説明

蓄電池

【課題】蓄電池が倒立状態になった場合に、各セル室内の電解液が排気筒から各独立した排気通路内に流出し、ガス排出口に達するまでの時間を遅くして液漏れ防止効果を向上させた蓄電池を提供する。
【解決手段】電槽内の各セル室から排出されるガスをガスフィルターを介して外部に排出せしめる蓄電池において、蓋本体の蓋板に、電槽内の夫々の各セル室に連通する一対の第1,第2排気筒31,32と各一対の排気筒31,32間を囲繞し且つ夫々独立した排気通路6a,6a,…を形成し、各排気通路6aの小室に形成された内側通路6a1内に第1,第2排気筒31,32を囲繞して切欠口34を有する環状隔壁33aを突設し、第2排気筒32の上端を上蓋の裏面から下垂突出せしめたコップ状被覆部内に臨ませて成る蓄電池において、蓋本体の蓋板の上面に、環状隔壁33aの切欠口34と第2排気筒32との間に衝立60を突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気構造を具備した蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池が横転した際にセル室内の電解液が排気筒から排気通路を介し外部に流出することを防止した発明が特開昭57-14361号公報に開示されているが、この発明では、該蓄電池が倒立した場合には電解液の外部流出が防止できない不都合があることに鑑み、本願の発明者等は、この課題を解消した発明を出願し、特開2008-117582号公報、特開2008-117583号公報、特開2008-117584公報において開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-14361号公報
【特許文献2】特開2008-117582号公報
【特許文献3】特開2008-117583号公報
【特許文献4】特開2008-117584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、上記特許文献1〜4の排気構造を具備した蓄電池において、倒立した際に各セル室内の電解液が排気筒から夫々独立した各排気通路とその前方のガスフィルターを介し外部に漏出するまでの時間を遅くすることが望まれる。
本発明は、かかる要望を満足した蓄電池の倒立時から各セル室内の電解液がガスフィルターに達するまでの時間を遅くした排気通路を具備した蓄電池を提供することに在る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に記載の通り、内部を仕切壁により区画された複数のセル室を有する電槽の上面に、その夫々のセル室に連通する夫々の排気筒と、相隣る排気筒間を隔離し且つ囲繞する囲繞隔壁により夫々独立した排気通路を形成すると共に、蓋板の上面にその各排気筒を囲繞し、且つ排気通路に連通開口する切欠口を有する環状隔壁を突設して成る蓋本体を気密に施し、更に、該蓋本体の夫々の排気通路の上面開口に上蓋を気密に施し、該上蓋の裏面に形成した囲繞隔壁を該蓋本体の囲繞隔壁に合体させて該囲繞隔壁により夫々独立した排気通路を該蓋本体の夫々独立した排気通路に対応させると共に、該上蓋の裏面から下垂突出する各コップ状被覆部を該蓋本体の該蓋板の上面に突設した環状隔壁に合体させ、前記の対応したこれら排気通路に共通の少なくとも1つのガスフィルターを介し一括排気せしめるガス排出口を設け、更に、各排気筒を第1排気筒と第2排気筒に分割形成すると共にその一方の第1排気筒の上端を該上蓋の裏面から下垂突出する各コップ状被覆部の空間内に臨ませる一方、他方の第2排気筒の上端開口面は該コップ状被覆部の空間内に臨まない高さ位置とし、隣接する該環状隔壁の該切欠口を介し排気通路に連通せしめて成る排気構造を具備した蓄電池において、該蓋本体の該蓋板の上面に該環状隔壁の該切欠口とこれに連通する該第2排気筒の上端開口面との間に衝立を突設したことを特徴とする蓄電池に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、該蓋本体の該蓋板に該第2排気筒に向かい下り坂の傾斜溝を設け、該傾斜溝を跨ぎ該衝立を設けたことを特徴とする蓄電池に存する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、該蓄電池が倒立したとき、各セル室から電解液が該第2排気筒、その外周の該環状隔壁の切欠口を介し上向きになった該上蓋に形成された排気通路内に流出する過程で、該ついたてによりその流出が妨げられるので、流出した電解液がガスフィルターに達するまでの時間を、後記に明らかにするように、衝立のない従来の蓄電池に比し、遅延することができ、著しい漏出防止効果の向上をもたらす。
請求項2に係る発明によれば、倒立した該蓄電池を正立状態に戻したとき、各排気通路内に流出した電解液は、該衝立の下方の該傾斜溝を介し各セル室へ全て還流する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明実施の1例の蓄電池の蓋本体の上面図。
【図2】同蓋本体の上面に施される上蓋の裏面図。
【図3】該上蓋の上面図。
【図4】電槽の上面に蓋本体と上蓋とを順次施して組み立てた蓄電池の一部を截除した上面図。
【図5】図4のA-A線で截断した蓄電池の側面図。
【図6】蓄電池の要部の拡大上面図。
【図7】図6のB-B線裁断面図。
【図8】図6のC-C線裁断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態の1例を添付図面につき説明する。
図1は、合成樹脂成形体から成る方形箱形の蓋本体の上面図を示す。参照符号1で示す該蓋本体の蓋板1aの上面の一部を、該蓋本体1が施される電槽の内部を仕切壁により区画形成されセル室の数に相当する数の、図示の例では、6個のセル室に跨る面域を底面とする長方形の凹面1a1に成形し、その凹面の空間内に、次のような排気構造を構成する。即ち、その長方形の凹面1a1空間内に、その四周内側壁面に沿い、且つその凹面1a1空間の底面、即ち、該本体1の該蓋板1aの上面から所望の高さの方形の四周囲枠2を突設する。その高さは、その上端が図示の例では、該凹面1a1空間の左右に形成した後述する筒状のガス排出口を嵌装するための凹溝1b,1bの底面と同じ或いはそれより高い高さとした。更に、該蓋板1aの上面に、該四周囲枠2で囲繞される凹面1a1空間内に、該電槽の内部を区画形成された6個のセル室に対応する位置で、該蓋板1aに、各セル室に連通する排気孔3a及び注液口4を穿設し、その夫々の外周に、該底面から突出する排気筒3及び注液筒4aの一組ずつを配設する。該蓋板1a上面からの各排気筒3は、該四周囲枠2の高さよりも高い適当な高さに突設せしめ、各注液筒4aは、該四周囲枠2の高さと同じ高さに突設せしめた。
更に、該四周囲枠2内には、下記するように6つの夫々独立した排気通路を形成した。即ち、該四周囲枠2内に、各相隣る排気筒3,3間を隔離すると共に各排気筒3を囲繞する隔壁5a,5a,…を該四周囲枠2と同じ高さに突設し、6個の排気筒3,3,…の夫々が互いに連通することなく独立した6個の排気通路6a,6a,…を区画形成した。更に、各独立した排気通路6a内に、各独立した注液筒4aの側面から該排気筒3の側方を横切り、該四周囲枠2の一方の長辺側枠2aの近傍まで延び、且つ該四周囲枠2と同じ高さの隔壁7aを突設し、これにより、各該排気通路6aを該排気筒3側に、これを囲繞する小室に形成された内側通路6a1と該隔壁7aと該長辺側枠2aの内側面との間に存せしめた間隙8aを介して該内側通路6a1と連通する外側通路6a2とに区分した。更に、その小室に形成された内側通路6a1内に、該長辺側枠2aの内側面から該排気筒3と該隔壁7aとの間に延び且つ該四周囲枠2と同じ高さの隔壁9aを突設し、これにより、電槽内の各セル室から該排気筒3を介し内側通路6a1に進入したガスが、直接、該間隙8aから該外側通路6a2へ排出されることが妨げられ、該隔壁9aと該隔壁7aとの間に形成された通路6a3を通過した後、該間隙8aから該外側通路6a2に排出せしめるように、その通過距離を延長して、電解液ミストの捕集効果を高めるようにした。尚また、該隔壁7aの外側面から側面に該外側通路6a2内へ突設して、該隔壁7aと同じ高さの防沫壁10aを突設した。該防沫壁10aは、外側通路6a2内に突出するようにその複数枚を配設してもよい。
