説明

菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法

【構成】酵素活性を有する微生物菌体またはその固定化物を水性媒体に懸濁した状態で、酵素活性および菌体細胞を長期間安定に保存する方法において、該水性媒体が中性乃至弱塩基性で且つ100mM乃至飽和濃度の無機塩類水溶液である菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法。
【効果】本発明によれば、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ等の酵素活性を有する多量の菌体、あるいは固定化菌体粒子を、室温下でも溶菌や酵素の劣化なしに長期間(例えば、300日間)保存することが可能となり、これまでに保存上必要とされてきた労力や冷却コストを大幅に軽減することができ、工業的に満足し得る重要な手法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法、より詳しくは、微生物菌体を培養により製造した後、得られた菌体またはその固定化物を水性媒体中に懸濁した状態で安定に保存する方法に関する。
【0002】微生物の産生する酵素は、化学変換反応の触媒として多くの場面で使用されている。とりわけ、ニトリル基の水和または加水分解能を有するニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ等の利用は、化学工業上重要なアミド、カルボン酸、α−ヒドロキシカルボン酸等の安価な製造を可能にする。さらに、光学特異的水和または光学特異的加水分解能をもつ該酵素の利用は、医薬、農薬の製造原料として重要な光学活性カルボン酸、アミノ酸、α−ヒドロキシカルボン酸等の製造も可能にする。
【0003】
【従来の技術】微生物酵素を触媒とする化学変換反応においては、培養、集菌した微生物細胞またはその固定化物を使用時まで安定に保存しておく必要がある。すなわち、酵素の触媒能が失われたり、低下したりすることなく、また雑菌が混入して、腐敗したり、あるいは溶菌したりしないように保存しておかなければならない。そこで一般的には、凍結や冷蔵などの手法で酵素の失活や溶菌、腐敗等を抑制し保存されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これまでに知られている保存方法のうち、菌体あるいは固定化菌体粒子を凍結する方法では、凍結、融解操作が煩雑であり、またその操作に伴い酵素活性が失われたり、低下したりする可能性がある。また冷蔵して保存する方法では雑菌の混入防止と菌体細胞の安定化のために、比較的低温での保存が必要となり、冷却コスト面での負担が大きい。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、培養、集菌した菌体またはその固定化物を、安価でしかも安定的に保存する条件について鋭意検討した結果、菌体またはその固定化物を中性乃至塩基性で且つ100mM乃至飽和濃度の無機塩類水溶液中に保存することで、室温下でも溶菌や酵素の失活を起こさず、300日以上もの安定保存が可能であることを見い出し、本発明に至った。
【0006】すなわち、本発明は、酵素活性を有する微生物菌体またはその固定化物を水性媒体に懸濁した状態で、酵素活性および菌体細胞を長期間安定に保存する方法において、該水性媒体が中性乃至弱塩基性で且つ100mM乃至飽和濃度の無機塩類水溶液であることを特徴とする菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法、である。
【0007】本発明の無機塩類水溶液は、燐酸塩、硼酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩および塩酸塩から選ばれた少なくとも1種の塩の水溶液であり、燐酸塩および硼酸塩の水溶液は、それぞれ所謂、燐酸緩衝液および硼酸緩衝液であることが好ましい。また、塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等である。
【0008】本発明の無機塩類水溶液の濃度は、100mMから飽和濃度の高濃度水溶液である。飽和濃度は塩の種類および温度によって異なるが、通常300〜500mMの濃度範囲とすることが好ましい。
【0009】また、無機塩類水溶液は中性乃至弱塩基性とすることが必要であり、pHとしては通常7〜10、好ましくは7.5〜9.5に調整する。
【0010】本発明の対象となる酵素活性および該酵素活性を有する微生物は、特に制限されないが、酵素活性としては、例えば、ニトリルヒドラターゼ活性、ニトリラーゼ活性等が挙げられる。
【0011】ニトリルヒドラターゼ、ニトリラ−ゼを産生する微生物としては、多くのものが知られているが、高い酵素活性を有するロドコッカス属、ゴルドナ属等の微生物が好適である。
【0012】具体的には、ロドコッカス sp.HT40−6株(FERM P−11774)、ロドコッカス ロドクロウス ATCC33278株、ロドコッカス ロドクロウス J−1株(FERM BP−1478)およびゴルドナ テラエMA−1株(FERM BP−4535)等を挙げることができる。
【0013】これらの菌株のうち、ロドコッカス ロドクロウス ATCC33278株は公知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)より容易に入手することができる。また、ロドコッカス sp.HT40−6株およびロドコッカス ロドクロウス J−1株も公知であり、上記番号にて工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されており、菌学的性質はそれぞれ特開平4−222591号公報および特公平6−55148号公報に記載されている。
【0014】ゴルドナ テラエ MA−1株は本発明者の一部らにより土壌より見い出され、同様に工業技術院生命工学工業技術研究所に上記番号にて寄託されている。本菌の菌学的性質は以下に示すとおりである。
【0015】
MA−1株 形 態 多形性桿菌 グラム染色性 + 芽 胞 − 運 動 性 − オキシダーゼ − カタラーゼ + 集落の色調 ピンクないしオレンジ rod-coccus cycle + 集落周辺細胞の伸長 認める 気菌糸の形成 認めず 酸素に対する態度 好気性 細胞壁のジアミノ酸 meso-ジアミノピメリン酸 グリコリル試験 +(グリコリル型)
