血圧上昇の抑制組成物
【課題】 安全性が高い天然食物繊維由来の天然多糖の、一次性高血圧症を改善できる物質を含有する、任意の形態で摂取可能な血圧上昇の抑制組成物を提供すること。
【解決手段】 キトサンオリゴ糖を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物。キトサンオリゴ糖を含む場合、塩の形で含有する。組成物が医薬品である。
【解決手段】 キトサンオリゴ糖を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物。キトサンオリゴ糖を含む場合、塩の形で含有する。組成物が医薬品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次性高血圧症の予防と改善に効果をもたらすキトサンオリゴ糖の血圧上昇の抑制組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病としての高血圧症、特に一次性高血圧症(他に基礎疾患を持たない高血圧症)の成因に関して様々な研究開発が行われ、複雑な血圧調節機構が複合して発症することが解明されつつある。特に腎性昇圧因子、副腎皮質因子、神経性及び神経体液因子、血行因子、遺伝因子、ナトリウム代謝に関する因子が挙げられ、一次性高血圧症の治療に作用機構を異にする血圧降下させる薬剤が広く用いられている。該薬剤は多数の種類があり、血管平滑筋に直接作用し血管拡張を引き起こす薬、交換神経系の活性を中枢から末梢血管の受容体に至る経路のいずれかで抑制する薬(中枢性交換神経抑制剤、中枢と抹消の両方で抑制する薬、神経節遮断薬、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、α受容体遮断薬等)、利尿薬、アンギオテンシン拮抗薬等が知られている。しかしながら上記の薬剤は、治療薬として医師による適切な診断をもとに処方されるものでる。
【0003】
一方で治療薬を用いずに食塩摂取量をコントロールする等の食事療法により一次性高血圧症を改善できることが数多くの研究開発によって確認されている。また野菜や海草などに含まれるセルロース、アルギン酸等の植物由来の食物繊維において、様々な要因を経て一次性高血圧症の改善または予防として注目され、数多くの研究開発が行われてきている。すなわち食塩を過剰摂取によって一次性高血圧症に関する血圧調節機構に大きく影響を及ぼし、結果として高血圧を発症することが確認され、特にナトリウムイオンの血中濃度の上昇により高血圧症となることが知られており、アルギン酸等の食物繊維に吸着しナトリウムイオンの排泄を促すことによって高血圧症が改善または予防するとして注目されてきた。またシイタケーフラクトオリゴ糖(非特許文献1)やウシ胸腺粉末(非特許文献2)などが、食物繊維による要因や免疫機能改善など様々な要因により血圧上昇抑制作用を有することが知られている。
【0004】
天然には多くの食物繊維として有効な多糖が存在し、多くは植物由来であるが、カニやエビ等の甲殻類の甲殻、昆虫の表皮、キノコや酵母等に含まれる主としてN―アセチル-D-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を有する多糖類のキチンはセルロースに次ぐ資源量とも推定され、有効利用が期待されている天然多糖である。これはキノコ等の担子菌類や発酵食品に含まれる酵母、エビ殻の入った煎餅等として、日常的に古くから食品素材として用いられ、また医学的にも経口投与や組織内埋め込み試験の結果、無毒で安全性は高いばかりか免疫賦活作用等の人体に有効な効果を示すことも知られている。
このようなキチンを酸や酵素により加水分解して、低分子化したキチン、一般的にキチンオリゴ糖と呼ばれる水溶性の低分子キチンはN―アセチル-D-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を分子内に7、8個程度連なった構造を有する少糖類の混合物である。これらキチンオリゴ糖はキチンを経口投与により腸内細菌叢を改善し、腸内細菌の分泌するキチナーゼによりキチンオリゴ糖まで低分子化することによって、腸内ビフィズス菌の生育を促進させた結果、乳糖消化に必要なβ―ガラクトシダーゼの生産を促すことが知られている。
【0005】
キチンを脱アセチル化した物質を一般的にキトサンと呼ばれ、キトサンは食品添加物質として承認されている安全性の高い食品素材である。またキトサンは主にD-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を有する多糖類であり、D-グルコサミンがアミノ基を有することから、水溶液中では陽電荷を帯び、負に帯電した物質や陰イオンを吸着することが知られている。この作用を用いた生理的効果として高コレステロール血症治療剤であるコレスチラミニンと同様な効果や高血圧症に関して降圧作用の効果知られ(特許文献1)、今後期待されている機能性食品素材である。
このようなキトサンを酸や酵素により加水分解して、低分子化したキトサン、一般的にキトサンオリゴ糖と呼ばれる水溶性の低分子キトサンは塩を含むD-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を分子内に10個程度連なった構造を有する少糖類の混合物である。これらキトサンオリゴ糖はキチンオリゴ糖と同様、腸内ビフィズス菌、特にL.bulgaricusに対して顕著に増殖を促進させその有用性が認められている。
【0006】
