説明

表層土壌の剥ぎ取り収集車両及びバケット

【課題】効率よく表層土壌を薄く剥ぎ取る収集車両を提供する。
【解決手段】表層土壌の剥ぎ取り収集用の開口部13と、土の排出口97とを有し、開口部13の横幅寸法W1が車両1の横幅寸法W2以上であるバケット11と、車両1の前方側に開口部13を前方側に向けてバケット11を配置できるバケット支持部5と、開口部13の近傍に設けられて土を破砕する破砕装置80と、バケット11の内奥部に収集された土を排出口97に搬送する第1搬送装置91と、排出口97に搬送された土を、車両1の後部まで搬送する第2搬送装置92と、を有する表層土壌の剥ぎ取り収集車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表層土壌を除去する除去装置に関し、特に、表層土壌の拡散を抑制しつつ表層土壌を除去する除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の表層土壌の除去装置は、一般的に、タイヤ又はクローラベルトを有する自走式の建設機械又は農業機械を用いている。それらの除去装置には、先端部/後端部か、又は、前輪と後輪の中間部に、進行方向に対して前側が開口又は凹んで着脱可能なバケット又は排土板等が取り付けられる。以下、建設機械にバケットが取り付けられる場合について説明する。バケットは、一般的に油圧シリンダ等により上下移動が可能に取り付けられる。
【0003】
被除去領域の表層土壌を除去する場合、一般的なブルドーザー、ローダー又はグレーダー等では、バケットを上下移動させ、その下端のエッジ部分を表層土壌に差し込み、その差し込んだ状態で、自走式建設機械全体を前進させるか又は後退させることで、表層土壌を下の土壌と分離させて剥ぎ取る。さらに、その土を、すくいあげるか、進行方向に押し運ぶか、左右何れかの一方向に押し出すことで表層土壌を除去する。そして、除去された土壌はローダー又は油圧ショベル等により集積されて搬出される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、バックホウ型油圧パワーショベルを用いて除去した土壌を、後方の運搬車に効率的に搬送するために、車両の先端部に土砂かき寄せ用のエプロン、エプロンの後端に横向きに儲けられた第1のスクリューコンベア、その第1のスクリューコンベアの端部にL字型に結合されて、バックホウ型油圧ショベルの後部に土砂を搬送する第2のスクリューコンベアが設けられた装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−52595号公報
【特許文献2】特開2003−119822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年になり、表層のみ汚染された土壌の除去等のために、表層土壌の表面から2〜3cmのみを剥ぎ取り除去する効率的な方法及び装置の要望がある。しかしながら、自走式建設機械等に取り付けたバケット等を用いて表層土壌を剥ぎ取る従来の方法の場合、表層土壌の剥ぎ取り深さが表面から10cm程度の誤差範囲で変動し、薄く剥ぎ取ることは困難である。
【0007】
また、従来の方法の場合、剥ぎ取られた表層土壌を搬送車等に乗せるための作業が必要であり作業効率が悪く、作業時間を短縮できなかった。例えば、パワーショベル等で比較的容量の小さいバケットを用いて、比較的少ない量の表層土壌を剥ぎ取り、その剥ぎ取った毎にアームを持ち上げて回転させ、後方等に随行させた搬送車の荷台まで表層土壌を搬送するという方法が知られている。この方法では、毎回の剥ぎ取る土壌の量が少なく、さらにそのたびに回転させて移送するので、作業効率を改善することが難しかった。
【0008】
また、一般的なブルドーザー、ローダー又はグレーダー等で、一旦、バケットの下端を接地させながら自走させることによって、バケットの左右何れかの端部に表層土壌を寄せて集積させ、その後、その集積された表層土壌を、再度ブルドーザー、又は、パワーショベル等で後方等に随行させた搬送車の荷台まで搬送する方法が知られている。この方法では、単位時間内に剥ぎ取る土壌の量は多くできるが、その後に、再びブルドーザー、又は、パワーショベル等で持ち上げて搬送車に乗せる作業が必要になるので、同様に作業効率を改善することが難しかった。
【0009】
