説明

表皮一体ポリウレタンフオ−ムモ−ルド成形品およびその製法

【構成】 表皮をセットした型内で,活性水素含有化合物(a)と芳香族ポリイソシアネ−ト(b)とを発泡剤(c),触媒(d)および 必要により他の添加剤(e)の存在下で反応させる表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品を製造する方法において,(a)として高分子ポリオ−ルとモノオ−ルの重量比率が100:0〜50:50からなる成分を用い、(d)としてTDI−100/ジエチレングリコ−ルのゲル化反応定数が6.0以下の3級アミンを使用し、かつNCOインデックスが80以下で反応させる。
【効果】 上記方法で得られる表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品は、低、中周波領域における防音性能に優れており、また表皮一体モ−ルド成形方法であるため生産性に優れ、経済的であるので自動車のダッシュサイレンサ−、フロア−カ−ペットの裏打ちなどに用いる遮音材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低、中周波における振動特性(防音性能)に優れた表皮一体ポリウレタンフォ−ムのモ−ルド成形品およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,振動特性(防音性能)を有するポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品としては、アスファルト、ウレタンオリゴマ−等の粘性物質を含有するポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品が知られている(たとえば特開昭62−205115号公報)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のものは次の■〜■のような欠点があった。■原料の粘度が高いため型内に注入した場合、型内での原料の流れ性が悪く、フォ−ムの成形性が悪い。■フォ−ムの脱型時間が長く生産性が悪い。■フォ−ムの通気性が悪いため、閉じ込められた空気がバネとして働き、低、中周波領域における振動特性(固体伝播音の防音性能)が低下する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、低、中周波領域における振動特性(防音性能)に優れ、生産性の高い表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品およびその製法を見い出すべく検討した結果、本発明に到達した。
【0005】すなわち本発明は表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品において、フォ−ム層の通気性が3.0ft3 /分以上でありフォ−ム層の硬さが8kg/314cm2 以下(25%ILD)であることを特徴とするフォ−ムモ−ルド成形品;並びに表皮をセットした型内で,活性水素含有化合物成分(a)と芳香族ポリイソシアネ−ト(b)とを、発泡剤(c)、3級アミン触媒(d)および必要により他の添加剤 (e)の存在下で反応させて表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品を製造する方法において、(a)として高分子ポリオ−ル(a1)とモノオ−ル(a2)の重量比率が100:0〜50:50からなる成分を用い,かつNCOインデックスが80以下で反応させて上記フォ−ムモ−ルド成形品を製造することを特徴とする方法である。
【0006】本発明のモ−ルド成形品を構成する表皮としては特に限定はなく、通常表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品に用いられる表皮用材料、例えば、塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂などの樹脂に必要により各種フィラ−を加えて成形したシ−トが挙げられる。本発明の成形品は表皮とフォ−ム層とがモ−ルド内成形により一体化した構造を有する。本発明の成形品の形状としては片面が表皮で覆われた平板状または凹凸のある板状のものなどが挙げられる。
