説明

蓄熱型床暖房構造および蓄熱型床暖房システム

【課題】蓄熱材による蓄熱効果をより効率的に発揮することができる蓄熱型床暖房構造を提供する。
【解決手段】蓄熱型床暖房構造は、第1の木質系床材10と第2の木質系床材とを敷設した構造である。第1の木質系床材10は、木質系基板11の裏面11bに収納凹部15が形成され、収納凹部15に電気式ヒータおよび第1の蓄熱材が収納されている。第2の木質系床材は、木質系基材の裏面に収納凹部が形成され、収納凹部に第1の蓄熱材よりも融点が低い第2の蓄熱材が収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系床材に蓄熱材を備えた蓄熱型床暖房構造に係り、特に、熱エネルギを有効に活用することができる蓄熱型床暖房構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、床暖房用の木質系床材は、木質系基材の裏面に、収納凹部が形成されており、収納凹部には、例えば温水パイプや電気式ヒータなどの熱源が収納されている。そして、この木質系床材を床下地面に敷設し、実部を介してこれらを連結させて、床暖房構造とされている。
【0003】
近年、耐環境性の観点から、このような床暖房の技術分野においても、床暖房時に発生する熱エネルギ、日射光などの自然エネルギをより有効に活用するような研究・開発が盛んに取り組まれており、これらの研究・開発に基づいた省エネおよびエコ対策が講じられている。
【0004】
このような点を鑑みて、近年では、蓄熱材を用いた床暖房構造の開発がなされている。ここでは、蓄熱材として、融点(相変化温度)以上の温度で蓄熱することができる潜熱蓄熱材が注目されており、この潜熱蓄熱材を利用した様々な蓄熱型の床暖房構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
例えば、日射光を利用した蓄熱型床暖房構造としては、特許文献2に示す如き蓄熱型床暖房構造が提案されている。この蓄熱型床暖房構造は、相変化温度の異なる複数種類の蓄熱材が容体に収容された蓄熱体と、蓄熱体に収容された蓄熱材を加熱しうる熱源(温水パイプ)とを備えている。ここで、複数種類の蓄熱材には、日射熱で溶融する相変化温度を有する蓄熱材が含まれている。
【0006】
このような蓄熱型床暖房構造によれば、複数種類の蓄熱材のうち、日射熱で溶融する相変化温度を有する蓄熱材を用いることにより、熱源からの熱エネルギばかりでなく、日射エネルギを利用して、床材の蓄熱を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−9829号公報
【特許文献2】特開2010―223522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、室内の床面に付与される熱エネルギの量は、その室内の床面の区域によって異なる。例えば、日射光が照射される区域、日射光やその他熱源からの熱エネルギがほとんど付与されない区域などがあるが、上述した蓄熱型床暖房構造は、さまざまな温度条件で蓄熱できるように、日射熱で溶融する蓄熱材ばかりでなく、その他の温度条件で溶融する蓄熱材も、1つの容体内に封入されて蓄熱体とされている。このため、温度条件によっては、すべての蓄熱材が蓄熱に寄与するものではなく、室内の区域に付与される熱エネルギに応じて効率的に蓄熱を行うことができないことがあった。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、蓄熱材による蓄熱効果をより効率的に利用することができる蓄熱型床暖房構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、付与される熱エネルギに応じて、蓄熱材を選定し、この選定した蓄熱材を木質系床材の裏面側に収納して床材とし、上述した熱エネルギが付与される区域に応じて、これらの床材を床下地面の所定の区域に敷設すれば、より効率的に蓄熱材による蓄熱効果を発揮することができるとの新たな知見を得た。
【0011】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、蓄熱型床暖房構造は、木質系基材の裏面に収納凹部が形成され、該収納凹部に熱源および第1の蓄熱材が収納された第1の木質系床材と、木質系基材の裏面に収納凹部が形成され、該収納凹部に前記第1の蓄熱材よりも融点が低い第2の蓄熱材が収納された第2の木質系床材と、を少なくとも敷設したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、蓄熱型床暖房構造が配置される室内のうち、熱源の熱エネルギが必要とされる区域に、第1の木質系床材を敷設し、これにより熱源からの熱エネルギを第1の蓄熱材に蓄熱することができる。