こうした中シイタケーフラクトオリゴ糖やウシ胸腺粉末などの血圧上昇抑制物質がいくつか知られているものの、キチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖において血圧上昇抑制について着目した報告例はなかった。また、キチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖は上記の様な生理機能以外は知られておらず、降圧作用について着目された報告例はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−56674号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kabir,Y et al J.Nutr.Sci.Vitaminol.,33,341(1987)
【非特許文献2】藤野ら 食糧学会誌 Vol.45 No.3 257 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有効利用が期待されている安全性が高い天然食物繊維由来の天然多糖の、一次性高血圧症を改善できる物質を含有する、任意の形態で摂取可能な血圧上昇の抑制組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、本発明者らはキチンまたはキトサンを飼料に混ぜて一次性高血圧症を発症するラットに投与すると血圧上昇を抑制させ、あるいは降圧作用を発揮すること、さらに、キチンまたはキトサンを低分子化して得られるキチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖を飼料に混ぜて一次性高血圧症を発症するラットに投与すると、血圧上昇をより効果的に抑制させ、あるいは降圧作用をより効果的に発揮することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、キトサンオリゴ糖を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物を要旨としている。
【0012】
キトサンオリゴ糖を含有する場合、塩の形で含有しており、その場合、本発明は、キトサンオリゴ糖の塩を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物を要旨としている。
【0013】
組成物が医薬品であり、その場合、本発明は、キトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩をる血圧上昇の抑制の有効成分として含有する医薬品を要旨としている。
【発明の効果】
【0014】
有効利用が期待されている安全性が高い天然食物繊維由来の天然多糖の、一次性高血圧症を改善できる物質を含有する血圧上昇抑制性組成物を提供することができる。安全性は高く、安価で取り扱いも容易であることから食品、飲料、飼料または医薬品の形態で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】試験例1における体重の推移を示す図である。
【図2】試験例1における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図3】試験例1における収縮期血圧の推移を示す図である。
【図4】試験例2における体重の推移を示す図である。
【図5】試験例2における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図6】試験例2における収縮期血圧の推移を示す図である。
【図7】試験例3における体重の推移を示す図である。
【図8】試験例3における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図9】試験例3における収縮期血圧の推移を示す図である。
【図10】試験例4における体重の推移を示す図である。
【図11】試験例4における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図12】試験例4における収縮期血圧の推移を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
血圧上昇の抑制組成物に利用可能なキチンオリゴ糖は、カニやエビ等の甲殻類の殻部やキノコ、酵母等から化学的処理、生物化学的処理によって精製されるキチンを加水分解することにより得ることが可能である。この方法によって得られるキチンオリゴ糖は単糖を含む重合度が1〜10糖程度の少糖類の混合物である。このキチンオリゴ糖混合物をそのまま使用することが可能である。
【0017】
本発明の血圧上昇抑制性組成物に利用可能なキトサンオリゴ糖は、上記キチンを化学的処理、生物化学的処理によって精製されるキトサンを加水分解することにより得ることが可能である。この方法によって得られる塩を含むキトサンオリゴ糖は単糖を含む重合度が1〜10糖程度を含む少糖類の混合物である。
【0018】
キトサンオリゴ糖は塩酸塩、硫酸塩などの形で用いることができる。
【0019】
本発明の組成物はキトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩を血圧の上昇を抑制する物質あるいは降圧作用を有する物質として含有する血圧上昇の抑制組成物であり、キトサンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖の塩を粉末の形であるいは溶かして添加した食品、飼料、飲料または医薬である。食品、飲料または飼料における配合量は特に制限されないが0.01〜10重量%程度が好ましい。
【0020】
医薬品の場合、カプセルや粉末、錠剤等として経口投与することができ、またキチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖は水に溶けることから経口投与以外に、静脈注射、筋肉注射等の投与方法を採用することが可能である。投与量は高血圧の症状の度合や体重、年齢、性別等により異なるものであるが、好ましくは使用に際して適当な量を症状に応じて決めることが望ましい。医薬における配合量は特に制限されないが、体重1kg当り、経口の場合0.1〜2000mg、静脈注射の場合0.01〜1000mg、筋肉注射の場合0.01〜1000mg程度が好ましい。
【0021】
[作用]
後述する試験例に示すように、キトサンオリゴ糖の塩を含有する飼料によれば、一次性高血圧症を発症したラットに対して血圧上昇を抑制する顕著な効果を発揮するあるいは降圧作用を顕著に発揮することが認められた。したがって人間を含めた動物に対してキトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩は血圧上昇抑制、降圧作用をもたらすことを期待することができる。
【0022】
また、本発明の血圧上昇の抑制組成物における血圧の上昇を抑制する物質あるいは降圧作用を有する物質は甲殻類の殻として天然に存在するキチンまたは食品添加物として認可されているキトサンを原料として得られる、キトサンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖の塩を有効成分としているために、安全性が高く、比較的簡便な工程で製造可能であるからコスト面でも利用価値は高いものである。なお、キトサンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖の塩の急性経口毒性試験は5,000mg/kg体重以上であり安全性は高いものである。
【0023】
また天然物で自然界に多量に存在するキチンから得られるキトサンを原料とする塩を含むキトサンオリゴ糖を有効成分とするために、安全性は高く、安価で取り扱いも容易であることから食品用添加剤、飼料用添加剤、飲料用添加剤または医薬品用添加剤として利用しやすい。 したがって人間を含めた動物に対して食品、飲料、飼料、医薬品にキトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩を含ませて血圧上昇抑制、降圧作用をもたらすことが期待される。
【実施例】
【0024】
本発明について実施例または試験例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに実施例または試験例に限定されるものではない。なお、キチンオリゴ糖にかかわる例は参考例である。
【0025】
実施例1
(キチンオリゴ糖の製造)
ベニズワイの甲殻10kgを5%塩酸溶液100リットル、30℃以下、適宜撹拌しながら16時間反応させ、中性を示すまで水洗の後、脱灰カニ殻を得た。この脱灰カニ殻を5%水酸化ナトリウム溶液100リットル加え、100℃、3時間反応させ、中性を示すまで水洗の後、乾燥させてキチン3.8kg得た。このキチンを分析したところ強熱残分1.08%であった。
濃塩酸2リットルを液温20℃に調節し、撹拌しながら上記より得られたキチン1kgを少量ずつ加え、キチンが液中に均質になじんだ後、液温35℃で5時間加水分解を行った。この後水を3リットル加えて反応を停止させ、この希釈液に精製ケイソウ土(昭和化学社製「ラジオライトFNF−A」)20gと活性炭(二村化学社製「SW−50」)40gとを加え15分間撹拌、混合した後、吸引ろ過し、ろ過残さに水300ミリリットルを注水、洗浄ろ過して、ろ液に合しキチンオリゴ糖塩酸溶液5.3リットルを得た。
次いで、上記キチンオリゴ糖塩酸溶液にイオン交換膜電気透析装置(特開2000―17475号公報)を用いて脱塩処理を行った。キチンオリゴ糖塩酸溶液5リットルを希釈液槽に入れ、濃縮液(陽極液)槽には0.2%水酸化ナトリウム水溶液1500ミリリットルをいれ、苛性ソーダ槽には15%水酸化ナトリウム水溶液1500ミリリットル入れた。希釈液槽及び濃縮液(陽極液)槽に連通した配管に設けられたポンプを作動させ、希釈液及び濃縮液(陽極液)をイオン交換膜透析槽に送り込み、各槽内間を400ミリリットル/分の流速で循環させた。次いで直流電源装置を用いて、陽極及び陰極に24ボルト、20アンペアの直流電流を流し運転を開始させた。運転開始から17時間後に希釈液のpHが6.5に上昇したことを確認し、運転を停止して希釈液4.3リットルを得た。希釈液中の残存塩素濃度は0.1g/100ミリリットルであった。この希釈液に活性炭20gを加え15分間撹拌した後、吸引ろ過し、ろ液を噴霧乾燥(大川原化工機社製「スプレードライヤー L−8型」)してキチンオリゴ糖582g(原料キチンより収率58%)を得た。このキチンオリゴ糖を分析したところ、1%水溶液でpH6.1、強熱残分0.83%であった。
【0026】
実施例2
(キトサンオリゴ糖の製造)
実施例1で得られたキチン2kgを45%水酸化ナトリウム溶液10リットル、100℃以上、攪拌しながら3時間脱アセチル化反応させ、中性を示すまで水洗、乾燥させた後、再度45%水酸化ナトリウム溶液10リットル、100℃以上、撹拌しながら3時間脱アセチル化反応させ、中性を示すまで水洗、乾燥させたキトサン1.6kg得た。このキトサンを分析したところ強熱残分0.10%、脱アセチル化度95%であった。
濃塩酸2リットルを液温40℃に調節し、撹拌しながら上記より得られたキトサン1kgを少量ずつ加え、キトサンが液中に均質になじんだ後、80℃で3時間加水分解を行った。この後水を3リットル加えて反応を停止させ、この希釈液に精製ケイソウ土(昭和化学社製「ラジオライトFNF−A」)20gと活性炭(二村化学社製「SW−50」)40gとを加え15分間撹拌、混合した後、吸引ろ過し、ろ過残さに水300ミリリットルを注水、洗浄ろ過して、ろ液に合しキトサンオリゴ糖塩酸溶液5.3リットルを得た。
次いで、キトサンオリゴ糖塩酸溶液を噴霧乾燥(大川原化工機社製「スプレードライヤー L-8型」)してキトサンオリゴ糖塩酸塩604g(原料キトサンより収率60%)を得た。このキトサンオリゴ糖塩酸塩を分析したところ、1%水溶液でpH5.6、強熱残分0.18%であった。
【0027】
試験例1
(一次性高血圧症ラットへのキチン及びキチンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として高血圧自然発症ラット(Spontaneously
Hypertensive Rat : 以下SHRとする)を用いた。SHRは人為的処置なしに加齢と共に高血圧を発症する等、人間の一次性高血圧に対する最良のモデル動物であることが知られている。
このSHR(n=5)に生後6週年齢から実施例1で得られたキチンまたは実施例1で得られたキチンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキチン及びキチンオリゴ糖が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図1)、摂食量の推移(図2)において対照区と2%キチン区、対照区と2%キチンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図3)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキチン区より対照区と比較したキチンオリゴ糖区において上昇抑制が顕著に確認された。このことよりキチンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく加齢による血圧上昇を有意に低下させることが解った。
【0028】
試験例2
(一次性高血圧症ラットへのキトサン及びキトサンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として試験例1と同様SHRを用いた。このSHR(n=5)に生後6週齢から実施例2で得られたキトサン及び実施例2で得られたキトサンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキトサン及びキトサンオリゴ糖塩酸塩が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図4)、摂食量の推移(図5)において対照区と2%キトサン区、対照区と2%キトサンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図6)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキトサン区より対照区と比較したキトサンオリゴ糖区において上昇抑制が顕著に確認された。このことよりキトサンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく加齢による血圧上昇を有意に低下させることが解った。
【0029】
試験例3
(一次性高血圧症ラットへのキチン及びキチンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として試験例1と同様SHRを用いた。
このSHR(n=5)に生後23週齢から実施例1で得られたキチンまたは実施例1で得られたキチンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキチン及びキチンオリゴ糖が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図7)、摂食量の推移(図8)において対照区と2%キチン区、対照区と2%キチンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図9)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキチン区より対照区と比較したキチンオリゴ糖区において降圧作用が顕著に確認された。このことよりキチンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく収縮期血圧を有意に低下、すなわち降圧作用を有することが解った。
【0030】
試験例4
(一次性高血圧症ラットへのキトサン及びキトサンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として試験例1と同様SHRを用いた。このSHR(n=5)に生後23週齢から実施例2で得られたキトサン及び実施例2で得られたキトサンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキトサン及びキトサンオリゴ糖塩酸塩が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図10)、摂食量の推移(図11)において対照区と2%キトサン区、対照区と2%キトサンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図12)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキトサン区より対照区と比較したキトサンオリゴ糖区において降圧作用が顕著に確認された。このことよりキトサンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく収縮期血圧を有意に低下、すなわち降圧作用を有することが解った。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次性高血圧症の予防と改善に効果をもたらすキトサンオリゴ糖の血圧上昇の抑制組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病としての高血圧症、特に一次性高血圧症(他に基礎疾患を持たない高血圧症)の成因に関して様々な研究開発が行われ、複雑な血圧調節機構が複合して発症することが解明されつつある。特に腎性昇圧因子、副腎皮質因子、神経性及び神経体液因子、血行因子、遺伝因子、ナトリウム代謝に関する因子が挙げられ、一次性高血圧症の治療に作用機構を異にする血圧降下させる薬剤が広く用いられている。該薬剤は多数の種類があり、血管平滑筋に直接作用し血管拡張を引き起こす薬、交換神経系の活性を中枢から末梢血管の受容体に至る経路のいずれかで抑制する薬(中枢性交換神経抑制剤、中枢と抹消の両方で抑制する薬、神経節遮断薬、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、α受容体遮断薬等)、利尿薬、アンギオテンシン拮抗薬等が知られている。しかしながら上記の薬剤は、治療薬として医師による適切な診断をもとに処方されるものでる。
【0003】
一方で治療薬を用いずに食塩摂取量をコントロールする等の食事療法により一次性高血圧症を改善できることが数多くの研究開発によって確認されている。また野菜や海草などに含まれるセルロース、アルギン酸等の植物由来の食物繊維において、様々な要因を経て一次性高血圧症の改善または予防として注目され、数多くの研究開発が行われてきている。すなわち食塩を過剰摂取によって一次性高血圧症に関する血圧調節機構に大きく影響を及ぼし、結果として高血圧を発症することが確認され、特にナトリウムイオンの血中濃度の上昇により高血圧症となることが知られており、アルギン酸等の食物繊維に吸着しナトリウムイオンの排泄を促すことによって高血圧症が改善または予防するとして注目されてきた。またシイタケーフラクトオリゴ糖(非特許文献1)やウシ胸腺粉末(非特許文献2)などが、食物繊維による要因や免疫機能改善など様々な要因により血圧上昇抑制作用を有することが知られている。
【0004】
天然には多くの食物繊維として有効な多糖が存在し、多くは植物由来であるが、カニやエビ等の甲殻類の甲殻、昆虫の表皮、キノコや酵母等に含まれる主としてN―アセチル-D-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を有する多糖類のキチンはセルロースに次ぐ資源量とも推定され、有効利用が期待されている天然多糖である。これはキノコ等の担子菌類や発酵食品に含まれる酵母、エビ殻の入った煎餅等として、日常的に古くから食品素材として用いられ、また医学的にも経口投与や組織内埋め込み試験の結果、無毒で安全性は高いばかりか免疫賦活作用等の人体に有効な効果を示すことも知られている。
このようなキチンを酸や酵素により加水分解して、低分子化したキチン、一般的にキチンオリゴ糖と呼ばれる水溶性の低分子キチンはN―アセチル-D-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を分子内に7、8個程度連なった構造を有する少糖類の混合物である。これらキチンオリゴ糖はキチンを経口投与により腸内細菌叢を改善し、腸内細菌の分泌するキチナーゼによりキチンオリゴ糖まで低分子化することによって、腸内ビフィズス菌の生育を促進させた結果、乳糖消化に必要なβ―ガラクトシダーゼの生産を促すことが知られている。
【0005】
キチンを脱アセチル化した物質を一般的にキトサンと呼ばれ、キトサンは食品添加物質として承認されている安全性の高い食品素材である。またキトサンは主にD-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を有する多糖類であり、D-グルコサミンがアミノ基を有することから、水溶液中では陽電荷を帯び、負に帯電した物質や陰イオンを吸着することが知られている。この作用を用いた生理的効果として高コレステロール血症治療剤であるコレスチラミニンと同様な効果や高血圧症に関して降圧作用の効果知られ(特許文献1)、今後期待されている機能性食品素材である。
このようなキトサンを酸や酵素により加水分解して、低分子化したキトサン、一般的にキトサンオリゴ糖と呼ばれる水溶性の低分子キトサンは塩を含むD-グルコサミンがβ-(1,4)結合で連なった構造を分子内に10個程度連なった構造を有する少糖類の混合物である。これらキトサンオリゴ糖はキチンオリゴ糖と同様、腸内ビフィズス菌、特にL.bulgaricusに対して顕著に増殖を促進させその有用性が認められている。
【0006】
こうした中シイタケーフラクトオリゴ糖やウシ胸腺粉末などの血圧上昇抑制物質がいくつか知られているものの、キチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖において血圧上昇抑制について着目した報告例はなかった。また、キチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖は上記の様な生理機能以外は知られておらず、降圧作用について着目された報告例はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−56674号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kabir,Y et al J.Nutr.Sci.Vitaminol.,33,341(1987)
【非特許文献2】藤野ら 食糧学会誌 Vol.45 No.3 257 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有効利用が期待されている安全性が高い天然食物繊維由来の天然多糖の、一次性高血圧症を改善できる物質を含有する、任意の形態で摂取可能な血圧上昇の抑制組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、本発明者らはキチンまたはキトサンを飼料に混ぜて一次性高血圧症を発症するラットに投与すると血圧上昇を抑制させ、あるいは降圧作用を発揮すること、さらに、キチンまたはキトサンを低分子化して得られるキチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖を飼料に混ぜて一次性高血圧症を発症するラットに投与すると、血圧上昇をより効果的に抑制させ、あるいは降圧作用をより効果的に発揮することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、キトサンオリゴ糖を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物を要旨としている。
【0012】
キトサンオリゴ糖を含有する場合、塩の形で含有しており、その場合、本発明は、キトサンオリゴ糖の塩を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物を要旨としている。
【0013】
組成物が医薬品であり、その場合、本発明は、キトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩をる血圧上昇の抑制の有効成分として含有する医薬品を要旨としている。
【発明の効果】
【0014】
有効利用が期待されている安全性が高い天然食物繊維由来の天然多糖の、一次性高血圧症を改善できる物質を含有する血圧上昇抑制性組成物を提供することができる。安全性は高く、安価で取り扱いも容易であることから食品、飲料、飼料または医薬品の形態で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】試験例1における体重の推移を示す図である。
【図2】試験例1における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図3】試験例1における収縮期血圧の推移を示す図である。
【図4】試験例2における体重の推移を示す図である。
【図5】試験例2における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図6】試験例2における収縮期血圧の推移を示す図である。
【図7】試験例3における体重の推移を示す図である。
【図8】試験例3における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図9】試験例3における収縮期血圧の推移を示す図である。
【図10】試験例4における体重の推移を示す図である。
【図11】試験例4における飼料摂食量の推移を示す図である。
【図12】試験例4における収縮期血圧の推移を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
血圧上昇の抑制組成物に利用可能なキチンオリゴ糖は、カニやエビ等の甲殻類の殻部やキノコ、酵母等から化学的処理、生物化学的処理によって精製されるキチンを加水分解することにより得ることが可能である。この方法によって得られるキチンオリゴ糖は単糖を含む重合度が1〜10糖程度の少糖類の混合物である。このキチンオリゴ糖混合物をそのまま使用することが可能である。
【0017】
本発明の血圧上昇抑制性組成物に利用可能なキトサンオリゴ糖は、上記キチンを化学的処理、生物化学的処理によって精製されるキトサンを加水分解することにより得ることが可能である。この方法によって得られる塩を含むキトサンオリゴ糖は単糖を含む重合度が1〜10糖程度を含む少糖類の混合物である。
【0018】
キトサンオリゴ糖は塩酸塩、硫酸塩などの形で用いることができる。
【0019】
本発明の組成物はキトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩を血圧の上昇を抑制する物質あるいは降圧作用を有する物質として含有する血圧上昇の抑制組成物であり、キトサンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖の塩を粉末の形であるいは溶かして添加した食品、飼料、飲料または医薬である。食品、飲料または飼料における配合量は特に制限されないが0.01〜10重量%程度が好ましい。
【0020】
医薬品の場合、カプセルや粉末、錠剤等として経口投与することができ、またキチンオリゴ糖または塩を含むキトサンオリゴ糖は水に溶けることから経口投与以外に、静脈注射、筋肉注射等の投与方法を採用することが可能である。投与量は高血圧の症状の度合や体重、年齢、性別等により異なるものであるが、好ましくは使用に際して適当な量を症状に応じて決めることが望ましい。医薬における配合量は特に制限されないが、体重1kg当り、経口の場合0.1〜2000mg、静脈注射の場合0.01〜1000mg、筋肉注射の場合0.01〜1000mg程度が好ましい。
【0021】
[作用]
後述する試験例に示すように、キトサンオリゴ糖の塩を含有する飼料によれば、一次性高血圧症を発症したラットに対して血圧上昇を抑制する顕著な効果を発揮するあるいは降圧作用を顕著に発揮することが認められた。したがって人間を含めた動物に対してキトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩は血圧上昇抑制、降圧作用をもたらすことを期待することができる。
【0022】
また、本発明の血圧上昇の抑制組成物における血圧の上昇を抑制する物質あるいは降圧作用を有する物質は甲殻類の殻として天然に存在するキチンまたは食品添加物として認可されているキトサンを原料として得られる、キトサンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖の塩を有効成分としているために、安全性が高く、比較的簡便な工程で製造可能であるからコスト面でも利用価値は高いものである。なお、キトサンオリゴ糖、またはキトサンオリゴ糖の塩の急性経口毒性試験は5,000mg/kg体重以上であり安全性は高いものである。
【0023】
また天然物で自然界に多量に存在するキチンから得られるキトサンを原料とする塩を含むキトサンオリゴ糖を有効成分とするために、安全性は高く、安価で取り扱いも容易であることから食品用添加剤、飼料用添加剤、飲料用添加剤または医薬品用添加剤として利用しやすい。 したがって人間を含めた動物に対して食品、飲料、飼料、医薬品にキトサンオリゴ糖またはキトサンオリゴ糖の塩を含ませて血圧上昇抑制、降圧作用をもたらすことが期待される。
【実施例】
【0024】
本発明について実施例または試験例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに実施例または試験例に限定されるものではない。なお、キチンオリゴ糖にかかわる例は参考例である。
【0025】
実施例1
(キチンオリゴ糖の製造)
ベニズワイの甲殻10kgを5%塩酸溶液100リットル、30℃以下、適宜撹拌しながら16時間反応させ、中性を示すまで水洗の後、脱灰カニ殻を得た。この脱灰カニ殻を5%水酸化ナトリウム溶液100リットル加え、100℃、3時間反応させ、中性を示すまで水洗の後、乾燥させてキチン3.8kg得た。このキチンを分析したところ強熱残分1.08%であった。
濃塩酸2リットルを液温20℃に調節し、撹拌しながら上記より得られたキチン1kgを少量ずつ加え、キチンが液中に均質になじんだ後、液温35℃で5時間加水分解を行った。この後水を3リットル加えて反応を停止させ、この希釈液に精製ケイソウ土(昭和化学社製「ラジオライトFNF−A」)20gと活性炭(二村化学社製「SW−50」)40gとを加え15分間撹拌、混合した後、吸引ろ過し、ろ過残さに水300ミリリットルを注水、洗浄ろ過して、ろ液に合しキチンオリゴ糖塩酸溶液5.3リットルを得た。
次いで、上記キチンオリゴ糖塩酸溶液にイオン交換膜電気透析装置(特開2000―17475号公報)を用いて脱塩処理を行った。キチンオリゴ糖塩酸溶液5リットルを希釈液槽に入れ、濃縮液(陽極液)槽には0.2%水酸化ナトリウム水溶液1500ミリリットルをいれ、苛性ソーダ槽には15%水酸化ナトリウム水溶液1500ミリリットル入れた。希釈液槽及び濃縮液(陽極液)槽に連通した配管に設けられたポンプを作動させ、希釈液及び濃縮液(陽極液)をイオン交換膜透析槽に送り込み、各槽内間を400ミリリットル/分の流速で循環させた。次いで直流電源装置を用いて、陽極及び陰極に24ボルト、20アンペアの直流電流を流し運転を開始させた。運転開始から17時間後に希釈液のpHが6.5に上昇したことを確認し、運転を停止して希釈液4.3リットルを得た。希釈液中の残存塩素濃度は0.1g/100ミリリットルであった。この希釈液に活性炭20gを加え15分間撹拌した後、吸引ろ過し、ろ液を噴霧乾燥(大川原化工機社製「スプレードライヤー L−8型」)してキチンオリゴ糖582g(原料キチンより収率58%)を得た。このキチンオリゴ糖を分析したところ、1%水溶液でpH6.1、強熱残分0.83%であった。
【0026】
実施例2
(キトサンオリゴ糖の製造)
実施例1で得られたキチン2kgを45%水酸化ナトリウム溶液10リットル、100℃以上、攪拌しながら3時間脱アセチル化反応させ、中性を示すまで水洗、乾燥させた後、再度45%水酸化ナトリウム溶液10リットル、100℃以上、撹拌しながら3時間脱アセチル化反応させ、中性を示すまで水洗、乾燥させたキトサン1.6kg得た。このキトサンを分析したところ強熱残分0.10%、脱アセチル化度95%であった。
濃塩酸2リットルを液温40℃に調節し、撹拌しながら上記より得られたキトサン1kgを少量ずつ加え、キトサンが液中に均質になじんだ後、80℃で3時間加水分解を行った。この後水を3リットル加えて反応を停止させ、この希釈液に精製ケイソウ土(昭和化学社製「ラジオライトFNF−A」)20gと活性炭(二村化学社製「SW−50」)40gとを加え15分間撹拌、混合した後、吸引ろ過し、ろ過残さに水300ミリリットルを注水、洗浄ろ過して、ろ液に合しキトサンオリゴ糖塩酸溶液5.3リットルを得た。
次いで、キトサンオリゴ糖塩酸溶液を噴霧乾燥(大川原化工機社製「スプレードライヤー L-8型」)してキトサンオリゴ糖塩酸塩604g(原料キトサンより収率60%)を得た。このキトサンオリゴ糖塩酸塩を分析したところ、1%水溶液でpH5.6、強熱残分0.18%であった。
【0027】
試験例1
(一次性高血圧症ラットへのキチン及びキチンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として高血圧自然発症ラット(Spontaneously
Hypertensive Rat : 以下SHRとする)を用いた。SHRは人為的処置なしに加齢と共に高血圧を発症する等、人間の一次性高血圧に対する最良のモデル動物であることが知られている。
このSHR(n=5)に生後6週年齢から実施例1で得られたキチンまたは実施例1で得られたキチンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキチン及びキチンオリゴ糖が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図1)、摂食量の推移(図2)において対照区と2%キチン区、対照区と2%キチンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図3)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキチン区より対照区と比較したキチンオリゴ糖区において上昇抑制が顕著に確認された。このことよりキチンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく加齢による血圧上昇を有意に低下させることが解った。
