説明

藻類発生防止エッジ塗膜およびその形成方法

気液接触装置に用いるための気液接触体は、対向配置された複数枚のコルゲーション付きシートを備え、シートは、一つおきのシートにおけるコルゲーションが平行になるように配置されて気体および液体のための複数の十字状通路を形成している。接触体は、不透水性親水性材料で塗装された空気取入れエッジ部を含む空気取入れ口を備え、上記空気取入れエッジ部の塗装密度は、空気取入れエッジでの最大密度から、空気取入れエッジ部の内部において下流に向かって減少して、上記シートの徐々に増大する面積を空気に曝している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化冷却装置等のための接触体および塗膜の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却塔および気化冷却器等は、空気流との間で熱交換が生じるように充填アセンブリを通じて水を重力で流下させることによって、空気から熱を取り除いている。その結果、種々の熱交換機能のために空気を用いる機器に戻される以前に水の表面蒸発によって空気の温度が低められる。
【0003】
これらの装置内で用いるために、気体と液体とが通過する複数の通路またはダクトを画成する、コルゲーション付き材料からなる複数枚のシートから接触体を形成することが良く知られている。このような良く知られた接触体の一つが特許文献1に開示されている。このような接触体は、例えば特許文献2に開示されているような含浸された材料のみでなく、クラフト紙、ファイバーガラス、プラスチックおよび多孔質材料のような他の材料を含む材料範囲から形成される。
【0004】
この形式の気液接触体は、冷却塔および気化冷却器において顕著な長所を有する。僅かな短所のうちに、このような接触体が優れた空気フィルタおよび藻類の繁殖場としても機能することがある。このことは、一般に汚れた大気中の不純物を取り入れ、かつ日光にも曝される接触体の空気取入れ口側において特に事実である。したがって、接触体のこの部分は、接触体内に流入する塵埃によって汚染されかつ目詰まりを生じる。
【0005】
この問題を克服しかつ塵埃を空気から除去するために、従来から接触体に大量の水を流すことが提案されて来た。これが行なわれない場合には、接触体の基材上でごみが乾燥し(特に、クラフト紙、ファイバーガラス、木綿等の多孔質基材の場合)、接触体によって捕捉された塵埃、胞子および鉱物性物質が接触体シートの繊維全体に亘って堆積かつ固化する。これらの堆積物は、繊維質の基材を破壊することなしに除去することが困難になる。そのまま放置すると、媒体の空気取入れ面が最終的に完全に目詰まりする。
【0006】
塵埃およびその他の空気によって運ばれた不純物による汚染に加えて、一般に空気取入れ口側における、或る場合には空気送出口側における湿った接触媒体と日光との間の界面において、藻類が繁殖することが判明している。典型的な気化冷却装置の構造においては、媒体の通路の最初の四分の一インチ(6.4mm)が日光に曝され、かつ光、栄養物および湿気の存在において藻類が繁殖する。
【0007】
この問題を克服する一つの試みが特許文献3に提案されており、ここには、一つ置きのシートのコルゲーションが平行に配置されて、気体と液体のための複数の十字状のチャンネルを形成している複数枚のコルゲーション付きシートからなる気液接触体が開示されている。この接触体の空気取入れ側は、殺藻剤を含む不透水性親水性材料で被覆された空気取入れ部を有する。上記システムは、冷却媒体の前縁に対する藻類の繁殖および被害の防止に卓越した機能を有する。しかしながら、通常は不透水性材料から形成される塗膜は、塗膜の内側エッジにおいて多孔質シートと急変界面を形成する。気化冷却パッドは、水を保持かつ転送するように設計されているために、表面は100%気化に利用でき、かつ基材が気化媒体の表面全体の水の分布を平均化している。基材のエッジを塗装する従来の対策は、流入空気が最も熱く、かつ最も乾燥している領域における冷却パッドのエッジにおける気化を禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,500,615号明細書
【特許文献2】米国特許第3,862,280号明細書
【特許文献3】米国特許第5,248,454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、冷却塔および気化冷却装置のための優れた動作効率を備えた接触体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、自己浄化式の空気取入れエッジ部および/または空気送出エッジ部を備えた接触体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、藻類の堆積および繁殖を防止するエッジ部を備えた接触体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、ケーシング、気体取入れ口および気体送出口を有する気液接触装置において用いるための気液接触体が提供される。この接触体は、互いに対向する関係をもって配置されかつ一つ置きに互いにほぼ平行な関係をもって配置された複数枚のコルゲーション付きシートから形成されている。この接触体は、上記ケーシングの気体取入れ口の近傍に位置決めされるように構成された気体取入れエッジを画成している。