【0013】
一方、蓄熱型床暖房構造が配置される室内のうち、熱源以外の熱エネルギが付与される区域(または、間接的に熱源の熱エネルギが付与される区域)に、第2の木質系床材を敷設することができる。これにより、この区域における熱源以外の熱エネルギを利用して、第2の蓄熱材により蓄熱を行うことができる。
【0014】
このようにして、熱源が必要な区域には、第1の木質系床材を敷設し、熱源を必ずしも要しない区域には、第2の木質系床材を敷設することができるので、敷設エリア全体としてのエネルギ効率をより高めることができる。
【0015】
ここで、本発明に係る蓄熱材とは、液体・固体間の相変化に伴い放出あるいは吸収される熱エネルギ(潜熱)を利用した材料であり、溶融時(融点以上)において、付与された熱をその内部に蓄熱することができる蓄熱材のことをいう。本発明では、第1の蓄熱材の融点が、第2の蓄熱材の融点よりも高いので、第1の蓄熱材は、第2の蓄熱材に比べてより高い温度条件において、その内部により多くの熱エネルギを蓄熱することができる。
【0016】
このようなことから、第1の蓄熱材は、熱源を用いて設定される熱源の温度の範囲内に融点を有する材料が選定され、第2の蓄熱材は、これ以下の融点を有する材料が選定されることになる。
【0017】
このように、熱エネルギが付与される区域に応じて、第1および第2の木質系床材を敷設し、これにより、熱源のエネルギ効率を高めることができるのであれば、これらの木質系床材の敷設する区域は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記第2の木質系床材を日射光が照射される区域に敷設する。
【0018】
この態様によれば、第2の木質系床材は、床下地面のうち日射光が照射される区域に配置されるので、第2の蓄熱材により日射光のエネルギを有効活用することができる。さらに、第2の蓄熱材として、18〜28℃程度の融点を有した蓄熱材を選定すれば、夏場の日射光によりフロアが長時間曝されたとしても、日射エネルギによる過度の加熱(蓄熱)を抑制することができ、これによるフロアの不快感を軽減することができる。
【0019】
一方、日射光が照射されない区域には、第1の木質系床材を配置することができるので、この区域では、深夜電力を利用して熱源を発熱することにより、第1の蓄熱材に、熱源の熱を蓄熱することができる。ここで、本発明でいう、「日射光が照射される区域」とは、室内の床下地面のうち、夏場および冬場に拘らず、常時日射光が照射される区域を少なくとも含む区域である。
【0020】
また、熱源としては、温水式ヒータ、電気式ヒータいずれであってもよいが、より好ましい態様としては、前記熱源は、電気式ヒータである。一般的に、エアコンやヒートポンプを使った温水式床暖房に比べて、電気式ヒータを用いた電気式床暖房は、エネルギ効率が良くないところ、第2の木質系床材により、日射エネルギや生活廃熱およびストーブやファンヒータなどの間接的な熱エネルギ(例えば、室内の空気を介して付与される石油ファンヒータなどの熱エネルギ)を蓄熱して活用できるので、部屋全体として電気式ヒータの見かけ上のエネルギ効率を高めることができる。
【0021】
上述した蓄熱型床暖房構造は、この熱源を制御する制御装置と共に、蓄熱型床暖房システムとして用いることが好ましい。より具体的には、蓄熱型床暖房システムは、上に示した蓄熱型床暖房構造と、前記熱源を制御する制御装置とを備えた、蓄熱型床暖房システムであって、前記蓄熱型床暖房システムの制御装置は、前記第2の蓄熱材の温度が、前記第2の蓄熱材の融点よりも低いときに、前記熱源を起動することがより好ましい。
【0022】
この蓄熱型床暖房システムの態様によれば、第2の蓄熱材の温度を測定し、測定した第2の蓄熱材の温度が前記第2の蓄熱材の融点よりも低いときに、第2の木質系床材の蓄熱材からの放熱が減少したと判断し、これに応じて、第1の木質系床材の熱源を起動し、日射蓄熱による暖房から、熱源による暖房に快適に移行することができる。
【0023】
また、より好ましい態様としては、前記蓄熱型床暖房システムの制御装置は、経時的に変化する前記室内の温度に基づいて、前記熱源の起動開始時刻を演算し、演算した起動開始時刻に合わせて、前記熱源を起動するものである。
【0024】
