説明

蒸気過熱器

【課題】コンパクトな構成でありながら、過熱蒸気の温度を迅速に調整することができる蒸気過熱器を提供する。
【解決手段】熱交換部2は、第1環状流路R1、第2環状流路R2および内管内流路R3を外側から順に備えた三重管構造に構成され、その軸方向の基端側にバーナー20が備えられ、第1環状流路R1には、水蒸気Vが導入される蒸気導入口3cを軸方向の基端側に有するとともに、第1環状流路R1を流通した水蒸気Vを内管内流路R3へ案内流通する流路ヘッダー6と軸方向の先端側で接続され、第2環状流路R2は、バーナー20の燃焼室22と軸方向の基端側で接続されて、水蒸気Vを第1環状流路R1、流路ヘッダー6および内管内流路R3の順に流通させるとともに、燃焼ガスEを第2環状流路R2に流動させて、水蒸気Vと燃焼ガスEとの熱交換により過熱蒸気Sを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーと、当該バーナーの燃焼ガスによって水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる熱交換部とを備えた蒸気過熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
飽和蒸気を使用して加熱する各種加熱機器を備えた食品工場等においては、飽和蒸気を発生させる蒸気ボイラが設置されて、これにより発生させた飽和蒸気を蒸気供給管等を経由させて各種加熱機器に供給している。また、過熱蒸気オーブン等の加熱機器を使用する場合では、飽和蒸気より温度の高い過熱蒸気が必要になるので、蒸気供給管と加熱機器との間に蒸気過熱器を設置して、この蒸気過熱器によって飽和蒸気を加熱して、加熱機器に必要な温度に調整された過熱蒸気を発生させて供給するように構成される。このような蒸気過熱器として、例えば、特許文献1には、蒸気の入口部と出口部を有する蒸気過熱器の本体内に電磁誘導により発熱する磁性部材を設けて、蒸気過熱器の本体の外側において、その磁性部材を誘導加熱する誘導加熱手段が設けられた蒸気過熱器が開示されている。
【0003】
この蒸気過熱器の本体の外側に備えられた誘導加熱手段は、交流電源とコイルとからなり、コイルが蒸気過熱器の本体の外周を巻回して構成されている。一方、蒸気過熱器の本体内に設けられた磁性部材は、粒子状および板状に形成されて、蒸気過熱器の本体の入口部から出口部に至る蒸気流路に沿って複数設けられている。そして、その磁性部材が、誘導加熱手段により誘導加熱されて発熱することで、蒸気過熱器の本体内を流通する飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させることができるとされる。また、誘導加熱手段の誘導電流の強度を変えることで、磁性部材の発熱量を変化させて過熱蒸気の温度の制御が可能であるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−251605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の蒸気過熱器では、飽和蒸気を加熱するために、蒸気過熱器の本体内の蒸気流路に磁性部材を設ける必要がある。そして、多流量の飽和蒸気を加熱して過熱蒸気にするには、その蒸気流量に応じた多量の磁性部材を蒸気流路に設ける必要があるため、蒸気流路を確保しようとすると蒸気過熱器の本体をコンパクトに構成できないという問題がある。さらに、磁性部材を加熱する誘導加熱手段を蒸気過熱器の本体の外側に設けることが必要となることからも、蒸気過熱器が大型化するという問題が生じる。
また、過熱蒸気の温度を所望の温度に調整する際は、誘導加熱手段の誘導電流の強度を調整することとされるが、一般的に熱容量が大きい磁性部材が多量に蒸気流路に設けられていると、誘導電流の強度を調整しても、その熱容量の大きさによって、磁性部材の温度が迅速に変化せずに、過熱蒸気の温度を所望の温度に温度調整することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンパクトな構成でありながら、過熱蒸気の温度を迅速に調整することができる蒸気過熱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る蒸気過熱器は、
