説明

蒸気発生器

【課題】コンパクトな構成でありながら、迅速に飽和蒸気を発生させることができる蒸気発生器を提供する。
【解決手段】バーナー20の燃焼により発生する熱によって、容器2内に収容されている水Wを加熱して飽和蒸気Vを発生させる蒸気発生器1であって、容器2に、バーナー20の燃焼により発生した燃焼ガスEが流通する炉筒3と、炉筒3と熱的に接続された炉筒3の外周側に設けられた多孔質体9とを備え、多孔質体9は、水Wの浸透性を有するとともに、容器2に収容されている水Wの水面下から水面上にわたる状態で配設されて、多孔質体9に浸透した水Wを炉筒3からの伝熱によって加熱して飽和蒸気Vを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーの燃焼により発生する熱によって、容器の内部に収容されている水を加熱して飽和蒸気を発生させる蒸気発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸気発生器として、例えば、特許文献1には、水と電気ヒータが収納される筒状の収納部を、その管軸が水平となるように設置するとともに、飽和蒸気を発生させる筒状の缶体を、その缶体の管軸が収容部の管軸に対して垂直となるように、収容部外周面の一端部上方に連通状態で接続して、収容部と缶体とで略L字型の容器が構成された蒸気発生器が開示されている。
【0003】
そして、収納部に収納される電気ヒータは、管状の収納部の管軸に沿う状態で設けられた長手の電気ヒータであり、この電気ヒータが設けられた収容部は、飽和蒸気を発生する水によって完全に満たされるとともに、その水は収容部の端部上方に連通状態で接続された缶体の内部下方の位置まで満たされる状態とされ、電気ヒータによって水が加熱されると、その缶体の内部の水面から飽和蒸気が発生する構成とされている。
【0004】
このように、収納部と缶体とを接続して略L字型の容器を構成することによって、例えば、収容部をその管軸が鉛直となるように設置して、収容部と缶体とを縦に接続された容器で構成する場合に比べて、容器の高さ方向の長さを短くすることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−53146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の蒸気発生器では、上述の如く、略L字型の容器で構成されているため、その容器の高さを低くすることができるものの、水平方向の長さが長くなるので、蒸気発生器をコンパクトに構成することができないという問題がある。
また、缶体内部の水面から十分な量の飽和蒸気を発生させるためには、容器に収容されている水の全量を電気ヒータによって加熱して昇温させることが必要となるが、その多量の水の昇温に時間を要するため、十分な量の飽和蒸気が発生する状態となるまでに長い時間を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンパクトな構成でありながら、迅速に飽和蒸気を発生させることができる蒸気発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る蒸気発生器は、
バーナーの燃焼により発生する熱によって、容器に収容されている水を加熱して飽和蒸気を発生させる蒸気発生器であって、その特徴構成は、
前記容器は、前記バーナーの燃焼により発生した燃焼ガスが流通する炉筒と、前記炉筒と熱的に接続された状態で前記炉筒の外周側に設けられた多孔質体とを備え、前記多孔質体は、水の浸透性を有するとともに、前記容器に収容されている水の水面下から水面上にわたる状態で配設されて、前記多孔質体に浸透した水を前記炉筒からの伝熱によって加熱して飽和蒸気を発生させる点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、バーナーの燃焼により発生した燃焼ガスが流通する炉筒と、炉筒と熱的に接続された状態で炉筒の外周側に設けられた多孔質体とを備えるので、バーナーの燃焼により生じる燃焼ガスの熱を、炉筒を介して、炉筒と熱的に接続された多孔質体に伝えることができる。
