説明

表面性状測定機

【課題】オートセット動作や測定器追従機能においても、高精度な設定や測定が期待できる表面性状測定機を提供する。
【解決手段】被測定物Wと検出器8とを互いに直交する3軸方向へ相対移動させるY軸移動機構、Z軸移動機構(Zスライダ4)およびX軸移動機構6と、相対移動方向が被測定物の測定面と平行になるようにX軸移動機構6を傾斜させる傾斜機構(旋回プレート5)と、この傾斜角を記憶する傾斜角記憶手段と、傾斜角記憶手段に記憶された傾斜角に基づいて、被測定物Wと検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面に対して垂直方向に変化するように、Z軸移動機構(Zスライダ4)およびX軸移動機構6の駆動を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の表面粗さ、うねり、形状等の表面性状を測定する表面性状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
表面性状測定機として、被測定物の形状等の表面性状を測定する形状測定機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
従来の形状測定機は、図9に示すように、被測定物Wを載置するベース1と、このベース1の上面に垂直に立設されたZ軸コラム3と、このZ軸コラム3に上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたZスライダ4と、このZスライダ4にY軸を中心として旋回可能に設けられた旋回プレート5と、この旋回プレート5に取り付けられたX軸移動機構6と、このX軸移動機構6に連結された検出器8とから構成されている。
検出器8は、X軸移動機構6に連結された検出器本体8Aと、この検出器本体8AにY軸を中心として回動可能に支持されたスタイラス8Bと、このスタイラス8Bの先端に直角に設けられた触針8Cと、この触針8Cの上下方向変位(スタイラス8Bの揺動量)を検出する検出部(図示省略)とから構成されている。
【0003】
被測定物Wを測定するにあたっては、次のような手順で行われる。
(a)Zスライダ4をZ軸コラム3の上方へ移動させる。
(b)ベース1に被測定物Wを載置する。
(c)Zスライダ4をZ軸コラム3の下方へ移動させて、検出器8の触針8Cを被測定物Wの測定面近傍に位置決めする(触針8Cは被測定物Wに接触させない)。
(d)測定スタートボタンを押す。
(e)Zスライダ4がZ軸コラム3に沿って下降する。
(f)検出器8の触針8Cが被測定物Wに接触し始める。
(g)検出器8の検出値が所定値(例えば、0点)を超えたら、Zスライダ4の下降を停止させる。
(h)Zスライダ4をZ軸コラム3に沿って微速で上昇させ、検出器8の検出値が所定値(例えば、0点)に達した時点で、Zスライダ4の上昇を停止させる。(なお、このステップは省略させる場合がある)
(i)X軸移動機構6を駆動させ、検出器8をX軸方向へ走査させて測定を開始する。
【0004】
【特許文献1】特開2004−257958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した測定手順のうち、(e)〜(h)のステップが、測定スタートボタンの操作に基づいて自動的に行われる、いわゆる、オートセット動作と呼ばれている。
ところが、このオートセット動作は、Zスライダ4をZ軸コラム3に沿って昇降させるのみであるため、例えば、図10のように、被測定物Wの測定面W1と平行になるように、X軸移動機構6を傾斜させた場合、Zスライダ4が触針8Cの軸方向とは異なる方向へ移動することになる。つまり、図11に示すように、Zスライダ4が触針8Cの軸方向とは異なるZ軸コラム3に沿って昇降するため、測定者に対して違和感を与えると同時に、検出器8の検出値とZスライダ4の昇降量が等しくないため、停止したときの誤差量が大きくなるという課題がある。
【0006】
また、測定にあたって、検出器8を被測定物Wの測定面に沿って移動させ、このときの検出器8からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する機種のほかに、測定レンジの拡大を目的として、検出器8を被測定物Wの測定面に沿って移動させるとともに、検出器8からの検出値が所定値(予め設定した所定範囲内)になるようにZスライダ4をZ軸コラム3に沿って昇降させ、このZスライダ4の昇降量を基に測定面の表面性状を測定する、いわゆる、測定器追従型の機種の場合でも、X軸移動機構6の旋回角度に拘わらず、Zスライダ4がZ軸コラム3に沿って昇降するだけであるため、上述した課題がある。
【0007】