バーナーと、当該バーナーの燃焼ガスによって水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる熱交換部とを備えた蒸気過熱器であって、その特徴構成は、
前記熱交換部は、外管と、前記外管より小径の内管と、前記外管と内管との中間径である中間径管とから構成され、前記外管と前記中間径管の間に第1環状流路を、前記中間径管と前記内管の間に第2環状流路を、前記内管内に内管内流路を備えた三重管構造に構成され、
前記熱交換部の軸方向の基端側に、前記バーナーが備えられ、
前記第1環状流路は、前記水蒸気が導入される蒸気導入口を前記軸方向の基端側に有するとともに、当該第1環状流路を流通した前記水蒸気を前記内管内流路へ案内流通する流路ヘッダーと前記軸方向の先端側で接続され、
前記内管内流路は、前記軸方向の先端側において前記流路ヘッダーと接続されて、前記水蒸気が案内流通されるとともに、前記水蒸気が加熱された過熱蒸気を排出する排出口を前記軸方向の基端側に有し、
前記第2環状流路は、前記バーナーの燃焼室と前記軸方向の基端側で接続されるとともに、前記燃焼ガスを排気する排気口を前記軸方向の先端側に有し、
前記水蒸気を前記第1環状流路、前記流路ヘッダーおよび前記内管内流路の順に流通させるとともに、前記燃焼ガスを前記第2環状流路の前記軸方向の基端側から先端側に流動させて、前記水蒸気と前記燃焼ガスとの熱交換により過熱蒸気を発生させる点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、熱交換部は、外管と中間径管の間に第1環状流路を、中間径管と内管の間に第2環状流路を、内管内に内管内流路を備えた三重管構造に構成されており、その第1環状流路は、軸方向の基端側に水蒸気が導入される蒸気導入口を有するとともに、軸方向の先端側は流路ヘッダーと接続されている。また、この流路ヘッダーには基端側に排出口を有する内管内流路が接続されている。これにより、第1環状流路の基端側の蒸気導入口において導入された水蒸気は、第1環状流路の基端側から先端側まで流通して、その先端側において流路ヘッダーに導入されるともに、流通方向が折り返されて内管内流路へ案内流通し、内管内流路において先端側から基端側に流通させて、その基端側に設けられた排出口より排出する蒸気流通路を構成することができる。
【0009】
また、第2環状流路は、軸方向の基端側でバーナーの燃焼室と接続されるとともに、軸方向の先端側で燃焼ガスを排気する排気口を有して、バーナーの燃焼室で発生した高温の燃焼ガスを基端側から先端側に流通させる。そして、水蒸気が流通する第1環状流路と内管内流路とに径方向の外径側と内径側との間に挟まれた状態で設けられている。
【0010】
したがって、第2環状流路と第1環状流路との間に位置する中間径管を介して、第2環状流路を流動する燃焼ガスと第1環状流路を流通する水蒸気との熱交換が可能となるとともに、第2環状流路と内管内流路との間に位置する内管を介しても、第2環状流路を流動する燃焼ガスと内管を流通する水蒸気との熱交換が可能となる。このように、第2環状流路を構成する中間径管および内管の両方において熱交換が可能に構成されているので、熱交換部内において熱交換可能な部位の面積を広くとることができる。これにより、燃焼ガスと過熱蒸気との熱交換を効率よく迅速に行なうことができ、燃焼ガスの温度または燃焼量を変化させることで、迅速に過熱蒸気の温度を調整することができる。また、熱交換部を小型化した場合でも、燃焼ガスと水蒸気との熱交換に必要となる熱交換可能な部位の面積を熱交換部内に確保することができので、熱交換部をコンパクトに構成することが可能となる。
【0011】
また、熱交換部において、高温の燃焼ガスが流動する第2環状流路が第1環状流路の内側に設けられているので、高温の燃焼ガスの熱が熱交換部の外部に放熱されることを抑制することができ、第2環状流路を流動する高温の燃焼ガスによって効率よく第1環状流路および内管内流路を流通する水蒸気または過熱蒸気を加熱することができる。