【0028】
試験例2
(一次性高血圧症ラットへのキトサン及びキトサンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として試験例1と同様SHRを用いた。このSHR(n=5)に生後6週齢から実施例2で得られたキトサン及び実施例2で得られたキトサンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキトサン及びキトサンオリゴ糖塩酸塩が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図4)、摂食量の推移(図5)において対照区と2%キトサン区、対照区と2%キトサンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図6)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキトサン区より対照区と比較したキトサンオリゴ糖区において上昇抑制が顕著に確認された。このことよりキトサンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく加齢による血圧上昇を有意に低下させることが解った。
【0029】
試験例3
(一次性高血圧症ラットへのキチン及びキチンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として試験例1と同様SHRを用いた。
このSHR(n=5)に生後23週齢から実施例1で得られたキチンまたは実施例1で得られたキチンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキチン及びキチンオリゴ糖が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図7)、摂食量の推移(図8)において対照区と2%キチン区、対照区と2%キチンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図9)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキチン区より対照区と比較したキチンオリゴ糖区において降圧作用が顕著に確認された。このことよりキチンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく収縮期血圧を有意に低下、すなわち降圧作用を有することが解った。
【0030】
試験例4
(一次性高血圧症ラットへのキトサン及びキトサンオリゴ糖投与の影響)
一次性高血圧症のモデル動物として試験例1と同様SHRを用いた。このSHR(n=5)に生後23週齢から実施例2で得られたキトサン及び実施例2で得られたキトサンオリゴ糖を2%含有させた飼育用飼料(オリエンタル酵母社製「MF:粉末」)を与え、対照区にはキトサン及びキトサンオリゴ糖塩酸塩が含まれていない飼育用飼料を与えた。血圧測定を初回は5日目に、以後10日毎に測定し、体重及び飼料の摂食量を3日毎に測定した。なお血圧測定は非観血血圧測定装置(ソフトロン社製「BP−98A」)により測定した。
上記の結果として体重の推移(図10)、摂食量の推移(図11)において対照区と2%キトサン区、対照区と2%キトサンオリゴ糖区では大きな変化を与えなかったが、収縮期血圧の推移(図12)において顕著な低下が確認された。特に対照区と比較したキトサン区より対照区と比較したキトサンオリゴ糖区において降圧作用が顕著に確認された。このことよりキトサンオリゴ糖には体重や摂食量に大きな影響はなく収縮期血圧を有意に低下、すなわち降圧作用を有することが解った。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサンオリゴ糖を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物。
【請求項2】
キトサンオリゴ糖を含む場合、塩の形で含有する請求項1の血圧上昇の抑制組成物。
【請求項3】
組成物が医薬品である請求項1または2の血圧上昇の抑制組成物。
【請求項1】
キトサンオリゴ糖を有効成分として含有する血圧上昇の抑制組成物。
【請求項2】
キトサンオリゴ糖を含む場合、塩の形で含有する請求項1の血圧上昇の抑制組成物。
【請求項3】
組成物が医薬品である請求項1または2の血圧上昇の抑制組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−144569(P2012−144569A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100703(P2012−100703)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2001−81495(P2001−81495)の分割
【原出願日】平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2001−81495(P2001−81495)の分割
【原出願日】平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】
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