説明

蓄電装置及び蓄電システム

【課題】直列接続された複数の蓄電素子を含む蓄電モジュール、各蓄電素子に並列接続される均等化回路、及び蓄電モジュールを電源として動作する回路、を備えた蓄電装置を複数個直列に接続した場合に、各蓄電素子の素子電圧が均等化されるようにする。
【解決手段】蓄電装置(2)は、直列接続された複数の蓄電素子(4)を含む蓄電モジュール(6)と、蓄電素子(4)ごとに当該蓄電素子(4)に並列に接続される均等化回路(8)と、蓄電素子(4)ごとに当該蓄電素子(4)に並列に接続される監視回路(10)と、蓄電モジュール(6)を電源として動作する回路であって、各監視回路(10)の監視結果に応じた出力を行う出力回路(20)とを含む。ここにおいて、出力回路(20)は、自身の消費電流を所定電流値に調整する消費電流調整回路(22)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
単電池及び電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を複数個直列に接続した蓄電モジュールを含む蓄電装置が知られている。このような蓄電装置では、各蓄電素子の素子電圧にばらつきがあると、特定の蓄電素子の寿命が短くなるため、各蓄電素子の素子電圧を均等化することが行われる。
【0003】
具体的には、例えば特許文献1(特に図5(a))に示されるように、各蓄電素子の素子電圧を均等化するための均等化回路(ここでは抵抗器)を蓄電装置に備えさせることが行われる。より詳しくは、蓄電素子ごとに均等化回路を並列に接続することが行われる。
【0004】
各蓄電素子に接続された抵抗器は互いに等しい抵抗値を持っている。そのため、これらの抵抗器を流れる電流によって蓄電モジュール全体の電圧が各蓄電素子に均等に分圧され、結果的に、各蓄電素子の素子電圧が均等化される。
【0005】
なお、この蓄電装置を複数個直列に接続することによって蓄電システムを構成した場合、各蓄電装置に備えられる抵抗器が共通の抵抗値を有するので、蓄電システム全体の電圧が各蓄電素子に均等に分圧されることとなる。すなわち、この蓄電装置を複数個直列に接続しても、各蓄電素子の素子電圧が均等化されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3244592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、以上のような蓄電装置に蓄電モジュールを電源として動作する回路を備えさせた場合を想定する。例えば、ユーザが蓄電装置の状態を一見して把握できるようにするために、蓄電モジュールの状態に応じた出力を行う出力回路を備えさせた場合を想定する。
【0008】
この場合、蓄電装置を複数個直列に接続して蓄電システムを構成したときに、各蓄電装置に備えられる出力回路のインピーダンスのばらつきによって、蓄電システム全体の電圧が各蓄電装置に均等に分圧されなくなる。そして、その結果として、各蓄電素子の素子電圧が均等化されなくなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、直列接続された複数の蓄電素子を含む蓄電モジュール、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される均等化回路、及び蓄電モジュールを電源として動作する回路、を備えた蓄電装置を複数個直列に接続しても、各蓄電素子の素子電圧が均等化されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る蓄電装置は、直列接続された複数の蓄電素子を含む蓄電モジュールと、前記複数の蓄電素子の各々の素子電圧が均等になるよう、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される均等化回路と、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される、当該蓄電素子の素子電圧を監視する素子電圧監視回路と、前記蓄電モジュールを電源として動作する回路であって、各素子電圧監視回路の監視結果に応じた出力を行う出力回路と、を含み、前記出力回路は、前記出力回路の消費電流を所定電流値に調整する電流調整回路を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る蓄電装置の一態様では、前記電流調整回路は、前記出力回路の消費電流を検出するための検出回路を含み、前記検出回路により検出された消費電流が前記所定電流値より小さい場合に、消費電流を増加させてもよい。