さらに、第1環状流路、流路ヘッダーおよび内管内流路で構成される蒸気流通路の下流側を内管内流路側とするとともに、内管内流路を流通する過熱蒸気の流れ方向と、第2環状流路を流動する高温の燃焼ガスの流れ方向とが対向流として、蒸気流通路の下流側を熱交換器の内側に位置させて外部への放熱を抑制して過熱蒸気を蒸気流通路の上流側より高温に加熱することが可能にされる。対向流とした熱交換によって効率よく燃焼ガスによって過熱蒸気が加熱されて、より高温の過熱蒸気を得ることができる。このように、燃焼ガスと過熱蒸気との熱交換を効率よく行ないながら、燃焼ガスの温度または流量を変化させることで、迅速に過熱蒸気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0012】
本発明に係る蒸気過熱器の更なる特徴構成は、
前記バーナーは、円筒状に形成された前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて、空気と燃料ガスとの混合気を噴出させて又は空気と燃料ガスとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされ、
前記管状火炎バーナーと、三重管構造を成す前記熱交換部の軸心が一致している点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、バーナーは管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされて、その管状火炎バーナーと、三重管構造を成す熱交換部の軸心が一致しているので、円筒状に形成された燃焼室にて形成される管状火炎による燃焼により発生し、旋回状態にある高温の燃焼ガスが、旋回を妨げられることなく熱交換部の第2環状流路内に進入して、軸方向の先端側に設けられた排気口に向かって軸方向に旋回しながら流動する。従って、熱交換部において燃焼ガスと過熱蒸気との熱交換を一般的な対向流又は並行流の熱伝達係数より大きな係数にて行なうことができる。
【0014】
本発明に係る蒸気過熱器の更なる特徴構成は、
三重管構造を成す前記熱交換部に関し、前記中間径管の内周面と前記管状火炎バーナーの円筒状に形成された前記燃焼室の内周面とが略面一に接続され、前記内管は前記軸方向の基端側において、前記管状火炎バーナーの前記燃焼室内を通過するとともに、当該燃焼室を前記軸方向の基端側に貫通させて設けられている点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、中間径管の内周面と管状火炎バーナーの円筒状に形成された燃焼室の内周面とが略面一に接続されているので、管状火炎による燃焼により発生した高温の燃焼ガスが、さらにスムーズに第2環状流路内に導入して、第2環状流路内を周方向において旋回しながら全体として軸方向の先端側に設けられた排気口に向かって軸方向に流動するので、この旋回流によって、燃焼ガスと中間径管および内管との熱交換を促進させることができ、その結果、燃焼ガスと過熱蒸気との熱交換が効率よく行なわれることとなる。
また、内管は軸方向の基端側において、管状火炎バーナーの燃焼室内を通過するとともに、燃焼室を貫通させて設けられているので、内管内流路を流通する過熱蒸気は、燃焼室内を通過する際にも最も高温の燃焼ガスと熱交換を行うことができる。従って、熱交換部をよりコンパクトに構成することができる。
【0016】
本発明に係る蒸気過熱器の更なる特徴構成は、
前記中間径管の一部は前記軸方向に伸縮可能な伸縮部材で構成され、前記内管は前記燃焼室を前記軸方向の基端側に貫通する状態で設けられ、当該内管が前記燃焼室を貫通する貫通部に摺動可能に貫通支持されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、中間径管の一部は軸方向に伸縮可能な伸縮部材で構成されるので、高温の燃焼ガスにより中間径管が加熱されて軸方向に膨張した場合においても、その膨張による変形を伸縮可能な伸縮部材で吸収することができる。したがって、燃焼ガスの流動による中間径管の温度変化によって中間径管に発生する熱応力を最小限に抑制して、中間径管の破損を防止することができる。
