血管表示装置
【課題】部位に限定されることなく血管の走行を表示することができる血管表示装置を提供する。
【解決手段】近赤外線照射手段によって皮膚表面に近赤外線を照射された状態で、該皮膚表面を近赤外線撮影することによって該皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置1において、第1撮影部11および第2撮影部12のうちの少なくともいずれか一方が、該第1撮影部11が有する光学系の光軸である第1光軸と該第2撮影部12が有する光学系の光軸である第2光軸が前記皮膚表面にて交差するように、該第1光軸の位置と該第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする。
【解決手段】近赤外線照射手段によって皮膚表面に近赤外線を照射された状態で、該皮膚表面を近赤外線撮影することによって該皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置1において、第1撮影部11および第2撮影部12のうちの少なくともいずれか一方が、該第1撮影部11が有する光学系の光軸である第1光軸と該第2撮影部12が有する光学系の光軸である第2光軸が前記皮膚表面にて交差するように、該第1光軸の位置と該第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
皮膚に近赤外線を照射し、近赤外線が照射された該皮膚を撮影することによって該皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の血液中にあるヘモグロビンは、近赤外線を吸収する性質があることが知られている。現在、この性質を利用して血管がどのように延びているか(以下、血管の走行と称する)を認識しやすくする装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−148853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、皮膚に近赤外線を照射し、そこから反射された近赤外線を2か所に固定されたカメラによって撮影し、血管を表示する装置が開示されている。この装置によれば皮膚の色によって血管の走行が視認しにくい場合であっても、血管の走行を認識することができる。
【0005】
しかし、特許文献1の装置のようにカメラを固定すると、腕の太さによってはうまく撮影できない問題がある。また、特定の部位を想定してカメラの位置を設定している場合には、それ以外の部位に対応することができないという問題がある。
【0006】
上記事情に鑑み本発明は、部位に限定されることなく血管の走行を表示することができる血管表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の血管表示装置は、
近赤外線照射手段によって皮膚表面に近赤外線を照射された状態で、その皮膚表面を近赤外線撮影することによってその皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置であって、
光学系を有しその光学系を用いて近赤外線撮影を行う第1撮影部、および光学系を有しその光学系を用いて近赤外線撮影を行う第2撮影部を含む撮影手段と、
上記第1撮影部が撮影した近赤外線映像である第1映像を表示する第1画像表示手段、および上記第2撮影部が撮影した近赤外線映像である第2映像を表示する第2画像表示手段を有する画像表示手段とを備え、
上記第1撮影部および上記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
その第1撮影部が有する光学系の光軸である第1光軸とその第2撮影部が有する光学系の光軸である第2光軸が上記皮膚表面にて交差するように、その第1光軸の位置とその第2光軸の位置の相対関係およびその第1光軸の方向とその第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする。
【0008】
この血管表示装置によれば、対象者の状況に合わせて第1撮影手段および第2撮影手段の位置または向きを調整して、第1撮影手段および第2撮影手段が同じ場所を撮影するようにすることができる。
【0009】
ここで、上記血管表示装置は、
上記第1撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第1ガイドビーム照射手段と、
上記第2撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第2ガイドビーム照射手段とを備え、
上記第1ガイドビーム照射手段が照射する可視光と上記第2ガイドビーム照射手段が照射する可視光を皮膚表面で交差させることによって、上記第1光軸と上記第2光軸を上記皮膚表面で交差させることができるものであってもよい。
【0010】
この血管表示装置によれば、第1ガイドビーム照射手段および第2ガイドビーム照射手段により照射されるビーム状の可視光を基準にして、第1撮影手段および第2撮影手段が同じ場所を撮影するように調整することができる。
【0011】
また、上記血管表示装置は、
上記第1撮影部および上記第2撮影部が、
上記第1光軸と上記第2光軸が同一平面である光路平面内に含まれるように配置されたものであり、
上記第1撮影部および上記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
上記第1光軸と上記第2光軸が上記光路平面内に含まれた状態を維持したまま、その第1光軸の位置とその第2光軸の位置の相対関係およびその第1光軸の方向とその第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであってもよい。
【0012】
この血管表示装置によれば、上記第1撮影手段および上記第2撮影手段の移動方向と向きを制限しているため、簡単な操作で、第1撮影手段および第2撮影手段が同じ場所を撮影するように調整することができる。
【0013】
さらに、上記血管表示装置は、
上記第1光軸の位置と上記第2光軸の位置の相対関係およびその第1光軸の方向とその第2光軸の方向の相対関係を保った状態で、その第1光軸とその第2光軸の双方の位置および方向を変更するための調整機構を備えたものであってもよい。
【0014】
この血管表示装置によれば、前記調整機構を用いて第1撮影手段および第2撮影手段の位置および向きをより適切に調整することができる。
【0015】
また、上記血管表示装置は、
上記画像表示手段が、上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段が一体に形成されたものであり、その第1画像表示手段からの第1光およびその第2画像表示手段からの第2光のうち、その第1光のみを所定の第1の視点に向かわせるとともにその第2光のみを所定の第2の視点に向かわせる視差形成光学部材を有するものであってもよい。
【0016】
この血管表示装置は、左右の眼に上記第1映像と第2映像を別々に表示することができるものである。これらの映像から使用者が適切な視差情報を得ることができれば血管の位置を知覚することができる。すなわち、使用者は上記画像表示手段を見ながら、自身が血管の位置を知覚できるように上記撮影手段の位置や向きを調整することができる。なお、上記視差形成用光学部材は、上記第1光および上記第2光のうち、上記第1の視点にはその第1光のみが向かい上記第2の視点にはその第2光のみが向かうように、その第1光およびその第2光の進路を変更するものであってもよいし、その第1光の一部およびその第2光の一部を遮光するものであってもよい。
【0017】
加えて、上記血管表示装置は、
上記第1光軸の位置と上記第2光軸の位置の情報を取得する位置情報取得手段と、
上記第1光軸の方向と上記第2光軸の方向の情報を取得する方向情報取得手段と、
上記第1光軸および上記第2光軸が上記皮膚表面の同じ場所で交差している状態において、上記位置情報取得手段および上記方向情報取得手段によって取得された情報を用いてその同じ場所の下にある血管の深さを推定するための情報を上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させる深さ情報表示手段とを備えたものであってもよい。
【0018】
この血管表示装置によれば、血管の深さを推定するための情報を表示して、使用者が血管の走行を把握しやすくすることができる。
【0019】
また、上記血管表示装置は、
上記深さ情報表示手段が、上記位置情報取得手段および上記方向情報取得手段によって取得された情報を用いてその同じ場所の下にあって、上記第1光軸および上記第2光軸のうちのいずれか一方の光軸上にある血管の深さを推定するための情報を上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示させるものであってもよい。
【0020】
この血管表示装置によれば、上記第1光軸および上記第2光軸に沿って血管が配置されるように上記撮影手段の位置および方向を調整することにより、血管の深さの推定に必要な条件を限定して、血管の深さを推定することができる。
【0021】
さらに、上記血管表示装置は、
上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示されている近赤外線映像について、その映像中の上記同じ場所の下にある血管の位置の情報を入力する入力手段を備え、
上記深さ情報表示手段が、
上記位置情報取得手段および上記方向情報取得手段によって取得された情報と、上記入力手段によって入力された上記血管の位置情報を用いてその血管の深さを推定するための情報を上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させるものであってもよい。
【0022】
この血管表示装置によれば、上記入力手段から入力される情報によって血管の位置を推定するための情報を取得して、血管の深さを推定するための情報を表示させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の血管表示装置によれば、部位に限定されることなく血管の走行を表示することができる血管表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の血管表示装置を示す斜視図である。
【図2】メイン撮影ユニットおよびサブ撮影ユニットを示す図である。
【図3】撮影ユニットの撮影方向を調整している様子を示す図である。
【図4】皮膚表面に照射される近赤外線と、この反射光を示す断面図である。
【図5】近赤外線によって撮影された皮膚の一例を示す図である。
【図6】前腕部の皮膚の下に走る動脈および静脈を示す図である。
【図7】視点を変えて皮膚表面を撮影する様子を示す図である。
【図8】図7に示す5つの視点と、その各視点において撮影された画像を示す図である。
【図9】血管表示装置1の第1変形例における画像表示装置の仕組みを示す図である。
【図10】図9に示す仕組みを右眼の場合と左眼の場合に分けて示す図である。
【図11】ピンホールカメラモデルを示す図である。
【図12】メイン撮影ユニットおよびサブ撮影ユニットによって皮膚表面が撮影されている様子を示す図である。
【図13】図12における位置関係を、メイン撮影ユニットを中心としたカメラ座標系によって示す図である。
【図14】付加情報を表示させるプログラムの流れを示すフローチャートである。
【図15】図14に示すフローチャートに従って目盛が表示された様子を示す図である。
【図16】血管表示装置の第2変形例の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明の血管表示装置の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態の血管表示装置を示す斜視図である。
【0027】
図1に示す血管表示装置1は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12(本発明の撮影手段の一例に相当)と、これら2つの撮影ユニットを支える長方形の外枠13を備えている。なお、説明の便宜のため、図1の右下にX軸、Y軸、およびZ軸の互いに直交する三軸からなる三次元座標系を示し、以降はこの座標系を適宜参照して説明する。
【0028】
メイン撮影ユニット11(本発明の第1撮影部に相当)は、平らな直方体の形状をしており、近赤外線撮影が可能なデジタルビデオカメラ(以下、単にカメラと称する。)と、このカメラの映像を表示するための液晶表示装置と、このメイン撮影ユニット11を外枠13に取り付けるためのシャフトを備えている(図2参照)。カメラはメイン撮影ユニット11に内蔵されており、このカメラのレンズがメイン撮影ユニット11の一方の面の中央に配置されている。また、液晶表示装置は、このレンズが配置された面とは反対側の面に配置されている。以下、レンズが配置されている面をおもて面と称し、液晶表示装置が配置されている面を裏面と称する。シャフトはメイン撮影ユニット11の長手方向の両端に設けられている。
【0029】
サブ撮影ユニット12(本発明の第2撮影部に相当)は、上記メイン撮影ユニット11と同様の形状のものであり、近赤外線撮影カメラと、液晶表示装置と、シャフトを備えている。これらの構成については、メイン撮影ユニット11と同様であるため、説明を省略する。なお、以下、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12を、撮影ユニットと総称することがある。撮影ユニット11,12の詳細については図2を用いて後述する。
