説明

被服

【課題】 着用中であっても日常生活に支障を来たすことなく、適宜の運動を行った場合は着用者に負荷を与えて、着用者のエネルギ消費量を向上させることができる被服を提供する。
【解決手段】 第1強伸縮部1は、前身頃Fの着用者の上前腸骨棘に対向する位置から前身頃Fの着用者の前体幹側に対向する部分を経て、袖部Sの着用者の三角筋を覆う部分を通り、後身頃の着用者の後体幹側方に対向する部分を経て後身頃の着用者の上後腸骨棘に対向する位置に亘って設けてなり、袖部Sに着用者の三角筋を覆うように設けた三角筋領域10と、前身頃Fの着用者の前体幹側に倣うように設けてあり、三角筋領域10に連通した前体幹側領域11と、後身頃の着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、三角筋領域10に連通した後体幹側領域12とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者のエネルギ消費量を向上させることができる被服に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドロームを発見及び予防するために、LDLコルステロール及び腹囲周囲径等を測定する特定健康診査が実施されており、診査に従って体重及びBMI値を所要の値になすような指導も行われている。
【0003】
体重及びBMI値を改善するには、当人のエネルギ消費量を向上させることが重要であるが、そのために後記する特許文献1には次のような被服が開示されている。
【0004】
図14は特許文献1に開示された被服の正面図であり、図中、Wはウェア本体、Iは当該ウェア本体Wの内側に配置されたインナーである。また、図15及び図16は、図14に示したインナーIの正面図及び背面図である。
【0005】
図14から図16に示したように、被服は、半袖のTシャツ形状のウェア本体Wと、その内側に配置されたノースリーブ形状のインナーIとの肩部同士及び襟ぐり同士を縫着して構成してあり、インナーIには動作中の着用者に負荷を加えるべく、素材生地に比べて締伸縮性であり、かつ高弾力性を有するメッシュ生地で形成した第1負荷片7、第2負荷片8、及び背筋矯正片9が設けてある。
【0006】
第1負荷片7は、インナーIの前身頃Fであって、着用者のアンダーバスト部分の高さ位置に設けた横長の基部71と、該基部71の長手方向の中央位置から上方へ連出され、着用者の乳房部の間の部分に圧接する連出部72とからなる逆T字形状をなしている。
また、第2負荷片8は、前身頃Fの肩部周縁から前身頃の脇縁に亘って、前身頃の左右袖ぐりに沿って設けてある。
【0007】
一方、インナーIの後身頃に配設された背筋矯正片9は、当該後身頃の略中央位置で交差するX字状になしてあり、後身頃の左右肩部周縁から当該後身頃の裾部又は左右脇縁に亘って設けてある。
【0008】
かかるインナーIを備える被服を着用した場合、第1負荷片7及び第2負荷片8によって、着用者の上半身が如何なる動作を行った場合であっても、アンダーバスト周りから肩口に亘る領域に負荷が加えられるため、着用者のエネルギ消費量を向上させることができる。
【0009】
また、背筋矯正片9は着用者が猫背状態に陥ろうとするのを防止して、着用者の背筋を矯正するのに加え、着用者が上半身を捻る動作を行った場合には前記第1負荷片7及び第2負荷片8と協働して背筋にも負荷を与えることができるため、着用者のエネルギ消費量を更に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3143211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の被服にあっては、着用者の上半身が如何なる動作を行った場合であっても着用者に負荷が加えられるため、日常生活において当該被服を着用しようとすると、着用者は当該被服を着用している間中、当該被服による負荷を感じ、日常生活に支障を来たすという問題があった。特に、第2負荷片8によって着用者の両肩に負荷が加えられるため、着用者にあっては肩こりが発生し易かった。
【0012】
一方、日常生活にあっても、着替えといった手間のかかる操作を行うことなく、適宜の負荷運動を手軽に行うことによって、着用者のエネルギ消費量を向上させ得ることが要求されている。
【0013】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、着用中であっても日常生活に支障を来たすことなく、適宜の運動を行った場合は着用者に負荷を与えて、着用者のエネルギ消費量を向上させることができる被服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明に係る被服は、着用者の少なくとも上半身に着用すべく、着用者の首を挿通させる襟ぐりを設けてなるウェア本体と、該ウェア本体の他の部分の伸縮力より強い伸縮力を有する帯状の第1強伸縮部とを備え、該第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の三角筋を覆うように設け、又は前記ウェア本体から着用者の三角筋を覆うように延設した三角筋領域と、前記ウェア本体に着用者の前体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通した前体幹側領域とを具備し、前記三角筋領域の襟ぐり側の縁は、着用者の肩峰点に対向する位置を含み、該位置より着用者の腕に対向する側の適宜位置になしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明の被服にあっては、着用者の少なくとも上半身に着用すべく、着用者の首を挿通させる襟ぐりを設けてなるウェア本体と、該ウェア本体の他の部分の伸縮力より強い伸縮力を有する帯状の第1強伸縮部とを備えている。
