説明

衣服

【課題】ポケットへの物の出し入れが簡単で、ポケットに入れた物が落ちにくく、作業しやすい衣服を提供する。
【解決手段】着用したときポケット3、5が腹部又は腰部の高さでかつ体側部となるようにポケット3、5が取り付けられている。さらにこのポケット3、5の入口部21、23を上方にし、前身頃15側に比べ後身頃13側が低い位置となるように傾斜してポケット3、5を取り付けることで、ポケット3、5に入れた物が落ちにくくなる。また、中央部37が開口するように帯状の布で縁取りし、上部から名札を出し入れする、カード状の名札を収納可能な名札ホルダー11を設けることで作業のしやすい衣服とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケットを有する衣服に関し、特にポケットに入れた物が落下しにくい衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
介護従事者が介護作業を行うとき、以下のような問題が指摘されている。介護従事者は、身分等を認識してもらう手段として、吊り下げ紐に名札ホルダー(カードホルダー)を取り付け、これを首からぶら下げることが多い。この方法は介護従事者のみならず、会社などでも従業員の身分証明の方法として多く用いられている方法である。介護従事者がこの方法を使用すると、介護作業時に名札ホルダー又は名札ホルダーのクリップ部分が被介護者の顔に当たり怪我を負わせることがある。また介護従事者は、作業中は前屈みとなることが多く、その場合、名札ホルダーが安定しないため作業の妨げとなる。これらの問題を解決する方法として、表面側の一部をメッシュ生地とし、表面側の残部を布地とした名札ホルダーを作業服の左胸部に取り付けた作業服が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、介護従事者は前屈みによる作業が多いため、エプロン、ユニフォームなどの作業服のポケットから中身が落下することも多く、作業の妨げとなっている。さらに従来の作業服は、ポケットが腰部より少し高い位置で作業服の前面に設けられているため、ポケットが車椅子のハンドルに引っ掛かるなどして、ポケットの縁が裂けることも多い。さらにこの時の衝撃が車椅子に座っている被介護者に伝わり不快感を与える点も従来から指摘されているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−215035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業服は、名札ホルダーを直接作業服に取り付ける構造のため、吊り下げ紐を使用する場合の問題点は解消される。また名札ホルダーが布地、糸で形成されているので、被介護者に怪我や不快感を与えず、さらに前面部がメッシュ構造となっているので、水切れが良く洗濯後の乾きも早いとある。しかしながら前面部をメッシュ構造としているので、名札全体が見えにくく、特に顔写真がある場合はさらに見えにくいと思われる。名札や身分証明書は、相手に見えやすく短時間内に認識できることが重要であり、この点に関しては十分とは言えない。また、洗濯は容易で乾き易いとあるが、名札ホルダーは3層の布から構成されており、作業服に取り付けると布は4層となり、乾き易いとは言い難い。
【0006】
介護従事者用のエプロン、ユニフォームなどの作業服は多くのものが市販されているが、現在までのところ、名札ホルダーの問題を解消した作業服は市販されていない。同様にポケットから中身が落下する問題も解決されていない。前屈みとなったとき作業服に設けられたポケットから中身が落下しないようにするためには、ポケットの入口部を閉じることが可能なファスナー、ボタンを設ける方法、ポケットの入口部を覆うフラップを設ける方法などが考えられるが、物、手の出し入れが面倒となり作業性が良いとは言えない。またコストの面からも好ましくない。
【0007】
上記のような問題は、介護従事者が着用するエプロン、ユニフォームなどの作業服に限られたものではなく、医療関係者、保育士が着用する白衣、ユニフォーム、エプロン、作業服、さらにはポケットの問題に関しては家庭で使用するエプロン、工場などの作業員が着用する作業服にも当てはまる。
【0008】
本発明の目的は、ポケットへの物の出し入れが簡単で、ポケットに入れた物が落ちにくく、作業しやすい衣服を提供することである。さらに作業に適した衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、着用したときポケットが腹部又は腰部の高さでかつ体側部となるようにポケットが取り付けられていることを特徴とする衣服である。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の衣服において、前記ポケットは、ポケットの入口部が上部であり、前身頃側に比べ後身頃側が低い位置となるように傾斜して取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の衣服において、さらに、中央部が開口するように帯状の布で縁取りされ、上部から名札を出し入れする、カード状の名札を収納可能な名札ホルダーを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の衣服において、さらに、前記ポケットの下方にさらにポケットが設けられ、該ポケットの入口部の上方に両端部が固定されたループ状の紐状掛止体を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の衣服において、前記衣服が、エプロン、介護用ユニフォーム、白衣、作業服のいずれか1であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る衣服は、着用したときポケットが腹部又は腰部の高さでかつ体側部に位置するように取り付けられているので、ポケットが作業の邪魔にならず作業しやすい。また着用したときポケットが体側部に位置するので、前屈みとなったときでもポケットから中身が落下しにくく、作業しやすい。またポケットが腹部又は腰部の高さに取り付けられているので、物、手の出し入れが容易である。
