説明

蓄圧・吸引装置

【課題】軽量化、小型化をさらに図ることができるとともに蓄圧された流体の流出及び流体の吸引を良好に行うことができる蓄圧・吸引装置を提供する。
【解決手段】蓄圧・吸引装置は、シリンダー10と、ピストン20と、シリンダー10内を第1室Aと第2室Bとに隔離するダイアフラム30と、一端がピストン20に連結されたスピンドル40と、第1室Aの容積が減少し、第2室Bの容積が増加する方向にピストン20を付勢するバネ部材50とを備えている。バネ部材50は第1室Aに収納されている。第1室Aは、流入出室A1と変動室A2とからなり、流入出室A1と変動室A2とは連通口12Bにより連通されている。第1室Aは流体を蓄圧状態で貯留可能である。スピンドル40には、連通口12Bを開閉する弁体41Bが設けられている。第2室Bは、バネ部材50の付勢力により容積を増加する際に吸引口11Aから流体を吸引可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄圧・吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の蓄圧・吸引装置が開示されている。この蓄圧・吸引装置は、シリンダーと、シリンダー内を往復運動するピストンと、シリンダーとピストンとの間に介在し、シリンダー内を第1室と第2室とに隔離するダイアフラムとを備えている。第2室には第1室の容積が減少する方向にピストンを付勢するバネ部材が収納されている。第1室には流入口が設けられ、流入口から第1室に流入した流体を蓄圧状態で貯留可能である。また、第2室には吸引口が設けられ、バネ部材の付勢力により第1室に貯留された流体が流出し、第2室の容積が増加する際に吸引口から流体を吸引することができる。このように、この蓄圧・吸引装置は、簡易な構造で小型化を図ることができる。
【0003】
また、この蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用した場合には、第2室の吸引口を便器排水路に連通させることにより、便器洗浄の際に便器排水路内の空気を第2室に吸引させることができる。これにより、水洗式便器に供給される洗浄水量を少なくしても便器排水路内にサイホン作用を誘起させることができ、汚物等を良好に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−70617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の蓄圧・吸引装置では、バネ部材が第2室に収納されているため、吸引口から第2室に吸引されたものがバネ部材に付着し、バネ部材の伸縮を阻害するおそれがある。特に、この蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用し、第2室の吸引口を便器本体に設けられた便器排水路に連通した場合には、便器排水路内の空気のみならず汚物等を吸引口から第2室内に吸引してしまうおそれがある。吸引口から第2室内に吸引された汚物等は、バネ部材に付着し、バネ部材の伸縮を阻害するおそれがある。バネ部材の伸縮が阻害されると、ピストンの往復運動が十分に行なわれず、第1室に貯留された洗浄水の流出及び第2室の便器排水路からの空気の吸引が不十分になるおそれがある。
【0006】
また、この蓄圧・吸引装置では、第1室全体に流入した流体の圧力がかかるため、第1室全体を強固な耐圧構造にしなければならない。このため、蓄圧・吸引装置の軽量化、小型化には限界があり、製造コストが高くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、軽量化、小型化をさらに図ることができるとともに蓄圧された流体の流出及び流体の吸引を良好に行うことができる蓄圧・吸引装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄圧・吸引装置は、シリンダーと、シリンダー内を往復運動するピストンと、シリンダーとピストンとの間に介在し、シリンダー内を第1室と第2室とに隔離するダイアフラムと、第1室内で一端がピストンに連結され、ピストンが往復運動する方向に延びたスピンドルと、第1室の容積が減少し、第2室の容積が増加する方向にピストンを付勢するバネ部材とを備えた蓄圧・吸引装置であって、