かかるウェア本体は長袖、半袖又は所謂ノースリーブである袖無し、或いはランニングシャツ型等、種々の形状であってよい。
【0016】
一方、前述した第1強伸縮部は、長袖若しくは半袖のウェア本体にあっては、当該ウェア本体に着用者の三角筋を覆うように設けた三角筋領域と、ウェア本体に着用者の前体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通した前体幹側領域とを具備しており、また、半袖若しくはノースリーブのウェア本体にあっては、当該ウェア本体から着用者の三角筋を覆うように延設した三角筋領域と、ウェア本体に着用者の前体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通した前体幹側領域とを具備している。
そして、この三角筋領域の襟ぐり側の縁は、着用者の肩峰点に対向する位置を含み、該位置より着用者の腕に対向する側の適宜位置になしてある。
【0017】
このように、第1強伸縮部は着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、第1強伸縮部によって着用者の頸側点から肩峰点までの肩領域、並びに胸部及び腹部の大部分の領域が圧迫されることが回避され、従って着用者の上部僧帽筋、並びに大胸筋及び外腹斜筋等が自在に動作することができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0018】
このとき、第1強伸縮部の三角筋領域の襟ぐり側の縁は、着用者の肩峰点に対向する位置を含み当該位置より着用者の腕側に対向する適宜位置になしてあり、これによって着用者の頸側点から肩峰点までの肩領域に第1強伸縮部が掛からないため、かかる被服を着用していても、日常動作中、着用者の肩の動きが制約されず、着用者は肩を抵抗無くスムーズに動かすことができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0019】
一方、第1強伸縮部が着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
したがって、着用者は当該被服を常時着用しておき、休憩時等の適宜の時間に適宜の運動をすることによって、手軽に自己のエネルギ消費量を向上させることができる。
【0020】
(2)本発明に係る被服は必要に応じて、前記第1強伸縮部はウェア本体の両側にそれぞれ設けてあり、両第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通させた後体幹側領域をそれぞれ具備し、前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部と、前記ウェア本体の背面であって前記第2強伸縮部より襟ぐり側の位置に設けてあり、二対の枝領域を有するX字帯状の第3強伸縮部とを更に備え、前記両第1強伸縮部の前体幹側領域及び後体幹側部分はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結しており、前記第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてあり、前記第3強伸縮部の一対の枝領域はそれぞれ両第1強伸縮部の三角筋領域又は後体幹側領域に連結しており、第3強伸縮部の他対の枝領域はそれぞれ前記第2強伸縮部又は両第1強伸縮部の後体幹側領域に連結していることを特徴とする。
【0021】
従って、本発明の被服は(1)で説明した被服に加えて次の作用及び効果を奏する。
すなわち、本発明の被服にあっては、前述した第1強伸縮部はウェア本体の両側にそれぞれ設けてあり、両第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通させた後体幹側領域をそれぞれ具備している。
【0022】
従って、後体幹側領域によって下部僧帽筋及び広背筋の大部分が圧迫されず、後体幹側領域によって着用者の日常生活にほとんど支障を来たさない。
また、本発明の被服は更に、ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部と、ウェア本体の背面であって前記第2強伸縮部より襟ぐり側の位置に設けてあり、二対の枝領域を有するX字帯状の第3強伸縮部とを備えている。
【0023】
前述した両第1強伸縮部の前体幹側領域及び後体幹側部分はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結しており、第2強伸縮部は第1強伸縮部のアンカーとして作用する。
このとき、第2強伸縮部はウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けてあるため、着用者の腹部を圧迫せず、従って第2強伸縮部が着用者の日常生活に支障を来たさない。
【0024】