この蓄熱型床暖房システムの態様によれば、経時的に変化する室内の温度を測定し、測定した室内の温度に基づいて、熱源の起動開始時刻を演算し、この時刻に熱源を起動するので、所望の時刻に、所望の室内の温度となるように、床暖房を行うことができる。特に、深夜において、経時的に変化する室内の温度を測定すれば、深夜電力を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の蓄熱型床暖房構造によれば、蓄熱材による蓄熱効果をより効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房構造を構成する第1の木質系床材の模式的斜視図であり、(a)は、床面(表面)側の木質系床材の斜視図、(b)は、裏面側の木質系床材の分解斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房構造を構成する第2の木質系床材の模式的斜視図であり、(a)は、床面(表面)側の木質系床材の斜視図、(b)は、裏面側の木質系床材の分解斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房構造を説明するための図であり、(a)は、蓄熱型床暖房構造を配置した状態を説明するための模式的断面図であり、(b)は、蓄熱型床暖房構造のうち日射光が照射される区域の断面図であり、(c)は、その他の区域の断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの模式的概念図。
【図5】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第1実施形態に係る制御フロー図。
【図6】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第2実施形態に係る制御フロー図。
【図7】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第1および2実施形態に係る制御フローを実施したときの第2の蓄熱材の温度および室内の温度と、ヒータ起動のタイムチャート。
【図8】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第3実施形態に係る制御フロー図。
【図9】本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第1および3実施形態に係る制御フローによる室内の温度とヒータ起動のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本実施形態に基づき本発明を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房構造を構成する第1の木質系床材の模式的斜視図であり、(a)は、床面(表面)側の木質系床材の斜視図、(b)は、裏面側の木質系床材の分解斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房構造を構成する第2の木質系床材の模式的斜視図であり、(a)は、床面(表面)側の木質系床材の斜視図、(b)は、裏面側の木質系床材の分解斜視図である。
【0028】
図3は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房構造を説明するための図であり、(a)は、蓄熱型床暖房構造を配置した状態を説明するための模式的断面図であり、(b)は、蓄熱型床暖房構造のうち日射光が照射される区域の断面図であり、(c)は、その他の区域の断面図である。
【0029】
図1(a)および(b)に示すように、実施形態に係る蓄熱型床暖房構造1を構成する第1の木質系床材10は、木質系基材11と、これに収納される電気式ヒータ(熱源)16および第1の蓄熱体17と、を備えている。
【0030】
木質系基材11は、少なくとも床材の剛性および強度を確保ための基材であり、材料としては、広葉樹や針葉樹からなる通常の合板、LVL、LVB、MDF(木質繊維板)、集成材これらを任意に積層した積層板、などを挙げることができる。さらに、本実施形態では、図1(a)に示すように、木質系基材11の表面11aには、ナラ材、カバ材、ブナ材、チーク材、等の表面化粧材および化粧用表面合成樹脂シートが貼着されている。
【0031】
また、木質系基材11の周縁には、雄実部12aと雌実部12bとが形成されている。この雄実部12aと雌実部12bを係合させることにより、図3に示すように、第1の木質系床材10同士、さらには、後述する第2の木質系床材20と実結合することができる。
【0032】
一方、図1(b)に示すように、木質系基材11の裏面11bには、収納凹部15が形成されている。収納凹部15には、その底部15aから開口部15bに向って、第1の蓄熱体17と電気式ヒータ16が順次収納されており、これらは、接着剤を介して相互に貼り合わされると共に、収納凹部15の壁面に貼着されている。
【0033】
電気式ヒータ16は、PTCヒータであり、コネクタ16a,16bにより電気的に接続されており、ヒータ同士の接続も可能となっている。なお、ここでは、電気式ヒータ16として、PCTヒータを例示したが、電気式ヒータ16がカーボンヒータであってもよい。
【0034】