また、この種の測定機の中には、図12に示すように、触針8Cの向きをスタイラス8Bの軸線に対して回転できるようにした機種も知られているが、このものも、オートセット動作の方向がZ軸およびY軸方向に規定されているため、触針8Cの向きも90°毎に制限されている。その結果、触針8Cが被測定物Wの測定面に対して当接できない場合が生じるという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、このような課題を解決すべくなされたもので、オートセット動作や測定器追従機能においても、高精度な設定や測定が期待できる表面性状測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表面性状測定機は、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させ、このときの検出器からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機、または、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させるとともに、検出器からの検出値が所定値になるように検出器と被測定物との相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記被測定物と前記検出器とを互いに直交する2軸方向へ相対移動させる第1移動機構および第2移動機構と、前記相対移動方向が前記被測定物の測定面と平行になるように前記第2移動機構を前記第1移動機構に対して傾斜させる傾斜機構と、この傾斜機構の傾斜角を記憶する傾斜角記憶手段と、この傾斜角記憶手段に記憶された傾斜角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が前記被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第1移動機構および第2移動機構の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、傾斜機構によって、被測定物と検出器との相対移動方向が、被測定物の測定面と平行になるように、第2移動機構を第1移動機構に対して傾斜させると、この傾斜機構の傾斜角が傾斜角記憶手段に記憶される。すると、制御手段によって、傾斜角記憶手段に記憶された傾斜角に基づいて、被測定物と検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、第1移動機構および第2移動機構の駆動が制御される。
従って、オートセット動作では、第1移動機構および第2移動機構の駆動制御により、被測定物と検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化されるから、違和感がなく、しかも、検出器の向きと、被測定物と検出器との相対距離変化方向とが一致しているから、誤差量が少なく、高精度なオートセット動作を実現できる。
また、検出器追従型の機種にあっても、検出器の向きと、被測定物と検出器との相対距離変化方向とが一致しているから、誤差量が少なく、高精度な測定が期待できる。
【0011】
本発明の表面性状測定機は、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させ、このときの検出器からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機、または、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させるとともに、検出器からの検出値が所定値になるように検出器と被測定物との相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記被測定物と前記検出器とを互いに直交する3軸方向へ相対移動させる第1移動機構、第2移動機構および第3移動機構と、前記検出器の向きを前記第3移動機構の移動方向軸線を中心として回転させる回転機構と、この回転機構の回転角を記憶する回転角記憶手段と、この回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第1移動機構および第2移動機構の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、回転機構によって、検出器の向きを被測定物の測定面に対して垂直方向になるように、第3移動機構の移動方向軸線を中心として回転させると、この回転機構の回転角が回転角記憶手段に記憶される。すると、制御手段によって、回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、被測定物と検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、第1移動機構および第2移動機構の駆動が制御される。
従って、オートセット動作では、第1移動機構および第2移動機構の駆動制御により、被測定物と検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化されるから、違和感がなく、しかも、検出器の向き(変位量)と、被測定物と検出器との相対距離変化方向とが一致しているから、誤差量が少なく、高精度なオートセット動作を実現できる。