一方、第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてある。また、第3強伸縮部の一対の枝領域はそれぞれ両第1強伸縮部の三角筋領域又は後体幹側領域に連結しており、第3強伸縮部の他対の枝領域はそれぞれ前記第2強伸縮部又は両第1強伸縮部の後体幹側領域に連結している。
【0025】
このとき、第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてあるため、第3強伸縮部によって着用者の下部僧帽筋が圧迫されることが回避され、従って主に着用者の下部僧帽筋が自在に動作することができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0026】
一方、アンカーたる第2強伸縮部にその両端が支持固定された第1強伸縮部が着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
更に、着用者が上半身を捻る運動を行った場合、かかる第1強伸縮部の負荷に第3強伸縮部による負荷が加えられるため、着用者のエネルギ消費量がより向上する。
【0027】
(3)本発明に係る被服は必要に応じて、前記第1強伸縮部はウェア本体の両側にそれぞれ設けてあり、前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部と、前記ウェア本体の背面であって前記第2強伸縮部より襟ぐり側の位置に設けてあり、二対の枝領域を有するX字帯状の第3強伸縮部とを更に備え、該第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてあり、前記両第1強伸縮部の前体幹側領域はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結しており、前記第3強伸縮部の一対の枝領域はそれぞれ両第1強伸縮部の三角筋領域に連結しており、第3強伸縮部の他対の枝領域はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結していることを特徴とする。
【0028】
従って、本発明の被服は(1)で説明した被服に加えて次の作用及び効果を奏する。
すなわち、本発明の被服にあっては、前述した第1強伸縮部はウェア本体の両側にそれぞれ設けてあり、前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部と、前記ウェア本体の背面であって前記第2強伸縮部より襟ぐり側の位置に設けてあり、二対の枝領域を有するX字帯状の第3強伸縮部とを更に備えている。
【0029】
ここで、第2強伸縮部は第1強伸縮部及び第3強伸縮部のアンカーとして作用する。
このとき、第2強伸縮部はウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けてあるため、着用者の腹部を圧迫せず、従って第2強伸縮部が着用者の日常生活に支障を来たさない。
【0030】
前述した第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてあるため、第3強伸縮部によって着用者の下部僧帽筋が圧迫されることが回避され、従って主に着用者の下部僧帽筋が自在に動作することができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0031】
一方、前記両第1強伸縮部の前体幹側領域はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結しており、第3強伸縮部の一対の枝領域はそれぞれ両第1強伸縮部の三角筋領域に連結しており、第3強伸縮部の他対の枝領域はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結している。
【0032】
このように、アンカーたる第2強伸縮部にその両端が支持固定された第1強伸縮部が着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
更に、着用者が上半身を捻る運動を行った場合、かかる第1強伸縮部の負荷に第3強伸縮部による負荷が加えられるため、着用者のエネルギ消費量がより向上する。
【0033】
(4)本発明に係る被服は必要に応じて、前記第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通させた後体幹側領域を具備し、前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部を備え、
前記第1強伸縮部の前体幹側部分の端部及び後体幹側部分の端部はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結していることを特徴とする。
【0034】
従って、本発明の被服は(1)で説明した被服に加えて次の作用及び効果を奏する。
すなわち、本発明の被服にあっては、前述した第1強伸縮部は、ウェア本体に着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通させた後体幹側領域を具備している。
従って、後体幹側領域によって下部僧帽筋及び広背筋の大部分が圧迫されず、後体幹側領域によって着用者の日常生活にほとんど支障を来たさない。
【0035】
更に、本発明の被服は、ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部を備えており、第1強伸縮部の前体幹側部分の端部及び後体幹側部分の端部はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結している。