また、多孔質体は、水の浸透性を有するとともに、容器の内部に収容されている水の水面下から水面上にわたる状態で配設されているので、容器に収容されている水が多孔質体に形成される多数の細孔の内部に浸透可能とされるとともに、その多数の細孔によって大きな比表面積を有するので、
この大きな比表面積によって、水面下に位置する多孔質体の部位によって容器に収容されている水を効率よく加熱することができるとともに、水面下に位置する多孔質体の部位から浸透した水を効率よく加熱して、多孔質体から迅速に飽和蒸気を発生させることができる。
【0010】
本発明に係る蒸気発生器の更なる特徴構成は、
前記炉筒の軸方向の基端側に、前記バーナーが備えられ、前記バーナーは、円筒状に形成された燃焼室を有し、当該燃焼室の内周面の接線方向に向けて、空気と燃料ガスとの混合気を噴出させて又は空気と燃料ガスとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、バーナーは管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされるので、円筒状に形成された燃焼室にて形成される管状火炎による燃焼により発生し、旋回状態にある高温の燃焼ガスが、旋回を妨げられることなく炉筒内に進入して、周方向に旋回しながら軸方向に流動する。従って、燃焼ガスと炉筒との熱交換を一般的な対向流又は並行流の熱伝達係数より大きな係数にて行なうことができ、その炉筒と熱的に接続される多孔質体によって効率よく水を加熱して飽和蒸気を発生させることができる。
【0012】
本発明に係る蒸気発生器の更なる特徴構成は、
前記炉筒は、当該炉筒の内部に前記炉筒の軸方向に沿って延びる内管が備えられた2重管構造とされ、前記容器内において発生した飽和蒸気を、前記内管に導入して流通させるとともに、前記炉筒と前記内管との間に形成される燃焼ガス流路において前記燃焼ガスを流動させて、前記内管に導入された飽和蒸気と前記燃焼ガスとの熱交換により過熱蒸気を発生させて、その過熱蒸気を前記内管から外部に排出させる点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、炉筒は、炉筒の内部に内管が備えられた2重管構造とされ、容器内において発生した飽和蒸気を、内管内に導入して流通させるとともに、炉筒の内周面と内管の外周面とで形成される燃焼ガス流路において燃焼ガスを流動させることができる。これにより、炉筒と炉筒の外周側に設けられた多孔質体とを介して燃焼ガスと水との熱交換を行って、水を加熱して飽和蒸気を発生させることができるとともに、内管を介して燃焼ガスと飽和蒸気との熱交換を行って、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させることができる。このように炉筒を2重管構造とすることで、炉筒において発生する熱によって飽和蒸気および過熱蒸気を同時に発生させることができ、装置をよりコンパクトに設計することが可能になるとともに、迅速に飽和蒸気および過熱蒸気を発生させることができる。
【0014】
本発明に係る蒸気発生器の更なる特徴構成は、
前記炉筒の軸方向の基端側に、前記バーナーが備えられ、前記バーナーは、円筒状に形成された燃焼室を有し、当該燃焼室の内周面の接線方向に向けて、空気と燃料ガスとの混合気を噴出させて又は空気と燃料ガスとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされ、
前記炉筒は、当該炉筒の内部に前記軸方向に沿って延びる内管が備えられた2重管構造とされ、前記容器内において発生した飽和蒸気を、前記内管に導入して流通させるとともに、前記炉筒と前記内管との間に形成される燃焼ガス流路において前記軸方向の基端側から先端側に前記燃焼ガスを流動させて、前記内管に導入された飽和蒸気と前記燃焼ガスとの熱交換により過熱蒸気を発生させて、その過熱蒸気を前記内管から外部に排出させ、
