説明

血液流動性改善作用をもたらす薬剤および機能性食品

【課題】血流停滞の改善を促し、生活習慣病への移行を予防することに有効であり、しかも日常の摂取が負担にならずに済む薬剤および機能性食品を提供する。
【解決手段】血液流動性改善作用をもたらす薬剤および機能性食品として、深海鮫の肝臓からの抽出物(肝油)を含有するものとする。これにより、深海鮫の肝油の抗酸化作用、免疫力増強作用、脂質代謝改善作用、及び外因性内分泌攪乱物質排出作用等の相乗作用により、血流停滞の改善を促し、健全な体に保つ上に大きな効果を奏することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液流動性改善作用をもたらす薬剤および機能性食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、日本国内においても家庭内での調理を主体とした1日3食(内食)の食生活が乱れつつあり、化学物質が添加された惣菜、冷凍調理品などの加工食品(中食)の家庭内への浸透にはじまり、ハンバーガー、フライドチキン等のファストフードに代表される外食産業の台頭が著しく進行している。そしてこれに連れて心疾患や脳疾患を伴う生活習慣病が急増している。
【0003】
こうした生活習慣病の原因の一つに血流停滞が上げられるが、この血流停滞を改善する作用のある薬剤、あるいは食品が種々提案されている(特許文献1を参照されたい)。
【特許文献1】特開2006−83105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、従来提案されているこの種の飲食物は、実際に顕著な効果を上げようとすると、現実的とは言えないほどに大量に摂取しなければならないなどの問題があった。
【0005】
本発明は、このような現状を踏まえて創案されたものであり、その主な目的は、生活習慣病の元凶ともいえる血流停滞の改善を促し、生活習慣病への移行を予防することに有効であり、しかも日常の摂取が負担にならずに済む薬剤および機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明は、深海鮫の肝臓からの抽出物(肝油)を含有すること、特に深海鮫の肝油から精製したスクアレンまたはスクアランの少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする血液流動性改善作用をもたらす薬剤および機能性食品を提供するものとした。
【発明の効果】
【0007】
このような本発明によれば、深海鮫の肝油を含有した薬剤または該薬剤を含有した機能性食品を摂ることにより、抗酸化作用、免疫力増強作用、脂質代謝改善作用、及び外因性内分泌攪乱物質排出作用等の相乗作用により、急増する生活習慣病の元凶ともいえる血流停滞の改善を促し、健全な体に保つ上に大きな効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明による薬剤および機能性食品に含有させる物質について詳細に説明する。本発明に関わる物質(スクアレン:2005年11月シーエムシー出版刊「食品機能素材III」第284頁〜第288頁参照)は、深海鮫の肝臓から、公知の抽出法を利用して抽出・精製したものである。なお、本発明の本質は、物質の抽出・精製法には関わらず、以下に例示した抽出法に限定されるものではない。
【0009】
深海鮫の肝臓は、抽出効率を高めるべく懸濁液を作るために微細に粉砕する。この懸濁液を、弱熱を加えた重力装置にかけて混合攪拌することにより、肝油を抽出する。これに水(好ましくは純水)を加え、遠心分離器および真空オイル乾燥機を経て、残った水分と微固形物を除去する。
【0010】
このようにして得られた肝油に、ニトロゲンガス・ブランケット内でシリカパウダーを混入して攪拌することにより、酸化防止を行いつつ微量の汚染物質をシリカパウダーに吸着させる。
【0011】
シリカ濾過助剤および閉鎖圧力箔フィルタを用い、シリカ吸着体を肝油から濾過して除去した後、精製カートリッジフィルタを通してさらに残渣を除去する。
【0012】
このようにして得られた精製肝油は、カプセルや錠剤などの適宜な形態の経口剤としたり、或いは菓子類などの食品や清涼飲料などに混ぜ合わせたりすることにより、容易に摂取することができる。
【0013】
深海鮫の肝油には、スクアレンが多く含まれており、これの抗酸化作用が活性酸素に起因する生活習慣病の予防に効果があると考えられている。また、スクアレンは、免疫力増強作用、外因性内分泌攪乱物質の排出作用も認められており、これらが相乗的に作用して血液流動性の改善を促しているものと考えられる。なお、スクアレンに水素添加を施したスクワランも同様の効果が予想できる。
