説明

薬用瓶の口金

【課題】剥離環とそれに連なる周胴部の一部が、口金の他の部分から独立して分離しにく
く、剥離環と共に口金全体を瓶口から確実に剥離することができる薬用瓶の口金を提供す
ることを課題とする。
【解決手段】 口金本体1には、周胴部11,頂面板12,透孔13,溝14,剥離環1
5が形成されている。溝14の両端部にはそれぞれ周胴部11に至る切り裂き筋16,1
7が刻設されている。切り裂き筋16の先端は周胴部11の下端に位置しており、切り裂
き筋17の先端は周胴部11内に位置している。周胴部11内の切り裂き筋17は、鉛直
方向に延在する切り裂き筋17b1と、これに対して傾斜している切り裂き筋17b2と
によって構成されている。19は口金本体1の巻締位置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアル等の薬用瓶の蓋部に使用される薬用瓶の口金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム栓等によって閉塞されている瓶口に、逆有底円筒状の口金を冠着させ、その口金の
周胴部を瓶口に対して巻き締めて構成する蓋部を有するバイアル等の薬用瓶は広く知られ
ている。
【0003】
図8は、このような薬用瓶に用いられる口金の構成を示した斜視図である。口金1の頂
面部には、通常、口金を剥離するための剥離環(タブ)15が設けられている。そして、
この剥離環(タブ)15の外周の溝14の両端部にはそれぞれ口金の周胴部11に達する
切り裂き筋16,17が刻設されている。
【0004】
薬用瓶内の薬品を使用する場合、使用者は、この剥離環(タブ)15を引っ張って瓶口
から口金全体を剥離し、ゴム栓等を外して内部の薬品を使用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の薬用瓶の口金においては、瓶口から口金を剥離する場
合、図9に示したように剥離環(タブ)15とそれに連なる2本の切り裂き筋16,17
に挟まれた周胴部の一部11aのみが、口金本体1の他の部分と離れて剥離してしまうこ
とがあった。このようになったときには、使用者は瓶口に残っている口金本体1の他の部
分を改めて取り除いた後にゴム栓等を外さなければならず、それだけ余分な手間をかけな
ければならなかった。さらに手の指や爪を用いて残った口金本体1を取り除く際、指先を
切傷する虞れがあった。また、従来の口金においては、瓶口から口金を剥離する際、図1
0に示したように周胴部11の下端部が繋った状態で残ってしまうこともあった。このよ
うな状態になった場合には、ラジオペンチ等の器具を用いて残っている口金本体1を取り
除かなければならず、忙しいナース等の使用者にわずらわしい手間を強いていた。
【0006】
以上のような口金の除去に関する問題に対処するために、従来から、剥離環(タブ)1
5を切り裂き筋16,17に沿って手前に引いてから右方向に引っ張るという口金の除去
手順を図と文で説明した説明書(『キャップのあけ方』)を商品に添付している。
【0007】
本発明の目的は、剥離環とそれに連なる周胴部の一部が、口金の他の部分から独立して
分離しにくく、剥離環と共に口金全体を瓶口から確実に剥離することができる薬用瓶の口
金を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために本発明は、アルミ等の軟質金属薄板によって円筒体からな
る周胴部の上面に頂面板を形成した逆有底円筒状の口金であって、前記頂面板の中央部に
は透孔が穿設され、当該透孔の外周には溝が穿設され、当該溝の両端部にはそれぞれ前記
周胴部に達する第1および第2の切り裂き筋が刻設され、前記第1の切り裂き筋の先端は
前記周胴部の下端部に達し、前記第2の切り裂き筋の先端は前記周胴部内に位置し、前記
周胴部内の前記第2の切り裂き筋の一部または全部が、前記第1の切り裂き筋が位置する
側とは反対側の方向に傾斜して設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剥離環とそれに連なる周胴部の一部が、口金の他の部分から独立して
分離しにくく、剥離環と共に口金全体を瓶口から確実に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、先ず本発明に係る薬用瓶の口金の基本構成を説明する。
【0011】
図1は本発明に係る口金を使用する蓋体の構成を示す分解斜視図であり、図2は図1に
示した蓋体が装着された薬用瓶の断面図である。
【0012】
この薬用瓶の蓋体は、図1に示すように、アルミ等の軟質金属薄板によって逆有底円筒
状に形成した口金本体1と、前記口金本体1の頂面内側に嵌合させることができ、且つ、
口金本体1と相似形状に形成した内蓋2と、前記口金本体1の頂面部を含む上半部に冠着
させることのできる合成樹脂製の外蓋3の組み合わせによって構成されている。
【0013】
口金本体1は、適宜の高さをした周胴部11の上面に頂面板12を形成することによっ
て逆有底円筒状に形成されている。 13は頂面板12の中央部に穿設した透孔であり、
図2に示すように、この透孔13を通して薬用瓶4の瓶口に嵌装したゴム栓5の上面が露
出できるようになっている。
【0014】
