説明

蝋管読取装置

【課題】歪んで製造されたり、変形したりした蝋管に対しても、音声データを正確に読み取ることができる蝋管読取装置を提供する。
【解決手段】音声データを表す音溝が形成された円筒状の蝋管から音声データを非接触で読み取る蝋管読取装置において、蝋管を保持し且つ軸心方向を中心に回転させる保持部11と、蝋管の表面を径方向から撮像する撮像部12と、撮像した画像データから音溝の音声データを演算する演算部22とを備え、保持部11は、蝋管の表面と撮像部12との間の距離を一定に維持すべく、蝋管を前記径方向に移動可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声データを表す音溝が表面に形成された円筒状の蝋管から音声データを非接触で読み取る蝋管読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蝋管は、蝋で製造され、19世紀後半頃から利用されるようになった記録媒体である。図5(a)に示すように、音溝Yは、音声情報(音声データ)を、深さ方向の振動、即ち、径方向の凹凸高さ及び凹凸のピッチ(間隔)に変換して記録したもので、蝋管Xの表面に一繋がりの溝として螺旋状に形成されている。
【0003】
具体的には、蝋管Xは、ホーンによって集めた音の振動を針(記録針)の振動(上下動)により録音された(刻まれた)ものであって、音溝Yの凹凸が音声の波形に対応している。そして、音声の波形においては、周波数が音程を示し、振幅が音の大きさを示すため、蝋管Xにおいては、音溝Yの凹凸一つ一つのピッチが周波数(音程)に対応し、凹凸の高さが振幅(音の大きさ)に対応する。
【0004】
蝋管Xの一例として、外径が55ミリメートル、音溝Yの間隔(幅方向の中心の間隔)が0.25ミリメートル、音溝Yの深さが最大0.05ミリメートル、音溝の総数が400ラインであって、約2分間の音声を記録しているものが存在している。
【0005】
ところで、蝋管Xから音声を再生する装置としては、先端が音溝Yに摺接する針(再生針)を備える蝋管再生装置が従来から知られている。しかしながら、かかる針による蝋管再生装置は、蝋管Xの音溝Yを磨耗劣化させるため、特に、文化財である蝋管Xに対しては、貴重な資料の保存という観点から好ましくない。
【0006】
そこで、近年、レーザを用いて音溝Yを読み取る蝋管読取装置が開発されている。かかるレーザによる蝋管読取装置は、蝋管Xに対して、非接触で音声データを読み取ることができるため、蝋管Xが磨耗劣化するのを防止できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蝋管Xは、蝋で製造されているため、製造時に既に歪みが発生していたり、経時劣化により変形したりすることがある。例えば、蝋管Xは、図5(b)に示すように、径方向における断面が扁心したり(軸心方向の中途部Z1が盛り上がったり)、図5(c)に示すように、音溝Yの一部Z2が幅方向(蝋管Xの軸心方向)に歪んだりして製造されたり、変形(経年劣化)したりする。なお、図5(b)及び(c)においては、変形状態を理解し易くするため、変形を強調して図示している。
【0008】
そのため、レーザによる蝋管読取装置は、例えば、図5(b)に示すような、径方向における断面が扁心した蝋管X、即ち、径方向に変形した蝋管Xに対しては、変形による径方向の変位を音声データ(音溝Yにおける径方向の凹凸情報)として読み取ってしまう。
【0009】
また、例えば、図5(c)に示すような、音溝Yが幅方向に歪んだ蝋管X、即ち、軸心方向に変形した蝋管Xに対しては、レーザが音溝Yの幅方向の中心から外れた位置を読み取ったり、レーザが本来読み取るべき音溝Yから外れて、隣の音溝Yを読み取ったりしてしまう。したがって、かかるレーザによる蝋管読取装置は、蝋管Xの変形をノイズ等として読み取ってしまうため、変形している蝋管Xに対して、音声データを正確に読み取ることができない。
【0010】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、歪んで製造されたり、変形したりした蝋管に対しても、音声データを正確に読み取ることができる蝋管読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る蝋管読取装置は、音声データを表す音溝が表面に形成された円筒状の蝋管から音声データを非接触で読み取る蝋管読取装置において、蝋管を保持し且つ軸心方向を中心に回転させる保持部と、蝋管の表面を径方向から撮像する撮像部と、撮像した画像データから音溝の音声データを演算する演算部とを備え、保持部は、蝋管の表面と撮像部との間の距離を一定に維持すべく、蝋管を前記径方向に移動可能に構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、保持部が円筒状の蝋管を保持すると共に、軸心方向を中心に蝋管を回転させる。そして、撮像部が蝋管の表面を蝋管の径方向から撮像し、演算部が撮像部で撮像した画像データから音溝の音声データを演算する。これにより、音声データを表す音溝が表面に形成された蝋管から音声データを読み取ることができる。そして、保持部が蝋管を径方向(撮像部が蝋管を撮像する方向)に移動させることにより、径方向に変形した蝋管に対しても、蝋管の表面と撮像部との間の距離が一定に維持される。
【0013】
また、本発明に係る蝋管読取装置においては、演算部は、画像データから音溝の幅方向の中心を演算し、音溝の幅方向の中心に沿って音溝の音声データを演算するように構成されてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、演算部が画像データから音溝の幅方向の中心を演算することにより、軸心方向に変形した蝋管に対しても、音溝の幅方向の中心に沿って音溝の音声データを演算することができる。
【0015】
また、本発明に係る蝋管読取装置においては、演算部は、撮像した画像データの濃淡情報から音声データとなる音溝の凹凸情報を演算するように構成されてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、撮像した画像データの濃淡情報から演算部が音声データとなる音溝の凹凸情報を演算することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明に係る蝋管読取装置によれば、保持部が蝋管を径方向に移動することにより、径方向に変形した蝋管に対して、蝋管の表面と撮像部との間の距離が一定に維持されるため、径方向に歪んで製造されたり、径方向に変形したりした蝋管に対しても、音声データを正確に読み取ることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る蝋管読取装置における一実施形態について、図1〜図4を参酌して説明する。なお、図1〜図2において、図5の符号と同一の符号を付した部分は、従来技術と同一の構成又は要素を表す。
【0019】
本実施形態に係る蝋管読取装置は、図1〜図3に示すように、蝋管Xの表面を撮像する撮像装置1と、撮像装置1にて撮像した撮像データから音声を再生する再生装置2とを備え、表面に音溝Yを有する円筒状の蝋管Xから音声データを読み取り可能に構成される。
【0020】
撮像装置1は、蝋管Xを保持する保持部11と、蝋管Xの表面を蝋管Xの径方向から撮像する撮像部12と、保持部11及び撮像部12を制御する制御部13とを備え、音声データである音溝Yの凹凸情報(凹凸の高さ及びピッチ)を濃淡情報(濃淡データ)として表われるように撮像する。そして、撮像装置1は、外乱となる外部からの光を遮断すべく、外側から囲う箱状の遮光体14を備える。
【0021】
保持部11は、蝋管Xを軸心方向の両端から保持する保持部材111と、蝋管Xを蝋管Xの軸心方向を中心に回転させる第1駆動部(周方向駆動部)112と、蝋管Xを蝋管Xの軸心方向に移動させる第2駆動部(軸心方向駆動部)113と、蝋管の表面と撮像部との間の距離を一定に維持させるべく、蝋管Xを蝋管Xの径方向(撮像部12が蝋管Xを撮像する方向)に移動させる第3駆動部(径方向駆動部)114とを備える。
【0022】
保持部材111は、上下方向に離間して配置される一対の保持部材片(第1保持部材片及び第2保持部材片)111a,111bを備え、蝋管Xを着脱可能にすべく、ハンドル111cを介して、上方に配置される第1保持部材片111aが上下方向に移動可能に構成される。また、一対の保持部材片111a,111bは、互いに対向する先端側がテーパ状に形成され、各先端が蝋管Xの開口端部に内嵌されることにより、蝋管Xを保持可能に構成される。
【0023】
第1駆動部112は、駆動源となるモータ112aと、当該モータ112aの駆動を保持部111(第2保持部材片111b)に伝達させる伝達手段(ベルト機構)112bとを備える。そして、第1駆動部112は、撮像部12が蝋管Xの周方向全域(全周)を撮像するのを可能にしている。
【0024】
第2駆動部113は、駆動源となるモータ113aと、当該モータ113aの回転駆動を上下方向(鉛直方向)の直線駆動に変換して保持部111に伝達させる伝達手段(ねじ機構)113bとを備える。そして、第2駆動部113は、撮像部12が蝋管Xの軸心方向全域(全長)を撮像するのを可能にしている。
【0025】
第3駆動部114は、駆動源となるモータ114aと、当該モータ114aの回転駆動を横方向(水平方向)の直線駆動に変換して保持部111に伝達させる伝達手段(ねじ機構)114bとを備える。そして、第3駆動部114は、蝋管Xと撮像部12とが対向する方向において、撮像部12に対して、蝋管Xを接離可能にしている。
【0026】
撮像部12は、蝋管Xに向けて光を照射する光源121と、蝋管Xにて反射する光を集光する光学系122と、光学系122にて集光する光を受光する撮像素子123とを備える。
【0027】
光源121は、半球状反射板における内面反射を利用した間接照明(ドーム照明)であって、音溝Yの凹凸による影を生じるのを防止するように構成される。具体的には、光源121は、環状の照明器具121aと、光を反射する半球状(ドーム状)の反射板121bとを備え、蝋管Xの表面に均一な拡散光を照射するように構成される。
【0028】
より具体的には、光源121は、照明器具121aから放射された光が反射板121bで反射されることにより拡散光を生じさせ、当該拡散光を蝋管Xに向けて照射するように構成される。なお、反射板121bは、照明器具121aから蝋管Xに直接光が照射されるのを防止すべく、内方に突出する突出部121cが開口端部に設けられると共に、中央部(半球状の頂部)に開口121dが設けられている。
【0029】
光学系122は、一つ又は複数のレンズを備え、蝋管Xの表面で反射して且つ反射板121bの開口121dを通過した光を集光するように構成される。そして、光学系122は、光源121と撮像素子123との間に直列状に配置されている。なお、光学系122は、拡大光学系であって、さらに、パースの付かない画像を取得すべく、テレセントリック光学系を採用している。
【0030】
撮像素子123は、ライン状に形成されるセンサであり、蝋管Xの軸心方向と平行に配置される。具体的には、撮像素子123は、高解像度(例えば、解像度44,450dpi)のラインCCDセンサであり、蝋管Xの表面における軸心方向に沿う部位を撮像可能に構成される。
【0031】
制御部13は、撮像部12にて蝋管Xの全周及び全長を撮像すべく、第1駆動部112及び第2駆動部113を制御する。そして、制御部13は、蝋管Xの径方向の変形を検出し、蝋管Xの表面と撮像部12との間の距離を一定に維持すべく、第3駆動部114を制御する。具体的には、制御部13は、電子部品が搭載された基板で構成される。
【0032】
具体的には、制御部13は、第1のステップとして、第3駆動部114により蝋管Xを移動させ、蝋管Xの各部位に対して、撮像部12にて撮像される画像のコントラストが最大になる位置を検出して記憶すると共に、第2のステップとして、第1駆動部112及び第2駆動部113並びに第3駆動部114を連続的に駆動させ、撮像部12にて蝋管Xの表面を連続的に撮像させる。
【0033】
再生装置2は、撮像装置1で撮像した蝋管Xの画像データを取得する入力部21と、入力部21にて取得した画像データから音溝の音声データを演算する演算部22と、演算部22にて演算された音声データを音声として出力(再生)する出力部23とを備える。
【0034】
演算部22は、入力部21にて取得した画像データから音声データを抽出する抽出手段221と、抽出手段221により抽出した音声データを音声波形に変換する変換手段222とを備える。
【0035】
抽出手段221は、第1のステップとして、音溝Yの音声データである画像データの濃淡情報を適切に表示させるために適切な画像処理を行う。具体的には、抽出手段221は、凹凸情報が濃淡情報として表れている画像データに対して、適当な16bitトーンカーブを適用して画像処理する。より具体的には、抽出手段221は、個々の蝋管Xの状態に合わせて16bitのうち、最適な8bitを自動で選択して画像処理する。
【0036】
そして、抽出手段221は、第2のステップとして、画像データから音溝Yの幅方向の中心を演算するように構成される。具体的には、抽出手段221は、音溝Yのエッジ(両側縁)から幅方向の中心を演算する。
【0037】
また、抽出手段221は、第3のステップとして、音溝Yの幅方向の中心に沿って、音溝Yの音声データである画像データの濃淡情報を抽出(演算)するように構成される。具体的には、抽出手段221は、音溝Yの幅方向の中心における画像データの濃淡情報、即ち、画像データにおける音溝Yの中心ラインの濃淡情報を抽出する。
【0038】
変換手段222は、抽出手段221で抽出された濃淡情報を音溝Yの凹凸情報に変換(演算)する。そして、変換手段222は、変換した音溝Yの凹凸情報を時系列に並べることにより音声波形を作成する。
【0039】
出力部23は、変換手段222により変換された音声波形から音声を再生可能に構成される。なお、出力部23は、音声波形をデータとして出力する(例えば、ファイルとして出力する)場合でもよい。
【0040】
本実施形態に係る蝋管読取装置の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態に係る蝋管読取装置の作用について説明する。
【0041】
まず、第2保持部材片111bの先端(上端)が蝋管Xの下方側の開口端部に内嵌された状態で、ハンドル111cを介して第1保持部材片111aが下降され、第1保持部材片111aの先端(下端)が蝋管Xの上方側の開口端部に内嵌される。これにより、保持部材111が蝋管Xを保持する。
【0042】
そして、第1駆動部112が蝋管Xを蝋管Xの軸心方向を中心に回転させると共に、第2駆動部113が蝋管Xを上下方向に移動させる。このとき、制御部13は、蝋管Xの径方向の変形を検出するために、蝋管Xの各部位(各撮像対象部位)に対して、第3駆動部114により蝋管Xを径方向に移動させ、撮像部12にて撮像される画像のコントラストが最大となる位置を検出する。
【0043】
併せて、制御部13は、蝋管Xの各部位(各撮像対象部位)に対する当該位置、即ち、第1駆動部112による周方向の位置及び第2駆動部113による軸心方向の位置に対する第3駆動部114による径方向の位置を記憶する。具体的には、制御部13は、蝋管Xの表面と撮像部12との間の距離が一定となる蝋管Xの位置を記憶する。
【0044】
その後、制御部13が各駆動部112,113,114を制御することにより、蝋管Xの表面と撮像部12との間の距離を一定に維持した状態で、撮像部12が蝋管Xの表面を連続的に撮像する。これにより、撮像部12は、蝋管Xの各部位(撮像対象部位)に対して、光源121及び光学系122並びに撮像素子123が一定の位置に配置された状態、即ち、同じ条件(照射光量、照射角度、受光角度、距離など)で撮像することになる。
【0045】
そして、撮像部12は、光源121が均一な拡散光を照射し、さらに、光学系122により、蝋管Xで反射した光のうち、凹凸情報となる高さ方向(蝋管Xの径方向であって且つ蝋管Xと撮像素子123とが対向する方向)に反射した光のみを撮像素子123にて受光させることにより、音溝Yの凹凸情報を濃淡情報として表された画像データを取得する。
【0046】
具体的には、図4(a)に示すように、凹凸高さの深い部位が淡く、凹凸高さの浅い部位が濃く表された画像データを取得する。このように、撮像装置1は、蝋管Xの表面を撮像することにより、音溝Yの音声データである凹凸情報を濃淡情報として表された画像データを取得する。
【0047】
次に、再生装置2は、撮像装置1で取得された画像データを入力部21にて取得する。そして、演算部22の抽出手段221は、16bitトーンカーブを適用して、取得した画像データを画像処理する。その後、抽出手段221は、音溝Yのエッジから幅方向の中心を演算し、音溝Yの幅方向の中心における画像データの濃淡情報を抽出する。
【0048】
そして、変換手段222は、抽出された濃淡情報を音溝Yの凹凸情報に変換し、変換した音溝Yの凹凸情報を時系列に並べることにより、図4(b)及び(c)に示すように、音声波形を作成する。なお、図4(b)の音声波形は、図4(a)の上段の音溝Yにおける画像データを変換した音声波形を示し、図4(c)の音声波形は、図4(a)の下段の音溝Yにおける画像データを変換した音声波形を示している。
【0049】
その後、出力部23は、変換手段222が作成した音声波形から、音声を外部に出力(再生)する。このように、再生装置2は、音溝Yの凹凸情報を濃淡情報として表された画像データから、音声を外部に出力(再生)する。
【0050】
以上より、本実施形態に係る蝋管読取装置は、撮像部12が蝋管Xの表面を蝋管Xの径方向から撮像し、演算部22が撮像部12で撮像した画像データから音溝Yの音声データを演算する。したがって、表面に音溝Yを有する蝋管Xから音声データを読み取ることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る蝋管読取装置は、保持部11が蝋管Xを径方向(撮像部12が蝋管Xを撮像する方向)に移動させることにより、径方向に変形した蝋管Xに対しても、蝋管Xの表面と撮像部12との間の距離を一定に維持することができるため、径方向に変形した蝋管に対しても、音声データを正確に読み取ることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る蝋管読取装置は、演算部22が画像データから音溝Yの幅方向の中心を演算することにより、軸心方向に変形した蝋管Xに対しても、音溝Yの幅方向の中心に沿って音溝Yの音声データを演算することができるため、軸心方向に変形した蝋管に対しても、音声データを正確に読み取ることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る蝋管読取装置は、光源121がドーム照明であるため、指向性のない均一な拡散光を照射し、その結果、音溝Yの凹凸の影が生じるのを防止する。そして、光学系122がテレセントリック光学系であるため、データの全域にわたってパースの付かない画像を取得できる。
【0054】
したがって、同じ材質及び同じ色で形成される蝋管Xの音溝Yに対して、音溝Yの凹凸情報(高さ及びピッチ)を正確に画像データの濃淡情報として取得でき、加えて、演算部22が画像データの最適化処理も行うため、撮像部12が撮像した画像データの濃淡情報から、演算部22が音声データとなる音溝Yの凹凸情報(高さ及びピッチ)を演算することができる。
【0055】
なお、本発明に係る蝋管読取装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
例えば、本発明に係る蝋管読取装置は、音声データを改善すべく、演算部22がノイズ除去機能を備えてもよい。例えば、抽出手段221が画像データの濃淡情報を抽出する際に、各種の画像フィルタ処理を行う場合でもよく、また、変換手段222が音声波形から音声成分とノイズ成分とを判別し、ノイズ成分を除去する処理を行う場合でもよい。
【0057】
また、上記実施形態に係る蝋管読取装置は、演算部22が画像データにおける音溝Yの中心ラインの濃淡情報から音溝Yの凹凸情報を演算する場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、演算部は、画像データにおける音溝Yの中心ラインと平行なライン(当該音溝Yの領域内であって、中心ラインから若干外れたライン)の濃淡情報から音溝Yの凹凸情報を演算する場合でもよい。
【0058】
また、演算部は、画像データにおける音溝Yのエッジ(両側縁)の幅寸法から、針の移動(振動)を演算することにより、音声データ(音声波形)を演算する場合でもよい。そして、上記の各演算方法を組み合わせて音声データを演算することにより、部分的に損傷や欠損している蝋管Xに対しても、音声データを正確に読み取ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る蝋管読取装置の全体概要図を示す。
【図2】同実施形態に係る蝋管読取装置の撮像装置(保持部)の要部拡大図であって、斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る蝋管読取装置の撮像装置(撮像部)の要部拡大図であって、斜視図を示す。
【図4】同実施形態に係る蝋管読取装置の読取図であって、(a)は蝋管の音溝を撮像した画像データ、(b)は(a)の上段側の音溝に係る音声波形、(c)は(a)の下段側の音溝に係る音声波形を示す。
【図5】従来における蝋管の説明図であって、(a)は全体斜視図、(b)は径方向に変形した際の平面図、(c)は軸心方向に変形した際のA領域における拡大正面図を示す。
【符号の説明】
【0060】
1…撮像装置、2…再生装置、11…保持部、12…撮像部、22…演算部、X…蝋管、Y…音溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データを表す音溝が表面に形成された円筒状の蝋管から音声データを非接触で読み取る蝋管読取装置において、
蝋管を保持し且つ軸心方向を中心に回転させる保持部と、蝋管の表面を径方向から撮像する撮像部と、撮像した画像データから音溝の音声データを演算する演算部とを備え、保持部は、蝋管の表面と撮像部との間の距離を一定に維持すべく、蝋管を前記径方向に移動可能に構成されることを特徴とする蝋管読取装置。
【請求項2】
演算部は、画像データから音溝の幅方向の中心を演算し、音溝の幅方向の中心に沿って音溝の音声データを演算するように構成される請求項1に記載の蝋管読取装置。
【請求項3】
演算部は、撮像した画像データの濃淡情報から音声データとなる音溝の凹凸情報を演算するように構成される請求項1又は2に記載の蝋管読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−33673(P2010−33673A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196340(P2008−196340)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【特許番号】特許第4372207号(P4372207)
【特許公報発行日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000111247)ニューリー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】