また、内管は燃焼室を軸方向の基端側に貫通する状態で設けられ、その内管が燃焼室を貫通する貫通部に摺動可能に貫通支持されているので、内管を貫通部によって支持することができるとともに、高温の燃焼ガスにより内管が加熱されて膨張した場合においても、その膨張に応じて内管が貫通部を自在に摺動することができる。したがって、燃焼ガスの流動による内管の温度変化によって内管に発生する熱応力を最小限に抑制して、内管の破損、曲りを防止することができる。
【0018】
本発明に係る蒸気過熱器の更なる特徴構成は、
前記流路ヘッダーに、前記第2環状流路を流動する前記燃焼ガスを通過させる燃焼ガス通過口が設けられ、前記燃焼ガスが前記燃焼ガス通過口を通過して前記排気口から排気される点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、流路ヘッダーに燃焼ガス通過口が設けられているので、第2環状流路を流動する燃焼ガスをその燃焼ガス通過口を通過させて、第2環状流路の軸方向の先端部に設けられた排気口から熱交換部の外部へ排気することができる。また、流路ヘッダー内には過熱蒸気が流通しているので、燃焼ガス通過口に燃焼ガスを通過させることで、流路ヘッダー内を流通する過熱蒸気と燃焼ガスとの間で熱交換を行うことができるので、熱交換部においてさらに効率よく熱交換を行なうことができるとともに、熱交換部をよりコンパクトに構成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る蒸気過熱器の横断面図。
【図2】蒸気過熱器の流路ヘッダーにおける縦断面図。
【図3】蒸気過熱器の管状火炎バーナーにおける縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明に係る蒸気過熱器の実施形態について図1に基づいて説明する。図1に示すのは本実施形態に係る蒸気過熱器1の縦断面図である。この蒸気過熱器1は飽和蒸気V(水蒸気に相当)を導入して、その飽和蒸気Vと燃焼ガスEとの熱交換を行う熱交換部2と、燃焼ガスEを発生させる管状火炎バーナー20と、熱交換が行われた燃焼ガスEを排気する排気口8aが設けられた排気フランジ8とで構成されており、熱交換部2の軸方向(図1中の左右方向)の基端側(図1中右側、以下「軸方向の基端側」を単に「基端側」と呼ぶ)には、管状火炎バーナー20が設けられ、軸方向の先端側(図1中左側、「軸方向の先端側」を単に「先端側」と呼ぶ)には、排気口8aを有する排気フランジ8が備えられている。
【0022】
管状火炎バーナー20は、円筒状に形成された燃焼室22の内周面22aの接線方向に向けて、空気Aと燃料ガスFとの混合気Mを噴出させて又は空気Aと燃料ガスFとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナー20とされている(図3参照)。また、管状火炎バーナー20は、三重管構造を成す熱交換部2の軸心が一致するように熱交換部2の軸方向の基端側に設けられている。
【0023】
熱交換部2は、外管3と、管径が外管3より小径の内管5と、管径が外管3と内管5との中間径である中間径管4とから構成され、外管3と中間径管4の間に第1環状流路R1を、中間径管4と内管5の間に第2環状流路R2を、内管5内に内管内流路R3を備えた三重管構造に構成されている。ここで、外管3、中間径管4および内管5が同心状に配置されており、第1環状流路R1と内管内流路R3とは先端側において流路ヘッダー6により流通可能に接続されている。
【0024】
熱交換部2の第1環状流路R1は、先端側端部3aが先端側フランジ9に接合されるとともに、基端側端部3bが基端側フランジ10に接合される外管3の内周面と中間径管4の外周面とで第1環状流路R1が形成されている。
【0025】
この第1環状流路R1は、飽和蒸気Vが導入される蒸気導入口3eを基端側に有するとともに、第1環状流路R1を流通した飽和蒸気Vを内管内流路R3へ案内流通する流路ヘッダー6と先端側で接続される。