図面で、11は該蓋本体1が施される電槽の仕切壁に対応して該蓋本体1の裏面から下垂突出させた仕切壁、12は正極端子、13は負極端子、14は比重液面表示栓を示す。
【0009】
図2は、上記の蓋本体1の該四周囲枠2の上面に当接して施されるに適した大きさ、形状を有する合成樹脂成形による上蓋20の裏面図、図3は、該上蓋20の上面図を示す。該上蓋20は、実施例では、裏側に凹面空間を形成した箱形とした。
該上蓋20は、蓋板20aとその四周縁から所望高さ下向きに延びる四周側壁20bとから成り、その四周側壁20bの下端は、該上蓋20を該蓋本体1の該四周囲枠2に施されるとき、該四周囲枠2とその外側の該凹面1a1の四周内面との間の空隙に挿入される外側壁20b1と、該四周囲枠2の上端に当接する内側の四周側壁20b2とから成る嵌合係止用段差を有する下端に形成されている。かくして、該上蓋20は、該蓋本体1の該四周囲枠2の上端部に当接係合し、熱融着、接着により互いに結着されるようにした。該蓋板20aには、該蓋本体1上に載せたときに、該蓋本体1の夫々の注液筒4a,4a,…に対応する位置に6個の注液口が穿設されており、更に、該上蓋の裏面の凹面1a1空間内に、蓋本体1の裏面に設けた6つの夫々独立した排気通路6a,6a,…に対応する夫々独立した排気通路を下記のように形成した。
即ち、更に詳細には、その蓋板20aの裏面には、該蓋本体1の該四周囲枠2内に配設した6つの注液口4,4,…と注液筒4a,4a,…に対応する位置に、6つの注液口4,4,…とその外周縁に6つの注液筒4b,4b,…を該四周側壁20b1と同じ高さに突出せしめて配設し、更に、該蓋本体1の該四周囲枠2内で該蓋板1aの上面から突出せしめた囲繞隔壁5a,5a,…に対応する位置に囲繞隔壁5b,5b,…を該四周側壁20b2と同じ高さに突出せしめて配設し、これにより、該蓋本体1に形成された夫々独立した排気通路6a,6a,…に対応する夫々独立した排気通路6b,6b,…が形成されるようにした。更に、該蓋本体1に配設した該隔壁7aに対応する位置に隔壁7b、該隔壁9aに対応する位置に隔壁9b及び該隔壁7aの側面に付設した防沫壁10aに対応する位置に防沫壁10bを夫々その蓋板20aの裏面から該四周側壁20b2と同じ高さに突出して配設し、これにより、蓋本体1に形成された間隙8a、小室に形成された内側通路6a1及び外側通路6a2に対応する位置に、間隙8b、小室に形成された内側通路6b1及び外側通路6b2を夫々形成せしめた。
【0010】
尚、図示の例では、蓋本体1に形成した上記6本の排気通路6a,6a,…及び該上蓋20に形成した上記6本の排気通路6b,6b…は、図1及び図2に明らかなように、その夫々の左半部と右半部が左右対象となるように中央の囲繞隔壁5a,5aにより分割構成され、該蓋本体1の上面に該上蓋20を重合結着したとき、図面で、該蓋本体1の左側の3つの夫々独立した排気通路6a,6a,6aと該上蓋20の左側の3つの夫々独立した排気通路6b,6b,6bとは、上下方向で連通して排気通路6,6,6が形成されると共に、これら排気通路6,6,6は、上蓋20側の左側方の該四周側壁20bの左側のコーナー部内に設けた防爆用のガスフィルター21に連通するようにする一方、図面で、該蓋本体1の右側の3つの夫々独立した排気通路6a,6a,6aと該上蓋20の右側の3つの夫々独立した排気通路6b,6b,6bとは、上下方向で連通して排気通路6,6,6が形成されると共に、これら排気通路6,6,6は、上蓋20側の右側方の該四周側壁20bの右側のコーナー部内に設けた防爆用のガスフィルター21に連通するようにした。