【0007】本発明のモ−ルド成形品において、フォ−ム層の通気性は通常3.0ft3 /分以上、好ましくは3.0〜8.0ft3/分であり、フォ−ム層の硬さは通常8kg/314cm2 以下(25%ILD)、好ましくは3〜8kg/314cm2である。通気性が3.0ft3 /分未満であったり、フォ−ム硬さが8kg/314cm2を超えると、本発明の目的とする振動特性(バネ定数を下げる)が悪くなり、固体伝播音の遮音効果が著しく損なわれる。なお上記において、通気性の測定値はダウ式エア−フロ−メ−タ−を用い、テストピ−ス形状50×50×25mmの条件で測定する値である。また、フォ−ム層の硬さの測定値はJISK−6382に準拠し、2cm厚み、25%ILD(kg/314cm2)の条件で測定する値である。なお、ダウ式エア−フロ−メ−タ−とは、ウレタンフォ−ムの通気性を測定する装置で、次の手順で測定する。■装置前面の中央部に設けられた、タテ50mmヨコ50mm奥行き25mmで背面が格子で仕切られた凹部に、同寸法のテストピ−スを装填する。■テストピ−スの背後から減圧吸引し、テストピ−スの露出した表面側から内部を通過して背後に吸い込まれる単位時間当りの空気量を測定する。
【0008】本発明の方法において活性水素含有化合物(a)を構成する該高分子ポリオ−ル(a1)としては、例えば活性水素原子を2個以上有する低分子化合物(多価アルコール類、アミン類など)にアルキレンオキサイドが付加した構造のポリエ−テルポリオ−ルや、このものの中でエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリル、スチレンなど)を重合させて得られる重合体ポリオ−ル(特開昭54−10899号、特開昭54−122396号公報記載のもの)が挙げられる。上記多価アルコ−ル類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコ−ル;特開昭62−205115号記載の3〜8価の多価アルコ−ル(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビト−ル、シュ−クロ−ズなど)などが挙げられる。また上記アミン類としては、アンモニア;モノ−、ジ−、およびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;C1〜C20のアルキルアミン類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2〜C6アルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン;アニリン、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミンなどの芳香族アミン類;イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミンなどの脂環式アミン類;アミノエチルピペラジン、特公昭55−21044号公報記載の複素環式アミン類などが挙げられる。これらの活性水素原子を2個以上有する低分子化合物は2種以上併用してもよい。これらのうちで好ましいのは多価アルコール類である。
【0009】上記活性水素を2個以上有する低分子化合物に付加させるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)1,2−、1,3−、1,4−、2,3−ブチレンオキサイド等およびこれらの2種以上の併用が挙げられ、好ましくはEOとPOの併用である。EOとPOを併用する場合の付加形式は、PO付加後にEOを末端に付加するもの(EOチップタイプ)、あるいはPOおよびEOをランダム付加するもの(ランダムタイプ)、あるいは分子鎖内部にEOをブロック付加あるいはランダム付加した後、EOを末端に付加するもの(バランスタイプ)等が挙げられるが、末端EO量が10〜20重量%のバランスタイプが好ましい。
【0010】該高分子ポリオ−ル(a1)の平均官能基数は通常2.0〜8.0、好ましくは2.0〜4.0、更に好ましくは2.0〜2.5であり、OH当量は通常800以上、好ましくは1000〜2000である。平均官能基数が2未満であるか、OH当量が2000を超える場合は、硬化時間が長くなり生産性が悪くなる。また、平均官能基数が8を超えるか、OH当量が800未満の場合は、フォ−ムの通気性が悪く、振動特性も悪くなる。
【0011】本発明の方法において該モノオ−ル(a2)としては、特開昭62−205115号公報などに記載の炭素数1〜30の1価アルコ−ル、1価フェノ−ル類(例えばフェノ−ル、クレゾ−ル等)、等の活性水素原子を1個有する低分子化合物のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。低分子化合物に付加させるアルキレンオキサイドとしてはEO、PO、1,2−、1,3−、1,4−、2,3−ブチレンオキサイド等およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は通常2〜40モル、好ましくは5〜〜30モルである。モノオ−ル(a2)として好ましいものは1価アルコ−ルにPOを付加した後、末端にEOを付加したもので、末端EO量が10重量%以下、OH当量500〜2000であるが、特に限定されるものではない。