【0013】
上記接触体の複数枚のシートは、気体および液体の通過を許容する複数の交差かつ相互連通する通路を画成している。各シートにおけるコルゲーションは、一つ置きのシートのコルゲーションが、これら一つ置きのシート間に配置されたシートのコルゲーションに対して斜めに配置されている状態で、この接触体を通る気体流の主方向に対して斜めに延びている。上記接触体の気体取入れエッジは、シートのエッジから内方に向かって塗装密度が変化する殺藻剤を含む不透水性水和性材料にて塗装されている。上記コルゲーションは、取付け状態で太陽に照らされるコルゲーション表面がより密に塗装され、かつ太陽があまり当たらないコルゲーション表面がより淡く塗装されることが好ましい。これらの表面の塗装密度は、シートのエッジから内方へ向かって低下する。その結果、藻類が最も成長し易い表面を防護しながら、水は多孔質基材を通って移動して、前縁における気化を利用することを可能にしている。
【0014】
上述の目的およびその他の目的は、添付図面を参照した下記の一つの実施の形態の詳細な説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によって構成された接触体を備えるのに適した冷却塔の縦断面図である。
【図2】本発明により構成されかつ図1の冷却塔に使用するのに適した接触体の一部分を断面とした斜視図である。
【図3】図2の接触体の取入れ口の拡大部分断面図である。
【図4A】接触体の1枚のシートの空気取入れエッジの拡大図である。
【図4B】裏返しにした図4Aと同じシートの空気取入れエッジの拡大図である。
【図5】接触体のエッジをコーティングするためのスプレーステーションの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して説明すると、最初に図1において、冷却塔10は、本発明により構成された1枚または複数枚の接触体22を内蔵したケーシング12を備えている。ケーシング12の基部は、浮き子24および排水ライン25を有する水溜め23を形成している。空気等の気体は、空気取入れエッジ部26から接触体内の通路またはダクトに入り、ファン30およびモータ31を備えた空気送出口29まで装置内で上方へ引かれる。水等の液体は、液体供給ライン27を通じて気化冷却装置または冷却塔内に導入され、周知の態様で孔またはノズル28等を通じて供給ライン27から脱出する。供給ライン27から脱出した液体は、常套的な構成を有する配水パッド32を通過して接触体22の頂部に流入する。
【0017】
本発明による接触体22は、図2〜図4に詳細に示されている。この接触体は、コルゲーションを備えた複数枚のシートからなり、隣接するシート、例えば33,34が、互いに傾斜して配置され、かつ33,35のような一つ置きのシートのコルゲーションが平行になるように配置され、これにより、接触体内に複数の十字状の通路が形成されている。従来技術で知られているように、複数枚のシートは、互いに等しくない角度で配置されていることが好ましい。
【0018】
図1に示されているように、接触体が気化冷却装置内に取り付けられている場合には、液体が重力でコルゲーションに沿って流れるのを可能にするように、コルゲーションが水平面に対して傾斜している。シート間の、および水平面に対する特定の傾斜角度関係は、それによって達成される特定の構造または演じられる機能に応じて装置毎に異なる。
【0019】
一般的には、コルゲーションおよびコルゲーション付きシートは、波の高さまたは振幅が5〜40または60mm、幅が10〜30mmである。コルゲーション付きシートは、接触体内の接触点において互いに接着され、あるいはそれらのエッジにおいて適当なスペーサおよび支持手段によって固定されていればよい。
【0020】
図2、図3および図4に示された一般的な構成を有する接触体は、コルゲーション付きプラスチックシート、または例えばガラス、クラフト紙、または木綿等の繊維性材料、織布、不織布からなるシートを含む種々の材料から形成されている。このような繊維性材料は一般的に多孔質であり、例えば特許文献2において論議されているように、或る程度の剛性および濡れ強度を持たせるために樹脂が含浸されているのがよい。上述のように、接触体は、空気とともにそこを通過する塵埃を集め易い。接触体のエッジにおける藻類の成長は、日光、湿気および接触体を通過する空気および水に含まれる栄養素に曝されることよって促進される。この藻類の成長は原則的に、接触体の空気取入れエッジ部26における日光に曝されるコルゲーションの表面部上で発生する。