【0011】
更に詳細には、図2に示すように、上蓋20側の3つの夫々独立した排気通路6b,6b,6bは、該四周側壁20bの左側のコーナー部内まで延び、右側の3つの夫々独立した排気通路6b,6b,6bは、該四周側壁20bの右側のコーナー部内まで延び、左右の夫々のコーナー部内には、左右の夫々の3つの排気通路6b,6b,6b及び6b,6b,6bを区画する隔壁5b,5b,5b及び5b,5b,5bの上端と同じレベル位置、或いはそれより低い位置、即ち、該上蓋20の該蓋板20aに近くなる側の位置に、これらの隔壁の外側端面に圧入又は接着するなどの任意の手段で防爆用のガスフィルター21が装着されたガスフィルター装着筒22,22を夫々固設し、その夫々のフィルター装着筒22,22の側方に位置してこれら装着筒22,22内と連通するガス排出口23,23を設ける。図示の例では、筒状ガス排気口23,23とし、その内端をこれらフィルター装着筒22,22内と連通開口せしめた。夫々の筒状ガス排気口23,23は、例えば、断面が中空矩形状の筒とし、該四周側壁20bの左右の短い側の側壁に設けた孔を気液密に貫通して固設せしめたものであり、かくして、該上蓋20を該蓋本体1の上面に施したとき、該左右のフィルター装着筒22,22は、左右の夫々3つの排気通路の外端の上面開口が集合している該蓋本体1の該四周囲枠2の左右のコーナー部内の空間部2c,2cの上方の円形の仮想線で示す位置に来ると同時に、該左右のガス排出口23,23は、該蓋本体1の上面の左右の前記した嵌合凹溝1b,1bに位置するようにした。
【0012】
而して、鉛蓄電池に組み立てるには、常法により、図4及び図5に示す電槽40の上面開口部を閉塞するべく、該蓋本体1の四周側壁1cの下端とその裏面各仕切壁11,11,…を対応する電槽40の四周側壁40aと該電槽40内を6個のセル室40bに仕切る各仕切壁40cに熱融着、接着などで固着し、その蓋本体1の上面に、該上蓋20を施し、該蓋本体1の該四周囲枠2の上面に該上蓋20の該四周囲枠2bを嵌着し、互いに熱融着、接着などで気液密に結着し、これにより、該上蓋20の該四周側壁20bと該蓋本体1の該四周囲枠2との合体により、夫々対向する囲繞隔壁5a,5a,…と5b,5b,…の合体した囲繞隔壁により、夫々の排気筒3,3,…を囲んだ夫々独立した該蓋本体1側の排気通路6a,6a,…と該上蓋20側の排気通路6b,6b,…が上下方向で連通した6本の夫々独立した排気通路6,6,…が得られ、更に、各排気通路6,6,…内において、隔壁7a,7bが合体した隔壁、隔壁9a,9aが合体した隔壁、該防沫壁10a,10bが合体した防沫壁が得られ、これにより、上下方向に連通する小室に形成された内側通路、外側通路及び間隙が夫々形成された鉛蓄電池が得られる。而して、該蓄電池の上蓋20の各注液口4,4より電解液を注入し、各セル室40b,40b,…内に夫々収容されている極板群(図示しない)を浸漬した遊離電解液を保有せしめ、夫々の注液口4に密封栓(図示しない)を施し、鉛蓄電池を構成する。
【0013】
上記の鉛蓄電池の充電時又は過充電時に電槽の各セル室に発生したガスは、夫々対応する排気筒3,3,…を介し、その夫々の排気通路6,6,…に進入し、次いで、左側と右側の夫々3本ずつの独立した排気通路6,6,6からのガスは、その前方の空間部2c,2cに至り、次いで、その上方に配設した左右のガスフィルター21,21を介し左右のガス排出口23,23から外部に夫々一括排気される。
【0014】