前記バネ部材は前記第1室に収納され、
前記第1室は、外部に対して流体を流入出可能であり、容積が一定の流入出室と、前記ピストンの往復運動に従い容積が増減する変動室とからなり、流入出室と変動室とは連通口により連通され、この連通口から前記スピンドルが流入出室内に挿入され、流入した流体を蓄圧状態で貯留可能であり、
前記スピンドルには、前記流入出室内に位置し、スピンドルの軸方向の移動と共に移動し、前記連通口を開閉する弁体が設けられ、
前記第2室は、吸引口を有し、前記バネ部材の付勢力により容積を増加する際に吸引口から流体を吸引可能であることを特徴とする。
【0009】
この蓄圧・吸引装置では、第1室にバネ部材が収納されている。第1室と第2室とは、ダイアフラムにより隔離されているため、吸引口から第2室に吸引されるものによってバネ部材の伸縮が阻害されることがなく、ピストンの往復運動を良好に行うことができる。このため、この蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用し、吸引口を便器排水路に連通した場合、第2室に吸引口から汚物等が吸引されたとしても、バネ部材の伸縮は阻害されず、ピストンの往復運動は良好に行うことができる。
【0010】
また、変動室に所定量の流体が流入し、ピストン及びスピンドルが第2室側に移動すると、スピンドルに設けられた弁体により連通口が閉鎖される。このため、変動室内の流体の圧力がバネ部材の付勢力による圧力よりも高くなることが防止される。よって、流入出室のみをより強固な耐圧構造にすればよく、蓄圧・吸引装置の軽量化、小型化をさらに図ることができる。また、蓄圧・吸引装置の製造コストを安くすることができる。
【0011】
したがって、本発明の蓄圧・吸引装置は、軽量化、小型化をさらに図ることができると共に蓄圧された流体の流出及び流体の吸引を良好に行なうことができる。
【0012】
前記バネ部材は、前記流入出室に収納され、前記スピンドルを介して前記ピストンを付勢し得る。この場合、バネ部材を流入出室に容易に組み込むことができる。
【0013】
前記バネ部材は、前記連通口の前記流入出室側の周縁部と前記スピンドルの他端部との間に介在する圧縮バネであり得る。この場合、連通口の流入出室側の周縁部とスピンドルの他端部との間隔をバネ部材が伸張した状態の長さと等しくすれば、バネ部材を流入出室に容易に組み込むことができる。
【0014】
前記流入出室を形成する隔壁は、前記第2室を形成するシリンダーを構成する樹脂材料よりも機械的強度の高い樹脂材料により構成され得る。このようにすれば、蓄圧・吸引装置の軽量化、小型化を容易に図ることができる。また、蓄圧・吸引装置の製造コストを安くすることができる。
【0015】
前記流入出室には、流体が流入する流入口と流体が流出する流出口とが設けられ、流入口から流入する流体の流量よりも多くの流量の流体を流出口から流出可能であり得る。この場合、第1室に蓄圧状態で貯留された流体を流入口から流入した流体と共に流出口から確実に流出させることができる。
【0016】
前記スピンドルには、前記連通口を通過する際に連通口との隙間面積を小さくする大径部が設けられ得る。この場合、第1室から流体が流出する際、大径部が連通口を通過中は変動室から流入出室に移動する流体の流量が減少する。このため、ピストンの移動が遅くなり、流入出室から流出する流体の流量が減少し、第2室の吸引口から吸引する流体の流量も減少する。その後、大径部が連通口を通り過ぎると、変動室から流入出室に移動する流体の流量が増加する。このため、ピストンの移動が早くなり、流入出室の流出口から流出する流体の流量が増加し、第2室の吸引口から吸引する流体の流量も増加する。このように、第1室から流出する流体の流量の変化と、第2室の吸引口から吸引する流体の流量の変化とを制御することができる。特に、この蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用した場合、便器排水路からの空気の吸引を便器洗浄に最適なタイミング及び流量に制御することができる。
【0017】
前記流入口は、便器本体に洗浄水を供給する給水路に連通され、前記第1室に流入した洗浄水を蓄圧状態で貯留可能であり、前記吸引口は便器本体に設けられた便器排水路に連通され、前記第2室に便器排水路の空気を吸引可能であり得る。この場合、便器排水路から空気を吸引することにより、便器本体に供給される洗浄水を少なくしても便器排水路内にサイホン作用を誘起することができ、汚物等の排出を確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の蓄圧・吸引装置の断面図である。
【図2】実施例1の蓄圧・吸引装置において、第1室に流体を蓄圧状態で貯留した状態を示す断面図である。
【図3】実施例1の蓄圧・吸引装置において、第1室に貯留された流体が流出し、第2室に流体が吸引された状態を示す断面図である。
【図4】実施例1の蓄圧・吸引装置の斜視図である。
【図5】実施例1の蓄圧・吸引装置の要部断面図である。
【図6】実施例1の蓄圧・吸引装置の要部断面図である。
【図7】実施例1の蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用した概略断面図である。
【図8】図7の要部断面図である。
【図9】実施例1の蓄圧・吸引装置が適用された水洗式便器の便器洗浄動作を示す概略断面図である。
【図10】図9の要部断面図である。
【図11】実施例1の蓄圧・吸引装置が適用された水洗式便器の便器洗浄動作を示す概略断面図である。
【図12】図11の要部断面図である。
【図13】実施例1の蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用した透視図である。
【図14】実施例2の蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用した概略断面図である。
【図15】実施例2の蓄圧・吸引装置が適用された水洗式便器の便器洗浄動作を示す概略断面図である。
【図16】実施例2の蓄圧・吸引装置が適用された水洗式便器の便器洗浄動作を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の蓄圧・吸引装置を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1の蓄圧・吸引装置は、図1〜図3に示すように、シリンダー10と、ピストン20と、ダイアフラム30と、第1スピンドル部材40及び第2スピンドル部材41とからなるスピンドルと、バネ部材50とを備えている。
【0021】
シリンダー10は、第1外殻部材11、第2外殻部材12及び第3外殻部材13により形成されている。第1外殻部材11はポリアセタール樹脂により形成され、第2外殻部材12及び第3外殻部材13は、ポリアセタール樹脂よりも機械強度の高いポリフェニレンスルファイド樹脂により形成されている。
【0022】
第1外殻部材11は、図1〜図3において、上下方向に延びる有底の円筒形状に形成されている。第1外殻部材11の上端は開口し、開口の外周縁部に鍔部11Hが形成されている。第1外殻部材11の下部側面には、吸引口11Aが貫設され、外側に突出する接続管部11Bが形成されている。
【0023】
第2外殻部材12は、下端が開口した円筒形状に形成され、開口の外周縁に鍔部12Hが形成されている。第1外殻部材11と第2外殻部材12とは同一の内径及び外径を有している。第1外殻部材11の鍔部11Hの上面と第2外殻部材12の鍔部12Hの下面とが接合され、この接合部にダイアフラム30の外周端が挟み込まれている。
【0024】
第2外殻部材12は、内側に配置され、上下方向に延びる円筒形状に形成された内筒部12Aを有している。内筒部12Aは、第2外殻部材12の上端部に連結され、同軸上に位置している。内筒部12Aの下端部には連通口12Bが貫設されている。
【0025】
第3外殻部材13は、上端が閉鎖され、内筒部12Aの内径と同一の内径を有した円筒形状に形成されている。第3外殻部材13の下端部の外周には鍔部13Hが形成され、その下面が第2外殻部材12の上端面に接合されている。第3外殻部材13の上部側面には、流入口13Aと流出口13Bが貫設されている。
【0026】
ピストン20は、上下方向に貫通する円筒状の胴部材21と、胴部材21の下端開口を封鎖する円盤状の底板部材22とを有している。胴部材21の外側面は、下部が上部より外側に一段膨らんで形成されている。この膨らんだ外側面は第1外殻部材11の内側面との間を僅かな隙間となるように形成されている。このため、胴部材21の下部の外側面がピストン20をスムーズに上下動するようにシリンダー10内を案内している。
【0027】
ピストン20は、胴部材21の上端との間でダイアフラム30の内周端を挟み込む挟持部材23を有している。挟持部材23は胴部材21の内側に嵌め込まれた固定部材24にねじ込まれることにより、胴部材21の上端に固定されている。
【0028】
ダイアフラム30は、円筒形状に形成され、中間部で折り返された転動形ダイアフラムである。このダイアフラム30は、外周端がシリンダー10を形成する第1外殻部材11の鍔部11Hの上面と第2外殻部材12の鍔部12Hの下面との接合部に挟み込まれ、内周端がピストン20を形成する胴部材21の上端と挟持部材23との間に挟みこまれている。これにより、シリンダー10内は第1室Aと第2室Bとに隔離されている。また、このダイアフラム30は、ピストン20の往復運動に伴って、ピストン20の外側面の上部と第1外殻部材11の内側面とに接しながら折返し部が上下動するように変形する。
【0029】
第1室Aは、流入出室A1と変動室A2とから構成されている。流入出室A1は、内筒部12A及び第3外殻部材13の内側に形成され、容積が一定である。変動室A2は、内筒部12Aより外側であり、かつ第2外殻部材12、ダイアフラム30及びピストン部材20に囲まれて形成され、ピストン20の往復運動に従い容積が増減する。このように、流入出室A1は、第1外殻部材を形成するポリアセタール樹脂製よりも機械強度の高いポリフェニレンスルファイド樹脂により形成された第2外殻部材12及び第3外殻部材13により形成されている。
【0030】
第1スピンドル部材40は、下端部がピストン20の底板部材22の上面中央部に連結され、ピストン20の胴部材21の軸上に上下方向に延びている。第1スピンドル部材40は、内筒部12Aに貫設された連通口12Bから流入出室A1内に挿入されている。第1スピンドル部材40の上部には、第1スピンドル部材40を覆う円筒形状の第2スピンドル部材41が取り付けられている。
【0031】
第2スピンドル部材41は、係止部41A、弁体41B及び連結部41Cを有している。係止部41Aは第2スピンドル部材41の上端部に第3外殻部材13の内周側面に沿って円盤形状に形成されている。係止部41Aの周縁部の下面にはバネ部材50の上端が当接されている。連結部41Cは係止部41Aの下面の中央部から下方に延び、第1スピンドル部材40の上部を下端の開口から挿入している。弁体41Bは、連結部41Cの下端部から外方向に拡がり、連通口12Bを閉鎖可能に形成されている。弁体41Bには連通口12Bに設けられた弁座12Cに当接するパッキン41Pが設けられている。
【0032】
バネ部材50は圧縮コイルバネである。このバネ部材50は、連通口12Bの周縁上面に下端を当接させて流入出室A1内に収納される。第1スピンドル部材40は、係止部41Aが最も上方に移動した際に係止部41Aの下面と連通口12Bの周縁上面との間に伸張したバネ部材50を挟み込むことができる長さに形成されている。このため、バネ部材50は、連通口12Bの周縁上面と係止部41Aの下面との間で挟持された状態で流入出室A1内に容易に組み込むことができる。
【0033】
流入出室A1の上部側面に貫設された流入口13Aには、図1及び図4〜図6に示すように、第1弁装置14の下流側接続管14Bが挿入され、接続されている。第1弁装置14は、内部に逆止弁14Vが組み込まれている。第1弁装置14の上流側接続管14Aは配管S1に接続される。
【0034】