【0030】
長方形の外枠13は、長手方向の辺を構成する2本のガイドレール132と、短手方向の辺を構成する2本の支柱131を備えている。なお、以降は、ガイドレール132がX軸に平行であり、支柱131がY軸に平行であるものとして説明を続ける。
【0031】
2つのガイドレール132には、長手方向に沿って隙間133が形成されている。この隙間133には、撮影ユニット11,12の両端に設けられたシャフトがそれぞれ嵌まっており、撮影ユニット11,12は、2つのガイドレール132に挟まれた状態になっている。ここで撮影ユニット11,12は、上記シャフトがY軸に平行な状態を保ったまま、ガイドレール132の隙間133に沿った移動と、シャフトを中心軸とした回転ができるようになっている。すなわち、撮影ユニット11,12は、2つのガイドレール132の間でX軸方向に移動(図中の左右方向の矢印参照)による位置の調整ができるようになっており、Y軸に平行な軸を中心とした回転(図中のネジ14の周囲に示す矢印参照)による向きの調整ができるようになっている。
【0032】
上記シャフトの先端には、撮影ユニット11,12をガイドレール132に固定する調整用のネジ14が取り付けられている。この調整用のネジ14を緩めると撮影ユニット11,12の位置および向きを調整することができ、調整用のネジ14を締めると撮影ユニット11,12の位置および向きを固定することができる。
【0033】
続いて、図2を用いてメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12について説明する。同図は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12を示す図である。なお、この図では、双方のおもて面がZ軸方向に向いている状態が示されている。
【0034】
図2(a)には、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12のおもて面が示されている。
【0035】
メイン撮影ユニット11のおもて面には、このおもて面のほぼ全体に均一に配置された近赤外線LED(Light Emitting Diode)111と、中央に配置されたレンズ112と、上下に配置された2つの可視光LED113a,113b(本発明の第1ガイドビーム照射手段の一例に相当)が設けられている。2つの可視光LED113a,113b、および上記レンズ112は、Y軸方向に一直線に並んで配置されている。
【0036】
サブ撮影ユニット12のおもて面には、メイン撮影ユニット11と同様に近赤外線LED121と、レンズ122と、可視光LED123a,123b(本発明の第2ガイドビーム照射手段の一例に相当)が設けられている。これらの構成については、メイン撮影ユニット11と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
図2(b)には、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の裏面が示されている。メイン撮影ユニット11の裏面には、液晶表示装置114(本発明の第1画像表示手段の一例に相当)が設けられている。また、サブ撮影ユニット12の裏面にも、液晶表示装置124(本発明の第2画像表示手段の一例に相当)が設けられている。
【0038】
図2(a)および(b)には、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12のそれぞれの長手方向に突出したシャフト115,125が示されている。このシャフト115,125が、ガイドレール132の隙間133に嵌め込まれ、Y軸に平行な状態を保っている。なお、撮影ユニット11,12のおもて面の向きは、このシャフト115,125の中心軸に対して直交する向きになっている。
【0039】
近赤外線LED111,121は、近赤外線撮影に必要となる近赤外線を皮膚に照射するためのものである。なお、この近赤外線LED111,121は、近赤外線のみを照射するものに限らず、例えば近赤外線以外の波長の光も併せて照射するものであってもよい。
【0040】
レンズ112,122は、撮影ユニット11,12の内部に設けられたカメラのレンズである。このカメラは、携帯電話等に用いられる小型のものであり、可視光から近赤外線までの波長の光に反応する受光素子を有する。レンズ112、122には、近赤外線以外の波長の光を除去するために近赤外線透過フィルタが装着されている。すなわち、撮影ユニット11,12は一般的な小型カメラに近赤外線のみを受光させることによって、近赤外線撮影をできるようにしたものである。このカメラで撮影された近赤外線映像は、図2(b)に示す裏面に設けられた液晶表示装置114,124に表示される。なお、レンズ112,122の光軸は、撮影ユニット11,12のおもて面に対して垂直になっている。
【0041】
ここで、上記説明した構成の撮影ユニット11,12の光軸について考える。この光軸は、撮影ユニット11,12のおもて面にあるレンズ112,122の中心を通り、かつシャフト115,125の中心軸に対して直交する軸である。
【0042】
撮影ユニット11,12がその向きを変えずにX軸方向に移動した場合、上記光軸はX軸方向、すなわち移動前のシャフト115,125に対して直交する方向に移動する。また、撮影ユニット11,12がその位置を変えずにシャフト115,125を中心軸として回転した場合、上記光軸は、シャフト115,125の延在方向に直交する平面内で方向が変わることになる。すなわち、上記光軸は、撮影ユニット11,12の移動および回転によって、シャフト115,125に対して直交する平面内を移動することになる。以降、この平面を光路平面と称する。
【0043】
すなわち、撮影ユニット11,12は、X軸方向の移動とY軸に平行なシャフト115,125を中心軸とした回転が可能であるが、これらの移動および回転によって上記光路平面が変化することはない。
【0044】
本実施形態の血管表示装置1に設けられたメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12は、それぞれのX軸方向の位置が異なるだけである。すなわち、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の位置関係は、上記説明したX軸方向に移動した場合と同様に考えることができる。したがって、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の双方の光路平面は同一の平面であり、双方の光軸が同一平面内に含まれることになる。このことにより、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12が同じ領域を撮影できるよう双方の光軸を調整しやすくなっている。
【0045】
メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の双方の光軸を調整する場合、使用者は光軸を見ることができないため、それぞれに設けられた液晶表示装置114,124を見て調整することが考えられる。しかし、二つの画像を見比べながら光軸を調整すると作業に時間がかかり、患者の負担になるという問題が生じる。上記可視光LED113,123は、撮影ユニット11,12の光軸を調整しやすくし、この問題を解消するために設けられたものである。
【0046】
可視光LED113,123は、撮影ユニット11,12のおもて面から垂直な方向にレーザー光を照射するものである。この可視光LED113,123は、図2(a)に示すように、撮影ユニット11,12のおもて面の上下に一つずつ配置されている。可視光LED113,123とレンズ112,122は、撮影ユニット11,12のおもて面においてY軸方向に一直線になるように配置されている。
【0047】
メイン撮影ユニット11のおもて面のうちシャフト115の延在方向の一端側(図2における上縁側)に設けられた可視光LED113aは、サブ撮影ユニット12のおもて面のうちシャフト125の延在方向の一端側(図2における上縁側)に設けられた可視光LED123aと対になっており、それぞれの照射するレーザー光が交差するようになっている。また、メイン撮影ユニット11において上記可視光LED113aが設けられた端とは反対側の端(図2における下縁側)に設けられた可視光LED113bは、サブ撮影ユニット12において上記可視光LED123aが設けられた端とは反対側の端(図2における下縁側)に設けられた可視光LED123bと対になっており、それぞれの照射するレーザー光が交差するようになっている。これらのレーザー光を交差させたとき、その交点を結んだ直線の中心点がメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12のそれぞれ光軸の交点になる。したがって、これらのレーザー光の交点を基準として上記光軸の交点の位置を推定することができ、液晶表示装置114,124を見ることなく、見えない光軸をある程度調整することができる。この一例について図3を用いて説明する。
【0048】
図3は、撮影ユニット11,12の撮影方向を調整している様子を示す図である。なお以下では、皮膚表面がXY平面に平行な平面であるものと仮定して説明する。
【0049】
図3には、前腕部AMと、この前腕部AMに対して使用されている本実施形態の血管表示装置1が示されている。また、各撮影ユニット11,12に設けられた可視光LED113,123から手首側と肘側にそれぞれレーザー光GBが照射されている様子が示されている。手首側に照射された二本のレーザー光GBは、皮膚の真上で交差している。同様に肘側に照射された二本のレーザー光GBも、皮膚の真上で交差している。上記説明したように、それぞれのレーザー光GBの交点を結ぶ直線の中心点が光軸の交点となることから、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12のそれぞれ光軸の交点は、皮膚の真上であることがわかる。皮膚表面を基準に視差画像を撮影したい場合は、このレーザー光GBの交点が皮膚表面で交差するように、各撮影ユニット11,12の位置および向きを調整すればよい。
【0050】
上記説明では、皮膚表面がXY平面に平行なものと仮定して説明した。皮膚表面は実際には平面ではないが、本実施形態の血管表示装置1は血管の位置を正確に測定するためのものではないため、ある程度狙い通りに光軸を調整することができればよい。また、例えば図3において手首を持ち上げた場合のように、XY平面に対して皮膚が傾いている場合は、レーザー光による2つの交点が皮膚表面で交差しなくなる。この場合は、2つの交点が皮膚表面で交差するように、前腕部AMの位置を調整するか、血管表示装置1の全体の位置や向きを調整すればよい。
【0051】
図3を用いて説明した作業によって撮影ユニット11,12の位置および向きを調整すると、続いて近赤外線LED111,121によって皮膚表面に近赤外線が照射され、近赤外線撮影が行われる。この原理について図4を用いて説明する。同図は、皮膚表面に照射される近赤外線と、この反射光を示す断面図である。なお、この図4では、近赤外線の強さの違いを線の太さの違いによって表している。
【0052】
図4(a)には、前腕部AMに対し近赤外線IRが照射されている様子が示されており、図4(b)には、その反射光が示されている。近赤外線IRは、皮膚SKに当たるとその一部が反射される。さらに、近赤外線IRは、皮膚SKを透過して進むにつれてその一部が反射されていく。ここで、近赤外線IRが血管BVに当たると、血中のヘモグロビンによって近赤外線IRが吸収されてしまうため、近赤外線IRが反射されなくなる。すなわち、近赤外線IRが血管BVに当たらない場合と比較して、反射される近赤外線IRが弱くなる。図4(b)には、前腕部AMの血管BVに対して照射された近赤外線IRの反射光が、他の部分に照射された部分の反射光と比較して弱くなっている様子が示されている。この反射光を近赤外線撮影することにより、血管BVを表示することができる。
【0053】
図5は、近赤外線によって撮影された皮膚の一例を示す図である。
【0054】
図5(a)には、前腕部AMが示されており、皮膚の下にある動脈ARおよび静脈VEが点線で示されている。また、図5(b)には、近赤外線を用いて撮影された前腕部AMが示されており、実際には暗く表示される血管が図中のハッチングによって示されている。上記説明したように、血管の部分は暗く表示されるため、これによって血管の走行を把握することができる。
【0055】
ここで、図6から図8を用いて、カメラの位置(以下、視点と称することがある)および向きに応じて撮影される画像がどのように変化するかについて説明する。
【0056】
図6は、前腕部AMの皮膚の下に走る動脈ARおよび静脈VEを示す図である。図6(a)には、図5(a)と同じく、前腕部AMとその皮膚の下に走る血管が示されている。また、図6(b)には、図6(a)に示す動脈ARが左下がりのハッチングで示され、図6(c)には、図6(a)に示す静脈VEが右下がりのハッチングで示されている。静脈VEは動脈ARよりも皮膚に近い部分を走っている。ここで、図6(a)に示す前腕部AMに対し、メイン撮影ユニット11を横切るように移動させた場合について、図7および図8を用いて説明する。
【0057】