かくして、その夫々の独立した排気用通路6,6,…をガスが通過する間に、上記の種々の隔壁や防沫壁などに衝突するので、ガス中の電解液ミストは捕捉され、ガスのみが外部に排出されるので、排気中の液漏れが防止される。一方、捕集した電解液は、相互に交じり合うことがない。尚、夫々の独立した排気通路6,6,…内に捕捉された電解液を流下し、夫々の排気筒3,3,…を介して夫々セル室に還流させるには、該蓋本体1の蓋板1aの上面に相当する各独立した排気通路6,6,…の底面を、各該排気通路6の外端側から該排気孔3aに至るに従い下り坂の傾斜底面とすることが好ましい。
【0015】
更に、本発明によれば、上記に例示した蓄電池の排気構造において、蓄電池が倒立した場合でも、液漏れが防止されるように下記のように構成した。
即ち、該蓋本体1の該蓋板1aに電槽40の各セル室40bに連通する該排気筒3を、2つの排気筒31,32に構成した。図1、図6〜図8に示す例では、1つの排気筒の排気孔3aを隔壁pにより2分してコンパクトな2つの排気筒31,32に構成した。更に、これら2つの排気筒31,32の一方の第1排気筒31は該蓋板1aの上面からの上方に、即ち、排気通路6a側に延びる長さ、即ち、高さを、その他方の第2排気筒32の長さ、即ち、高さより高くする一方、該第1排気筒31の該蓋板1aの下面から下方に、即ち、セル室40b側に延びる長さを、第2排気筒32の長さより短く構成した。
また、該第1排気筒31の排気孔31aは、排気通路6aに開口する上部側をセル室40b側に開口する下部側より小径とし、該第2排気筒32の排気孔32aは、セル室40b側から排気通路6a側に向かうに従い口径が漸次大径とする逆テーパー状とした。
更に、該隔壁pを含めてこれら第1及び第2排気筒31,32の上端面は傾斜面に形成した。この場合、該第2排気筒32の傾斜排気孔32aの上端開口面32a1の下端は、蓋板1aの上面と同じつら位置とし開口するようにし、排気通路6から流下してくる捕捉された電解液を該第2排気筒32の排気孔32aを介しセル室内へ還流し得るようにした。
【0016】
更に、該蓋本体1の各排気通路6a内に、これら第1,第2排気筒31,32の外周に、環状空間S1を存して、該蓋板1aの上面から突出して環状隔壁33aを設けると共に、該環状隔壁33aの一部に設けた上方に開口する切欠口34を介して該環状空間S1とその外側の内側通路6a1と連通せしめる一方、該環状空間S1を介し形成し、該切欠口34を該第1及び第2排気筒31,32の該排気孔31a,32aと環状空間S1を存し、連通するようにした。尚、該切欠口34は、該第2排気筒の該排気孔32aと対面する位置に設けた。
【0017】
一方、該上蓋20には、図2に示すように、その裏面の夫々独立した排気用通路6b,6b,…内に、該蓋本体1に配設した上記の夫々の環状隔壁33a,33a,…に対向する位置に、各該環状隔壁33aと同じ大きさ、形状の環状隔壁33b,33b,…を該上蓋20の裏面から突設した。
【0018】
而して、該蓋本体1の四周囲枠2の長辺側枠2aから内側へ延びて配設した夫々の隔壁9a,9a,…は、その夫々の内端が対応する夫々の該環状隔壁33a,33a,…の外周側面に合体するものに形成する一方、該上蓋20の裏面にも同様に、その四周側壁20bの長辺側壁20b1から内側に延びて配設した夫々の隔壁9b,9b,…は、その夫々の内端が対応する夫々の該環状隔壁33b,33b,…の外周側面に合体するものに形成する。
かくして、各排気通路6aの各小室に形成された内側通路6a1は、該環状隔壁33aをめぐる迂回通路に形成される。而して、図1、図5に明示のように、夫々の環状隔壁33a,33a,…の該切欠口34,34,…を該長辺側壁2a,2a,…に向けて配設したときは、これら排気筒31,32から排出されるガスは、その長辺側壁2a,2aに衝突後、夫々の環状隔壁33a,33a,…の周側壁に沿い迂回した後、夫々の外側通路6a2,6a2,…に進入するようになるので、ミストの捕集性能を更に向上せしめることができるようにした。
【0019】