【0036】
ここで、第2強伸縮部は第1強伸縮部及び第3強伸縮部のアンカーとして作用する。
このとき、第2強伸縮部はウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けてあるため、着用者の腹部を圧迫せず、従って第2強伸縮部が着用者の日常生活に支障を来たさない。
【0037】
一方、アンカーたる第2強伸縮部にその両端が支持固定された第1強伸縮部が着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る被服を長袖のインナーウェアに適用した場合を示す正面図である。
【図2】本発明に係る被服を長袖のインナーウェアに適用した場合を示す背面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るインナーウェアの背面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るインナーウェアの背面図である。
【図5】所定メニューの運動を行った際に被験者の各部位で筋電位を測定した結果を示す棒グラフである。
【図6】所定メニューの運動を行った際の被験者の酸素摂取量を測定した結果を示す棒グラフである。
【図7】図6に示したコントロールの結果を減算した値を示す棒グラフである。
【図8】所定メニューの運動を行った際の被験者の心拍数を測定した結果を示す棒グラフである。
【図9】図8に示したコントロールの結果を減算した値を示す棒グラフである。
【図10】各種運動時の心拍数から安静時の心拍数を減算し、さらにコントロールを減算した棒グラフである。
【図11】本実施例で用いたインナーウェアのたて方向の伸張特性を示したグラフである。
【図12】所定メニューの運動を行った際の被験者の酸素摂取量を比較した結果を示す棒グラフである。
【図13】所定メニューの運動を行った際の被験者の心拍数を比較した結果を示す棒グラフである。
【図14】特許文献1に開示された被服の正面図である。
【図15】図13に示したインナーの正面図である。
【図16】図13に示したインナーの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明に係る被服を長袖のインナーウェアに適用した場合を示す正面図及び背面図であり、図中、Wはウェア本体である。
ウェア本体Wは、弾性繊維であるポリウレタン糸、綿糸又は/及びナイロン糸等の適宜の糸を用いて所要の伸縮性を有するように編成してなり、着用者の胸部及び腹部を覆う前身頃F及び着用者の背部及び腰部を覆う後身頃B、並びに着用者の腕を覆う筒状の袖部S,Sを備えている。また、ウェア本体Wには、着用者の首を挿通させる襟ぐり5及び、着用者のウェスト部を挿通させるウェスト開口6がそれぞれ設けてある。なお、ウェア本体Wは、各別に編成した前身頃F及び後身頃Bを縫合して形成してもよいし、丸編機を用いて前身頃F及び後身頃Bを一体的に編成してもよい。
【0040】
前身頃F及び後身頃Bは、着用者の腸骨上縁から着用者の脚部方向へ適宜寸法延出する長さになしてあり、前身頃F及び後身頃Bの裾領域には、他の領域の伸縮性より強い伸縮性になした帯状の第2強伸縮部2がウェア本体Wのウェスト開口6を囲繞するように設けてある。第2強伸縮部2の上縁は、着用者の対をなす両腸骨の上縁を結んだジャコビー線に対向する高さ位置以下になるようにしてあり、これによって第2強伸縮部2は着用者の腰部に外嵌して圧着し、後述する如くアンカーとして作用する。一方、第2強伸縮部2は着用者の腹部には掛からないため、ウェア本体Wを着用した着用者の腹部が第2強伸縮部2によって圧迫されることが回避される。
【0041】
なお、第2強伸縮部2は、適宜の編成組織によって編み立てることによってウェア本体Wと一体的に形成してもよく、ウェア本体Wとは別に製造した強伸縮性の帯状体をウェア本体Wの適宜位置に縫着又は貼着等させることによってウェア本体Wに固定するようにしてもよい。
【0042】
また、第2強伸縮部2の前身頃Fの中央部分を、前述したジャコビー線より着用者の脚部側へ凹ませるようになしてもよい。これによって、第2強伸縮部2から着用者の腹部がより開放される一方、着用者の下腹部が支持される。
【0043】
また、図1及び図2に示した如く、前身頃F及び後身頃Bの両側部から両袖部S,Sの所定部分に亘る領域には、他の領域の伸縮性より強い伸縮性になした帯状の第1強伸縮部1,1が設けてあり、第1強伸縮部1,1の両端はそれぞれアンカーたる第2強伸縮部2に連結してある。
【0044】
すなわち、第1強伸縮部1,1は、前身頃Fの着用者の上前腸骨棘に対向する位置から前身頃Fの着用者の前体幹側に対向する部分を経て、袖部S,Sの着用者の三角筋を覆う部分を通り、後身頃Bの着用者の後体幹側方に対向する部分を経て後身頃Bの着用者の上後腸骨棘に対向する位置に亘って設けてなり、袖部S,Sに着用者の三角筋を覆うように設けた三角筋領域10,10と、前身頃Fの着用者の前体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域10,10に連通した前体幹側領域11,11と、後身頃Bの着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域10,10に連通した後体幹側領域12,12とを具備している。
【0045】