また、蒸気取入口3cは、例えば、飽和蒸気Vを供給可能な集中蒸気配管(図示せず)と接続されている。また、蒸気取入口3cから取入れた飽和蒸気Vは、外管3の周方向に複数設けられた蒸気導入口3eを覆うように外管3の外周に設けられた環状導入空間3dに導入され、この環状導入空間3dに流入した飽和蒸気Vは、複数の蒸気導入口3eのそれぞれに分散されて第1環状流路R1に導入される。
これにより、蒸気取入口3cから取入された飽和蒸気Vは、外管3の周方向において均等に第1環状流路R1へ導入される。そして、この第1環状流路R1は、先端側端部において流路ヘッダー6に接続されているので、第1環状流路R1へ導入された飽和蒸気Vは、第1環状流路R1の基端側から先端側まで流通して、流路ヘッダー6に流入する。なお、第1環状流路R1に導入された飽和蒸気Vが流路ヘッダー6に流入するときには、すでに第1環状流路R1を流通することで加熱されて過熱蒸気Sとなっている。
【0026】
第2環状流路R2は、管状火炎バーナー20の燃焼室22と基端側で接続されるとともに、管状火炎バーナー20の燃焼により発生した燃焼ガスEの排気口8aを先端側に有している。この第2環状流路R2は中間径管4の内周面4cと、内管5の外周面とで形成されている。
【0027】
第2環状流路R2と管状火炎バーナー20との接続は、第2環状流路R2を構成する中間径管4の基端側の端部4bを、管状火炎バーナー20の開口端部22bに当接させるとともに、中間径管4の内周面4cと管状火炎バーナー20の円筒状の燃焼室22の内周面22aとが略面一として接続されている。これにより、燃焼室22で発生した燃焼ガスEをスムーズに第2環状流路R2に流出させることができる。さらに、その中間径管4は、その一部が軸方向に伸縮可能な環状の伸縮部材4dで構成されており、これにより、燃焼ガスEや燃焼室22の燃焼によって中間径管4が加熱されることで、中間径管4に発生する軸方向の熱膨張を伸縮部材4dの伸縮により吸収することができる。
【0028】
また、内管内流路R3は、先端側において流路ヘッダー6と接続されて、飽和蒸気Vが案内流通されるとともに、飽和蒸気Vが加熱された過熱蒸気Sを排出する蒸気排出口11(排出口に相当)を基端側に有している。
【0029】
内管5は基端側において、管状火炎バーナー20の燃焼室22内を通過するとともに、円筒状の燃焼室22の軸方向に直交する燃焼室側壁26に設けられた側面貫通孔26a(貫通部に相当)を基端側に貫通させて設けられている。従って、内管5は基端側の端部5bが、側面貫通孔26aに貫通支持されるとともに、先端側の端部5aが流路ヘッダー6の中心部を形成する円筒状の集合部6bに接続されている。そして、内管5の燃焼室側壁26を貫通した基端側の端部5bには飽和蒸気Vが加熱されて発生した過熱蒸気Sを排出する蒸気排出口11が形成されている。
ここで、側面貫通孔26aには、環状の耐熱シール部材25が設けられ、この耐熱シール部材25によって、内管5が摺動可能に貫通支持されている。これにより、燃焼ガスEや燃焼室22の燃焼によって内管5が加熱されて内管5に発生する熱膨張を許容することができる。
【0030】
蒸気過熱器1は、このような構成とされ、飽和蒸気Vを第1環状流路R1、流路ヘッダー6および内管内流路R3に流通させるとともに、燃焼ガスEを第2環状流路R2に流動させて、飽和蒸気Vと燃焼ガスEとの熱交換により過熱蒸気Sを発生させることを可能にしている。
【0031】
次に、流路ヘッダー6について詳しく説明する。図2に示すのは、流路ヘッダー6の位置における蒸気過熱器1の横断面図である。流路ヘッダー6は、第1環状流路R1において基端側から先端側へ流通する過熱蒸気Sを導入するとともに、その過熱蒸気Sの流通方向を折り返して内管内流路R3へ案内流通する。
【0032】
流路ヘッダー6は、第1環状流路R1から過熱蒸気Sを導入する4本の流通路6aと、4本の流通路6aに導入された過熱蒸気Sを集合させて内管内流路R3へ流通させる集合部6bと、その4本の流通路6aの第1環状流路R1側に設けられて、流路ヘッダー6を先端側フランジ9および中間径管4と接続固定させる円環接続部材6cとで構成されている。
【0033】