図7は、視点を変えて皮膚表面を撮影する様子を示す図である。
【0058】
図7には、5つの視点から前腕部AMを撮影している様子が示されている。ここで、メイン撮影ユニット11は同じ位置を撮影するよう、位置および向きを調整されているものとする。図7には、皮膚に近い位置に静脈VEが走っている層があることが、右下がりのハッチングで示されている。さらに、皮膚から遠い位置に動脈ARが走っている層があることが、左下がりのハッチングで示されている。
【0059】
図8は、図7に示す5つの視点と、その各視点において撮影された画像を示す図である。
【0060】
図8には、図7に示す5つの視点によって撮影された画像が示されている。なお、視点と画像の対応関係をわかりやすくするため、図7に示すメイン撮影ユニット11を再度示している。この画像群を左から右に順にみていくと、皮膚表面に近い位置にある静脈VEは画面の中心からあまり動いていないが、皮膚表面から遠い位置にある動脈ARは大きく動いている。この動きの違いは、メイン撮影ユニット11との距離の違いによるものである。すなわち、この例のように同じ位置を撮影している場合、撮影された画像群においては皮膚直下にある血管は小さく動き、皮膚から遠いほど大きく動くことになる。これらの動きの差によって、血管の深さをある程度把握することができる。
【0061】
上記説明ではメイン撮影ユニット11を使用した例を挙げたが、メイン撮影ユニット11ではなくサブ撮影ユニット12を用いても同じ画像を得ることができる。したがって、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の双方を適切な位置および向きに調整すれば、2つの画像を比較しながら血管の深さを推定することができる。
【0062】
例えば、メイン撮影ユニット11を調整して、対象となる血管が液晶表示装置114の中心をY軸方向に走るよう表示させた上で、サブ撮影ユニット12の位置および向きを調整するという調整方法がある。このように調整すると、サブ撮影ユニット12に表示される血管は、その深さに応じて中心部分からずれる距離が変わるため、深さを推定しやすくなる。すなわち、メイン撮影ユニット11を対象となる血管の概要を把握するために使用し、サブ撮影ユニット12を対象となる血管の深さを把握するために使用するということができる。
【0063】
上記説明したメイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の使用方法は、一例であって他の使用方法で血管の情報を得てもよい。すなわち、本実施形態の血管表示装置1は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12によって異なる位置から複数の画像(視差画像)を撮影し、これらの画像を基に血管の深さの情報を得ることができるものである。
【0064】
上記説明した血管表示装置1によれば、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12に設けられた可視光LED113,123から照射されるレーザー光の交差位置を指標にして、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12が同じ部分を撮影するように調整することができる。この際、ガイドレール132およびシャフト115,125によって、各撮影ユニット11,12が一つの軸に対する移動と一つの軸に対する回転しかできないように制限しているため、各撮影ユニット11,12の位置および向きの調整が容易である。なお、本実施形態の血管表示装置1では液晶表示装置114,124に画像を表示させているが、外部のモニター等を用いてこれらの画像を表示させてもよい。また、近赤外線LED111,121を各撮影ユニット11,12と別々にしてもよい。
【0065】
ここで、上記説明した血管表示装置1の第1変形例について説明する。以下説明する第1変形例は、視点によって異なる画像を知覚させることができる画像表示装置を用いて、使用者の左右の眼に別々の画像を知覚させ、使用者が容易に視差情報を取得できるようにしたものである。まず、図面を用いて、この画像表示装置の概略を説明し、この説明を踏まえて血管表示装置1の第1変形例について説明する。
【0066】
図9は、血管表示装置1の第1変形例における画像表示装置の仕組みを示す図である。また、図10は、図9に示す仕組みを右眼の場合と左眼の場合に分けて示す図である。図9には、画素を発光させて画像を表示する液晶パネルLCPと、この液晶パネルLCPを見る使用者側に設けられたスリットSLが示されている。また、このスリットSL越しに液晶パネルLCPを見る使用者PEが示されている。なお、このスリットSLは液晶によって形成されており、光を遮る領域の位置や大きさを調整したり、光を遮らないようにして液晶パネルLCPの全体を直接見せたりすることができるようになっている。
【0067】
図9に示す使用者PEが液晶パネルLCPをスリットSL越しに見ると、使用者PEの右眼REからは領域RA1〜RA4(右下がりのハッチングで示す部分)が見え、右眼REからは領域LA1〜LA4(左下がりのハッチングで示す部分)が見える。図10(a)には、使用者PEの右眼REから領域RA1〜RA4が見えることが示されており、(b)には、使用者PEの左眼LEから領域LA1〜LA4が見えることが示されている。すなわち、このスリットSLによって、液晶パネルLCPを右眼用の画像を表示する領域RA1〜RA4と左眼用の画像を表示する領域LA1〜LA4とに分けることができる。これらの領域を用いれば、右眼用の画像と左眼用の画像を一つの画像表示装置によって使用者に知覚させることができる。なお、光を遮る領域の位置を調整することによって、より適切にこれらの領域を分けることができる。また、ここで説明した画像表示装置は視差バリア方式によるものであるが、このような右眼用の画像と左眼用の画像を一つの画像表示装置によって使用者に知覚させることができるものであれば、例えばレンティキュラ方式によるものであってもよい。
【0068】
ここで、血管表示装置1の第1変形例について説明する。この第1変形例は、上記説明した仕組みを有する画像表示装置をメイン撮影ユニット11の液晶表示装置114として採用したものである。なお、この第1変形例では、この画像表示装置が、本発明の第1画像表示手段および第2画像表示手段が一体に形成された画像表示手段の一例に相当する。また、この画像表示装置のスリットSLが本発明の視差形成光学部材の一例に相当する。
この液晶表示装置114によって、例えば、メイン撮影ユニット11のカメラが撮影した血管を右眼に知覚させ、サブ撮影ユニット12のカメラが撮影した血管を左眼に知覚させることができる。このとき、使用者が自然に眼にする視差画像と同じような画像を右眼と左眼のそれぞれに知覚させれば、使用者は容易に血管の深さを把握することができる。また、使用者自身が容易に血管の深さを把握することができるように、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114を見ながら各撮影ユニット11,12の位置や向きを調整することもできる。さらに、液晶表示装置を2つ使用する場合、両方の画面を見るため視点を移動させる必要があるが、本第1変形例の場合このような視点の移動が少なくてすむ。以上が、第1変形例についての説明である。
【0069】
血管の位置を正確に知るために固定したカメラを用いることが考えられるが、カメラを固定してしまうと特定の部位しか使用できなくなるおそれがある。また、カメラの光軸が皮膚表面に対して水平に近い状態になった場合には、同じ深さを走る血管が重なって表示されてしまい、適切な視差情報を得ることができないことが考えられる。本実施形態の血管表示装置1では、撮影ユニット11,12の位置や向きを調整できるため、様々な部位に使用することができる。対象によっては、血管表示装置1全体の位置および角度を調整することが可能な点滴架台等(本発明の調整機構の一例に相当)に固定して使用することも可能である。撮影ユニット11,12を移動できるようにしたことにより、血管の正確な位置を計測しにくくなるおそれがあるが、静脈注射等の医療行為においては、視差画像から血管の位置や皮膚からの深さがおおまかにわかればそれで十分有用であるため、カメラを常時固定しておく必要はない。また、情報処理機器を用いて画像処理のような複雑な計算をさせることにより、血管の位置を計測する方法も考えられるが、装置が大がかりになり、コストもかかってしまう。本実施形態の血管表示装置1は、簡易な構成であり、コストもかからないため、より多くの医療現場への普及が見込まれる。
【0070】
本実施形態の血管表示装置1は、近赤外線を使用しており、患者を傷つけることがなく、患者への負担を少なくすることができる。また、高度の肥満者や病気で皮膚の色が変わった患者のように、血管が視認しにくい場合に有用である。さらに、医療に従事したばかりの初心者が失敗してしまう機会を減らし、患者に苦痛を与える機会を低減することができる。本実施形態の血管表示装置1は、実際に注射針を刺しながら使用してもよく、この際、注射針が近赤外線撮影によって視認可能な素材で構成されていることが好ましい。具体的には、近赤外線を人体(例えば皮膚や血管)よりも吸収しやすい素材や、反対に近赤外線を人体(例えば皮膚や血管)よりも反射しやすい素材を使用した注射針であることが好ましい。近赤外線を用いているため、例えば超音波を使用した医療機器を併用することも可能である。
【0071】
ここまで、本発明の血管表示装置1の基本的な構成について説明した。次に、この血管表示装置1の第2変形例について説明する。
【0072】
以下説明する第2変形例は、上記説明した血管表示装置1の撮影ユニット11,12にその位置および向きを知るためのセンサを備えたものであり、これらのセンサからの情報に基づいて血管の深さを推定するための情報を表示するものである。カメラによって撮影される対象とその撮影内容は、カメラと対象との位置関係、カメラの向き、カメラのレンズ等のパラメータと関連している。これらの情報を用いることで、例えば、図8に示すような視差による血管の移動量と、実際の血管の深さをの関係を導くことができる。以下説明する第2変形例は、ピンホールカメラモデルに基づいて、カメラに関する情報と、撮影内容から、血管の奥行きに関する情報を提示するものである。ここで、ピンホールカメラモデルに基づく血管の深さと視差画像の関係について説明する。
【0073】
図11は、ピンホールカメラモデルを示す図である。
【0074】
図11(a)には、Xc軸、Yc軸、Zc軸の三軸からなる三次元座標系と、u軸、v軸の二軸からなる画像平面IPが示されている。この座標系はカメラ座標系とも呼ばれ、カメラの視点を原点とし、その光軸をZc軸とする座標系である。このカメラによって撮影された三次元の座標は、原点からZc軸方向に距離fだけ離れた画像平面IP上の座標に投影される。この図には、三次元上の点P(Xp,Yp,Zp)が、画像平面IPの点p(f・Xp/Zp,f・Yp/Zp)に投影されることが示されている。ここで、原点から画像平面IPまでの距離fは、カメラの内部パラメータであり、レンズの性能等によって定められる。すなわち、カメラの光軸の向き、カメラと撮影対象の位置関係、カメラパラメータによって、画像平面IP内に投影される座標が決まる。カメラが移動したり、向きが変わると、カメラ座標系が移動するため、画像平面IP内に投影される座標が変わる。なお、以降の説明では、パラメータfは事前に得られているものとする。
【0075】
図11(b)には、図11(a)をXcZc平面に投影した図が示されている。上記説明した血管表示装置1は、撮影ユニット11,12がY軸方向に移動できないように制限されている。すなわち、図11(a)に示すカメラ座標系においては、Yc軸を省略してXc軸およびZc軸を考慮すればよいため、以降の説明には図11(b)に示すXcZc平面を用いる。
【0076】
次に、図12を用いてメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12によって血管を撮影している例を説明する。さらに図13を用いて、この図12の状況に対して図11(b)に示すXcZc平面のピンホールカメラモデルを当てはめて説明する。なお、説明をわかりやすくするため、Y軸に平行な血管を対象とした場合について説明する。
【0077】
図12は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12によって皮膚表面が撮影されている様子を示す図である。
【0078】
図12(a)には、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12と、これらの撮影ユニット11,12によって撮影されている皮膚SKと、その皮膚SKの下にある血管BVがXZ平面による断面図によって示されている。また、図12(b)には、図12(a)に示すメイン撮影ユニット11が撮影した血管BVが表示され、図12(c)には、図12(a)に示すサブ撮影ユニット12が撮影した血管BVが表示されている。なお以下では、図12(b)と図12(c)に表示されているそれぞれの血管BVのu軸座標の差を、移動量duと称することがある。
【0079】
図12(a)には、メイン撮影ユニット11はX軸に対して角度θ1だけ傾いており、サブ撮影ユニット12はX軸に対して角度θ2だけ傾いており、さらに、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の間はX軸方向に距離dXだけ離れていることが示されている。さらに、皮膚SKの表面において各撮影ユニット11,12の光軸が交差していることが示されている。