【0021】
本発明によれば、サブストレート上への固形物および栄養素の堆積および吸収を防止する防護層を気化冷却媒体の少なくとも空気取入れエッジに設けることによって、接触体に予め要求される問題が克服される。水の供給が止められるや否や乾燥もする防護表面を設けることによって、藻類の成長が回避される。
【0022】
さらに詳細には、コルゲーション付き材料からなる複数枚のシートのそれぞれの空気取入れエッジは、親水性であり耐水性不透水性の材料で被覆される。この材料の特徴は、水が接触体を通過して塗膜の表面上に広がって薄い膜を形成し、この膜は接触体のエッジを連続的に洗浄して、塵埃およびその他の汚染物質をエッジから取り除く。水が止められた場合には、エッジは直ちに乾く。このようにして、さもなければ藻類の成長を支える水を留めない。したがって、塵埃および胞子の堆積および日光の直射に曝されない接触体の他の部分は正常に機能しながら、接触体のエッジが防護される。
【0023】
接触体のエッジに塗布されるラテックスアクリル、ゴム、またはプラスチックベースの材料からなる防護層は、十分に接触体を防護することが判明している。
【0024】
上記防護層は、図5に示された装置によって接触体の空気取入れエッジに塗布される。より詳細には、図5には1個のみが示されている接触体26は、スプレー囲い(不図示)内のスプレースタンド52下方のコンベア上に運ばれる。
【0025】
スプレースタンド52は、コンベア50の移動通路を横切って延びるノズル支持バー54を備えている。バー54は、その上に取付けられた複数のノズル支持アーム56等を有する。スプレーノズル58は各アーム上に調整可能に取付けられ、かつホース60によって防護塗料の供給源に接続されている。スプレーノズルは常套的な構造を有し、かつ扇状の噴霧を生成し、図5に示されているように、接触体22の上方を向いた空気取入れエッジ面部26に向かって傾斜して下方を向いている。図示の実施の形態においては4本のノズル58があり、2本(58a、58b)はコンベアの移動方向に傾斜して下方を向き、2本(58c、58d)は、コンベアの移動方向と反対の方向に傾斜して下方を向いている。
【0026】
下方を移動する接触体に対するノズルの角度は、液体スプレー技術分野の当業者には直ちに明らかなような、周知かつ便利な方法で調整することができる。
【0027】
塗膜材料は液状で、ノズルから離れるにつれて塗料の小滴を形成して扇状パターンに噴出される。明らかなように、塗料小滴の噴霧は、コルゲーション付きシートの空気取入れエッジ26に沿った表面に交差する。噴霧は、コルゲーション間に形成されている通路内に深く浸透することはできず、かつ小滴は深く浸透するほど密度が薄くなる。大多数の小滴は、噴霧経路に直面するコルゲーションの表面によって捕捉され、かつそれらの表面は、それらの表面の直後に隣接するコルゲーションの表面に噴霧が当たるのを阻止する。その結果、塗膜はシートのエッジにおいて最も濃く、エッジから離れる程淡くなって、多孔質のシートの露出された領域を増大させる。これに加えて、隣接するシートによって噴霧を阻止されたコルゲーションの部分は、たとえあるとしても僅かしか小滴が塗られていないので、本質的にエッジまでの領域においては多孔質のシートが露出される。
【0028】
このようにして、図2〜図4に示されているように、コルゲーションの傾斜した表面37,40がシートのエッジ39と同様に厚く塗装され、かつそれら間の中央の谷38は本質的に塗装されない。これらの傾斜した表面のみが日光に曝される。さらに、図2に示されているように、塗膜の厚さはエッジ39から離れる程薄くなり、これにより多孔質のシートが益々露出される。
【0029】
この配置の結果、水は多孔質の基材を通ってその自由なエッジまで移動することができ、シートエッジの保護および自己浄化式藻類発生防止機能を提供しながら、最も熱くかつ最も乾燥した空気を水の蒸発に利用するのを可能にする。このようにして、熱く乾燥した空気の気化冷却のために、従来技術に比較してずっと大きい表面積が、エッジ部26において利用可能になる。
【0030】
上述のように、本発明に従って用いられる塗膜は、不透水性であるために水を留めない。したがって、接触体を通じて配給されている水が止まると、完全に乾く。さらに、塗膜は平滑なために藻類の胞子が付着せず、かつ塗膜自体は藻類が基材の繊維内に潜り込むのを許容しない。さらに、エッジ上に落下した藻類の胞子は水で洗い流され、あるいはそれらが日光に曝され得ない接触体内部に移動する。塗膜は、シートのエッジ部の紫外線に対する防護機能をも備えている。
【0031】
この目的のための好ましい塗膜は、下記のように処方することが可能なことが判明している。すなわち、