また、例えば、表層土壌が汚染されており、さらに乾燥している場合には、除去時に表層土壌が散逸して、表層土壌の汚染が拡散されるという問題が発生することがある。例えば、パワーショベル等で除去する場合には、剥ぎ取り作業時と、搬送車の荷台に表層土壌を落とす時に、乾いた土壌が空中に舞い上がり拡散される。また、ブルドーザー等で剥ぎ取る場合には、バケットの左右何れかの端部に寄せて集積させる時と、その集積された土壌を持ち上げて搬送車の荷台まで搬送する時に、乾いた土壌が空中に舞い上がり拡散される。
【0010】
また、特許文献2の装置では、バックホウ型の油圧パワーショベルにより土壌を搬送する効率が悪い点については改善できると推察できるが、表層土壌のみを薄く剥ぎ取るという問題を解決できない。また、例えば、土壌が草木の根部分を多く含む場合等には、スクリューコンベアへの導入部、あるいは、L字型に接続された2個のスクリューコンベア間の接続部で土壌の詰まりが発生する可能性があり、土壌の詰まりのメンテナンスのために中断するという問題を有している。
【0011】
そこで本発明は、表層土壌の表面から2〜3cmのみを剥ぎ取り除去でき、剥ぎ取った土壌を効率的に搬送でき、土壌中に草木の根部分を多く含んでいても、搬送経路が詰まらず、乾燥時にも搬送時の粉じん拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り装置及びバケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するために、本発明の一実施態様に係る表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、少なくとも前方に向けて走行できる車両であって、表層土壌の剥ぎ取り収集用の開口部と、剥ぎ取り収集された土の排出口とを少なくとも有し、前記開口部の横幅寸法が前記車両の横幅寸法以上であるバケットと、前記車両の前方側に設けられ、前記開口部を前方側に向け、且つ、底面を接地させるように前記バケットを配置できるバケット支持部と、前記バケットの剥ぎ取り収集用の開口部の近傍に設けられ、前記剥ぎ取り収集された土を破砕する破砕装置と、前記バケットの内奥部に設けられ、剥ぎ取り収集された土を前記排出口に搬送する第1搬送装置と、前記排出口に搬送された土を、少なくとも前記車両の後部まで搬送する第2搬送装置と、を有することを特徴とする。
【0013】
本実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両によれば、バケットの開口部の横幅寸法が前記車両の横幅寸法以上であるようにし、破砕装置と第1搬送装置と第2搬送装置とを有するので、バケットが表層土壌から潜りすぎないで表層土壌の表面から2〜3cmのみを剥ぎ取り除去でき、剥ぎ取った土壌を効率的に搬送でき、土壌が水分を多く含む粘土質等であっても破砕するため、搬送経路が詰まらず、土壌の詰まりのメンテナンスのために中断することが減少し、乾燥時にも搬送時の粉じん拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り装置を提供でき、表層土壌の剥ぎ取り収集作業を効率化でき、剥ぎ取り収集作業の連続性を向上させることができる。
【0014】
(2)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記破砕装置が、前記バケットの内側の底面及び上面には接触しない複数の刃が回転軸に取り付けられて構成されるようにしてもよい。
【0015】
本実施態様では、土壌中に通常の破砕装置では破砕できない草木の根部分を多く含んでいても、搬送経路が詰まらず、土壌の詰まりのメンテナンスのために中断することが減少し、乾燥時にも搬送時の粉じん拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り装置を提供できる。
【0016】
(3)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記破砕装置が、前記剥ぎ取り収集された土を破砕すると共に、土に対して前記第1搬送装置の位置まで進行可能な推進力を付与するようにしてもよい。
【0017】
本実施態様では、前記破砕装置が土を破砕するだけでなく、その回転スピードを高めて土に対して前記第1搬送装置の位置まで進行可能な推進力を付与することができ、バケット内に残る土を減少させることができる。