また、検出器追従型の機種にあっても、検出器の向き(変位量)と、被測定物と検出器との相対距離変化方向とが一致しているから、誤差量が少なく、高精度な測定が期待できる。
【0013】
本発明の表面性状測定機は、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させ、このときの検出器からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機、または、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させるとともに、検出器からの検出値が所定値になるように検出器と被測定物との相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記被測定物と前記検出器とを互いに直交する3軸方向へ相対移動させる第1移動機構、第2移動機構および第3移動機構と、前記相対移動方向が前記被測定物の測定面と平行になるように前記第3移動機構を前記第2移動機構に対して傾斜させる傾斜機構と、この傾斜機構の傾斜角を記憶する傾斜角記憶手段と、前記検出器の向きを前記第3移動機構の移動方向軸線を中心として回転させる回転機構と、この回転機構の回転角を記憶する回転角記憶手段と、前記傾斜角記憶手段に記憶された傾斜角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が前記被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第2移動機構および第3移動機構の駆動を制御するとともに、前記回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第1移動機構および第2移動機構の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、上述した効果を同時に期待できる。
【0014】
本発明の表面性状測定機において、前記制御手段は、スタート指令が与えられたことを条件に、前記検出器が被測定物の測定面に対して垂直方向から接近するように、いずれかの移動機構を移動させ、前記検出器からの検出値が予め設定した所定値を超えた際に移動機構の駆動を停止させることが好ましい。
この発明によれば、スタート指令が与えられると、検出器が被測定物の測定面に対して垂直方向から接近するように、いずれかの移動機構が動作される。やがて、検出器からの検出値が予め設定した所定値を超えると、移動機構の駆動が停止されるから、スタート指令を与えるだけでオートセット動作を実行できる。
【0015】
本発明の表面性状測定機において、前記制御手段は、前記移動機構の駆動を停止させたのち、前記移動機構を前記とは逆方向へかつ前記速度より低速で駆動させ、前記検出器からの検出値が予め設定した所定値に達した際に移動機構の駆動を停止させることが好ましい。
この発明によれば、オートセット動作において、移動機構の駆動を停止させたのち、移動機構を前記とは逆方向へかつ前記速度より低速で駆動させ、検出器からの検出値が予め設定した所定値に達した際に移動機構の駆動が停止されるから、検出器を所定位置に高精度に位置決めできる。
【0016】
本発明の表面性状測定機において、前記検出器は、前記移動機構によって移動される検出器本体と、この検出器本体に揺動可能に支持されたスタイラスと、このスタイラスの先端に設けられた触針と、前記スタイラスの揺動量を検出する検出部とから構成されていることが好ましい。
この発明によれば、接触式の表面性状測定機において、高精度な測定を保障できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<全体構成(図1)の説明>
図1は、本発明の一実施形態を示す表面粗さ測定機の正面図である。この表面粗さ測定機は、被測定物Wを載置するベース1と、このベース1上に前後方向(Y軸方向)へ移動可能に設けられたYスライダ2と、このYスライダ2の上面に垂直に立設されたZ軸コラム3と、このZ軸コラム3に上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたZスライダ4と、このZスライダ4にY軸を中心として旋回可能に設けられた旋回プレート5と、この旋回プレート5に取り付けられたX軸移動機構6と、このX軸移動機構6によってZ軸コラム3に対して直交する方向(X軸方向)へ移動される回転機構としての検出器回転機構7と、この検出器回転機構7によってX軸を中心として回転される粗さ検出器8とから構成されている。
【0018】
つまり、本実施形態の表面粗さ測定機は、被測定物Wと粗さ検出器8とが、Yスライダ2をY軸方向へ移動させる第1移動機構、Zスライダ4をZ軸方向へ移動させる第2移動機構および第3移動機構であるX軸移動機構6によって、互いに直交する3軸(Y,Z,X軸)方向へ相対移動可能に構成されている。また、旋回プレート5を傾斜させる傾斜機構によって、被測定物Wと粗さ検出器8との相対移動方向が被測定物の測定面と平行になるように、第3移動機構であるX軸移動機構6がZスライダ4の移動方向に対して傾斜可能に構成され、更に、検出器回転機構7によって、粗さ検出器8の向きがX軸移動機構6の移動方向軸線(X軸線)を中心として回転可能に構成されている。