【0080】
ここで、図13を用いてメイン撮影ユニット11を原点とするカメラ座標系について考える。同図は、図12における位置関係を、メイン撮影ユニットを中心としたカメラ座標系によって示す図である。
【0081】
この図において血管BVは、Xc軸上の座標がXqであるとする。さらに血管BVは、Zc軸と皮膚SKとの交点からZc軸に沿った距離(深さ)がZqの位置にあるものとする。なお、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12との距離と、それぞれのレンズ112,122間の距離は同じではないが、ここでは同一であるとして説明を続ける。
【0082】
図13(a)には、メイン撮影ユニット11によるカメラ座標系における、血管BVの位置が示されている。この位置は、上記XqおよびZqに加え、角度θ1、θ2、および距離dXによって表されている。さらに、サブ撮影ユニット12の光軸と、このサブ撮影ユニット12を基準としたカメラ座標系における血管BVの位置が、上記パラメータXq、Zq、角度θ1、θ2、および距離dXによって表されている。
【0083】
上述した図11には、点Pの画像平面内のu軸上の座標が、Zc軸の座標Zpと、Xc軸の座標Xpと、カメラパラメータfによって表されている。すなわち、図13においては、メイン撮影ユニット11の画像平面内のu軸上の座標をuqとすると、Zc軸の座標Zqと、カメラパラメータfによって、Xc軸上の座標Xqを表すことができる。図13(b)には、この表現方法に従ってXqを変形した式が示されている。
【0084】
上記パラメータのうち、角度θ1、θ2、および距離dXについては、センサを用いて測定することができる。また、カメラパラメータfについては事前に得ることができる。すなわち、図13(a)に示された全ての式、および視差による血管BVの移動量duは、血管BVの深さZqと画像平面内の座標uqによって表すことができる。
【0085】
ここで、Zqに任意の値を代入するとともに、uqの値を何らかの方法で取得すれば、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12との間で血管BVがどの程度移動するか計算することができる。
【0086】
血管BVの画像平面内の座標uqについては、実際に表示された血管BVの位置を使用者が入力したり、血管BVが表示される位置を特定の位置に合わせる方法や、エッジ抽出等の画像処理によって取得する方法が考えられる。以下、メイン撮影ユニット11のu軸上の中心に血管BVが表示されるように使用者が調整した場合について、上記計算を行うための血管表示装置1の第2変形例の構成について説明する。
【0087】
この第2変形例は、図1に示す血管表示装置1の撮影ユニット11,12に、位置および向きを測定するセンサとCPUをさらに備え、これらのセンサから得られる情報を基に、血管の深さに関する情報を使用者に提供するものである。以下、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12について説明する。
【0088】
メイン撮影ユニット11は、上記説明した構成に加え、メイン撮影ユニット11の位置を取得するための位置センサ(本発明の位置情報取得手段の一例に相当)と、向きを取得するための角度センサ(本発明の方向情報取得手段の一例に相当)とを備えている。
【0089】
サブ撮影ユニット12は、メイン撮影ユニット11と同様に、位置センサ(本発明の位置情報取得手段の一例に相当)および角度センサ(本発明の方向情報取得手段の一例に相当)を備えている。メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12は、データを送受信んするためのケーブルが接続されている。メイン撮影ユニット11のセンサによって得られた情報は、このケーブルを用いてサブ撮影ユニット12に送信され、後述するプログラムを実行する際に使用される。
【0090】
サブ撮影ユニット12には、上記説明した位置センサおよび角度センサから得られる情報を基に、液晶表示装置114,124に血管の深さを知るための付加情報を表示させるプログラムを記憶したROMと、このプログラムを実行するためのCPU(本発明の深さ情報表示手段の一例に相当)およびこのCPUの作業領域となるRAMを備えている。以下、この付加情報を表示させるプログラムについて説明する。
【0091】
図14は、付加情報を表示させるプログラムの流れを示すフローチャートである。
【0092】
血管表示装置1の電源を入れると、上記CPUによってこのプログラムが実行される。
【0093】
ステップS1では、各撮影ユニット11,12に設けられた位置センサおよび角度センサから、各撮影ユニット11,12の位置と向きの情報を取得する。
【0094】
ステップS2では、ステップS1で得られた情報に基づいて、血管の深さを1mm刻みで加算しながらこの値に対応する移動量duを計算し、この計算結果に従って液晶表示装置124上に目盛を表示する。その後ステップS1に戻り、処理を繰り返す。
【0095】
図15は、図14に示すフローチャートに従って目盛が表示された様子を示す図であり、図16は、血管表示装置1の第2変形例の使用例を示す図である。
【0096】
図15には、サブ撮影ユニット12の液晶表示装置124に血管BVが表示され、その上に重ねて目盛SCが表示されている様子が示されている。また、図16(a)には、メイン撮影ユニット11の位置および向きと、撮影内容が示され、図16(b)および(c)には、サブ撮影ユニット12の位置および向きと、撮影内容が示されている。
【0097】
図16(a)に示すように、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114の中心に血管BVが表示されるように調整すると、図16(b)に示すようにサブ撮影ユニット12の液晶表示装置124の内容から、血管BVが深さ5mmの位置にあることが推定できる。さらに、図16(c)に示すようにサブ撮影ユニット12の位置および向きを変えると、図14に示す処理によって新たな目盛SCが表示される。
【0098】
上記第2変形例は、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114の中心に血管BVを表示するように調整することを前提としたものである。より具体的には、図13(b)に示す式において、u軸座標uqを設定(図16の例では0に設定)して、この座標に合うように血管BVの表示される位置を合わせた上で血管BVの深さを推定するものである。
【0099】
ここで、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114の中心に血管BVが表示されていない場合にも血管BVの深さを推定できるように、メイン撮影ユニット11に血管BVの位置を入力する入力装置を設け、この入力装置によって入力された情報を用いてメイン撮影ユニット11の液晶表示装置114にも目盛を表示させてもよい。すなわち、上記u軸座標uqを入力できるようにしてもよい。また、上述したように、画像処理を用いて座標uqの値を取得するようにしてもよい。
【0100】
さらに、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114に表示された画像を、サブ撮影ユニット12の液晶表示装置124に重ねて表示させ、血管BVの移動量を容易に把握できるようにしてもよい。メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の役割を入れ替えるためのスイッチを設けてもよい。
【0101】
上記説明した血管表示装置1では、血管の深さを推定するための情報を提供することができる。この際単純な計算を採用しているため、複雑な画像処理を用いた場合のように表示に時間がかかることがない。もちろん画像処理をによって血管の対応付けを行い、この情報を基に血管BVの深さを自動的に計算させてもよい。
【0102】
なお、上記説明ではピンホールカメラモデルを基にした計算方法について述べたが、例えばカメラに使用されているレンズに合わせたモデルを用いて、このモデルに基づいたプログラムを実行させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 血管表示装置
11 メイン撮影ユニット
12 サブ撮影ユニット
111,121 近赤外線LED
112,122 レンズ
113,123 可視光LED
114,124 液晶表示装置
115,125 シャフト
13 外枠
131 支柱
132 ガイドレール
14 調整用ネジ
SL スリット
【技術分野】
【0001】
皮膚に近赤外線を照射し、近赤外線が照射された該皮膚を撮影することによって該皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の血液中にあるヘモグロビンは、近赤外線を吸収する性質があることが知られている。現在、この性質を利用して血管がどのように延びているか(以下、血管の走行と称する)を認識しやすくする装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−148853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、皮膚に近赤外線を照射し、そこから反射された近赤外線を2か所に固定されたカメラによって撮影し、血管を表示する装置が開示されている。この装置によれば皮膚の色によって血管の走行が視認しにくい場合であっても、血管の走行を認識することができる。
【0005】
しかし、特許文献1の装置のようにカメラを固定すると、腕の太さによってはうまく撮影できない問題がある。また、特定の部位を想定してカメラの位置を設定している場合には、それ以外の部位に対応することができないという問題がある。
【0006】
上記事情に鑑み本発明は、部位に限定されることなく血管の走行を表示することができる血管表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の血管表示装置は、
近赤外線照射手段によって皮膚表面に近赤外線を照射された状態で、その皮膚表面を近赤外線撮影することによってその皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置であって、
光学系を有しその光学系を用いて近赤外線撮影を行う第1撮影部、および光学系を有しその光学系を用いて近赤外線撮影を行う第2撮影部を含む撮影手段と、
上記第1撮影部が撮影した近赤外線映像である第1映像を表示する第1画像表示手段、および上記第2撮影部が撮影した近赤外線映像である第2映像を表示する第2画像表示手段を有する画像表示手段とを備え、
上記第1撮影部および上記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
その第1撮影部が有する光学系の光軸である第1光軸とその第2撮影部が有する光学系の光軸である第2光軸が上記皮膚表面にて交差するように、その第1光軸の位置とその第2光軸の位置の相対関係およびその第1光軸の方向とその第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする。
【0008】
この血管表示装置によれば、対象者の状況に合わせて第1撮影手段および第2撮影手段の位置または向きを調整して、第1撮影手段および第2撮影手段が同じ場所を撮影するようにすることができる。
【0009】
ここで、上記血管表示装置は、
上記第1撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第1ガイドビーム照射手段と、
上記第2撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第2ガイドビーム照射手段とを備え、
上記第1ガイドビーム照射手段が照射する可視光と上記第2ガイドビーム照射手段が照射する可視光を皮膚表面で交差させることによって、上記第1光軸と上記第2光軸を上記皮膚表面で交差させることができるものであってもよい。
【0010】
この血管表示装置によれば、第1ガイドビーム照射手段および第2ガイドビーム照射手段により照射されるビーム状の可視光を基準にして、第1撮影手段および第2撮影手段が同じ場所を撮影するように調整することができる。
【0011】
また、上記血管表示装置は、
上記第1撮影部および上記第2撮影部が、
上記第1光軸と上記第2光軸が同一平面である光路平面内に含まれるように配置されたものであり、
上記第1撮影部および上記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
上記第1光軸と上記第2光軸が上記光路平面内に含まれた状態を維持したまま、その第1光軸の位置とその第2光軸の位置の相対関係およびその第1光軸の方向とその第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであってもよい。
【0012】
この血管表示装置によれば、上記第1撮影手段および上記第2撮影手段の移動方向と向きを制限しているため、簡単な操作で、第1撮影手段および第2撮影手段が同じ場所を撮影するように調整することができる。
【0013】
さらに、上記血管表示装置は、