細胞壁の糖組成 アラビノース + ガラクトース + キノン系 MK-9(H2 ) アデニン分解 − チロシン分解 − 尿素分解 + 資化性 イノシトール − マルトース − マンニトール + ラムノース + ソルビトール + m-ヒドロキシ−安息香酸ナトリウム − 安息香酸ナトリウム + クエン酸ナトリウム + 乳酸ナトリウム + テストステロン + アセトアミド − ピルビン酸ナトリウム + 0.02% アゾ化ナトリウム存在下での生育 + 10℃での生育 + 40℃での生育 + 0.001%クリスタルバイオレット存在下での生育 + 0.3%フェニルエタノール存在下での生育 + 5%NaCl存在下での生育 + 7%NaCl存在下での生育 +
【0016】以上の菌学的性質をバージェーの細菌分類書〔Bergey's Manual of Systematic Bacteriology (1986) 〕、J. Gen. appl. Microbiol., 34, 341-348 (1988)および Int. J. Syst. Bacteriol. 39, 371 (1989)に基づいて分類すると、MA−1株はゴルドナ属テラエ種(Gordona terrae)に属する細菌と同定された。
【0017】次に、本発明の一般的実施態様について説明する。本発明に使用される微生物の培養は、資化し得る炭素源(グルコース、フラクトース等)、窒素源(酵母エキス、ペプトン、硫酸アンモニウム等)、無機塩(塩化マグネシウム、塩化第二鉄、リン酸二ナトリウム等)、またニトリルヒドラターゼやニトリラーゼの活性誘導を行うために酵素の補欠分子族となる金属塩(塩化コバルト、硫酸第二鉄等)、誘導剤としてのニトリル類(ベンゾニトリル、イソブチロニトリル、サクシノニトリル等)、アミド類(ε−カプロラクタム、イソブチルアミド、プロピオンアミド等)、等を添加して行う。培養液のpHは4〜10の範囲、好ましくは6〜9の範囲、培養の温度は20〜40℃の範囲、好ましくは25〜35℃の範囲で、1〜7日間好気的に行い、活性が最大となるまで培養すればよい。
【0018】遠心集菌した菌は硼酸緩衝液、燐酸緩衝液等で1〜2回洗浄する。次いで、終濃度が目的の濃度となるように菌体懸濁液と前記無機塩類水溶液とを混合する。
【0019】菌体を固定化して用いる場合は、通常、洗浄した菌体の懸濁液を以下の処方により固定化後、造粒する。すなわち、洗浄菌体の懸濁液に、アクリル系のモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリルアミド、メタクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等)の1種もしくは2種類以上と架橋剤(例えば、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタアクリルアミド、1,2−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等)の混合液を添加し、これに通常用いられている重合開始剤および促進剤、例えば、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを加えて重合、ゲル化させる。これを粒子状に切断し、硼酸緩衝液、燐酸緩衝液等で再洗浄した後、菌体の場合と同様に、無機塩類水溶液と混合する。
【0020】なお、固定化における、菌体およびモノマー混合液の量的関係は、菌体が乾燥重量換算、通常0.1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%であり、モノマー混合液が、通常2〜30重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0021】保存時の菌体濃度および固定化菌体粒子濃度は特に制限は無いが、乾燥菌体換算、0.1〜30重量%の範囲とすればよい。また、保存温度は通常0〜40℃、好ましくは0〜35℃である。
【0022】なお、さらに保存時の腐敗等を防止するため、保存液に防菌または防黴効果のある薬剤やエチレンジアミン四酢酸等の上記以外の塩類を添加することも可能である。
【0023】保存菌体、固定化菌体粒子を変換反応触媒として生産反応に使用する場合は、これらの懸濁液を反応液中に直接投入するか、もしくは必要に応じてこれらを洗浄した後に使用すればよい。
【0024】
【実施例】次に本発明を実施例により具体的に説明する。
【0025】実施例1(1)培養ニトリラ−ゼ活性を有するゴルドナ テラエ MA−1株を、酵素活性誘導剤として1ーシクロヘキセニルアセトニトリルを添加した下記の培地にて、30℃、72時間好気的に培養した。
培地組成(pH7.5)
グルコース 30g グルタミン酸ナトリウム 15g 酵母エキス 8g 燐酸二ナトリウム 7.1g 燐酸一カリウム 6.8g 硫酸ナトリウム 2.8g 塩化マグネシウム 0.4g 塩化カルシウム 0.04g 硫酸マンガン 0.03g 塩化鉄 0.006g 硫酸亜鉛 0.003g 1−シクロヘキセニルアセトニトリル 0.5g 蒸留水 1000ml
【0026】(2)保存用菌体懸濁液の作製培養終了液を45mlずつ5本に分け、遠心集菌(10,000rpm、15分、10℃)し、それぞれ45mlの50(比較例)、100、300、500および700mMの燐酸緩衝液(pH8.0、K2 HPO4 −KH2 PO4 )で1回菌体を洗浄した後、洗浄に用いた各濃度の燐酸緩衝液45mlに再懸濁した。菌体懸濁液は15mlずつ3本の蓋付きガラス容器に小分けして5、20、30℃の暗所に保存した。保存0、120、300日後に菌体懸濁液の一部を取り出して活性測定を行った。
【0027】(3)ニトリラーゼ活性の測定菌体保存液を少量取り、遠心集菌(1,5000rpm、5分、10℃)し、2倍量の50mM燐酸緩衝液(pH8.0、Na2 HPO4 −KH2 PO4 )で菌体を2回洗浄後、100mM亜硫酸ナトリウムを含む同様の燐酸緩衝液に懸濁した。ニトリラーゼ活性の測定は、基質のマンデロニトリルの菌体懸濁液への添加にて反応を開始し(マンデロニトリル20mM)、30℃、30分の振とうの後に、遠心除菌(1,5000rpm、5分、10℃)して反応を停止した。遠心上清中に含まれるR−マンデル酸生成量は、液体クロマトグラフィー(カラム;Wakosil 0DS 5C18,溶離液;0.1M燐酸:アセトニトリル=3:1,検出波長;254nm)で分析した。
【0028】活性は1mg乾燥菌体が1分間に反応液1ml中で1μmolのマンデル酸を生成する能力を1ユニット(1U)と定義した。また、保存液1mlの活性量は1mg乾燥菌体の活性と保存液1ml中に存在する乾燥菌体量(mg)を乗じることにより求めた。
【0029】(4)結果表−1に、0日目の保存液1mlの活性量を1.0としたときの相対値を示した。
【0030】