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る蓄電システムは、直列接続された複数の蓄電装置を含む蓄電システムであって、前記蓄電装置は、直列接続された複数の蓄電素子を含む蓄電モジュールと、前記複数の蓄電素子の各々の素子電圧が均等になるよう、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される均等化回路と、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される、当該蓄電素子の素子電圧を監視する素子電圧監視回路と、前記蓄電モジュールを電源として動作する回路であって、各素子電圧監視回路の監視結果に応じた出力を行う出力回路と、を含み、前記出力回路は、前記出力回路の消費電流を所定電流値に調整する電流調整回路を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る蓄電装置を複数直列に接続しても、各蓄電素子の素子電圧が均等化される。また、本発明に係る蓄電システムでは、各蓄電素子の素子電圧が均等化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄電装置の構成を例示する図である。
【図2】蓄電システムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の例について図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
[蓄電装置]
図1は、本発明の実施形態に係る蓄電装置2の構成を例示する図である。
【0017】
[蓄電素子]
同図に示すように、蓄電装置2は、直列接続された複数の蓄電素子4を含む蓄電モジュール6を備えている。本実施形態の場合、蓄電素子4は、電気二重層キャパシタである。なお、蓄電素子4は、二次電池であってもよい。
【0018】
[均等化回路]
また、蓄電装置2は、各蓄電素子4の素子電圧が均等になるよう、蓄電素子4と同数の均等化回路8を備えている。各均等化回路8は、各蓄電素子4に対して一対一で並列に接続されている。なお、素子電圧とは、蓄電素子4の上端の端子と下端の端子との間の電圧である。ちなみに、図1では、蓄電素子4の上端の端子が正極端子であり、下端の端子が負極端子である。
【0019】
本実施形態では、均等化回路8は、抵抗器である。各均等化回路8は、共通の抵抗値を有している。そのため、蓄電モジュール6により供給される電圧が、各蓄電素子4に均等に分圧されるようになっている。なお、均等化回路8は、抵抗器以外の回路であってもよい。例えば、均等化回路8は、シャントレギュレータとシャントレギュレータのカソード端子に接続された抵抗器とを含む回路であってもよい。
【0020】
[監視回路]
また、蓄電装置2は、蓄電素子4と同数の監視回路10(素子電圧監視回路)を備えている。各監視回路10は、各蓄電素子4に対して一対一で並列に接続されている。各監視回路10は、自身と並列接続されている蓄電素子4の素子電圧を監視する。また、各監視回路10は、所定の監視結果が得られる場合に、右の端子からエラー信号を出力する。
【0021】
監視回路10について具体的に説明する。図1に示すように、監視回路10は、4つの抵抗器R1〜R4、1.25ボルトの内部基準電圧を内蔵するシャントレギュレータ12、ダイオード14、及びPNPトランジスタ16を備えている。また、これらの他にも、監視回路10は、PNPトランジスタ16のコレクタとダイオード14との間に抵抗器を備えている。抵抗器R1及び抵抗器R2は、シャントレギュレータ12のアノード端子からシャントレギュレータ12のカソード端子までの電位差を基準電圧(本実施形態の場合。3.2ボルト)に設定するために設けられる。なお、抵抗器R3及び抵抗器R4は、共通の抵抗値を有している。また、ダイオード14により、他の監視回路10から出力される電流の侵入が防止される。
【0022】
この監視回路10では、蓄電素子4の素子電圧が基準電圧より高くなり、エミッタに対するベースの電位が一定程度以上低くなると、PNPトランジスタ16がオンする。そのため、この監視回路10では、蓄電素子4の素子電圧が基準電圧より高い状態にある場合、すなわち、蓄電素子4の素子電圧が基準電圧より高いとの監視結果が得られる場合、コレクタ電流が、上記エラー信号として、右の端子から出力されることとなる。
【0023】
なお、図1に示すように、各監視回路10は、蓄電装置2に備えられるフォトカプラ18の発光ダイオードと接続されている。従って、いずれかの蓄電素子の素子電圧が基準電圧より高い状態にある場合、エラー信号がフォトカプラ18に入力されることになるので、いずれかの蓄電素子の素子電圧が基準電圧より高い状態にあるときは、常に、フォトカプラ18のフォトトランジスタがオンしていることになる。そのため、この蓄電装置2では、いずれかの蓄電素子の素子電圧が基準電圧より高い状態にあるとき、出力回路20(後述)の2つの端子、すなわち、端子C及び端子Eが短絡するようになっている。
【0024】
[出力回路]
また、この蓄電装置2は、蓄電モジュール6を電源として動作する出力回路20を備えている。出力回路20は、蓄電モジュール6に並列に接続され、蓄電モジュール6の状態をユーザが一見して把握することができるようにするために、各監視回路10の監視結果に応じた出力を行う。
【0025】
具体的には、出力回路20は、蓄電モジュール6に並列接続された発光ダイオード24を備え、いずれかの蓄電素子の素子電圧が基準電圧より高い状態にある場合に、この発光ダイオード24を消灯させる。より詳しくは、出力回路20には、LED制御回路26と、NPNトランジスタ30と、が備えられおり、端子Cと端子Eとが短絡している間、LED制御回路26がNPNトランジスタ30をオフするようになっている。こうすることにより、正常時には発光ダイオード24が点灯し、いずれかの蓄電素子の素子電圧が基準電圧より高い状態にある場合、すなわち異常時に、発光ダイオード24が消灯するようになっている。異常時の警告を点灯、あるいは点滅で示したい場合には、この発光ダイオード24を点灯、あるいは点滅させるように、LED制御回路26を変更しても良い。
【0026】
また、出力回路20は、消費電流調整回路22も備えている。消費電流調整回路22の意義については後述する。
【0027】
なお、本実施形態の場合、出力回路20は、発光ダイオード24以外の発光ダイオード28も備えている。発光ダイオード28も、発光ダイオード24と同様に蓄電モジュール6に並列に接続されるが、点灯時の色が発光ダイオード24と異なっている。この発光ダイオード28は、発光ダイオード24とは異なり、電圧が一定以上あることを示すようになっている。
【0028】
[消費電流調整回路]
この蓄電装置2単体が電源として用いられる場合もあれば、この蓄電装置2を複数個直列接続した蓄電システム1が電源として用いられる場合もある。図2に、蓄電システム1を例示した。
【0029】
以上のような蓄電システム1において、各蓄電装置2に備えられる出力回路20に消費電流調整回路22が備えられていない場合を想定する。この場合、各蓄電装置2に備えられる出力回路20のインピーダンスにばらつきによって、蓄電システム1全体の電圧が各蓄電装置2に均等に分圧されなくなり、蓄電システム1に含まれる各蓄電素子4の素子電圧が均等化されなくなる。そのため、特定の蓄電素子4の寿命が短くなってしまう。
【0030】
この点、この蓄電装置2では、出力回路20に備えられる上記消費電流調整回路22が、出力回路20の消費電流Is(図1参照)を所定の目標電流値(ここでは、13ミリアンペア)に調整するようになっている。このため、蓄電システム1全体の電圧が各蓄電装置2に均等に分圧されるようになり、その結果として、蓄電システム1においても、各蓄電素子4の素子電圧が均等化されるようになっている。
【0031】
以下、消費電流Isを目標電流値に調整するための消費電流調整回路22の構成について説明する。図1に示すように、消費電流調整回路22は、抵抗器R5〜R9を含む複数の抵抗器を備えている。抵抗器R9は、消費電流Isを検出するために備えられ、予め定められた抵抗値を有する。抵抗器R6は、3端子可変抵抗器である。また、消費電流調整回路22は、シャントレギュレータ38を備えている。シャントレギュレータ38により、カソード端子とアノード端子との間の電圧が約2.5ボルトになるように維持される。また、消費電流調整回路22は、オペアンプ34を備えている。オペアンプ34の負極端子に基準電圧が入力される。オペアンプ34は、正極端子に入力される入力電圧が基準電圧より高い場合に、オン電圧を出力する。また、消費電流調整回路22は、N型MOSFET36を備えている。オペアンプ34からの出力電圧が、N型MOSFET36のゲートに入力される。N型MOSFET36は、オペアンプ34から上記オン電圧が入力された場合に、オン状態になる。
【0032】