第1強伸縮部1,1の幅寸法は、着用者の体型、要求される筋負荷量等に応じて5cm程度から20cm程度までの適宜寸法に定めることができ、また、袖部S,Sの着用者の三角筋を覆う部分の幅寸法を他の部分の幅寸法より大きくなしてもよい。
【0046】
なお、例えばノースリーブのウェア本体を用いた場合、三角筋領域はその長手方向の両端をウェア本体の肩ぐりの適宜位置に連結させるように、当該肩ぐりから三角筋を覆うように延設する。
【0047】
ここで、第1強伸縮部1,1の袖部S,Sを通る部分の襟ぐり5側の縁は、着用者の肩峰点に対向する位置を含み当該位置より着用者の腕側の適宜位置になるようにしてあり、これによって着用者の頸側点から肩峰点までの肩領域に第1強伸縮部1,1が掛からないようになしてある。
【0048】
なお、第1強伸縮部1,1は、前述した第2強伸縮部2と同様に、適宜の編成組織によって編み立てることによってウェア本体Wと一体的に形成してもよく、ウェア本体Wとは別に製造した強伸縮性の帯状体をウェア本体Wの適宜位置に縫着又は貼着等させることによってウェア本体Wに固定するようにしてもよい。
【0049】
一方、図2に示した如く、後身頃Bの第1強伸縮部1,1間には、他の領域の伸縮性より強い伸縮性になしてあり、後身頃Bの略中央位置より少し裾側の位置で交差するX字帯状の第3強伸縮部3が設けてあり、該第3強伸縮部3は、襟ぐり5側に配された一対の枝領域31,31と、それとは反対側に配された他対の枝領域32,32とを有している。
【0050】
第3強伸縮部3の一対の枝領域31,31は、その襟ぐり5側の縁が着用者の肩甲骨下角を含み、肩甲骨下角より腰側の適宜位置を通って、着用者の肩峰点を含み、肩峰点から腕側の適宜位置で第1強伸縮部1,1に連結してあり、第3強伸縮部3の他対の枝領域32,32は、第1強伸縮部1,1と第2強伸縮部2との交差する部分に連結してある。
【0051】
すなわち、第3強伸縮部3の一対の枝領域31,31の襟ぐり5側の縁は、後身頃Bの着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向するを位置と通る線分を含み、当該線分より後身頃Bの裾側の適宜位置になしてあり、従って第3強伸縮部3は着用者の下部僧帽筋に掛からないようになっている。
【0052】
なお、第3強伸縮部3の他対の枝領域32,32は、第1強伸縮部1,1であって第3強伸縮部3との交差位置よりウェア本体Wの襟ぐり5側の適宜位置、又は、第2強伸縮部2の適宜位置に連結してもよい。
【0053】
また、第3強伸縮部3は、前述した第1強伸縮部1,1及び第2強伸縮部2と同様に、適宜の編成組織によって編み立てることによってウェア本体Wと一体的に形成してもよく、ウェア本体Wとは別に製造した強伸縮性の帯状体をウェア本体Wの適宜位置に縫着又は貼着等させることによってウェア本体Wに固定するようにしてもよい。
【0054】
このようなインナーウェアにあっては前述した如く、第2強伸縮部2の上縁は、着用者のジャコビー線に対向する高さ位置以下になるようにしてあるため、第2強伸縮部2によって着用者の腹部が圧迫されることが回避され、従って着用者の腹直筋といった腹部に係る筋繊維は自在に動作することができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0055】
また、第1強伸縮部1,1は着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、第1強伸縮部1,1によって着用者の肩領域、並びに胸部及び腹部の大部分の領域が圧迫されることが回避され、従って着用者の上部僧帽筋、並びに大胸筋及び外腹斜筋等が自在に動作することができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0056】
特に、第1強伸縮部1,1の三角筋領域10,10の襟ぐり5側の縁は、着用者の肩峰点に対向する位置を含み当該位置より着用者の腕側の適宜位置になるようにしてあり、これによって着用者の頸側点から肩峰点までの肩領域に第1強伸縮部1,1が掛からないようになしてあるため、かかる第1強伸縮部1,1を備えるインナーウェアを着用していても、日常動作中、着用者の肩の動きが制約されず、着用者は肩を抵抗無くスムーズに動かすことができる。
また、第1強伸縮部1,1によって着用者の肩領域が圧迫されないため、かかる第1強伸縮部1,1を備えるインナーウェアを着用していても、着用者に肩こりが発生しない。
【0057】
更に、第3強伸縮部3の襟ぐり側の縁は、ウェア本体Wの着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体Wの裾側の適宜位置になしてあるため、第3強伸縮部3によって着用者の下部僧帽筋が圧迫されることが回避され、従って主に着用者の下部僧帽筋が自在に動作することができ、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさない。
【0058】
一方、アンカーたる第2強伸縮部2にその両端が支持固定された第1強伸縮部1,1が着用者の前後体幹側及び三角筋を覆うように設けてあるため、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
【0059】
更に、着用者が上半身を捻る運動を行った場合、上述した第1強伸縮部1,1の負荷に第3強伸縮部3による負荷が加えられるため、着用者のエネルギ消費量がより向上する。