【0031】実施例2実施例1の培養終了液20mlずつを6本の遠心管に取り集菌(10,000rpm、15分、10℃)し、それぞれ同量の50mM燐酸緩衝液(pH8.0、K2 HPO4 −KH2 PO4 )で1回菌体を洗浄した後、300mM硫酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、300mM塩化カリウムまたは100mM亜硫酸ナトリウムを含む上記50mM燐酸緩衝液20mlに再懸濁した。また、塩類無添加の再懸濁液(比較例)も用意した。これらの菌体懸濁液は20℃、60日間暗所にて保存した。実施例1と同様に保存液1mlの活性量を測定し、0日目の活性を1.0としたときの相対値を表−2に示した。
【0032】


【0033】実施例3実施例1の培養終了液20mlずつを3本の遠心管に取り集菌(10,000rpm、15分、10゜C)し、それぞれpH6.0(比較例)、7.0および8.0の300mM燐酸緩衝液(pH8.0、Na2 HPO4 −KH2 PO4 )20mlで1回菌体を洗浄した後、洗浄に用いた各pHの燐酸緩衝液20mlに再懸濁した。これらの菌体懸濁液は20℃、60日間暗所にて保存した。実施例1と同様に保存液1mlの活性量を測定し、0日目の活性を1.0としたときの相対値を表−3に示した。
【0034】


