被測定物の幾何学的性状算出方法及び幾何学的性状プログラム、並びに輪郭形状測定装置
【課題】被測定物の表面に形成された輪郭形状を測定した形状測定データを用いて、当該輪郭形状の幾何学的性状を算出する際に、形状測定データのうちから、当該輪郭形状の幾何学的性状の算出に使用する範囲を指定する作業を自動化ないし半自動化する。
【解決手段】輪郭形状測定装置1に、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データとこれに従って形成された被測定物表面の輪郭形状の形状測定データとの間の位置合わせを行う位置合わせ部61と、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から、形状測定データのうち、幾何要素に対応して形成された輪郭形状を測定した範囲の外端を決定するデータ範囲決定部と63と、を設ける。
【解決手段】輪郭形状測定装置1に、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データとこれに従って形成された被測定物表面の輪郭形状の形状測定データとの間の位置合わせを行う位置合わせ部61と、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から、形状測定データのうち、幾何要素に対応して形成された輪郭形状を測定した範囲の外端を決定するデータ範囲決定部と63と、を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定装置、並びに被測定物表面上に形成された輪郭形状を測定した形状測定データから、その輪郭形状の寸法や、中心位置又は真円度といった幾何学的性状を算出する方法及びプログラムに関する。特に、このような幾何学的性状の算出に際して、被測定物表面の輪郭形状を測定した形状測定データのうちから、幾何学的性状を算出しようとするデータ範囲を指定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に輪郭形状測定装置は、被測定物の表面に所定の測定圧力で触針を押しつけながら、この触針と被測定物を相対移動させ、そのとき被測定物の表面の起伏により生じる触針の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の計算機で読み取り、この変位量から求まる触針と被測定物表面との接触点の高さ情報を、触針の移動経路上に順次配置することにより被測定物の表面形状データを作成するものである(例えば、下記特許文献1)。図1に、輪郭形状測定装置の基本構成を示す。
【0003】
なお、明細書では「輪郭形状測定装置」を例示して本発明についての説明を行うが、これに限定されることなく、「三次元座標測定装置」、「真円度測定装置」や「表面粗さ測定装置」等、称呼及び用途が異なっていても、被測定物の輪郭形状を測定できる装置であれば、何であれ本発明を適用することが可能である。また本発明は、以下説明するような触針を被測定物表面に沿わせる接触式の測定装置だけでなく、測定面に接触しない非接触センサを用いる輪郭形状測装置であっても適用することが可能である。
【0004】
輪郭形状測定装置1には、被測定物Wを載置するためのXY平面に沿ったテーブル2が設けられる。テーブル2にはコラム3が立設される。そしてコラム3にはZ方向可動部4が取り付けられる。コラム3には図示しないモータが内蔵されており、このモータによってZ方向可動部4をコラム3に沿って(すなわちZ方向に沿って)上下に昇降することが可能である。
Z方向可動部4にはX方向可動部5が設けられ、このX方向可動部5に腕部10を取り付け、さらに腕部10の先にピックアップ6を取り付ける。Z方向可動部4もまた図示しないモータを内蔵しており、X方向可動部5をX方向に駆動することが可能である。
【0005】
腕部10の先端には、テーブル2上に載置された被測定物の輪郭形状を測定するための測定子(ピックアップ)6が設けられ、このピックアップ6には、一方の端に触針11が設けられたカンチレバー7が取り付けられる。
触針11を被測定物Wの測定面103を押し当てた状態で、輪郭形状測定装置1の動作を制御するコンピュータ等の計算部30が、移動機構駆動回路70を介してX方向駆動部4を一定速度で移動させる。すると触針11が測定面の輪郭に沿って昇降し、これによりカンチレバー7が揺動する。この揺動量がピックアップ6内の作動トランスや作動インダクタンスによって電気信号に変換される。
【0006】
ピックアップ6の出力信号は、アナログディジタル変換回路(ADC)20に入力されて、アナログディジタル変換回路20はこのアナログ信号を所定のサンプリング周期でディジタル形式の変位信号列に変換する。
ディジタル形式の変位信号列は計算部30に入力される。計算部30は、X方向可動部5を一定速度で移動させて触針11を被測定物表面103上で移動させながら順次読み取った各変位信号の値から、それぞれの位置における触針11と被測定物表面103との接触点のZ座標を求め、これを触針11の移動経路上に順次配置することにより被測定物の表面形状データを作成する。
【0007】
図2の(A)は、被測定物Wの表面上に形成された輪郭形状の形状測定データの例を示す図である。なお本図では簡単のためデータを直線又は曲線にて示したが、実際の形状測定データは被測定物表面上の各位置の座標の測定データ点列からなるのが通常である。図2の(A)に例示する形状測定データは、2つの円弧状のデータ部分MD1及びMD3と1つの直線状のデータ部分MD2を含んでいる。
ここで、輪郭形状を特定するために使用可能な、このような円弧や直線、又は円、矩形等の既知の幾何学的形状を、本明細書及び特許請求の範囲において「幾何要素」と記す。
【0008】
輪郭形状測定装置1の中には、単に被測定物Wの表面の形状測定データだけでなく、この形状測定データMD1〜MD3によって示される輪郭形状(図示の例では円弧A1、A2や直線L)の寸法などを算出する機能を有するものがある。
例えば図2の(B)に示すように、円弧状を有する輪郭A1部分について、円弧A1を含む全円の中心位置O1、全円の半径R、円弧の開始点P1及び終了点P2、開始角θ1及び終了角θ2、並びに真円度を算出することができる。また直線状の輪郭L部分については、直線Lの開始点P3及び終了点P4及び長さLNや、また所定の座標軸に対する角度などを算出する。
【0009】
ここで、幾何要素及びこれに対応する形状を有する輪郭形状について、単に「円弧」「直線」「円」「矩形」と等の幾何要素の種類を特定する情報を、本明細書及び特許請求の範囲では幾何要素の「種別」及び輪郭形状の「種別」と記す。
また、幾何要素及びこれに対応する形状を有する輪郭形状について、上記の「種別」と共に使用されることによって幾何要素の大きさや形状及び位置のいずれかを具体的に特定する数値情報を、本明細書及び特許請求の範囲において、幾何要素の「幾何学的性状」及び輪郭形状の「幾何学的性状」と記す。円弧の幾何学的性状の例は、上述の半径R、開始角θ1及び終了角θ2、中心位置O、開始点P1及び終了点P2である。また直線の幾何学的性状の例は、長さLNや座標軸に対する角度及び開始点P3及び終了点P4である。
【0010】
さらに輪郭形状測定装置1には、個々の幾何要素について直接算出した一次的な幾何学的性状に加えて、これら一次的幾何学的性状を示す数値をさらに演算して二次的な幾何学的性状を演算する機能を有するものもある。このような二次的な幾何学的性状の例は、図2の(B)に示す、2つの弧の中心点O1及びO2間のピッチである。
【0011】
【特許文献1】特開2002−107144号公報
【特許文献2】特開平2005−127934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
被測定物Wの表面上に形成された輪郭形状の幾何学的性状を算出するためには、被測定物Wの表面を測定した測定形状データの中から当該輪郭形状を測定した部分の範囲と輪郭形状の種別とを指定する必要がある。
従来の輪郭形状測定装置1ではこの指定作業を人間が行っていた。例えば図2の(B)に示す円弧A1の幾何学的性状を算出する場合には、オペレータは、計算部30であるコンピュータのディスプレイ上に表示された円弧状の測定データMD1の開始点P1と終了点P2をマウスなどの入力手段で指定していた。さらにオペレータは、計算部30により実現されるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を操作して、測定データMD1が示す輪郭形状の種別「円弧」を入力していた。
【0013】
このため入力作業が煩雑であっただけでなく、算出結果にオペレータの個人差によるバラツキを招来していた。すなわち、ある幾何要素に等しい輪郭形状を有する被測定物の表面を測定した場合であっても、実際の被測定物には表面に微小な凹凸がありエッジ部分にはダレが生じるのが通常である。このため幾何学的性状を算出するデータ範囲の指定の微小な違いによって算出結果に大きな差が生じることもある。
【0014】
そこで本発明では、被測定物の表面に形成された輪郭形状を測定した形状測定データを用いて、その輪郭形状の幾何学的性状を算出する際に、形状測定データのうち、その輪郭形状の幾何学的性状の算出に使用する範囲を指定する作業を自動化ないし半自動化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明では、被測定物の表面上の輪郭形状が設計データに基づいて形成されたものである場合には、被測定物の表面を測定した形状測定データにおける輪郭形状の位置を、設計データにおける輪郭形状の位置から決定する。
本発明の第1形態によれば、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出する被測定物の幾何学的性状算出方法が提供される。この方法では、被測定物表面上の輪郭形状を測定して得た形状測定データと設計データとの間の位置合わせを行い、形状測定データのうち幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から決定する。
【0016】
本発明の第2形態によれば、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出するための、被測定物の幾何学的性状算出プログラムが提供される。