【0018】
(4)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記バケットの内部には、前記剥ぎ取り収集された土を前記第1搬送装置の位置までガイドするガイド板が設けられるようにしてもよい。
【0019】
本実施態様では、バケット内で破砕された土は、推進力が与えられるのみでなく、第1搬送装置の位置までガイドされるので、確実に第1搬送装置で排出口まで搬送される。
【0020】
(5)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記破砕装置と前記第1搬送装置を共に駆動するためのモータと駆動ベルトを有するようにしてもよい。
【0021】
本実施態様では、単一のモータと駆動ベルトで破砕装置と前記第1搬送装置を共に駆動できるので、製造コストを軽減させることができる。
【0022】
(6)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記破砕装置の刃は、ハンマーナイフであるようにしてもよい。
【0023】
本実施態様では、破砕装置の刃をハンマーナイフにすることで、通常の刃では破砕不可能な根で固められた表層土壌についても、破砕することができる。
【0024】
(7)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記第1搬送装置が、スクリューコンベアであるようにしてもよい。
【0025】
本実施態様では、土をスクリューコンベアでバケットの排出口まで搬送するので、水分を含む粘土質の土でも確実に搬送でき、且つ、乾燥している土でも搬送時の粉じん拡散量を少なくできる。
【0026】
(8)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記第1搬送装置のスクリューコンベアが、スクリュー軸の一端から軸長の中心又は中心から左右に偏った位置に土を集める第1のスクリューコンベアと、軸の他端から軸長の中心又は前記中心から左右に偏った位置に土を集める第2のスクリューコンベアと一体化させた構成であるようにしてもよい。
【0027】
本実施態様では、第1スクリューコンベアの軸長の途中に土を集め、そこの排出口から第2搬送装置に排出することで、第1スクリューコンベアがバケットの横に飛び出す突出量を軽減でき、装置全体の横幅を削減することができる。
【0028】
(9)好ましくは、本発明の一実施態様の表層土壌の剥ぎ取り収集車両では、前記第2搬送装置が、スクリューコンベアであるようにしてもよい。
【0029】
本実施態様では、土をスクリューコンベア車両の後まで搬送するので、水分を含む粘土質の土でも確実に搬送でき、且つ、乾燥している土でも搬送時の粉じん拡散量を少なくできる。
【0030】
(10)上記課題を解決するために、本発明の一実施態様に係るバケットでは、上記した何れかの表層土壌の剥ぎ取り収集車両に使用されることを特徴とする。
【0031】
本実施態様のバケットによれば、バケットの開口部の横幅寸法が前記車両の横幅寸法以上であるようにし、破砕装置と第1搬送装置とを有するので、バケットが表層土壌から潜りすぎないで表層土壌の表面から2〜3cmのみを剥ぎ取り除去でき、剥ぎ取った土壌を効率的に搬送でき、土壌が水分を多く含む粘土質等であっても破砕するため、搬送経路が詰まらず、土壌の詰まりのメンテナンスのために中断することが減少し、乾燥時にも拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り装置を提供でき、表層土壌の剥ぎ取り収集作業を効率化でき、剥ぎ取り収集作業の連続性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の表層土壌の剥ぎ取り収集車両及びバケットによれば、バケットの開口部の横幅寸法が前記車両の横幅寸法以上であるようにし、破砕装置と第1搬送装置と第2搬送装置とを有するので、バケットの低面を地表面に対して2〜3cm程度土に潜らせるように表層土壌の表面を薄く剥ぎ取り除去でき、剥ぎ取った土壌を効率的に搬送でき、搬送経路が詰まらず、乾燥時にも拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り・収集装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態のバケットを油圧ショベルの先端部に取り付けた状態を示す図であり、(a)が正面を示し、(b)が側面を示し、(c)が上面を示す図である。