かくして、該蓋本体1の上面に該上蓋20を気密に施したとき、図7,図8に明示するように、該上蓋2の裏面から下垂する該環状隔壁33bの下端は、該蓋本体1の上面から上方に延びる該環状隔壁33aの上端に当接し、相互に融着、接着などにより結着するが、この当接状態において、該上蓋20の蓋板20aとその裏面から下垂する環状隔壁33bとで形成される断面コ字状のコップ状被覆部35で、該第1,第2排気筒31,32の上方に空隙S2を存してコップ空間S3とその下方に環状空間S1を存した状態で、これら第1,第2排気筒31,32の上部を被覆するようにすると共に、該第1排気筒31の上部の高さは、該コップ状被覆部35内に臨ませる一方、該第2排気筒32の上端開口面は、該コップ状被覆部35の空間内に臨まない高さ位置とし、隣接する該環状隔壁34を介し排気通路に連通せしめるようにした。
また、該蓋本体1の蓋板1aから上面に突設した環状隔壁33aの高さ、従って、該環状隔壁33aに上端を開口して切り欠いた矩形状などの切欠口34の上面開口端34aの高さは、該第1排気筒31の該排気孔31aの上端31a1の傾斜開口面の下端と同じ高さ或いはそれより低い位置に設定した。
【0020】
上記の排気構造を備えた蓄電池が逆さになったときは、セル室40b内の電解液は、上下反転した該第1排気筒31の排気孔31a及び第2排気筒32の排気孔32aによる気液置換により排気通路6a1内へ進入するも、その進入した電解液はコップ空間S3内に溜まり、やがて、第1排気筒31の上端開口を閉塞する。すると、両排気筒31,32を介しての気液置換が行われず、所謂エアロックを生じ、これにより、これ以上の電解液の流出がない液漏れ防止効果をもたらす。
この場合、上記のように、該第1排気筒31の排気孔31aの排気通路側に開口する側の上部口径をその下方のセル室40b側に開口する側の下部口径より小径とすることにより、更に電解液の流出は困難となる。
この状態から、もとの正立状態に戻すと、電解液の自重によりセル室40b内へ流下し、これに伴い、セル室40b内に戻る。
また、鉛蓄電池が横倒しになった場合も、セル室40bから流出してくる電解液は、排気孔31a又は31bを閉じた瞬間に、気液置換が行われなくなるので、エアロックが生じ、電解液の漏出が防止される。
【0021】
尚、該上蓋20の蓋板20aとこれから下垂する環状隔壁33bとから成るコップ状被覆部35は、上蓋20aとは別部材として作製し、これを該上蓋20に設けた該コップ状被覆部嵌着口(図示しない)に、熱融着などにより装着するようにしてもよい。
【0022】
尚又、上記の液漏れ防止機能を有する排気構造として、第1排気筒31及び第2排気筒32は円筒形とすると共に、その上端部を斜めに横断して傾斜面とし、第1排気筒31の排気孔31aの下端の孔径は2mm、上端の孔径は1mmとした。第2排気筒32の排気孔32aの下端の孔径は2.5mm、上端の孔径は3mmとすることが好ましい。
【0023】
漏液試験を行うため、上記に作製した鉛蓄電池を倒立させ、この状態で10分間放置した後、これを再び正立させ、解体し、調べたところ、排気通路へ電解液が漏れているか否かを調べたところ、液漏れは全くなかった。
また、同蓄電池を上蓋が斜めになるように逆立ちさせ、この状態で10分間放置した後、正立させて同様に電解液の液漏れを調べたが、全く漏れはなかった。
【0024】
上記実施例の排気構造を具備した蓄電池は、6本の排気通路6,6,…を2群に分け、左側の夫々独立した排気通路6,6,6からのガスと右側の夫々独立した排気通路6,6,6からのガスを夫々左側の共通の防爆フィルター21と右側の共通の防爆用のガスフィルター21を介し夫々ガス排出口23,23より一括排気せしめるようにしたものであるが、その使用中に、いずれか一方のガス排出口23が目詰まりする場合があり、蓄電池の損傷、破裂を起こす惧れがある。
かかる課題を解決するため、次のような排気構造に構成した。