前記内管は前記軸方向の基端側において、前記管状火炎バーナーの前記燃焼室内を通過するとともに、当該燃焼室を前記軸方向の基端側に貫通させて設けられている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、内管は軸方向の基端側において、管状火炎バーナーの前記燃焼室内を通過するとともに、燃焼室を軸方向の基端側に貫通させて設けられているので、内管内を流動する飽和蒸気は、燃焼室内を通過する際に最も高温の燃焼ガスと熱交換を行うことができる。従って、迅速に飽和蒸気を発生させることができるとともに、装置をよりコンパクトに設計することができる。
【0016】
本発明に係る蒸気発生器の更なる特徴構成は、
前記炉筒の外周面に前記多孔質体が一体的に形成され、前記炉筒は前記炉筒の軸方向を回転軸として回転可能に構成されるともに、当該炉筒の軸方向を水平方向として前記容器内に設置され、前記炉筒を回転させる回転駆動手段が備えられた点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、炉筒の外周面に多孔質体が一体的に形成されているので、バーナーの燃焼により発生した熱を効率よく炉筒から多孔質体に伝えることができるので、多孔質体によって容器内の水をより高温に加熱することができるとともに、多孔質体に浸透した水をより迅速に加熱して飽和蒸気を発生させることができる。
また、炉筒は軸方向を水平方向として容器内に設置され、炉筒を回転させる回転駆動手段がその軸方向を回転軸として回転させるので、炉筒の回転に伴って、炉筒の外周面に一体的に形成された多孔質体が回転して、その多孔質体から容器に収容される水への伝熱が促進されるので、容器内に収容される水をより高温に加熱することができる。さらに、多孔質体の回転によって、多孔質体内により多くの水を浸透させることがきるので、より迅速に飽和蒸気を発生させることができる。
【0018】
本発明に係る蒸気発生器の更なる特徴構成は、
前記多孔質体が、塊状の金属、塊状のセラミックスまたはそれらの混合物の焼結体で形成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、多孔質体が、塊状(例えば球状)の金属、塊状のセラミックスまたはそれらの混合物の焼結体で形成されているので、多孔質体の内部の比表面積を大きく形成することができ、多孔質体の内部に浸透した水と効率よく熱交換をすることができる。これにより、迅速に飽和蒸気を発生させることができるとともに、装置をさらにコンパクトに構成することも可能となる。
【0020】
本発明に係る蒸気発生器の更なる特徴構成は、
前記炉筒が、前記多孔質体を形成する材質と同一の材質によって、ガス透過性のない気密体として形成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、炉筒が、多孔質体を形成する材質と同一の材質とされるので、炉筒と多孔質体を一体形成することが容易となる。例えば、焼結などによって炉筒と多孔質体を一体形成する場合では、同一の材質であるので焼結が容易となるとともに、焼結による結合が強固となって焼結部において効率よく伝熱される。また、焼結後においては、同一の材質であるので熱膨張率が同一であり、炉筒と多孔質体の間に発生する熱応力を最小限に抑制することができ、装置の耐久性を向上させることができる。また、炉筒はガス透過性のない気密体として形成されているので、炉筒の内部を流動する燃焼ガスの容器内への流出を防止できるとともに、容器内に収容される水の炉筒内への流入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る蒸気発生器の横断面図。
【図2】蒸気発生器の縦断面図。
【図3】多孔質体の断面拡大図。
【図4】管状火炎バーナーの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明に係る蒸気発生器の実施形態について図1および図2に基づいて説明する。図1に示すのは本実施形態に係る蒸気発生器1の横断面図であり、図2に示すのは本実施形態に係る蒸気発生器1の縦断面図である。この蒸気発生器1は管状火炎バーナー20の燃焼により発生する熱によって、容器2に収容されている水Wを加熱して飽和蒸気Vを発生させる。この容器2には、管状火炎バーナー20の燃焼により発生した燃焼ガスEが流通する炉筒3と、炉筒3と熱的に接続された状態で炉筒3の外周側に設けられた多孔質体9とが備えられている。そして、多孔質体9は、水Wの浸透性を有するとともに、容器2に収容されている水Wの水面下から水面上にわたる状態で配設されて、多孔質体9に浸透した水Wを炉筒3からの伝熱によって加熱して飽和蒸気Vを発生させる構成とされる。
【0024】
管状火炎バーナー20は、中空の直方体形状とされた容器2の外側面に取り付けられている。そして、その管状火炎バーナー20が取り付けられている容器2の側面(基端側側面2aと呼ぶ)と、その基端側側面2aと向かい合う容器2の側面(先端側側面2bと呼ぶ)との間において、容器2の内側を横断する状態で、炉筒3が設けられている。具体的には、管状火炎バーナー20は、容器2の外側において、基端側側面2aの略中心に取り付けられており、炉筒3は、基端側側面2aにおいて、管状火炎バーナー20と接続されるとともに、基端側側面2aの略中心から先端側側面2bの略中心に向かって延びる状態で、容器2の内部を横断するように設けられている。
【0025】
また、容器2の上面2cには、容器2内で発生した飽和蒸気Vを取り出すための飽和水蒸気取出口4と、容器2の圧力を計測する圧力計5と、容器2内の水位を計測する水位計6が設けられている。
一方、基端側側面2aの下方には、容器2内に水Wを供給するための水供給口7が備えられる。そして、飽和水蒸気取出口4には蒸気開閉弁4aが、水供給口7には水開閉弁7aがそれぞれ設けられている。また、容器2には、図示しない過圧逃がし弁および燃焼ガスEを発生させる管状火炎バーナー20の取付部などが設けられている。そして、図示しない制御部によって水供給口7の水開閉弁7aを開閉制御して、水位計6によって計測された水位を、予め設定した基準水位Wsに維持されるように構成されている。ここで基準水位Wsは、図2に示すように、管状の多孔質体9の断面視において、その直径の約1/3が水中に浸される状態となる水位に設定されている。
【0026】
以下、図1および図2に基づいて炉筒3について詳細に説明する。
炉筒3はその基端側端部3aを基端側側面2aに設けられた基端側支持部材Baに支持された状態で、管状火炎バーナー20と接続するとともに、その先端側端部3bが先端側側面2bの略中心に設けられた先端側支持部材Bbに支持されて、容器2内部を横断するとともに、容器2を貫通する状態で備えられている。
これにより、管状火炎バーナー20において発生した燃焼ガスEは、炉筒3の軸方向(図1中の左右方向)の基端側(図1中右側)から、軸方向の先端側(図1中左側)に流動して、炉筒3の先端側に設けられている排気口13から排気されるように構成される。
【0027】
また、炉筒3は、炉筒3の内部に炉筒3の軸方向に沿って延びる内管8が備えられた2重管構造とされ、容器2内において発生した飽和蒸気Vを、内管8の先端側から内管8内の内管内流路R2に導入して、先端側から基端側まで流通させるとともに、炉筒3の内周面3dと内管8の外周面との間に形成される環状の燃焼ガス流路R1において基端側から先端側に燃焼ガスEを流動させて、内管8内の内管内流路R2に導入された飽和蒸気Vと燃焼ガスEとを内管8の管壁を介して熱交換させることが可能に構成されている。これにより、内管内流路R2に導入された飽和蒸気Vから過熱蒸気Sを発生させることができ、発生した過熱蒸気Sは内管8の基端側の端部8bに設けられた排出口11から外部に排出させるように構成されている。
【0028】
容器2の内部空間Pと内管内流路R2とは、内管内流路R2の先端側において蒸気導入流路Rvにより接続されており、蒸気導入流路Rvを経由させて容器2の内部空間Pに存在する飽和蒸気Vを内管内流路R2に導入可能に構成されている。また、この蒸気導入流路Rvには、導入開閉弁Rvaが設けられており、飽和蒸気Vを内管内流路R2への導入を遮断することが可能に構成されている。