また、第1の蓄熱体17は、例えばABS樹脂などの樹脂成形品の容体17a内に、第1の蓄熱材(図示せず)が封入されている。ここで、第1の蓄熱材は、熱源を用いて設定される熱源の発熱温度の範囲内において溶融する(融点Mp1を有する)材料であり、本実施形態では、融点(相変化温度)Mp1が30〜40℃の範囲にある潜熱蓄熱材である。具体的には酢酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、パラフィン(C2246)などを挙げることができる。
【0035】
一方、図2(a)および(b)に示すように、実施形態に係る蓄熱型床暖房構造1を構成する第2の木質系床材20は、木質系基材21と、これに収納される第2の蓄熱体27と、を備えている。
【0036】
木質系基材21は、図1に示す木質系基材11と同様の材料からなる。また木質系基材21の周縁には、雄実部22aと雌実部22bとが形成されている。これにより、図3に示すように、第2の木質系床材20ばかりでなく、第1の木質系床材10に対しても実結合可能となる。
【0037】
また、図2(a)には、第2の木質系基材21の表面21aには、第1の木質系基材11の表面化粧材と同じ表面化粧材が貼り付けられており、その裏面21bには、収納凹部25が形成されている。収納凹部25には、第2の蓄熱体27が収納されており、第2の蓄熱体27は、接着剤を介して、収納凹部25の底部25aと収納凹部25の壁面に貼着されている。
【0038】
第2の蓄熱体27は、ABS樹脂などの樹脂成形品の容体27a内に、第2の蓄熱材(図示せず)が封入されている。ここで、第2の蓄熱材は、日射光により付与される日射熱で溶融する潜熱蓄熱材であり、第1の蓄熱材よりも融点(相変化温度)Mp2が低い潜熱蓄熱材である。本実施形態では、第2の蓄熱材の融点Mp2が、18℃〜28℃の範囲の潜熱蓄熱材である。
【0039】
具体的には、第2の潜熱蓄熱材としては、硫酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム水和物、パラフィン(C1838)などを挙げることができ、この融点以上において蓄熱することができるものであれば、その材料は特に限定されるものではない。
【0040】
このようにして得られた第1および第2の木質系床材10,20を、室内70の床下地面71に敷設することにより、蓄熱型床暖房構造1を得ることができる。具体的には、図3(a),(b)に示すように、本実施形態では、室内70のうち床下地面71のうち、日射光が照射される区域71aには、複数の第2の木質系床材20,20…を実結合しながら敷設する。一方、図3(a),(c)に示すように日射光が照射されない区域71bには、複数の第1の木質系床材10,10…を実結合しながら敷設する。
【0041】
このようにして、部屋全体としてエネルギ効率の高い蓄熱型床暖房構造を得ることができる。すなわち、蓄熱型床暖房構造1は、融点が18℃〜28℃となる第2の蓄熱材により、第2の木質系床材20に照射された日射光のエネルギを有効活用することができる。また、夏場の日射光によりフロアが長時間曝されたとしても、日射エネルギによる過度の加熱を抑制することができ、これによるフロアの不快感を軽減することができる。
【0042】
また、日射光が照射されない区域には、第1の木質系床材10を配置することができるので、この区域では、たとえば深夜電力を利用して、制御装置30により電気式ヒータ16を起動してこれを発熱させることにより、第1の蓄熱材に、電気式ヒータ16の熱を蓄熱することができる。また、日射がないときにも電気式ヒータを起動させることで、快適な環境を作り出すことができる(ヒータ熱をそのまま利用することもできる)。
【0043】
図4は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システム100の模式的概念図であり、図3に示す制御装置30の詳細を示した図である。蓄熱型床暖房システム100は、上述した蓄熱型床暖房構造1と、蓄熱型床暖房構造1の電気式ヒータ16を制御する制御装置30で構成されている。
【0044】
制御装置30は、操作パネル31からの入力信号を、A/D変換器32を介してCPU33に入力するように構成されている。CPU33は、予めメモリ34に記憶された情報、タイマ35からの時間に関する情報、さらには、第1および第2の温度測定部41,42の温度情報等に基づいて、所望の床温度になるように、電気式ヒータ16の起動開始時刻、通電電流値や通電比率などを演算する。演算されたこれらの値は、制御信号として、D/A変換器37を介して、駆動部38に出力される。駆動部38は、交流電源40に接続されており、CPU33からの制御信号に基づいて、電気式ヒータ16に、交流電源40からの所定の電流を通電し、各電気式ヒータ16を起動する。ここで、各部分の機能を以下に詳細に説明する。