このプログラムは、被測定物表面の輪郭形状を測定して得た形状測定データと設計データとの間の位置合わせを行うステップと、形状測定データのうち幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から決定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0017】
本発明の第3形態によれば、被測定物の表面上の輪郭形状測定を行う輪郭形状測定部と、輪郭形状測定の結果から被測定物の表面上の輪郭形状の形状測定データを生成する形状測定データ生成部と、形状測定データが示す輪郭形状の幾何学的性状を算出する幾何学的性状算出部と、を有する輪郭形状測定装置が提供される。ここで輪郭形状測定装置には、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データとこれに従って形成された被測定物表面の輪郭形状の形状測定データとの間の位置合わせを行う位置合わせ部と、形状測定データのうち幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から決定するデータ範囲決定部と、が設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、被測定物の表面上に形成された輪郭形状の幾何学的性状を算出するために必要な、算出範囲と種別の指定を自動的に行うことができるので作業効率を大幅に向上することが可能となる。
また算出範囲の境界位置を定める判断基準を常に一定に保つことが可能となるために、オペレータによる算出結果のバラツキが解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図3は、図1に示す輪郭形状測定装置を制御して、本発明による輪郭形状測定装置を実現する計算部の概略構成例を示す図である。本発明の実施例による輪郭形状測定装置のその他の構成要素は、図1に示す輪郭形状測定装置1と同様であるため、記載の重複を防ぐために説明を省略する。
【0020】
コンピュータ等で実現される計算部30は、輪郭形状測定装置1の制御プログラムや、またピックアップ6からの出力信号を処理して表面形状データを作成するプログラムなどを実行するCPU31と、CPU31による各プログラムの実行に必要なデータを記憶するための、RAM及びROMなどの主記憶装置32と、CPU31が実行する各プログラムや作成した表面形状データを保存するための副記憶装置33と、副記憶装置33とCPU31との間のデータのやりとりを行うインタフェース34と、を備える。
【0021】
また計算部30は、オペレータによるコマンドやデータの入力操作を受け付けるキーボードやマウス等の入力部35と、入力部35から入力されたオペレータによるコマンドやデータを計算部30本体に入力するインタフェース36と、輪郭形状測定装置1の測定結果データやグラフィカルユーザインタフェース(GUI)等で実現される輪郭形状測定装置1の操作画面を表示するディスプレイ装置である表示部37と、表示部37を制御してCPU31が実行する各プログラムにより生成される表示内容を表示部37に表示させる表示制御部38と、を備える。
さらに計算部30は、ピックアップ6からの出力信号をアナログディジタル変換回路20にてディジタル信号に変換した変位信号を計算部30本体に入力するインタフェース39と、またZ方向可動部4及びX方向可動部5の動作を制御する制御信号を移動機構駆動回路70に出力するためのインタフェース部(I/F)40と、を備えて構成される。
【0022】
図4は、図3に示す計算部30のCPU31により実行される輪郭形状測定プログラム50によって実現される機能ブロック図である。計算部30のCPU31は、副記憶装置33に記憶された輪郭形状測定プログラム50を実行することにより、輪郭形状測定プログラム50に組み込まれた幾何学的性状算出プログラムによって実現される幾何学的性状算出部52と、形状測定データ生成部51と、表示部37に表示するグラフィカルユーザインタフェースを生成するGUI部53の、の各機能ブロックを実現する。
【0023】
形状測定データ生成部51は、被測定物Wの表面の輪郭形状の形状測定データを生成する。例えば、形状測定データ生成部51は、図1に示す触針11を被測定物Wの表面に接触させた状態でX方向可動部5が一定速度で移動している間に、アナログディジタル変換回路20を介してピックアップ6が検出する変位信号を順次読み取って、このとき読み取った変位信号が示す触針11と被測定物Wとの間の接触点のZ座標を、触針11の移動経路上に各々配置することにより被測定物Wの表面の形状測定データを作成する。
【0024】
GUI部53は、形状測定データに含まれた輪郭形状に対する幾何学的性状の算出を、幾何学的性状算出部52に行わせるために必要な入力操作を、オペレータが表示部37及び入力部35を介して行うためのGUI画面を生成する。
例えばGUI部53は、形状測定データ生成部51が生成した被測定物Wの表面の形状測定データや、被測定物Wの表面形状を形成する際に基となった被測定物Wの表面の輪郭形状の設計データを、所定のウインドウ部分に表示するGUI画面を生成する。
またGUI部53は、オペレータが幾何学的性状算出部52の動作を指定するために必要なメニュー、プルダウンメニュー及びチェックボックス等の操作部を有するGUI画面を生成する。またGUI部53は必要に応じて、GUI画面上に表示した形状測定データや設計データの表示箇所がマウス等で指示されたことを検出して、オペレータが指定した形状測定データや設計データの範囲や部分を検出することも可能である。
【0025】
幾何学的性状算出部52は、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データに含まれる輪郭形状の幾何学的性状を算出する。このため幾何学的性状算出部52は、形状測定データに含まれた輪郭形状から直接定まる幾何学的性状を算出する一次性状算出部64と、一次性状算出部64が形状測定データから算出した一次的な幾何学的性状をさらに演算して二次的な幾何学的性状を演算する二次性状算出部65を、備える。
一次性状算出部64及び二次性状算出部65が算出した幾何学的性状データは、副記憶装置33に保存され又はGUI画面上に表示される。
形状測定データ生成部51が生成した形状測定データのうち、いずれの範囲のデータを一次性状算出部64により幾何学的性状を算出すべきデータの範囲とし、このデータの範囲に含まれる輪郭形状の種別が何であるかは、オペレータがGUI画面を操作することによって従来通り指定できる。
【0026】
しかし、幾何学的性状算出部52は、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データが、既知の設計データに従って表面の輪郭形状が形成された被測定物Wを測定したものであるときには、この設計データに基づいて、輪郭形状の幾何学的性状を算出すべきデータの範囲と輪郭形状の種別とを自動的に決定する。
すなわち、物体の輪郭形状を形成する際にその形状を指定するために使用されるCADデータなどの設計データは、「円弧」「直線」「円」「矩形」などの複数の種類の既知の幾何学的形状を有する幾何要素を用いて輪郭形状を特定している。そして被測定物Wの表面の輪郭形状を形成する際にその基となった設計データには、被測定物Wの表面上に形成された輪郭形状に対応する幾何要素の種別データ、座標データ、及び幾何要素の寸法等である幾何学的性状を特定する性状データが含まれている。
【0027】
そこで幾何学的性状算出部52は、計算部30に読み込まれ副記憶装置33等に記憶された、被測定物Wの表面の輪郭形状の設計データから、この設計データに含まれる幾何要素の種別データ、座標データ及び性状データを読み出す。そして、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データのうち、設計データに含まれる幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分を測定した範囲の外端の位置、及びこの輪郭形状の種別を、この幾何要素の種別データ及び性状データに基づいて決定する。
【0028】
このため幾何学的性状算出部52は、形状測定データ生成部51が生成した被測定物Wの表面の輪郭形状の形状測定データと、被測定物Wの表面の輪郭形状を形成する基となった設計データと、の位置合わせを行う位置合わせ部61を備える。
また幾何学的性状算出部52は、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の種別から、形状測定データのうちの、幾何要素に対応して形成された輪郭部分の形状の種別を決定する幾何要素種別決定部62を備える。
さらに幾何学的性状算出部52は、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から、形状測定データのうちの、この幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分を測定した範囲を決定するデータ範囲決定部63を備える。
【0029】
そしてデータ範囲決定部63は、決定したデータの範囲の全部又は一部を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として、一次性状算出部64に対して指定する。また、幾何要素種別決定部62は、幾何要素に対応して形成された輪郭部分の形状の種別を一次性状算出部64に与える。
一次性状算出部64は、これらデータ範囲と種別に基づいて、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データのうちの、指定されたデータ範囲に含まれる輪郭形状の幾何学的性状を算出する。
【0030】
図5は、本発明の実施例による幾何学的性状算出方法の全体フローチャートである。
まず、ステップS11において、図1に示す輪郭形状測定装置1は、触針11を被測定物Wの表面に接触させながらX方向可動部5を一定速度で移動させて、その間にピックアップ6が検出する変位信号を検出することにより、被測定物Wの表面の輪郭形状を測定する。
次にステップS12において、計算部30により実現される図4に示す輪郭形状測定プログラム50の形状測定データ生成部51は、アナログディジタル変換回路20を介してピックアップ6が検出する変位信号を順次読み取って、被測定物Wの表面の輪郭形状の形状測定データを生成する。
【0031】
ここで、形状測定データ生成部51によって形状測定データが生成された被測定物Wの表面には、既知の設計データに含まれる幾何要素に従って輪郭形状が形成された箇所を有していると仮定する。図6の(A)は、形状測定データ生成部51が形状測定データMDの例を示す図であり、図6の(B)は、図6の(A)に示す形状測定データMDを採取した箇所の輪郭形状の設計データDDを示す図である。
図6の(A)に示すように、形状測定データMDのMD1の範囲には、円弧状の凹部を測定した形状測定データが含まれている。このMD1の範囲にある輪郭形状は、図6の(B)に示す設計データDDに含まれる円弧Aに従って形成されたものである。
【0032】
設計データDDは、輪郭形状を特定する幾何要素の種別データと、座標データと、幾何要素の寸法等を指定する性状データとを含んで構成されている。例えば図6の(B)に示す円弧Aのように、種別が「円弧」である幾何要素を含む設計データDDには、この幾何要素Aの座標データとして円弧Aを含む全円の中心点Oの座標が、この幾何要素Aの性状データとしてこの全円の半径R、円弧Aの開始角θ1及び円弧Aの終了角θ2が含まれている。
図5に戻り、ステップS13では、被測定物Wの表面の輪郭形状の設計データDDを用いて、被測定物Wの表面の形状測定データMDのうちからこの輪郭形状の幾何学的性状の計算を行うデータ範囲と、この輪郭形状の種別を決定する。
【0033】
図7は、図5に示すサブルーチンS13のフローチャートである。サブルーチンS13では、形状測定データMDと設計データDDとの間で位置合わせを行った後、位置合わせされた設計データDDに含まれる幾何要素の外端の位置を求め、この幾何要素に従って形成された輪郭部分の形状測定データの範囲の外端を、この幾何要素の外端の位置から求める。
まずステップS20では、図4に示す幾何学的性状算出部52の位置合わせ部61は、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標との間の相対位置差を求めることによってこれらの間の位置合わせを行う。図8の(A)〜図8の(C)は、形状測定データMDと設計データDDの位置合わせ方法の一例の説明図である。
【0034】
形状測定データMDの座標は、輪郭形状測定装置1のテーブル2上のどこに被測定物Wを置くかに応じて変化するため、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標とは図8の(A)に示すように相対位置差eがある。このため、図8の(B)に示すように幾何要素Aの外端P1及びP2の位置から、この幾何要素Aに従って形成された輪郭部分のデータ範囲MD1を求めるためには、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標との間の相対位置差eを求める必要がある。
【0035】
そこで、例えば図8の(C)に示す位置合わせ方法では、設計データDD上の各点PD1〜PD5と、これらの点からそれぞれ最も近い形状測定データ上の点PM1〜PM5と、の間のそれぞれの位置誤差ei1〜ei5を求め、これら総誤差Σeij(j=1〜5)が最も小さくなるような、形状測定データMDと設計データDDとの間の相対移動量を算出する。
図9は、例えば形状測定データMDの座標と設計データDDの座標との間の相対位置差eに、データの回転誤差が含まないと仮定した場合の、形状測定データMDと設計データDDとの位置合わせ方法の一例を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS31において位置合わせ部61は、現状の相対位置関係において、設計データDD上のM個の点と、これらの点からそれぞれ最も近い形状測定データ上の点との間のそれぞれの位置誤差ei1〜eiMを求め、これらの総誤差e0(=Σe0j(j=1〜M))を計算し、ステップS32において総誤差e0を一時保存する。
次にステップS33〜ステップS36において位置合わせ部61は、形状測定データMDと設計データDDとの相対位置を、全方位360度をN等分した各方向θi(i=1〜N)のそれぞれの方向に所定の距離だけずらした場合の、各総誤差ei(=Σeij(j=1〜M))を計算し、保存する。
【0037】
ステップS37において位置合わせ部61は、各方向θiについて計算した各総誤差eiのいずれもが、ステップS32で保存した移動前の総誤差e0よりも増加していた場合には、現在、形状測定データMDと設計データDDとが最も良く位置合わせされていると判断して処理を終了する。
また、各角度θiについて計算した各総誤差eiのいずれかが総誤差e0より小さい場合には、位置合わせ部61は、これら各総誤差eiのうち最も小さい総誤差etとなった方向θtを、形状測定データMDと設計データDDとの間の相対位置をずらす方向として決定する。ステップS39において位置合わせ部61は、形状測定データMDと設計データDDとの位置をθtの方向に所定の距離だけ相対移動させ、そのときの各総誤差eo(=Σeoj(j=1〜M))を計算し、保存する(ステップS40、S41)。
【0038】
ステップS42において位置合わせ部61は、形状測定データMDと設計データDDとの位置をθtの方向に所定の距離だけさらに相対移動させ、そのときの各総誤差en(=Σenj(j=1〜M))を計算し、保存する(ステップS43、S44)。
そしてステップS45において位置合わせ部61は、ステップS42による相対移動によって形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が増加したか否か(すなわちen>eoとなったか否か)を判定し、まだ増加していない場合にはステップS46において各総誤差eoの値を各総誤差enの値に更新した後に、処理をステップS42に戻す。
【0039】
以後、位置合わせ部61は、θt方向の相対移動によって形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が、最小値を過ぎて増加し始めるまでステップS42〜ステップS46を繰り返し、形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が最小値を過ぎたとき(すなわちステップS45の判定でen>eo)となったとき、ステップS47において形状測定データMDと設計データDDとの間の相対位置を、−θtの方向に1ステップだけ戻してステップS31に処理を戻す。
位置合わせ部61は以上の動作を、形状測定データMDと設計データDDとを全方向に相対移動させたときに、いずれ方向においても形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が増加するまで繰り返す。
その結果、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標とは、これらのデータが図8の(B)に示すように最も良く重なり合うまで相対移動されるので、移動前の位置関係と移動後の位置関係を比較することによって相対位置差eを求めることができる。
【0040】
図7に戻りステップS21では、図4に示す幾何要素種別決定部62は、形状測定データMDに位置合わせされた設計データDDに含まれる幾何要素の種別データ(図6の(B)に示す例では幾何要素「A」の種別データ「円弧」)を、この幾何要素に従って形成された輪郭形状の種別として決定する。
またデータ範囲決定部63は、被測定物Wの表面の形状測定データMDのうちからこの幾何要素に従って形成された輪郭形状のデータ範囲(図6の(A)に示す例ではデータ範囲MD1)を決定する。
【0041】
図7に示すルーチンS21にて実行される各ステップの例を示すフローチャートを、図10に示す。
まず、ステップS51において、幾何要素種別決定部62は、形状測定データMDに位置合わせされた設計データDDに含まれる幾何要素の種別データを、この幾何要素に従って形成された輪郭形状の種別として決定する。
ステップS52において、データ範囲決定部63は、ステップS51で決定した種別データに応じて、この幾何要素の性状データからこの幾何要素の外端の座標を取得する。
【0042】
ここで幾何要素の「外端」とは、設計データDD中の幾何要素が、例えば図11の(A)に示す円弧OCのような開曲線である場合には、その両端EP1及びEP2をいう。幾何要素が、直線である場合、あるいは多角形を構成する閉じた図形の辺の一部を除くことによって定義される開いた図形である場合も同様である。
そして、例えば幾何要素が円弧OCである場合には、その種別データ、円弧OCを含む前縁Cの中心位置O、並びに開始角θ1及び終了角θ2に応じて、既知の算出式によって外端EP1及びEP2の位置を算出することが可能である。
設計データDD中の幾何要素が、例えば図11の(B)に示す半球の球面のような開いた面Sである場合には、データ範囲決定部63は、その開いた面Sを囲う閉曲線ECを幾何要素の「外端」とする。
【0043】
ここで、幾何学的性状の計算を所望する形状測定データMDが、閉曲線や閉曲面などの閉じた図形である場合には、そもそも計算を行うデータ範囲の開始点と終了点とを指定する必要がないため外端の位置を算出する必要がない。
このような場合には、データ範囲決定部63は、この幾何要素に対応する輪郭形状のデータ範囲を決定せず、一次性状算出部64は、幾何要素種別決定部62が決定した種別のみを用いて形状測定データに含まれる輪郭形状の幾何学的性状の計算を行う。
【0044】
ステップS53において、データ範囲決定部63は、ステップS52で取得した幾何要素の外端に対応する形状測定データ上の位置を決定し、この位置を、幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分を測定したデータの範囲の外端とする。例えばデータ範囲決定部63は、形状測定データ上の各位置のうち、ステップS52で取得した幾何要素の外端に最も近い位置を、このようなデータ範囲の外端として決定してよい。