即ち、図1及び図2に示すように、該蓋本体1の蓋板1aの上面に、該四周囲枠2の内側に、その長辺側壁2aと該長辺側壁2aに対向して平行に延び且つその両端で該長辺側壁2aに連接された長手のコ字状の囲繞隔壁5aとの間に長矩形で且つその両端が左右の空間部2c,2c内に臨み、該蓋本体1に該上蓋20を施したとき、該上蓋20に配設された左右のガスフィルター21,21の下方に位置する長矩形の相互連通路50を形成する一方、該上蓋20の四周側壁20bの内側に該蓋本体1に設けた上記の長矩形状の連通路50に対応して連通路50を、該四周側壁20bと対向し平行して延び且つその両端で長辺側壁20b1に連接された長手のコ字状の囲繞隔壁5bとの間に長矩形で且つその両端が該左右の空間部2c,2c内に臨む連通路50を形成した。
かくして、該蓋本体1を該上蓋20に施したとき、該上蓋20内の左右の防爆用ガスフィルター21,21は、該蓋本体1裏面の該連通路50と該上蓋20の該連通路50が上下方向で合体した連通路50の左右端の上方に存することとなるので、左右のガス排出口23,23のいずれか一方が詰まっても、その詰まった側の一群の排気通路6,6,6から導出されるガスは、該相互連通路50を介してその他方のガスフィルター21を介してガス排出口23から一括排気ができ、上記の課題が解決され、安定な蓄電池が確保される。
かかる相互連通路50を備えた排気構造は、上記の液式の蓄電池ばかりでなく、電解液を極板群に全部含浸された遊離電解液を生じない非液式の蓄電池にも適用し得ることは言うまでもない。
【0025】
上記の実施例の蓄電池では、全排気通路を2群に分け、その夫々の群に対し共通に配設した2つのフィルターに対しこれらを相互に連通する連通路50を形成した場合を示したが、排気通路の数を問わず、その全排気通路を3つ以上に分け、その夫々の群に対し配設した3つ以上のフィルターを有する排気構造を備えた蓄電池の場合は、その各相隣るフィルター間を互いに連通する連通路を設ければよい。
【0026】
上記の排気構造を具備した蓄電池は、前記した通り、逆立ち後10分程度で成立に戻せば外部へ漏れ出ることはないが、横転や逆立ちに気付かず長時間そのような状態に維持されると、横転や逆立ちによって露出した極板が、空気と反応して、内圧が変動して、エアロックバランスが崩れ、漏れ出る場合がある。そこで、本発明は、そのような場合であっても、ガスフィルターを介して外部へ漏れ出ることを長時間抑制し、電解液の外部への漏出防止効果を向上せしめることに在る。この目的を達成する本発明の蓄電池の実施形態の1例を添付図面に基づき以下に説明する。
【0027】
即ち、図1,図4、特に図6,図7,図8に明示するように、該蓄電池の該蓋本体1の上面に配設した夫々の独立した排気通路6a,6a,…の各排気通路6aの小室に形成される内側通路6a1内に位置する該第1,第2排気筒31,32を該環状空間S1を存して囲繞する環状隔壁33aと該環状隔壁33aに設けた切欠口34に隣接する該第2排気筒32との間に、該蓋本体1の蓋板1aの上面に衝立60を突設したことを特徴とする。
かくして、該蓄電池が倒立したとき、各セル室40b内の電解液が該第2排気筒32から該環状隔壁33aの該切欠口34から内側通路6a1と外側通路6a2に流出するとき、該衝立60によりその流出を妨げられ、その流出が遅延せしめられ、流出電解液が該ガスフィルター21に達するまでに相当の時間がかかり、外部への漏出防止効果を向上せしめることができる。
【0028】
上記の本発明の蓄電池10個につき、夫々倒立させた時点から流出電解液がガスフィルターを濡らし、漏出が開始されるまでの時間を測定したところ、平均約6時間を要した。これに対し、上記の衝立を具備しない従来の上記特許文献1の発明に係る蓄電池の10個につき、倒立させた時点から電解液の流出が開始されるまでの時間は、平均約3時間であった。
このように、本発明の蓄電池によれば、著しい電解液漏出防止効果が認められた。
【0029】