【0012】高分子ポリオ−ル(a1)とモノオ−ル(a2)の重量比率は100:0〜50:50であり、好ましくは90:10〜70:30である。モノオ−ル(a2)が50を超えると、フォ−ム強度の著しい低下、表皮材との接着不良等が起こる。モノオ−ル(a2)を併用することにより、本発明の目的とする通気性アップに寄与する点で好ましいが、高分子ポリオ−ル(a1)単独でも目的とする通気性は確保出来る。
【0013】本発明の方法において使用する芳香族ポリイソシアネ−ト(b)としては、従来からウレタンフォ−ムの製造に使用されている芳香族ポリイソシアネ−トが使用できる。例えば、TDI;MDI;粗製TDI;粗製MDI;変性液状MDI(カ−ボジイミド変性、トリヒドロカルビルホスフェ−ト変性等);これらと前記に例示したポリエ−テルポリオ−ルとからの遊離イソシアネ−ト基含有プレポリマ−;並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものはTDIおよびTDIと粗製MDIの併用であり、特に好ましいのはTDIと粗製MDIの併用である。
【0014】該発泡剤(c)としては水および/またはその他の発泡剤(トリクロロモノフルオロメタン,メチレンクロライド等)があげられる。(c)の使用量は、一般のウレタンフォームの発泡に使用される量{例えば活性水素含有化合物成分(a)に対し、1〜20重量%}を使用すればよい。
【0015】該3級アミン触媒(d)としては、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルアミノジエチルエ−テル、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルエタノ−ルアミン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾ−ル、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。これらのうち好ましいものは、TDI−100とジエチレングリコ−ルとを、この触媒の存在下で反応させた際のゲル化反応定数が6.0以下となる3級アミン触媒(d1)である。ここにおいてゲル化反応定数とは、ベンゼン溶液中、触媒の存在下で等モル量のTDI−100とジエチレングルコ−ルとを反応させた場合のゲル化反応による反応定数であり、触媒の樹脂化反応活性度を示すものである。(d1)の具体例としては、上記に例示したもののうち、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルアミノジエチルエ−テル、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルエタノ−ルアミン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾ−ルが挙げられる。これらのうち更に好ましいものはN,N’−ジメチルアミノジエチルエ−テル、テトラメチルエチレンジアミンである。また(d)とともに必要により、その他の触媒を併用してもよい。これらの触媒としては、例えば特開平1−203420号記載の公知のものが使用できる。具体的にはカルボン酸の金属塩、アルカリおよびアルカリ土類金属のアルコキシドおよびフェノキシド、第4級アンモニウム塩、イミダゾ−ル類、スズやアンチモン等の有機金属化合物等が挙げられる。(d1)と、(d1)以外の3級アミン触媒や上記その他の触媒とを併用する場合も好ましい触媒として使用できる。
【0016】必要により用いる他の添加剤(e)としては界面活性剤(シリコ−ン系界面活性剤など)、顔料、フィラ−、アスファルト、難燃剤、溶剤、揺変剤などが挙げられる。
【0017】本発明の方法によりポリウレタンフォ−ムを作る時のNCOインデックスは通常80以下、好ましくは80〜40である。NCOインデックスが80を越えるとフォ−ム硬さがアップし、共振周波数が高周波側に移行する。その結果バネ定数が大きくなり固体伝播音の遮音効果が低下する。
【0018】本発明の方法において、モ−ルド成形する方法は従来と同じでよく、ワンショット法、プレポリマー法(セミプレポリマー法)何れも適用できるが、ワンショット法が好ましい。成形条件は通常、原料液温は15〜45゜C、型温および表皮材温度は25〜80゜Cで、高圧または低圧発泡機を用いて原料の2液(イソシアネ−ト成分とそれ以外の成分)を混合して型に注入し、キュア時間1〜10分で脱型する。
【0019】
【実施例】以下実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。なお実施例中での略記号は下記の意味を示す。
【0020】ポリオ−ルA:グリセリンにPOおよびEOを順次付加して得た1級OH含量80%,分子量5000のポリエ−テルポリオ−ル。
ポリオ−ルB:プロピレングリコ−ルにPO,EO,PO,EOを順次付加して得た1級OH含量75%,分子量4000のポリエ−テルポリオ−ル。