【図2】図1のバケットを拡大して示す図であり、(a)が正面を示し、(b)が側面を示し、(c)が上面を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態のバケットを油圧ショベルの先端部に取り付けた状態を示す図であり、(a)が正面を示し、(b)が側面を示し、(c)が上面を示す図である。
【図4】図3のバケットを拡大して示す図であり、(a)が正面を示し、(b)が側面を示し、(c)が上面を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は図3の装置を試作した実際の装置の様子を示す写真である。
【図6】(a)〜(d)は図4のバケットを試作した実際のバケットと搬送装置の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
図1及び図2に示された第1実施形態の車両1は、一般的なタイヤ又はクローラベルトを有する自走式の建設機械又は農業機械に本発明の装備を追加したものである。図1では車両1が油圧ショベルの場合を示している。従って、車両1は、前方に向けて走行でき、ショベル、ローダー又はグレーダー等のバケット部分で表層土壌を剥ぎ取り収集できるものである。
【0035】
車両1は、一般的な油圧ショベルと同様に、操縦者が搭乗する運転席及び走行や各部を駆動させる動力源であるエンジン等を含む本体2、左右両脇に配置される走行部4を支持すると共に必要に応じて上に載せた本体2を回動させることができる車台部3、タイヤ又はクローラベルトで地上を走行可能である走行部4、車両1の前方側に設けられて、土壌を収集するバケット11を少なくとも上下に移動させることができるように支持できるバケット支持部となるアーム部5、アーム部5の前端部に取り付けられて土壌を収集するバケット11を有している。
【0036】
それに加えて車両1は、本体2の背面90の後部位置(例えばカウンターウエイトの位置近傍)に配置されて破砕装置80や第1搬送装置91のバケット用モータ84及び縦向スクリュー用モータ94に電力を供給する発電機85、発電機85と同様にカウンターウエイトの位置に配置されて収集された土壌を蓄積する土壌容器96、土壌容器96を本体2の後部に吊り下げることができるように保持する支持枠95を有している。
【0037】
バケット11は、アーム5と接続するための取付部12、バケット11の前側(車両1の進行方向に向かって)に設けられて表層土壌の剥ぎ取り収集用に開口するバケット開口部13、バケット11の左右の両側面を覆う側板14、バケット11の下面を覆う底板15、バケット11の背面を覆う背板16を有している。バケット開口部13は、土壌の剥ぎ取りに必要な最小面積を横向きのスリット状にその最下部に残す開閉自在の蓋で覆うようにしてもよい。そして、背板16又は底板15の一部、側板14の一部、または、側板14から円筒状に突出した突出部に剥ぎ取り収集された土を排出する横向きスクリュー排出口97を有している。突出部については、横向スクリューコンベア91に関連して後述する。また、バケット開口部13の横幅寸法W1は、車両1の左右に配置された走行部4の各外側端部の間の横幅寸法W2以上である。取付部12は、バケット開口部13を前方側に向け、且つ、底面15を接地させるようにバケット11を配置させて、バケット11をアーム部5に取付できる。底面15の接地面積は、耕作地等の耕された軟弱な表層土壌であっても土中に潜りすぎないよう、但し、2〜3cm程度は土中に潜る大きさに形成される。
【0038】
また、底面15の接地面積を広めに固定してしまうと、様々な堅さの表層土壌に対応することが困難になるので、底面15の接地面積は比較的土中に潜りやすいように狭くして、その代わり、バケット11の背板16の両脇の後部に、バケット11の姿勢と後端高さを所定値に安定させるための制御輪を設けるようにしてもよい。制御輪は、例えば、1cm単位で、土壌の柔らかさ等の状態に応じて高さを調節できるようにするとよい。また、制御輪は、バケット開口部13の横幅寸法W1よりも内側に設置され、柔らかい土壌であっても潜らないように幅広く形成されることが好ましい。
【0039】