円環接続部材6cは、先端側では熱交換部2の先端側フランジ9と接続されるとともに、基端側においては中間径管4の先端側端部4aと接続されて、流路ヘッダー6を固定している。
4本の流通路6aは、第1環状流路R1が延びる方向に直交する状態で、互いに90度の間隔をなすように設けられて、中間径管4と接続された円環接続部材6cの外周側に位置する第1環状流路R1から集合部6bへ向けて、中間径管4と内管5で形成される第2環状流路R2を径方向に横切る状態で設けられている。
集合部6bは、略円筒状の形状とされて、その外周面には4本の流通路6aが接続されており、集合部6bの基端側の側面には、内管内流路R3の先端側端部5aと、その内管内流路R3の軸心と集合部6bの軸心とを一致させた状態で接続されるように構成された接続口が形成されており、この接続口に端部5aが挿入されて係合固定されている。
このように流路ヘッダー6が構成されて、第1環状流路R1から内管内流路R3に過熱蒸気Sを案内流通させることができる。
【0034】
また、流路ヘッダー6には、第2環状流路R2を流動する燃焼ガスEを通過させる燃焼ガス通過口6eが設けられ、燃焼ガスEは、この燃焼ガス通過口6eを通過して排気口8aから排気されている。この燃焼ガス通過口6eは、流路ヘッダー6を構成する円環接続部材6cと集合部6bの外周面との間において、第2環状流路R2を径方向に横切る状態で設けられている4本の流通路6a以外の部分に形成されており、その4本の流通路6aによって4つの略扇形形状に分けられた開口として構成される。
そして、燃焼ガス通過口6eを通過した燃焼ガスEは排気フランジ8に設けられた排気口8aから排気されるように構成されている。なお、このように過熱蒸気Sが流通する4本の流通路6aと燃焼ガスEが流通する4箇所の燃焼ガス通過口6eが交互に配設されているので、伝熱面積を大きくして、効率よく過熱蒸気Sと燃焼ガスEとの間で熱交換が行なうことができる。
【0035】
次に管状火炎バーナー20について詳しく説明する。図3は、管状火炎バーナー20部における蒸気過熱器1の横断面図を示すものである。本実施形態では、燃焼室22の内周面22aの接線方向に向けて、空気Aと燃料ガスFとの混合気Mを混合気噴出部24cから噴出する構成とされる。管状火炎バーナー20には、空気導入口21aから空気Aを受け入れる空気用受入空間23aと、燃料ガス導入口21bから燃料ガスFを受け入れる燃料ガス用受入空間23bとから構成され、この空気用受入空間23aと燃料ガス用受入空間23bとが、燃焼室22を挟んでそれぞれ一対ずつ、燃焼室22の周方向に交互に配設される状態で設けられている。そして、空気用受入空間23aから混合気噴出部24cへ空気Aを噴出する空気供給路24aと、その空気供給路24aの流路途中部分に燃料ガス用受入空間23bから燃料ガスFを供給する燃料ガス供給路24bとが設けられている。
【0036】
このように、空気供給路24aの流路途中に燃料ガス供給路24bから燃料ガスFを供給することにより、その流路途中において空気Aと燃料ガスFとの混合気Mが生成されて、混合気噴出部24cから燃焼室22の内周面22aの接線方向に向けて混合気Mを噴出させ、燃焼室22内において同一回転方向に混合気Mを旋回させることができるように構成されている。
【0037】
これにより、可燃限界内の適当な空気比に混合調整された混合気Mは、燃焼室22内において中空円筒状のいわゆる管状火炎を形成する。管状火炎の火炎内側部分は、ほぼ燃焼反応を終えた(正確にはCOがCO2に、OHがH2Oに変化する反応を一部残した)高温の燃焼ガスEであり、その燃焼ガスEが、燃焼室22を旋回しながら全体として燃焼室22の軸方向に沿って、熱交換器2側へ流動する。なお、この状態では、この燃焼室22内の管状火炎による燃焼により混合気Mは燃焼室22内でほぼ燃焼が完了し、燃焼室22の熱交換器2側の開口端部22bから燃焼ガスEが排出される。
【0038】
このようにして、混合気噴出部24cから混合気Mを均一な流量分布で供給して形成される管状火炎は、良好に燃焼してCO発生が抑えられている。また、空気用受入空間23aおよび燃料ガス用受入空間23bにおいては燃焼前の温度が低い空気Aおよび燃料ガスFが存在することとなるため、空気Aおよび燃料ガスFによる燃焼室22の内周面22aの温度上昇を抑制することができ、断熱火炎に近い火炎温度が実現される。なお、空気を過剰に供給して希薄燃焼させれば、管状火炎の燃焼温度が抑制されて、NOxの発生が抑えられる。