【0029】
また、炉筒3および内管8は、それらの軸心が同心状に配置されて、炉筒3の内周面3dと内管8の外周面とで環状の燃焼ガス流路R1が形成されており、管状火炎バーナー20の燃焼室22と炉筒3の基端側で接続されて、管状火炎バーナー20の燃焼により発生した燃焼ガスEが導入されるとともに、燃焼ガスEの排気口13を炉筒3の先端側に有している。
【0030】
炉筒3の内周面3dと管状火炎バーナー20の円筒状に形成された燃焼室22の内周面22aとが略面一に接続されており、内管8は基端側において、管状火炎バーナー20の燃焼室22内を通過するとともに、円筒状の燃焼室22の軸方向に直交する燃焼室側壁26に設けられた側面貫通孔26aを基端側に貫通させて設けられている。従って、内管8の基端側の端部8aが、側面貫通孔26aに支持されるとともに、先端側は蒸気導入流路Rvに接続されて固定支持されている。
【0031】
そして、内管8の燃焼室側壁26を貫通した基端側の端部8aには、飽和蒸気Vが加熱されて発生した過熱蒸気Sを排出する排出口11が形成されている。
ここで、側面貫通孔26aには、環状の耐熱シール部材25が設けられ、この耐熱シール部材25によって、内管8が摺動可能に支持されている。これにより、燃焼ガスEや燃焼室22の燃焼によって内管8が加熱されて内管8に発生する熱膨張を許容することができる。
【0032】
さらに、炉筒3は、その外周面3cに多孔質体9が一体的に形成されるとともに、炉筒3の軸方向を水平方向として、その軸方向を回転軸として回転可能に容器2内に配設され、容器2の外に設けられたモータ10によって炉筒3を回転させるように構成されている。
【0033】
具体的には、炉筒3はその基端側端部3aが基端側側面2aに設けられた基端側支持部材Baに支持されるとともに、その先端側端部3bが先端側側面2bの略中心に設けられた先端側支持部材Bbに支持されて、容器2を貫通する状態で容器2に備えられ、この基端側支持部材Baおよび先端側支持部材Bbによって、炉筒3が、容器2において回転可能に支持されている。
この基端側支持部材Baおよび先端側支持部材Bbは、燃焼ガスEによって高温になる炉筒3の温度に対する耐熱性を有するとともに、飽和蒸気Vおよび水Wが容器2から漏れることを防止するシール性を有する、耐熱シール構造を有するベアリング等で構成されている。
また炉筒3の回転駆動力を発生するモータ10は、容器2の外に設置されており、プーリ10aと炉筒3の先端側端部3bの外周面3cとの間に設けられた駆動力伝達ベルト12によってモータ10において発生した回転駆動力を炉筒3の外周部に伝達して炉筒3を回転させる。
【0034】
次に、図3に基づいて多孔質体9について詳細に説明する。
上述の如く、炉筒3の外周面3cには多孔質体9が、その外周面3cと一体的に形成されている。本実施形態においては、多孔質体9は、その粒子系Cdが約120μmの銅球体Cを堆積させて焼結した焼結体で形成されている。そして、炉筒3は気密体である銅管で形成されて、その外周面3cと銅球体Cの焼結体である多孔質体9とが焼結されて一体的に形成されている(図1および図2参照)。
【0035】
そして、図3に示すように、多孔質体9の内部には、多数の焼結した銅球体Cによって形成される隙間が連通細孔Hをなして、この連通細孔H内に、容器2内に収容された水Wが浸透している。また、この連通細孔Hの細孔断面積Hdは、さまざまな細孔断面積Hdを有する連通細孔Hが混在した状態となって形成されている。
特に、細孔断面積Hdが小さい連通細孔Hにおいては、例えば、水Wが毛細管現象によって炉筒3の外周面3cに近接する位置まで多孔質体9の内部に浸透することができ、炉筒3は外周面3c近傍において、水Wを効率よく加熱して飽和蒸気Vを発生させることができる。
一方、細孔断面積Hdが大きい連通細孔Hにおいては、例えば、多孔質体9内において加熱されて発生した飽和蒸気Vを多孔質体9の外部へ容易に放出させることができるとともに、多孔質体9内に浸透して加熱されて水Wを、飽和蒸気Vとなる前に放出することで、容器2に収容される水Wを加熱することができる。