【0045】
図7に戻り、ステップS22においてデータ範囲決定部63は、決定したデータ範囲の全部又は一部を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として決定する。図12に、データ範囲決定部63による算出範囲の決定方法の例を示す。
まずステップS21において、設計データDDの幾何要素である円弧Aの外端P1及びP2に最も近い測定データMD上の点P1’及びP2’が、設計データDDの円弧Aに対応する輪郭部分RN1を測定したデータ範囲として決定されたとする。
【0046】
しかし図示のように、通常の被測定物Wでは、理論的な設計データDDよりも点P1’及びP2’のエッジがダレており、点P1’及びP2’の近傍部分を含む範囲RN1のデータに基づいて幾何学的性状を算出すると、算出結果に大きな誤差を生じるおそれがある。
したがってデータ範囲決定部63は、幾何要素に対応して形成された輪郭部分の範囲として決定された範囲RN1より、所定のマージンΔMだけ内側の範囲RN2を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として決定する。
【0047】
そして図5に戻り、ステップS14において、一次性状算出部64は、データ範囲決定部63が決定した算出範囲と、幾何要素種別決定部62が決定した輪郭形状の種別を用いて、この算出範囲の形状測定データが示す輪郭形状の幾何学的性状を特定する数値を算出する。例えば算出範囲の形状測定データが図6の(A)に示す円弧状の輪郭形状を示す場合には、一次性状算出部64は、この輪郭形状を含む全円の中心位置、半径、円弧の開始角及び終了角、並びに開始位置及び終了位置等の幾何学的性状を算出する。
【0048】
さらにステップS15では、GUI部53は、ステップS14において算出された一次的な幾何学的性状を示す数値を更に演算して、二次的な幾何学的性状を演算するための、操作手段を、表示部37に表示されるGUI画面上に提供する。
例えば、GUI部53は、一次的な幾何学的性状の算出が済んだデータ範囲と、算出するべき二次的な幾何学的性状の種類と、をオペレータがマウスを用いて選択することができる選択画面を生成してよい。
次にステップS16では、GUI部53により生成されたGUI画面を介して入力したオペレータの操作コマンドに従って、ステップS14において算出された一次的な幾何学的性状を示す数値を更に演算して、二次的な幾何学的性状を演算する。
【0049】
図13は、図5に示す、幾何学的性状の計算を行う形状測定データMDの範囲と輪郭形状の種別を決定するサブルーチンS13の第2例のフローチャートである。
設計データに複数の幾何要素が含まれ、形状測定データにもこれら複数の幾何要素に対応する輪郭形状がそれぞれ含まれている場合、その全てについて幾何学的性状の計算を行う必要がない場合がある。したがって図13に示すフローチャートでは、形状測定データ中に複数含まれる輪郭形状のうち、幾何学的性状の計算を行う必要があるものだけ計算範囲を決定する場合の例を示す。
【0050】
まず、ステップS60において図4に示すGUI部53は、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データMDを表示部37上に表示する。このとき例えばGUI部53は、図14に示すように、形状測定データMDをGUI画面上のウインドウ部101に表示してよい。
そして、オペレータが表示部37上の一箇所を指定すると、この場所を含む所定の範囲内に表示された形状測定データを計算対象データとして選択する。
例えば、オペレータがマウス等の入力部35を操作して、ウインドウ101に表示されたカーソル102の位置を測定データMDの表示箇所103の上へ移動させ、この位置103を指定すると、GUI部53はこの位置を中心とする幅W及び高さHの矩形領域内の形状測定データを選択する。
【0051】
次にステップS61において、GUI部53は、計算部30に読み込まれ副記憶装置33等に記憶された設計データDDを表示部37上に表示する。そして、オペレータが、GUI画面を操作して、ステップS60で選択した形状測定データの箇所の輪郭形状の設計データである幾何要素を指定すると、GUI部53は、この幾何要素をステップS60で選択した形状測定データに対応する幾何要素として選択する。
【0052】
そしてステップS20において位置合わせ部61は、図8及び図9を参照して説明したのと同様に、ステップS60で選択した範囲の形状測定データと、ステップS61において選択した幾何要素との間の相対位置差がなくなるように、形状測定データと設計データとの間の位置合わせを行う。
ステップS21において、幾何要素種別決定部62とデータ範囲決定部63は、図10を参照して説明したのと同様に、ステップS60で選択した範囲の形状測定データのうちの、ステップS61において選択した幾何要素に従って形成された輪郭形状を測定したデータ範囲、並びに輪郭形状の種別を決定する。
ステップS22において、データ範囲決定部63は、図12を参照して説明したのと同様に、決定したデータ範囲の全部又は一部を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として決定する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定装置、並びに被測定物表面上に形成された輪郭形状の輪郭形状を測定した形状測定データから、その輪郭形状の寸法や、中心位置又は真円度といった幾何学的性状を算出する方法及びプログラムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】輪郭形状測定装置の基本構成図である。
【図2】(A)は被測定物表面上に形成された輪郭形状の形状測定データの例であり、(B)は(A)に示す輪郭形状について算出される幾何学的性状の例を示す図である。
【図3】図1に示す輪郭形状測定装置を制御して、本発明による輪郭形状測定装置を実現する計算部の概略構成例を示す図である。
【図4】図3に示す計算部により実現される機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施例による幾何学的性状算出方法の全体フローチャートである。
【図6】(A)は形状測定データ生成部51が形状測定データMDの例を示す図であり、(B)は(A)に示す形状測定データMDを採取した箇所の輪郭形状の設計データDDを示す図である。
【図7】図5に示すサブルーチンS13の第1例のフローチャートである。
【図8】(A)〜(C)は形状測定データと設計データの位置合わせ方法の一例の説明図である。
【図9】図7に示すサブルーチンS20の一例のフローチャートである。
【図10】図7に示すサブルーチンS21のフローチャートである。
【図11】(A)〜(D)は、幾何要素の外端の例を示す説明図である。
【図12】幾何学的性状の算出範囲の決定方法の説明図である。
【図13】図5に示すサブルーチンS13の第2例のフローチャートである。
【図14】幾何学的性状を算出する形状測定データを選択するGUI画面を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 輪郭形状測定装置
2 テーブル
3 コラム
4 Z方向可動部
5 X方向可動部
6 ピックアップ
7 カンチレバー
10 腕部
11 触針
50 輪郭形状測定プログラム
52 幾何学的性状算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定装置、並びに被測定物表面上に形成された輪郭形状を測定した形状測定データから、その輪郭形状の寸法や、中心位置又は真円度といった幾何学的性状を算出する方法及びプログラムに関する。特に、このような幾何学的性状の算出に際して、被測定物表面の輪郭形状を測定した形状測定データのうちから、幾何学的性状を算出しようとするデータ範囲を指定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に輪郭形状測定装置は、被測定物の表面に所定の測定圧力で触針を押しつけながら、この触針と被測定物を相対移動させ、そのとき被測定物の表面の起伏により生じる触針の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の計算機で読み取り、この変位量から求まる触針と被測定物表面との接触点の高さ情報を、触針の移動経路上に順次配置することにより被測定物の表面形状データを作成するものである(例えば、下記特許文献1)。図1に、輪郭形状測定装置の基本構成を示す。
【0003】
なお、明細書では「輪郭形状測定装置」を例示して本発明についての説明を行うが、これに限定されることなく、「三次元座標測定装置」、「真円度測定装置」や「表面粗さ測定装置」等、称呼及び用途が異なっていても、被測定物の輪郭形状を測定できる装置であれば、何であれ本発明を適用することが可能である。また本発明は、以下説明するような触針を被測定物表面に沿わせる接触式の測定装置だけでなく、測定面に接触しない非接触センサを用いる輪郭形状測装置であっても適用することが可能である。
【0004】
輪郭形状測定装置1には、被測定物Wを載置するためのXY平面に沿ったテーブル2が設けられる。テーブル2にはコラム3が立設される。そしてコラム3にはZ方向可動部4が取り付けられる。コラム3には図示しないモータが内蔵されており、このモータによってZ方向可動部4をコラム3に沿って(すなわちZ方向に沿って)上下に昇降することが可能である。
Z方向可動部4にはX方向可動部5が設けられ、このX方向可動部5に腕部10を取り付け、さらに腕部10の先にピックアップ6を取り付ける。Z方向可動部4もまた図示しないモータを内蔵しており、X方向可動部5をX方向に駆動することが可能である。
【0005】
腕部10の先端には、テーブル2上に載置された被測定物の輪郭形状を測定するための測定子(ピックアップ)6が設けられ、このピックアップ6には、一方の端に触針11が設けられたカンチレバー7が取り付けられる。
触針11を被測定物Wの測定面103を押し当てた状態で、輪郭形状測定装置1の動作を制御するコンピュータ等の計算部30が、移動機構駆動回路70を介してX方向駆動部4を一定速度で移動させる。すると触針11が測定面の輪郭に沿って昇降し、これによりカンチレバー7が揺動する。この揺動量がピックアップ6内の作動トランスや作動インダクタンスによって電気信号に変換される。
【0006】
ピックアップ6の出力信号は、アナログディジタル変換回路(ADC)20に入力されて、アナログディジタル変換回路20はこのアナログ信号を所定のサンプリング周期でディジタル形式の変位信号列に変換する。
ディジタル形式の変位信号列は計算部30に入力される。計算部30は、X方向可動部5を一定速度で移動させて触針11を被測定物表面103上で移動させながら順次読み取った各変位信号の値から、それぞれの位置における触針11と被測定物表面103との接触点のZ座標を求め、これを触針11の移動経路上に順次配置することにより被測定物の表面形状データを作成する。
【0007】
図2の(A)は、被測定物Wの表面上に形成された輪郭形状の形状測定データの例を示す図である。なお本図では簡単のためデータを直線又は曲線にて示したが、実際の形状測定データは被測定物表面上の各位置の座標の測定データ点列からなるのが通常である。図2の(A)に例示する形状測定データは、2つの円弧状のデータ部分MD1及びMD3と1つの直線状のデータ部分MD2を含んでいる。
ここで、輪郭形状を特定するために使用可能な、このような円弧や直線、又は円、矩形等の既知の幾何学的形状を、本明細書及び特許請求の範囲において「幾何要素」と記す。
【0008】
輪郭形状測定装置1の中には、単に被測定物Wの表面の形状測定データだけでなく、この形状測定データMD1〜MD3によって示される輪郭形状(図示の例では円弧A1、A2や直線L)の寸法などを算出する機能を有するものがある。
例えば図2の(B)に示すように、円弧状を有する輪郭A1部分について、円弧A1を含む全円の中心位置O1、全円の半径R、円弧の開始点P1及び終了点P2、開始角θ1及び終了角θ2、並びに真円度を算出することができる。また直線状の輪郭L部分については、直線Lの開始点P3及び終了点P4及び長さLNや、また所定の座標軸に対する角度などを算出する。
【0009】
ここで、幾何要素及びこれに対応する形状を有する輪郭形状について、単に「円弧」「直線」「円」「矩形」と等の幾何要素の種類を特定する情報を、本明細書及び特許請求の範囲では幾何要素の「種別」及び輪郭形状の「種別」と記す。
また、幾何要素及びこれに対応する形状を有する輪郭形状について、上記の「種別」と共に使用されることによって幾何要素の大きさや形状及び位置のいずれかを具体的に特定する数値情報を、本明細書及び特許請求の範囲において、幾何要素の「幾何学的性状」及び輪郭形状の「幾何学的性状」と記す。円弧の幾何学的性状の例は、上述の半径R、開始角θ1及び終了角θ2、中心位置O、開始点P1及び終了点P2である。また直線の幾何学的性状の例は、長さLNや座標軸に対する角度及び開始点P3及び終了点P4である。
【0010】
さらに輪郭形状測定装置1には、個々の幾何要素について直接算出した一次的な幾何学的性状に加えて、これら一次的幾何学的性状を示す数値をさらに演算して二次的な幾何学的性状を演算する機能を有するものもある。このような二次的な幾何学的性状の例は、図2の(B)に示す、2つの弧の中心点O1及びO2間のピッチである。
【0011】
【特許文献1】特開2002−107144号公報
【特許文献2】特開平2005−127934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
被測定物Wの表面上に形成された輪郭形状の幾何学的性状を算出するためには、被測定物Wの表面を測定した測定形状データの中から当該輪郭形状を測定した部分の範囲と輪郭形状の種別とを指定する必要がある。
従来の輪郭形状測定装置1ではこの指定作業を人間が行っていた。例えば図2の(B)に示す円弧A1の幾何学的性状を算出する場合には、オペレータは、計算部30であるコンピュータのディスプレイ上に表示された円弧状の測定データMD1の開始点P1と終了点P2をマウスなどの入力手段で指定していた。さらにオペレータは、計算部30により実現されるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を操作して、測定データMD1が示す輪郭形状の種別「円弧」を入力していた。
【0013】
このため入力作業が煩雑であっただけでなく、算出結果にオペレータの個人差によるバラツキを招来していた。すなわち、ある幾何要素に等しい輪郭形状を有する被測定物の表面を測定した場合であっても、実際の被測定物には表面に微小な凹凸がありエッジ部分にはダレが生じるのが通常である。このため幾何学的性状を算出するデータ範囲の指定の微小な違いによって算出結果に大きな差が生じることもある。
【0014】
そこで本発明では、被測定物の表面に形成された輪郭形状を測定した形状測定データを用いて、その輪郭形状の幾何学的性状を算出する際に、形状測定データのうち、その輪郭形状の幾何学的性状の算出に使用する範囲を指定する作業を自動化ないし半自動化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明では、被測定物の表面上の輪郭形状が設計データに基づいて形成されたものである場合には、被測定物の表面を測定した形状測定データにおける輪郭形状の位置を、設計データにおける輪郭形状の位置から決定する。
本発明の第1形態によれば、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出する被測定物の幾何学的性状算出方法が提供される。この方法では、被測定物表面上の輪郭形状を測定して得た形状測定データと設計データとの間の位置合わせを行い、形状測定データのうち幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から決定する。
【0016】
本発明の第2形態によれば、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出するための、被測定物の幾何学的性状算出プログラムが提供される。
このプログラムは、被測定物表面の輪郭形状を測定して得た形状測定データと設計データとの間の位置合わせを行うステップと、形状測定データのうち幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から決定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0017】
本発明の第3形態によれば、被測定物の表面上の輪郭形状測定を行う輪郭形状測定部と、輪郭形状測定の結果から被測定物の表面上の輪郭形状の形状測定データを生成する形状測定データ生成部と、形状測定データが示す輪郭形状の幾何学的性状を算出する幾何学的性状算出部と、を有する輪郭形状測定装置が提供される。ここで輪郭形状測定装置には、輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データとこれに従って形成された被測定物表面の輪郭形状の形状測定データとの間の位置合わせを行う位置合わせ部と、形状測定データのうち幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から決定するデータ範囲決定部と、が設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、被測定物の表面上に形成された輪郭形状の幾何学的性状を算出するために必要な、算出範囲と種別の指定を自動的に行うことができるので作業効率を大幅に向上することが可能となる。
また算出範囲の境界位置を定める判断基準を常に一定に保つことが可能となるために、オペレータによる算出結果のバラツキが解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図3は、図1に示す輪郭形状測定装置を制御して、本発明による輪郭形状測定装置を実現する計算部の概略構成例を示す図である。本発明の実施例による輪郭形状測定装置のその他の構成要素は、図1に示す輪郭形状測定装置1と同様であるため、記載の重複を防ぐために説明を省略する。
【0020】
コンピュータ等で実現される計算部30は、輪郭形状測定装置1の制御プログラムや、またピックアップ6からの出力信号を処理して表面形状データを作成するプログラムなどを実行するCPU31と、CPU31による各プログラムの実行に必要なデータを記憶するための、RAM及びROMなどの主記憶装置32と、CPU31が実行する各プログラムや作成した表面形状データを保存するための副記憶装置33と、副記憶装置33とCPU31との間のデータのやりとりを行うインタフェース34と、を備える。
【0021】
また計算部30は、オペレータによるコマンドやデータの入力操作を受け付けるキーボードやマウス等の入力部35と、入力部35から入力されたオペレータによるコマンドやデータを計算部30本体に入力するインタフェース36と、輪郭形状測定装置1の測定結果データやグラフィカルユーザインタフェース(GUI)等で実現される輪郭形状測定装置1の操作画面を表示するディスプレイ装置である表示部37と、表示部37を制御してCPU31が実行する各プログラムにより生成される表示内容を表示部37に表示させる表示制御部38と、を備える。
さらに計算部30は、ピックアップ6からの出力信号をアナログディジタル変換回路20にてディジタル信号に変換した変位信号を計算部30本体に入力するインタフェース39と、またZ方向可動部4及びX方向可動部5の動作を制御する制御信号を移動機構駆動回路70に出力するためのインタフェース部(I/F)40と、を備えて構成される。
【0022】
図4は、図3に示す計算部30のCPU31により実行される輪郭形状測定プログラム50によって実現される機能ブロック図である。計算部30のCPU31は、副記憶装置33に記憶された輪郭形状測定プログラム50を実行することにより、輪郭形状測定プログラム50に組み込まれた幾何学的性状算出プログラムによって実現される幾何学的性状算出部52と、形状測定データ生成部51と、表示部37に表示するグラフィカルユーザインタフェースを生成するGUI部53の、の各機能ブロックを実現する。
【0023】
形状測定データ生成部51は、被測定物Wの表面の輪郭形状の形状測定データを生成する。例えば、形状測定データ生成部51は、図1に示す触針11を被測定物Wの表面に接触させた状態でX方向可動部5が一定速度で移動している間に、アナログディジタル変換回路20を介してピックアップ6が検出する変位信号を順次読み取って、このとき読み取った変位信号が示す触針11と被測定物Wとの間の接触点のZ座標を、触針11の移動経路上に各々配置することにより被測定物Wの表面の形状測定データを作成する。
【0024】
GUI部53は、形状測定データに含まれた輪郭形状に対する幾何学的性状の算出を、幾何学的性状算出部52に行わせるために必要な入力操作を、オペレータが表示部37及び入力部35を介して行うためのGUI画面を生成する。
例えばGUI部53は、形状測定データ生成部51が生成した被測定物Wの表面の形状測定データや、被測定物Wの表面形状を形成する際に基となった被測定物Wの表面の輪郭形状の設計データを、所定のウインドウ部分に表示するGUI画面を生成する。
またGUI部53は、オペレータが幾何学的性状算出部52の動作を指定するために必要なメニュー、プルダウンメニュー及びチェックボックス等の操作部を有するGUI画面を生成する。またGUI部53は必要に応じて、GUI画面上に表示した形状測定データや設計データの表示箇所がマウス等で指示されたことを検出して、オペレータが指定した形状測定データや設計データの範囲や部分を検出することも可能である。
【0025】
幾何学的性状算出部52は、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データに含まれる輪郭形状の幾何学的性状を算出する。このため幾何学的性状算出部52は、形状測定データに含まれた輪郭形状から直接定まる幾何学的性状を算出する一次性状算出部64と、一次性状算出部64が形状測定データから算出した一次的な幾何学的性状をさらに演算して二次的な幾何学的性状を演算する二次性状算出部65を、備える。
一次性状算出部64及び二次性状算出部65が算出した幾何学的性状データは、副記憶装置33に保存され又はGUI画面上に表示される。
形状測定データ生成部51が生成した形状測定データのうち、いずれの範囲のデータを一次性状算出部64により幾何学的性状を算出すべきデータの範囲とし、このデータの範囲に含まれる輪郭形状の種別が何であるかは、オペレータがGUI画面を操作することによって従来通り指定できる。
【0026】
しかし、幾何学的性状算出部52は、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データが、既知の設計データに従って表面の輪郭形状が形成された被測定物Wを測定したものであるときには、この設計データに基づいて、輪郭形状の幾何学的性状を算出すべきデータの範囲と輪郭形状の種別とを自動的に決定する。
すなわち、物体の輪郭形状を形成する際にその形状を指定するために使用されるCADデータなどの設計データは、「円弧」「直線」「円」「矩形」などの複数の種類の既知の幾何学的形状を有する幾何要素を用いて輪郭形状を特定している。そして被測定物Wの表面の輪郭形状を形成する際にその基となった設計データには、被測定物Wの表面上に形成された輪郭形状に対応する幾何要素の種別データ、座標データ、及び幾何要素の寸法等である幾何学的性状を特定する性状データが含まれている。
【0027】
そこで幾何学的性状算出部52は、計算部30に読み込まれ副記憶装置33等に記憶された、被測定物Wの表面の輪郭形状の設計データから、この設計データに含まれる幾何要素の種別データ、座標データ及び性状データを読み出す。そして、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データのうち、設計データに含まれる幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分を測定した範囲の外端の位置、及びこの輪郭形状の種別を、この幾何要素の種別データ及び性状データに基づいて決定する。
【0028】
このため幾何学的性状算出部52は、形状測定データ生成部51が生成した被測定物Wの表面の輪郭形状の形状測定データと、被測定物Wの表面の輪郭形状を形成する基となった設計データと、の位置合わせを行う位置合わせ部61を備える。
また幾何学的性状算出部52は、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の種別から、形状測定データのうちの、幾何要素に対応して形成された輪郭部分の形状の種別を決定する幾何要素種別決定部62を備える。
さらに幾何学的性状算出部52は、形状測定データに位置合わせされた設計データに含まれる幾何要素の外端の位置から、形状測定データのうちの、この幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分を測定した範囲を決定するデータ範囲決定部63を備える。
【0029】
そしてデータ範囲決定部63は、決定したデータの範囲の全部又は一部を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として、一次性状算出部64に対して指定する。また、幾何要素種別決定部62は、幾何要素に対応して形成された輪郭部分の形状の種別を一次性状算出部64に与える。
一次性状算出部64は、これらデータ範囲と種別に基づいて、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データのうちの、指定されたデータ範囲に含まれる輪郭形状の幾何学的性状を算出する。
【0030】
図5は、本発明の実施例による幾何学的性状算出方法の全体フローチャートである。
まず、ステップS11において、図1に示す輪郭形状測定装置1は、触針11を被測定物Wの表面に接触させながらX方向可動部5を一定速度で移動させて、その間にピックアップ6が検出する変位信号を検出することにより、被測定物Wの表面の輪郭形状を測定する。
次にステップS12において、計算部30により実現される図4に示す輪郭形状測定プログラム50の形状測定データ生成部51は、アナログディジタル変換回路20を介してピックアップ6が検出する変位信号を順次読み取って、被測定物Wの表面の輪郭形状の形状測定データを生成する。
【0031】
ここで、形状測定データ生成部51によって形状測定データが生成された被測定物Wの表面には、既知の設計データに含まれる幾何要素に従って輪郭形状が形成された箇所を有していると仮定する。図6の(A)は、形状測定データ生成部51が形状測定データMDの例を示す図であり、図6の(B)は、図6の(A)に示す形状測定データMDを採取した箇所の輪郭形状の設計データDDを示す図である。
図6の(A)に示すように、形状測定データMDのMD1の範囲には、円弧状の凹部を測定した形状測定データが含まれている。このMD1の範囲にある輪郭形状は、図6の(B)に示す設計データDDに含まれる円弧Aに従って形成されたものである。
【0032】
設計データDDは、輪郭形状を特定する幾何要素の種別データと、座標データと、幾何要素の寸法等を指定する性状データとを含んで構成されている。例えば図6の(B)に示す円弧Aのように、種別が「円弧」である幾何要素を含む設計データDDには、この幾何要素Aの座標データとして円弧Aを含む全円の中心点Oの座標が、この幾何要素Aの性状データとしてこの全円の半径R、円弧Aの開始角θ1及び円弧Aの終了角θ2が含まれている。
図5に戻り、ステップS13では、被測定物Wの表面の輪郭形状の設計データDDを用いて、被測定物Wの表面の形状測定データMDのうちからこの輪郭形状の幾何学的性状の計算を行うデータ範囲と、この輪郭形状の種別を決定する。
【0033】
図7は、図5に示すサブルーチンS13のフローチャートである。サブルーチンS13では、形状測定データMDと設計データDDとの間で位置合わせを行った後、位置合わせされた設計データDDに含まれる幾何要素の外端の位置を求め、この幾何要素に従って形成された輪郭部分の形状測定データの範囲の外端を、この幾何要素の外端の位置から求める。
まずステップS20では、図4に示す幾何学的性状算出部52の位置合わせ部61は、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標との間の相対位置差を求めることによってこれらの間の位置合わせを行う。図8の(A)〜図8の(C)は、形状測定データMDと設計データDDの位置合わせ方法の一例の説明図である。
【0034】
形状測定データMDの座標は、輪郭形状測定装置1のテーブル2上のどこに被測定物Wを置くかに応じて変化するため、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標とは図8の(A)に示すように相対位置差eがある。このため、図8の(B)に示すように幾何要素Aの外端P1及びP2の位置から、この幾何要素Aに従って形成された輪郭部分のデータ範囲MD1を求めるためには、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標との間の相対位置差eを求める必要がある。
【0035】
そこで、例えば図8の(C)に示す位置合わせ方法では、設計データDD上の各点PD1〜PD5と、これらの点からそれぞれ最も近い形状測定データ上の点PM1〜PM5と、の間のそれぞれの位置誤差ei1〜ei5を求め、これら総誤差Σeij(j=1〜5)が最も小さくなるような、形状測定データMDと設計データDDとの間の相対移動量を算出する。
図9は、例えば形状測定データMDの座標と設計データDDの座標との間の相対位置差eに、データの回転誤差が含まないと仮定した場合の、形状測定データMDと設計データDDとの位置合わせ方法の一例を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS31において位置合わせ部61は、現状の相対位置関係において、設計データDD上のM個の点と、これらの点からそれぞれ最も近い形状測定データ上の点との間のそれぞれの位置誤差ei1〜eiMを求め、これらの総誤差e0(=Σe0j(j=1〜M))を計算し、ステップS32において総誤差e0を一時保存する。