【0019】
<検出器回転機構(図2)の説明>
図2は、検出器回転機構7を示す概略図である。検出器回転機構7は、X軸駆動装置6によってX軸方向へ移動される筐体10と、この筐体10内に固定されたモータ11と、筐体10内に軸受12を介してモータ11の出力軸11Aと同軸上で回転可能に支持され先端に粗さ検出器8を保持した回転軸14と、この回転軸14とモータ11の出力軸11Aとを連結する軸継手15とから構成されている。
回転軸14(粗さ検出器8)の回転角を検出する回転角検出器16は、回転軸14に固定された外周縁に沿って一定ピッチで透孔を有する回転円盤17と、この回転円盤17を挟んで対向配置された発光素子および受光素子からなる検出ヘッド18とから構成されている。
なお、粗さ検出器8は、X軸移動機構6によって移動される検出器本体8Aと、この検出器本体8Aに揺動可能に支持されたスタイラス8Bと、このスタイラス8Bの先端に直角に突設された触針8Cと、このスタイラス8Bの揺動を検出する検出部8Dとから構成されている。
【0020】
<制御装置(図3)の説明>
図3は、制御装置のブロック図である。制御装置30には、Y軸移動機構32およびY軸位置検出器33と、Z軸移動機構34およびZ軸位置検出器35と、傾斜機構36および傾斜角検出器37と、X軸移動機構6およびX軸位置検出器38と、検出器回転機構7および回転角検出器16と、粗さ検出器8と、入力装置39と、表示装置41と、記憶装置42とがそれぞれ接続されている。
Y軸移動機構32は、Yスライダ2をY軸方向へ移動させる機構、Y軸位置検出器33は、Yスライダ2のY軸位置を検出する。Z軸移動機構34は、Zスライダ4をZ軸方向へ移動させる機構、Z軸位置検出器35は、Zスライダ4のZ軸位置を検出する。傾斜機構36は、旋回プレート5をY軸を中心として傾斜させる機構、傾斜角検出器37は、旋回プレート5の傾斜角を検出する。X軸移動機構6は、粗さ検出器8をX軸方向へ移動させる機構、X軸位置検出器38は、粗さ検出器8のX軸位置を検出する。
【0021】
入力装置39からは、測定項目の選択、測定開始指令などのほか、各種指令情報が入力される。
表示装置41には、測定項目や測定結果などが表示される。
記憶装置42には、測定項目に対応した動作指令プログラムや、測定結果が記憶されるようになっているとともに、Yスライダ2のY軸位置を記憶するY軸メモリ43、Zスライダ4のZ軸位置を記憶するZ軸メモリ44、旋回プレート5の傾斜角θを記憶する傾斜角記憶手段としての傾斜角メモリ45、粗さ検出器8のX軸位置を記憶するX軸メモリ46、粗さ検出器8の回転角γを記憶する回転角記憶手段としての回転角メモリ47、粗さ検出器8の検出値δを記憶する検出値メモリ48などが設けられている。
【0022】
制御装置30は、記憶装置42に記憶された各種測定項目の動作指令プログラムに基づいて、Y軸移動機構32、Z軸移動機構34、傾斜機構36、X軸移動機構6、回転機構7などの駆動を制御し、被測定物Wと粗さ検出器8とを被測定物Wの測定面に沿って相対移動させ、このときの粗さ検出器8からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する。または、被測定物Wと粗さ検出器8とを被測定物Wの測定面に沿って相対移動させるとともに、粗さ検出器8からの検出値が所定値になるように粗さ検出器8と被測定物Wとの相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する。
【0023】
また、制御装置30は、オートセット動作のスタート指令が与えられると、粗さ検出器8が被測定物Wの測定面に対して垂直方向から接近するように、各移動機構を移動させる。具体的には、傾斜角メモリ45に記憶された傾斜角に基づいて、被測定物Wと粗さ検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面に対して垂直方向に変化するように、第2移動機構であるZ軸移動機構34および第3移動機構であるX軸移動機構6の駆動を制御するとともに、回転角メモリ47に記憶された回転角に基づいて、被測定物Wと粗さ検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面に対して垂直方向に変化するように、第1移動機構であるY軸移動機構32および第2移動機構であるZ軸移動機構34の駆動を制御する。
この際、粗さ検出器8からの検出値が予め設定した所定値を超えた際に各移動機構の駆動を停止させたのち、各移動機構を前記とは逆方向へかつ前記速度より低速で駆動させ、粗さ検出器8からの検出値が予め設定した所定値に達した際に各移動機構の駆動を停止させる。
【0024】
<オートセット動作(図4〜図6)の説明>
被測定物Wの表面性状を測定するにあたっては、まず、ベース1上にテーブルなどを使って被測定物Wを載置し、粗さ検出器8の触針8Cを被測定物Wの測定面に当接させる。これには、まず、粗さ検出器8の触針8Cが被測定物Wの測定面に対して垂直になるように、粗さ検出器8の姿勢を変化させる。
例えば、図4に示すように、被測定物Wの測定面W1がX軸に対して傾斜していた場合には、旋回プレート5の旋回動作によりX軸移動機構6を傾斜させ、粗さ検出器8の触針8Cを被測定物Wの測定面W1に対して垂直になるように調整するとともに、走査方向(X軸移動機構6の移動方向)が被測定物Wの測定面W1に対して平行になるように調整する。すると、旋回プレート5の傾斜角度が傾斜角検出器37によって検出されたのち、記憶装置42の傾斜角メモリ45に記憶される。
【0025】
この後、入力装置39からオートセット動作のスタート指令を与える。すると、制御装置30は、傾斜角メモリ45に記憶された傾斜角に基づいて、被測定物Wと粗さ検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面W1に対して垂直方向に変化するように、Z軸移動機構34およびX軸移動機構6の駆動を制御する。つまり、図5に示すように、粗さ検出器8が触針8Cの軸方向へ移動するように、Zスライダ4を下降させると同時に、X軸移動機構6を図5中右方向へ駆動させる。
これにより、粗さ検出器8が触針8Cの軸方向へ移動されていく。やがて、粗さ検出器8からの検出値が予め設定した所定値を超えた時点で、Z軸移動機構34およびX軸移動機構6の駆動を停止させる。続いて、各移動機構を前記とは逆方向へかつ前記速度より低速で駆動させ、粗さ検出器8からの検出値が予め設定した所定値に達した際に各移動機構の駆動を停止させる。
この状態において、X軸移動機構6を駆動させると、粗さ検出器8が被測定物Wの測定面W1に沿って移動される。すると、そのときの触針8C(スタイラス8B)の上下方向の変位が検出されるから、この粗さ検出器8からの検出値を基に測定面W1の表面粗さ等を検出することができる。
【0026】
また、図6に示すように、被測定物Wの測定面W2がY軸に対して傾斜していた場合には、回転機構7の回転動作により粗さ検出器8の向き(触針8Cの向き)を回転させ、粗さ検出器8の触針8Cを被測定物Wの測定面W2に対して垂直になるように調整するとともに、走査方向(X軸移動機構6による移動方向)が被測定物Wの測定面W2に対して平行になるように調整する。
具体的には、スタイラス8Bの触針8Cの向きを変える場合、入力装置39から触針8Cの向きを指令する。すると、検出器回転機構7のモータ11が回転される。モータ11が回転すると、回転軸14も回転される結果、粗さ検出器8が回転される。粗さ検出器8の回転角は、回転角検出器16によって検出されたのち、記憶装置42の回転角メモリ47に記憶される。
【0027】
この後、入力装置39からオートセット動作のスタート指令を与える。すると、制御装置30は、回転角メモリ47に記憶された回転角に基づいて、被測定物Wと粗さ検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面W2に対して垂直方向に変化するように、第1移動機構であるY軸移動機構32および第2移動機構であるZ軸移動機構34の駆動を制御する。つまり、粗さ検出器8が触針8Cの軸方向へ移動するように、Zスライダ4を下降させると同時に、Yスライダ2をY軸方向へ移動させる。
これにより、粗さ検出器8が触針8Cの軸方向へ移動していくが、以後の動作は上記と同じである。
【0028】
従って、オートセット動作において、被測定物Wの測定面W1,W2に対して、粗さ検出器8の触針8Cが垂直になるように、走査軸であるX軸移動機構6を傾斜させた場合、あるいは、粗さ検出器8の触針8Cの向きをX軸移動機構6の移動軸を中心として回転させた場合でも、粗さ検出器8は触針8Cの軸方向へ変位されるため、従来の誤差の問題も少なく、高精度なオートセット動作が実現できる。
しかも、粗さ検出器8の触針8Cの向きが、従来のように90°間隔に制限されないので、被測定物のどのような角度の測定面に対しても粗さ検出器8の触針8Cを当接させることができる。そのため、測定部位が制限されることが少ない。
【0029】
<検出器追従機能(図4〜図6)の説明>
検出器追従機能では、被測定物Wと粗さ検出器8とを被測定物Wの測定面に沿って相対移動させるとともに、粗さ検出器8からの検出値が所定値(予め設定した所定範囲内)になるように粗さ検出器8と被測定物Wとの相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する。
この場合でも、図4に示すように、被測定物Wの測定面W1がX軸に対して傾斜していた場合には、制御装置30は、傾斜角メモリ45に記憶された傾斜角に基づいて、被測定物Wと粗さ検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面W1に対して垂直方向に変化するように、Z軸移動機構34およびX軸移動機構6の駆動を制御する。つまり、図5に示すように、粗さ検出器8が触針8Cの軸方向へ移動するように、Zスライダ4を昇降させると同時に、X軸移動機構6を駆動させる。