【0045】
操作パネル31は、床温度を所望の温度に設定するための入力装置であり、さらには、後述する図6から図8に示すような電気式ヒータ16の制御方式を選択して設定することが可能となっている。
【0046】
第1の温度測定部41は、第2の木質系床材20の第2の蓄熱材の温度(第1の温度ta)を測定するものであり、例えばサーミスタである。第1の温度測定部41は、少なくとも1つの第2の木質系床材20の第2の蓄熱材に配置されている。
【0047】
一方、第2の温度測定部42は、前記蓄熱型床暖房構造が敷設された室内の温度(第2の温度tb)を測定するものであり、例えばサーミスタである。第2の温度測定部42は、室内のうち、室内の平均的な温度が測定することができる位置(例えば日射やエアコンの気流が直接当たらない壁面)に配置されている。そして、これらの測定された第1および第2の温度は、上述したように、A/D変換器32を介してCPU33に入力される。
【0048】
メモリ34は、CPU33により演算される演算条件や判定条件を予め記憶したROM、RAMなどからなり、これらの条件等を必要に応じてCPU33に出力する。タイマ35は、現在の時刻ばかりでなく、必要に応じて駆動部38による電気式ヒータ16の駆動時間も測定可能となっている。
【0049】
このような構成を前提として、CPU33は、以下の演算を行う。図5は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第1実施形態に係る制御フロー図である。この制御フローは、電気式ヒータ16の起動タイミングを制御するフローである。ここで、スタート時点において、電気式ヒータは起動されていない状態である。
【0050】
具体的には、まず、図5に示すように、ステップS501では、タイマ35からの時刻Tが、メモリ34に記憶された時刻T1となったかを判定する。ここで、時刻T1になっていない場合(NO)、時刻T1になるまで、ステップS501の判定を繰り返し行う。
【0051】
次に、ステップS501において、時刻T1となった場合(YES)、ステップS502に進み、第1の温度測定部41からの第1の温度taを測定する(CPU33に温度データを入力する)。第1の温度t1は、上述したように、第2の木質系床材20の第2の蓄熱材の温度である。
【0052】
次に、ステップS503に進み、第1の温度(第2の蓄熱材の温度)t1が、第2の蓄熱材の融点Mp2よりも低いかどうかの判定を行う。ここで、第1の温度taが、第2の蓄熱材の融点Mp2以上の場合には(NO)、この状態で、第2の蓄熱材は日射熱によって溶融し、日射熱による暖房が可能と判断し、電気式ヒータ16は起動せずに、ステップS504に進み、時刻T1に所定の時間ΔT加え、ステップS501に戻る。
【0053】
一方、第1の温度taが、第2の蓄熱材の融点Mp2よりも低い場合には、日射熱を利用した暖房では十分ではないと判断し、ステップS505に進み、駆動部38に電気式ヒータ16を起動させる制御信号を出力する。
【0054】
図6は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第2実施形態に係る制御フロー図である。この制御フローは、電気式ヒータ16の停止タイミングを制御するフローである。
【0055】
具体的には、まず図6に示すように、ステップS601では、電気式ヒータ16を起動する。この起動は、上述した図5のステップS505による電気式ヒータ16の起動であってもよい。次に、ステップS602に進み、第2の温度tbを測定する。第2の温度tbは、蓄熱型床暖房構造が敷設された室内の温度のである。
【0056】
そして、ステップS603に進み、第2の温度tbが、予め設定された最高温度tmを超えたかどうかの判定を行う。ここで、第2の温度tbが、最高温度tmを超えていない場合には(NO)、電気式ヒータ16の起動状態を維持すべく、ステップS602に戻る。ここでの最高温度tmは、操作者により予め設定した所望の温度、または、室内の温度を快適に維持することができる温度範囲のうち最高の温度である。
【0057】
一方、測定した温度taが、最高温度tmを超えている場合には(YES)、電気式ヒータ16によりフロアが過熱状態と判断し、ステップS604に進み、駆動部38に電気式ヒータ16を停止させる制御信号を出力する。
【0058】
ここで、図5および6の一連の制御フローを実施したとき第1の温度ta、第2の温度tb、ヒータ起動のタイミングの関係を図7を参照しながら説明する。図7は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第1および2実施形態に係る制御フローを実施したときの第2の蓄熱材の温度および室内の温度と、ヒータ起動のタイムチャートである。