次いで、倒立した蓄電池を正立状態に戻したとき、各排気通路内に滞留している電解液は各セル室に戻るが、その電解液の全てを短時間に戻すことが好ましい。そのため、該蓋板1aの上面に、該環状隔壁33aの該切欠口34と該第2排気筒32の上端の傾斜開口面32a1との間に、該傾斜開口面32a1に向かい下り坂とした傾斜溝61を設け、該傾斜溝61を跨ぎ該衝立60を設け、電解液が還流する際に、該衝立60の周辺を通り還流するばかりでなく、該傾斜溝61を通り還流せしめるようにし、その全量が戻る時間を短縮することができるようにした。
更に、該蓋板1aに、該環状隔壁33aの内周面に沿い複数の還流孔62を配設するときは、更に、その還流時間を短縮することができる。
【0030】
本発明を、上記の実施態様では鉛蓄電池で説明したが、ニッカド電池その他の蓄電池に適用できる。
また、上記実施例では、該上蓋20として箱形のものを使用したが、これに代え、図示しないが、四周側壁を欠く単なる蓋板とし、その周縁部を蓋本体の四周囲枠に気密に結着させ、その裏面に蓋本体の該四周囲枠内の各囲繞隔壁の上端を気密に結着すると共に、夫々の独立した排気通路と連通する少なくとも1個のガスフィルターを介し、該蓋板に穿設したガス排出口から一括排気するように形成してもよい。
また、上記の実施例では、該蓋本体1の該四周囲枠2aを、その上面を凹面1a1とし、その凹面空間内に設けたが、図示しないが、該蓋本体の上面を平坦面とし、その平坦面から上方に突出するように形成し、その内部に上記の排気構造を構成してもよい。尚、上記の実施例では、上蓋が蓋本体より僅かに突出して施したものを示したが、上蓋が蓋本体と同一面としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 蓋本体
1a 蓋板
3 排気筒
6 排気通路
20 上蓋
20a 蓋板
21 ガスフィルター
31 第1排気筒
31a 排気孔
31a1 上端開口
32 第2排気筒
32a 排気孔
32a1 上端開口
33a 環状隔壁
33b 環状隔壁
34 切欠口
35 コップ状被覆部
S1 環状空間
S2 空隙
S3 コップ空間
40 電槽
40b セル室
60 衝立
61 傾斜溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を仕切壁により区画された複数のセル室を有する電槽の上面に、その夫々のセル室に連通する夫々の排気筒と、相隣る排気筒間を隔離し且つ囲繞する囲繞隔壁により夫々独立した排気通路を形成すると共に、蓋板の上面にその各排気筒を囲繞し、且つ排気通路に連通開口する切欠口を有する環状隔壁を突設して成る蓋本体を気密に施し、更に、該蓋本体の夫々の排気通路の上面開口に上蓋を気密に施し、該上蓋の裏面に形成した囲繞隔壁を該蓋本体の囲繞隔壁に合体させて該囲繞隔壁により夫々独立した排気通路を該蓋本体の夫々独立した排気通路に対応させると共に、該上蓋の裏面から下垂突出する各コップ状被覆部を該蓋本体の該蓋板の上面に突設した環状隔壁に合体させ、前記の対応したこれら排気通路に共通の少なくとも1つのガスフィルターを介し一括排気せしめるガス排出口を設け、更に、各排気筒を第1排気筒と第2排気筒に分割形成すると共にその一方の第1排気筒の上端を該上蓋の裏面から下垂突出する各コップ状被覆部の空間内に臨ませる一方、他方の第2排気筒の上端開口面は該コップ状被覆部の空間内に臨まない高さ位置とし、隣接する該環状隔壁の該切欠口を介し排気通路に連通せしめて成る排気構造を具備した蓄電池において、該蓋本体の該蓋板の上面に該環状隔壁の該切欠口とこれに連通する該第2排気筒の上端開口面との間に衝立を突設したことを特徴とする蓄電池。
【請求項2】
該蓋本体の該蓋板に該第2排気筒に向かい下り坂の傾斜溝を設け、該傾斜溝を跨ぎ該衝立を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate