説明

被服取付け用消臭パッド

【課題】活性炭(炭化物)の担持量を少なくし、厚みを薄くすることができる被服取付け用消臭パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】コットン繊維からなる吸収体2をバックシート4で包んでなる厚みが3〜7mmの被服取付け用消臭パッド10であって、吸収体の内部に、以下の炭化物の粉末を担持してなる。[炭化物]炭化炉本体の下方に配置したエゼクターにより炉内ガスの吸引を行ない、炉内ガスを煙道管に導いた状態でバーナー火炎を炉内に導入し炉内に配置した炭化材の炭化を行なって得られた炭化物であって、下記構成の吸着剤Aとして用い、下記実験Aを行った際、アンモニア臭を感じることが無い炭化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腋の下等に被服を介して装着し、汗を吸収したり消臭を行うパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
腋の下の汗を吸収したり、臭いを消すために、コットンをバックシートで包んだ各種の消臭パッドが市販されている。このような消臭パッドは、消臭したい部位(例えば腋)に面した被服(例えばTシャツ等の下着)に両面テープ等で取付けられる。このため、被服の上から目立たぬよう、消臭パッドには薄さが要求される。
一方、従来から活性炭の消臭効果が知られており、高吸水性樹脂入りパッドなどからなる経血吸収層の内部に、備長炭または竹炭の微粉末を担持した消臭効果を奏する生理用ナプキンが開発されている(特許文献1)。
しかしながら、上記したように、被服に取付ける消臭パッドは薄さが要求されるため、吸収体の薄さ、ひいては吸収体に担持される活性炭(炭化物)の量を少なくせざるを得ないという問題がある。例えば、上記特許文献1記載の生理用ナプキンの場合、単位平方メートル当たり80g以上の備長炭微粉末を担持させているが、これを一般的な消臭パッド(10cm×5cm以上)に適用すると活性炭の担持量0.4gに相当し、この程度の量では消臭効果を発揮したり長時間持続させることが難しい。
【0003】
ところで、アンモニアの吸着効果が高い活性炭(炭化物)が開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-51266号公報(請求項1、段落0026)
【特許文献2】特許第3126633号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献2記載の炭化物に着目し、このものを用いれば、少ない担持量で消臭パッドに活性炭(炭化物)を担持させ、消臭パッドの厚みを薄くしても消臭効果を向上できることを見出した。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、活性炭(炭化物)の担持量を少なくし、厚みを薄くすることができる被服取付け用消臭パッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは種々検討した結果、消臭パッドに要求される性能として、アンモニア吸収力が重要であることを知見した。そして、特許文献2記載の炭化物はアンモニア吸収能が高く、このものを用いれば、少ない担持量であっても消臭効果を向上でき、消臭パッドの厚みを薄くできることを見出した。
【0007】
すなわち本発明の被服取付け用消臭パッドは、コットン繊維からなる吸収体をバックシートで包んでなる厚みが3〜7mmの被服取付け用消臭パッドであって、前記吸収体の内部に、以下の炭化物の粉末を担持してなる被服取付け用消臭パッド。[炭化物]炭化炉本体の下方に配置したエゼクターにより炉内ガスの吸引を行ない、炉内ガスを煙道管に導いた状態でバーナー火炎を炉内に導入し炉内に配置した炭化材の炭化を行なって得られた炭化物であって、下記構成の吸着剤Aとして用い、下記実験Aを行った際、アンモニア臭を感じることが無い炭化物。[吸着剤A](1) 炭化物粉末52wt%、(2) SiO ・・69.38wt%、Al ・・11.02wt%、Fe ・・0.92wt%、MgO・・0.60wt%、CaO・・1.31wt%、NaO・・3.34wt%、KO・・3.17wt%、HO・・10.13wt%の天然ゼオライト粉末を破砕したものを焼成し、粉末状としたもの35wt%、(3) ケイ酸ソーダ等の結着剤13wt%を混合、練成した吸着剤。[実験A]容積0.08mの密閉容器中に10ppmの濃度のアンモニアを封入し、この容器中に700gの吸着剤を放置した状態で、10分経過後のアンモニア濃度を測定する(アンモニアは濃度5〜10ppmで臭気を感じる。)。
【0008】