【0030】
また、図6に示すように、被測定物Wの測定面W2がY軸に対して傾斜していた場合には、制御装置30は、回転角メモリ47に記憶された回転角に基づいて、被測定物Wと粗さ検出器8との相対距離が被測定物Wの測定面W2に対して垂直方向に変化するように、Y軸移動機構32およびZ軸移動機構34の駆動を制御する。つまり、粗さ検出器8が触針8Cの軸方向へ移動するように、Zスライダ4を昇降させると同時に、Y軸移動機構32を駆動させる。
【0031】
従って、検出器追従機能において、被測定物Wの測定面W1,W2に対して、粗さ検出器8の触針8Cが垂直になるように、走査軸であるX軸移動機構6を傾斜させた場合、あるいは、粗さ検出器8の触針8Cの向きをX軸移動機構の移動軸を中心として回転させた場合でも、粗さ検出器8は触針8Cの軸方向へ追従されるため、従来の誤差の問題も少なく、高精度な測定が実現できる。
しかも、粗さ検出器8の触針8Cの向きが、従来のように90°間隔に制限されないので、被測定物のどのような角度の測定面に対しても粗さ検出器8の触針8Cを当接させることができる。そのため、測定部位が制限されることが少ない。
【0032】
<変形例(図7〜図8)の説明>
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれる。
たとえば、上記実施形態では、被測定物Wをベース1上に固定し、粗さ検出器8を互いに直交する3軸(Y,Z,X軸)方向へ移動可能に構成したが、これとは逆に、被測定物Wを粗さ検出器8に対して互いに直交する3軸(Y,Z,X軸)方向へ移動可能に構成してもよく、あるいは、被測定物Wと粗さ検出器8とが3軸のいずれか1軸以上の方向へ移動可能に構成されていてもよい。
【0033】
また、検出器回転機構7の構成については、図2で説明した構成に限らず、次に示す構成でもよい。
図7に示す検出器回転機構7は、図2に示す検出器回転機構7に対して、モータ11からの回転を2つの伝達ギア13A,13Bを介して回転軸14に伝達している点が異なるのみである。
図8に示す検出器回転機構7は、図7に示す検出器回転機構7において、モータ11に代わって手動つまみ19が設けられた点が異なるのみである。
【0034】
また、上記実施形態では、検出器として、先端に触針8Cを備えた粗さ検出器8を用いたが、これに限らず、例えば、光などによって被測定物Wの測定面までの距離情報を検知できる非接触式の検出器を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機のほかに、たとえば、形状測定機、真円度測定機、画像測定機、三次元測定機などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面粗さ測定機を示す正面図。
【図2】同上実施形態の検出器回転機構を示す図。
【図3】同上実施形態の制御装置を示すブロック図。
【図4】同上実施形態においてX軸移動機構を傾斜させた状態を示す図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】同上実施形態において粗さ検出器を回転させた状態の斜視図。
【図7】検出器回転機構の変形例を示す概略図。
【図8】検出器回転機構の他の変形例を示す概略図。
【図9】従来の表面粗さ測定機を示す図。
【図10】従来の表面粗さ測定機においてX軸移動機構を傾斜させた状態を示す図。
【図11】図10の部分拡大図。
【図12】従来の表面粗さ測定機において検出器を回転させた状態を示す図。
【符号の説明】
【0037】
6…X軸移動機構(第3移動機構)
7…検出器回転機構
8…粗さ検出器
8A…検出器本体
8B…スタイラス
8C…触針
8D…検出部
30…制御装置(制御手段)
32…Y軸移動機構(第1移動機構)
34…Z軸移動機構(第2移動機構)
36…傾斜機構
45…傾斜角メモリ(傾斜角記憶手段)
47…回転角メモリ(回転角記憶手段)
W…被測定物
W1,W2…測定面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させ、このときの検出器からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機、または、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させるとともに、検出器からの検出値が所定値になるように検出器と被測定物との相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記被測定物と前記検出器とを互いに直交する2軸方向へ相対移動させる第1移動機構および第2移動機構と、
前記相対移動方向が前記被測定物の測定面と平行になるように前記第2移動機構を前記第1移動機構に対して傾斜させる傾斜機構と、