このように、本発明に係るインナーウェアは、着用者の日常動作にほとんど支障を来たさず、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合は、着用者のエネルギ消費量が向上するため、着用者は当該インナーウェアを常時着用しておき、休憩時等の適宜の時間に適宜の運動をすることによって、手軽に自己のエネルギ消費量を向上させることができる。
また、トレーニングの際に本発明に係るインナーウェアを着用することによって、トレーニング効果を更に向上させることができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、袖部S,Sを着用者の手首近傍まで達する寸法になるように前後身頃F,Bから連続的に編成してあるが、本発明はこれに限らず、半袖、7分袖等、種々の寸法であってよく、また、例えば第1強伸縮部1と襟ぐり5との間に適宜の孔を形成して袖部を不連続に編成してもよい。
【0061】
また、本実施の形態に示したようにウェア本体Wの両側に第1強伸縮部1,1を設けた場合、着用者の左右にバランスよく負荷を加えられるので好適であるが、本発明はこれに限らずウェア本体Wの一側に第1強伸縮部1を設けるようにしてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、インナーウェアに適用した場合について示したが、本発明はこれに限らず、アウターウェアにも適用することもできる。また、パンティ部又はスパッツ部等を具備するボディースーツにも適用することもでき、本発明は種々の被服に適用できる。
【0063】
(他の実施形態)
図3及び図4は、本発明の他の実施形態に係るインナーウェアの背面図であり、図3は、図2に示したインナーウェアの第3強伸縮部3を設けていない場合を、また図4は、図2に示したインナーウェアの第1強伸縮部1,1の後体幹側領域12,12を第3強伸縮部3で代用した場合をそれぞれ示している。なお、いずれの場合もインナーウェアの正面図は前述した図1と同じであるので省略する。
【0064】
図4に示したインナーウェアにあっては、図2に示したインナーウェアの第3強伸縮部3を設けていない以外は図1及び図2に示したインナーウェアと同じ構成であり、従って前同様、第2強伸縮部2及び第1強伸縮部1,1は着用者の日常動作に支障を来たさない。
【0065】
一方、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、前同様、第1強伸縮部1,1によって、着用者の比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
【0066】
また、図3に示したインナーウェアにあっては、着用者の肩峰点付近で前身頃Fに設けた第1強伸縮部1,1に第3強伸縮部3の一対の枝領域31,31を連結させてなり、第3強伸縮部3の他対の枝領域32,32は、第2強伸縮部2の着用者の上後腸骨棘に対向するの位置に連結してある。また、本実施の形態に係る第1強伸縮部1,1にあっては、図2に示した第1強伸縮部1,1の後体幹側領域12,12は有さない。
このようなインナーウェアにあっては、前同様、第2強伸縮部2、第1強伸縮部1,1及び第3強伸縮部3は着用者の日常動作に支障を来たさない。
【0067】
一方、着用者が両腕又は/及び上半身を日常動作より大きく動かした場合、前同様、第1強伸縮部1,1によって、着用者の比較的大きな筋塊である三角筋及び大胸筋等の適当な筋繊維に加えられる負荷量が増大し、これによって着用者のエネルギ消費量が向上する。
更に、着用者が上半身を捻る運動を行った場合、上述した第1強伸縮部1,1の負荷に第3強伸縮部3による負荷が加えられるため、着用者のエネルギ消費量がより向上する。
【0068】
なお、以上説明したことより、第1強伸縮部1を前体幹側領域11及び三角筋領域10にて構成し、ウェア本体Wの裏面であって、前体幹側領域11の端部及び三角筋領域10の端部に対応する部分に摩擦抵抗が大きい滑止部を設けてアンカーとすることによって、図3に示したインナーウェアと同様な作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
本発明に係るインナーウェアを着用した着用者のエネルギ消費量を向上させる効果について検討した結果を説明する。
本発明に係るインナーウェアは図1及び図2に示したタイプものを用いた。すなわち、スポーツタイプのインナーウェアであるバイオギア(登録商標)(製品番号52CA308、ミズノ株式会社製)の表面の所定位置にテーピング用のテープであるセラポア(登録商標)(製品番号SE75F、ニチバン社製)を貼着して、前述した第2強伸縮部2、第1強伸縮部1,1及び第3強伸縮部3(図1及び図2参照)を形成した。
【0070】
年齢が20歳から22歳の男性延べ16人を被験者とし、本発明に係るインナーウェアと、テープを張着していない前記インナーウェアとを交互に着用し、予め定めたメニューの運動を行い、各被験者の筋電位、酸素摂取量、及び心拍数を比較した。また、コントロールとしてインナーウェアを着用しないで同様のメニューの運動を行って、各被験者の筋電位、酸素摂取量、及び心拍数を測定した。
【0071】
なお、運動は次の5種類をそれぞれ80秒間実施し、各種類の運動を実施する間に8秒間のインターバルを設定した。第1種運動は椅子に着座した状態で、両腕を体側方へ水平状に広げ、その状態で両腕を上方へ旋回させ、頭上で両手を合わせた後、両腕を水平状の状態に戻し、更に両肘を曲げて両手を大腿部上に乗せるという動作を繰り返す。