次にステップS33〜ステップS36において位置合わせ部61は、形状測定データMDと設計データDDとの相対位置を、全方位360度をN等分した各方向θi(i=1〜N)のそれぞれの方向に所定の距離だけずらした場合の、各総誤差ei(=Σeij(j=1〜M))を計算し、保存する。
【0037】
ステップS37において位置合わせ部61は、各方向θiについて計算した各総誤差eiのいずれもが、ステップS32で保存した移動前の総誤差e0よりも増加していた場合には、現在、形状測定データMDと設計データDDとが最も良く位置合わせされていると判断して処理を終了する。
また、各角度θiについて計算した各総誤差eiのいずれかが総誤差e0より小さい場合には、位置合わせ部61は、これら各総誤差eiのうち最も小さい総誤差etとなった方向θtを、形状測定データMDと設計データDDとの間の相対位置をずらす方向として決定する。ステップS39において位置合わせ部61は、形状測定データMDと設計データDDとの位置をθtの方向に所定の距離だけ相対移動させ、そのときの各総誤差eo(=Σeoj(j=1〜M))を計算し、保存する(ステップS40、S41)。
【0038】
ステップS42において位置合わせ部61は、形状測定データMDと設計データDDとの位置をθtの方向に所定の距離だけさらに相対移動させ、そのときの各総誤差en(=Σenj(j=1〜M))を計算し、保存する(ステップS43、S44)。
そしてステップS45において位置合わせ部61は、ステップS42による相対移動によって形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が増加したか否か(すなわちen>eoとなったか否か)を判定し、まだ増加していない場合にはステップS46において各総誤差eoの値を各総誤差enの値に更新した後に、処理をステップS42に戻す。
【0039】
以後、位置合わせ部61は、θt方向の相対移動によって形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が、最小値を過ぎて増加し始めるまでステップS42〜ステップS46を繰り返し、形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が最小値を過ぎたとき(すなわちステップS45の判定でen>eo)となったとき、ステップS47において形状測定データMDと設計データDDとの間の相対位置を、−θtの方向に1ステップだけ戻してステップS31に処理を戻す。
位置合わせ部61は以上の動作を、形状測定データMDと設計データDDとを全方向に相対移動させたときに、いずれ方向においても形状測定データMDと設計データDDとの間の位置誤差が増加するまで繰り返す。
その結果、形状測定データMDの座標と設計データDDの座標とは、これらのデータが図8の(B)に示すように最も良く重なり合うまで相対移動されるので、移動前の位置関係と移動後の位置関係を比較することによって相対位置差eを求めることができる。
【0040】
図7に戻りステップS21では、図4に示す幾何要素種別決定部62は、形状測定データMDに位置合わせされた設計データDDに含まれる幾何要素の種別データ(図6の(B)に示す例では幾何要素「A」の種別データ「円弧」)を、この幾何要素に従って形成された輪郭形状の種別として決定する。
またデータ範囲決定部63は、被測定物Wの表面の形状測定データMDのうちからこの幾何要素に従って形成された輪郭形状のデータ範囲(図6の(A)に示す例ではデータ範囲MD1)を決定する。
【0041】
図7に示すルーチンS21にて実行される各ステップの例を示すフローチャートを、図10に示す。
まず、ステップS51において、幾何要素種別決定部62は、形状測定データMDに位置合わせされた設計データDDに含まれる幾何要素の種別データを、この幾何要素に従って形成された輪郭形状の種別として決定する。
ステップS52において、データ範囲決定部63は、ステップS51で決定した種別データに応じて、この幾何要素の性状データからこの幾何要素の外端の座標を取得する。
【0042】
ここで幾何要素の「外端」とは、設計データDD中の幾何要素が、例えば図11の(A)に示す円弧OCのような開曲線である場合には、その両端EP1及びEP2をいう。幾何要素が、直線である場合、あるいは多角形を構成する閉じた図形の辺の一部を除くことによって定義される開いた図形である場合も同様である。
そして、例えば幾何要素が円弧OCである場合には、その種別データ、円弧OCを含む前縁Cの中心位置O、並びに開始角θ1及び終了角θ2に応じて、既知の算出式によって外端EP1及びEP2の位置を算出することが可能である。
設計データDD中の幾何要素が、例えば図11の(B)に示す半球の球面のような開いた面Sである場合には、データ範囲決定部63は、その開いた面Sを囲う閉曲線ECを幾何要素の「外端」とする。
【0043】
ここで、幾何学的性状の計算を所望する形状測定データMDが、閉曲線や閉曲面などの閉じた図形である場合には、そもそも計算を行うデータ範囲の開始点と終了点とを指定する必要がないため外端の位置を算出する必要がない。
このような場合には、データ範囲決定部63は、この幾何要素に対応する輪郭形状のデータ範囲を決定せず、一次性状算出部64は、幾何要素種別決定部62が決定した種別のみを用いて形状測定データに含まれる輪郭形状の幾何学的性状の計算を行う。
【0044】
ステップS53において、データ範囲決定部63は、ステップS52で取得した幾何要素の外端に対応する形状測定データ上の位置を決定し、この位置を、幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分を測定したデータの範囲の外端とする。例えばデータ範囲決定部63は、形状測定データ上の各位置のうち、ステップS52で取得した幾何要素の外端に最も近い位置を、このようなデータ範囲の外端として決定してよい。
【0045】
図7に戻り、ステップS22においてデータ範囲決定部63は、決定したデータ範囲の全部又は一部を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として決定する。図12に、データ範囲決定部63による算出範囲の決定方法の例を示す。
まずステップS21において、設計データDDの幾何要素である円弧Aの外端P1及びP2に最も近い測定データMD上の点P1’及びP2’が、設計データDDの円弧Aに対応する輪郭部分RN1を測定したデータ範囲として決定されたとする。
【0046】
しかし図示のように、通常の被測定物Wでは、理論的な設計データDDよりも点P1’及びP2’のエッジがダレており、点P1’及びP2’の近傍部分を含む範囲RN1のデータに基づいて幾何学的性状を算出すると、算出結果に大きな誤差を生じるおそれがある。
したがってデータ範囲決定部63は、幾何要素に対応して形成された輪郭部分の範囲として決定された範囲RN1より、所定のマージンΔMだけ内側の範囲RN2を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として決定する。
【0047】
そして図5に戻り、ステップS14において、一次性状算出部64は、データ範囲決定部63が決定した算出範囲と、幾何要素種別決定部62が決定した輪郭形状の種別を用いて、この算出範囲の形状測定データが示す輪郭形状の幾何学的性状を特定する数値を算出する。例えば算出範囲の形状測定データが図6の(A)に示す円弧状の輪郭形状を示す場合には、一次性状算出部64は、この輪郭形状を含む全円の中心位置、半径、円弧の開始角及び終了角、並びに開始位置及び終了位置等の幾何学的性状を算出する。
【0048】
さらにステップS15では、GUI部53は、ステップS14において算出された一次的な幾何学的性状を示す数値を更に演算して、二次的な幾何学的性状を演算するための、操作手段を、表示部37に表示されるGUI画面上に提供する。
例えば、GUI部53は、一次的な幾何学的性状の算出が済んだデータ範囲と、算出するべき二次的な幾何学的性状の種類と、をオペレータがマウスを用いて選択することができる選択画面を生成してよい。
次にステップS16では、GUI部53により生成されたGUI画面を介して入力したオペレータの操作コマンドに従って、ステップS14において算出された一次的な幾何学的性状を示す数値を更に演算して、二次的な幾何学的性状を演算する。
【0049】
図13は、図5に示す、幾何学的性状の計算を行う形状測定データMDの範囲と輪郭形状の種別を決定するサブルーチンS13の第2例のフローチャートである。
設計データに複数の幾何要素が含まれ、形状測定データにもこれら複数の幾何要素に対応する輪郭形状がそれぞれ含まれている場合、その全てについて幾何学的性状の計算を行う必要がない場合がある。したがって図13に示すフローチャートでは、形状測定データ中に複数含まれる輪郭形状のうち、幾何学的性状の計算を行う必要があるものだけ計算範囲を決定する場合の例を示す。
【0050】
まず、ステップS60において図4に示すGUI部53は、形状測定データ生成部51が生成した形状測定データMDを表示部37上に表示する。このとき例えばGUI部53は、図14に示すように、形状測定データMDをGUI画面上のウインドウ部101に表示してよい。
そして、オペレータが表示部37上の一箇所を指定すると、この場所を含む所定の範囲内に表示された形状測定データを計算対象データとして選択する。
例えば、オペレータがマウス等の入力部35を操作して、ウインドウ101に表示されたカーソル102の位置を測定データMDの表示箇所103の上へ移動させ、この位置103を指定すると、GUI部53はこの位置を中心とする幅W及び高さHの矩形領域内の形状測定データを選択する。
【0051】
次にステップS61において、GUI部53は、計算部30に読み込まれ副記憶装置33等に記憶された設計データDDを表示部37上に表示する。そして、オペレータが、GUI画面を操作して、ステップS60で選択した形状測定データの箇所の輪郭形状の設計データである幾何要素を指定すると、GUI部53は、この幾何要素をステップS60で選択した形状測定データに対応する幾何要素として選択する。
【0052】