ポリオ−ルC:グリセリンにPOおよびEOを順次付加して得た1級OH含量75%,分子量7000のポリエ−テルポリオ−ル。
ポリオ−ルD:ポリオ−ルA中でアクリロニトリルを20%重合させて得られる重合体ポリオ−ル。
モノオ−ルA:ブタノ−ルにPOを付加して得られる分子量1200のモノオ−ル。
【0021】TDI−80:トルエンジイソシアネ−ト(2,4/2,6異性体重量比=80/20)
粗製MDI :粗製ジフェニルメタンジイソシアネ−トTM80 :TDI−80/粗製MDI=80/20ブレンド品
【0022】U1000 :サンアプロ(株)製テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ゲル化反応定数 5.0833LV:DABCO 33LV(三共エア−プロダクツ社製トリエチレンジアミンのジプロピレングリコ−ル溶液)、トリエチレンジアミンのゲル化反応定数 12.2TMED:テトラメチルエチレンジアミン、ゲル化反応定数 4・86
【0023】L5309:日本ユニカ−(株)製シリコ−ン整泡剤。
SRX274C:ト−レ・ダウコ−ニング・シリコ−ン(株)製シリコ−ン整泡剤
【0024】実施例 1〜4、比較例1下記表1に示す発泡処方(部)に従って、(a1)、(a2)および(c)〜(e)の各成分をプレミックスした後、(b)成分を加えて8秒間激しく攪拌し、3kg/m2の塩化ビニル樹脂マットを下型にセットした50〜60℃のアルミ製モ−ルド(85X85X2cm)に注入し発泡させた。60℃で所定の時間キュア−後脱型し、実施例1〜4および比較例1のフォ−ム成形品を得た。
【0025】
【表1】


【0026】次いで、実施例1〜4および比較例1のフォ−ム成形品のフォ−ム物性試験を行なった結果を表2、および図1に示す。
【0027】
【表2】


【0028】注1)表2および図1におけるフォ−ム物性試験方法および単位は下記の通りである。
全密度(kg/m3) :フォ−ム重量/フォ−ムの見かけ体積引張強度(kg/cm2) :JIS K−6301伸び(%) :JIS K−6301引裂強度(kg/cm) :JIS K−638225%ILD(kg/314cm2):JIS K−6382圧縮永久歪(%) :JIS K−6382通気性(ft3/min) :ダウ式エア−フロ−メ−タ−にて測定。(試験片は50×50×2mm)
共振周波数 :下記振動特性試験において、振動伝達率が極大となる位置における周波数。
振動特性 :加振周波数 0−500Hz加振レベル 0.1−0.2G,0.2−0.3mm加振源のアルミ板にフォ−ム、塩化ビニル樹脂マットの順に乗せ、アルミ板と塩化ビニル樹脂マット間の加速度変位量を求める。
注2)図1では、実施例のうちの代表例として実施例1、4を選び、比較例1と共に振動特性を示した。図1においては、共振周波数が低い程、また振動伝達率が低い程、遮音性能が優れていることを示す。
【0029】
【発明の効果】本発明の表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品は振動特性(防音性能)、特に低、中周波領域における固体伝播音の遮音性に優れている。また本発明の方法は表皮一体モ−ルド成形方法であるため生産性に優れており、経済的である。上記効果を奏することから本発明の方法で得られる本発明のフォ−ムモ−ルド成形品は自動車のダッシュサイレンサ−、フロア−カ−ペットの裏打ちなどに用いる遮音(防音)材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1、4および比較例で得たフォ−ムの振動特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品において、フォ−ム層の通気性が3.0ft3 /分以上であり、フォ−ム層の硬さが8kg/314cm2 以下(25%ILD)であることを特徴とするフォ−ムモ−ルド成形品。
【請求項2】 表皮をセットした型内で,活性水素含有化合物成分(a)と芳香族ポリイソシアネ−ト(b)とを、発泡剤(c)、3級アミン触媒(d)および 必要により他の添加剤 (e)の存在下で反応させて表皮一体ポリウレタンフォ−ムモ−ルド成形品を製造する方法において、(a)として高分子ポリオ−ル(a1)とモノオ−ル(a2)の重量比率が100:0〜50:50からなる成分を用い,かつNCOインデックスが80以下で反応させて請求項1記載のフォ−ムモ−ルド成形品を製造することを特徴とする方法。
【請求項3】 (d)がTDI−100とジエチレングリコ−ルとを、この触媒の存在下で反応させた際のゲル化反応定数が6.0以下となる3級アミン触媒(d1)である請求項2記載の方法。

【図1】
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