【0072】
第2種動作は椅子に着座した状態で、両腕を前後へ伸ばし、上半身を捻りながら、前方へ伸ばした腕の指先でそれとは反対側の爪先に触れた後、上半身を元に戻すと共に両腕を曲げて両手を大腿部上に乗せ、再び両腕を前回とは左右反対になるように前後へ伸ばし、上半身を捻りながら、前方へ伸ばした腕の指先でそれとは反対側の爪先に触れた後、上半身を元に戻すと共に両腕を曲げて両手を大腿部上に乗せる動作を繰り返す。
【0073】
第3種動作は椅子に着座した状態で、肘を略90度曲げた状態で両上腕を側方へ伸ばし、その状態で両上腕を顔前へ旋回させて両肘を合せた後、両上腕を元の体側方位置へ戻す動作を繰り返す。
【0074】
第4種動作は椅子に着座した状態で、肘を略90度曲げた状態で両上腕を前後へ伸ばし、上半身を捻ると共に前方へ伸ばした腕とは反対側の大腿部を上昇させながら、前方へ伸ばした腕の肘で上昇された大腿部に触れた後、上半身を元に戻すと共に両腕を曲げて両手を大腿部上に乗せ、再び肘を略90度曲げた状態で両上腕を前回とは左右反対になるように前後へ伸ばし、上半身を捻ると共に前方へ伸ばした腕とは反対側の大腿部を上昇させながら、前方へ伸ばした腕の肘で上昇された大腿部に触れた後、上半身を元に戻すと共に両腕を曲げて両手を大腿部上に乗せる動作を繰り返す。
【0075】
第5種運動は着座した状態で、両手で椅子の座部側縁を把持し、膝を鈍角にした状態で両大腿部を上昇させた後、両大腿部を元の位置に戻すと共に両腕を曲げて両手を大腿部上に乗せる動作を繰り返す。
【0076】
図5は、所定メニューの運動を行った際に被験者の各部位で筋電位を測定した結果を示す棒グラフであり、縦軸は各運動で測定された筋電図積分値を示している。また、図中、左側の(a)は前述したコントロールを、中央の(b)は比較例としてテープを張着していないインナーウェアを着用して各運動を行った結果を、右側の(c)は本発明例として前述した本発明に係るインナーウェアを着用して各運動を行った結果をそれぞれ示している。
【0077】
図5から明らかな如く、本発明例にあっては、三角筋中央部、三角筋前部及び三角筋後部、並びに大胸筋鎖骨部においていずれもコントロール及び比較例に比べて筋電図積分値が高かった。
【0078】
一方、腹直筋、広背筋及び脊柱起立筋では、本発明例は比較例に比べて筋電図積分値が低かった。
これらの結果より、本発明例に係るインナーウェアにあっては、運動中、着用者の主に三角筋及び大胸筋に負荷が加えられており、これによって後述するようにエネルギ消費量が増大する。
一方、本発明例に係るインナーウェアにあっては、運動中、着用者の腹直筋、広背筋及び脊柱起立筋への負荷が低減されるため、上半身の姿勢を保持し易い。
【0079】
図6は、所定メニューの運動を行った際の被験者の酸素摂取量を測定した結果を示す棒グラフであり、縦軸は酸素摂取量を、横軸は運動の種類をそれぞれ示している。また、図7は、図6に示したコントロールの結果を減算した値を示す棒グラフである。なお、図中、(a)は前述したコントロールを、(b)は前述した比較例を、(c)は前述した本発明例をそれぞれ示している。
【0080】
図6及び図7から明らかな如く、いずれの種類の運動を行った場合でも、本発明例は比較例より酸素摂取量が増大していた。人の酸素摂取量とエネルギ消費量とは相関していることが知られており、従って本発明例に係るインナーウェアにあっては、所定の運動を行うことによって、着用者のエネルギ消費量を増大させることができた。
【0081】
図8は、所定メニューの運動を行った際の被験者の心拍数を測定した結果を示す棒グラフであり、縦軸は心拍数を、横軸は運動の種類をそれぞれ示している。また、図9は、図8に示したコントロールの結果を減算した値を示す棒グラフであり、図10は、各種運動時の心拍数から安静時の心拍数を減算し、さらにコントロールを減算した棒グラフである。なお、図中、(a)は前述したコントロールを、(b)は前述した比較例を、(c)は前述した本発明例をそれぞれ示している。
【0082】
図8、図9及び図10から明らかな如く、いずれの種類の運動においても本発明例の心拍数は比較例の心拍数より増大しており、本発明例にあっては着用者により多くの負荷を与えていた。
【0083】
(実施例2)
次に、本発明に係るインナーウェアを着用した着用者のエネルギ消費量を向上させる効果について検討した結果を説明する。
インナーウェアとしては、前述したウェア本体Wに、第2強伸縮部2、第1強伸縮部1,1及び第3強伸縮部3(いずれも図1及び図2参照)を一体的に編成したものを用いた。
【0084】
なお、図11に、本実施例で用いたインナーウェアのたて方向の伸張特性を示した。図11に示したように、第2強伸縮部2、第1強伸縮部1,1及び第3強伸縮部3の伸縮性は前身頃F及び後身頃Bの伸縮性より強い。
【0085】
被験者は次表に示す身体特性を有し、メタボリックシンドローム傾向にある男性2名とし、本発明に係るインナーウェアを着用し、前述した所定メニューの運動を行い、各被験者の酸素摂取量及び心拍数を測定した。また、比較例として第2強伸縮部2、第1強伸縮部1,1及び第3強伸縮部3を設けておらず、また比較的ゆとりがあり、体を締め付けないインナーウェアを着用して同様のメニューの運動を行って、各被験者の酸素摂取量及び心拍数を測定した。
【0086】
【表1】

【0087】