【0039】
管状火炎バーナー20において燃焼を開始する際、管状火炎バーナー20の着火は、図示しない火花放電等による着火手段により管状火炎バーナー20への自動着火が可能に構成されている。また、着火後は図示しない火力調整手段により、燃料ガスFおよび空気Aの供給量が調整可能に構成されて、火力調整が可能となっている。火力調整は、過熱蒸気Sの温度を検出して、その検出温度に応じて火力の強さを調節して、所望の温度に過熱蒸気Sの温度を調整することができるように構成されている。
【0040】
そして、管状火炎バーナー20が着火されて燃焼が開始されると、上述の如く、燃焼室22に管状火炎が形成されるとともに燃焼ガスEが熱交換部2の第2環状流路R2に流入する。第2環状流路R2に流入した燃焼ガスEは、中間径管4、内管5および流路ヘッダー6を介して、第1環状流路R1、流路ヘッダー6、および内管内流路R3を流通する飽和蒸気Vまたは過熱蒸気Sと熱交換する。そして、熱交換を行なって低温となった燃焼ガスEが排気フランジ8に設けられた排気口8aから排気される。
【0041】
燃焼ガスEと飽和蒸気Vまたは過熱蒸気Sとの熱交換について説明する。飽和蒸気Vが蒸気取入口3cより第1環状流路R1に導入されると、導入された飽和蒸気Vは、第1環状流路R1を基端側から先端側に向けて流通するとともに、中間径管4を介して第2環状流路R2を流動する燃焼ガスEと熱交換を行って過熱蒸気Sとなる、そして、その熱交換により発生した過熱蒸気Sは、第1環状流路R1の先端側において流路ヘッダー6に流入するとともに、内管内流路R3に案内流通される。この流路ヘッダー6においても、過熱蒸気Sが流通する4本の流通路6aと燃焼ガスEが流通する4箇所の燃焼ガス通過口6eが交互に配設されているので、熱交換が効率よく行なわれる。そして、内管内流路R3に案内流通された過熱蒸気Sは、内管内流路R3を先端側から基端側に向けて流通するとともに、内管5を介して第2環状流路R2を流動する燃焼ガスEと熱交換が行われて温度が上昇する。そして、内管5は管状火炎バーナー20の燃焼室22を貫通して設けられているので、内管5を流通する過熱蒸気Sは、管状火炎バーナー20の燃焼室22内においても内管5を介してさらに熱交換される。これにより、所定温度に加熱された過熱蒸気Sが、内管5の基端側端部5bに形成された蒸気排出口11から排出される。過熱蒸気Sはこの蒸気排出口11において、例えば、温度400℃、圧力0.7MPaの状態とされて、蒸気排出口11と接続される加熱機器(例えば、食品加工工場におけるコンベアオーブンなど)に供給することができる。
〔別実施形態〕
【0042】
(A)上記実施形態においては、管状火炎を形成して燃焼する管状火炎バーナー20としたが、これに限らず、直進火炎を形成して燃焼する直進火炎バーナー、または、旋回火炎を形成して燃焼する旋回火炎バーナーとしてもよい。
【0043】
(B)上記実施形態においては、中間径管4の内周面4cおよび外周面は、凹凸のない構成としたが、中間径管4の内周面4cに熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、第2環状流路R2における電熱面積を拡大してもよい。また、中間径管4の外周面に熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、第1環状流路R1における電熱面積を拡大してもよい。
【0044】
(C)上記実施形態においては、中間径管4の内周面4cおよび外周面は、凹凸のない構成としたが、内管5の内周面に熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、内管内流路R3における電熱面積を拡大してもよい。また、内管5の外周面に熱伝導率の良好な材料で作成された伝熱用フィンを複数設けて、第2環状流路R2における電熱面積を拡大してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、コンパクトな構成でありながら、過熱蒸気の温度を迅速に調整することができる蒸気過熱器を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 蒸気過熱器