【0059】
図7示すように、図5の一連の制御フローにより、制御装置30は、時刻T1において、第2の蓄熱材の温度である第1の温度taが、第2の木質系床材20の第2の蓄熱材の融点Mp2よりも低くなったときに、電気式ヒータ16が起動される。これにより、時刻T1以降に第1の木質系床材10が昇温する。このような結果、日射蓄熱による暖房から、熱源による暖房に快適に移行することができる。
【0060】
そして、室内の温度である第2の温度tbが、最高温度tmを超えたとき(時刻Tp)には、電気式ヒータ16の起動が停止される。このようにして、電気式ヒータ16による過熱を防ぐことができる。
【0061】
図8は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第3実施形態に係る制御フロー図である。この制御フローは、深夜における電気式ヒータ16の起動タイミングを制御するフローである。
【0062】
具体的には、まず、図8に示すように、ステップS801では、タイマ35からの時刻Tが、メモリ34に記憶された時刻T2となったかを判定する。ここで、時刻T2になっていない場合(NO)、時刻T2になるまで、繰り返しステップS801の判定を行う。
【0063】
次に、ステップS801において、時刻T2となった場合(YES)、ステップS802に進み、第2の温度測定部42からの温度t2を測定する(CPU33に温度データを入力する)。温度t2は、時刻T2における第2の温度tbであり、蓄熱型床暖房構造1が敷設された室内70の温度である。
【0064】
次に、ステップS803では、タイマ35からの時刻Tが、時刻T3となったかを判定する。ここで、時刻T3になっていない場合(NO)、時刻T3になるまで、繰り返しステップS803の判定を行う。
【0065】
次に、ステップS803において、時刻T3となった場合(YES)、ステップS804に進み、第2の温度測定部42からの第2の温度t3を測定する。温度t3は、時刻T3における第2の温度tbである。
【0066】
次に、ステップS805に進み、ステップS805では、時刻T2から時刻T3までにおける室内の温度変化量Δtを演算する。具体的には、温度変化量Δtは、時刻T2における温度t2から時刻T3における温度t3を減じた値である。
【0067】
次に、ステップS806に進み、時刻T3における温度t3と、温度変化量Δtに基づいて、電気式ヒータ16を起動すべき時刻を演算する。具体的には、深夜電力を利用すべく、少なくとも、朝7時に、室内の温度が温度t3から所望の温度ttになるような電気式ヒータ16の起動時間ΔTsを演算する。
【0068】
起動時間ΔTsの演算は、時刻T3における温度t3と、温度変化量Δtに基づいて、所望の温度ttとなる時間を、予め実験等により求めたテーブルを用いてもよい。また、時間ΔTs=f(t3,Δt)となるような関数fを準備して、温度t3と、温度変化量Δtを関数fに代入して、起動時間ΔTsを演算してもよい。
【0069】
そして、ステップS807に進み、朝7時から起動時間ΔTsを遡った時刻を演算し、この時刻を、電気式ヒータ16の起動開始時刻T4とし、ステップS808に進む。次に、ステップS808では、タイマ35からの時刻Tが、起動開始時刻T4となったかを判定する。
【0070】
ここで、その起動開始時刻T4になっていない場合(NO)、その起動開始時刻T4になるまで、繰り返しステップS808の判定を行う。一方、ステップS808において、起動開始時刻T4となった場合(YES)、ステップS809に進み、駆動部38に電気式ヒータ16を起動させる制御信号を出力する。
【0071】
ここで、図6および8の一連の制御フローを実施したときの室内の温度とヒータ駆動のタイミングの関係を図9を参照しながら説明する。図9は、本発明の実施形態に係る蓄熱型床暖房システムの第1および3実施形態に係る制御フローによる室内の温度とヒータ起動のタイムチャートである。
【0072】
図9に示すように、図8の一連のフローにより、制御装置30は、時刻T2において、第2の温度tbとして温度t2を測定し、時刻T3において、第2の温度tbとして温度t3を測定し、時刻T3において温度変化量Δtを演算する。そして、温度t3、および温度変化量Δtから電気式ヒータ16の起動時間ΔTsが演算され、この起動時間ΔTsに基づいて、起動開始時刻T4が演算される。
【0073】
そして、起動開始時刻T4で、電気式ヒータ16を起動させる。これにより、深夜電力を利用して、蓄熱型床暖房構造1のフロアが昇温され、午前7時には、蓄熱型床暖房構造1のフロアの温度は、所望の温度ttに到達する。
【0074】