【0036】
この多孔質体9の細孔断面積Hdの平均細孔断面積については、例えば、焼結させる銅球体Cの粒子系Cdや、焼結の際の焼結温度や焼結時間を変更することによって調整可能である。
そして、この多孔質体9の連通細孔Hの平均細孔断面積は、多孔質体9の材質、炉筒3に伝熱される熱量および飽和蒸気発生量などに基づいて、熱効率などの所定の条件を最適化するために適宜設定することができる。
【0037】
次に、図4に基づいて管状火炎バーナー20について詳しく説明する。
図4は管状火炎バーナー20の縦断面図を示すものである。炉筒3の基端側端部3aに備えられた管状火炎バーナー20は、円筒状に形成された燃焼室22の内周面22aの接線方向に向けて、空気Aと燃料ガスFとの混合気Mを噴出させて又は空気Aと燃料ガスFとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナー20とされている。また、管状火炎バーナー20の円筒状に形成された燃焼室22と、2重管構造を成す炉筒3の軸心が一致するように炉筒3の基端側側面2aに設けられている(図1参照)。
【0038】
また、管状火炎バーナー20には、空気導入口21aから空気Aを受け入れる空気用受入空間23aと、燃料ガス導入口21bから燃料ガスFを受け入れる燃料ガス用受入空間23bとから構成され、この空気用受入空間23aと燃料ガス用受入空間23bとが、燃焼室22を挟んでそれぞれ一対ずつ、燃焼室22の周方向に交互に配設される状態で設けられている。そして、空気用受入空間23aから混合気噴出部24cへ空気Aを噴出する空気供給路24aと、その空気供給路24aの流路途中部分に燃料ガス用受入空間23bから燃料ガスFを供給する燃料ガス供給路24bとが設けられている。
【0039】
このように、空気供給路24aの流路途中に燃料ガス供給路24bから燃料ガスFを供給することにより、その流路途中において空気Aと燃料ガスFとの混合気Mが生成されて、混合気噴出部24cから燃焼室22の内周面22aの接線方向に向けて混合気Mを噴出させ、燃焼室22内において同一回転方向に混合気Mを旋回させることができるように構成されている。
【0040】
これにより、可燃限界内の適当な空気比に混合調整された混合気Mは、燃焼室22内において中空円筒状のいわゆる管状火炎を形成する。管状火炎の火炎内側部分は、ほぼ燃焼反応を終えた高温の燃焼ガスEであり、その燃焼ガスEが、燃焼室22を旋回しながら全体として燃焼室22の軸方向に沿って、炉筒3側へ流動する。なお、この状態では、この燃焼室22内の管状火炎による燃焼により混合気Mは燃焼室22内でほぼ燃焼が完了し、燃焼室22の炉筒3側の開口端部22bから燃焼ガスEが排出される。
【0041】
また、空気用受入空間23aおよび燃料ガス用受入空間23bにおいては燃焼前の温度が低い空気Aおよび燃料ガスFが存在することとなるため、空気Aおよび燃料ガスFによる燃焼室22の内周面22aの温度上昇を抑制することができ、断熱火炎に近い火炎温度が実現される。なお、空気Aを過剰に供給して希薄燃焼させれば、管状火炎の燃焼温度が抑制されて、NOxの発生が抑えられる。
【0042】
管状火炎バーナー20において燃焼を開始する際、管状火炎バーナー20の着火は、図示しない火花放電等による着火手段により管状火炎バーナー20への自動着火が可能に構成されている。また、着火後は図示しない火力調整手段により、燃料ガスFおよび空気Aの供給量が調整可能に構成されて、火力調整が可能となっている。火力調整は、燃焼ガスEまたは過熱蒸気Sの温度を検出して、その検出温度に応じて火力の強さを調節して、所望の温度に燃焼ガスEまたは過熱蒸気Sの温度を調整することができるように構成されている。
【0043】
そして、管状火炎バーナー20が着火されて燃焼が開始されると、上述の如く、燃焼室22に管状火炎が形成されるとともに燃焼ガスEが炉筒3の燃焼ガス流路R1に導入される。燃焼ガス流路R1に導入した燃焼ガスEは、炉筒3および多孔質体9を介して、多孔質体9に浸透した水Wおよび容器2の収容される水Wと熱交換するとともに、容器2内において飽和蒸気Vを発生させることができる。