前記吸収体中の前記炭化物の担持量が1〜7g/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない担持量であっても消臭効果を向上でき、消臭パッドの厚みを薄くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る被服取付け用消臭パッドの平面図である。
【図2】図1のM−M線に沿う断面図である。
【図3】被服取付け用消臭パッドをニオイ源に配置したときの、経時時間に対するニオイセンサーの出力値の関係を示す図である。
【図4】被服取付け用消臭パッドをニオイ源に配置したときの、経時時間に対するニオイセンサーの出力値の関係を示す別の図である。
【図5】被服取付け用消臭パッドをニオイ源に配置したときの、経時時間に対するニオイセンサーの出力値の関係を示すさらに別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る被服取付け用消臭パッド10について説明する。
【0012】
図1は、被服取付け用消臭パッド10の平面図である。被服取付け用消臭パッド10は平面視で略長円状の外形をなし、図示しない吸収体をバックシート4で包んでなる。そして、裏面(図示せず)に設けられた粘着シートを、消臭したい部位(例えば腋)に面した被服(例えばTシャツ等の下着)に貼付し、被服取付け用消臭パッド10を取付けるようになっている。
被服取付け用消臭パッド10の長辺の長さAと短辺の長さBは、例えば(A×B)で20×7cm〜10×3cm程度とすることができる。又、被服の上から目立たぬよう、被服取付け用消臭パッド10の厚みを3〜7mmとすることが必要である。
なお、被服取付け用消臭パッド10の長手方向中央には、2つ折りできる折り目8が付いており、折りたたんで携帯し易いようになっている。
【0013】
図2は、図1のM−M線に沿う断面図である。被服取付け用消臭パッド10は、コットン繊維からなる吸収体2をバックシート4で包んでなる。ここで、バックシート4の周縁は、吸収体2の外周縁より外側にはみだしており、バックシート4の裏面(図2の下側の面)に、被服(例えばTシャツ等の下着)に貼付するための粘着シート6が積層されている。バックシート4の吸収体2の外周縁からのはみ出し幅は、例えば5〜10mmとすることができる。
吸収体2は、例えばコットン不織布とすることができ、この不織布はコットン繊維をウォータージェットニードル法で、内部で繊維を絡ませて形成させることができる。吸収体2としては、例えば脱脂綿状の比較的嵩高のものを用いることができる。
バックシート4としては、例えば透気性のある紙や、樹脂フィルムに細孔を開けたものを用いることができる。
【0014】
吸収体2の内部に、以下の炭化物の粉末が担持されている。なお、例えば、吸収体2を2つ割りにし、その間に炭化物の粉末を投入することが担持を行うことができる。又、炭化物の粉末は、その粒径は限定されず、原木を炭化後に粉砕したものであればよい。通常、炭化物の粉末の粒径は5〜70μm程度である。
[炭化物]
炭化炉本体の下方に配置したエゼクターにより炉内ガスの吸引を行ない、炉内ガスを煙道管に導いた状態でバーナー火炎を炉内に導入し炉内に配置した炭化材の炭化を行なって得られた前記炭化物であって、下記構成の吸着剤Aとして用い、下記実験Aを行った際、アンモニア臭を感じることが無い炭化物。
[吸着剤A]
(1) 炭化物粉末52wt%、
(2) SiO ・・69.38wt%、Al ・・11.02wt%、Fe ・・0.92wt%、MgO・・0.60wt%、CaO・・1.31wt%、NaO・・3.34wt%、KO・・3.17wt%、HO・・10.13wt%の天然ゼオライト粉末を破砕したものを焼成し、粉末状としたもの35wt%、
(3) ケイ酸ソーダ等の結着剤13wt%を混合、練成した吸着剤。
[実験A]
容積0.08mの密閉容器中に10ppmの濃度のアンモニアを封入し、この容器中に700gの吸着剤を放置した状態で、10分経過後のアンモニア濃度を測定する(アンモニアは濃度5〜10ppmで臭気を感じる。)。
【0015】
この炭化物は、特許第3126633号公報の請求項3に規定するものであり、アンモニア吸収能が高い。
炭化炉の壁・底・蓋を水冷することが好ましい。又、(1)上記炭化物を粉砕したもの52wt%、(2)これにSiO ・・69.38wt%、Al ・・11.02wt%、Fe ・・0.92wt%、MgO・・0.60wt%、CaO・・1.31wt%、NaO・・3.34wt%、KO・・3.17wt%、HO・・10.13wt%の天然ゼオライトの粉末を35wt%を混合し、結着剤13wt%を用いて練成した後に成形機により成形し、これを焼成して得られる吸着剤であって、下記実験Aを行った際、アンモニア臭を感じない吸着剤を製造し、この吸着剤を吸収体2に担持させてもよい。
[実験A]