上記第1光軸の位置と上記第2光軸の位置の相対関係およびその第1光軸の方向とその第2光軸の方向の相対関係を保った状態で、その第1光軸とその第2光軸の双方の位置および方向を変更するための調整機構を備えたものであってもよい。
【0014】
この血管表示装置によれば、前記調整機構を用いて第1撮影手段および第2撮影手段の位置および向きをより適切に調整することができる。
【0015】
また、上記血管表示装置は、
上記画像表示手段が、上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段が一体に形成されたものであり、その第1画像表示手段からの第1光およびその第2画像表示手段からの第2光のうち、その第1光のみを所定の第1の視点に向かわせるとともにその第2光のみを所定の第2の視点に向かわせる視差形成光学部材を有するものであってもよい。
【0016】
この血管表示装置は、左右の眼に上記第1映像と第2映像を別々に表示することができるものである。これらの映像から使用者が適切な視差情報を得ることができれば血管の位置を知覚することができる。すなわち、使用者は上記画像表示手段を見ながら、自身が血管の位置を知覚できるように上記撮影手段の位置や向きを調整することができる。なお、上記視差形成用光学部材は、上記第1光および上記第2光のうち、上記第1の視点にはその第1光のみが向かい上記第2の視点にはその第2光のみが向かうように、その第1光およびその第2光の進路を変更するものであってもよいし、その第1光の一部およびその第2光の一部を遮光するものであってもよい。
【0017】
加えて、上記血管表示装置は、
上記第1光軸の位置と上記第2光軸の位置の情報を取得する位置情報取得手段と、
上記第1光軸の方向と上記第2光軸の方向の情報を取得する方向情報取得手段と、
上記第1光軸および上記第2光軸が上記皮膚表面の同じ場所で交差している状態において、上記位置情報取得手段および上記方向情報取得手段によって取得された情報を用いてその同じ場所の下にある血管の深さを推定するための情報を上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させる深さ情報表示手段とを備えたものであってもよい。
【0018】
この血管表示装置によれば、血管の深さを推定するための情報を表示して、使用者が血管の走行を把握しやすくすることができる。
【0019】
また、上記血管表示装置は、
上記深さ情報表示手段が、上記位置情報取得手段および上記方向情報取得手段によって取得された情報を用いてその同じ場所の下にあって、上記第1光軸および上記第2光軸のうちのいずれか一方の光軸上にある血管の深さを推定するための情報を上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示させるものであってもよい。
【0020】
この血管表示装置によれば、上記第1光軸および上記第2光軸に沿って血管が配置されるように上記撮影手段の位置および方向を調整することにより、血管の深さの推定に必要な条件を限定して、血管の深さを推定することができる。
【0021】
さらに、上記血管表示装置は、
上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示されている近赤外線映像について、その映像中の上記同じ場所の下にある血管の位置の情報を入力する入力手段を備え、
上記深さ情報表示手段が、
上記位置情報取得手段および上記方向情報取得手段によって取得された情報と、上記入力手段によって入力された上記血管の位置情報を用いてその血管の深さを推定するための情報を上記第1画像表示手段および上記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させるものであってもよい。
【0022】
この血管表示装置によれば、上記入力手段から入力される情報によって血管の位置を推定するための情報を取得して、血管の深さを推定するための情報を表示させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の血管表示装置によれば、部位に限定されることなく血管の走行を表示することができる血管表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の血管表示装置を示す斜視図である。
【図2】メイン撮影ユニットおよびサブ撮影ユニットを示す図である。
【図3】撮影ユニットの撮影方向を調整している様子を示す図である。
【図4】皮膚表面に照射される近赤外線と、この反射光を示す断面図である。
【図5】近赤外線によって撮影された皮膚の一例を示す図である。
【図6】前腕部の皮膚の下に走る動脈および静脈を示す図である。
【図7】視点を変えて皮膚表面を撮影する様子を示す図である。
【図8】図7に示す5つの視点と、その各視点において撮影された画像を示す図である。
【図9】血管表示装置1の第1変形例における画像表示装置の仕組みを示す図である。
【図10】図9に示す仕組みを右眼の場合と左眼の場合に分けて示す図である。
【図11】ピンホールカメラモデルを示す図である。
【図12】メイン撮影ユニットおよびサブ撮影ユニットによって皮膚表面が撮影されている様子を示す図である。
【図13】図12における位置関係を、メイン撮影ユニットを中心としたカメラ座標系によって示す図である。
【図14】付加情報を表示させるプログラムの流れを示すフローチャートである。
【図15】図14に示すフローチャートに従って目盛が表示された様子を示す図である。
【図16】血管表示装置の第2変形例の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明の血管表示装置の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態の血管表示装置を示す斜視図である。
【0027】
図1に示す血管表示装置1は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12(本発明の撮影手段の一例に相当)と、これら2つの撮影ユニットを支える長方形の外枠13を備えている。なお、説明の便宜のため、図1の右下にX軸、Y軸、およびZ軸の互いに直交する三軸からなる三次元座標系を示し、以降はこの座標系を適宜参照して説明する。
【0028】
メイン撮影ユニット11(本発明の第1撮影部に相当)は、平らな直方体の形状をしており、近赤外線撮影が可能なデジタルビデオカメラ(以下、単にカメラと称する。)と、このカメラの映像を表示するための液晶表示装置と、このメイン撮影ユニット11を外枠13に取り付けるためのシャフトを備えている(図2参照)。カメラはメイン撮影ユニット11に内蔵されており、このカメラのレンズがメイン撮影ユニット11の一方の面の中央に配置されている。また、液晶表示装置は、このレンズが配置された面とは反対側の面に配置されている。以下、レンズが配置されている面をおもて面と称し、液晶表示装置が配置されている面を裏面と称する。シャフトはメイン撮影ユニット11の長手方向の両端に設けられている。
【0029】
サブ撮影ユニット12(本発明の第2撮影部に相当)は、上記メイン撮影ユニット11と同様の形状のものであり、近赤外線撮影カメラと、液晶表示装置と、シャフトを備えている。これらの構成については、メイン撮影ユニット11と同様であるため、説明を省略する。なお、以下、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12を、撮影ユニットと総称することがある。撮影ユニット11,12の詳細については図2を用いて後述する。
【0030】
長方形の外枠13は、長手方向の辺を構成する2本のガイドレール132と、短手方向の辺を構成する2本の支柱131を備えている。なお、以降は、ガイドレール132がX軸に平行であり、支柱131がY軸に平行であるものとして説明を続ける。
【0031】
2つのガイドレール132には、長手方向に沿って隙間133が形成されている。この隙間133には、撮影ユニット11,12の両端に設けられたシャフトがそれぞれ嵌まっており、撮影ユニット11,12は、2つのガイドレール132に挟まれた状態になっている。ここで撮影ユニット11,12は、上記シャフトがY軸に平行な状態を保ったまま、ガイドレール132の隙間133に沿った移動と、シャフトを中心軸とした回転ができるようになっている。すなわち、撮影ユニット11,12は、2つのガイドレール132の間でX軸方向に移動(図中の左右方向の矢印参照)による位置の調整ができるようになっており、Y軸に平行な軸を中心とした回転(図中のネジ14の周囲に示す矢印参照)による向きの調整ができるようになっている。
【0032】
上記シャフトの先端には、撮影ユニット11,12をガイドレール132に固定する調整用のネジ14が取り付けられている。この調整用のネジ14を緩めると撮影ユニット11,12の位置および向きを調整することができ、調整用のネジ14を締めると撮影ユニット11,12の位置および向きを固定することができる。
【0033】
続いて、図2を用いてメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12について説明する。同図は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12を示す図である。なお、この図では、双方のおもて面がZ軸方向に向いている状態が示されている。
【0034】
図2(a)には、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12のおもて面が示されている。
【0035】
メイン撮影ユニット11のおもて面には、このおもて面のほぼ全体に均一に配置された近赤外線LED(Light Emitting Diode)111と、中央に配置されたレンズ112と、上下に配置された2つの可視光LED113a,113b(本発明の第1ガイドビーム照射手段の一例に相当)が設けられている。2つの可視光LED113a,113b、および上記レンズ112は、Y軸方向に一直線に並んで配置されている。
【0036】
サブ撮影ユニット12のおもて面には、メイン撮影ユニット11と同様に近赤外線LED121と、レンズ122と、可視光LED123a,123b(本発明の第2ガイドビーム照射手段の一例に相当)が設けられている。これらの構成については、メイン撮影ユニット11と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
図2(b)には、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の裏面が示されている。メイン撮影ユニット11の裏面には、液晶表示装置114(本発明の第1画像表示手段の一例に相当)が設けられている。また、サブ撮影ユニット12の裏面にも、液晶表示装置124(本発明の第2画像表示手段の一例に相当)が設けられている。
【0038】
図2(a)および(b)には、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12のそれぞれの長手方向に突出したシャフト115,125が示されている。このシャフト115,125が、ガイドレール132の隙間133に嵌め込まれ、Y軸に平行な状態を保っている。なお、撮影ユニット11,12のおもて面の向きは、このシャフト115,125の中心軸に対して直交する向きになっている。
【0039】
近赤外線LED111,121は、近赤外線撮影に必要となる近赤外線を皮膚に照射するためのものである。なお、この近赤外線LED111,121は、近赤外線のみを照射するものに限らず、例えば近赤外線以外の波長の光も併せて照射するものであってもよい。
【0040】
レンズ112,122は、撮影ユニット11,12の内部に設けられたカメラのレンズである。このカメラは、携帯電話等に用いられる小型のものであり、可視光から近赤外線までの波長の光に反応する受光素子を有する。レンズ112、122には、近赤外線以外の波長の光を除去するために近赤外線透過フィルタが装着されている。すなわち、撮影ユニット11,12は一般的な小型カメラに近赤外線のみを受光させることによって、近赤外線撮影をできるようにしたものである。このカメラで撮影された近赤外線映像は、図2(b)に示す裏面に設けられた液晶表示装置114,124に表示される。なお、レンズ112,122の光軸は、撮影ユニット11,12のおもて面に対して垂直になっている。
【0041】
ここで、上記説明した構成の撮影ユニット11,12の光軸について考える。この光軸は、撮影ユニット11,12のおもて面にあるレンズ112,122の中心を通り、かつシャフト115,125の中心軸に対して直交する軸である。
【0042】
撮影ユニット11,12がその向きを変えずにX軸方向に移動した場合、上記光軸はX軸方向、すなわち移動前のシャフト115,125に対して直交する方向に移動する。また、撮影ユニット11,12がその位置を変えずにシャフト115,125を中心軸として回転した場合、上記光軸は、シャフト115,125の延在方向に直交する平面内で方向が変わることになる。すなわち、上記光軸は、撮影ユニット11,12の移動および回転によって、シャフト115,125に対して直交する平面内を移動することになる。以降、この平面を光路平面と称する。
【0043】
すなわち、撮影ユニット11,12は、X軸方向の移動とY軸に平行なシャフト115,125を中心軸とした回転が可能であるが、これらの移動および回転によって上記光路平面が変化することはない。