【0015】
また本発明によれば、ポケットの入口部が、前身頃側に比べ後身頃側が低い位置となるようにポケットが傾斜して取り付けられているので、前屈みとなったとき、ポケットから中身が落下しにくく作業しやすい。さらにポケットの入口部が傾斜しているので、物、手の出し入れが容易である。またポケットから中身が落下することを防止するためのファスナー、フラップなどが取り付けられていないので、物の出し入れを簡単に行うことができる。
【0016】
また本発明によれば、中央部が開口するように帯状の布で縁取りされ、上部から名札を出し入れする、カード状の名札を収納可能な名札ホルダーを備えるので、別途、名札ホルダーを必要とせず便利である。また、名札ホルダーは、布で縁取りし形成されているので、被介護者の顔に当たっても怪我をすることがなく、被介護者を抱き抱えるようなときであっても作業しやすい。さらに名札ホルダーは、中央部が開口しているので、洗濯しても乾きやすい。
【0017】
また本発明によれば、前記ポケットの下方にさらにポケットが設けられ、該ポケットの入口部の上方に両端部が固定されたループ状の紐状掛止体を備えるので、下方のポケットにPHS(Personal Handyphone System)又は携帯電話を入れ、PHS又は携帯電話にストラップを取り付け、ストラップの先端部のクリップなどの掛止具を紐状掛止体に引っ掛けておけば、PHS又は携帯電話がポケットから飛び出しても落下することがなく便利である。
【0018】
本発明は、エプロン、介護用ユニフォーム、白衣、作業服などに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態としての折畳んだ状態のエプロン1の平面図である。
【図2】図1のエプロン1の左半分のみを開いた状態を示す図である。
【図3】図1のエプロンを着用した状態を正面から見た図である。
【図4】図1のエプロンを着用した状態を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の第1実施形態としての折畳んだ状態のエプロン1の平面図である。図2は、図1のエプロン1の左半分のみを開いた状態を示す図である。図3は、図1のエプロンを着用した状態を正面から見た図であり、図4は、図1のエプロンを着用した状態を側面から見た図である。
【0021】
エプロン1は、袖のない布製のエプロンであり、両サイドにポケット3、ポケット5を有し、右のポケット3の下にはさらにもう1つ補助ポケット7が取り付けられ、ポケット3と補助ポケット7との間には、紐状掛止体9が設けられている。さらに左胸には、名札を収納する名札ホルダー11が設けられている。エプロン本体2は、首下から膝までを覆う大きさで、後身頃13(13a、13b)が中央で分割され、後身頃13bには左右の後身頃13a、13bを止めるためのボタン(図示を省略)が設けられ、後身頃13aにはボタン穴17を有する掛止具19が取り付けられている。このようなエプロン本体2は、従来から一般的に使用されているエプロンと変わるところはない。本実施形態に示すエプロン1は、両サイドに設けられたポケット3、5及びポケット3の下に設けられた補助ポケット7、紐状掛止体9及び名札ホルダー11に従来にない特徴を有するので、これを順次説明する。
【0022】
両サイドに設けられたポケット3、5は、エプロン本体2と同じ生地で構成され、形状は矩形であり、ポケットの入口部21、23が上部である点は従来からあるポケットと大きく変わるところはない。このポケット3、5は、ポケットの取り付け位置と、取り付け角度が従来のものと異なる。従来のエプロンでは、一般的に両サイドのポケットが、前身頃15に設けられているが、このエプロン1では、両サイドのポケット3、5が、前身頃15と後身頃13との接合部25に設けられ、エプロン1を着用したときポケット3、5が横腹部に位置するように取り付けられている。図3からも分かるように着用したエプロン1を正面から見ると両サイドのポケット3、5は、殆ど見えない。なお、ポケット3、5の取り付け高さは、従来のエプロンと同じである。
【0023】
上記のようにエプロン本体2に対してポケット3、5を設けることで、従来のエプロンに比較して作業しやすいエプロンとすることができる。例えば、従来のエプロンは両サイドのポケットが前身頃に設けられているので、ポケットが車椅子のハンドルに引っ掛かり破けることがあるが、このエプロン1では、着用したときポケット3、5が横腹部に位置するので、ポケット3、5が車椅子のハンドルに引っ掛かることがない。また、被介護者を抱き抱えるとき、ポケット3、5の中身が被介護者に接触することがなく被介護者を怪我させたり、被介護者に不快感を与えることもない。またポケット3、5が横腹部に位置するように設けられているため、前屈みとなったときでもポケット3、5から中身が落下しにくく作業しやすい。
【0024】
ポケット3、5の取り付け位置は、作業がしやすく、物、手の出し入れが容易で、前屈みとなったときでもポケット3、5から中身が落下しにくい位置であることが好ましく、このような位置は、エプロン1を着用したときポケット3、5が腹部、腰部の高さで体側部となる位置である。ポケット3、5が腹部又は腰部の高さで体側部の位置から正面側により過ぎると、ポケットが車椅子のハンドルに引っ掛かりやすく、またポケット3、5から中身が落下し易くなる。一方、ポケット3、5が腹部又は腰部の高さで体側部の位置から背中側により過ぎると、ポケットが車椅子のハンドルに引っ掛かることはないが、ポケット3、5への物の出し入れが難しくなる。