容積0.08m3 の密閉容器中に10ppmの濃度のアンモニアを封入し、この容器中に700gの吸着剤を放置した状態で、10分経過後のアンモニア濃度を測定する(アンモニアは濃度5〜10ppmで臭気を感じる。)。
【0016】
以上のように、上記炭化物を用いるとアンモニア吸収能が高く、少ない担持量であっても消臭効果を向上でき、消臭パッドの厚みを薄くできる。
【実施例】
【0017】
まず、図1、図2に示す被服取付け用消臭パッド10を製造した。被服取付け用消臭パッド10の長辺の長さを140mm、短辺の長さを70mmとし、厚みを3.5mmとした。脱脂綿状の吸収体2を2つ割りにし、上記した方法で製造した炭化物を0.06g投入した。この際、被服取付け用消臭パッド10の単位面積(平面の面積)当たりの炭化物の担持量は、6.1g/mであった。
比較例として、上記炭化物の代わりに、市販の活性炭(竹炭)を吸収体2に0.06g担持させ、上記と同一寸法の被服取付け用消臭パッドを製造した。
なお、実施例、比較例ともに、40メッシュの金網を通る粒径で、かつ100メッシュの金網を通らない粒径の粒度分布の活性炭を用いた。
【0018】
<実験1>
呼気を導入した4000ccのビニル袋に上記した各被服取付け用消臭パッドを載置し、ビニル袋内の雰囲気を酸化スズ系熱線型焼結半導体式のニオイセンサー(新コスモス電機株式会社製の形式RE-XP329m)で検知した。
<実験2>
被験者B,Cがそれぞれ一定時間着用した靴下を導入した4000ccのビニル袋に上記した各被服取付け用消臭パッドを載置し、ビニル袋内の雰囲気を酸化スズ系熱線型焼結半導体式のニオイセンサー(新コスモス電機株式会社製の形式RE-XP329m)で検知した。
<実験3>
犬の尿をコットン布に浸したものを導入した4000ccのビニル袋に上記した各被服取付け用消臭パッドを載置し、ビニル袋内の雰囲気を酸化スズ系熱線型焼結半導体式のニオイセンサー(新コスモス電機株式会社製の形式RE-XP329m)で検知した。
【0019】
<測定結果>
図3〜図5は、それぞれ実験1〜3の測定結果を示す。各図において、各被服取付け用消臭パッドをビニル袋に載置した時間を0とし、横軸に経過時間を示す。一方、縦軸は、上記ニオイセンサーの出力値であり、試験室の雰囲気(常温)の出力値を0に調整した後、測定に供した。
【0020】
図1より、比較例の場合、吸着効果が殆ど無いのに対し、本発明例では呼気中成分の吸着効果が大きいことがわかる。
図2、図3より、比較例の場合、4分程度経過すると、センサーの測定値が上昇する(つまり、吸着したニオイ成分が雰囲気中に脱離される)のに対し、本発明例ではセンサーの測定値が経時により上昇せず、ニオイ成分を確実に吸着することがわかる。
なお、上記した方法で製造した炭化物を0.01g担持した場合も、上記実験例1〜3と吸着効果が同等であることを確認した。
【符号の説明】
【0021】
2 吸収体
4 バックシート
10 被服取付け用消臭パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コットン繊維からなる吸収体をバックシートで包んでなる厚みが3〜7mmの被服取付け用消臭パッドであって、
前記吸収体の内部に、以下の炭化物の粉末を担持してなる被服取付け用消臭パッド。
[炭化物]
炭化炉本体の下方に配置したエゼクターにより炉内ガスの吸引を行ない、炉内ガスを煙道管に導いた状態でバーナー火炎を炉内に導入し炉内に配置した炭化材の炭化を行なって得られた炭化物であって、下記構成の吸着剤Aとして用い、下記実験Aを行った際、アンモニア臭を感じることが無い炭化物。
[吸着剤A]
(1) 炭化物粉末52wt%、
(2) SiO ・・69.38wt%、Al ・・11.02wt%、Fe ・・0.92wt%、MgO・・0.60wt%、CaO・・1.31wt%、NaO・・3.34wt%、KO・・3.17wt%、HO・・10.13wt%の天然ゼオライト粉末を破砕したものを焼成し、粉末状としたもの35wt%、
(3) ケイ酸ソーダ等の結着剤13wt%を混合、練成した吸着剤。
[実験A]
容積0.08mの密閉容器中に10ppmの濃度のアンモニアを封入し、この容器中に700gの吸着剤を放置した状態で、10分経過後のアンモニア濃度を測定する(アンモニアは濃度5〜10ppmで臭気を感じる。)。
【請求項2】
前記吸収体中の前記炭化物の担持量が1〜7g/mである請求項1記載の被服取付け用消臭パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226016(P2011−226016A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95955(P2010−95955)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(507180456)
【Fターム(参考)】