消費電流調整回路22は、N型MOSFET36のソースから出力されるバランス電流Ivの電流量を調整することにより、消費電流Isを目標電流値に維持する。具体的には、消費電流調整回路22は、消費電流Isが目標電流値より小さい場合にのみ、バランス電流Ivの出力を行うようにする。こうすることにより、消費電流調整回路22は、消費電流Isが目標電流値より小さい場合に消費電流Isを増加させる。なお、ここでは、目標電流値は、オペアンプ34がオフ状態であるときの消費電流Isより僅かに大きい値に設定されている。
【0033】
より詳しくは、この消費電流調整回路22では、消費電流Isが目標電流値より小さいときにオペアンプ34の正極端子に入力される入力電圧が基準電圧より高くなり、且つ、消費電流Isが目標電流値より大きいときに入力電圧が基準電圧より低くなるよう、R5〜R8の抵抗値が予め設定されている。特に、抵抗器R6の抵抗値が、消費電流Isが目標電流値と等しいときにオペアンプ34の正極端子に基準電圧と等しい電圧が入力されるよう、蓄電装置2の製造時に予め調整されている。
【0034】
そのため、消費電流Isが目標電流値より小さい場合のみ、オペアンプ34がオン状態となる。従って、消費電流Isが目標電流値より小さい場合のみ、バランス電流Ivが出力されることとなる。その結果、消費電流Isが目標電流値へと調整される。
【0035】
[まとめ]
以上のように、この蓄電装置2によれば、蓄電システム1を構成した場合に、どの蓄電装置2においても、出力回路20の消費電流Isが目標電流値に調整される。そのため、蓄電システム1全体の電圧が各蓄電装置2に均等に分圧されるようになる。従って、この蓄電装置2によれば、蓄電システム1を構成しても、各蓄電素子の素子電圧が均等化されるようになる。
【符号の説明】
【0036】
1 蓄電システム、2 蓄電装置、4 蓄電素子、6 蓄電モジュール、8 均等化回路、10 監視回路、12,38 シャントレギュレータ、14 ダイオード、16 PNPトランジスタ、18 フォトカプラ、20 出力回路、22 消費電流調整回路、24,28 発光ダイオード、26 LED制御回路、30 NPNトランジスタ、34 オペアンプ、36 N型MOSFET、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9 抵抗器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の蓄電素子を含む蓄電モジュールと、
前記複数の蓄電素子の各々の素子電圧が均等になるよう、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される均等化回路と、
蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される、当該蓄電素子の素子電圧を監視する素子電圧監視回路と、
前記蓄電モジュールを電源として動作する回路であって、各素子電圧監視回路の監視結果に応じた出力を行う出力回路と、
を含み、
前記出力回路は、
前記出力回路の消費電流を所定電流値に調整する電流調整回路を含むこと、
を特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記電流調整回路は、
前記出力回路の消費電流を検出するための検出回路を含み、前記検出回路により検出された消費電流が前記所定電流値より小さい場合に、消費電流を増加させること、
を特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
直列接続された複数の蓄電装置を含む蓄電システムであって、
前記蓄電装置は、
直列接続された複数の蓄電素子を含む蓄電モジュールと、
前記複数の蓄電素子の各々の素子電圧が均等になるよう、蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される均等化回路と、
蓄電素子ごとに当該蓄電素子に並列に接続される、当該蓄電素子の素子電圧を監視する素子電圧監視回路と、
前記蓄電モジュールを電源として動作する回路であって、各素子電圧監視回路の監視結果に応じた出力を行う出力回路と、を含み、
前記出力回路は、
前記出力回路の消費電流を所定電流値に調整する電流調整回路を含むこと、
を特徴とする蓄電システム。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−9498(P2013−9498A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139959(P2011−139959)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】