流入出室A1の上部側面に貫設された流出口13Bには、図2〜図5に示すように、第2弁装置15の上流側接続口15Aが連通されている。第2弁装置15は内部に開閉弁15Vが組み込まれている。開閉弁15Vは背圧室15Cを有するダイアフラム弁である。この開閉弁15Vは、背圧室15Cに流体が貯留されることにより閉弁し、背圧室15Cに貯留された流体が排出されることにより開弁する。背圧室15Cには図示しない排水路が連通され、排水路は電磁駆動装置15Mにより開閉される。排水路が開放されることにより排出口15Dから背圧室15Cに貯留された流体が排出される。第2弁装置15の下流側接続口15Bは配管S2に連通される。
【0035】
流入出室A1の上部側面に貫設された流入口13Aと流出口13Bは、図6に示すように、流入口13Aの内径D1が流出口13Bの内径D2より小さい。また、流入口13Aに挿入された第1弁装置14の下流側接続管14Bの内径は、流入口13Aの内径D1よりもさらに小さい。このため、流入口13Aから流入する流体の流量よりも多くの流量の流体を流出口13Bから流出させることができる。
【0036】
このように構成された実施例1の蓄圧・吸引装置の動作について説明する。
【0037】
この蓄圧・吸引装置に対して、第1弁装置14の上流側接続管14Aに所定の供給圧力で流体を供給する供給源に接続された配管S1を接続する。この状態で第2弁装置15の開閉弁15Vが閉弁されていると、図2に示すように、第1室Aに流体が貯留される。つまり、流入口13Aから流体が流入出室A1に流入し、流入出室A1が流体で満たされると、連通口12Bを通って変動室A2にも流入する。
【0038】
バネ部材50の付勢力は、供給源の供給圧力(静水圧)よりは弱く、かつ流体が配管S1等を流動している際の圧力(流動圧)よりも強く設定されている。このため、第2弁装置15の開閉弁15Vが閉弁されている状態では、バネ部材50の付勢力に抗して流体が変動室A2に流入する。これにより、ピストン20は下降し、変動室A2の容積が増加して、流体が貯留される。
【0039】
変動室A2に所定量の流体が流入し、ピストン20及び第1スピンドル40が所定の位置まで下降すると、弁体41Bにより連通口12Bが閉鎖される。このようにして、流入出室A1及び変動室A2からなる第1室Aに流体が蓄圧状態で貯留される。連通口12Bが弁体41Bにより閉鎖されているため、変動室A2内の流体の圧力がバネ部材50の付勢力による圧力よりも高くなることが防止されている。
【0040】
したがって、実施例1の蓄圧・吸引装置は、流入出室A1のみを機械強度の高いポリフェニレンスルファイド樹脂により強固な耐圧構造にすればよく、蓄圧・吸引装置の軽量化、小型化をさらに図ることができる。また、蓄圧・吸引装置の製造コストを安くすることができる。
【0041】
第1室Aに流体が蓄圧状態で貯留された後、図3に示すように、第2弁装置15の開閉弁15Vを開弁する。すると、第1室Aに蓄圧状態で貯留された流体が、バネ部材50の付勢力により流出口13Bから第2弁装置15内を通過し、下流側接続口15Bに連通された配管S2へと流出する。この際、流入口13Aから流体が流入した状態で、第1室Aに蓄圧状態で貯留された流体を流出口13Bから流出させることができる。このため、流出口13Bから大流量の流体を流出させることができる。また、流入口13Aに接続された第1弁装置14の逆止弁14Vにより、第1室Aに蓄圧状態で貯留された流体が流入口13Aから上流側へ逆流することを確実に防止している。
【0042】
第1室Aに蓄圧状態で貯留された流体が流出口13Bから流出するに従い、ピストン20は上昇し、変動室A2の容積が減少する。これに伴い、第2室Bの容積が増加し、吸引口11Aから第2室B内に流体が吸引される。この際、バネ部材50は第1室Aに収納されており、第1室Aは第2室Bとは隔離されているため、第2室Bに吸引される流体によってバネ部材50の伸縮が阻害されることがなく、ピストン20の往復運動を良好に行なうことができる。
【0043】
従って、実施例1の蓄圧・吸引装置は、蓄圧された流体の流出及び流体の吸引を良好に行なうことができる。
【0044】
次に、実施例1の蓄圧・吸引装置を水洗式便器に適用した場合を説明する。
【0045】