図12は、所定メニューの運動を行った際の被験者の酸素摂取量を比較した結果を示す棒グラフであり、また図13は、所定メニューの運動を行った際の被験者の心拍数を比較した結果を示す棒グラフである。両図中、上段は表に示した被験者Aの結果であり、下段は表に示した被験者Bの結果である。また、両図中、(b)は前述した比較例の結果を、(c)は前述した本発明例の結果をそれぞれ示している。
【0088】
図12及び図13から明らかな如く、いずれの種類の運動においても、本発明例の酸素摂取量及び心拍数はともに比較例の酸素摂取量及び心拍数より増大しており、本発明例にあっては着用者により多くの負荷を与えていた。
【0089】
また、本発明例と比較例との増加量の大きさに着目すると、酸素摂取量及び心拍数ともに、被験者B(下段)より被験者A(上段)の方が大きかった。ここで、摂取した酸素1リットル当たりのエネルギ消費量を5kcalすると、図12に示した被験者Aに係る運動全体の酸素摂取量の結果より、本発明例におけるエネルギ消費量は略63kcalであり、比較例におけるエネルギ消費量は略46kcal(いずれも20分間運動換算)であった。ところで、40代男性の基礎代謝を1500kcal/日とすると、20分間の基礎代謝は25kcalであるので、本発明例におけるエネルギ消費量は基礎代謝の略3倍に増大していた。表に示したように、被験者Aは被験者Bより年齢が高く、また肥満度も高かった。従って、本発明に係るインナーウェアにあっては、年齢が高く、また肥満度が高い被験者ほどよりエネルギ代謝促進効果が高かった。
【符号の説明】
【0090】
1 第1強伸縮部
2 第2強伸縮部
3 第3強伸縮部
5 襟ぐり
10 三角筋領域
11 前体幹側領域
12 後体幹側領域
31 枝領域
32 枝領域
W ウェア本体
F 前身頃
B 後身頃
S 袖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の少なくとも上半身に着用すべく、着用者の首を挿通させる襟ぐりを設けてなるウェア本体と、該ウェア本体の他の部分の伸縮力より強い伸縮力を有する帯状の第1強伸縮部とを備え、
該第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の三角筋を覆うように設け、又は前記ウェア本体から着用者の三角筋を覆うように延設した三角筋領域と、前記ウェア本体に着用者の前体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通した前体幹側領域とを具備し、
前記三角筋領域の襟ぐり側の縁は、着用者の肩峰点に対向する位置を含み、該位置より着用者の腕に対向する側の適宜位置になしてある
ことを特徴とする被服。
【請求項2】
前記第1強伸縮部はウェア本体の両側にそれぞれ設けてあり、
両第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通させた後体幹側領域をそれぞれ具備し、
前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部と、前記ウェア本体の背面であって前記第2強伸縮部より襟ぐり側の位置に設けてあり、二対の枝領域を有するX字帯状の第3強伸縮部とを更に備え、
前記両第1強伸縮部の前体幹側領域及び後体幹側部分はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結しており、
前記第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてあり、
前記第3強伸縮部の一対の枝領域はそれぞれ両第1強伸縮部の三角筋領域又は後体幹側領域に連結しており、第3強伸縮部の他対の枝領域はそれぞれ前記第2強伸縮部又は両第1強伸縮部の後体幹側領域に連結している
請求項1記載の被服。
【請求項3】
前記第1強伸縮部はウェア本体の両側にそれぞれ設けてあり、
前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部と、前記ウェア本体の背面であって前記第2強伸縮部より襟ぐり側の位置に設けてあり、二対の枝領域を有するX字帯状の第3強伸縮部とを更に備え、
該第3強伸縮部の襟ぐり側の縁は、ウェア本体の着用者の肩峰点に対向する位置と肩甲骨下角に対向する位置とを通る線分を含み、当該線分よりウェア本体の裾側の適宜位置になしてあり、
前記両第1強伸縮部の前体幹側領域はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結しており、
前記第3強伸縮部の一対の枝領域はそれぞれ両第1強伸縮部の三角筋領域に連結しており、第3強伸縮部の他対の枝領域はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結している
請求項1記載の被服。
【請求項4】
前記第1強伸縮部は、前記ウェア本体に着用者の後体幹側に倣うように設けてあり、前記三角筋領域に連通させた後体幹側領域を具備し、
前記ウェア本体に着用者の腰部を囲繞するように設けた帯状の第2強伸縮部を備え、
前記第1強伸縮部の前体幹側部分の端部及び後体幹側部分の端部はそれぞれ前記第2強伸縮部に連結している
請求項1記載の被服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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