バケット11の内部には、剥ぎ取り収集された土を破砕するための破砕装置としてハンマーナイフ装置80がバケット開口部13の近傍に設けられる。破砕装置の破砕刃82をハンマーナイフにすることにより、土壌中に通常の破砕装置では破砕できない草木の根部分を多く含んでいても、破砕することができ、搬送経路が詰まらないようにできる。その結果、土壌の詰まりのメンテナンスのために中断することが減少し、乾燥時にも拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り装置を提供できる。
【0040】
ハンマーナイフ装置80は、回転軸81に複数の破砕刃82が取り付けられて構成され、各破砕刃82は、バケット11の内側の底面15及び上面には接触しないように取り付けられ、回転方向を、下向きになった破砕刃82が内奥に向かって回る方向にして、回転スピードを高めに設定して遅くならないようにする。ハンマーナイフ装置の具体的な回転速度としては、一般的に500〜2000rpm程度の中の何れかの回転数で回転するので、例えば700rpmよりも回転数を遅くしないようにする。このようにハンマーナイフ装置80の回転方向と回転数を設定することで、剥ぎ取り収集された土を破砕すると共に、土に対してバケット11の内奥部(好ましくは最奥部)まで進行可能な推進力を付与することができ、それによりバケット11内に残る土を減少させることができる。
【0041】
さらに、バケット11の内奥部(最奥部)には、剥ぎ取り収集された土を横向きスクリュー排出口97に搬送する第1搬送装置として横向スクリューコンベア91と、剥ぎ取り収集されてハンマーナイフ装置80で破砕された土を横向スクリューコンベア91の位置までガイドする下側土壌ガイド板19と上側土壌ガイド板20が設けられる。横向スクリューコンベア91は、スクリュー本体の周囲が、背板16、下側土壌ガイド板19、上側土壌ガイド板20、及びそれらの延伸部により略円筒形状であるが、その側面を一部を長辺方向に切り欠いて土壌が入るように開口された形状で覆われている。その円筒形状の下側は半円筒又は円筒を任意の位置で縦方向に分割した円弧溝形状であり、バケット開口部13から収集され、ハンマーナイフ装置80で内奥部(最奥部)まで進行させられた土壌は、スクリュー本体が回転することにより、徐々に横向きスクリュー排出口97まで搬送されて排出される。本実施形態では、横向スクリューコンベア91の横向きスクリュー排出口97は、バケット11の側板14から円筒状に外側に突出した突出部の下側に設けられ、横向きスクリュー排出口97から剥ぎ取り収集された土が排出されて落下する。
【0042】
従って、ハンマーナイフ装置80で破砕され、ガイドされて内奥部(最奥部)まで進行させられて、横向スクリューコンベア91の位置まで来た土は、横向スクリューコンベア91で横向きスクリュー排出口97まで確実に搬送され、バケットの外に排出されるようになる。
【0043】
また、第1搬送装置を横向スクリューコンベア91にすることで、土をバケット11の横向きスクリュー排出口97まで搬送する場合に、水分を含んで重く粘度の高い粘土質の土でも確実に搬送できるだけでなく、逆に乾燥して飛散しやすくなっている土の場合の拡散量を少なくすることができる。
【0044】
バケット11の外周外側又は内部の空きスペースには、ハンマーナイフ装置80と横向スクリューコンベア91を共に駆動するためのバケット用モータ84が設けられ、さらにバケット用モータ84の回転軸と、ハンマーナイフ装置80の回転軸81と、横向スクリューコンベア91の横向スクリュー軸93とに跨るようにVベルト等の駆動ベルト83が掛けられる。このように単一のモータ84と駆動ベルト83でハンマーナイフ装置80と横向スクリューコンベア91を共に駆動することにより、製造コストを軽減させることができる。また、モータ84の軸と、回転軸81と、横向スクリュー軸93と、駆動ベルト83を保護するために、それらの外側を覆うカバーを設けてもよい。
【0045】