14は頂面板12に穿設した透孔13の周囲に形成された適宜の幅を持った溝であり、
この溝14の両端部が形成された頂面板12から周胴部11の上端部に達するように2本
の切り裂き筋16,17を刻設することによって、この溝14に囲まれる内側が引き起こ
し用の剥離環15となるように構成されている。14aは、薬用瓶4の瓶口から口金本体
1を剥離する際、その剥離が容易に行なわれるように頂面板12に設けられたスリットで
ある。なお、19は口金本体1を薬用瓶の瓶口部に巻き締めるときの巻締位置を示してい
る。
【0015】
内蓋2は、周胴部21の上端に頂面板22を連続されることによって逆有底円筒状に形
成するものであり、口金本体1と相似形状をなし、これに嵌合することができる大きさと
して形成するものである。この内蓋2は、本実施例では口金本体1と同質材のアルミ等の
軟質金属薄板によって形成されているが、この内蓋2は合成樹脂によって形成してもよい

【0016】
前記した周胴部21の高さは、図2に示すように、ゴム栓5のフランジの高さよりも低
く形成してあり、使用時において前記したゴム栓5のフランジの周胴に密着できるように
してある。
【0017】
23は内蓋2の頂面板22に穿設した透孔であり、この透孔23の大きさは、口金本体
1の頂面板に穿設した透孔13よりも小さい寸法となっている。これによって、外蓋3を
剥離除去する際に内蓋2から外れる係止突起39を口金本体1の透孔13を通して上面に
引き上げることができる(図2参照)。
【0018】
口金本体1の上面に冠着する外蓋3は、適宜の硬度を有する合成樹脂を用いて形成する
ものであり周胴部が口金本体1の周胴部11に少しだけかぶさることができる浅い倒皿状
となるように形成されている。
【0019】
外蓋3の裏面中央部には、図2に示すように、内蓋2に穿設した透孔23の円周に当接
しながら折り曲げ係止することのできる係止突起39が突設されており、透孔23に嵌合
したのち、内蓋2の内側から折り曲げ加圧することにより、或いは同じく内側から加熱す
ることにより押し広げられながら倒伏させられるように折り曲げ自在に突設されている。
【0020】
次に、図3を用いて本発明に係る口金本体1の基本構成について詳しく説明する。
【0021】
図3(a)は口金本体1を裏面側から視た斜視図であり、図3(b)は口金本体1を正
面側から視た斜視図である。
【0022】
図3(a),(b)において、図1および図2と同一符号のものは同一のものを示して
いる。図3(a),(b)に示したように第1の切り裂き筋16の先端は周胴部11の下
端部に達しており、第2の切り裂き筋17の先端は周胴部11内に位置している。
【0023】
第1の切り裂き筋16は、頂面板12内の切り裂き筋16aと、周胴部11内の切り裂
き筋16bおよび16cとから構成されている。ここで、周胴部11内の切り裂き筋16
cは、切り裂き筋16bの先端から周胴部11の下端部に至る切り裂き筋であり、切り裂
き筋16bに比して幅が狭くまたその深さも浅くなっている。このように巻締位置19付
近の切り裂き筋の幅を狭く且つ深さを浅くすることによって、瓶口部への巻締工程におけ
る口金本体1の強度を確保している。
【0024】
第2の切り裂き筋17は、頂面板12内の切り裂き筋17aと周胴部11内の切り裂き
筋17bとから構成されている。そして、この切り裂き筋17bの先端は図示したように
周胴部11内に位置している。
【0025】
以上のように構成された口金本体1,内蓋2および外蓋3からなる蓋体本体を組み立て
、ゴム栓5が嵌合している薬用瓶4の瓶口部に冠着させ、口金本体の周胴部11の下端部
を巻締め機によって巻締め固定することにより、蓋体本体は薬用瓶に装着される。
【0026】
図2に示したような構成の蓋体を有する薬用瓶においては、少量の薬液を使用するとき
は、外蓋3のみを除去しゴム栓5に注射針を挿通させて薬液を取り出し、大量の薬液を使
用するときには、外蓋3を除去した後、剥離環15を引っ張って口金本体1を除去し、ゴ
ム栓5を外して内部の薬液を取り出す。
【0027】
以上のように構成された口金本体1においては、2本の切り裂き筋16,17のうち第
1の切り裂き筋16のみが周胴部11の下端部まで刻設されているために、使用者が剥離
環15を引っ張る際に、図4に示したように切り裂き筋16側の口金が容易に切り裂かれ
る。このとき切り裂き筋16側よりも強度が高い切り裂き筋17側の口金は通常の状態で
は全て切り裂かれることはない。従って、使用者が剥離環15を引っ張れば、先ず、切り
裂き筋16側の口金が切り裂かれ、次いで頂面板12がスリット14aのところで割れて
口金本体1は確実に薬用瓶4から除去される。
【0028】
このように本発明に係る薬用瓶の口金の基本構成は、アルミ等の軟質金属薄板によって
円筒体からなる周胴部の上面に頂面板を形成した逆有底円筒状の口金であって、前記頂面
板の中央部には透孔が穿設され、当該透孔の外周には溝が穿設され、当該溝の両端部には
それぞれ前記周胴部に達する第1および第2の切り裂き筋が刻設され、前記第1の切り裂
き筋の先端は前記周胴部の下端部に達し、前記第2の切り裂き筋の先端は前記周胴部内に
位置していることを特徴とするものである。
【0029】
以上説明したように、本発明に係る基本構成を具えた口金本体1によれば、切り裂かれ