【0014】
次に本発明物質の血液流動性改善作用の検証について説明する。
【0015】
先ず、血液停滞を生じているヒト試験協力者を、医療法人社団・和会・渋谷コアクリニックに通院する患者から、40歳代〜60歳代の男女各5名を募集した。試験協力者10名の年齢構成は、男性が、62歳、57歳、44歳各1名、42歳2名であり、女性が、63歳、52歳各1名、50歳3名であり、全体の平均年齢は51.2歳である。
【0016】
試験協力者10名の全員に対し、1粒当たり被験物質250mgを内包したソフトカプセル2粒を1日分として食前に摂取することを、2ヶ月間連続した。そして被験物質の摂取前および連続摂取2ヶ月後の血液を採取し、その検血の血液流動性を、ライカ製ATC−2000による明視法で測定した。
【0017】
被験物質の摂取前に、試験協力者10名の全員から、消化性のタンパク質、糖質、脂質等の成分が赤血球の間隙に溜り、赤血球が10個以上連なったルロー(連銭)形成を主体に、プラーク形成及び尿酸結晶等が混在する血液流動性の停滞があることを確認した。しかし試験協力者10名は、血液流動性の停滞以外の肝機能、腎機能及び一般尿検査には異常は認められなかった。
【0018】
なお、すべての試験は、ヘルシンキ宣言の精神に則り、試験前に被験物質の肝油を主成分とする試験食品の生理作用、機能性、安全性及び試験目的と実施方法等について説明した。また、試験参加は、如何なる時点でも中止を受け入れる自由意思であることを説明後、同意書が得られたヒト試験協力者のみを対象とした。
【0019】
血球像から、5機能(1.消化・吸収、2.栄養摂取、3.解毒・排泄、4.活性酸素、5.免疫力)における血液流動性改善効果の有無を各機能ごとに3段階評価した。正常をA評価とし、効果の程度が低くなるに従って評価をB〜Cとした。
【0020】
以下に項目別・血液分析評価(A、B、C)の基準を上げておく。各項目についてC評価が与えられた血液像の代表例を添付したので参照されたい。
【0021】
1.消化・吸収機能
A: 赤血球の重なりがない(接しているのは良い)。
B: 赤血球の3〜5の小さな重なり(小さなルロー)がない。
C :多数の赤血球が重なり、大きなルロー(連銭形成)、あるいは大きな凝集を形成している(図6:ルローの例)。
【0022】
2.栄泰摂取機能
A:赤血球の大きさが均一である。標的細胞がないか、ときに標的細胞や楕円赤血球を認める。
B:赤血球の大きさがやや不均一(大小不同)。
C:赤血球の大きさが不均一(大小不同)。ときに標的細胞や楕円赤血球を認める(図7:大小不同の例)。
【0023】
3.解毒・排泄機能
A:尿酸やコレステロール、プラーク等を認めない。
B:尿酸やコレステロール、プラーク等の小さなものを認める。
C:尿酸やコレステロール、プラーク等の大きなものを多数認める(図8:プラークの例)。
【0024】
4.活性酸素機能
A:赤血球がまん丸で正円形である。
B:赤血球がやや固く、角ばった感じがある。
C:赤血球が変形し、ときに有棘赤血球を認める(図9:有棘赤血球の例)。
【0025】
5.免疫力機能
A:白血球の大きさが赤血球の2倍であり、動きが活発である。
B:白血球の大きさが赤血球の1〜2倍であり、動きはあるが活発ではない。
C:白血球の大きさが赤血球より小さく、動きは鈍いか、あるいは殆ど動きがない(図10:不全白血球の例)。
【0026】
その結果、消化・吸収機能については、図1に示す通り、女性は本発明物質の摂取前は5名全員がC評価であったのが、本発明物質を連続摂取した2ヶ月後には、A評価4名、B評価1名と、有為な改善効果が認められた。以下同様に男性は、5名全員がC評価であったのが、全員がA評価となり、これも有為な改善効果が認められた。
【0027】
栄養摂取機能については、図2に示す通り、女性はB評価2名、C評価3名であったのが、B評価の2名は顕著な変化が認められなかったものの、C評価3名のうち1名はA評価、2名はB評価となり、有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価1名、C評価4名であったのが、B評価の1名並びにC評価の1名は顕著な変化が認められなかったものの、B評価の残りの3名のうち、1名はA評価、2名はB評価となり、これは有為な改善効果が認められた。
【0028】