水洗式便器は、図7に示すように、便器本体100と便器本体100の後部上面に載置された洗浄タンク110とを備えている。便器本体100は、便鉢部101と便鉢部101の下流側に連通する便器排水路102とを有している。また、水洗式便器は、便器排水路102と、便器本体100が設置される床Fに引き出された図示しない排水管とを連通する排水接続部材120を備えている。
【0046】
洗浄タンク110は、ボールタップ111、フロート弁113及びオーバーフロー管116を内蔵している。ボールタップ111は所定の給水圧を有する洗浄水供給源に接続された洗浄水供給管S3に接続されている。また、ボールタップ111は洗浄タンク110内に貯留された洗浄水の水位の変動に従って浮き球112が上下動することにより開閉弁111Vを開閉し、洗浄タンク110内への洗浄水の供給を可能としている。
【0047】
フロート弁113は、玉鎖115により引上げ装置114に連結されており、引上げ装置114の駆動により上昇し、洗浄タンク110内に貯留された洗浄水を便鉢部101に流出可能としている。引上げ装置114は、図示しないリモコン装置に設けられた便器洗浄スイッチを操作することに駆動される。
【0048】
蓄圧・吸引装置の流入出室A1に貫設された流入口13Aは、図7及び図8に示すように、配管S1を介して、ボールタップ111より上流側の洗浄水供給管S3に連通されている。また、流入出室A1に貫設された流出口13Bは、配管S2を介して洗浄タンク110の上部に連通されている。このように、蓄圧・吸引装置は、便器本体100に洗浄水を供給する給水路に連通されている。開閉弁15Vは、リモコン装置に設けられた便器洗浄スイッチが操作されると開弁し、設定時間経過後に閉弁する。また、第2室Bに貫設された吸引口11Aは連通管103により便器排水路102に連通されている。この蓄圧・吸引装置は、図13に示すように、便器本体100の後部上面に洗浄タンク110に隣接して載置されている。蓄圧・吸引装置及び洗浄タンク110はカバー117により囲包されている。
【0049】
次に、この水洗式便器の便器洗浄動作を説明する。
【0050】
洗浄水供給源に洗浄水供給管S3が接続された状態で、開閉弁15Vを閉弁する。すると、バネ部材50の付勢力に抗し、蓄圧・吸引装置の第1室A(流入出室A1及び変動室A2)に洗浄水が流入する。これにより、ピストン部材20が下降し、第1室Aに洗浄水が蓄圧状態で貯留される。また、洗浄タンク110内にはボールタップ111を介して所定量の洗浄水が貯留されている。この状態が、水洗式便器の便器洗浄の待機状態となる。
【0051】
使用者は、水洗式便器を使用した後、便器洗浄を行うためにリモコン装置の便器洗浄スイッチを操作する。すると、図9及び図10に示すように、引上げ装置114が駆動し、フロート弁113が上昇し、洗浄タンク110内に貯留された洗浄水が便鉢部101に流出する。これにより、便鉢部101内に旋回流が形成されるとともに、水位が上昇する。
【0052】
また、便器洗浄スイッチが操作されると、開閉弁15Vが開弁し、第1室Aに蓄圧状態で貯留された洗浄水がバネ部材50の付勢力により流出口13Bから流出し、洗浄タンク110内に流入する。これにより、ピストン部材20が上昇を開始するため、第2室Bが吸引口11Aから連通管103を介して便器排水路102内の空気を吸引し始める。
【0053】
便鉢部101への洗浄水が供給され、便鉢部101内の洗浄水の水位が上昇するとともに、便器排水路102内の空気が吸引されることにより、図11及び図12に示すように、便器排水路102内にサイホン作用が誘起される。便器排水路102内の空気が蓄圧・吸引装置の第2室Bに吸引されるため、便鉢部101へ供給される洗浄水を少なくしても便器排水路102内にサイホン作用を確実に誘起することができ、汚物等の排出を確実に行うことができる。
【0054】
その後、洗浄タンク110内の洗浄水の水位が所定水位以下になると、フロート弁113が閉弁する。フロート弁113が閉弁した後の暫くの間、蓄圧・吸引装置の第1室Aに貯留された洗浄水が洗浄タンク110内に流入するため、洗浄タンク110内に洗浄水を早期に貯留させることができる。このため、次の便器洗浄動作を早期に行なうことができる。
【0055】