易い切り裂き筋16によって切り裂き方向が確実に案内されるので、右手を使用しても左
手を使用しても確実に口金本体1を除去することができる。
【0030】
次に、第2の切り裂き筋17側の口金を、上述した基本構成を具えた口金本体1に比し
てより切り裂かれにくく構成した本発明の実施例について説明する。
【0031】
なお以下に説明する本発明の実施例が、上述した基本構成を具えた口金本体1と異なる
ところは、切り裂き筋17の構成のみであるので、この部分のみを説明しその他の部分の
説明は省略する。
【実施例1】
【0032】
本発明の実施例1の構成を図5に示す。本実施例1は、周胴部11内の切り裂き筋を、
上端部から鉛直方向Xに延在する切り裂き筋17b1と、切り裂き筋16が位置している
側とは反対側の方向に傾斜している切り裂き筋17b2とによって構成するものである。
【実施例2】
【0033】
実施例2の構成を図6に示す。本実施例2は、実施例1の傾斜している切り裂き筋17
b2の先端を巻締位置19まで伸ばし、その先端に切裂き防止用の透孔18を設けたもの
である。
【実施例3】
【0034】
実施例3の構成を図7に示す。
【0035】
本実施例3は、実施例1の切り裂き筋17b2の先端に切裂き防止用の透孔18を設け
たものである。
【0036】
以上説明した実施例1〜3は、切り裂き筋17側の口金が、切り裂き筋16側の口金に
比して切り裂かれにくく構成されている。
【0037】
以上説明した実施例1〜3においては、図4に示したように、薬用瓶の上方から視て口
金を右側に取り外すことを想定した構成となっているが、切り裂き筋17の先端を周胴部
11の下端に位置させ、切り裂き筋16の下端を周胴部11内に位置させるように構成す
れば、薬用瓶の上方から視て左側に取り外すことが容易な口金とすることができる。なお
、この場合切り裂き筋を傾斜させるときには、以上説明した実施例の傾斜方向とは反対の
方向に傾斜させなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る基本構成を具えた口金本体1を含む蓋体本体の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示した蓋体が装着された薬用瓶の断面図である。
【図3】図1に示した口金本体1の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示した口金本体1の動作の説明図である。
【図5】本発明の実施例1の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例2の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例3の構成を示す斜視図である。
【図8】従来の口金の構成を示す斜視図である。
【図9】従来の口金の説明図である。
【図10】従来の口金の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 口金本体
2 内蓋
3 外蓋
4 薬用瓶
5 ゴム栓
11 周胴部
12 頂面板
13,18 透孔
14 溝
15 剥離環(タブ)
16,16a,16b,16c,17,17a,17b 切り裂き筋
19 巻締位置
21 周胴部
22 頂面板
23 透孔
39 係止突起
X 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ等の軟質金属薄板によって円筒体からなる周胴部の上面に頂面板を形成した逆有
底円筒状の口金であって、前記頂面板の中央部には透孔が穿設され、当該透孔の外周には
溝が穿設され、当該溝の両端部にはそれぞれ前記周胴部に達する第1および第2の切り裂
き筋が刻設され、前記第1の切り裂き筋の先端は前記周胴部の下端部に達し、前記第2の
切り裂き筋の先端は前記周胴部内に位置し、
前記周胴部内の前記第2の切り裂き筋の一部または全部が、前記第1の切り裂き筋が位
置する側とは反対側の方向に傾斜して設けられていることを特徴とする薬用瓶の口金。
【請求項2】
前記周胴部内に位置する前記第2の切り裂き筋の先端には透孔が形成されていることを
特徴とする請求項1に記載の薬用瓶の口金。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬用瓶の口金が装着されていることを特徴とする薬用瓶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−136745(P2006−136745A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28172(P2006−28172)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【分割の表示】特願平9−181809の分割
【原出願日】平成9年6月24日(1997.6.24)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【出願人】(591170500)石田プレス工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】