横向きスクリュー排出口97に搬送されて排出された土を、車両1の後部の土壌容器96の上まで搬送するための第2搬送装置として縦向スクリューコンベア92が設けられている。縦向スクリューコンベア92は、横向きスクリュー排出口97と対向する一方の端部位置に縦向スクリュー受入口98を有し、他方の端部位置には縦向スクリュー用モータ94と縦向きスクリュー排出口99とを有する。縦向スクリューコンベア92は、縦向スクリュー受入口98と縦向きスクリュー排出口99とを除いて、スクリュー本体の周囲が円筒状に覆われており、後ろへ行くほど高い位置になるように斜めに配置されている。これにより、横向きスクリュー排出口97から排出されて縦向スクリュー受入口98で受け止められた土壌は、スクリュー本体が回転することにより、縦向スクリューコンベア92の内部を、車両1の後部で土壌容器96の上部に配置された縦向きスクリュー排出口99まで徐々に搬送されて排出され、土壌容器96の内部に落下して蓄積される。このように、土を縦向スクリューコンベア92で車両1の後まで搬送することにより、水分を含む粘土質の土でも確実に搬送でき、且つ、乾燥している土でも搬送時の粉じんの拡散量を少なくできる。
【0046】
本実施形態のバケット11の底板15のバケット開口部13側の端部には、底板15の底面と下面が面一に連続するようにエッジ板17が取り付けられる。エッジ板17の前側端部には、例えば、片破砕刃包丁のように、横からの断面が傾斜する傾斜部が設けられている。エッジ板17は、傾斜部の下側の面積が広く上側に行くほど面積が狭くなるように、別の見方では、前側端部から後退するほど厚みが増加するように接地される。
【0047】
本実施形態のバケット11の底面に設置されるエッジ板17は、両側端に、側板14から突出する突出部18を有するように、幅寸法がW1よりも大きく形成される。この突出部18は、バケット11の側板14から外側に突出するため、本体2の運転席にいる操縦者が視認することができるので、エッジ板17で剥ぎ取っている表層の土の厚みを操縦者が確認することができる。
【0048】
また、突出部18は、エッジ板17の幅方向を実際の幅よりも延伸させて形成する場合に限らず、バケット11の側板14に別途に形成した突出部を取り付けるようにしても良い。また、側板14には、突出部だけでなく、表層土の剥ぎ取り厚さを容易に認識できるように厚さ目盛りを設けても良い。更に深さ目盛りの一目盛り毎に取付部を設けて突出部を取付、突出部が剥ぎ取り厚さを満足していることのガイドとなって操縦者に認識できるようにしてもよい。
【0049】
このような本実施形態の破砕装置80や第1搬送装置91とバケット用モータ84を備えるバケット11と、縦向スクリューコンベア92、及び、土壌容器96等を、油圧ショベル等の一般的な自走式の建設機械又は農業機械である車両1に用いることにより、表層土壌の剥ぎ取り収集作業を効率化でき、剥ぎ取り収集作業の連続性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態の表層土壌の剥ぎ取り収集車両1によれば、バケット11が、開口部13の横幅寸法W1が車両1の横幅寸法W2以上であるように形成されており、破砕装置80と第1搬送装置91と第2搬送装置92とを有するので、バケット11が表層土壌から潜りすぎないで、例えば、表層土壌の表面から2〜3cmのみを剥ぎ取り収集・除去できる。また、本実施形態の車両1によれば、剥ぎ取った土壌を効率的に搬送でき、土壌が水分を多く含む粘土質等であっても破砕するため、搬送経路が詰まらず、土壌の詰まりのメンテナンスのために中断することが減少し、乾燥時にも拡散が少ない表層土壌の剥ぎ取り装置を提供できる。
【0051】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、第1搬送装置91の一端部をバケット11の側板14の外側に突出させていた。しかし、表層土壌の剥ぎ取り作業は狭いところで実施する場合があり、その場合には、車両の幅がより狭いことが好ましくなる。そのため、第2実施形態では、第1搬送装置91をバケット11の開口部13の横幅寸法W1内に収まるように、バケットの下側土壌ガイド板19と底板15との隙間を減らして、底板15の背板16側の一部を底板斜行部21として徐々に浮かせ、第2搬送装置92の一端部の縦向スクリュー受入口98が、横向スクリューコンベア91の下側に収容されるようにした。
【0052】