【0044】
本実施形態の血管表示装置1に設けられたメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12は、それぞれのX軸方向の位置が異なるだけである。すなわち、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の位置関係は、上記説明したX軸方向に移動した場合と同様に考えることができる。したがって、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の双方の光路平面は同一の平面であり、双方の光軸が同一平面内に含まれることになる。このことにより、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12が同じ領域を撮影できるよう双方の光軸を調整しやすくなっている。
【0045】
メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の双方の光軸を調整する場合、使用者は光軸を見ることができないため、それぞれに設けられた液晶表示装置114,124を見て調整することが考えられる。しかし、二つの画像を見比べながら光軸を調整すると作業に時間がかかり、患者の負担になるという問題が生じる。上記可視光LED113,123は、撮影ユニット11,12の光軸を調整しやすくし、この問題を解消するために設けられたものである。
【0046】
可視光LED113,123は、撮影ユニット11,12のおもて面から垂直な方向にレーザー光を照射するものである。この可視光LED113,123は、図2(a)に示すように、撮影ユニット11,12のおもて面の上下に一つずつ配置されている。可視光LED113,123とレンズ112,122は、撮影ユニット11,12のおもて面においてY軸方向に一直線になるように配置されている。
【0047】
メイン撮影ユニット11のおもて面のうちシャフト115の延在方向の一端側(図2における上縁側)に設けられた可視光LED113aは、サブ撮影ユニット12のおもて面のうちシャフト125の延在方向の一端側(図2における上縁側)に設けられた可視光LED123aと対になっており、それぞれの照射するレーザー光が交差するようになっている。また、メイン撮影ユニット11において上記可視光LED113aが設けられた端とは反対側の端(図2における下縁側)に設けられた可視光LED113bは、サブ撮影ユニット12において上記可視光LED123aが設けられた端とは反対側の端(図2における下縁側)に設けられた可視光LED123bと対になっており、それぞれの照射するレーザー光が交差するようになっている。これらのレーザー光を交差させたとき、その交点を結んだ直線の中心点がメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12のそれぞれ光軸の交点になる。したがって、これらのレーザー光の交点を基準として上記光軸の交点の位置を推定することができ、液晶表示装置114,124を見ることなく、見えない光軸をある程度調整することができる。この一例について図3を用いて説明する。
【0048】
図3は、撮影ユニット11,12の撮影方向を調整している様子を示す図である。なお以下では、皮膚表面がXY平面に平行な平面であるものと仮定して説明する。
【0049】
図3には、前腕部AMと、この前腕部AMに対して使用されている本実施形態の血管表示装置1が示されている。また、各撮影ユニット11,12に設けられた可視光LED113,123から手首側と肘側にそれぞれレーザー光GBが照射されている様子が示されている。手首側に照射された二本のレーザー光GBは、皮膚の真上で交差している。同様に肘側に照射された二本のレーザー光GBも、皮膚の真上で交差している。上記説明したように、それぞれのレーザー光GBの交点を結ぶ直線の中心点が光軸の交点となることから、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12のそれぞれ光軸の交点は、皮膚の真上であることがわかる。皮膚表面を基準に視差画像を撮影したい場合は、このレーザー光GBの交点が皮膚表面で交差するように、各撮影ユニット11,12の位置および向きを調整すればよい。
【0050】
上記説明では、皮膚表面がXY平面に平行なものと仮定して説明した。皮膚表面は実際には平面ではないが、本実施形態の血管表示装置1は血管の位置を正確に測定するためのものではないため、ある程度狙い通りに光軸を調整することができればよい。また、例えば図3において手首を持ち上げた場合のように、XY平面に対して皮膚が傾いている場合は、レーザー光による2つの交点が皮膚表面で交差しなくなる。この場合は、2つの交点が皮膚表面で交差するように、前腕部AMの位置を調整するか、血管表示装置1の全体の位置や向きを調整すればよい。
【0051】
図3を用いて説明した作業によって撮影ユニット11,12の位置および向きを調整すると、続いて近赤外線LED111,121によって皮膚表面に近赤外線が照射され、近赤外線撮影が行われる。この原理について図4を用いて説明する。同図は、皮膚表面に照射される近赤外線と、この反射光を示す断面図である。なお、この図4では、近赤外線の強さの違いを線の太さの違いによって表している。
【0052】
図4(a)には、前腕部AMに対し近赤外線IRが照射されている様子が示されており、図4(b)には、その反射光が示されている。近赤外線IRは、皮膚SKに当たるとその一部が反射される。さらに、近赤外線IRは、皮膚SKを透過して進むにつれてその一部が反射されていく。ここで、近赤外線IRが血管BVに当たると、血中のヘモグロビンによって近赤外線IRが吸収されてしまうため、近赤外線IRが反射されなくなる。すなわち、近赤外線IRが血管BVに当たらない場合と比較して、反射される近赤外線IRが弱くなる。図4(b)には、前腕部AMの血管BVに対して照射された近赤外線IRの反射光が、他の部分に照射された部分の反射光と比較して弱くなっている様子が示されている。この反射光を近赤外線撮影することにより、血管BVを表示することができる。
【0053】
図5は、近赤外線によって撮影された皮膚の一例を示す図である。
【0054】
図5(a)には、前腕部AMが示されており、皮膚の下にある動脈ARおよび静脈VEが点線で示されている。また、図5(b)には、近赤外線を用いて撮影された前腕部AMが示されており、実際には暗く表示される血管が図中のハッチングによって示されている。上記説明したように、血管の部分は暗く表示されるため、これによって血管の走行を把握することができる。
【0055】
ここで、図6から図8を用いて、カメラの位置(以下、視点と称することがある)および向きに応じて撮影される画像がどのように変化するかについて説明する。
【0056】
図6は、前腕部AMの皮膚の下に走る動脈ARおよび静脈VEを示す図である。図6(a)には、図5(a)と同じく、前腕部AMとその皮膚の下に走る血管が示されている。また、図6(b)には、図6(a)に示す動脈ARが左下がりのハッチングで示され、図6(c)には、図6(a)に示す静脈VEが右下がりのハッチングで示されている。静脈VEは動脈ARよりも皮膚に近い部分を走っている。ここで、図6(a)に示す前腕部AMに対し、メイン撮影ユニット11を横切るように移動させた場合について、図7および図8を用いて説明する。
【0057】
図7は、視点を変えて皮膚表面を撮影する様子を示す図である。
【0058】
図7には、5つの視点から前腕部AMを撮影している様子が示されている。ここで、メイン撮影ユニット11は同じ位置を撮影するよう、位置および向きを調整されているものとする。図7には、皮膚に近い位置に静脈VEが走っている層があることが、右下がりのハッチングで示されている。さらに、皮膚から遠い位置に動脈ARが走っている層があることが、左下がりのハッチングで示されている。
【0059】
図8は、図7に示す5つの視点と、その各視点において撮影された画像を示す図である。
【0060】
図8には、図7に示す5つの視点によって撮影された画像が示されている。なお、視点と画像の対応関係をわかりやすくするため、図7に示すメイン撮影ユニット11を再度示している。この画像群を左から右に順にみていくと、皮膚表面に近い位置にある静脈VEは画面の中心からあまり動いていないが、皮膚表面から遠い位置にある動脈ARは大きく動いている。この動きの違いは、メイン撮影ユニット11との距離の違いによるものである。すなわち、この例のように同じ位置を撮影している場合、撮影された画像群においては皮膚直下にある血管は小さく動き、皮膚から遠いほど大きく動くことになる。これらの動きの差によって、血管の深さをある程度把握することができる。
【0061】
上記説明ではメイン撮影ユニット11を使用した例を挙げたが、メイン撮影ユニット11ではなくサブ撮影ユニット12を用いても同じ画像を得ることができる。したがって、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12の双方を適切な位置および向きに調整すれば、2つの画像を比較しながら血管の深さを推定することができる。
【0062】
例えば、メイン撮影ユニット11を調整して、対象となる血管が液晶表示装置114の中心をY軸方向に走るよう表示させた上で、サブ撮影ユニット12の位置および向きを調整するという調整方法がある。このように調整すると、サブ撮影ユニット12に表示される血管は、その深さに応じて中心部分からずれる距離が変わるため、深さを推定しやすくなる。すなわち、メイン撮影ユニット11を対象となる血管の概要を把握するために使用し、サブ撮影ユニット12を対象となる血管の深さを把握するために使用するということができる。
【0063】
上記説明したメイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の使用方法は、一例であって他の使用方法で血管の情報を得てもよい。すなわち、本実施形態の血管表示装置1は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12によって異なる位置から複数の画像(視差画像)を撮影し、これらの画像を基に血管の深さの情報を得ることができるものである。
【0064】
上記説明した血管表示装置1によれば、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12に設けられた可視光LED113,123から照射されるレーザー光の交差位置を指標にして、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12が同じ部分を撮影するように調整することができる。この際、ガイドレール132およびシャフト115,125によって、各撮影ユニット11,12が一つの軸に対する移動と一つの軸に対する回転しかできないように制限しているため、各撮影ユニット11,12の位置および向きの調整が容易である。なお、本実施形態の血管表示装置1では液晶表示装置114,124に画像を表示させているが、外部のモニター等を用いてこれらの画像を表示させてもよい。また、近赤外線LED111,121を各撮影ユニット11,12と別々にしてもよい。
【0065】
ここで、上記説明した血管表示装置1の第1変形例について説明する。以下説明する第1変形例は、視点によって異なる画像を知覚させることができる画像表示装置を用いて、使用者の左右の眼に別々の画像を知覚させ、使用者が容易に視差情報を取得できるようにしたものである。まず、図面を用いて、この画像表示装置の概略を説明し、この説明を踏まえて血管表示装置1の第1変形例について説明する。
【0066】
図9は、血管表示装置1の第1変形例における画像表示装置の仕組みを示す図である。また、図10は、図9に示す仕組みを右眼の場合と左眼の場合に分けて示す図である。図9には、画素を発光させて画像を表示する液晶パネルLCPと、この液晶パネルLCPを見る使用者側に設けられたスリットSLが示されている。また、このスリットSL越しに液晶パネルLCPを見る使用者PEが示されている。なお、このスリットSLは液晶によって形成されており、光を遮る領域の位置や大きさを調整したり、光を遮らないようにして液晶パネルLCPの全体を直接見せたりすることができるようになっている。
【0067】
図9に示す使用者PEが液晶パネルLCPをスリットSL越しに見ると、使用者PEの右眼REからは領域RA1〜RA4(右下がりのハッチングで示す部分)が見え、右眼REからは領域LA1〜LA4(左下がりのハッチングで示す部分)が見える。図10(a)には、使用者PEの右眼REから領域RA1〜RA4が見えることが示されており、(b)には、使用者PEの左眼LEから領域LA1〜LA4が見えることが示されている。すなわち、このスリットSLによって、液晶パネルLCPを右眼用の画像を表示する領域RA1〜RA4と左眼用の画像を表示する領域LA1〜LA4とに分けることができる。これらの領域を用いれば、右眼用の画像と左眼用の画像を一つの画像表示装置によって使用者に知覚させることができる。なお、光を遮る領域の位置を調整することによって、より適切にこれらの領域を分けることができる。また、ここで説明した画像表示装置は視差バリア方式によるものであるが、このような右眼用の画像と左眼用の画像を一つの画像表示装置によって使用者に知覚させることができるものであれば、例えばレンティキュラ方式によるものであってもよい。
【0068】