【0025】
またポケット3、5は、ポケットの入口部21、23が、前身頃側15に比べ後身頃側13が低い位置となるように傾斜して取り付けられている。このようにポケット3、5を傾斜させ取り付けることで、ポケット3、5から中身がより落下しにくくなる。またポケット3、5を傾斜させたことで、ポケットの入口部21、23を水平とした場合に比べ、ポケット3、5への物、手の出し入れが容易となる。ポケット3、5を取り付ける角度は、ポケット3、5から中身が落下しにくく、またポケット3、5への物、手の出し入れが容易となる角度であれば、特定の角度に限定されるものではない。ポケットの取り付け角度を例示すれば、図2に示す水平線に対する角度αが10°〜20°である。
【0026】
ポケット3の下に設けられた補助ポケット7は、PHSの収納を目的に設けられたポケットである。補助ポケット7の取り付け要領は、取り付け高さを除けばポケット3、5と同じである。PHSの代わりに携帯電話を収納してもよく、さらには他の物品を収納することもできる。
【0027】
紐状掛止体9は、紐状の部材で形成され、主にPHSに取り付けられたストラップ27の先端部の掛止具29を引っ掛け、PHSが補助ポケット7から飛び出しても落ちないようにするためのものであって、ポケット3と補助ポケット7との間に設けられている。紐状掛止体9は、補助ポケット9の入口部31にほぼ平行であり、両端部がエプロン本体2に固定され、中央部はエプロン本体2と離れ、ループ状となっている。ここで示す紐状掛止体9の長さは、補助ポケット7の幅よりも短いが、補助ポケット7の幅と同じであってもよい。紐状掛止体9の材質は、エプロン本体2と同じあるが、特に限定されるものではない。
【0028】
紐状掛止体9及び補助ポケット7の使用例を示す。PHSに取り付けられたストラップ27の先端部の掛止具29、例えばフック、クリップ、アミナスカンなどを紐状掛止体9に引っ掛け、PHS本体は、補助ポケット7内に入れておく。これによりPHSが補助ポケット7から飛び出しても、落下することはない。介護従事者は、連絡手段としてPHSを使用することが多いので便利である。PHSの代わりに携帯電話であってもよいことは言うまでもなく、この他デジタルカメラなどにも好適に使用することができる。PHSに取り付けるストラップを、伸縮するスプリング方式のストラップとすれば、ストラップ27の先端部の掛止具29を紐状掛止体9に引っ掛けたまま使用することもできる。
【0029】
名札ホルダー11は、カード形状の名札を収納するためのもであって、エプロン本体2の左胸に設けられている。名札ホルダー11は、布製の帯状の部材で矩形に縁取られ、底辺33及び両側辺35はエプロン本体2に縫付けられ、上辺はエプロン本体2に縫付けられていない。このため名札ホルダー11の上部から名札を出し入れすることができる。名札ホルダー11の大きさは、収納する名札とほぼ同じ大きさであり、収納された名札は、名札ホルダー11内で移動することなく保持される。また、名札ホルダー11は、中央部37が大きく開口しているので、名札に記載された名前、又は顔写真を容易に視認することができる。また中央部37が大きく開口しているので、布の重なり部分が少なく、エプロン1を洗濯しても容易に乾く。
【0030】
第1実施形態に示したエプロン1は、上記のように両サイドに取り付けられたポケット3、5、補助ポケット7、補助ポケット7の入口部31の上方に設けられた紐状掛止体9及び名札ホルダー11に大きな特徴があり、これについてはエプロン以外の衣服にも適用することができる。特に介護従事者、医療従事者などが着用する介護服、介護用ユニフォーム、介護用作業服、白衣、手術着に好適に使用することができる。さらには保育士などが着用する仕事着、工業等で働く作業員が着用する作業服にも好適に適用することができる。ポケット3、5の取り付け要領に関しては、家庭用エプロンにも利用可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 エプロン
3 ポケット
5 ポケット
7 補助ポケット
9 紐状掛止体
11 名札ホルダー
13 後身頃
15 前身頃
21 ポケットの入口部
23 ポケットの入口部
31 補助ポケットの入口部
37 名札ホルダーの中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用したときポケットが腹部又は腰部の高さでかつ体側部となるようにポケットが取り付けられていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記ポケットは、ポケットの入口部が上部であり、前身頃側に比べ後身頃側が低い位置となるように傾斜して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
さらに、中央部が開口するように帯状の布で縁取りされ、上部から名札を出し入れする、カード状の名札を収納可能な名札ホルダーを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
さらに、前記ポケットの下方にさらにポケットが設けられ、該ポケットの入口部の上方に両端部が固定されたループ状の紐状掛止体を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の衣服。
【請求項5】
前記衣服が、エプロン、介護用ユニフォーム、白衣、作業服のいずれか1であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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