解毒・排泄機能については、図3に示す通り、女性はB評価1名、C評価4名であったのが、B評価の1名はC評価に低下し、C評価4名のうちの1名には顕著な変化が認められなかった。しかしC評価の残りの3名のうち、2名はA評価、1名はB評価となり、有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価1名、C評価4名であったのが、B評価の1名はC評価に低下し、C評価4名のうちの2名には顕著な変化が認められなかった。そしてC評価の残りの2名のうち、1名はA評価、1名はB評価となり、これは改善効果が低めであった。
【0029】
活性酸素機能については、図4に示す通り、女性は5名全員がC評価であったのが、A評価3名、B評価1名、変化なしが1名となり、これについては有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価1名、C評価4名であったのが、5名全員がA評価となり、これも有為な改善効果が認められた。
【0030】
免疫力機能については、図5に示す通り、女性はB評価2名、C評価3名であったのが、5名全員がA評価となり、有為な改善効果が認められた。また男性は、B評価2名、C評価3名であったのが、これも5名全員A評価となり、有為な改善効果が認められた。
【0031】
以上、詳述した通り、深海鮫の肝臓から抽出した肝油から精製した被験物質を2ヶ月間連続摂取したところ、試験協力者10名の全例において、血液像のルロー形成が消滅し、項目別血液分析評価でも、血液流動円滑化の評価が得られた。これにより、本発明物質の血液流動性改善効果が証明された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による深海鮫の肝臓からの抽出物は、周知の技術を適用して注射薬や内服薬として、医薬品、医薬部外品、化粧品などにも適用可能であることはもとより、飲食品に添加して、血液流動性を改善するための機能性食品として使用することができる。また、これらの成分以外に、日常不足しがちなビタミン、ミネラル及びハーブ類などを補助的に加えても良い。なお、機能性食品とは、栄養素を一種以上含む天然物およびその加工物を指し、生体機能の調節など、生理面での働き(3次機能)を十分に発揮するように製造された食品として定義されている(平成15年7月30日、第一出版株式会社発行、健康・栄養食品アドバイザリー・スタッフ・テキストブック、第92、93頁を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】消化・吸収機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図2】栄養摂取機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図3】解毒・排泄機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図4】活性酸素機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図5】免疫力機能に関わる本発明物質摂取前後の評価の変化を示すグラフである。
【図6】消化・吸収機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図7】栄養摂取機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図8】解毒・排泄機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図9】活性酸素機能に関わるC評価の血液像の1例である。
【図10】免疫力機能に関わるC評価の血液像の1例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深海鮫の肝臓からの抽出物を含有することを特徴とする血液流動性改善作用をもたらす薬剤。
【請求項2】
深海鮫の肝臓からの抽出物から精製したスクアレンまたはスクアランの少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする血液流動性改善作用をもたらす薬剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬剤を含有することを特徴とする血液流動性改善作用をもたらす機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−222686(P2008−222686A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67751(P2007−67751)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(507086309)株式会社 ロフティ (1)
【Fターム(参考)】