この傾斜機構の傾斜角を記憶する傾斜角記憶手段と、
この傾斜角記憶手段に記憶された傾斜角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が前記被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第1移動機構および第2移動機構の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項2】
被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させ、このときの検出器からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機、または、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させるとともに、検出器からの検出値が所定値になるように検出器と被測定物との相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記被測定物と前記検出器とを互いに直交する3軸方向へ相対移動させる第1移動機構、第2移動機構および第3移動機構と、
前記検出器の向きを前記第3移動機構の移動方向軸線を中心として回転させる回転機構と、
この回転機構の回転角を記憶する回転角記憶手段と、
この回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第1移動機構および第2移動機構の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項3】
被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させ、このときの検出器からの検出値を基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機、または、被測定物と検出器とを被測定物の測定面に沿って相対移動させるとともに、検出器からの検出値が所定値になるように検出器と被測定物との相対距離を変化させ、この相対距離データを基に測定面の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記被測定物と前記検出器とを互いに直交する3軸方向へ相対移動させる第1移動機構、第2移動機構および第3移動機構と、
前記相対移動方向が前記被測定物の測定面と平行になるように前記第3移動機構を前記第2移動機構に対して傾斜させる傾斜機構と、
この傾斜機構の傾斜角を記憶する傾斜角記憶手段と、
前記検出器の向きを前記第3移動機構の移動方向軸線を中心として回転させる回転機構と、
この回転機構の回転角を記憶する回転角記憶手段と、
前記傾斜角記憶手段に記憶された傾斜角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が前記被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第2移動機構および第3移動機構の駆動を制御するとともに、前記回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、前記被測定物と前記検出器との相対距離が被測定物の測定面に対して垂直方向に変化するように、前記第1移動機構および第2移動機構の駆動を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面性状測定機において、
前記制御手段は、スタート指令が与えられたことを条件に、前記検出器が被測定物の測定面に対して垂直方向から接近するように、いずれかの移動機構を移動させ、前記検出器からの検出値が予め設定した所定値を超えた際に移動機構の駆動を停止させることを特徴とする表面性状測定機。
【請求項5】
請求項4に記載の表面性状測定機において、
前記制御手段は、前記移動機構の駆動を停止させたのち、前記移動機構を前記とは逆方向へかつ前記速度より低速で駆動させ、前記検出器からの検出値が予め設定した所定値に達した際に移動機構の駆動を停止させることを特徴とする表面性状測定機。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の表面性状測定機において、
前記検出器は、前記移動機構によって移動される検出器本体と、この検出器本体に揺動可能に支持されたスタイラスと、このスタイラスの先端に設けられた触針と、前記スタイラスの揺動量を検出する検出部とから構成されていることを特徴とする表面性状測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−198791(P2007−198791A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15110(P2006−15110)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】