ここで、血管表示装置1の第1変形例について説明する。この第1変形例は、上記説明した仕組みを有する画像表示装置をメイン撮影ユニット11の液晶表示装置114として採用したものである。なお、この第1変形例では、この画像表示装置が、本発明の第1画像表示手段および第2画像表示手段が一体に形成された画像表示手段の一例に相当する。また、この画像表示装置のスリットSLが本発明の視差形成光学部材の一例に相当する。
この液晶表示装置114によって、例えば、メイン撮影ユニット11のカメラが撮影した血管を右眼に知覚させ、サブ撮影ユニット12のカメラが撮影した血管を左眼に知覚させることができる。このとき、使用者が自然に眼にする視差画像と同じような画像を右眼と左眼のそれぞれに知覚させれば、使用者は容易に血管の深さを把握することができる。また、使用者自身が容易に血管の深さを把握することができるように、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114を見ながら各撮影ユニット11,12の位置や向きを調整することもできる。さらに、液晶表示装置を2つ使用する場合、両方の画面を見るため視点を移動させる必要があるが、本第1変形例の場合このような視点の移動が少なくてすむ。以上が、第1変形例についての説明である。
【0069】
血管の位置を正確に知るために固定したカメラを用いることが考えられるが、カメラを固定してしまうと特定の部位しか使用できなくなるおそれがある。また、カメラの光軸が皮膚表面に対して水平に近い状態になった場合には、同じ深さを走る血管が重なって表示されてしまい、適切な視差情報を得ることができないことが考えられる。本実施形態の血管表示装置1では、撮影ユニット11,12の位置や向きを調整できるため、様々な部位に使用することができる。対象によっては、血管表示装置1全体の位置および角度を調整することが可能な点滴架台等(本発明の調整機構の一例に相当)に固定して使用することも可能である。撮影ユニット11,12を移動できるようにしたことにより、血管の正確な位置を計測しにくくなるおそれがあるが、静脈注射等の医療行為においては、視差画像から血管の位置や皮膚からの深さがおおまかにわかればそれで十分有用であるため、カメラを常時固定しておく必要はない。また、情報処理機器を用いて画像処理のような複雑な計算をさせることにより、血管の位置を計測する方法も考えられるが、装置が大がかりになり、コストもかかってしまう。本実施形態の血管表示装置1は、簡易な構成であり、コストもかからないため、より多くの医療現場への普及が見込まれる。
【0070】
本実施形態の血管表示装置1は、近赤外線を使用しており、患者を傷つけることがなく、患者への負担を少なくすることができる。また、高度の肥満者や病気で皮膚の色が変わった患者のように、血管が視認しにくい場合に有用である。さらに、医療に従事したばかりの初心者が失敗してしまう機会を減らし、患者に苦痛を与える機会を低減することができる。本実施形態の血管表示装置1は、実際に注射針を刺しながら使用してもよく、この際、注射針が近赤外線撮影によって視認可能な素材で構成されていることが好ましい。具体的には、近赤外線を人体(例えば皮膚や血管)よりも吸収しやすい素材や、反対に近赤外線を人体(例えば皮膚や血管)よりも反射しやすい素材を使用した注射針であることが好ましい。近赤外線を用いているため、例えば超音波を使用した医療機器を併用することも可能である。
【0071】
ここまで、本発明の血管表示装置1の基本的な構成について説明した。次に、この血管表示装置1の第2変形例について説明する。
【0072】
以下説明する第2変形例は、上記説明した血管表示装置1の撮影ユニット11,12にその位置および向きを知るためのセンサを備えたものであり、これらのセンサからの情報に基づいて血管の深さを推定するための情報を表示するものである。カメラによって撮影される対象とその撮影内容は、カメラと対象との位置関係、カメラの向き、カメラのレンズ等のパラメータと関連している。これらの情報を用いることで、例えば、図8に示すような視差による血管の移動量と、実際の血管の深さをの関係を導くことができる。以下説明する第2変形例は、ピンホールカメラモデルに基づいて、カメラに関する情報と、撮影内容から、血管の奥行きに関する情報を提示するものである。ここで、ピンホールカメラモデルに基づく血管の深さと視差画像の関係について説明する。
【0073】
図11は、ピンホールカメラモデルを示す図である。
【0074】
図11(a)には、Xc軸、Yc軸、Zc軸の三軸からなる三次元座標系と、u軸、v軸の二軸からなる画像平面IPが示されている。この座標系はカメラ座標系とも呼ばれ、カメラの視点を原点とし、その光軸をZc軸とする座標系である。このカメラによって撮影された三次元の座標は、原点からZc軸方向に距離fだけ離れた画像平面IP上の座標に投影される。この図には、三次元上の点P(Xp,Yp,Zp)が、画像平面IPの点p(f・Xp/Zp,f・Yp/Zp)に投影されることが示されている。ここで、原点から画像平面IPまでの距離fは、カメラの内部パラメータであり、レンズの性能等によって定められる。すなわち、カメラの光軸の向き、カメラと撮影対象の位置関係、カメラパラメータによって、画像平面IP内に投影される座標が決まる。カメラが移動したり、向きが変わると、カメラ座標系が移動するため、画像平面IP内に投影される座標が変わる。なお、以降の説明では、パラメータfは事前に得られているものとする。
【0075】
図11(b)には、図11(a)をXcZc平面に投影した図が示されている。上記説明した血管表示装置1は、撮影ユニット11,12がY軸方向に移動できないように制限されている。すなわち、図11(a)に示すカメラ座標系においては、Yc軸を省略してXc軸およびZc軸を考慮すればよいため、以降の説明には図11(b)に示すXcZc平面を用いる。
【0076】
次に、図12を用いてメイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12によって血管を撮影している例を説明する。さらに図13を用いて、この図12の状況に対して図11(b)に示すXcZc平面のピンホールカメラモデルを当てはめて説明する。なお、説明をわかりやすくするため、Y軸に平行な血管を対象とした場合について説明する。
【0077】
図12は、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12によって皮膚表面が撮影されている様子を示す図である。
【0078】
図12(a)には、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12と、これらの撮影ユニット11,12によって撮影されている皮膚SKと、その皮膚SKの下にある血管BVがXZ平面による断面図によって示されている。また、図12(b)には、図12(a)に示すメイン撮影ユニット11が撮影した血管BVが表示され、図12(c)には、図12(a)に示すサブ撮影ユニット12が撮影した血管BVが表示されている。なお以下では、図12(b)と図12(c)に表示されているそれぞれの血管BVのu軸座標の差を、移動量duと称することがある。
【0079】
図12(a)には、メイン撮影ユニット11はX軸に対して角度θ1だけ傾いており、サブ撮影ユニット12はX軸に対して角度θ2だけ傾いており、さらに、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の間はX軸方向に距離dXだけ離れていることが示されている。さらに、皮膚SKの表面において各撮影ユニット11,12の光軸が交差していることが示されている。
【0080】
ここで、図13を用いてメイン撮影ユニット11を原点とするカメラ座標系について考える。同図は、図12における位置関係を、メイン撮影ユニットを中心としたカメラ座標系によって示す図である。
【0081】
この図において血管BVは、Xc軸上の座標がXqであるとする。さらに血管BVは、Zc軸と皮膚SKとの交点からZc軸に沿った距離(深さ)がZqの位置にあるものとする。なお、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12との距離と、それぞれのレンズ112,122間の距離は同じではないが、ここでは同一であるとして説明を続ける。
【0082】
図13(a)には、メイン撮影ユニット11によるカメラ座標系における、血管BVの位置が示されている。この位置は、上記XqおよびZqに加え、角度θ1、θ2、および距離dXによって表されている。さらに、サブ撮影ユニット12の光軸と、このサブ撮影ユニット12を基準としたカメラ座標系における血管BVの位置が、上記パラメータXq、Zq、角度θ1、θ2、および距離dXによって表されている。
【0083】
上述した図11には、点Pの画像平面内のu軸上の座標が、Zc軸の座標Zpと、Xc軸の座標Xpと、カメラパラメータfによって表されている。すなわち、図13においては、メイン撮影ユニット11の画像平面内のu軸上の座標をuqとすると、Zc軸の座標Zqと、カメラパラメータfによって、Xc軸上の座標Xqを表すことができる。図13(b)には、この表現方法に従ってXqを変形した式が示されている。
【0084】
上記パラメータのうち、角度θ1、θ2、および距離dXについては、センサを用いて測定することができる。また、カメラパラメータfについては事前に得ることができる。すなわち、図13(a)に示された全ての式、および視差による血管BVの移動量duは、血管BVの深さZqと画像平面内の座標uqによって表すことができる。
【0085】
ここで、Zqに任意の値を代入するとともに、uqの値を何らかの方法で取得すれば、メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12との間で血管BVがどの程度移動するか計算することができる。
【0086】
血管BVの画像平面内の座標uqについては、実際に表示された血管BVの位置を使用者が入力したり、血管BVが表示される位置を特定の位置に合わせる方法や、エッジ抽出等の画像処理によって取得する方法が考えられる。以下、メイン撮影ユニット11のu軸上の中心に血管BVが表示されるように使用者が調整した場合について、上記計算を行うための血管表示装置1の第2変形例の構成について説明する。
【0087】
この第2変形例は、図1に示す血管表示装置1の撮影ユニット11,12に、位置および向きを測定するセンサとCPUをさらに備え、これらのセンサから得られる情報を基に、血管の深さに関する情報を使用者に提供するものである。以下、メイン撮影ユニット11およびサブ撮影ユニット12について説明する。
【0088】
メイン撮影ユニット11は、上記説明した構成に加え、メイン撮影ユニット11の位置を取得するための位置センサ(本発明の位置情報取得手段の一例に相当)と、向きを取得するための角度センサ(本発明の方向情報取得手段の一例に相当)とを備えている。
【0089】
サブ撮影ユニット12は、メイン撮影ユニット11と同様に、位置センサ(本発明の位置情報取得手段の一例に相当)および角度センサ(本発明の方向情報取得手段の一例に相当)を備えている。メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12は、データを送受信んするためのケーブルが接続されている。メイン撮影ユニット11のセンサによって得られた情報は、このケーブルを用いてサブ撮影ユニット12に送信され、後述するプログラムを実行する際に使用される。
【0090】
サブ撮影ユニット12には、上記説明した位置センサおよび角度センサから得られる情報を基に、液晶表示装置114,124に血管の深さを知るための付加情報を表示させるプログラムを記憶したROMと、このプログラムを実行するためのCPU(本発明の深さ情報表示手段の一例に相当)およびこのCPUの作業領域となるRAMを備えている。以下、この付加情報を表示させるプログラムについて説明する。
【0091】
図14は、付加情報を表示させるプログラムの流れを示すフローチャートである。
【0092】
血管表示装置1の電源を入れると、上記CPUによってこのプログラムが実行される。
【0093】
ステップS1では、各撮影ユニット11,12に設けられた位置センサおよび角度センサから、各撮影ユニット11,12の位置と向きの情報を取得する。
【0094】
ステップS2では、ステップS1で得られた情報に基づいて、血管の深さを1mm刻みで加算しながらこの値に対応する移動量duを計算し、この計算結果に従って液晶表示装置124上に目盛を表示する。その後ステップS1に戻り、処理を繰り返す。
【0095】
図15は、図14に示すフローチャートに従って目盛が表示された様子を示す図であり、図16は、血管表示装置1の第2変形例の使用例を示す図である。
【0096】
図15には、サブ撮影ユニット12の液晶表示装置124に血管BVが表示され、その上に重ねて目盛SCが表示されている様子が示されている。また、図16(a)には、メイン撮影ユニット11の位置および向きと、撮影内容が示され、図16(b)および(c)には、サブ撮影ユニット12の位置および向きと、撮影内容が示されている。
【0097】
図16(a)に示すように、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114の中心に血管BVが表示されるように調整すると、図16(b)に示すようにサブ撮影ユニット12の液晶表示装置124の内容から、血管BVが深さ5mmの位置にあることが推定できる。さらに、図16(c)に示すようにサブ撮影ユニット12の位置および向きを変えると、図14に示す処理によって新たな目盛SCが表示される。