2 熱交換部
3 外管
3e 蒸気導入口
4 中間径管
4d 伸縮部材
5 内管
6 流路ヘッダー
6e 燃焼ガス通過口
8a 排気口
11 蒸気排出口(排出口)
20 管状火炎バーナー(バーナー)
22 燃焼室
22a 内周面
26a 側面貫通孔(貫通部)
A 空気
E 燃焼ガス
F 燃料ガス
M 混合気
R1 第1環状流路
R2 第2環状流路
R3 内管内流路
S 過熱蒸気
V 飽和蒸気(水蒸気)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーと、当該バーナーの燃焼ガスによって水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる熱交換部とを備えた蒸気過熱器であって、
前記熱交換部は、外管と、前記外管より小径の内管と、前記外管と内管との中間径である中間径管とから構成され、前記外管と前記中間径管の間に第1環状流路を、前記中間径管と前記内管の間に第2環状流路を、前記内管内に内管内流路を備えた三重管構造に構成され、
前記熱交換部の軸方向の基端側に、前記バーナーが備えられ、
前記第1環状流路は、前記水蒸気が導入される蒸気導入口を前記軸方向の基端側に有するとともに、当該第1環状流路を流通した前記水蒸気を前記内管内流路へ案内流通する流路ヘッダーと前記軸方向の先端側で接続され、
前記内管内流路は、前記軸方向の先端側において前記流路ヘッダーと接続されて、前記水蒸気が案内流通されるとともに、前記水蒸気が加熱された過熱蒸気を排出する排出口を前記軸方向の基端側に有し、
前記第2環状流路は、前記バーナーの燃焼室と前記軸方向の基端側で接続されるとともに、前記燃焼ガスの排気口を前記軸方向の先端側に有し、
前記水蒸気を前記第1環状流路、前記流路ヘッダーおよび前記内管内流路の順に流通させるとともに、前記燃焼ガスを前記第2環状流路の前記軸方向の基端側から先端側に流動させて、前記水蒸気と前記燃焼ガスとの熱交換により過熱蒸気を発生させる蒸気過熱器。
【請求項2】
前記バーナーは、円筒状に形成された前記燃焼室の内周面の接線方向に向けて、空気と燃料ガスとの混合気を噴出させて又は空気と燃料ガスとを各別に噴出させて、管状火炎を形成する管状火炎バーナーとされ、
前記管状火炎バーナーと、三重管構造を成す前記熱交換部の軸心が一致している請求項1に記載の蒸気過熱器。
【請求項3】
三重管構造を成す前記熱交換部に関し、前記中間径管の内周面と前記管状火炎バーナーの円筒状に形成された前記燃焼室の内周面とが略面一に接続され、前記内管は前記軸方向の基端側において、前記管状火炎バーナーの前記燃焼室内を通過するとともに、当該燃焼室を前記軸方向の基端側に貫通させて設けられている請求項2に記載の蒸気過熱器。
【請求項4】
前記中間径管の一部は前記軸方向に伸縮可能な伸縮部材で構成され、前記内管は前記燃焼室を前記軸方向の基端側に貫通する状態で設けられ、当該内管が前記燃焼室を貫通する貫通部に摺動可能に貫通支持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の蒸気過熱器。
【請求項5】
前記流路ヘッダーに、前記第2環状流路を流動する前記燃焼ガスを通過させる燃焼ガス通過口が設けられ、前記燃焼ガスが前記燃焼ガス通過口を通過して前記排気口から排気される請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸気過熱器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−36679(P2013−36679A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173224(P2011−173224)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)