一方、その発生した飽和蒸気Vを、導入開閉弁Rvaを開状態として、蒸気導入流路Rvを経由させて内管8の内管内流路R2に導入することで、燃焼ガス流路R1に導入した燃焼ガスEは、内管8を介して、内管内流路R2を流通する飽和蒸気Vと熱交換して過熱蒸気Sを発生させる。そして、熱交換を行なって低温となった燃焼ガスEが炉筒3の先端側端部3bに形成された排気口13から排気される。
なお、容器2内において発生した飽和蒸気Vは、飽和水蒸気取出口4から取り出すことができ、内管内流路R2において発生した過熱蒸気Sは排出口11から取り出すことができる。過熱蒸気Sは、例えば、温度300℃〜500℃の範囲で調節されて、コンベアオーブンなどのスチーム調理器に供給することができる。
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態においては、容器2は中空の直方体形状とされたが、これに限らず、容器2を横置きの円筒形状としてもよい。さらに、基端側側面2aおよび先端側側面2bは平板状とされているが、容器2内の圧力が高圧となる場合は、基端側側面2aおよび先端側側面2bが半球状に成形された耐圧容器としてもよい。
【0044】
(B)容器2の外周壁に断熱材等を設けて断熱処理がなされていてもよい。
【0045】
(C)蒸気導入流路Rvの外周壁に断熱材等を設けて断熱処理がなされていてもよい。
【0046】
(D)上記実施形態においては、管状火炎を形成して燃焼する管状火炎バーナー20としたが、これに限らず、直進火炎を形成して燃焼する直進火炎バーナー、または、旋回火炎を形成して燃焼する旋回火炎バーナーとしてもよい。
【0047】
(E)上記実施形態においては、容器2の基端側側面2aに燃焼ガスEを発生させるためのバーナーを設ける構造としたが、これに限らず、炉筒3の内部にバーナーが設置されていてもよい。さらに、燃焼ガスEを発生するバーナーを、容器2と別体で設けて、炉筒3の基端側端部3aに燃焼ガスEを導入するように構成されていてもよい。
【0048】
(F)上記実施形態においては、炉筒3は回転可能に容器2に支持されていたが、これに限らず、炉筒3が容器2に固定された状態で設けられていてもよい。
【0049】
(G)上記実施形態においては、多孔質体9は銅球体Cの焼結体によって構成されたが、これに限らず、多孔質体9は球形の金属、球形のセラミックスまたはそれらの混合物の焼結体で構成されても構わない。
【0050】
(H)上記実施形態においては、炉筒3の内周面3dおよび外周面3cは、凹凸のない構成としたが、炉筒3の内周面3dに熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、燃焼ガス流路R1における電熱面積を拡大してもよい。また、炉筒3の外周面3cに熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、多孔質体9との間の電熱面積を拡大してもよい。
【0051】
(I)上記実施形態においては、内管8の内周面および外周面は、凹凸のない構成としたが、内管8の内周面に熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、内管内流路R2における電熱面積を拡大してもよい。また、内管8の外周面に熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、燃焼ガス流路R1における電熱面積を拡大してもよい。
【0052】
(J)上記実施形態においては、蒸気導入流路Rvが容器2の外部に配設されたが、これに限らず、蒸気導入流路Rvを容器2の内部に設けてもかまわない。これにより、蒸気導入流路Rvの表面からの放熱により、蒸気導入流路Rvを流通する飽和蒸気Vの温度低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、コンパクトな構成でありながら、迅速に飽和蒸気を発生させることができる蒸気発生器を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 蒸気発生器