【0098】
上記第2変形例は、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114の中心に血管BVを表示するように調整することを前提としたものである。より具体的には、図13(b)に示す式において、u軸座標uqを設定(図16の例では0に設定)して、この座標に合うように血管BVの表示される位置を合わせた上で血管BVの深さを推定するものである。
【0099】
ここで、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114の中心に血管BVが表示されていない場合にも血管BVの深さを推定できるように、メイン撮影ユニット11に血管BVの位置を入力する入力装置を設け、この入力装置によって入力された情報を用いてメイン撮影ユニット11の液晶表示装置114にも目盛を表示させてもよい。すなわち、上記u軸座標uqを入力できるようにしてもよい。また、上述したように、画像処理を用いて座標uqの値を取得するようにしてもよい。
【0100】
さらに、メイン撮影ユニット11の液晶表示装置114に表示された画像を、サブ撮影ユニット12の液晶表示装置124に重ねて表示させ、血管BVの移動量を容易に把握できるようにしてもよい。メイン撮影ユニット11とサブ撮影ユニット12の役割を入れ替えるためのスイッチを設けてもよい。
【0101】
上記説明した血管表示装置1では、血管の深さを推定するための情報を提供することができる。この際単純な計算を採用しているため、複雑な画像処理を用いた場合のように表示に時間がかかることがない。もちろん画像処理をによって血管の対応付けを行い、この情報を基に血管BVの深さを自動的に計算させてもよい。
【0102】
なお、上記説明ではピンホールカメラモデルを基にした計算方法について述べたが、例えばカメラに使用されているレンズに合わせたモデルを用いて、このモデルに基づいたプログラムを実行させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 血管表示装置
11 メイン撮影ユニット
12 サブ撮影ユニット
111,121 近赤外線LED
112,122 レンズ
113,123 可視光LED
114,124 液晶表示装置
115,125 シャフト
13 外枠
131 支柱
132 ガイドレール
14 調整用ネジ
SL スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線照射手段によって皮膚表面に近赤外線を照射された状態で、該皮膚表面を近赤外線撮影することによって該皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置において、
光学系を有し該光学系を用いて近赤外線撮影を行う第1撮影部、および光学系を有し該光学系を用いて近赤外線撮影を行う第2撮影部を含む撮影手段と、
前記第1撮影部が撮影した近赤外線映像である第1映像を表示する第1画像表示手段、および前記第2撮影部が撮影した近赤外線映像である第2映像を表示する第2画像表示手段を有する画像表示手段とを備え、
前記第1撮影部および前記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
該第1撮影部が有する光学系の光軸である第1光軸と該第2撮影部が有する光学系の光軸である第2光軸が前記皮膚表面にて交差するように、該第1光軸の位置と該第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする血管表示装置。
【請求項2】
前記第1撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第1ガイドビーム照射手段と、
前記第2撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第2ガイドビーム照射手段とを備え、
前記第1ガイドビーム照射手段が照射する可視光と前記第2ガイドビーム照射手段が照射する可視光を皮膚表面で交差させることによって、前記第1光軸と前記第2光軸を前記皮膚表面で交差させることができることを特徴とする請求項1記載の血管表示装置。
【請求項3】
前記第1撮影部および前記第2撮影部が、
前記第1光軸と前記第2光軸が同一平面である光路平面内に含まれるように配置されたものであり、
前記第1撮影部および前記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
前記第1光軸と前記第2光軸が前記光路平面内に含まれた状態を維持したまま、該第1光軸の位置と該第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする請求項1または2記載の血管表示装置。
【請求項4】
前記第1光軸の位置と前記第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係を保った状態で、該第1光軸と該第2光軸の双方の位置および方向を変更するための調整機構を備えたことを特徴とする請求項3記載の血管表示装置。
【請求項5】
前記画像表示手段は、前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段が一体に形成されたものであり、該第1画像表示手段からの第1光および該第2画像表示手段からの第2光のうち、該第1光のみを所定の第1の視点に向かわせるとともに該第2光のみを所定の第2の視点に向かわせる視差形成光学部材を有するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の血管表示装置。
【請求項6】
前記第1光軸の位置と前記第2光軸の位置の情報を取得する位置情報取得手段と、
前記第1光軸の方向と前記第2光軸の方向の情報を取得する方向情報取得手段と、
前記第1光軸および前記第2光軸が前記皮膚表面の同じ場所で交差している状態において、前記位置情報取得手段および前記方向情報取得手段によって取得された情報を用いて該同じ場所の下にある血管の深さを推定するための情報を前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させる深さ情報表示手段とを備えたことを特徴とする請求項3又は4記載の血管表示装置。
【請求項7】
前記深さ情報表示手段が、前記位置情報取得手段および前記方向情報取得手段によって取得された情報を用いて該同じ場所の下にあって、前記第1光軸および前記第2光軸のうちのいずれか一方の光軸上にある血管の深さを推定するための情報を前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示させるものであることを特徴とする請求項6記載の血管表示装置。
【請求項8】
前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示されている近赤外線映像について、該映像中の前記同じ場所の下にある血管の位置の情報を入力する入力手段を備え、
前記深さ情報表示手段が、
前記位置情報取得手段および前記方向情報取得手段によって取得された情報と、前記入力手段によって入力された前記血管の位置情報を用いて該血管の深さを推定するための情報を前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させるものであることを特徴とする請求項6記載の血管表示装置。
【請求項1】
近赤外線照射手段によって皮膚表面に近赤外線を照射された状態で、該皮膚表面を近赤外線撮影することによって該皮膚直下にある血管を表示する血管表示装置において、
光学系を有し該光学系を用いて近赤外線撮影を行う第1撮影部、および光学系を有し該光学系を用いて近赤外線撮影を行う第2撮影部を含む撮影手段と、
前記第1撮影部が撮影した近赤外線映像である第1映像を表示する第1画像表示手段、および前記第2撮影部が撮影した近赤外線映像である第2映像を表示する第2画像表示手段を有する画像表示手段とを備え、
前記第1撮影部および前記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
該第1撮影部が有する光学系の光軸である第1光軸と該第2撮影部が有する光学系の光軸である第2光軸が前記皮膚表面にて交差するように、該第1光軸の位置と該第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする血管表示装置。
【請求項2】
前記第1撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第1ガイドビーム照射手段と、
前記第2撮影部が撮影する方向に指向性のある可視光を照射する第2ガイドビーム照射手段とを備え、
前記第1ガイドビーム照射手段が照射する可視光と前記第2ガイドビーム照射手段が照射する可視光を皮膚表面で交差させることによって、前記第1光軸と前記第2光軸を前記皮膚表面で交差させることができることを特徴とする請求項1記載の血管表示装置。
【請求項3】
前記第1撮影部および前記第2撮影部が、
前記第1光軸と前記第2光軸が同一平面である光路平面内に含まれるように配置されたものであり、
前記第1撮影部および前記第2撮影部のうちの少なくともいずれか一方が、
前記第1光軸と前記第2光軸が前記光路平面内に含まれた状態を維持したまま、該第1光軸の位置と該第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係のうちの少なくともいずれか一方を変更することができるように設けられたものであることを特徴とする請求項1または2記載の血管表示装置。
【請求項4】
前記第1光軸の位置と前記第2光軸の位置の相対関係および該第1光軸の方向と該第2光軸の方向の相対関係を保った状態で、該第1光軸と該第2光軸の双方の位置および方向を変更するための調整機構を備えたことを特徴とする請求項3記載の血管表示装置。
【請求項5】
前記画像表示手段は、前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段が一体に形成されたものであり、該第1画像表示手段からの第1光および該第2画像表示手段からの第2光のうち、該第1光のみを所定の第1の視点に向かわせるとともに該第2光のみを所定の第2の視点に向かわせる視差形成光学部材を有するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の血管表示装置。
【請求項6】
前記第1光軸の位置と前記第2光軸の位置の情報を取得する位置情報取得手段と、
前記第1光軸の方向と前記第2光軸の方向の情報を取得する方向情報取得手段と、
前記第1光軸および前記第2光軸が前記皮膚表面の同じ場所で交差している状態において、前記位置情報取得手段および前記方向情報取得手段によって取得された情報を用いて該同じ場所の下にある血管の深さを推定するための情報を前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させる深さ情報表示手段とを備えたことを特徴とする請求項3又は4記載の血管表示装置。
【請求項7】
前記深さ情報表示手段が、前記位置情報取得手段および前記方向情報取得手段によって取得された情報を用いて該同じ場所の下にあって、前記第1光軸および前記第2光軸のうちのいずれか一方の光軸上にある血管の深さを推定するための情報を前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示させるものであることを特徴とする請求項6記載の血管表示装置。
【請求項8】
前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のうちのいずれか一方に表示されている近赤外線映像について、該映像中の前記同じ場所の下にある血管の位置の情報を入力する入力手段を備え、
前記深さ情報表示手段が、
前記位置情報取得手段および前記方向情報取得手段によって取得された情報と、前記入力手段によって入力された前記血管の位置情報を用いて該血管の深さを推定するための情報を前記第1画像表示手段および前記第2画像表示手段のいずれか一方に表示させるものであることを特徴とする請求項6記載の血管表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−105708(P2012−105708A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254786(P2010−254786)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【特許番号】特許第4768079号(P4768079)
【特許公報発行日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(510302191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【特許番号】特許第4768079号(P4768079)
【特許公報発行日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(510302191)
【Fターム(参考)】
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