現れる毛細管現象による吸収または吸着が可能であることから種々の薬物または機能性物質を担持することができ、さらに、分離用カラムまたは膜としての応用も可能であり、組織工学においては多孔性粒子を用いた細胞支持剤としての活用も可能である。
【0054】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む、荷電分子が固定化した多孔性高分子粒子の製造方法:
(a)高分子有機溶液に、荷電分子および前記荷電分子に親和性であるタンパク質が溶解された水溶液を分散させて第1分散液を製造するステップと、
(b)乳化剤水溶液に、前記第1分散液を分散させて第2分散液を製造するステップと、
(c)前記第2分散液を攪拌および分離して前記ステップ(a)の高分子有機溶液の有機溶媒およびステップ(b)の乳化剤を除去した後、多孔性高分子粒子を得るステップ。
【請求項2】
前記高分子は生分解性ポリエステル系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステル系高分子は、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−D−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリヒドロキシブチラートおよびポリヒドロキシバレラートよりなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子有機溶液の有機溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、エチルアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、クロロフルオロカーボン、ジクロロメタン、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、エチルホルメート、エチルビニルエーテル、メチルエチルケトン、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、ブタノール、トリエチルアミン、ニトロメタン、オクタン、ペンタン、テトラヒドロフラン、トルエン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレンおよびキシレンよりなる群から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記荷電分子に親和性であるタンパク質は、血清タンパク質、血清アルブミン、リポプロテイン、トランスフェリンおよび分子量100以上のペプチド錯体よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記荷電分子は、染料、蛍光ダイ、治療剤、診断用試薬、抗菌剤、造影剤、抗生剤、蛍光分子および特定の分子に対する標的化分子よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記特定の分子に対する標的化分子は、抗体、ポリペプチド、多糖類、DNA、RNA、核酸、脂質および炭水化物よりなる群から選ばれるいずれか1種、または2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記乳化剤は、PVA、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤および両性界面活性剤よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により製造され、荷電分子が固着されており、粒子直径および空隙直径がそれぞれ1〜1000μmおよび100nm〜100μmである多孔性高分子粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の多孔性高分子粒子の荷電分子に薬物が結合されていることを特徴とする薬物担体。
【請求項11】
前記結合は、静電気的引力、吸収および吸着よりなる群から選ばれる方法によるものであることを特徴とする請求項10に記載の薬物担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−535885(P2010−535885A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519858(P2010−519858)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004540
【国際公開番号】WO2009/020334
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】