このような結果、第2の温度測定部で経時的に変化する室内の温度(第2の温度tb)を測定し、測定した第2の温度tbに基づいて、電気式ヒータ16の起動開始時刻T4を演算するので、所望の時刻である午前7時に、所望の室内の温度ttとなるように、床暖房を行うことができる。特に、深夜において、経時的に変化する室内の温度を測定して、電気式ヒータ16の起動を行うので、深夜電力を有効に活用することができる。
【0075】
一方、図9の鎖線で示すように、上述した温度変化量Δtよりも小さい温度変化量Δt’であり、時刻T3において、上述した温度t3よりも高い温度t3’である場合には、電気式ヒータ16の起動時間ΔTs’は、上述した起動時間ΔTsよりも短くなるように演算される。この結果、電気式ヒータ16の起動開始時刻T4’は、上述した起動開始時刻T4よりも遅くなる。このようにして、より、短い時間で、効率的に、電気式ヒータ16を起動して、深夜電力を有効に活用することができる。
【0076】
そして、室内の温度である第2の温度tbが、最高温度tmを超えたときには、図6に示す制御フローに従って、電気式ヒータ16の起動が停止される。このようにして、電気式ヒータ16による過熱を防ぐことができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0078】
図8および図9では、室内の温度である第2の温度tbが、最高温度tmを超えたときに電気式ヒータ16の起動を停止したが、第1の温度taが、所定の温度を超えたときに、電気式ヒータ16の起動の停止を行っても良い。このような結果、熱源による暖房から日射蓄熱による暖房に快適に移行することができる。
【0079】
本実施形態では、エネルギ効率を高めるべく、熱源として電気式ヒータを用いたが、例えば、熱源として温水パイプを用いた温水式ヒータを用いてもよい。また、第1および第2の木質系床材において、それぞれの蓄熱材を容体内に封入して蓄熱体としたが、溶融時の蓄熱材が、これら床材の収納凹部から流れ出さなければ、収納凹部に蓄熱材を直接的に収納してもよい。また、図3に示すように、日射光が照射されない区域の全てに、第1の木質系床材を敷設する必要はなく、必要に応じて木質系基材のみを敷設してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1:蓄熱型床暖房構造、10:第1の木質系床材、11:木質系基材、11a:表面、11b:裏面、12a:雄実部、12b:雌実部、16:電気式ヒータ、16a,16b:コネクタ、17:第1の蓄熱体、20:第2の木質系床材、21:木質系基材、21a:表面、21b:裏面、22a:雄実部、22b:雌実部、27:第2の蓄熱体、30:制御装置、32:A/D変換器、33:CPU、34:メモリ、35:タイマ、37:D/A変換器、38:駆動部、41:第1の温度測定部、42:第2の温度測定部、70:室内、71:床下地面、71a:日射光が照射される区域、71b:日射光が照射されない区域、100:蓄熱型床暖房システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材の裏面に収納凹部が形成され、該収納凹部に熱源および第1の蓄熱材が収納された第1の木質系床材と、
木質系基材の裏面に収納凹部が形成され、該収納凹部に前記第1の蓄熱材よりも融点が低い第2の蓄熱材が収納された第2の木質系床材と、を少なくとも敷設したことを特徴とする蓄熱型床暖房構造。
【請求項2】
前記第2の木質系床材を日射光が照射される区域に敷設したことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱型床暖房構造。
【請求項3】
前記熱源は、電気式ヒータであることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱型床暖房構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱型床暖房構造と、前記熱源を制御する制御装置とを備えた、蓄熱型床暖房システムであって、
前記制御装置は、前記第2の蓄熱材の温度が、前記第2の蓄熱材の融点よりも低いときに、前記熱源を起動することを特徴とする蓄熱型床暖房システム。
【請求項5】
前記制御装置は、経時的に変化する前記室内の温度に基づいて、前記熱源の起動開始時刻を演算し、演算した起動開始時刻に合わせて、前記熱源を起動することを特徴とする請求項4に記載の蓄熱型床暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−141120(P2012−141120A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1310(P2011−1310)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】