開閉弁15Vは、蓄圧・吸引装置のピストン部材20が上昇しきったタイミングで閉弁するように設定されている。開閉弁15Vが閉弁した後、蓄圧・吸引装置の第1室Aに洗浄水が流入し、蓄圧状態で貯留される。また、洗浄水が洗浄タンク110内にもボールタップ111を介して洗浄水が流入するため、洗浄水が貯留される。洗浄タンク110内の水位が上昇するに従い、ボールタップ111の浮き球112が上昇し、ボールタップ111の開閉弁111Vが閉弁する。このようにして、水洗式便器は便器洗浄の待機状態になる。
【0056】
このようにして、実施例1の蓄圧・吸引装置が適用された水洗式便器は、少ない洗浄水で便器排水路102内にサイホン作用を誘起させることができ、汚物等の排出を確実に行なうことができる。
【実施例2】
【0057】
実施例2の蓄圧・吸引装置は、図14〜図16に示すように、第1スピンドル部材40の中間部に大径部40Bが形成されている。大径部40Bは、第1スピンドル部材40の他の部分よりも径の大きい円柱形状に形成され、第1スピンドル部材40の上下動に伴って連通口12Bを挿通可能である。このため、大径部40Bが連通口12Bを通過する際には、連通口12Bとの隙間面積が小さくなる。他の構成については、実施例1の蓄圧・吸引装置と同一であり、同一の構成については同じ符号を付し詳細な説明を省略する。また、実施例2の蓄圧・吸引装置は、実施例1と同様に水洗式便器へ適用することができる。
【0058】
実施例2の蓄圧・吸引装置では、開閉弁15Vが開弁すると、第1室Aに蓄圧状態で貯留された洗浄水がバネ部材50の付勢力により流出口13Bから流出し、ピストン部材20及び第1スピンドル部材40が上昇する。すると、図15に示すように、第1スピンドル部材40の中間部に形成された大径部40Bが連通口12Bを下方から上方へ通過する。大径部40Bが連通口12Bを通過している間は、変動室A2から流入出室A1に移動する洗浄水の流量が減少する。このため、ピストン部材20の上昇速度が減少するため、流入出室A1から流出し、洗浄タンク110内に流入する洗浄水の流量が減少する。また、第2室Bの吸引口11Aから吸引される便器排水路102内の空気の流量も減少する。
【0059】
その後、大径部40Bが連通口12Bを通り過ぎると、変動室A2から流入出室A1に移動する洗浄水の流量が増加する。このため、ピストン部材20の上昇速度が増加するため、流入出室A1から流出し、洗浄タンク110内に流入する洗浄水の流量が増加する。また、第2室Bの吸引口11Aから吸引される便器排水路102内の空気の流量も増加する。
【0060】
このように、第1室Aから流出する洗浄水の流量と、第2室Bが吸引する便器排水路102内の空気の流量とを経時的に変化させることができる。つまり、第2室Bが便器排水路102内の空気を勢い良く吸引する(大流量で吸引する)タイミングを遅らせることができる。これは、洗浄タンク110から便鉢部101へ洗浄水が供給され始めてから所定時間経過後に第2室Bが便器排水路102内の空気を勢い良く吸引することになる。このため、便器排水路102内の空気を勢い良く吸引する前に、便鉢部101へ多くの洗浄水を供給し、便鉢部101内の洗浄水の水位を高くすることができる。便鉢部101内の洗浄水の水位を高くすることにより、その位置エネルギーを高めることができ、第2室が便器排水路102内の空気を勢い良く吸引する際には、その吸引力との相乗効果により、一気に強力なサイホン作用を誘起することができる。よって、汚物等の排出を強力に行なうことができる。
【0061】
このように、実施例2の蓄圧・吸引装置が適用された水洗式便器は、少ない洗浄水で便器排水路102内に強力なサイホン作用を誘起させることができ、汚物等の排出を確実に行なうことができる。
【0062】
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1及び2では圧縮バネを利用しているが、ピストン部材及びスピンドルを引上げ可能な引張りバネを利用することができる。この場合、バネ部材を変動室内に収納し、直接ピストン部材を上方に引き上げるようにしても良い。
(2)上記実施例1及び2では第2外殻部材及び第3外殻部材を第1外殻部材よりも機械強度の高い樹脂により形成しているが、第1外殻部材も機械強度の高い樹脂により形成しても良い。