さらに第2実施形態では、第1搬送装置91の横向きスクリュー排出口97の位置もバケット11の開口部13の横幅寸法W1内に収まるようにした。横向きスクリュー排出口97の位置が、バケット11の最端部である場合には、横向スクリューコンベア91のスクリュー本体の螺旋の向きは一方向のままでよいが、横向きスクリュー排出口97の位置が、バケット11の横幅のやや中央寄りになった場合、すなわち、スクリュー軸93の軸長の中心又は中心から左右に偏った位置になった場合には、横向スクリューコンベア91のスクリュー本体の螺旋を、横向きスクリュー排出口97の位置で2つに分割して、横向きスクリュー排出口97の位置に土が集まるように、各々の螺旋方向を逆向きに対向させて形成する。この場合の横向スクリューコンベア91のスクリュー本体は、スクリュー軸93の一端から軸長の中心又は中心から左右に偏った位置に土を集める第1スクリュー部91aと、軸93の他端から軸長の中心又は前記中心から左右に偏った位置に土を集める第2スクリュー部91bとを軸93上で一体化させた構成となる。
【0053】
このように本実施態様では、第1スクリューコンベア91の軸長の途中に土を集め、そこの横向きスクリュー排出口97から第2搬送装置92に排出することで、第1スクリューコンベア91がバケット11の側板14の外側に飛び出す突出量を軽減でき、装置全体の横幅を削減することができる。
【0054】
<応用例>
また、本実施態様を応用して、エッジ板17の前端部の位置を、ハンマーナイフ装置80の破砕刃82の先端が最下点に達した時の位置の真下に略合致するようにエッジ板17やハンマーナイフ装置80の寸法や取付位置を調整しても良い。これは、エッジ板17上に近接させて破砕刃82を高速回転させた場合、その回転する破砕刃82が一種の壁になってしまい、その前に土が溜まったり残ってしまう場合があるためである。
【0055】
エッジ板17やハンマーナイフ装置80の寸法や取付位置を調整する場合、更に詳しくは、エッジ板17と底板15の幅寸法を調整し、刃の長さと到達する最外周の位置に合わせてハンマーナイフ装置80をバケット11の側板14に取り付ける位置を調整する。その調整の際には、破砕刃82の先端が最下点に達した時の位置とエッジ板17の最近部(前端部)の間隔が最小限になるように設定する。このようにして間隔を最小限に設定することで、エッジ板17上で回転する破砕刃82が壁になってその前に土が溜まったり、残ってしまうことが無くなり、表層土壌の剥ぎ取り収集作業を効率化でき、剥ぎ取り収集作業の効率をさらに向上させることができる。
【0056】
なお、間隔を最小限に設定する際には、各種の使用状況等を考慮しても接触しないように設定する。各種の使用状況を考慮とは、例えば、(a)ハンマーナイフの軸芯と回転中心との偏芯によりブレや振動が発生すること、(b)回転時の熱等により軸が半径方向に膨張したり刃が長さ方向に膨張すること、(c)遠心力等によって軸と刃との接続部等の間隙が減少することや刃が変形したり刃の素材自体が伸びること、(d)回転や使用により軸や刃及び接続部が摩耗したり欠損すること、(e)経年の使用や保存により素材が変形したり寸法変化すること、(f)バケットの外形が自重や外部からの打突応力等により変形したり寸法変化すること、さらに(f)不測の事態に備えての計算上や実験/経験上で得られた安全係数を最小間隔に掛けること、等を考慮することである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上記各実施形態では、第1搬送装置91と第2搬送装置92とがスクリューコンベアである場合について説明したが、土の搬送が可能であればベルトコンベアであってもよく、また、スクリューコンベアにフレキシブル性を持たせたタイプであっても良く、さらに、真空ポンプを用いた搬送装置であってもよい。また、上記各実施形態では、平地の表層土壌を除去する場合について説明してきたが、本発明の表層土壌の剥ぎ取り収集車両及びバケットはこれに限らず、例えば、斜面・法面や丘陵地の表層土壌を剥ぎ取り収集する場合にも、例えば、バケットの上面とアームと接続部の自由度を上げ、その接続部間に油圧シリンダを配置することで対応することができる。また、本発明の表層土壌の剥ぎ取り収集車両は表層の土壌に埋もれている埋土種子を効率よく採取することが可能であり、目的に応じて数センチ単位の層状に土壌を剥ぎ取り分けることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 油圧ショベル(車両)、
2 本体、
3 車台部、
4 走行部、
5 アーム部、
11 バケット、
12 取付部、
13 バケット開口部、
14 側板、
15 底板、
16 背板、
17 (底面開口側端部)エッジ板、
18 (底面側端)突出部、