【0035】実施例4(1)培養ニトリルヒドラタ−ゼ活性を有するロドコッカス sp.HT40−6株を、酵素活性誘導剤としてε−カプロラクタムを含む下記の培地にて、30℃、96時間好気的に培養した。
培地組成(pH7.5)
グルコース 27g ポリペプトン 4g 酵母エキス 2g 燐酸二ナトリウム 7.1g 燐酸一カリウム 6.8g 硝酸アンモニウム 2g 塩化マグネシウム 0.4g 硫酸アンモニウム 0.2g 塩化カルシウム 0.04g 硫酸マンガン 0.03g 塩化コバルト・6水塩 0.03g 塩化鉄 0.006g 硫酸亜鉛 0.003g ε−カプロラクタム 4g 蒸留水 1000ml
【0036】(2)保存用菌体懸濁液の作製培養終了液を45mlずつ5本に分け、遠心集菌(10,000rpm、15分、10゜C)し、それぞれ45mlの50mM燐酸緩衝液(pH8.0、K2HPO4 −KH2 PO4 )(比較例)および300mMの燐酸緩衝液(pH8.0、Na2 HPO4 −KH2 PO4 )で1回菌体を洗浄した後、洗浄に用いた各濃度の燐酸緩衝液20mlに再懸濁した。これらの菌体懸濁液を20℃、120日間、暗所に保存し、0日目と120日目に菌体懸濁液の一部を取り出して活性測定を行った。
【0037】(3)ニトリルヒドラターゼ活性の測定実施例1に示したニトリラーゼ活性の測定法と同じ条件および手法にて反応を行い生成物(マンデルアミド)を実施例1と同じ条件で、液体クロマトグラフィーを用いて定量した。
【0038】(4)結果表−4に0日目の保存液1mlの活性量を1.0としたときの相対値を示した。


【0039】実施例5ゴルドナ テラエ MA−1株およびロドコッカス sp.HT40−6株をそれぞれ実施例1および実施例4の方法により培養した。培養終了液をそれぞれ20ml取り遠心集菌(10,000rpm、15分、10゜C)し、菌体を同量の100mMほう酸緩衝液(pH9.0、Na2 4 7 ・10H2 O−HCl)で1回洗浄した後、20mlの同緩衝液に再懸濁した。これらの菌体懸濁液を20℃、200日間暗所にて保存し、0日目と200日目の保存液1mlの活性量をそれぞれ実施例1および実施例4に示した手法により求め、0日目の保存液1mlの活性量を1.0としたときの相対値を表−5に示した。
【0040】


【004 1】実施例6(1)固定化菌体粒子調製ニトリルヒドラターゼ活性を有するロドコッカス ロドクロスJ−1株を、グルコース2%、尿素1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、塩化コバルト0.05%(何れも重量%)を含む培地(pH7.0)により、好気的に培養した。これを50mM燐酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄して得た菌体懸濁液(乾燥菌体20重量%)500gに、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドおよび2−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが、それぞれ20、2および2重量%濃度のモノマー混合液500gを加え、よく懸濁した。これに50重量%過硫酸アンモニウム2g、50重量%のN,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン2gを加え、重合、ゲル化させた。これを、約1mm角の立方体に切断後、20mMの硫酸ナトリウム1000mlで5回洗浄し、固定化菌体粒子を得た。
【0042】(2)保存用固定化菌体粒子懸濁液の作製静置沈降させた固定化菌体粒子を500mlのポリ容器に200mlとり、それに40%の硫酸アンモニウム溶液(pH7.0に調製)を200ml添加し、30℃にて100日間保存した。なお、20mMの硫酸ナトリウムを添加したもの(比較例)についても同様の操作を行った。
【0043】(3)ニトリルヒドラターゼ活性の測定固定化菌体粒子保存液を少量取り、5倍量の50mMの燐酸緩衝液(pH7.0、Na2 HPO4 −KH2 PO4 )で洗浄した。これをガーゼに包んで遠心脱水したのち、約1g分取し、同じ燐酸緩衝液100mlに懸濁した。これに5%のアクリロニトリルの上記燐酸緩衝液溶液を添加して反応を開始し、0℃、20分の振とうの後に、0.45μmのフィルターにて反応液を濾過して反応を停止させた。ろ液中に含まれるアクリルアミド生成量は、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0044】(4)結果表−6に0日目の固定化菌体粒子1gの活性量を1.0としたときの相対値を示した。


【0045】
【効果】本発明によれば、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ等の酵素活性を有する多量の菌体、あるいは固定化菌体粒子を、室温下でも溶菌や酵素の劣化なしに長期間(例えば、300日間)保存することが可能となり、これまでに保存上必要とされてきた労力や冷却コストを大幅に軽減することができ、工業的に満足し得る重要な手法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 酵素活性を有する微生物菌体またはその固定化物を水性媒体に懸濁した状態で、酵素活性および菌体細胞を長期間安定に保存する方法において、該水性媒体が中性乃至弱塩基性で且つ100mM乃至飽和濃度の無機塩類水溶液であることを特徴とする菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法。
【請求項2】 無機塩類水溶液が、燐酸塩、硼酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩および塩酸塩から選ばれた少なくとも1種の塩の水溶液である請求項1記載の菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法。
【請求項3】 無機塩類水溶液のpHが7〜10である請求項1記載の菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法。
【請求項4】 酵素活性がニトリルヒドラターゼ活性またはニトリラーゼ活性である請求項1記載の菌体または固定化菌体の懸濁液の保存方法。