ラテックスゴム、アクリルまたはプラスチック(すなわちPVC) 60〜70部、
カオリンまたは水和アルミナ 25〜30部、
二酸化チタンまたはカーボンブラック 1〜5部、
シリコーン 0.001〜1部、
その他の組成物の使用も可能である。
【0032】
以上、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の精神および範囲から離れることなしに、種々の変形および変更が可能なことは、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0033】
10 冷却塔
12 ケーシング
22 接触体
23 水溜め
24 浮き子
25 排水ライン
26 空気取入れエッジ部
27 液体供給ライン
28 ノズル
32 配水パッド
33,34,35 シート
50 コンベア
60 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液接触装置に用いるための気液接触体であって、
該接触体は、一つおきのシートにおけるコルゲーションがほぼ平行になるように配置されて気体および液体のための複数の十字状通路を形成した状態で対向配置された複数枚のコルゲーション付きシートを備え、前記接触体は、空気取入れエッジと該エッジの下流の空気取入れエッジ部とを含む空気取入れ口を有し、前記空気取入れエッジ部は、塗装密度が、前記空気取入れエッジでの最大密度から下流に向かって減少する態様で不透水性親水性材料にて塗装されて、前記空気取入れエッジ部の内部において前記シートの空気に曝される面積が徐々に増大していることを特徴とする気液接触体。
【請求項2】
前記空気取入れエッジ部における前記コルゲーション付きシートの一部分が実質的に塗装されていないことを特徴とする請求項1記載の気液接触体。
【請求項3】
ケーシング、気体取入れ口および気体送出口を有する気液接触装置に用いるための気液接触体であって、
該接触体は、互いに対向して配置されかつ互いにほぼ平行に配置された複数枚のコルゲーション付きシートを備え、かつ前記ケーシングの前記気体取入れ口の近傍に位置決めされるように構成された気体取入れエッジと、気体および液体の通過を許容する複数の交差かつ相互連通する通路とを画成し、前記シートのそれぞれにおけるコルゲーションは、一つおきのシートのコルゲーションが隣接するシートのコルゲーションに対して斜めに配置された状態で、前記接触体を通過する流れの主要部分に対して斜めに延び、前記シートは、気体取入れエッジと、塗装密度が気体取入れエッジでの最大密度から下流に向かって密度が減少する態様で不透水性親水性材料にて塗装された、前記エッジの下流の気体取入れエッジ部とを有し、該気体取入れエッジ部の内部において前記シートの空気に曝される面積が徐々に増大していることを特徴とする気液接触体。
【請求項4】
前記塗膜は、ラテックスゴム、アクリルまたはプラスチックからなる群から選ばれた1種類の材料を含むことを特徴とする請求項3記載の気液接触体。
【請求項5】
前記気体取入れエッジ部における前記コルゲーション付きシートの一部分が実質的に塗装されていないことを特徴とする請求項3記載の気液接触体。
【請求項6】
対向配置された複数枚のコルゲーション付きシートを備えた接触体の空気取入れエッジ部を塗装する方法であって、
前記空気取入れエッジ部が前記ノズルに対向した状態で、前記接触体を複数の塗装用スプレーノズルに対して移動させ、
前記ノズルを前記接触体の表面に対して斜めに位置決めし、
小滴状態の塗装材料を前記接触体およびその空気取入れエッジ部に向かって噴霧する
諸ステップを含み、
これにより、前記空気取入れエッジ部の表面上の塗装密度が、前記ノズルに対向する表面における最大密度から前記空気取入れエッジ部内部の下流に向かって減少して、前記シートの空気に曝される面積が徐々に増大することを特徴とする塗装方法。
【請求項7】
前記ノズルを前記接触体の表面に対して斜めに向けるステップを含み、それにより、前記コルゲーションの表面の所定部分の塗装噴霧がなされ、かつ他の部分は隣接するコルゲーションによって噴霧が遮断されることを特徴とする請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−503821(P2010−503821A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528258(P2009−528258)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/019750
【国際公開番号】WO2008/033354
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(301034854)マンターズ コーポレイション (2)