19 下側土壌ガイド板、
20 上側土壌ガイド板、
21 底板斜行部、
80 ハンマーナイフ装置(破砕装置)、
81 破砕刃回転軸、
82 破砕刃、
83 駆動ベルト
84 バケット用モータ、
85 発電機、
90 本体背面
91 第1搬送装置(横向スクリューコンベア)、
91a 第1スクリュー部91a、
91b 第2スクリュー部91b
92 第2搬送装置(縦向スクリューコンベア)、
93 横向スクリュー軸、
94 縦向スクリュー用モータ、
95 支持枠、
96 土壌容器、
97 横向きスクリュー排出口、
98 縦向スクリュー受入口、
99 縦向スクリュー排出口、
W1 バケット横幅寸法
W2 油圧ショベル横幅寸法
W11 横向スクリュー第1部分
W12 横向スクリュー第2部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前方に向けて走行できる車両であって、
表層土壌の剥ぎ取り収集用の開口部と、剥ぎ取り収集された土の排出口とを少なくとも有し、前記開口部の横幅寸法が前記車両の横幅寸法以上であるバケットと、
前記車両の前方側に設けられ、前記開口部を前方側に向け、且つ、底面を接地させるように前記バケットを配置できるバケット支持部と、
前記バケットの剥ぎ取り収集用の開口部の近傍に設けられ、前記剥ぎ取り収集された土を破砕する破砕装置と、
前記バケットの内奥部に設けられ、剥ぎ取り収集された土を前記排出口に搬送する第1搬送装置と、
前記排出口に搬送された土を、少なくとも前記車両の後部まで搬送する第2搬送装置と、
を有することを特徴とする表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項2】
前記破砕装置が、前記バケットの内側の底面及び上面には接触しない複数の刃が回転軸に取り付けられて構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項3】
前記破砕装置が、前記剥ぎ取り収集された土を破砕すると共に、土に対して前記第1搬送装置の位置まで進行可能な推進力を付与する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項4】
前記バケットの内部には、前記剥ぎ取り収集された土を前記第1搬送装置の位置までガイドするガイド板が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項5】
前記破砕装置と前記第1搬送装置を共に駆動するためのモータと駆動ベルトを有する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項6】
前記破砕装置の刃は、ハンマーナイフである
ことを特徴とする請求項2に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項7】
前記第1搬送装置が、スクリューコンベアである
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項8】
前記第1搬送装置のスクリューコンベアが、スクリュー軸の一端から軸長の中心又は中心から左右に偏った位置に土を集める第1のスクリューコンベアと、軸の他端から軸長の中心又は前記中心から左右に偏った位置に土を集める第2のスクリューコンベアと一体化させた構成である
ことを特徴とする請求項7に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項9】
前記第2搬送装置が、スクリューコンベアである
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の表層土壌の剥ぎ取り収集車両。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の剥ぎ取り収集車両に使用される
ことを特徴とするバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113073(P2013−113073A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263277(P2011−263277)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】