そしてステップS20において位置合わせ部61は、図8及び図9を参照して説明したのと同様に、ステップS60で選択した範囲の形状測定データと、ステップS61において選択した幾何要素との間の相対位置差がなくなるように、形状測定データと設計データとの間の位置合わせを行う。
ステップS21において、幾何要素種別決定部62とデータ範囲決定部63は、図10を参照して説明したのと同様に、ステップS60で選択した範囲の形状測定データのうちの、ステップS61において選択した幾何要素に従って形成された輪郭形状を測定したデータ範囲、並びに輪郭形状の種別を決定する。
ステップS22において、データ範囲決定部63は、図12を参照して説明したのと同様に、決定したデータ範囲の全部又は一部を、幾何学的性状を算出するべきデータ範囲として決定する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、被測定物の輪郭形状を測定する輪郭形状測定装置、並びに被測定物表面上に形成された輪郭形状の輪郭形状を測定した形状測定データから、その輪郭形状の寸法や、中心位置又は真円度といった幾何学的性状を算出する方法及びプログラムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】輪郭形状測定装置の基本構成図である。
【図2】(A)は被測定物表面上に形成された輪郭形状の形状測定データの例であり、(B)は(A)に示す輪郭形状について算出される幾何学的性状の例を示す図である。
【図3】図1に示す輪郭形状測定装置を制御して、本発明による輪郭形状測定装置を実現する計算部の概略構成例を示す図である。
【図4】図3に示す計算部により実現される機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施例による幾何学的性状算出方法の全体フローチャートである。
【図6】(A)は形状測定データ生成部51が形状測定データMDの例を示す図であり、(B)は(A)に示す形状測定データMDを採取した箇所の輪郭形状の設計データDDを示す図である。
【図7】図5に示すサブルーチンS13の第1例のフローチャートである。
【図8】(A)〜(C)は形状測定データと設計データの位置合わせ方法の一例の説明図である。
【図9】図7に示すサブルーチンS20の一例のフローチャートである。
【図10】図7に示すサブルーチンS21のフローチャートである。
【図11】(A)〜(D)は、幾何要素の外端の例を示す説明図である。
【図12】幾何学的性状の算出範囲の決定方法の説明図である。
【図13】図5に示すサブルーチンS13の第2例のフローチャートである。
【図14】幾何学的性状を算出する形状測定データを選択するGUI画面を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 輪郭形状測定装置
2 テーブル
3 コラム
4 Z方向可動部
5 X方向可動部
6 ピックアップ
7 カンチレバー
10 腕部
11 触針
50 輪郭形状測定プログラム
52 幾何学的性状算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出する被測定物の幾何学的性状算出方法であって、
前記被測定物表面上の輪郭形状を測定して得た形状測定データと前記設計データとの間の位置合わせを行うステップと、
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の外端の位置から決定するステップと、
を有することを特徴とする幾何学的性状算出方法。
【請求項2】
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分の形状の種別を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の種別から決定するステップを、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の幾何学的性状算出方法。
【請求項3】
輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出するための、被測定物の幾何学的性状算出プログラムであって、
前記被測定物表面の輪郭形状を測定して得た形状測定データと前記設計データとの間の位置合わせを行うステップと、
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の外端の位置から決定するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする幾何学的性状算出プログラム。
【請求項4】
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分の形状の種別を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の種別から決定するステップを、さらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項3に記載の幾何学的性状算出プログラム。
【請求項5】
被測定物の表面上の輪郭形状測定を行う輪郭形状測定部と、前記輪郭形状測定の結果から前記被測定物の表面上の輪郭形状の形状測定データを生成する形状測定データ生成部と、前記形状測定データが示す前記輪郭形状の幾何学的性状を算出する幾何学的性状算出部と、を有する輪郭形状測定装置であって、
輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データと、この設計データに従って形成された前記被測定物表面の輪郭形状の前記形状測定データとの間の位置合わせを行う位置合わせ部と、
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の外端の位置から決定するデータ範囲決定部と、
を備えることを特徴とする輪郭形状測定装置。
【請求項6】
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分の形状の種別を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の種別から決定する幾何要素種別決定部を、を備えることを特徴とする請求項5に記載の輪郭形状測定装置。
【請求項1】
輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出する被測定物の幾何学的性状算出方法であって、
前記被測定物表面上の輪郭形状を測定して得た形状測定データと前記設計データとの間の位置合わせを行うステップと、
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の外端の位置から決定するステップと、
を有することを特徴とする幾何学的性状算出方法。
【請求項2】
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分の形状の種別を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の種別から決定するステップを、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の幾何学的性状算出方法。
【請求項3】
輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データに従って形成された、被測定物表面上の輪郭形状の幾何学的性状を算出するための、被測定物の幾何学的性状算出プログラムであって、
前記被測定物表面の輪郭形状を測定して得た形状測定データと前記設計データとの間の位置合わせを行うステップと、
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の外端の位置から決定するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする幾何学的性状算出プログラム。
【請求項4】
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分の形状の種別を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の種別から決定するステップを、さらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項3に記載の幾何学的性状算出プログラム。
【請求項5】
被測定物の表面上の輪郭形状測定を行う輪郭形状測定部と、前記輪郭形状測定の結果から前記被測定物の表面上の輪郭形状の形状測定データを生成する形状測定データ生成部と、前記形状測定データが示す前記輪郭形状の幾何学的性状を算出する幾何学的性状算出部と、を有する輪郭形状測定装置であって、
輪郭形状を特定する幾何要素を含む設計データと、この設計データに従って形成された前記被測定物表面の輪郭形状の前記形状測定データとの間の位置合わせを行う位置合わせ部と、
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分のデータの範囲の外端の位置を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の外端の位置から決定するデータ範囲決定部と、
を備えることを特徴とする輪郭形状測定装置。
【請求項6】
前記形状測定データのうち、前記幾何要素に従って形成された輪郭形状の部分の形状の種別を、前記形状測定データに位置合わせされた前記設計データに含まれる前記幾何要素の種別から決定する幾何要素種別決定部を、を備えることを特徴とする請求項5に記載の輪郭形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−116392(P2008−116392A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301496(P2006−301496)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
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