(3)上記実施例1及び2では流入出室に流入口と流出口とを別々に設けたが、一つの流入出口を設け、その流入出口を利用して流体を流入出室内に流入させたり、流出させたりしても良い。
(4)上記実施例1及び2では、第1スピンドル部材の大径部が円柱形上に形成されているが、円錐台形状等の径寸法が変化するものであっても良い。また、複数の大径部を形成しても良い。
【符号の説明】
【0063】
10…シリンダー
11A…吸引口
12B…連通口
13A…流入口
13B…流出口
20…ピストン
30…ダイアフラム
40、41…スピンドル(40…第1スピンドル部材、41…第2スピンドル部材)
40B…大径部
41B…弁体
50…バネ部材
A…第1室
A1…流入出室
A2…変動室
B…第2室
100…便器本体
102…便器排水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、シリンダー内を往復運動するピストンと、シリンダーとピストンとの間に介在し、シリンダー内を第1室と第2室とに隔離するダイアフラムと、第1室内で一端がピストンに連結され、ピストンが往復運動する方向に延びたスピンドルと、第1室の容積が減少し、第2室の容積が増加する方向にピストンを付勢するバネ部材とを備えた蓄圧・吸引装置であって、
前記バネ部材は前記第1室に収納され、
前記第1室は、外部に対して流体を流入出可能であり、容積が一定の流入出室と、前記ピストンの往復運動に従い容積が増減する変動室とからなり、流入出室と変動室とは連通口により連通され、この連通口から前記スピンドルが流入出室内に挿入され、流入した流体を蓄圧状態で貯留可能であり、
前記スピンドルには、前記流入出室内に位置し、スピンドルの軸方向の移動と共に移動し、前記連通口を開閉する弁体が設けられ、
前記第2室は、吸引口を有し、前記バネ部材の付勢力により容積を増加する際に吸引口から流体を吸引可能であることを特徴とする蓄圧・吸引装置。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記流入出室に収納され、前記スピンドルを介して前記ピストンを付勢していることを特徴とする請求項1記載の蓄圧・吸引装置。
【請求項3】
前記バネ部材は、前記連通口の前記流入出室側の周縁部と前記スピンドルの他端部との間に介在する圧縮バネであることを特徴とする請求項2記載の畜圧・吸引装置。
【請求項4】
前記流入出室を形成する隔壁は、前記第2室を形成するシリンダーを構成する樹脂材料よりも機械的強度の高い樹脂材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の畜圧・吸引装置。
【請求項5】
前記流入出室には、流体が流入する流入口と流体が流出する流出口とが設けられ、流入口から流入する流体の流量よりも多くの流量の流体を流出口から流出可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の蓄圧・吸引装置。
【請求項6】
前記スピンドルには、前記連通口を通過する際に連通口との隙間面積を小さくする大径部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の畜圧・吸引装置。
【請求項7】
前記流入口は、便器本体に洗浄水を供給する給水路に連通され、前記第1室に流入した洗浄水を蓄圧状態で貯留可能であり、前記吸引口は便器本体に設けられた便器排水路に連通され、前記第2室に便器排水路の空気を吸引可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の蓄圧・吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−270529(P2010−270529A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124300(P2009−124300)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】