2 容器
3 炉筒
3c 外周面(外周側)
3d 内周面
8 内管
9 多孔質体
10 モータ(回転駆動手段)
20 管状火炎バーナー
22 燃焼室
22a 内周面
A 空気
C 銅球体(球形の金属)
E 燃焼ガス
F 燃料ガス
M 混合気
R1 燃焼ガス流路
S 過熱蒸気
V 飽和蒸気
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーの燃焼により発生する熱によって、容器に収容されている水を加熱して飽和蒸気を発生させる蒸気発生器であって、
前記容器は、前記バーナーの燃焼により発生した燃焼ガスが流通する炉筒と、前記炉筒と熱的に接続された状態で前記炉筒の外周側に設けられた多孔質体とを備え、前記多孔質体は、水の浸透性を有するとともに、前記容器に収容されている水の水面下から水面上にわたる状態で配設されて、前記多孔質体に浸透した水を前記炉筒からの伝熱によって加熱して飽和蒸気を発生させる蒸気発生器。
【請求項2】
前記炉筒の軸方向の基端側に、前記バーナーが備えられ、前記バーナーは、円筒状に形成された燃焼室を有し、当該燃焼室の内周面の接線方向に向けて、空気と燃料ガスとの混合気を噴出させて又は空気と燃料ガスとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされている請求項1に記載の蒸気発生器。
【請求項3】
前記炉筒は、当該炉筒の内部に前記炉筒の軸方向に沿って延びる内管が備えられた2重管構造とされ、前記容器内において発生した飽和蒸気を、前記内管に導入して流通させるとともに、前記炉筒と前記内管との間に形成される燃焼ガス流路において前記燃焼ガスを流動させて、前記内管に導入された飽和蒸気と前記燃焼ガスとの熱交換により過熱蒸気を発生させて、その過熱蒸気を前記内管から外部に排出させる請求項1または2に記載の蒸気発生器。
【請求項4】
前記炉筒の軸方向の基端側に、前記バーナーが備えられ、前記バーナーは、円筒状に形成された燃焼室を有し、当該燃焼室の内周面の接線方向に向けて、空気と燃料ガスとの混合気を噴出させて又は空気と燃料ガスとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされ、
前記炉筒は、当該炉筒の内部に前記軸方向に沿って延びる内管が備えられた2重管構造とされ、前記容器内において発生した飽和蒸気を、前記内管に導入して流通させるとともに、前記炉筒と前記内管との間に形成される燃焼ガス流路において前記軸方向の基端側から先端側に前記燃焼ガスを流動させて、前記内管に導入された飽和蒸気と前記燃焼ガスとの熱交換により過熱蒸気を発生させて、その過熱蒸気を前記内管から外部に排出させ、
前記内管は前記軸方向の基端側において、前記管状火炎バーナーの前記燃焼室内を通過するとともに、当該燃焼室を前記軸方向の基端側に貫通させて設けられている請求項1に記載の蒸気発生器。
【請求項5】
前記炉筒の外周面に前記多孔質体が一体的に形成され、前記炉筒は前記炉筒の軸方向を回転軸として回転可能に構成されるともに、当該炉筒の軸方向を水平方向として前記容器内に設置され、前記炉筒を回転させる回転駆動手段が備えられた請求項1から4の何れか一項に記載の蒸気発生器。
【請求項6】
前記多孔質体が、塊状の金属、塊状のセラミックスまたはそれらの混合物の焼結体で形成されている請求項1から5の何れか一項に記載の蒸気発生器。
【請求項7】
前記炉筒が、前記多孔質体を形成する材質と同一の材質によって、ガス透過性のない気密体として形成されている請求項1から6の何れか一項に記載の蒸気発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88030(P2013−88030A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229146(P2011−229146)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】